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05/06/2016

鳥獣戯画のアニメ化

 スタジオジブリが、「鳥獣戯画」をアニメーション化した作品を発表したことに関し、唐津真美弁護士の見解が弁護士ドットコムニュースに掲載されています。

 その中で気になるのは、以下の部分です。

本件の場合、鳥獣戯画の作者は、800年を経て、生き生きと動き出した動物達を見たら、むしろ喜ぶのではないでしょうか。ジブリが作成した鳥獣戯画のアニメ―ションは、鳥獣戯画の作者の著作者人格権を侵害するものではないと思います

 著作者人格権は著作者の相続人に相続されず著作者が死亡した時点で消滅しますが、著作権法は、「著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。」として、著作者が生きていたとすれば著作者人格権の侵害となるであろう行為を原則禁止します。ただし、著作者が死亡している以上同意を取りに行くことが不可能なので、「ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。」という但し書きを置いています。この規定に違反した行為については、その遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹)が差止請求権及び名誉回復等措置請求権を民事的に行使できる(116条1項)他、500万円以下の罰金に処されることになります(120条)。120条の罰則規定については非親告罪となっているため、著作者が何百年たっても、著作者が生きていたならば著作者人格権となるだろう行為を行うと刑事罰の対象となり得るのです。

 おそらく唐津弁護士は、鳥獣戯画のアニメーション化が、その著作者が生きていたとしたら同一性保持権侵害行為にあたるであろう行為と言えるかどうかという観点から、上記のような当てはめをしたのだろうと思います。ただ、「改変された結果生まれた作品が質の高い作品であるから、元の著作物の著作者もむしろ喜ぶはずであり、したがって著作者人格権を侵害するものとはならない」という思考過程を採用したのだとすれば、いかがなものかという疑問が生じます。改変の結果、元の作品の著作者の意図やクリエイティビティに誤解を生じさせかねないものであれば、改変された結果生まれた作品自体は大変質の高いものであったとしても、同一性保持権侵害となり得るからです。

 さらにいえば、この鳥獣戯画のアニメーション化のケースでは、もう一つ重要な論点を検討するべきでした。それは、「著作権法上『著作物』として取り扱われるのは、一定の時期以降に創作されたものに限られるのか、その場合、いつ以降に創作されたものに限られるのか」という問題です。

 ここでは、現行著作権法の附則においては、「改正後の著作権法(以下「新法」という。)中著作権に関する規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法(以下「旧法」という。)による著作権の全部が消滅している著作物については、適用しない。」(附則2条1項)、「この法律の施行の際現に旧法による著作権の一部が消滅している著作物については、新法中これに相当する著作権に関する規定は、適用しない。」(附則2条2項)と定められているのに対し、旧著作権法の附則においては「本法施行前ニ著作権ノ消滅セサル著作物ハ本法施行ノ日ヨリ本法ノ保護ヲ享有ス」(47条)と定められているのをどう見るべきかということが問題となります。

 旧著作権法の施行日である明治32 (1899) 年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物については、旧著作権法による保護を受けることができず、したがって旧著作権法上の著作者人格権をも認められてこなかったのです。したがって、旧著作権法施行時は、「他人ノ著作物ヲ発行又ハ興行スル場合ニ於テハ著作者ノ死後ハ著作権ノ消滅シタル後ト雖モ其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ変更ヲ加ヘテ著作者ノ意ヲ害シ又ハ其ノ題号ヲ改メ若ハ著作者ノ氏名称号ヲ変更若ハ隠匿スルコトヲ得ス」(18条2項)があったにも関わらず、明治32年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物については、「其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ変更ヲ加ヘテ著作者ノ意ヲ害シ」ても良かったのです。それが、現行著作権法の施行とともに、明治32年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物についても、明治32年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物についても、現行著作権法の下で創作された著作物と同様の規定が適用され、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。」ということになるのかということが問題となるのです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)