日経新聞社によれば、
政府はインターネット上での映画や音楽などの海賊版の取り締まり強化に乗り出す。ネット接続サービス事業者(プロバイダー)に海賊版を自動検出する技術の導入を義務付けることや、違法ダウンロードを繰り返す利用者との接続を強制的に切断する仕組みを検討する。海賊版の利用に歯止めをかけ、制作者の著作権を保護して収益を得られるように支援する。
とのことです。
ISPが「海賊版を自動検出する技術」を導入する場合にはいくつものハードルがあります。
一番のハードルは、「海賊版を検出する」ためには、マッチングの対象となるコンテンツに関するデータを各ISPがもれなく入手する必要があるということです。しかし、過去にレコードまたはCDに収録されて公表された音源に対象を限定しても、各ISPが過去に遡ってこれらをあまねく入手するというのは現実問題として不可能です。また、今後公表されるものに限定しても、各ISPがこれらをすべて購入することは、理論的には可能でも、財政的に困難です。テレビ番組などの映像作品に至っては、ビデオ化またはDVD化された一部の作品以外は、マッチングの対象となるデータを入手することが公式には不可能です(これから放送されるテレビ番組については、各ISPが全テレビ局の全番組を録画すればマッチングデータを入手することは理論的には可能ですが、全国ないし全世界のいずれかで放送される各テレビ番組について著作権、隣接権の保護期間が切れるまで全ての番組に関するデータをISPがマッチングデータとしてサーバに保持しておくとなると、どれだけの容量の記録媒体が必要となるのでしょうか。関西ローカルの番組をたった1週間保存するだけの選撮見録ですら1テラバイト用意していたというのに。)。
これらマッチング対象のコンテンツを網羅的に入手しサーバに保存し続ける義務を負わせるだけで、大半のISPを倒産に追い込むことが可能でしょう。
次のハードルは、求められるフィルターの精度が高くなれば高くなるほど、送受信されるデータが特定のコンテンツの複製物でないとしてフィルターをスルーさせるためにかかる処理時間が長くなるということです。特定のコンテンツがどのようなファイル形式でどのような品質でデジタルデータ化されて送受信されるのかについては、天文学的なバリエーションがありうるわけですが、可能性がある限り全てマッチングさせるのだということになると、そのISPの電気通信設備を通り抜けようとするデータがひとつの特定コンテンツの複製物ではないと判別されるまでに相当の時間がかかってしまいます。それを、公表済みの全ての商用コンテンツについて行うとなると、相当の時間がかかりそうです。それを、そのISPの運営する電気通信設備を通り抜ける全てのデータに付いて行うとなると、猛烈な時間がかかりそうです。テレビ局と映画会社とレコード会社のわがままを叶えるために、メールを送信したらISPのフィルターを通り抜けるまでに1ヶ月かかるなんて未来が現実のものとなりそうです。
結局のところ、政府は、「インターネット上での映画や音楽などの海賊版の取り締まり」を行う手段として、インターネットを実用に耐えないものにしてしまおうと考えているということなのだと思います。