演歌の復権はあり得るのか
「自民、民主、公明など超党派の有志議員が2日、演歌や歌謡曲を支援する議員連盟「演歌・歌謡曲を応援する国会議員の会」の発起人会合を国会内で開いた。」というニュースが今月初め話題となりました。しかし、議員連盟を作って何とかなる問題でしょうか。
ここで、まず演歌が置かれた状況を見てみましょう。
Joysoundが発表している年代別カラオケランキングをみてみましょう。2014年度のそれをみると、10代から30代まで、トップ20に、演歌は入ってきません。40代でようやく石川さゆりの「天城越え」がランクインします。50代だと、石川さゆりの「天城越え」と「津軽海峡・冬景色」が入ります。坂本冬美の「また君に恋してる」を演歌に含めるべきかは少し迷います。60代になるとさすがに演歌が多く歌われているようで、福田こうへい「南部蝉しぐれ」「峠越え」、石川さゆりの「天城越え」「津軽海峡・冬景色」、吉幾三「酒よ」、大川栄策「さざんかの宿」、石原裕次郎「北の旅人」、秋元順子「愛のままで…」、美空ひばり「みだれ髪」、川中美幸「ふたり酒」、テレサ・テン「つぐない」「時の流れに身をまかせ」、三山ひろし「あやめ雨情」、渥美二郎「夢追い酒」、そして坂本冬美の「また君に恋してる」がランクインします。2015年も演歌に関してほぼ同じようなもので、60代に関して、さらに牧村三枝子「みちづれ」、小林旭「昔の名前で出ています」、平和勝次とダークホース「宗右衛門町ブルース」がランクインし、その代わり「峠越え」や「あやめ雨情」がランク外に落ちているに留まります。
これを見てわかることは、もはや演歌は、10代、20代に見放されているだけではなく、30代、40代、50代にも見放されていると言うことです。そして、60代が好んで歌う演歌のうち、比較的最近リリースされたのは三山ひろし「あやめ雨情」(2014年)、福田こうへい「南部蝉しぐれ」(2012年)「峠越え」(2014年)、秋元順子「愛のままで…」(2008年)くらいなものです。2008年を「最近」というのもどうかと思いますが。このくらいの年代になると、もはや新しい曲を聴いてレパートリーに加える意欲すらなくなっていくと言えそうです。
先ほどの記事に依れば、「今後、議連では地方のカラオケ大会などに歌手を招いて演歌や歌謡曲に直接触れる機会を設けて愛好者の裾野を広げるなど、振興策を検討する。」とのことです。しかし、演歌を好んで聴いていると思われる60代ですら、受け入れられる新譜が年に1つあるか否かというのが実情です。そして、40代、50代に関しては、昔ながらのヒット曲を知らないってわけではないものの(子どものころに音楽番組を観ていればそのころに聞いていますから)、敢えて歌う気にならないというのが実情です。このような状況下で、地方のカラオケ大会で歌手本人が出てきて歌ってくれたらその曲を聴き、歌うようになるかっていうと、絶望的な感じがします。
では、50代以下の人々に演歌に親しんでもらうためにはどうしたら良いのでしょうか。単にCDが売れればいいと言うことであれば、小林幸子のように歌手それ自体のキャラクターを若い世代に浸透させるというのもありなのかもしれません。しかし、普通の若者は、小林幸子のことは知っていても、小林幸子の持ち歌のことは知らないのであって、そういう歌手のキャラクター重視の売り方は、演歌自体の復権には繋がらないような気がします。
やはり、ここは、50代以下の音楽ファンがなぜ演歌を聴こうとも歌おうともしないのかを知るところから始める必要があります。
私自身、演歌って年一回、紅白歌合戦の時に聴くくらいですのでその理由は定かにはわかりかねますが、その範囲でいえば、1つは歌詞にインパクトがないということはいえるのではないかと思います。60代以上には受け入れられた「あやめ雨情」や「南部蝉しぐれ」の歌詞を見ても、引っかかる言い回しもなく、はっとするストーリー展開もありません。もちろん、50代には受け入れられている「天城越え」はその点に関してはクリアできているとは思いますが、そこで描かれている女性像が若い世代の共感を呼ぶものなのかというと、40代の私でも引いてしまうかなという気がしなくもありません。演歌関係者は自分たちこそ「日本人の心」を歌っているという自負があり、歌詞には自信を持っているのかもしれませんが、平均的な「日本人の心」自体、社旗構造の変化に沿って変わっていくものなのです。もはや、既に別れた元彼のために、どうせ着てもらえないことを知りながら、寒さをこらえてセーターを編み続ける時代ではないのです。
あと、演歌の場合、ベースやドラムなどのリズムセクションが弱いかなという印象派あります。伴奏を管弦楽団にやらせてしまうと、リズム感不足というクラッシックの欠点をそのまま引きずってしまうのかなあとは思ってしまいます。さらにいえば、ハモらない、韻は踏まない、メロディ展開に意外性がないなど、いろいろな点は指摘できそうです。
まあ、もっとも、マーケッティング手法を駆使して若い世代にも受け入れられる楽曲を作っていった場合に、それはもはや「演歌」なのだろうか、という問題は生ずるのですが。
Posted by 小倉秀夫 at 05:38 AM dans musique | Permalink
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Commentaires
氷川きよしはデビュー以来、16年間、ほぼ毎年シングル、アルバム、dvd 合計5枚出して、オリコン総合チャート(演歌・歌謡曲チャートではない)で2位あたりに入っているんだが。
コンサートツアーも毎回、売り切れ。明治座1ヶ月公演も武道館公演も満席。
きよしは忙しすぎるから、政治家に引っ張り回されるのは迷惑だけどね。
Rédigé par: kiyoshidayo | 27 mars 2016 à 14:33:55