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02/17/2012

山本博司参議院議員のブログエントリーにコメントしてみた

 山本博司参議院議員のブログエントリーに次のようなコメントを投稿してみました。

 私は、中央大学法学部で著作権法のゼミを担当し、また、「著作権法コンメンタール」(東京布井出版)の編集代表を務めた弁護士です。

 違法コンテンツの氾濫を防ぐには、作家たちが著作権を行使すれば足りるのであって、出版社に著作隣接権を認める必要はありません。その行使を出版社に委ねたいという作家は、出版契約の存続期間中、著作権(またはその中の送信可能化権)を出版社に時限的に信託譲渡すれば足ります。

 出版社に隣接権を認めた場合、出版社には物理的な書籍の許諾しかしたくないと思っている作家たちが、出版社とは別に、自分の作品を電子書籍化することができなくなってしまいます。また、出版契約よりも隣接権の方が存続期間が長いので、出版契約終了後も、作家たちは、自分の作品を、他の出版社から出版することができなくなってしまいます。そしてこの弊害は、版面の持つ意味が大きい漫画においては、より重要な意味を持ちます。

 従いまして、出版社への隣接権の創設はご再考いただければ幸いです。

 出版社に隣接権を認めた場合、出版社との出版契約が切れた漫画は出版できなくなる危険があることを国会議員の方々にもご理解いただきたいところです。専有権を保持する人が多いと作品が世に出なくなる危険が高まることは、キャンディキャンディの惨状を見ればおわかりいただけるかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 08:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/14/2012

2012年 著作権法ゼミの受講生へのメッセージ

 2012年度の著作権法ゼミに先だって、読んでおくべき書籍等について説明します。ゼミを受講予定の人は参考にして下さい。

 まず基本書についてです。特に指定はしませんが、予備校系のものでないものを4月までに1回通読しておいて下さい。わからない部分があっても、途中で立ち止まらずに、まず通読してみて下さい。

 一応、下記の4冊をお薦めはしますが、これでなくても構いません。

     
  1. 島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門
    この分野では珍しく、比較的薄くて読みやすいと思います。なお、法律の教科書としては珍しく、電子書籍版もあります。
  2. 中山信弘「著作権法
    わが国における著作権法の第1人者の手によるもので、様々な論点をバランスよく解説されています。民法や会社法等で普通に基本書を読むことに違和感がない、法律学科の人にはしっくり来ると思います。
  3. 作花文雄「詳解著作権法[第4版]
    初学者が通読するのに向いているとは思いませんが、とにかく様々な論点に触れています。
  4. 岡村久道「著作権法
    この分野での第一線で活躍する弁護士によるもので、要件事実論に対する配慮がなされています

 また、著作権法は裁判例が面白いので、判例集も買い求めておいて下さい。

 一冊だけしか買わないのでしたら、別冊ジュリスト「著作権法判例百選(第4版)」を持っておけばいいと思います。

 また、通常の六法では著作権法はまだしも関連法規が掲載されていないので、知的財産権法専用の六法を持っておく必要があります。

 三省堂の「知的財産権六法」の2012年度版がおそらく3月末にでるので、それで事足りると思います。

 通常の六法の外に知的財産権法専用の六法を購入したくないという人は、国の法令データベース等から必要な法令をダウンロードして、自分が見やすいようにレイアウトした上でプリントアウトしてこれを持っておくというのも一つの考え方です。その場合、次の法令は漏れなくプリントアウトしておくようにして下さい。

  1. 著作権法
  2. 著作権法施行規則
  3. 著作権法施行令
  4. 旧著作権法
  5. 著作権等管理事業法
  6. 著作権等管理事業法施行規則
  7. 映画の盗撮の防止に関する法律
  8. プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律
  9. 万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律
  10. 連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律
  11. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
  12. 著作権に関する世界知的所有権機関条約
  13. 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約
  14. 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定)
  15. 万国著作権条約
  16. 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約

Posted by 小倉秀夫 at 04:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/08/2012

コンテンツの実質価格とコンテンツ産業総体の収入

 総体としてのコンテンツビジネスが栄えるためには、総体としての消費者のコンテンツに対する消費の総量を増加させていく必要があります。そのためには、1コンテンツあたりの実質価格を上昇させることが効果的なのでしょうか、下降させることが効果的なのでしょうか。

 コンテンツを収録したパッケージの小売価格を下げることは、1コンテンツの実質価格を下げる方法の1つですが、それが全てではありません。1つのコンテンツを満足のいくまで享受するのにかかる時間が、そのコンテンツの収録したパッケージの「物」としての商品寿命より顕著に短い場合、1つのパッケージを複数人で時間差で消費することにより、1コンテンツあたりの実質価格を引き下げることができます。その方法としては、団体での行動購入の他、パッケージのレンタルやパッケージの中古流通などがあります。

 消費者がコンテンツを消費するのに費消できる資金が一定だとすると、1コンテンツあたりの実質価格が上昇しようが下降しようが、消費者側からコンテンツビジネス側に移転する資金は一定ということになります。実際には、消費者に届くパッケージの個数が増えれば、パッケージの製産・流通コストの分、コンテンツ事業者側の取り分が減りますが、IT革命によりこのコストが下がっていくに連れて、このコストは次第に無視できるものとなっていきます。他方、1コンテンツあたりの実質価格が下降すると、消費者側はより多くの種類のコンテンツを享受できるようになります。

 すると、コンテンツビジネス側の総体としての収入を概ね維持しつつ、消費者の満足度を引き上げられるという意味において、1コンテンツあたりの実質価格を引き下げることには合理性があり、逆に、1コンテンツあたりの実質価格を引き上げるような改革は、コンテンツビジネス側の総体としての収入を引き上げないのに、消費者側の満足度を引き下げるという意味において最悪です。

 さらに問題なのは、1コンテンツあたりの実質価格を引き下げ、消費者が享受できるコンテンツの種類を減少させた場合に、当該類型のコンテンツを消費するという娯楽の満足度自体が下がり、結果として、消費者がその類型のコンテンツから離れていくおそれがあります。そうなった場合には、コンテンツビジネス側の総体としての収入自体が縮小していくこととなります。

 他方、1コンテンツあたりの実質価格が下がった場合、消費者は可処分所得の上昇に合わせてコンテンツ消費への支出を増やすことが容易になります。それは当該コンテンツ類型への消費者の満足度を高めるので、コンテンツビジネス側の総体としての収入自体を拡大することに繋がります。

 もちろん、個々の消費者が享受するコンテンツの総量には自ずと限界があるので、1コンテンツあたりの実質価格が下がりすぎると、コンテンツビジネス側の総体としての収入自体が縮小することになります。ただ、それは「これ以上値下げされたからって、これ以上購入してらんないよ」というレベルになってはじめて遭遇する事態であって、我が国では当面そういう域に達することはなさそうです。

 ですから、結論から言うと、レンタルを禁止すれば、中古品の売買を禁止すれば、コンテンツ産業の売り上げが向上するはずだ、というのは幻想であり、むしろ逆効果を生ずるのではないかと思う次第です。

Posted by 小倉秀夫 at 08:36 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/06/2012

「知的財産推進計画2012」の策定に向けた意見

 「知的財産推進計画2012」の策定に向けた意見募集がなされていたので、以下のとおり応募してみました。

戦略4 クール・ジャパン戦略

 商用コンテンツとして公表された著作物の活用が3年以上なされていないときも、裁定による著作物の利用を可能とすべきである。

 著作権法は文化の発展に寄与するために「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図」ることとしたのであるから、著作物を通した文化の発展を阻害する方向で著作権を行使することは本来許されるべきではない。

 しかし、現行著作権法の下では、「創造のサイクルの確保」とは全く別の理由で、コンテンツの再利用を阻むために著作権法が活用される例が散見される(例えば、世界的にも人気がある「キャンディ・キャンディ」はもはや利用困難である。)。「著作権」は純粋な私権ではなく、創作に対する投下資本の回収機会を保障するための競争制限規制である以上、創作物の活用を阻むために著作権が活用されるという本末転倒ぶりをこのまま放置しておくべきではない。

 したがって、3年使用されない商標が取消の対象となるのと同様に、3年以上活用されないコンテンツは、裁定による利用が可能となるような法改正が望まれる。

戦略3 最先端デジタル・ネットワーク戦略について

 著作権、著作隣接権等に関して、広く国民や団体(企業を含む。)から新たに創設を希望する権利制限規定についての案を募集し、これを法案化して定期的に閣議に提案する。

 検索エンジンに関する著作権の制限規定が立法されるまで長い年月が過ぎ、その間に米国企業が市場を支配してしまったことは記憶に新しいところである。このように、ITを駆使した新たなサービスに関しては、従前の立法のスピード感では、権利制限規定が制定されるころには、広汎なフェアユース規定を背景に先行投資をなし得る米国企業に太刀打ちができないのが実情である。

 もちろん、米国並みの広汎なフェアユース規定が置かれることが理想ではあるが、これまでの文化審議会での議論を見る限りにおいては、それも期待しがたい。

 であるならば、個別的制限規定の制定速度を速めることにより、新しいITビジネスが米国企業に牛耳られるのを回避するような制度設計をすべきである。

 そして、個々の権利制限規定についていえばこれを活用する人や企業は少数に留まる場合が少なくないこと、また、新しいITビジネスを始める企業の多くは人的及び金銭的な資源に恵まれていないこと等を考えると、彼らはロビー活動能力が低いので、文化庁の官僚に取捨選択権限を付与すると、権利制限規定の創設に関する陳情のほとんどが法案化されず、お蔵入りとされる蓋然性が高い(検索エンジンに関する権利制限規定も永らくお蔵入りとされていたのである。)。

 したがって、文化庁には全件法案化の義務を課し、取捨選択は内閣による政治判断に委ねるのが適当である。

戦略2 知財イノベーション競争戦略について

 難視聴地域に受信させる目的で東京キー局が地上波番組について衛星放送設備を用いて行っているサイマル放送を、難視聴地域であるか否かにかかわらず、日本全国で受信できるようにする。

 日本全国にある地方テレビ局は、そのほとんどの時間を、東京キー局で放送された番組を、同時又は異時に再放送することに終始しているのが実情である。これは、衛星放送やインターネットなどの技術がなかった時代には合理性があったが、現在では合理性を欠いている。のみならず、当該地域を放送対象地域とする系列局がないキー局の放送は視聴できない、地方テレビ局が希に自主制作番組(関西の準キー局を除けば、概ね1割前後である)を放送している間はキー局の放送を視聴できない、キー局で放送されている番組を放送していてもなぜか1週遅れで放送されている場合がある等の不便が存在している。

 考えてみれば、貴重な電波使用権を与えられている地方テレビ局が、その放送時間のほとんどを東京キー局のテレビ番組の再放送に充てているということこそが不合理である。衛星放送やケーブルテレビ等によって日本全国どこにいても東京キー局のテレビ番組の全てを時間差なしに視聴することが出来るとなれば、地方テレビ局は、自主制作番組を制作して放送しなければならないこととなる(東京キー局の放送を受信可能な地域を放送対象地域としている千葉テレビやテレビ埼玉、東京MX等は実際そうしている。)。それは、テレビ番組という著作物を新たに創作して東京キー局と競争することを促進するとともに、実演家等のさらなる活用を促すことになるのである。

 もちろん、東京キー局の制作した番組を右から左に垂れ流すだけで高収益を挙げることができている地方テレビ局は猛反対することとは思うが、放送コンテンツにおける競争を促進するためには、上記施策が有意義である。

戦略4 クールジャパン戦略

 J-POPの歌詞に関するデータベースを作成し、世界に向けて公表する。

 J-POPをさらに世界中で普及させるために、「言葉の壁」を取り除く工夫が必要である。そのための施策として、J-POPの歌詞の日本語表記、ローマ字表記、英訳を検索、表示可能なデータベースを国として制作し、または、そのようなデータベースを制作する企業・団体等を資金面及び法律面から支援すべきである。

戦略4 クール・ジャパン戦略

 商用コンテンツとして公表された著作物の活用が3年以上なされていないときも、裁定による著作物の利用を可能とすべきである。

 著作権法は文化の発展に寄与するために「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図」ることとしたのであるから、著作物を通した文化の発展を阻害する方向で著作権を行使することは本来許されるべきではない。

 しかし、現行著作権法の下では、「創造のサイクルの確保」とは全く別の理由で、コンテンツの再利用を阻むために著作権法が活用される例が散見される(例えば、世界的にも人気がある「キャンディ・キャンディ」はもはや利用困難である。)。「著作権」は純粋な私権ではなく、創作に対する投下資本の回収機会を保障するための競争制限規制である以上、創作物の活用を阻むために著作権が活用されるという本末転倒ぶりをこのまま放置しておくべきではない。

 したがって、3年使用されない商標が取消の対象となるのと同様に、3年以上活用されないコンテンツは、裁定による利用が可能となるような法改正が望まれる。

戦略3 最先端デジタル・ネットワーク戦略

 著作権法上の「公衆」の定義を見直す。

 まねきTV事件及びロクラクⅡ事件の最高裁判決により、契約により関係性が築かれる相手方への情報の送信は公衆に対する送信とされ、広く著作権法により規制されることとなってしまった。

 しかし、このような解釈は、オンラインストレージサーバやクラウド事業の国内展開を不可能としかねず、わが国のデジタルネットワーク産業を破壊しかねない。したがって、「公衆」を「特定/不特定を問わず、多数の者」とするなり、「不特定…の者」から「当該著作物の提供又は提示に関して契約関係を結んだ者」を除外する等の措置を早急に講ずる必要がある。

Posted by 小倉秀夫 at 12:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)