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08/01/2016

ポケストップの削除請求

 PokémonGoが日本でもサービスを開始するや、「ポケストップ」に多くの人が集まる現象が早速生じています。そして、そのような事態を受けて、最高裁判所や、様々な行政機関や、大学その他が自己の施設ないし敷地から「ポケストップ」を削除するようにとの要請がPokémonGoの運営会社になされているようです。

しかし、施設や敷地の占有者ないし所有者に、その施設ないし敷地から「ポケストップ」を削除するように求める権利はあるのでしょうか。

 「ポケストップ」とは、「PokémonGo」において、ゲームを進める上で最も重要なアイテムを入手するスポットであり、アイテムを入手する為には、ユーザーは、ポケストップが設置されている場所として設定されているところに物理的に近づく必要があります。もっとも、ポケストップは、現実空間と連動した仮想空間上に設置されているに過ぎず、「PokémonGo」上の仮想空間上ポケストップが置かれている場所と紐付けられている現実空間上の場所には何も置かれていません。

 では、現実空間と連動した仮想空間上に「ポケストップ」のような仮想の設備を設置することは、当該仮想空間と連動した現実空間において、仮想空間上の上記仮想設備の設置箇所と紐付けられた場所の設備または敷地の所有者の所有権ないし占有者の占有権を侵害することになるのでしょうか。

 一般に所有権は、目的物たる有体物に対する排他的支配権とされています。しかし、通説的見解によると有体物の所有者が排他性を有するのは、当該目的物を物理的に排他的に利用することだけで、自己の所有物を第三者が仮想的に利用することまでは排除する権限を持ちません。したがって、自己の執筆する小説の中でゴジラに大阪城を破壊させるのに、大阪城の所有者の許諾を得ておく必要はないのです。したがって、自己の所有又は占有する施設または敷地に対応する仮想空間上に「ポケストップ」が設置されたとしても、所有権又は占有権に基づく妨害排除請求権として、その削除を求めることはできないと解するのが素直です。

 もっとも、自己の所有又は占有する施設又は敷地上に「ポケストップ」が設置されてしまうと、専らアイテムを取得する目的で「PokémonGo」の利用者が当該施設または敷地に立ち入るユーザーが少なからず現れることになり、当該施設等の円滑な運用が妨げられる可能性があります。これを阻止する為に、当該施設等から「ポケストップ」を削除するように運営会社に求めることは法的に可能でしょうか。

 そもそも一般人が立ち入ることが禁止されている場所に「アイテム」取得目的で立ち入ることは刑事法的には住居侵入罪に当たるとともに、民事法的には当該施設又は敷地についての所有権ないし占有権を侵害する行為にあたります。また、当該施設等の管理者において特定の目的での当該施設等への立ち入りを許容している場合に、当該目的以外の目的で当該施設等に立ち入ることもまた、刑事法的には住居侵入罪に当たるとともに、民事法的には当該施設又は敷地についての所有権ないし占有権を侵害する行為にあたります。したがって、一般人が立ち入ることの予定されている施設等においても、専らアイテム取得目的で立ち入ることを禁止したり、中に立ち入ってアイテム取得行為をすることを禁止したりすることは許されます。問題は、当該施設等内に対応する仮想空間上に「ポケストップ」を設置することが、上記違法な立ち入り行為を教唆するものとして、差し止め請求に対象となり得るかということです。

 そして、ここでは、そもそも「ポケストップ」の設置行為は違法な立ち入り行為の「教唆」にあたるのかということと、さらに、仮に「教唆」にあたるとして、「教唆」行為自体の差し止めを求めることができるのかということの双方が問題となります。

 前者に関して言えば、現実空間における特定の施設等が、フィクションにおける重要な施設と紐付けられることで、「聖地巡礼」のような形で人を集める効果を持つことがあったわけで、その結果当該施設等の円滑な運用が妨げられたことにうんざりした施設管理者が「聖地巡礼」目的での立ち入りを禁止したときに、さらに、自己の所有又は占有する特定の施設等をフィクションにおける重要な施設と紐付けることが違法な立ち入り行為の「教唆」にあたると言いうるのかということにも繋がっていきます。フィクションを構成するものとしては、その受け手が現実空間における法的なルールを遵守することをある程度期待することは許されると思いますので、当該施設の管理者の意思に反した違法な立ち入りまで教唆したとは言えないとして、「教唆」にはあたらないとするのがバランスがとれているのではないかと思います。

 仮にこれが「教唆」にあたるとした場合には、「ポケストップ」の設置それ自体は直接的には特定の施設等についての所有権ないし占有権を侵害するものではないのに、当該施設等についての所有権ないし占有権に基づいて差し止めを求めることができるのかということが問題となります。これは、特定の態様での著作権等の侵害行為を教唆又は幇助する行為自体について著作権者等が差止請求をすることが許されるのかという問題と構造は一緒であり、これについては、下級審裁判例は東西で分かれています。

 さあ、裁判所は、いかなる判断をするのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 04:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)