FairUse規定のある国とない国の違い
昨日は、著作権法学会の研究大会に出席し、懇親会にも出てきました。
しかし、未だにFairUse規定など必要ないという専門家もいるのだなあということが驚きです。FairUseがあるとないとでどういう違いが生ずるのか、理解できていないのかもしれません。
事業家が新しいビジネスモデルを思いついたが、それは第三者の著作権等と形式的に抵触する可能性が高い場合を考えてみると、よくわかると思うのです。
FairUse規定があれば、そのビジネスモデルをまず実施した上で、その過程で行われる著作物等の利用が「Fair」であることを著作権者等に向けて説得し、説得に失敗し訴訟を提起されたときは裁判所に向けてそれが「Fair」であることを主張することができます。
そして、その過程では、第三者の著作権等との折り合いをつけるために、ビジネスモデルなりそれを実現するためのソフトウェア等を微妙に修正していったりすることができますし、著作権者等に著作物利用料(相当金)を支払うための原資を、営業利益または増資によって確保することも可能です。
しかし、FairUse規定がないとこうはいきません。
このビジネスモデルを正当化する個別の権利制限規定が新設される前に、そのビジネスモデルを先行実施すると、ほぼ確実に敗訴することになります。従って、FairUse規定がある国の企業がそのビジネスモデルを先行実施し、デファクトスタンダードを築き上げている間、FairUse規定がない国の企業は手を拱いてみているしかありません。このため、個別の権利制限規定が新設され、そのビジネスモデルを国内で実施することが可能となったころには、海外でデファクトスタンダードを築き上げた企業が国内に参入してきた場合に、これと太刀打するのが非常に困難となってしまいます。
さらにいえば、新たなビジネスモデルをベンチャー企業や創造力のある学生等が考案したとしても、それを正当化する個別の権利制限規定を創設するように文化庁や国会議員に対してロビー活動を行う資金的余裕はないし、人的なコネクションもないのが普通です。そもそも、まだ実施されていない新たなビジネスモデルを実施可能とするために個別の権利制限規定を創設しようということに、文化庁や国会議員が賛同してくれるのか、冷静に考えると疑問です。結局、FairUse規定がある国の企業がそのビジネスモデルを実施して普及させた後に、これを国内でも実施することが可能とする権利制限規定が創設されるのが関の山といったところでしょう。
FairUse規定をこのまま設けずにいると、FairUse規定がある国の企業にこれからも先行者利益を攫われ続けるというお話でした。
Posted by 小倉秀夫 at 01:10 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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