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03/11/2009

キャッシュの運命は如何に。

 私的使用目的のダウンロード行為の違法化については,YouTube等のストリーミング配信を受信するときに生成されるキャッシュはどうなるのだという批判がありました。今回閣議決定された改正案では,

(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)
第四十七条の八 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

という規定を新設することにより,この批判に答えようとはしているようです。ただ,「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る」という括弧書きと,新設第30条第1項第3号において「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」を複製権侵害としたこととの関係をどう捉えるのかは問題となってきそうです(といいますか,「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害」する場合にはその著作権侵害を問題視すればよいだけの話なので,この括弧書き自体不要だと思いますが。)。

 また,改正案では,著作権法第49条第1項に,

七 第四十七条の八の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を、当該著作物の同条に規定する複製物の使用に代えて使用し、又は当該著作物に係る同条に規定する送信の受信(当該送信が受信者からの求めに応じ自動的に行われるものである場合にあつては、当該送信の受信又はこれに準ずるものとして政令で定める行為)をしないで使用して、当該著作物を利用した者

という規定を付加することにより,これらの者が「第二十一条の複製を行つたものとみなす」こととしているわけですが,キャッシュというのは,キャッシュ元のデータに逐一アクセスするよりもキャッシュされたデータにアクセスした方がデータの読み込み時間が短くなるということで情報処理を効率化させるものなので,本体のデータに替えてキャッシュデータにアクセスしたら複製を行ったものとみなされるのでは,キャッシュとしてのデータ複製を合法化した意味がないような気がしなくもありません(「複製」とみなすだけで「録音」「録画」を行ったものとはみなさないから,新設第30条第1項第3号の適用はない,というのでしょうか。それもアクロバティックに過ぎるような気はしますが。)。

 改正案の第30条第1項第3号では,わざわざ括弧書きで,「国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの」を私的目的でのダウンロードが禁止される複製物に含めている点も問題となるでしょう。自動公衆送信が著作財産権に含まれていない国でアップロードされたもの(当然,著作権者の意図にかかわらず,許諾はなされていない。)や,日本にはない権利制限規定(例えば,米国法のフェアユース等)により合法的にアップロードされているものをダウンロードする行為が違法となってしまいます。それはそれで価値判断的に如何なものかなあという気がしてしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Voici les sites qui parlent de キャッシュの運命は如何に。:

» 改正著作権法案がそのまま成立したら、海外アーティストの公式サイトからのダウンロードも違法になるのか? de mohno
MIAU の榎本温氏が「改正著作権法案がそのまま成立したら、海外アーティストの公式サイトからのダウンロードも違法になる」というエントリで、公式サイトでプロモーション目的で公開されている楽曲ですら違法扱いになるという指摘をされている。「国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの」には、たとえばアーティストの公式サイトで行われている音源サンプルの配布がある。以前、小倉弁護士も「キャッシュの運命は如何に。」というエントリで同様の指摘をされていた。自動公衆送信が... [Lire la suite]

Notifié le 23 avr. 09 02:34:37

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