« パブリシティ権って? | Accueil | 著作権法判例百選[第4版] »

12/13/2009

パブリシティ権って?(続)

 「パブリシティ権」を人格権の一種とする見解もあります。

 東京高判平成14年9月12日判タ1114号187頁[ダービースタリオン事件事件]がその典型です。

自然人は、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有すると解すべきであるから(商標法四条一項八号参照)、著名人も、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有するということができる。もっとも、著名人の氏名、肖像を商品の宣伝・広告に使用したり、商品そのものに付したりすることに、当該商品の宣伝・販売促進上の効果があることは、一般によく知られているところである。このような著名人の氏名、肖像は、当該著名人を象徴する個人識別情報として、それ自体が顧客吸引力を備えるものであり、一個の独立した経済的利益ないし価値を有するものである点において、一般人と異なるものである。自然人は、一般人であっても、上記のとおり、もともと、その人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に利用されない権利を有しているというべきなのであるから、一般人と異なり、その氏名、肖像から顧客吸引力が生じる著名人が、この氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利を有するのは、ある意味では、当然である。著名人のこの権利をとらえて、パブリシティ権」と呼ぶことは可能であるものの、この権利は、もともと人格権に根ざすものというべきである。

 著名人も一般人も、上記のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者に使用されない権利を有する点において差異はないものの、著名人の場合は、社会的に著名な存在であるがゆえに、第三者がその氏名・肖像等を使用することができる正当な理由の内容及び範囲が一般人と異なってくるのは、当然である。すなわち、著名人の場合は、正当な報道目的等のために、その氏名、肖像を利用されることが通常人より広い範囲で許容されることになるのは、この一例である。しかし、著名人であっても、上述のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者により使用されない権利を有するのであり、第三者が、単に経済的利益等を得るために、顧客吸引力を有する著名人の氏名・肖像を無断で使用する行為については、これを正当理由に含める必要はないことが明らかであるから、このような行為は、前述のような、著名人が排他的に支配している、その氏名権・肖像権あるいはそこから生じる経済的利益ないし価値をいたずらに損なう行為として、この行為の中止を求めたり、あるいは、この行為によって被った損害について賠償を求めたりすることができるものと解すべきである。

 ただ、従前の議論からすれば、立法によらずして私法上の権利として認められる人格権は、個人尊厳の原理と密接に結びつき人格的生存に不可欠と考えられる利益であることを要するわけですから、人格権としての氏名権・肖像権って、「正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利」というほど広範囲なものとしては認められてこなかったわけです(だから、桜井さんはディカプリオの名前を歌詞の中に盛り込むことができたし、野球中継で客席を映すことができるわけです。)。上記高裁は、商標法4条1項8号を参照しているのですが、同号は、他人の氏名をその同意なくして商標登録してもこれを無効とするという規定であって、他人の氏名をその同意なくして商標として使用することを禁止する規定ではありません。

 また、人格権としての氏名権・肖像権という枠組みを維持する限り、その使用が許されるか否かを判断する基準として、顧客吸引力を侵害するか否かを持ち出すというのはおかしいと思うのです。なぜなら、その氏名・肖像の持つ顧客吸引力自体は、「個人尊厳の原理と密接に結びつき人格的生存に不可欠と考えられる利益」ではないからです。むしろ、その肖像等の使用が個人の尊厳を冒すものであるのか否か、こそが判断基準となるべきです。

 さらにいえば、人格権としての氏名権・肖像権の一種としてパブリシティ権を構成するのであれば、その侵害にかかる損害は精神的な損害にのみ限定されるべきであって、その氏名・肖像が商用利用される場合の許諾料相当金をもって損害額と構成するのは、「人格権としての氏名権・肖像権」という判断枠組みとは矛盾しているように思われるのです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:11 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

TrackBack

URL TrackBack de cette note:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13499/47010076

Voici les sites qui parlent de パブリシティ権って?(続):

Commentaires

Poster un commentaire