情報に国境を作らない工夫
既に米国ではiPadが発売され、Amazon社のKindleとともに、電子書籍の普及を後押ししていくことでしょう。
ただ、そうなっていくと一つ心配しなければならないことが出てきます。音楽・映像の世界で既に生じている「国境での情報の遮断」がテキストの世界でも生
じてしまいかねないということです。
従来の書籍であれば、日本国外でのみ出版された書籍であっても、最悪並行輸入をすれば、日本国在住者でもこれを閲読することができます。しかし、オンラ
イン配信で提供される電子書籍においては、日本がその配信対象区域から外れるものについては、誰かが現行の著作権を侵害することなくして日本国在住者がこ
れを閲読することができなくなります。電子書籍が紙の書籍の補完物である間は「電子書籍が入手できなければ紙の書籍を読めばいいではないか」ということは
可能なのですが、今後出版コストの安い電子書籍オンリーの著書・論文等が増えてきた場合には、「知らぬは日本ばかりなり」ということが増えていく危険があ
ります。
著作権者の投下資本回収可能性を損なう可能性の乏しい著作物の利用をフェアユースとして禁止権の対象から外す広範なフェアユース規定を設けていただける
のであれば、日本国を配信対象区域から除外する電子書籍オンリーの作品については著作権者の許可無くオンラインで日本国内に転送する行為を禁止できないと
することはできなくもないのかもしれませんが、どうもそういう広範なフェアユース規定は新設していただけそうにありません。
そうであるならば、文化庁なり学術系諸団体なりは、アップル社やアマゾン社等に対し、電子書籍の配信対象区域を限定しないように、少なくとも諸外国で発行された電子書籍の配信対象区域から日本を除外しないように今から働きかけていくべきだということになります。
Posted by 小倉秀夫 at 11:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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