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06/05/2010

iTunesクラウド

 iTunesのクラウド化なんて話が世の中にはあるようです。iTunes用の音楽データをノートパソコンに保管するとHDDが一杯になってしまうので、高速無線LANが確保されている場所で生活する限りにおいては、便利そうです。

 ただ、Appleがそういうサービスを開始するとしても、日本だけは爪弾きにされる可能性があります。日本には、悪名高き「カラオケ法理」があるからです。

 クラウド用のサーバコンピュータはApple社が管理支配しているのでしょうし、データの作成、アップロード、ダウンロード、再生に用いるソフトウェア(iTunes)もまたApple社が独自に開発し、提供するわけですし、もちろん、Apple社はそのクラウドを営利目的で提供するのでしょうから、MYUTA事件地裁判決の論理に従えば、著作権法の規律の観点からは、楽曲データをクラウドサーバに複製し、また、クラウドサーバからクライアントコンピュータに送信する主体はApple社だということになりそうです。すると、ユーザーが自分のiPhone等に転送する目的でiTunesクラウドにデータを蔵置したに過ぎないとしても、私的使用目的の抗弁は適用されないということになります。また、クラウドサーバからユーザーのiPhone、iPadに音楽データを転送する行為は、Apple社による自動公衆送信ということになります。そして、私的使用目的であっても、違法に送信可能化されている音楽ファイルをダウンロードして自己の所有する媒体に保存することは平成22年改正により違法とされましたから、iTunesクラウドから自分のiPhone等にデータを転送する行為は複製権侵害ということになります。

 もちろん、iTunesクラウドを開始する段階では、iTunes Storeから購入した音楽データに付いては、iTuneクラウドにこれを保存し、iTunesクラウドからiPhone等にデータを転送する行為についてまでは必要な権利処理を行うのだと思うのですが、問題は、iTunesクラウドサービス以前にiTunes Storeから購入した楽曲データ並びにユーザーがCD等からリッピングしてPC上に保存していた楽曲データです。特に、後者について、各著作権者、隣接権者から、もれなく許諾をとるというのは至難の業です。

 日本が世界に取り残されないためには、カラオケ法理の早期廃止が望まれる所以です。

Posted by 小倉秀夫 at 02:54 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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Commentaires

CDのリッピングデータについてはクラウドストレージ全般の問題に思われますが、用途をネット端末やスマートフォンのバックアップに限ると、これらが確実に含まれる「であろう」から問題になる、ということでしょうか?

他のクラウドストレージではなく特に「iTunesクラウド」だから問題になる部分があるのか、よくわかりません。

Rédigé par: まんさく | 6 juin 2010, 12:56:53

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