リーチサイトについての取材(ロングバージョン)
リーチサイト問題について、一昨日共同通信から取材があり、一昨日から昨日にかけてこれに応じていました。その結果を盛り込んだ記事が共同通信から各メディアに送られているとは思います。
もっとも、紙面の都合上、非常に圧縮された形で私の見解が掲載されたに留まりますので、備忘録的な意味もかねて、ロングバージョンをこちらに記載しておこうと思います(Qについては、適宜要約しています。)。
【Q】リーチサイトそのものを規制するべきかどうか。
【A】現行法においても、他人の犯罪行為を違法に幇助した者は従犯として処罰の対象となっており、著作権侵害罪を幇助したものについても同様である。著作権侵害罪の従犯とならないリーチサイトについてまで新規立法で規制することは、バランスを欠くこととなる。
【Q】規制するならどういう形がふさわしいか。
【A】仮にリーチサイトを規制する新規立法を行う場合、国内在住者の知る権利を不当に害しないように、無償でまたは所定の対価を支払えば誰でも正規に提示・提供を受けることができる著作物等をアップロードしているサイトにリンクしている場合等に限定するべきであろう。また、リンク先が違法アップロードサイトであることについて確定的故意を要することにことも必要である(リンクを貼るにあたって、権利処理の有無についてリンク先に照会する義務を負わせることは適切でないからである。)。また、サーバ所在国において著作物等の無許諾アップロードが不可罰又は微罪である場合に、そこに国内からリンクを貼る行為に重い刑を科すことができるようにすることは、主犯と従犯との刑罰のバランスという観点からして不適切である。
【Q】日本人向けリーチサイトが多数存在する現状についてどう思うか。
【A】元来遵法精神の高い日本人のうちそれほど多くの人がリーチサイトを利用して違法アップロードされたデータにアクセスしているとすれば、それは、コンテンツを正規に提供するビジネスの側が様々なニーズに応えられていないということだと思う。また、動画については、違法にアップロードされたものをダウンロードする行為自体を刑事罰の対象とする立法が権利者団体のロビー活動の成果としてなされたが、それが全く無意味であったことを意味すると思う。
【Q】今回、大阪府警などの合同捜査本部が著作権法違反容疑でリーチサイトの運営者らを捜査している件について、どう考えるか。
【A】他人の著作物を違法にアップロードしているサイトにリンクを貼ることが著作権侵害行為の違法な幇助となるか否かについては法律解釈の争いがある状況下において、刑事事件として処理をすることは適切さを欠いている。刑事裁判の場合、訴追側と弁護側とで法律論争をする局面が極めて限られている上、これを裁くのが、知的財産権専門部の裁判官ではなく、(知的財産権については素人である)刑事部の裁判官だからである。
Posted by 小倉秀夫 at 11:07 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | Permalink
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