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08/18/2009

ダウンロード違法化の具体的な問題点

 高木浩光さんとMIAUとの関係が少々険悪になっているようで、心配です。

 MIAUについてはいろいろな批判があるのは分からないでもないし、私はMIAUが有害コンテンツ関係や児童ポルノ関係に手を出すのは戦略的に拙いなあと思いはしますが、自分が会員にすらなっていない団体がどの領域に主たる関心を示し、どの領域に関心を示さないかについてとやかく言ってみても始まらないので、その点は基本的に静観しています。

 Googleとプライバシー権の関係一つとっても、高木さんはストビューの問題に関心を持っているのに対して、私は、グーグル検索(ウェブ検索のみならず画像検索を含む)によるプライバシー情報の拡布の問題に関心を持っているというように、関心のあることがそれぞれ異なるのだから、その問題に強い関心を持っている人がその問題に関して動いていくしかないように思ったりしているからです。

 もちろん、MIAUは、入会資格をオープンにしているという程度しかインターネットユーザーを代表する資格の担保をしていないわけですが、インターネット利用者の匿名性が強く保証されている現状でそれ以上の代表資格の担保を求めると、結局、どこもインターネット利用者の代表者たる資格はないという話にしかならないような気がします。そして、それは結局、インターネット利用者の声など、審議会等で聞く必要はない(いや、聞いた方がよいと思うのだが、聞く手段がない)という話になっていきそうです。

 その上で、ダウンロード違法化との関係について若干言及すると、高木さんは、

Winny等はその仕組み上、ダウンロードすると同時にアップロードする(送信可能な状態におかれる)ようになっており、そのことをよく知らない大量のネット中級者が無差別にファイルを溜め込んで送信可能な状態においていることが、違法コンテンツ流通蔓延の原因になっている。ネット上級者であるMIAUの人達ならよく知っていることだろう。
アップロードを自覚しないWinny利用者らは摘発できない(故意が認められない)のだから、津田代表理事が言うように「アップロードの摘発をもっと効率的に行うべき」であるなら、Winny等の利用者に向けて、「あなたがやっていることはアップロードですよ」という注意喚起をしたらいいのに、MIAUはそういうことをやらないのだろうか。MIAUは、インターネットリテラシ読本作成のプロジェクトも活動の柱の一つとしているのだから、そうした啓発活動をするのも本来、自然なはずではないか。

仰るのですが、民事的に、不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求をする分には、Winny利用者に故意がなくったって大丈夫なのですから(過失なしとはいえないでしょう。)、権利者側に「摘発」する気があれば摘発できます。民事上の発信者情報開示請求手続が正常に機能しているのであれば、権利者が、その手続を利用して発信者を突き止めて損害賠償請求権を行使するというのが本筋だと思うのです。いきなり警察がやってきて一罰百戒とばかりに逮捕→起訴→失業→執行猶予という制裁を、アップローダーのごくごく一部に加えるよりはよほどましかなあと。

 そういう意味では、権利者側が「発信者情報開示請求→アップローダーに対する損害賠償請求」に踏み切らない理由が発信者情報開示請求制度の中にあるのであればそこを改善すれば良いではないかというのは、分かりやすい話ではないかと思うのです。そして、「Winny等はその仕組み上、ダウンロードすると同時にアップロードする(送信可能な状態におかれる)ようになって」いることすら理解していないライト感覚のInfringerは、IPアドレス偽装とかそういうことにも頭を使っていなさそうなので、権利者側からすれば簡単に「摘発」できるはずなのになあと思ったりします(真実性の抗弁が成立しないことの立証まで求められる名誉毀損事例と比べると、遥かに簡単だと思ったりします。)。

 で、アップローダー規制だと、アップローダーの共有フォルダに蔵置されているファイルに蔵置されている著作物等のみが被侵害著作物となるので、アップローダーの共有フォルダは通常公開されている以上、アップロードに用いられているコンピュータのハードディスク自体を検証する必要がないのに対し、ダウンローダー規制の場合、アップローダーではない純粋ダウンローダーに対して権利行使をする場合は、被侵害著作物の全容を明らかにするためにはダウンロードに用いられているコンピュータのハードディスク自体を検証しなければならず、その過程でダウンローダーのコンピュータ・プライバシーは全て権利者側に筒抜けとなるのです。そして、権利者の一極は、テレビ局という報道機関であり、そのような報道機関に自分のプライバシー情報が丸裸にされるわけです(しかも、それらの情報の目的外使用を禁止する条項はありません。)。

 だから、ダウンローダー規制の旗を振ってきた松田政行弁護士だって、ダウンローダー規制を新規立法しても大した弊害がないということを説明するためには、そのような法規制ができても権利者は権利行使しないから大丈夫だという話をするしかなかったわけです。で、新規立法によって可能となった権利が権利者によって行使された場合に、メディア企業によるプライバシー侵害等の弊害を何ら抑止できない、そういう立法について「具体的な問題がない」といってしまうのは、私は抵抗を感じます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:33 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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