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08/25/2015

同人誌の表紙絵

同人誌の写真をネットで公開することについて法律的にどのような問題が生じてくるのかについて、AVANCE LEGAL GROUP LPCの山岸純弁護士と児玉政己弁護士に聞いたニコニコニュース内の記事が反響を呼んでいます。その真偽について検討してみましょう。

 両弁護士によれば、

この種の同人誌は、既存のマンガなどのキャラクターの特徴が忠実に再現されていてこそ購買意欲が生じると言われていますので、『同人誌の製作者』のオリジナリティはかえって購買者にとって邪魔になるだけであり、このようなオリジナリティの発現はおのずと否定される場合が多くなるかと思います。とすると、“オリジナリティが欠ける”=“著作権が発生しない”ということになりますので、『二次創作系同人誌』の表紙については、無断掲載されても、『同人誌の製作者』への著作権侵害の可能性は低くなると考えることができるわけです

とのことです。

 どうも、同人誌というものを誤解されているような気がしてなりません。二次創作系の同人誌においては、既存の漫画のキャラクターの特徴を押さえつつ、各同人作者の個性を反映させたり、ストーリーにあわせたり、さらにデフォルメしたり、むしろデフォルメを弱めたりして、元のキャラクターとは明らかに異なるキャラクター絵を生み出す方がむしろ一般的です。ピカチュウすらHに変身させるのが同人誌です。既存の漫画のキャラクターに同人作家の創作性が加えられた新たなキャラクターが表紙に登場することは何ら不思議ではありません。

 さらに言えば、キャラクターの描き方自体は元の漫画のキャラクターに忠実だったとしても、表紙絵における構図、各キャラクターのポーズやその衣装の組み合わせ、背景等の描き方にその同人作家の個性が反映されていれば、表紙絵自体、二次的著作物たりうると言うことになります。

 記事では、上記両弁護士の見解から、

『二次創作系同人誌』は、そのほとんどが“著作権が発生しない”。よって、写真をネットにアップすることは法的には問題ないようだ。

との結論を導きます。これはとんでもない間違いです。同人誌の表紙絵が二次的著作物にあたるかどうかに関わりなく、元の漫画のキャラクターの表現上の本質的特徴を直接感得できるものである限り、これをウェブ上にアップロードすることは、原則として、元の漫画の著作権を侵害することとなります。二次的著作物の利用についても、原作品の著作権者は権利行使をなし得るのです(著作権法27条)

 さらに、同記事では、両弁護士の発言として、以下のように続けます。

例えば、写真全体に表紙が納まるように撮影する場合などは、表紙の「複製」と評価される可能性が高く、「著作権」侵害となりますが、表紙だけではなく、ほかの被写体(同人誌を持って立つ購買者、東京ビックサイトの外観、そのほかの背景等)とともに撮影されている場合には、当該写真は表紙の「複製」と評価することは難しくなるものと考えられます。

 しかし、表紙が他の被写体とともに撮影されていようとも、その表紙の表現上の本質的特徴部分がその写真から直接感得できる限り、その写真はその表紙の複製物ないし二次的著作物たりうるのです。もちろん、その表現上の本質的特徴部分を直接感得できない程度に「引き」で写真撮影をすれば「複製」に当たらないこととなる場合もあるとは思いますが、それはむしろ、小さくしか取れていないことによるものであって、他の被写体とともに撮影されていることによって生じた現象ではありません。

 あとは、著作権法30条以下の権利制限規定に当たるかどうかの問題です。コミケ会場等の写真を撮る際に、自分と無関係の参加者が持っていた同人誌の表紙等が写り込んだと言うことであれば、著作権法30条の2が適用される可能性がありますが、撮影時に敢えて同人誌をもって表紙を前面に掲げて写真を撮ったということですと、同条の適用は難しいのではないかという気がします。この場合、当該同人誌の表紙絵は、「写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難である」とは言いがたいからです(仲間を撮影する際には、「その同人誌の表紙絵が写り込むとまずいので、一旦下に置いて下さい云々と指示するのは大変ではありませんので。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle |

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