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07/10/2013

パブリシティ権侵害と差止め請求

 ピンクレディ事件最高裁判決は、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合に、人格権に由来する「肖像等をみだりに利用されない権利」の一態様として、その顧客吸引力を排他的に利用する権利があるとして、最高裁レベルで初めて「パブリシティ権」を認めました。とはいえ、同再々判決は、肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるとして、具体的には、肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とすると言える場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当であると判示しました。つまり、最高裁は、人格権の一態様であるパブリシティ権と、基本的人権の中核をなす表現の自由との調和を図る観点から、他人の肖像等を無断で使用する行為が不法行為法上違法となる場合を上記3類型に限定したわけです。

 では、この3類型のいずれかに合致することを理由として出版物の出版及び販売等の差止めを命ずることはできるでしょうか。

 「お金を払えばいい」ということと比べて、「その表現を公衆に流布すること自体が禁止される」ということは、表現の自由を制約する度合いが大きいと言えます。したがって、「人格権の一態様であるパブリシティ権と、基本的人権の中核をなす表現の自由との調和」という意味で言えば、「その表現を公衆に流布すること自体が禁止される」場合というのは、それを放置することによりパブリシティ権者の被る不利益がより大きい場合に限られると考えるのが素直です。

 実際、最判平成14年9月24日(石に泳ぐ魚事件最高裁判決)は、「人格的価値を侵害された者は、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる」としつつ、「どのような場合に侵害行為の差止めが認められるかは、侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ、予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべきである。そして、侵害行為が明らかに予想され、その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり、かつ、その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきである」と判示しており、「人格権侵害」即「差止請求認容」という単純なルールを否定しています。

 では、パブリシティ権侵害があきらかに予想される場合、その侵害行為によって被害者は「重大な損失を受ける恐れがあり」、かつ、「その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められる」のでしょうか。

 ピンクレディ事件最高裁判決においては、パブリティ権は、「肖像等それ自体の商業的価値に基づくもの」であると位置づけられています。商業的価値に基づく権利が侵害されても、その被害者が受ける損失は、金銭賠償等により事後的に回復を図ることができるのが通常です。名誉毀損の場合、名誉毀損行為により社会的評価が低下したことによる不利益が金銭賠償により完全に回復するかといえば回復しないので名誉毀損表現を含む出版物等について差止め請求を認容することは上記差止めの要件を満たすと言えると思いますが、たとえば、芸能人の写真が商業誌にて無断で使用されていたという場合に、金銭賠償により回復できない不利益が生じているのかといえば、多分に疑問です。

 これに対し、肖像等が商品等の広告として使用されている場合には、その商品に対する評価がその著名人の評価に結びつきかねないため、金銭賠償によっては回復し得ない不利益が生ずるかもしれません。商品等の差別化を図る目的で肖像等が商品等に付される場合であっても、商品等の種類によっては、その商品のイメージがその著名人の評価に結びつきかねないため、金銭賠償によっては回復し得ない不利益が生ずるかもしれません。ただ、そのような特段の事情が主張・立証されない場合には、不法行為法上違法となる程度にパブリシティ権が侵害されたというだけで、出版の差止め等を認容するのは、表現の自由を過剰に規制するものであって、許されないというべきではないかと思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 07:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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