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10/26/2010

講談社の電子書籍に関する契約雛形

 池田信夫さんが、講談社の電子書籍に関する契約雛形に関し、次のようなことを言っています。

最大の問題は、上の第3条と第4条の講談社がデジタル化権を著者から奪って独占するという規定である。したがって他の出版社から電子出版したいという話があっても、著者は出すことができない。しかも講談社は、この本を電子出版すると約束していないので、彼らが出さないかぎりどこの電子書店でも売れない。

 でも、この種の契約書の作成を弁護士が受注したら、100人が100人その旨の条項を入れるのではないかと思います。日本法では、書籍を電子化した事業者に対して、版面権等の排他権を付与していないので、電子書籍化に伴い行った投下資本を回収する機会を維持するためには、契約で縛りを掛ける必要があるからです。

 それに、紙の書籍だって、同じ作品について、同一スタイルの書籍を同時に他の出版社から出版されて黙ってはいないと思うのですけどね(文庫本を出すときに出版社を変えるということはあるかもしれませんが、ハードカバーと文庫は市場的には別物ですから。)。

 さらにいうと、講談社が「所有権」を持つと記載されている「デジタル化の過程で発生した本デジタルコンテンツ」というのは、元の書籍をデジタル化した上で、電子書籍の規格にあわせて、読みやすいように適宜タグを埋め込んだデジタルデータのことを言っているように思われます。だとしたら、「所有権」という用語を使ったことは勇み足だとしても、そのデジタルデータに一種の独占権が自分のところにあるのだと契約書上で謳い上げるのは、それほど不思議なことではありません(まあ、謳い上げたからって、契約当事者ではない者にそこまでそれが通用するかという問題はありますが、謳い上げておかないと積極的債権侵害という議論もしにくいですし。)。

 ちなみに、英米法で言う「property」に近い概念として「所有権」という言葉を使う契約書(案)というのは、現実には結構見かけますので、日本法に基づく契約書としては適切さを欠くとは思いますが、まあ、よくある話といったところでしょう。

 で、「講談社は、この本を電子出版すると約束していないので、彼らが出さないかぎりどこの電子書店でも売れない」かどうかですが、それは、この条項だけ見てもわからないです。さらにいえば、契約期間が何年とされていて、著作者の側から更新拒絶ができるように成っているかにも大きくよってきます。これが短いと、作者の意に反して電子書籍の出版を講談社が拒んだ場合、契約の更新を拒絶されてしまうので、講談社が囲い込むだけ囲い込んでおいて電子書籍を出させないとすることは難しくなります。

 もちろん、更新期間の到来を待てない著作者は、電子書籍の出版時期・流通プラットフォームの選択等について、自らが主導権を握れるような条項を挿入するように、署名する前に要求すればよいだけの話です。出版社と著者の契約なんて、保険約款等と異なり、適宜修正が可能です。

 講談社とは敵対することはあっても仕事を依頼されることはないので肩をもつ筋合いはないのですが、あまりにもあまりにもだったので、言及してみました。

Posted by 小倉秀夫 at 08:28 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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