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10/26/2009

政令の内容を課長の回答で変更すること

 エイベックス取締役の岸博幸さんが次のように述べています。

 また、東芝が補償金を徴収していない今回の機器は、以前から補償金制度の対象となっているDVD録画機であり、政令上は「アナログチューナー非搭載機を除く」といった留保条件が付いていない。家電メーカーやその背後にいる経産省の主張どおりに補償金が払われないとすれば、政令の中身が、政令よりも下位に位置する通達で変更されることになる。これほど法律の世界の秩序を無視した主張はないのではないだろうか。

 著作権課長は、アナログチューナー非搭載のDVD録画機器は、著作権法施行令第1条第2項第3号の特定機器に該当すると解してよいか。とのSARVHの照会に対し、・・・貴見のとおりで差し支えありません。と回答したとのことです。

 そこで、同施行令第1条第2項第3号を見ると、その文言は以下のとおりとなっています。

三  光学的方法により、特定の標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像又はいずれの標本化周波数によるものであるかを問わずアナログデジタル変換が行われた影像を、直径が百二十ミリメートルの光ディスク(レーザー光が照射される面から記録層までの距離が〇・六ミリメートルのものに限る。)であつて次のいずれか一に該当するものに連続して固定する機能を有する機器
イ 記録層の渦巻状の溝がうねつておらず、かつ、連続していないもの
ロ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続しているもの
ハ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続していないもの

 この規定を素直に読めば、「光学的方法により、……アナログデジタル変換が行われた影像を、……光ディスク……に連続して固定する機能を有する機器」となっていますから、「アナログデジタル変換」を行う機能を有しない「アナログチューナー非搭載機」は補償金制度の対象外となっているように見えます。つまり、同施行令第1条第2項第3号の「特定機器」が連続して固定するべき「影像」を「アナログデジタル変換が行われた影像」に限定することによって、「アナログチューナー非搭載機を除く」といった留保条件を付したものと解するのが常識的な法文の読み方ではないかと思われます。

 「政令の中身が、政令よりも下位に位置する『著作権課長による回答』で変更されることになる」ということの方が、法律の世界の秩序を無視したものであるように思われます。

 岸さんは、続けて、

 デジタルとネットは社会の便益向上のために不可欠であり、その普及を止めるべきではない。ただ、その普及は違法コピーや違法ダウンロードの激増、コンテンツ供給量の増大などをもたらし、ユーザーは多くのコンテンツをタダで容易に入手できるようになった。ユーザーにとってのコンテンツの価値は限りなくゼロに近づいてしまったのである。
 一方で、コンテンツは文化という社会の重要な価値観、インフラの一部であり、社会にとっての価値は不変である。その結果、コンテンツのユーザーにとっての価値と社会的な価値の間に大きな乖離が生じてしまった。それが社会的なコストに他ならない。

と述べた上で、

補償金はこの社会的コストを埋める役割をある程度果たしていたと評価できる

と結論づけるのですが、「アナログチューナー非搭載機のDVDレコーダー」って、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」とは何の関係もないように思われてなりません。その本来の放送時間にゆっくりテレビ番組を視聴していられない人が、その番組をあとでYouTubeで見るのではなく、「アナログチューナー非搭載機のDVDレコーダー」を用いて自分で録画した上でこれを見ようという人に、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」によって生じた「社会的コスト」を負担させようとすれば、反発を招くのは必至です。

 「違法コピーや違法ダウンロードの激増」により生じた「社会的コスト」を誰かに負担させたいのであれば、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」により利益を得ている事業者に負担させる方がまだ筋が通ります。具体的には、無許諾に投稿されたコンテンツについてそのダウンロード回数に応じて一定の「補償金」の支払義務をYouTube等の動画投稿サイトの運営者に課す等の方法が考えられます(「補償金」を支払えば削除義務を免れるというのであれば、YouTube等の動画投稿サイトの運営者はむしろ歓迎することでしょう。彼らはただで他人のコンテンツを利用したいのではないですから。)。

Posted by 小倉秀夫 at 05:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

あのね。。。。
アナログチューナーを搭載していなくても、レコーダにアナログ入力端子はあるんだから「A/D変換機能」を有する機械に該当するに決まっているでしょ。
それに、万一、アナログ端子のないレコーダが発売されたとしたって、政令には、当該機器においてA/D変換がなされなければならないという要件はないんだから、最終的にデジタル録画できる機器なら政令の要件を満たすでしょうがぁ。。。
条文は素直に読んで欲しいなぁ。。

Rédigé par: abc | le 10/27/2009 à 12:37

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