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11/02/2009

主役が怠けているのに,脇役が協力しないのが怪しからんといわれても。

 私的録音録画補償金請求権の行使方法について,著作権法の規定を整理してみましょう。

 まず,著作権法第30条第2項は,

私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

と定めています。ここでは,補償金の支払義務者は製造業者ではなく「録音又は録画を行う者」であるということに注目をしましょう。

 これを受けて,著作権法第104条の4第1項は次のように定めます。

第三十条第二項の政令で定める機器(以下この章において「特定機器」という。)又は記録媒体(以下この章において「特定記録媒体」という。)を購入する者(当該特定機器又は特定記録媒体が小売に供された後最初に購入するものに限る。)は、その購入に当たり、指定管理団体から、当該特定機器又は特定記録媒体を用いて行う私的録音又は私的録画に係る私的録音録画補償金の一括の支払として、第百四条の六第一項の規定により当該特定機器又は特定記録媒体について定められた額の私的録音録画補償金の支払の請求があつた場合には、当該私的録音録画補償金を支払わなければならない。

 ここでは,特定機器又は特定記録媒体の購入者に対し指定管理団体から補償金の支払い請求があった場合に初めて,購入者は録音録画補償金を一括払いする義務を負うということに注目をしましょう。

 さらに,著作権法104条の5に注目してみましょう。

前条第一項の規定により指定管理団体が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者(次条第三項において「製造業者等」という。)は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない。

 このように,法律の文言上は,特定機器の製造業者が負っているのは,「当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力」する義務であって,その出荷した特定機器に応じた補償金相当額を支払う義務を指定管理団体に対し直接負っているわけではありません。といいますか,製造業者は,特定機器の購入者に対し自己の名で補償金の支払いを請求する権利自体がありません(あくまで「協力」義務を負っているに過ぎませんから)ので,本来であれば,指定管理団体から渡された私的録音録画補償金の請求書を特定機器を混入した段ボール箱の表面に貼って「支払いの請求」に協力したり,また,直営店や提携小売店で特定機器を購入する消費者から任意に補償金相当金を預かって一括して指定管理団体に送金するということで補償金の受領に協力したりしても良いはずです。むしろ,当該製品が特定機器にあたること,それ故製品価格とは別に私的録音録画補償金の支払いを指定管理団体が要求していることを消費者が特定機器を購入するに際して具体的に示すことなく,補償金相当額を製品価格に上乗せすることによって,補償金を支払わされているのだと言うことを消費者に意識させることなく補償金を支払わせるという現在の運用の方がまずいといわざるを得ません。

 以上を前提とするとき,その製品が特定機器に当たりその購入者には私的録音録画補償金が生ずるということについての購入者を納得させるような合理的な説明がなされていない段階で,補償金相当額を出荷価格に上乗せすることなくこれを出荷した製造業者に対し,上記協力義務の不履行に基づく損害賠償請求権として,補償金相当額の賠償を指定管理事業者が製造業者に請求しうるのか疑問の余地無しとはしません。なんといっても,製造業者は,特定機器の購入者から強制的に私的録音録画補償金を徴収する権限が与えられおらず,かつ,補償金の支払いを拒む者に特定機器の販売を回避する義務を負っていないのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:21 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

コピー制御を無料広告放送に課している国は日本以外にはなく、不便な制御の上に、補償金まで取られるのは納得しかねるのはむしろ当然です。

消費者は、コピーフリーを望んでいます。例えばPSXはコピーワンスに非対応です。旧来の機種を持っている人は、新たに買い直しを強要されます。

そんなにコピーワンスをかけたいなら、すべてCSで放送すればいいんじゃないですか?アメリカは24、プリズンブレイク、ターミネーターなどドラマはHD画質でコピーフリーで全部放送してますが。

>「私的領域」で10以上のコピーをいつも作っているんですか?

有機色素のDVDの寿命はどの程度か怪しいものですから、孫コピーできないと大切な番組は絶えず複数コピーしないといけませんね。

Rédigé par: kner | le 11/03/2009 à 00:30

ダビング10はメーカーの提案ではないですよね。メーカーの提案はEPNで、世代の制限は無しでした。

それからコピーワンスからの緩和とおっしゃいますが、アナログ放送でのコピーフリーがコピーワンスを経てダビング10になっただけで、アナログ放送から比べたらかなり厳しく制限されています。

というわけで、「私的領域におけるコピーの自由を広げたい」のではなくて、デジタル放送でコピーの自由を狭めておきながら、補償金も寄越せというのは、納得がいかない、という意見です。

# 別のエントリの方でもコメントしたように、根本的なところではabcさんとは平行線になると思います。なので、コメントはここまでにさせていただきます。ありがとうございました。

Rédigé par: 匿名希望 | le 11/02/2009 à 15:49

>匿名希望

その点に不満があるなら、むしろダビング10を提案したメーカーに文句をいうべきではないですか?そもそもダビング10は、従来のコピーワンスを緩和した取り扱いだと思います。
ボクが言っているのは、ダビング10に対する不満を補償金に向けるのは筋違いではないかということです。私的領域におけるコピーの自由を広げたいのであれば、補償金を賦課してもいいからコピーを2世代までできるようにしろ、等の交渉をした方がずっと建設的ではないですか。

Rédigé par: abc | le 11/02/2009 à 15:35

abcさんは、何でも喧嘩腰で書きたいのですね。
残念です。

個数よりも、世代が1世代に制限されることが、不十分だなと感じます。
レコーダーで録画したものを、PCで携帯端末向けのフォーマットに変換して持ち出すとかできませんから。私的領域なのに、なんで制限されないといけないんだろうと本当に思います。
折角、ビデオテープの時代よりも、便利になったはずなのになぁと思うわけです。

Rédigé par: 匿名希望 | le 11/02/2009 à 15:13

>匿名希望

「私的領域で満足にコピーできないし」って、あなたは「私的領域」で10以上のコピーをいつも作っているんですか?
もしそうだとしたら、それこそ補償金の範疇を超えて、すでに著作権侵害の領域の問題ですね。

Rédigé par: abc | le 11/02/2009 à 14:59

メーカー擁護をしたいのではなくて、この問題は権利者 vs. メーカーではなくて、権利者 vs. 消費者の問題だ、ということがおっしゃりたいのではないかと思います。
次のエントリでも、同じ趣旨のことを書かれているようですし。http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2009/05/post-54fb.html

あえてもう一度記事を書かれたのは、主婦連やMIAUが声をあげたのが背景にあるのかも知れないですね。
ダビング10だか何だか知りませんが、私的領域で満足にコピーできないし、そのコストも負担しているのに、さらに補償金も支払うというのは、納得できません。録画補償金の運用が始まった1999年には、アナログ放送しかなくて、コピー制御はできなかったことを考えると、立法の前提となった事情に重大な変化があるのではないかと思います。

Rédigé par: 匿名希望 | le 11/02/2009 à 14:52

ほぉー。支払が嫌だと駄々をこねている消費者が悪いのであって、メーカーは悪くない。SARVHが訴訟を起こすのなら、駄々をこねて支払いを怠けている個々の消費者を相手にすべきであって、メーカーを相手にすべきではないというご意見ですね。
平生、企業の横暴から弱者である消費者を守るための議論を展開されているオグラ先生らしからぬ言説ですな。明らかな間違いを指摘されちゃって、そんな建前に構ってはいられなくなっちゃったのかな?

Rédigé par: abc | le 11/02/2009 à 09:56

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