「CDを買おう」と呼びかてなんていないで。
朝日新聞に次のような記事が掲載されています。
音楽CDが売れない。インターネットで配信される曲をダウンロードする方式に押され、生産はこの10年でほぼ半減した。そんな中、若いミュージシャンらが「CDを買おう」と呼びかけ始めた。「ジャケットのデザインも、曲の並び順も作品の一部」と訴える。名づけて「BUYCDs(CD買おうぜ)」。
しかし、本来、音楽は実演家が聴衆の目の前で実演をすることにより聴衆に直接届けるというのが原初形態だったのであって、実演家による実演を物に固定した上で、これを増製して公衆に頒布するというのは、所詮、時と場所を超えて実演を伝達するための手段に過ぎません。
そして、時と場所を超えて実演を伝達する手段としては、「物に固定してそれを増製して頒布する」より、データのみをオンラインを介して配信する方が効率的であることは明らかです。もちろん、音を物にアナログ形式で固定していたビニールレコード時代であれば、デジタル化しきれていない情報がデータ配信では伝えきれていないということで「物に固定」方式が優位に立つ部分もあったわけですが、CD時代になると、音を物に固定する時点でデジタル化されていますので、そういった優位性もあったものではありません。
「ジャケットのデザイン」については、音のデータに付随する「アートワークデータ」として届けることができます。また、アーティストの側でその公式Myspaceに大きく「ジャケット」画像を掲載しておけば、多くのファンの目に触れさせることができます(どうせ、CD時代はもちろん、レコード時代だって、必ずしもジャケットデザインを見ながら音楽を聞いていたわけではありません。)。曲の並び順にしても、CD化した時点で、レコード会社の側で推奨する順番に聞かれる保証はなくなっています(どうしても特定の順番で効いて欲しいときは、アルバム全体を1つの曲として収録するしかありません。逆にいえば、そのようにしてしまえば、データ配信でも、特定の並び順で楽曲を聞かせることが可能です。)。
私としては、ミュージシャンの方々には、CDからデータ配信への変化をもう少し積極的に考えていただきたいところです。
まず、「レコード店にCDをおいてもらう」というハードルがなくなったことを活かして、アマチュア・セミプロ時代から全国の人に楽曲を購入してもらうチャンスが出てきた、あるいは、海外のレコード会社と契約を結ばなくとも全世界の人に楽曲を購入してもらうチャンスが出てきたのです。自分たちの音楽をできるだけたくさんの人の聴いてもらいたいということは、ミュージシャンの原初的な欲求の一つだったはずです。
また、データの伝達方法が「CD」という「物」に依存しなくなれば、「CD」という媒体の物理特性により制限されていた「データ量」という足かせがなくなります。そして、インターネット回線の高速化及びパソコン等における外部記憶装置の大容量化のおかげで、「CD」の記憶容量より大きなデータの送受信並びに外部記憶装置への蔵置が既に実用的になっています。それは、80分よりも長い楽曲を届けるという「長さ」の拡張にも使えるし、また、従来CD用に楽曲をデジタル化する際に省いていたデータを残すような規格の開発をメーカーに求め、よりライブに近い音を再生できるように仕向けることだってできます(メーカーがこれに応ずるかは、まずどのくらいのアーティストがそれを望むかにまず依存するとは思いますが。)。すなわち、ミュージシャンは、どのような音を公衆に聴いてもらうのかを決める自由度をより高めることが出来るのです。
Posted by 小倉秀夫 at 11:41 PM dans musique | Permalink
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Commentaires
呼びかけての「か」がタイトルからぬけています。
Rédigé par: 岡本 哲 | 31 mars 2010 à 12:49:38