« フランスで「三振法」の違和感 | Accueil | パブリシティ権って?(続) »

12/12/2009

パブリシティ権って?

 「パブリシティ権」って、いったい何なのでしょうか。

 東京高判平成3年9月26日判タ772号246頁[おニャン子クラブ事件]は、次のように判示しています。

固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがあることは、公知のところである。そして、芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価格として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。したがって、右権利に基づきその侵害行為に対しては差止め及び侵害の防止を実効あらしめるために侵害物件の廃棄を求めることができるものと解するのが相当てある。

 「固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがある」という点は認められると思うのです。しかし、そこから、「芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力」が「当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のこと」と言ってしまうのは、明らかに論理の飛躍だと思うのです。

 というのも、自由主義経済を原則とする我が国においては、商品の販売促進に効果のある情報を自社の商品に付することは原則なのであって、そのような情報は本来公有(パブリック・ドメイン)となるべきだからです(実際、競走馬の氏名等が持つ顧客吸引力は二つの最高裁判決によってパブリックドメインとして扱われています。)。それを、芸能人の氏名・肖像の持つ顧客吸引力に限って、立法によらずして、裁判所が恣意的に「当該芸能人に固有のものとして帰属する」と認定するのは、許されるべきではないように思われるのです。

 では、パブリシティ権を保護する新規立法をすればいいのかというと、そんなに簡単な話なのだろうかと思ったりもします。というのも、パブリシティ権のような財産権を新設するということは、権利者以外の人の営業活動の自由や表現の自由を制限することになりますので、それ相応の社会経済的な合理的な理由が必要となります。例えば、特許法であれば、発明を奨励するとともにこれを公開させて産業を発展させるために公開後一定期間その利用を独占させるという合理的な理由があります。

 しかし、パブリシティ権を芸能人に独占させると何かが奨励されるようになるのか、というとそこが疑問なのです。筆箱やクリアファイルに自分の氏名・肖像を掲載させて対価を得るというのは芸能人の本来的な投下資本回収手段ではないわけで、そのような非本質的な投下回収手段についてある程度自由競争に晒されたところで、芸能人になろう、自分の芸能に磨きをかけようというインセンティブが損なわれるということは通常ないように思われるからです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

TrackBack

URL TrackBack de cette note:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13499/47003828

Voici les sites qui parlent de パブリシティ権って?:

Commentaires

 自分としては、パブリック・ドメインにするのは反対です。有名人が契約したり、愛用しているわけでもない商品に、勝手に有名人の名前や肖像が使われることは、消費者から見ても、商品の品質について混乱を惹起させるものと思われるからです。
 ただ、パブリシティ権に関しては問題が山積みです。芸能人は名前を売るために努力したのだから、その努力に対する報酬が必要なのだとか、人気のある芸能人の名前を使うほど商品が売れやすくなるから、そのことに対する報酬なのだとか、そういう意見をよく見ますが、実際は生まれながらに有名で、なんの努力もなく有名になった芸能人の息子などにも多大な報酬を受け取る権利が発生してしまいます。権利自体にはあまり異論はないのですが、もうちょっとマシな権利の正当性がほしいところです。

 あとこの判決で面白いのはパブリシティ権を当該芸能人固有の権利としているところですね。財産権であるのに、一身専属の人格権というところが面白いです。著作財産権も全部著作者人格権と同様一身専属にしてしまって、全ては「契約」で済ませたらどうでしょう。著作財産権を著作者から取り上げることが出来、あまつさえ著作者人格権の不行使特約は有効だとか、著作者人格権は放棄出来るとか言い出す連中が跋扈する昨今ですので、速やかに著作権も「財産権の側面を持つ人格権」と位置づけ、企業ではなく個人を、出版社でなく著作者を保護する制度としてとらえ直すべきです。

Rédigé par: gase2 | le 12/13/2009 à 13:44

Poster un commentaire