10/04/2018

シラバス変更

明治で担当している法情報社会Bの授業、ちょっとシラバスを変更することにしました。まあ、ブロッキング問題に言及する回を設定するだけですが。
































































回  テーマ 
第1回 IT社会の発展史
第2回 フェアユース
第3回 利用規約
第4回 CLOUD
第5回 フリーソフトウェア
第6回 大学と情報法
第7回 ヴォーカロイド
第8回 ポイント・仮想通貨
第9回 ブロッキング問題
第10回 政治と選挙と情報法
第11回 AIと法律
第12回 風評被害
第13回 IT犯罪
第14回 発信者情報開示をめぐる最前線

Posted by 小倉秀夫 at 12:21 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0)

04/15/2018

政府解釈の意味

 慶應義塾大学の中村伊知哉先生によると、海賊版サイトブロッキング問題について、知財本部・犯罪対策閣僚会議は、下記の方針を決めたとのことです。


1.法制度を整備する。次期通常国会を目指しブロッキングの法的根拠となる制度を整備する。リーチサイト対策も進める。

2.それまでの緊急避難としてのブロッキングについて、政府は「違法性が阻却される」との解釈を示す。

3.これを受けてISP+コンテンツら民間の対応を進めるタスクフォースを作る。


 この中で一番分からないのは2.です。

 緊急避難という制度は古くから刑法に組み込まれているものであり、その解釈については学説・判例が既に積み重なっています。司法部門は通常、既存の最高裁判例や下級審裁判例、そして通説的理解に沿って、認定事実に法を当てはめて結論を導きます。したがって、ISPが海賊版サイトへのアクセスをブロッキングすることについて刑法上の「緊急避難」が成立するかどうかは、緊急避難に関する判例・通説に従って判断されるわけです。

 では、政府がISPが海賊版サイトへのアクセスをブロッキングすることについて刑法上の「緊急避難」が成立するので「違法性が阻却される」との解釈を示すことに何の意味があるのでしょうか。

 緊急避難制度を創設する際の起草者の意思や国会での議論であれば、立法者意思が示されたという意味で、解釈論上の重要な参考資料となります。しかし、緊急避難制度は遥か昔に創設された制度ですので、今更政府が緊急避難についての法解釈を示したところで、それが立法者意思を示したものでないことは明らかです。

 日本国憲法は三権分立制度を採用しており、裁判所は、法令を解釈して、これを認定事実に当てはめる過程において、行政機関の指示や解釈に従う義務を負いません。したがって、海賊版サイトへのアクセスのブロッキングについては違法性が阻却されるという解釈を政府が示したとしても、その解釈を採用する必要が裁判所にはないのです。

 「過去の判例・裁判例や学説を検討した結果、海賊版サイトへのアクセスのブロッキングについては、緊急避難が成立し違法性が阻却されるという判断を裁判所が下す可能性が高い」という分析を政府機関がしてみせるというのはありかも知れません。ただ、知財本部・犯罪対策閣僚会議の構成メンバーを見る限り、そのような分析を行うには力不足の感が否めません。刑法学者や刑事部回り中心のベテラン裁判官、刑事弁護で定評のある弁護士などがメンバーに含まれていないからです。

 あるいは、電気通信事業法違反(通信の秘密違反)の罪については、警察に捜査をさせず、検察に起訴をさせないという、政府としての態度表明なのかもしれません。ただ、警察も検察も行政機関の1つとは言え、準司法機関たる性質を有するので、従前の判例通説に従えば犯罪となるべき行為について捜査・起訴をしないように政府が介入してみせることが適切なのかという問題を生じます。

 中村先生は、上記指針をもって、「ブロッキングについて政府は法的リスクを負い、ゴーサインを出す。」と評価するのですが、ブロッキングを許せないとする市民からの刑事告発に応じて警察が捜査を開始し、検察がこれを起訴しようとした場合に、政府として指揮権発動などの強硬手段を採用する覚悟まであるのかがよくわかりません。実際に起訴されてしまえば、ブロッキングに関与したISPの担当者は、「政府解釈を信じたのだ」という主張をしても無意味です。法令の解釈を間違って、自己の行為は適法であると信じていたとしても、裁判所がその行為を違法だと判断したら、故意責任は阻却されないからです。その場合に、政府はどのように責任をとるのでしょうか。

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11/02/2017

リーチサイトと違法私的ダウンロード

 リーチサイトが行っていることって、既に送信可能化が行われているコンテンツについて、公衆が送信要求をする機会を増やすことでしかありません。したがって、送信可能化を客観的に容易にしたといえないことは明らかです。では、公衆が送信要求をする機会を増やし、その結果、自動公衆送信がなされる機会を増大させた(あるいは、実際に自動公衆送信がなされる回数を増大させた)ことは、自動公衆送信を幇助したことにあたるでしょうか。

 自動公衆送信の回数を増大させる行為のうち、自らがダウンローダーとして送信要求を行う行為については、自動公衆送信の教唆又は幇助して扱うのではなく、送信されてきたデータをユーザー側の記録媒体に複製する行為の一部を複製権侵害(私的証目的がない場合)ないし違法コンテンツ私的ダウンロード罪(119条3項)として取り扱うというのが、現行の著作権法の基本的な枠組みです。

 そうだとすると、リーチサイトを運営することによって違法コンテンツについて公衆が送信要求する機会を増やしたことをもって自動公衆送信の幇助とするのは、上記基本枠組みとの関係で唐突という感が否めません。

 どうしてもリーチサイトを刑事罰の対象としたいのであれば、むしろ、公衆が違法コンテンツ私的ダウンロード罪を犯すことを客観的に容易にしたということで、違法コンテンツ私的ダウンロード罪の幇助とする方がまだいいのではないかと思います。この場合、当該リーチサイトを経由して私的ダウンロードをした人(正犯)が119条3項の要件を具備していること並びにそのことについてリーチサイトの運営者に故意があることが必要となるので、要件が大分絞られるからです。

 とはいえ、違法コンテンツの私的ダウンロードは、民事的にも違法とされているのですから、権利者たちは、まず民事訴訟を提起することにより、違法コンテンツにリンクを貼ることが違法私的ダウンロードの幇助になるのか否かについて、知財部の判断を仰ぐべきだったのではないかと思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:21 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/01/2017

リーチサイトについての取材(ロングバージョン)

 リーチサイト問題について、一昨日共同通信から取材があり、一昨日から昨日にかけてこれに応じていました。その結果を盛り込んだ記事が共同通信から各メディアに送られているとは思います。

 もっとも、紙面の都合上、非常に圧縮された形で私の見解が掲載されたに留まりますので、備忘録的な意味もかねて、ロングバージョンをこちらに記載しておこうと思います(Qについては、適宜要約しています。)。

【Q】リーチサイトそのものを規制するべきかどうか。

【A】現行法においても、他人の犯罪行為を違法に幇助した者は従犯として処罰の対象となっており、著作権侵害罪を幇助したものについても同様である。著作権侵害罪の従犯とならないリーチサイトについてまで新規立法で規制することは、バランスを欠くこととなる。

【Q】規制するならどういう形がふさわしいか。

【A】仮にリーチサイトを規制する新規立法を行う場合、国内在住者の知る権利を不当に害しないように、無償でまたは所定の対価を支払えば誰でも正規に提示・提供を受けることができる著作物等をアップロードしているサイトにリンクしている場合等に限定するべきであろう。また、リンク先が違法アップロードサイトであることについて確定的故意を要することにことも必要である(リンクを貼るにあたって、権利処理の有無についてリンク先に照会する義務を負わせることは適切でないからである。)。また、サーバ所在国において著作物等の無許諾アップロードが不可罰又は微罪である場合に、そこに国内からリンクを貼る行為に重い刑を科すことができるようにすることは、主犯と従犯との刑罰のバランスという観点からして不適切である。

【Q】日本人向けリーチサイトが多数存在する現状についてどう思うか。

【A】元来遵法精神の高い日本人のうちそれほど多くの人がリーチサイトを利用して違法アップロードされたデータにアクセスしているとすれば、それは、コンテンツを正規に提供するビジネスの側が様々なニーズに応えられていないということだと思う。また、動画については、違法にアップロードされたものをダウンロードする行為自体を刑事罰の対象とする立法が権利者団体のロビー活動の成果としてなされたが、それが全く無意味であったことを意味すると思う。

【Q】今回、大阪府警などの合同捜査本部が著作権法違反容疑でリーチサイトの運営者らを捜査している件について、どう考えるか。

【A】他人の著作物を違法にアップロードしているサイトにリンクを貼ることが著作権侵害行為の違法な幇助となるか否かについては法律解釈の争いがある状況下において、刑事事件として処理をすることは適切さを欠いている。刑事裁判の場合、訴追側と弁護側とで法律論争をする局面が極めて限られている上、これを裁くのが、知的財産権専門部の裁判官ではなく、(知的財産権については素人である)刑事部の裁判官だからである。

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09/04/2017

CM出演契約における結婚禁止特約と公序良俗

 武井咲さんが、いわゆるデキ婚をしたことを発表したことに伴い、スポーツ紙などでは、所属プロダクションが巨額の違約金を支払わされるのではないかということが話題となっています。これに対して、そもそも結婚や妊娠をしたら違約金を支払わせる旨の条項は公序良俗に反し無効なのではないかとの見解も発表されています。

 もっとも、民法90条自体が「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」という抽象的な条文であり、何をもって「公の秩序」とし、何をもって「善良の風俗」に反するとするのかは不明です。このため、民法学では、公序良俗違反となる行為を類型化することで、無効となる行為の予測可能性を高めようとしています。

 公序良俗違反の類型論として著名なのは我妻栄先生のものなのですが、さすがに初出が大正12年ということで古いので、ここでは山本敬三先生の類型論を参考にしてみましょう(ただし、新版注釈民法からの孫引きです。)。
 山本先生は、公序良俗を、A:秩序の維持、B:権利・自由の保障、C:暴利行為の規制とに区分しています。ここでは、とりあえずBが問題になりそうです。憲法第24条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と定めているからです。

 もっとも、憲法上保障された権利や自由を制限する条項だから直ちに公序良俗に違反するとは言えません。憲法は、個人に保障された権利等を行使することを特定の個人に強いるものではなく、一定の反対給付と引き替えに、自己の有する憲法上の権利の行使を制限する義務を負うこともまた、契約自由の原則の一環として認められるべきだからです(最高裁は、雇用契約中に政治活動をしないことを条件とする特約の有効性を認めています(最判昭和27年2月22日民集6巻2号258頁))。

 当該商品・役務等を広告するのに相応しいイメージに合致すること、並びに、その氏名・肖像等が高い顧客吸引力を有しているが故に、広告主から広告代理店経由で所属プロダクションに広告のオファーが来ます。広告主としては、一定期間その肖像等を広告として使用する対価として相当の広告出演料をプロダクションに支払う以上、そのタレントに広告をオファーする際に重視した「イメージ」が広告契約期間中維持されることを求めるのは合理的です。したがって、上記イメージを損なうような行為を当該所属タレントに行わせないようにする義務を課す条項を広告出演契約の中の特約として含めるのは、広告主としては経済的に合理的であり、通常、反対給付(広告出演料)とバランスがとれています。
 プロダクションとしては、そのような特約を含むオファーを受け入れた以上は、所属タレントがこれに反する行為をし、広告主が求めていたイメージを損なうことをしてしまった以上は、債務不履行責任を負うのはやむを得ないように思います。広告出演契約においては、そのタレントが有するイメージを含めて対価が支払われているのであり、かつ、そのタレントが有する「イメージ」は必ずしも「役柄」によって形成されるものに限らず、そのタレントについて公的に知られている私的な事項も含まれているからです(おしどり夫婦として知られているタレントに、仲の良い夫婦をターゲットとした商品等に関するオファーが来ることを想像してください。)。したがって、「清純」というイメージを売りにしているタレントについて広告出演契約をオファーするに当たって、「清純」というイメージを損なう行為の禁止する特約を織り込むことも対価性のバランスがとれており、公序良俗に反するものとまでは言えないように思います。

 したがって、所属タレントが特約に反する行為を行ったために当該CMを放送しないことにしたり、急遽別のタレントを使用したCMを作成するなどして被った損害について、広告主が所属プロダクションに賠償請求することは問題が無いように思われます。その特約に反する行為が、妊娠、結婚など、憲法上自由に行うことが可能な行為であったとしてもです。

 その結果、プロダクションが弁済を余儀なくされた賠償額を当該タレントに求償しうるかというのは、また別の問題です。ただし、そのような損害を求償できる旨の条項が専属実演家契約に含まれており、かつ、当該タレント自身、当該特約が含まれていることを知りつつ、当該CMのオファーを受けることを社内的に承諾している場合には、プロダクションによる求償権の行使を制約する理由がないように思います。

 もっとも、その場合であっても、所属プロダクションは、CM出演契約に特約として定められている違約金全額を支払わなければいけないかは別問題です。損害賠償額の予定ないし違約金条項が、想定される損害に比して過大である場合には、超過部分について公序良俗に反し無効とされる可能性があるからです。所属タレントが特約に反した行為を行い、その広告に利用しようとしていたイメージが損なわれたとして、通常は、そのCMを継続して使用しなければ良いだけの話ですから、特段の事情がない限り、新たなCMを急遽作成するのに要する費用を大きく上回る額を違約金として定めていたとすれば、超過分は無効となるのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 10:22 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/14/2017

インターネット放送の合法化

 今日の著作権法学会の午後のシンポジウムは、CD等に収録されている音源をインターネット放送で送信する際の権利処理コストを引き下げるための制度設計に関する話でした。

 この点に関する私の意見を述べてみたいと思います。

 私は、当該コンテンツの視聴を選択したユーザーが同時に同じ音声を聴くように設計されているものについては著作権法上の放送または有線放送にあたるとする見解に立ちます。しかし、この見解は現状少数説に留まるので、この見解に立脚したビジネスを立ち上げるのは勇気が要ることでしょう。したがって、日本国内にベースをおいたインターネット放送事業を支援しようと思ったら、法改正が必要です。では、どんな法改正が必要なのでしょうか。

 要するに、特定の音源について「公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において利用が可能となる」と、それはその音源をCD等に収録して販売するというレコード製作者の通常のビジネスとバッティングするので、レコード製作者に排他権を付与すべきというのが実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約14条の趣旨であります。逆に言えば、特定の音源について「公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において利用が可能となる」もの以外については、レコード製作者に排他権を付与する必要はないと言うことになります。

 では、具体的にどのようにするのがベストでしょうか。シンポジウムでは、強制許諾制度を導入するべきとする見解や、権利制限規定を設けた上でレコード製作者等に報酬請求権を付与するべきという見解が示されていました。利益状況としては放送におけるCD音源の使用と同様なので、法的な取扱いとしても放送におけるCD音源の使用と同様とするのが理想です。すなわち、特定の音源について「公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において利用が可能となる」公衆送信以外の公衆送信以外をレコード製作者及び実演家の排他権の対象から除外しつつ、レコード製作者及び実演家に対する二次的使用料の支払い義務を負わせるというものです。

 では、具体的にはどうしたら良いでしょうか。

 まずは、2条1項各号の定義規定の中に、排他権の対象から除外するインターネット放送の定義規定を入れてみましょう。

インターネット放送 レコードの送信可能化であって、公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において当該レコードの利用が可能となるような状態に置くものでないもの(政令で定める除外条件を具備するものを除く。)

 シンポジウムでは、放送事業者は放送法により放送事業主体の名称、所在地等が明らかになっているのに対し、インターネット放送の場合必ずしもそうではないので、後者について報酬請求権化してしまうと取りっぱぐれてしまうリスクが高まることが問題視されました。そうであるならば、放送法上の放送事業者と同程度に名称、所在地等を登録してある事業者に限定して、排他権の対象から除外すればよいだけのように思います。

 例えば、2条1項各号の定義規定の中に次のような条項を加えてみましょう。

インターネット放送事業者 業としてインターネット放送を行う者であって、政令で定めるもの

 放送事業者、有線放送事業者がそのコンテンツをサイマル送信したりすることも有り得ますから、放送法上の認定基幹放送事業者及び登録一般放送事業者は、上記インターネット放送事業者に含めるべきでしょう。さらに、文化庁長官の登録を受けた事業者をインターネット放送事業者とすれば足りるでしょう(登録申請にあたって、氏名又は名称及び住所(並びに法人にあつてはその代表者の氏名)とインターネット放送に用いるURLを申請書の必須記載事項とし、さらに、破産等を認定資格喪失事由とすれば、二次的使用料等をいつまでも支払わずにインターネット放送だけ続けることは難しくなります。)。

 その上で、現行の著作権法第96条の2

レコード製作者は、そのレコードを送信可能化する権利を専有する。


レコード製作者は、そのレコードを送信可能化(インターネット放送事業者によるインターネット放送に該当するものを除く。)する権利を専有する。

としてしまえば、済むように思います。

 その上で、例えば、95条1項を

放送事業者、有線放送事業者及びインターネット放送事業者(以下この条及び第九十七条第一項において「放送事業者等」という。)は、第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て実演が録音されている商業用レコードを用いた放送、有線放送又はインターネット放送を行つた場合(営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けずに、当該放送を受信して同時に有線放送を行つた場合を除く。)には、当該実演(第七条第一号から第六号までに掲げる実演で著作隣接権の存続期間内のものに限る。次項から第四項までにおいて同じ。)に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。

としたり、97条1項を、

放送事業者等は、商業用レコードを用いた放送、有線放送又はインターネット放送を行つた場合(営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、レコードに係る音の提示につき受ける対価をいう。)を受けずに、当該放送を受信して同時に有線放送を行つた場合を除く。)には、そのレコード(第八条第一号から第四号までに掲げるレコードで著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係るレコード製作者に二次使用料を支払わなければならない。

としたり、44条3項として、

2  インターネット放送事業者は、第二十三条第一項に規定する権利を害することなくインターネット放送することができる著作物を、自己のインターネット放送(放送を受信して行うものを除く。)のために、自己の手段により、一時的に録音し、又は録画することができる。

との規定を新設した上で、従前の第3項を第4項とし、「前二項」とあるのを「前三項」とするなどの調整をしたらいいように思います。

Posted by 小倉秀夫 at 04:09 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/07/2017

演奏の「指導そのもの」から得た利益の一部をJASRACに支払うのは不自然

 東京大学の付属研究機関である先端科学技術研究センターに所属し、JASRACで外部理事を務める玉井克哉教授が以下のようなツイートをしています。

はい。そして、その「指導そのもの」が、他人の創作を用いた営利事業なのです。得た利益のごくごく一部を創作者に払うのは、当然ではないですか。

 このクラスの肩書きを持った方にも、著作権法の基本的な枠組みをご理解いただけていないのかと、がっくりきてしまいます。

 著作権法は、著作物を用いた営利事業全てを著作権者の支配下に置くものではありません。あくまで、著作権法21条以下の規定により著作者が専有すると規定された「法定利用行為」についてのみ、著作権者は自己の著作物に関してそれがなされることをコントロールできます。したがって、「指導そのもの」が「他人の創作を用いた営利事業」であったとしても、「指導そのもの」が著作物の法定利用行為にあたらなければ、得た利益の一部を著作者に支払うべき合理的な理由はありません。そして、第三者の演奏を指導すること自体は法定利用行為にあたりません。

 もちろん、指導に当たって教師が自ら見本を見せるために演奏をしてみせることが「公の演奏」にあたるかどうかは争点となり得るでしょう。しかし、それは、指導に際してなした「演奏」が法定利用行為にあたるとすればこれによって得た利益の一部を著作者に支払うとの条件で許諾を得る必要があるというだけのことです。演奏を指導する際に自ら手本を見せることは必須ではないので、「指導そのもの」は、利益の一部を支払うことを約束してでも著作権者から許諾を受けなければいけない行為にはあたりません。

 なお、「得た利益のごくごく一部」なんて言いますけど、音楽教室の利益率はあまり高くないので、授業料収入の2.5%も支払わされたら、利益の大半が飛んでしまうと思いますけどね。その分生徒からとればいいではないかと言われても、「授業料収入の2.5%」ということだと、JASRAC管理楽曲を使用していない生徒から徴収した授業料収入を含めて2.5%をかけて算出した金額をJASRACに支払わなければいけなくなるわけで、だからといって、JASRAC管理楽曲を使用していない生徒からは著作物利用料は徴収できないし、とはいえ、JASRAC管理楽曲を使用していない生徒から徴収した授業料収入に2.5%掛け合わせた分を、JASRAC管理楽曲を使用している生徒に上乗せして徴収するわけにも行かないし、結局その分は音楽教室の自己負担になるんですよね。

Posted by 小倉秀夫 at 11:32 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/06/2017

還元の要否に関する原則と例外

 音楽教室とJASRACとの関係についての議論を見ていて気になることがあります。著作物を用いて事業者が利益を上げたらその利益の一部は著作権者に還元されなければならないという間違った考え方をお持ちの方が少なからずいるということです。

 少なくとも日本の現行の著作権法は、そういう考え方を採用していません。著作物を公衆に提示・提供する行為のうち所定の態様で行われるもの(並びに、その準備行為たる著作物の複製行為、二次的著作物の創作行為)のみを法定利用行為として著作権者に独占させる制限列挙方式を採用しています。著作物の創作に一定の資本を投下した人に投下資本回収の機会を与えるために一定期間競合を排除するという著作権法の基本的な枠組みからすれば、新たな公衆への提示・提供態様が著作物にかかる本来的な投下資本回収手段の一つとして位置づけるに値するものとなったときに、新たに支分権を創設する立法を行えばよく、そのような立法がなされるまでは、著作物を利用して事業者が利益を上げてもその利益の一部を著作者に還元する必要はありません。実際、例えば、漫画喫茶は他人の著作物を用いて事業者が利益を上げているわけですが、営利目的で著作物の複製物を公衆に展示することが法定利用行為に含まれていない現行法上は、漫画喫茶の経営者は漫画本の著作権者等にその利益を還元する必要はありません。

 従って、音楽教室におけるJASRAC楽曲の使用についても、それが「公衆に直接聞かせる目的でなされる演奏」にあたらなければ音楽教室が上げた利益を著作権者に還元する必要はありませんし、「公衆に直接聞かせる目的でなされる演奏」にあたって著作権の制限事由のいずれかに該当する場合は音楽教室が上げた利益を著作権者に還元する必要はありません。また、法定の権利制限規定のいずれも当てはまらない場合であっても、事業者の上げた利益の一部を著作権者に還元させることが不適切とされ、権利侵害の成立が否定される場合があります(消尽論が適用される場合もその一つです。)。その場合も、事業者は利益を還元する必要はありません。

Posted by 小倉秀夫 at 03:54 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/05/2017

音楽教室でJASRAC管理楽曲は「演奏」されているのか。

 ヤマハ音楽振興会が運営している「ヤマハ大人の音楽レッスン」は、どんなことをやるのかを動画で説明しています。

 例えば、エレキギターについてはこれ、ドラムについてはこれです。

 これを見ると、果たして、これらの授業において、JASRACが信託譲渡を受けている「音楽著作物」が「演奏」されていると言えるのかに疑問を持ってしまいます。仮に、ここで生徒さんが演奏するのが、特定のJASRAC管理楽曲における特定のアーティストによる特定の音源ないしライブでの実演とほぼ同じ内容だったとして、そこまでJASRACは管理しているのだろうか、ということです。ドラムをどう叩くのか、エレキギターにおいてどのように弦を抑え、はじくのかということまで作曲家が決めるというのは、ポピュラーミュージックにおいては通常形態ではない以上、作曲家の権利について信託譲渡を受けているにすぎないJASRACは、そこまで専有する権限を持っていないのではないかということです。

 実際、ある楽曲のある音源におけるドラムが格好いいからこれを勉強したいということで、特定のCDに収録された楽曲におけるドラム譜を教材にした場合、ドラマーはそのドラム譜についてJASRACに何の信託譲渡もしていないので、仮に音楽教室が許諾料をJASRACに支払っても、そのドラマーには何も還元されないんですよね。

 そう考えると、ボーカルが入るなど主として主旋律が使用されている例外的な場合を除けば、音楽教室においては、そもそもJASRACが信託譲渡を受けている音楽著作物は「演奏されていない」といえるのではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 07:10 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/02/2017

音楽教室とJASRAC

ヤマハや河合楽器製作所などが手がける音楽教室での演奏について、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、著作権料を徴収する方針を固めた。
というニュースが話題となっています。

 音楽教室では、既存の楽曲について、教師が一部のフレーズを演奏して見本を示し、生徒がその見本に従ってそのフレーズを演奏してみるということが通常行われます。生徒については、一曲通しで演奏することもまま行われるのでしょう。このような形での楽曲の演奏は、音楽教室の教師(ないしその雇い主である音楽教室の運営会社)による著作権侵害に当たるのでしょうか。

 まず、一部のフレーズの演奏したに過ぎない場合に、元の「音楽著作物の利用」と言えるかどうかが問題となります。元の音楽著作物の表現上の本質的特徴部分を直接感得できるものでないと、著作物の「利用」たり得ないからです。4小節なり8小節なりという単位で演奏したときに、そこだけで「元の音楽著作物の表現上の本質的特徴部分を直接感得できる」かと言われると、そうでない楽曲も多そうです。

 次に、生徒による演奏について、著作権法上の演奏の主体を、音楽教師又は音楽教室運営者と認定できるのかが問題となります。この場合、ロクラクⅡ事件最高裁判決後もなおカラオケ法理ないし拡張されたカラオケ法理が適用されうるのかも問題となります(もっとも、生徒が演奏の主体である場合には、無償かつ非営利目的でなされており、適法なものといえますので、ファイルローグ法理は使えそうにありません。)。

 生徒が音楽教室に通うタイプですと、生徒による演奏も、音楽教室の運営会社が用意した建物内部で、運営会社が用意した機材等を用いて行われることになります。この場合、カラオケ法理を適用できるかどうかは、演奏する楽曲の選択の範囲を音楽教室側である程度コントロールしているのかどうかが問題となります(生徒の側で自由に演奏したい楽曲を指定してくる場合、音楽教室側の管理下において生徒が演奏しているとは言いにくくなります。)。音楽教師が生徒の自宅に派遣されるタイプですと、さらに音楽教室側の管理のもとで生徒が演奏しているとは言いにくくなります。

 ロクラクⅡ法理を用いた場合、生徒による演奏についての「枢要な行為」を音楽教室側が行ったといえるのかどうかが問題となります。教師が手本を見せること、あるいは、生徒が音楽教室に通うタイプの場合に,演奏する場所や演奏に用いる機材を提供することが、ここでいう「枢要な行為」に当たるのかという問題です。「枢要な行為」について判示した裁判例が未だ集積されていないので、なんとも言い難いところです。

 また、生徒による演奏については、公衆に直接聞かせる目的での演奏と言えるのかどうかも問題となります。音楽教室において生徒は、音楽著作物を公衆に伝達することではなく、自分の演奏につたない点がないかどうかをチェックしてもらうために演奏するのが通例であり、自分の歌声に酔いしれることを前提とするカラオケボックスにおける客の歌唱と同列に扱うことができるのかという問題があるからです。練習のための演奏について、従前から「公衆に直接聞かせるための演奏」としてきましたかね、ということですね。

 また、また、音楽教室において、教師による演奏の対価として料金が支払われるのではなく、生徒による演奏を指導する対価として料金をもらっているので、無償かつ非営利の演奏であるとして、著作権法38条1項の適用を受けるのではないかという問題もあります。ただし、無償要件はともかく、非営利目的といえるかという点が苦しそうです。

 また、音楽教室における教師による見本としての演奏は、演奏のテクニック等に関する説明の一環として行われるのが通常ですので、著作権法32条1項にいう「引用」に当たるのではないかも問題となり得ます。「引用」の目的として、「演奏のテクニックとして縷々説明した要素を、実際の演奏を見せることによって、分かりやすく示す」という目的も含まれるとするならば、生徒の目の前で特定のフレーズを演奏してみせることは、「引用の目的上正当な範囲」にとどまるように思います。

 さらにいえば、既に著作権の保護期間が経過した楽曲を演奏する分には何人の著作権をも侵害していないことになりますし、楽器の演奏の練習のために作成された、JASRACに信託譲渡されていない楽曲を使用する分には、少なくともJASRACの著作権を侵害することにはなりません。

 このような状況下で、「著作権料を年間受講料収入の2・5%とする」というのは無茶ではないですかね、と私などは思ってしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 11:44 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

01/30/2017

「PPAP」との商標を登録しても「PPAP」を歌うことは邪魔できない

 ベストライセンス株式会社が「PPAP」との文字標章について商標登録出願をした件に関して、様々な人が様々な見解を述べています。「未だ商標登録が認められていない現時点ではもちろん、仮に将来商標登録が認められたとしても、ピコ太郎はなお『PPAP』を合法的に歌い続けることができる」という結論は間違っていないものの、理由付けにおいて間違っている見解が多いようです。

 まず確認しなければいけないのは、そもそも「PPAP」の歌詞の中に「PPAP」という言葉は含まれないということです。「PPAP」と類似する文字列も歌詞には含まれません。したがって、「PPAP」を歌っても「PPAP」という文字列ないしこれと類似する文字列を使用しないわけですから、商標権侵害となるわけがありません。

 とはいえ、「PPAP」を音楽配信サービスで販売しようと思えばタイトル名として「PPAP」という表示をせずにはいられませんし、テレビ番組の中で「PPAP」を歌うとなれば(あるいは「PPAP」のミュージックビデオを流すとなれば)タイトル名として「PPAP」というタイトルを表示せざるを得ません。「PPAP」との文字列について誰かが商標登録してしまった場合には、そのようなタイトル表示は商標権侵害となるのでしょうか。

 現在の通説・判例を前提とすると、これは商標権侵害とはなりません。その理由は以下のとおりです。

 現行法において、「商標」の本質は、出所表示機能にあると考えられています。このため、出所表示機能を有さない標章についてはそもそも「商標」たり得ないし、出所表示機能を果たさない態様で標章を使用しても、それは商標としての使用にあたらないと解されています。

 そして、著作物の題号(タイトル)は、通常、出所を表示するのではなく、内容を表示する機能を有しているため、これを「商標」として保護することは適切ではないと考えられています。このため、著作物の題号はそもそも「商標」にあたらないとする見解や、著作物の題号としての使用は商標としての使用にあたらないとする見解が通説となっています(ただし、新聞や雑誌等の定期刊行物の題号や、百科事典・辞書類の題号については、「商標」性を認める見解が有力です。)。

 裁判所も、例えば、井上陽水がそのアルバムタイトルを「UNDER THE SUN」とし、これをそのCD盤の表面やジャケットに「UNDER THE SUN」「アンダー・ザ・サン」という標章を用いたことが、「おもちゃ、人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く。)、レコード、これらの部品及び付属品」を指定商品とする「UNDER THE SUN」との登録商標に関する商標権侵害にはあたらないとしています(東京地判平成7年2月22日判タ第881号265頁)。また、表紙、背表紙に『高島象山』の文字が表示されていても、「図書、写真及び印刷物類」を指定商品とする「高島象山」との登録商標の使用に当たらないとした裁判例もあります(東京高判平成2年3月27日判時1360号148頁)。

 したがって、ピコ太郎が歌う楽曲のタイトルとして「PPAP」との標章を用いる分には、仮に第三者が「PPAP」についてどんな指定商品・役務について商標登録をしたところで、商標権侵害とはならないのです。

 なお、ベストライセンス株式会社は「PEN PINEAPPLE APPLE PEN」についても商標登録出願をしているようです(商願2016-116675)。これが登録されてしまった場合、ピコ太郎は歌詞の中で「PEN PINEAPPLE APPLE PEN」と歌えなくなるのでしょうか。

 もう、お分かりですね。ピコ太郎が歌詞の中で「PEN PINEAPPLE APPLE PEN」と歌っても、それは、その歌の出所を表示するものではない以上、商標としての使用には当たらないので、いかなる指定商品・指定役務についても、商標権侵害とはなり得ないのです。

Posted by 小倉秀夫 at 09:44 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/19/2017

森のくまさん

 パーマ大佐による「森のくまさん」について、童謡である「森のくまさん」についての馬場祥弘の訳詞に係るの同一性保持権を侵害するものであるとして、馬場氏よりクレームがつけられた件が話題になっています。

 ただ、パーマ大佐による「森のくまさん」の歌詞を見る限り、馬場氏の訳詞を流用している部分は、特に改変等をしておらず、単に、馬場氏の訳詞の一部と一部の間に、パーマ大佐が創作した文章表現を挿入しているだけのように見えます。

 そうだとすると、ここでは、「既存の言語作品の一部を複数切り取って、その間に、新たな文章表現を挿入することが、既存の言語作品に係る同一性保持権を侵害するものと言えるのか」ということが問題となると言えます。

 同一性保持権について定めた著作権法第20条1項は「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。 」と定めていますので、既存の言語作品をその意に反して切除すること自体が同一性保持権侵害にあたるのだとする見解もあり得なくはないでしょう。しかし、言語著作物は古来より「引用」されてきたことを考えると、既存の言語作品の一部が切り取られて別の作品に挿入されて利用されたとしても、必ずしもそれがその言語作品の全体だと受け取られるおそれが低く、その切り取られて別の作品に挿入された部分だけを見て、元の言語作品の作者に対する評価を決める人は希であると考えられるので、切り取り方が不適切で、その部分から感得される作者の人格的評価が歪められるような方法による場合を除けば、同一性保持権を侵害するものとまでは言えないのではないかと思います。

 パーマ大佐による「森のくまさん」についていえば、馬場氏の訳詞について、その部分から感得される作者の人格的評価が歪められるような不適切な切り取り方をしていないので、同一性保持権侵害にあたるとまでは言えないのではないかと思います。

 では、パーマ大佐による「森のくまさん」における、馬場祥弘の訳詞の一部の利用が、訳詞者である馬場氏の名誉または声望を害するものであって、馬場氏の著作者人格権を侵害する(著作権法113条6項)ものと認められるかというと、これが一種のパロディであることが明確であること、その方向も特に一般の人をして嫌悪感を抱かせるようなものではないことを考えると、難しいのではないかと思います。

 童謡である「森のくまさん」についての馬場氏の訳詞は、JASRACによる管理がなされており、馬場氏は翻案権以外の著作権を有していないので、馬場氏自体がパーマ大佐等に対して著作権を主張することはできません(だから、「同一性保持権侵害だ」と言っているのではないかと推測します。)。

 では、JASRACは、パーマ大佐等に対して著作権を行使することができるのでしょうか。

 おそらくその場合、馬場氏の訳詩の一部を切り取ってパーマ大佐版のの「森のくまさん」に利用したことが著作権法32条の適用を受ける「引用」にあたるかどうかが問題となろうかと思います。

 パーマ大佐が新たに挿入した部分の方が明らかに多いので、主従関係が認められることが明らかです。明瞭区別性について言えば、実際のパフォーマンスにおいて、原曲たる「森のくまさん」の一部を歌っているのか、パーマ大佐が新たに創作した部分を歌っているのかが区別できるようになっていれば、十分に満たされるのではないかと思います。

 あとは、いわゆる「本歌取り」という目的が著作権法32条にいう「報道、批評、研究その他の引用の目的」に含まれるのか、そして含まれる場合に、パーマ大佐版「森のくまさん」における馬場氏の訳詞の利用が、「目的上正当な範囲内で」行われたといえるかどうかが問題となろうかと思います。パーマ大佐版「森のくまさん」のストーリー展開を前提とすると、「目的上正当な範囲内で」行われているように私には思えるのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 12:37 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/10/2017

自動作曲と依拠

 近年はAIブームです。私的には、近年のAIの嚆矢は、ヤマハが提供した「VOCALODUCER」なのではないかと思っています。

 それはともかく、作曲、とりわけ主旋律の作成作業というのは、普通の人が発生できる音階が限定的であることから、ただ作ればいいのであれば、コンピュータ向きの仕事であると言えます。コードと主旋律の中で使われる音階との間のルール設定をした上で、コード進行に関して一定のルール付けをしておけば、聴くに堪える主旋律が生まれる蓋然性が高まります。

 もちろん、それらの多くは「聴くに堪える」というだけで、商用音楽として訴求力を持つものが生ずる蓋然性はさほど高くはないでしょう。コンピュータが自動作曲したものを商用音楽として利用しようと思えば、コンピュータが自動作曲した大量の主旋律の中から商用音楽としての利用に耐えるものを、人間が聴いてピックアップする必要が生ずることでしょう。

 主旋律をゼロから作り上げる才能はないが、コンピュータが自動作曲したものの中からピンときたものを拾い上げる才能に秀でている人材が音楽業界で大きな地位を占める社会が近い将来やってくるかもしれません。その場合に備えて考えておくべきことが2つあります。

 1つは、この「コンピュータが自動的に作成する膨大な数の主旋律の中から、商用音楽としての訴求力を有するものをピックアップする作業」を、ピックアップ作業するものによる著作物の創作行為(とりわけ「作曲」)と見て良いのかということです。もちろん、コンピュータが自動的に主旋律を作成する作業自体を著作物の創作行為とする方向で立法をしていこうという見解があることは承知しているものの、コンピュータが自動的に主旋律を吐き出した時点では、そこに何人の思想も感情も表現されていないので、立法政策としての方向に疑問を抱いてしまうので、こういう問題設定をしているわけです。「ピックアップする行為」を著作物の創作行為とし得るのであれば、何をピックアップするのかという点にその人の思想又は感情の表出を見ることができるというわけです。

 もう一つは、コンピュータが自動的に作成した膨大な数の主旋律の中に、先行作品と同一または類似するものが含まれていた場合に、これをピックアップして利用する行為は著作権侵害に当たるのだろうかと言うことです。複製権侵害や本案権侵害等が成立するためには、先行著作物と同一又は類似の表現を利用したというだけでは足りず、その際に先行著作物に依拠していたことが必要だとされています。しかし、コンピュータが自動的に主旋律を生み出す時点では、コンピュータもこれを操作する人もその自動作曲プログラムを組んだ人も、その先行著作物と同一または類似する旋律を吐き出してやれと考えているわけではありませんから、先行著作物への「依拠」があったと見ることは困難です。

 では、コンピュータが自動的に作成した主旋律の1つが先行著作物と同一又は類似していることを知りつつ敢えてこれをピックアップして利用した場合、その先行著作物に「依拠」しているといえるのでしょうか。少なくとも建前上は、それが先行著作物と同一又は類似であることを知りつつも、コンピュータが自動的に作成した主旋律を利用しているに過ぎない以上、その先行著作物自体には依拠していないと言えるでしょうか。依拠していないといってしまうと理論的には楽ですが、そうすると、音楽については、先行のヒット作品と同一または類似する主旋律をコンピュータが自動生成するのを待てばこれを無許諾で利用できることになり、先行著作物の保護の範囲が狭くなりすぎるのではないかとの戸惑いも生じます。

 この問題に答えを出すためには、依拠とは何なのか、なぜ依拠がないと著作権侵害が成立しないとされるのかについて、もう少し考察を進めていく必要がありそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/01/2016

ポケストップの削除請求

 PokémonGoが日本でもサービスを開始するや、「ポケストップ」に多くの人が集まる現象が早速生じています。そして、そのような事態を受けて、最高裁判所や、様々な行政機関や、大学その他が自己の施設ないし敷地から「ポケストップ」を削除するようにとの要請がPokémonGoの運営会社になされているようです。

しかし、施設や敷地の占有者ないし所有者に、その施設ないし敷地から「ポケストップ」を削除するように求める権利はあるのでしょうか。

 「ポケストップ」とは、「PokémonGo」において、ゲームを進める上で最も重要なアイテムを入手するスポットであり、アイテムを入手する為には、ユーザーは、ポケストップが設置されている場所として設定されているところに物理的に近づく必要があります。もっとも、ポケストップは、現実空間と連動した仮想空間上に設置されているに過ぎず、「PokémonGo」上の仮想空間上ポケストップが置かれている場所と紐付けられている現実空間上の場所には何も置かれていません。

 では、現実空間と連動した仮想空間上に「ポケストップ」のような仮想の設備を設置することは、当該仮想空間と連動した現実空間において、仮想空間上の上記仮想設備の設置箇所と紐付けられた場所の設備または敷地の所有者の所有権ないし占有者の占有権を侵害することになるのでしょうか。

 一般に所有権は、目的物たる有体物に対する排他的支配権とされています。しかし、通説的見解によると有体物の所有者が排他性を有するのは、当該目的物を物理的に排他的に利用することだけで、自己の所有物を第三者が仮想的に利用することまでは排除する権限を持ちません。したがって、自己の執筆する小説の中でゴジラに大阪城を破壊させるのに、大阪城の所有者の許諾を得ておく必要はないのです。したがって、自己の所有又は占有する施設または敷地に対応する仮想空間上に「ポケストップ」が設置されたとしても、所有権又は占有権に基づく妨害排除請求権として、その削除を求めることはできないと解するのが素直です。

 もっとも、自己の所有又は占有する施設又は敷地上に「ポケストップ」が設置されてしまうと、専らアイテムを取得する目的で「PokémonGo」の利用者が当該施設または敷地に立ち入るユーザーが少なからず現れることになり、当該施設等の円滑な運用が妨げられる可能性があります。これを阻止する為に、当該施設等から「ポケストップ」を削除するように運営会社に求めることは法的に可能でしょうか。

 そもそも一般人が立ち入ることが禁止されている場所に「アイテム」取得目的で立ち入ることは刑事法的には住居侵入罪に当たるとともに、民事法的には当該施設又は敷地についての所有権ないし占有権を侵害する行為にあたります。また、当該施設等の管理者において特定の目的での当該施設等への立ち入りを許容している場合に、当該目的以外の目的で当該施設等に立ち入ることもまた、刑事法的には住居侵入罪に当たるとともに、民事法的には当該施設又は敷地についての所有権ないし占有権を侵害する行為にあたります。したがって、一般人が立ち入ることの予定されている施設等においても、専らアイテム取得目的で立ち入ることを禁止したり、中に立ち入ってアイテム取得行為をすることを禁止したりすることは許されます。問題は、当該施設等内に対応する仮想空間上に「ポケストップ」を設置することが、上記違法な立ち入り行為を教唆するものとして、差し止め請求に対象となり得るかということです。

 そして、ここでは、そもそも「ポケストップ」の設置行為は違法な立ち入り行為の「教唆」にあたるのかということと、さらに、仮に「教唆」にあたるとして、「教唆」行為自体の差し止めを求めることができるのかということの双方が問題となります。

 前者に関して言えば、現実空間における特定の施設等が、フィクションにおける重要な施設と紐付けられることで、「聖地巡礼」のような形で人を集める効果を持つことがあったわけで、その結果当該施設等の円滑な運用が妨げられたことにうんざりした施設管理者が「聖地巡礼」目的での立ち入りを禁止したときに、さらに、自己の所有又は占有する特定の施設等をフィクションにおける重要な施設と紐付けることが違法な立ち入り行為の「教唆」にあたると言いうるのかということにも繋がっていきます。フィクションを構成するものとしては、その受け手が現実空間における法的なルールを遵守することをある程度期待することは許されると思いますので、当該施設の管理者の意思に反した違法な立ち入りまで教唆したとは言えないとして、「教唆」にはあたらないとするのがバランスがとれているのではないかと思います。

 仮にこれが「教唆」にあたるとした場合には、「ポケストップ」の設置それ自体は直接的には特定の施設等についての所有権ないし占有権を侵害するものではないのに、当該施設等についての所有権ないし占有権に基づいて差し止めを求めることができるのかということが問題となります。これは、特定の態様での著作権等の侵害行為を教唆又は幇助する行為自体について著作権者等が差止請求をすることが許されるのかという問題と構造は一緒であり、これについては、下級審裁判例は東西で分かれています。

 さあ、裁判所は、いかなる判断をするのでしょうか。


Posted by 小倉秀夫 at 04:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/24/2016

独立後も「能年玲奈」と名乗ることは許されないのか

能年玲奈あらため「のん」

NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」で主役を務めた能年玲奈さんが芸名を「のん」としたことに関して、以下のような報道がなされています。

 6月末で契約が満了する能年に対し、レプロは6月下旬、昨年4月から能年との話し合いが進まず、仕事を入れられなかったとして、その15カ月分の契約延長を求める文書を送付。

 その際、契約が終了しても、「能年玲奈」を芸名として使用する場合には、レプロの許可が必要と“警告”していた。


 そして、その根拠として、能年さんの従前のプロダクションであるレプロ社は、以下のように回答したとされています。

一般論として、その旨の契約がタレントとの間で締結されている場合には、当事者はその契約に拘束されるものと考えます

 果たして、そうなのでしょうか。

加勢大周事件との関係

 芸能人とプロダクションとの間で独立・移籍騒動が勃発し、プロダクションが芸名の使用を禁止することで対抗しようとする構造──知財クラスタなら聞き覚えがありますね。そう、あの「加勢大周」事件と同じ構造です。

 加勢大周事件の第一審判決における「争いのない事実」によれば、芸能人(X)とプロダクション(Y)との間の専属契約には、

 Xは、Yの専属芸術家として、本件契約期間中、Yの指示に従って、音楽演奏会・映画・演劇・ラジオ・テレビ・テレビコマーシャル・レコード等の芸能に関する出演その他これに関連するすべての役務を提供する義務を負う。

 Xは、右契約期間中、第三者のために、右役務の提供をすることができない。


という条項や、

 Yは、Xの芸名「加勢大周」・写真・肖像・筆跡・経歴等の使用を第三者に許諾する権利を有する。

 Xは、Yの許諾なしに右芸名等を第三者に使用させることはできない。


という条項が含まれていました。

 そして、第1審判決(東京地方裁判所平成4年3月30日判タ781号282頁)は、上記「芸名の使用を第三者に許諾する権利」を、

社会的評価、名声を得ている芸能人の氏名・肖像等を商品に付した場合に、当該商品の販売促進の効果をもたらすことは公知の事実であり、被告川本の芸名である「加勢大周」も、原告によって商標登録がされているところである。芸能人の氏名・肖像等の有するこのような効果は、独立した経済的利益ないし価値を有するものであり、このような芸能人の氏名・肖像等は、当然に右経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利の一つに該当するものというべきである。

として法的なものと評価した上で、上記専属契約に基づき、「芸名「加勢大周」を使用して、第三者に対し芸能に関する出演等の役務の提供をすることの禁止」を命じたのです(同事件の控訴審(東京高判平成5年6月30日判時1467号48頁)では、専属契約がその後終了したとして、上記禁止命令を解きましたが。)。

 おそらく、能年さんの件についても、プロダクション側の主張内容は同じようなものなのではないかと思います。もっとも、能年さんの件では、「契約が終了しても、「能年玲奈」を芸名として使用する場合には、レプロの許可が必要と“警告”していた。」とされている点からすると、「契約終了後もなお有効とする」条項の中に、芸名の独占的使用許諾権限に関する条項が含まれていたのだろうと思います。

パブリシティ権の排他的許諾権設定契約の効力

 では、レプロ社は、芸能人の氏名・肖像等の有する上記「右経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利」(通常、「パブリシティ権」といいます。)について独占的に使用許諾を行う債権的な権利を能年さんに対して行使することができるのでしょうか。

 ここで一つ考慮すべきことは、加勢大周事件第一審判決は平成4年に言い渡された古い判決だということです。このころは、「パブリシティ権」を一種の無体財産権と考える見解が幅をきかせてきたのですが、その後、ギャロップレーサー事件最高裁判決において立法によらずして無体財産権としてのパブリシティ権の行使を認めることが否定され、さらにピンクレディ事件最高裁判決においてパブリシティ権が氏名権・肖像権等の「人格権に由来する権利」と位置づけられるに至ったのです。

 もっとも、パブリシティ権が「人格権に由来する権利」と位置づけられたからといって直ちに「独占的に使用許諾を行う債権的な権利」を設定することが許されないと解されるとは限りません。人格権は一身専属権ですので、これを第三者に譲渡する旨の合意は効力を有しないものと解するのが一般的ですが、人格権の行使条件を契約により制約することまで一身専属権ということから直ちに言えるかは微妙です。著作者人格権について包括的な不行使特約を締結しても有効であるとする見解が有力であり、実務は有効であることを前提に権利処理を行っています。現に、プロ野球選手会事件控訴審判決(知財高判平成20年2月25日)では、「人は,生命・身体・名誉のほか,承諾なしに自らの氏名や肖像を撮影されたり使用されたりしない人格的利益ない し人格権を固有に有すると解されるが,氏名や肖像については,自己と第三者との契約により,自己の氏名や肖像を広告宣伝に利用することを許諾することによ り対価を得る権利(いわゆるパブリシティ権。以下「肖像権」ということがある。)として処分することも許されると解される」とした上で、プロ野球の統一契約書16条1項「球団が指示する場合,選手は写真,映画,テレビジョンに撮影されることを承諾する。 なお,選手はこのような写真出演等にかんする肖像権,著作権等のすべてが球団に属し,また球団が宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても,異議 を申し立てないことを承認する。」に依拠した契約条項について、「商業的使用及び商品化型使用の場合を含め,選手が球団に対し,その氏名及び肖像の使用を,プロ野球選手としての行動に関し(したがって,純然たる私人としての行動は含まれない),独占的に許諾したもの」と解した上で、公序良俗に反しないと判示されています。


 専属契約存続中は、芸能プロダクションに芸名の使用許諾権を一本化すること自体は合理性がありますから、芸能人個人がパブリシティ権を保有するという前提のもと、その一部について、専属契約に基づいて独占的な使用許諾権を芸能プロダクションが取得すること自体を公序良俗に反するとするのはハードルが高いように思います。たとえそれが戸籍上の氏名と同一であったとしても、専属契約の対象となる「芸能活動」に関するものである限りは、同様ではないでしょうか。

契約期間満了後も特定の条項をなお有効とする合意の効力

 当該契約を構成する条項のうち特定のものについては契約期間が満了した後においても有効に存続する旨の合意をすることは、よくあります。例えば、秘密保持義務を創設する条項が契約期間の満了に伴って当然に効力を失うとなれば、契約に基づいて相手方に提供していた秘密情報は契約満了と同時に秘密性を失ってしまうわけで、そういうことを回避するためにそのような条項を敢えて挿入するのです。

 芸能プロダクションとしては、専属契約期間中にその芸能人が出演して作成されたコンテンツについては、自ら一定の投資ないし寄与をしているので、専属契約終了後においてもなおこれを市場に供給して投下資本の回収を図ること自体は公序良俗に反するとは言えず、芸名について使用許諾を行う債権的な権利をプロダクション側に設定する旨の条項について専属契約終了後も有効に存続させる旨の合意自体を無効とすることは難しいのだろうと思います。

 ただし、「独占的に」芸名について使用許諾を行う債権的な権利がプロダクション側について残っていると、従前の芸名を用いて芸能活動を継続することができず、芸能活動に大きな支障が生じてしまいます。もっとも、芸能活動をやめる前提で元のプロダクションとの専属契約を合意解約しておきながら、別のプロダクションとの間で新たに専属契約を締結し、元のプロダクションのプロモート活動によって周知性ないし著名性を獲得した芸名を利用して芸能活動を再開するというのはただ乗り感が強くあります。すると、芸能活動をやめる前提ではなくして専属契約が終了した場合になお元のプロダクションが芸名の独占的使用許諾権を主張することを法的に抑制すれば良いように思います。

 そうだとすると、独占的使用許諾権設定条項それ自体、ないし、かかる条項の契約期間終了後存続条項を公序良俗に反するとするよりは、芸能活動をやめる前提ではなくして専属契約が終了した場合に、当該芸能人が芸能活動を行うにあたって自らその芸名を使用しまたは第三者に使用許諾したことについてこれを主張することは権利の濫用に当たり許されないとする方が良いのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 11:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0)

05/06/2016

鳥獣戯画のアニメ化

 スタジオジブリが、「鳥獣戯画」をアニメーション化した作品を発表したことに関し、唐津真美弁護士の見解が弁護士ドットコムニュースに掲載されています。

 その中で気になるのは、以下の部分です。

本件の場合、鳥獣戯画の作者は、800年を経て、生き生きと動き出した動物達を見たら、むしろ喜ぶのではないでしょうか。ジブリが作成した鳥獣戯画のアニメ―ションは、鳥獣戯画の作者の著作者人格権を侵害するものではないと思います

 著作者人格権は著作者の相続人に相続されず著作者が死亡した時点で消滅しますが、著作権法は、「著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。」として、著作者が生きていたとすれば著作者人格権の侵害となるであろう行為を原則禁止します。ただし、著作者が死亡している以上同意を取りに行くことが不可能なので、「ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。」という但し書きを置いています。この規定に違反した行為については、その遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹)が差止請求権及び名誉回復等措置請求権を民事的に行使できる(116条1項)他、500万円以下の罰金に処されることになります(120条)。120条の罰則規定については非親告罪となっているため、著作者が何百年たっても、著作者が生きていたならば著作者人格権となるだろう行為を行うと刑事罰の対象となり得るのです。

 おそらく唐津弁護士は、鳥獣戯画のアニメーション化が、その著作者が生きていたとしたら同一性保持権侵害行為にあたるであろう行為と言えるかどうかという観点から、上記のような当てはめをしたのだろうと思います。ただ、「改変された結果生まれた作品が質の高い作品であるから、元の著作物の著作者もむしろ喜ぶはずであり、したがって著作者人格権を侵害するものとはならない」という思考過程を採用したのだとすれば、いかがなものかという疑問が生じます。改変の結果、元の作品の著作者の意図やクリエイティビティに誤解を生じさせかねないものであれば、改変された結果生まれた作品自体は大変質の高いものであったとしても、同一性保持権侵害となり得るからです。

 さらにいえば、この鳥獣戯画のアニメーション化のケースでは、もう一つ重要な論点を検討するべきでした。それは、「著作権法上『著作物』として取り扱われるのは、一定の時期以降に創作されたものに限られるのか、その場合、いつ以降に創作されたものに限られるのか」という問題です。

 ここでは、現行著作権法の附則においては、「改正後の著作権法(以下「新法」という。)中著作権に関する規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法(以下「旧法」という。)による著作権の全部が消滅している著作物については、適用しない。」(附則2条1項)、「この法律の施行の際現に旧法による著作権の一部が消滅している著作物については、新法中これに相当する著作権に関する規定は、適用しない。」(附則2条2項)と定められているのに対し、旧著作権法の附則においては「本法施行前ニ著作権ノ消滅セサル著作物ハ本法施行ノ日ヨリ本法ノ保護ヲ享有ス」(47条)と定められているのをどう見るべきかということが問題となります。

 旧著作権法の施行日である明治32 (1899) 年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物については、旧著作権法による保護を受けることができず、したがって旧著作権法上の著作者人格権をも認められてこなかったのです。したがって、旧著作権法施行時は、「他人ノ著作物ヲ発行又ハ興行スル場合ニ於テハ著作者ノ死後ハ著作権ノ消滅シタル後ト雖モ其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ変更ヲ加ヘテ著作者ノ意ヲ害シ又ハ其ノ題号ヲ改メ若ハ著作者ノ氏名称号ヲ変更若ハ隠匿スルコトヲ得ス」(18条2項)があったにも関わらず、明治32年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物については、「其ノ著作物ニ改竄其ノ他ノ変更ヲ加ヘテ著作者ノ意ヲ害シ」ても良かったのです。それが、現行著作権法の施行とともに、明治32年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物についても、明治32年7月15日に既に著作権が消滅していた著作物についても、現行著作権法の下で創作された著作物と同様の規定が適用され、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。」ということになるのかということが問題となるのです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/06/2016

『日本における追及権導入の可能性-欧州の見地から―』を聞いて

 昨日、早稲田大学の8号館に行き、「2016春RCLIP国際シンポジウム
『日本における追及権導入の可能性-欧州の見地から―』」を聞いてきました。その上で、疑問に思ったことを少し羅列してみることにしました。


  1.  追及権を著作権(著作財産権)と位置づけておきながら「譲渡不可」とするという構成があり得るのか。

  2.  原作品の特定の売り主に対する追及権に基づく金銭支払請求権は差押え禁止財産となるのか。

  3.  追及権を「譲渡不可」とした場合、自然人たる著作者が破産した場合どうするのか。

  4.  追及権を「譲渡不可」とした場合、自然人たる著作者が死亡し、その法定相続人が限定承認した後の換価をどうするのか。

  5.  追及権を「譲渡不可」とした場合、法人著作との関係をどうするのか。

  6.  法人著作についても「譲渡不可」な追及権が成立するとすると、当該法人が破産したり、解散した場合にどうするのか。

  7.  原作品が裁判所の競売手続で換価された場合にも、追及権は及ぶとするのか。

  8.  裁判所の競売手続における換価についても追及権が及ぶとした場合、差押え債権者や一般債権者との優劣はどうなるのか。

  9.  原作品が譲渡担保に提供された場合、担保提供時に金員の支払い義務が生ずるのか、あるいは清算時に生ずるのか。

  10.  ある建物内の動産全体に集団動産譲渡担保が設定された場合に、当該建物内に絵画の原作品が含まれていた場合、どうするのか。

  11.  ある建物内の複数の絵画が一括して売却された場合に、どの絵画の著作者(又はその相続人)にいくらの支払い義務を有するかをどのように算定するのか。

  12.  追及権創設後に新たに原作品が第一譲渡される場合、将来の追及権負担を考慮して価格水準が低下することとならないか。

  13.  追及権を創設することが、絵画の著作物の創作のインセンティブを高めることに繋がるとするメカニズムは何なのか。

Posted by 小倉秀夫 at 05:43 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/29/2016

首都大での期末試験

 今年は、一年間サバティカルをお取りになっている山神先生のピンチヒッターとして、首都大学東京の法科大学院で、半期だけ著作権法の講義を担当しました。昨日期末試験が終了し、あとは採点だけということになりました。今の著作権法を半年、15回で回すというのはきついですね。

 なお、期末試験の問題は、下記の通りです。


A新聞社の記者Bは、C社が主催するスキーツアーにおいて旅行客らを乗せたバスが転倒し、旅行客Dが死亡した事故について記事Eを作成した。記事Eは、事故の翌日のA新聞の朝刊に掲載された。

問1 Dは生前、D所有のスマートフォンを友人Fに渡して撮影してもらうことで作成したDの肖像を含む写真画像Gを 、Dの個人ブログにアップロードしていた。Bは、記事EにおいてDの肖像写真を掲載したかったので、Dの個人ブログにアクセスして写真画像Gの画像データをダウンロードし、A新聞社の編集長Hにそのデータをメールで送信した。編集長Hは、部下Iの命じて、D以外の人物の肖像についてぼかし処理をした上で、記事Eの真下に掲載されるように、写真画像GをA新聞の事故翌日の朝刊の組版に挿入させた(新聞掲載時、画像もモノクロで印刷されることになっていた。)。

 Dの唯一の法定相続人であるDの母Jは、A社のこのような行為に憤りを感じているが、A社に対してどのような主張をすることができるか。これに対し、A社としては、どのような抗弁を主張することができるか。

問2 A新聞社では、A新聞のWEB版に記事Eを掲載することとした。その際、写真画像Gについて、① A新聞のWEB版用にA新聞社が確保しているサーバ領域に写真画像Gの画像データを新たにアップロードした上で記事Eの本文を記録したウェブページから同画像データに埋め込み型リンクを貼るという手法を採用すべきか、② Dの個人ブログにアップロードされている写真画像Gの画像データに、記事Eの本文を記録したウェブページから直接埋め込み型リンクを貼るという手法を採用すべきかが問題となった。両手法の著作権法上の取扱いの差を説明した上で、A新聞社の法務担当として適切なアドバイスをせよ。

問3 Bは、A新聞社が発行する週刊誌Kにおいて、上記事故後1年が経過した段階で上記事故を振り返る記事を執筆した。その中で、Bは、旅行客Dの無念を強調するため、Dが小学生の時に作成した卒業作文の中から、Dの将来の夢を記載した一節を抜き出した上で、ひとこと、「このようなDの夢を打ち崩した、もうけ優先主義のC社のずさんさは、決して許されるべきではない」と締めくくった。抜き出された一節部分に創作性が認められる場合に、Jは、A社に対してどのような主張をすることができるか。これに対し、A社としては、どのような抗弁を主張することができるか。

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09/15/2015

最強という程ではないけど

9月13日にロージナ茶会主催で行われた「ぼくがかんがえるさいきょうのちょさくけんほう」イベントで、観客の一人として発言した内容を少し整理するとこんな感じです。


 著作権法が第1条にてその究極的な目的とする「文化の発展」とは、より多くの文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する作品が創作され、公表され、公衆に伝播されることにより、社会を構成する人々がそのような作品を広く享受できるようになることをいいます。

 そして、そのような「文化の発展」をもたらす手法の一つとして、そのような作品を創作した人々に対して、そのような作品を公衆に提示又は提供するにあたって、これが純粋な市場原理に基づいてなされた場合に得られるであろう利益を超える利益(超過利潤)を得る機会を、第三者が一定期間当該作品を公衆に提示又は提供することを排除する権限を付与することにより保障することによって、新たな創作活動を行うインセンティブを付与することとしたのです。これが、「著作権」(著作財産権)の存在理由です。

 しかし、著作権は、行使の仕方次第では、特定の作品の公衆への伝播を阻害する要因ともなり得ます。そして、ある作品の公衆への伝播が阻止され、人々がこれを享受する機会を失うということは、人々の知る権利が制約されることとなるとともに、著作権法の究極目的である「文化の発展」を阻害することにも繋がってしまいます。したがって、市場競争をある程度制約して超過利潤を発生させて創作者に投下資本回収の機会を保障するという基本線を維持しつつも、著作権があるが故に却って作品の伝播が阻害される自体を回避するような政策が求められるわけです。

 ところで、日本国は、著作権法に関しては、ベルヌ条約及びWIPO著作権条約に加入していますから、上記政策を遂行するにあたって、両条約を遵守する必要があります。ベルヌ条約においては、特別の場合について著作物の複製を認める権能は同盟国の立法に留保される(すなわち、著作者の許諾なくして著作物を複製することができる場合を設定する規定を置くことが許される)としつつ、そのような複製(そのような立法により適法とされる複製)が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とするとされます(9条2項)。また、公衆への伝達権(これが日本法では送信可能化権や自動公衆送信権などになります。)などの新しい権利についても、「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない特別な場合」には、加盟国は権利の制限規定を設けることができます(WIPO著作権条約10条1項)。日本は伝統的に、憲法と条約とが抵触する場合には憲法が優位するという憲法優位説が通説となっている国ですから、憲法上保障されている知る権利を守るために著作権の制限規定を設けることは許されることとなるわけですが、「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しない」となれば、なおさら大手をふるって権利制限規定を設けることができるわけです。

 以上のような前提の下で、私は、次のような仕組みを導入することを提唱します。例えば、絶版となっている書籍についてこれを書籍または電子書籍の形で再発行したり、日本国在住者向けに配信されていない実演について日本国在住者向けに配信したりするなど、著作者や隣接権者において投下資本を回収すべく作品を日本国内の広い範囲において公衆に提示・提供していない場合には、第三者がこれを公衆に提示・提供したとしても、差止請求権の行使を認めず、また、刑事罰の対象としないこととしてほしいのです。この場合、「著作物の通常の利用は妨げられ」ていないわけです。もちろん、国民の知る権利を優先させる以上、上記のような取り扱いを受けるのは公表された著作物に限られるべきでしょうし、人格権的な理由での差止請求権の行使は認容されるべきなのでしょう。また、歌詞やメロディ自体はJASRAC等を通じて広く許諾されているものの特定の実演についてはこれを最初に収録したレコード製作者が日本国内での流通を拒むが故に日本国居住者がこれを享受できないという場合には、JASRAC等との間では事前に許諾を受けるべきだとは言えるでしょう。また、当該著作物が公表されてから日本国内で投下資本を回収すべくの公衆への提示・提供が行われないままどのくらいの期間が経過したら上記のような利用をなし得ることとするのかをどのような基準に基づいて決めるのかについても異論が生ずることでしょう。それでも、原則として、超過利潤を上乗せして作品を日本国内において公衆に提示又は提供することによって投下資本を回収する機会を与えられておきながらこれを行使しない人たちに過度に配慮することによって、その作品を人々が享受する機会を喪失すること、そして、その作品を通じた文化の発展が阻害されることを、なるべく回避すべきだと考えるわけです。

 もちろん、このような形でその著作物が利用される場合、あくまで無許諾利用なのですから、損害賠償請求権の行使は許されるべきでしょうし、文化庁長官による裁定による利用ができるように法制度を整えた方がいいのだろうとは思います。そのような利用が無許諾でなされても金銭的な補償は得られるということであれば、「著作者の正当な利益を不当に害しない」ということに繋がりやすいのですから。

 もう一つ私が提唱したのは、著作権原簿または著作権等管理事業者が提供する権利者データベースを調べてなお現在の著作権者が誰であるのかがわからない場合には、著作権法67条の裁定手続きを利用できることとしようというものです。著作者が著作権を第三者に譲渡しないまま死亡した場合、その著作権はその相続人が相続するのが原則ということになりますが、特定の相続人が単独相続したのか、全ての法定相続人がその法定相続分の割合に応じて相続したのか、あるいは第三者に遺贈されたのかについて、理論的には、戸籍謄本を取り寄せることによって、当該著作者の法定相続人(またはその法定相続人、またはさらにその法定相続人、または、さらにその法定相続人、または、さらに法定相続人)を探し出して事情を聞くことにとって確認できる可能性はあるものの、そこに至るまでのコストは過大であり、かつ、それだけのコストをかけても結局空振りに終わる可能性も大ということとなります。そうなると、よほどその作品を利用することによって大きな利益を得られる見通しが立たないと、すでに亡くなった人の作品を利用することは困難となってしまいます。それは、文化の発展に寄与するとの著作権法の究極目的からすれば、本末転倒です。したがって、著作物を利用しようという人たちの調査コストを引き下げる必要があるのです。

 このような制度にしたとしても、著作権登録等をしなかった著作権者は、自分がその著作物について著作権を有していることを告げることにより、過去の利用に関する供託金を取得できる外、将来の利用について差止めを求めることができるわけですから、ベルヌ条約が定める無方式主義に抵触することはありません。参照すべき「権利者データベース」に、外国政府ないし外国の登録事業者が提供している権利者データベースを含めれば、外国人が権利を有する著作物についての保護が不当に欠けることにはならないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 05:42 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/25/2015

TPP知財以降の国内法整備について──保護期間編

 TPP交渉がまとまるかどうかは未だ予断を許しません。そして、TPP交渉がまとまった場合に、知的財産権関連の条項がどうなるのかも未だよくわかりません。

 仮にTPP交渉がまとまった場合、国会でこれを批准したときに初めて日本としてこれに拘束されることとなり、TPP上の立法義務に合わせた国内法を国会が制定したときに初めて、私たちはこれに拘束されることとなります。

 そういう意味では、TPP交渉がまとまったら即時著作権の保護期間が延長されるわけでも、著作権侵害罪が非親告罪化するわけでも、法廷賠償制度が導入されるわけでもありません。

 ただ、包括通商条約というTPPの性質上、一部の条項だけ留保して批准と言うことも難しいでしょうし、与党が衆議院で3分の2以上の議席を有している以上、議会で批准をひっくり返すというのも難しいでしょう。したがって、農村部選出の議員を中心に反対意見が表明されるだろうとは思いますが、程なく批准はされてしまうのだろうと思います。したがって、鍵は、どういう風に国内法を制定していくのかという話になりますが、WIPO著作権条約の時も世界に先駆けて国内法を整備してしまった日本政府のことですから、一気に法改正がなされてしまう危険があります。

 だからこそ、TPP交渉がまとまる前に、リークされているTPP知財の条項案を前提に、いかに国内法を整備していくのかを論じ、ある程度まとまったら文化庁や各政党に提示しておくことが有益だと思います。

 例えば、著作権の保護期間については、どのようなことが考えられるでしょうか。

 現行著作権法51条は次のような規定になっています。

(保護期間の原則)

第五十一条  著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。

2  著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。

 TPPにおいて著作権の保護期間を最低70年とすることが義務づけられた場合、この「五十年」の部分が「七十年」に置換される法改正が予想されます。

 では、何も出来ないのでしょうか。そうでもありません。

 例えば、著作権法を改正する際には、通常、「附則」というのを定めて、法改正前にすでに存する著作物等について改正法をどの範囲で適用するのかを定めることになっています。著作権の保護期間については、例えば、

(著作物の保護期間についての経過措置)

第××条  改正後の著作権法(次条において「新法」という。)第五十四条第一項の規定は、この法律の施行の際現に公表されている著作物については、なお従前の例による。

という規定を附則に置けば、著作権の保護期間が70年に延長されるのは、改正法施行後に公表された著作物に限定されることとなります。日本では、著作権法は、「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」(1条)ものとされており、著作権法による保護、言い換えれば著作物の利用について著作権者への独占権の付与は、それが新たな創作活動へのインセンティブの付与に繋がるからこそ例外的に認められているとの考えが一般的ですので、新たな創作活動へのインセンティブの付与に繋がらない「すでに公表されている著作物についてまでその保護期間を延長すること」は、その立法目的を超えて他者の権利(表現の自由ないし営業の自由等)を制約することとなり許されないといえますので、理屈は立つことになります。

 また、公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物については、文化庁長官の裁定を受け文化庁長官が指定する特定の登録機関にその現在の著作権者が登録されていない場合(登録上の著作権者がすでに死亡している場合を含む。)には、裁定手続きの対象とするような法改正を行うことにより、著作者の死後50〜70年後の、転々相続による著作権の共有者全員を探し出すコストから、その著作物の利用希望者を解放することが出来ます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

同人誌の表紙絵

同人誌の写真をネットで公開することについて法律的にどのような問題が生じてくるのかについて、AVANCE LEGAL GROUP LPCの山岸純弁護士と児玉政己弁護士に聞いたニコニコニュース内の記事が反響を呼んでいます。その真偽について検討してみましょう。

 両弁護士によれば、

この種の同人誌は、既存のマンガなどのキャラクターの特徴が忠実に再現されていてこそ購買意欲が生じると言われていますので、『同人誌の製作者』のオリジナリティはかえって購買者にとって邪魔になるだけであり、このようなオリジナリティの発現はおのずと否定される場合が多くなるかと思います。とすると、“オリジナリティが欠ける”=“著作権が発生しない”ということになりますので、『二次創作系同人誌』の表紙については、無断掲載されても、『同人誌の製作者』への著作権侵害の可能性は低くなると考えることができるわけです

とのことです。

 どうも、同人誌というものを誤解されているような気がしてなりません。二次創作系の同人誌においては、既存の漫画のキャラクターの特徴を押さえつつ、各同人作者の個性を反映させたり、ストーリーにあわせたり、さらにデフォルメしたり、むしろデフォルメを弱めたりして、元のキャラクターとは明らかに異なるキャラクター絵を生み出す方がむしろ一般的です。ピカチュウすらHに変身させるのが同人誌です。既存の漫画のキャラクターに同人作家の創作性が加えられた新たなキャラクターが表紙に登場することは何ら不思議ではありません。

 さらに言えば、キャラクターの描き方自体は元の漫画のキャラクターに忠実だったとしても、表紙絵における構図、各キャラクターのポーズやその衣装の組み合わせ、背景等の描き方にその同人作家の個性が反映されていれば、表紙絵自体、二次的著作物たりうると言うことになります。

 記事では、上記両弁護士の見解から、

『二次創作系同人誌』は、そのほとんどが“著作権が発生しない”。よって、写真をネットにアップすることは法的には問題ないようだ。

との結論を導きます。これはとんでもない間違いです。同人誌の表紙絵が二次的著作物にあたるかどうかに関わりなく、元の漫画のキャラクターの表現上の本質的特徴を直接感得できるものである限り、これをウェブ上にアップロードすることは、原則として、元の漫画の著作権を侵害することとなります。二次的著作物の利用についても、原作品の著作権者は権利行使をなし得るのです(著作権法27条)

 さらに、同記事では、両弁護士の発言として、以下のように続けます。

例えば、写真全体に表紙が納まるように撮影する場合などは、表紙の「複製」と評価される可能性が高く、「著作権」侵害となりますが、表紙だけではなく、ほかの被写体(同人誌を持って立つ購買者、東京ビックサイトの外観、そのほかの背景等)とともに撮影されている場合には、当該写真は表紙の「複製」と評価することは難しくなるものと考えられます。

 しかし、表紙が他の被写体とともに撮影されていようとも、その表紙の表現上の本質的特徴部分がその写真から直接感得できる限り、その写真はその表紙の複製物ないし二次的著作物たりうるのです。もちろん、その表現上の本質的特徴部分を直接感得できない程度に「引き」で写真撮影をすれば「複製」に当たらないこととなる場合もあるとは思いますが、それはむしろ、小さくしか取れていないことによるものであって、他の被写体とともに撮影されていることによって生じた現象ではありません。

 あとは、著作権法30条以下の権利制限規定に当たるかどうかの問題です。コミケ会場等の写真を撮る際に、自分と無関係の参加者が持っていた同人誌の表紙等が写り込んだと言うことであれば、著作権法30条の2が適用される可能性がありますが、撮影時に敢えて同人誌をもって表紙を前面に掲げて写真を撮ったということですと、同条の適用は難しいのではないかという気がします。この場合、当該同人誌の表紙絵は、「写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難である」とは言いがたいからです(仲間を撮影する際には、「その同人誌の表紙絵が写り込むとまずいので、一旦下に置いて下さい云々と指示するのは大変ではありませんので。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/21/2015

浮き世における世知辛い話

 「UQiYO」という音楽ユニットがあります。

 2012年結成の若いユニットですが、2013年9月にセカンドアルバムを出し、また2015年3月にサードアルバムを出す予定とのことです。タワーレコード渋谷店を初めとする全国のレコードショップでインストアライブを行ったり、その楽曲がJ-WAVEでOn Airされたりしているので、知っている人も多いでしょう(skream.jpでは、その新譜が阿部真央やNICO Touches the Wallらと並んで紹介されていますし、ototoyでもこの高評価です。)。

 そんな「UQiYO」に突然のBad Newsが舞い降りました。

 株式会社ビーグリーが「UQIYO」というサービス名を用いて、「世の中のニュースをイラストで表現して投稿する」イラストキュレーションサービスを開始するというのです。

 さらにまずいことに、株式会社ビーグリーは、「Uqiyo」という標章について、2014年11月20日付けで商標出願を行い、2014年12月18日付けでこれが公開されてしまっています。

 指定商品・役務を見てみると、


9 ダウンロード可能な画像,ダウンロード可能な静止画及び動画,ダウンロード可能な電子出版物,ダウンロード可能な電子漫画,ダウンロード可能な音楽・音声・映像,ダウンロード可能な音声付き画像,ダウンロード可能な音声付き静止画及び音声付き動画,ダウンロード可能な音声付き電子出版物,ダウンロード可能な音声付き電子漫画,電子出版物,通信ネットワークを介して文字・画像又は映像に関する情報をウェブサイトに投稿するためのコンピュータプログラム,インターネット又はその他の通信ネットワークを介して電子媒体又は情報をアップロード・投稿・提示・展示・タグ付け・ブログ作成・共有利用・その他提供することを可能にするためのコンピュータソフトウェア,電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラム

35 広告業,広告スペースの貸与又は提供,新聞記事情報の提供(電子通信回線を利用した新聞記事情報の提供を含む。)

38 電子掲示板通信,電気通信(放送を除く。),写真の共有・画像の送信・ファッション情報・ニュース情報に関するメッセージの送信に用いるソーシャルネットワーキングユーザーのためのチャットルーム形式の電子掲示板通信,コンピュータ・携帯型コンピュータ及び有線又は無線の通信機器を利用したユーザー間のリアルタイムで且つ双方向のオンラインによる通信,電子メール・インターネット上のインスタントメッセージ又はインターネット上のウェブサイトによりメッセージを交換するための通信,報道をする者に対するニュースの供給

41 通信ネットワークを用いて行う画像の提供,通信ネットワークを用いて行う静止画及び動画の提供,通信ネットワークを用いて行う電子出版物の提供,通信ネットワークを用いて行う電子漫画の提供,通信ネットワークを用いて行う映像・音楽及び音声の提供,通信ネットワークを用いて行う音声付き画像の提供,通信ネットワークを用いて行う音声付き静止画及び音声付き動画の提供,通信ネットワークを用いて行う音声付き電子出版物の提供,通信ネットワークを用いて行う音声付き電子漫画の提供

42 ンターネット上での記憶領域のホスティング,コンピュータウェブサイトのホスティング,インターネットサーバーの記憶領域の貸与,オンラインミーティング・集会・インタラクティブな議論の開催・運営を目的とする他人のためのオンラインウェブサイトのホスティング,ユーザーにより定義された情報・個人のプロフィール・情報を特徴とするカスタマイズされたウェブサイトのホスティング,ユーザーにより定義された情報・個人のプロフィール・情報を特徴とするカスタマイズされた電子掲示板又はホームページのためのサーバーの記憶領域の貸与,インターネットにおいて利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバーの記憶領域の貸与,インターネットを介したコンピュータプログラムの提供,ユーザーにより定義された情報・個人のプロフィール・情報を特徴とするカスタマイズされたウェブページ用プログラムの提供,コンピュータソフトウェアの提供,ウェブサイトを通じたアプリケーションソフトウェアの提供,電子計算機用プログラムの提供,インターネットにおける会員同士のコミュニケーションを目的としたウェブサイト用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供
45 著名人・芸能人・漫画家・声優に関する情報の提供,ファッション情報の提供(電子通信回線を利用したファッション情報の提供を含む。),インターネットの電子掲示板を用いたプロフィール等の個人に関する情報の提供,個人に関する情報の提供,インターネット上でのウェブサイトを通じたソーシャルネットワーキングユーザー向けの友達探し及び紹介のための情報の提供


となっています。

 Live活動を行ったり、音楽番組に出演したりというサービスや音楽CD等の商品は、指定商品・役務に含まれていないので、直ちに音楽活動の妨げになるわけではありません。ただ、プロのミュージシャンとしては、インターネットを通じたファンとの交流を確保していくことがほぼ必須になってきているので、「通信ネットワークを用いて行う画像の提供,通信ネットワークを用いて行う静止画及び動画の提供」「通信ネットワークを用いて行う映像・音楽及び音声の提供」「通信ネットワークを用いて行う音声付き画像の提供」「通信ネットワークを用いて行う音声付き静止画及び音声付き動画の提供」でユニット名の使用が制約されるとなると、厳しいだろうなあとは思います。

 では、「UQiYO」としては、この商標出願に対して何かできることはあるのでしょうか。

 まず、商標法43条の2では、次のような定めがあります。


(登録異議の申立て)

第四十三条の二  何人も、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り、特許庁長官に、商標登録が次の各号のいずれかに該当することを理由として登録異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の指定商品又は指定役務に係る商標登録については、指定商品又は指定役務ごとに登録異議の申立てをすることができる。

一  その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条 の規定に違反してされたこと。

二  その商標登録が条約に違反してされたこと。


 この登録異議申立は、「何人も」すなわち利害関係の有無にかかわらず、申し立てることができます。ただし、商標掲載公報の発行の日から二ヶ月以内に限定されてしまいます。

 これとは別に、商標法46条1項は以下のように定めています。


(商標登録の無効の審判)

第四十六条  商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。

一  その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条 の規定に違反してされたとき。

二  その商標登録が条約に違反してされたとき。

三  その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。

四  商標登録がされた後において、その商標権者が第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条 の規定により商標権を享有することができない者になつたとき、又はその商標登録が条約に違反することとなつたとき。

五  商標登録がされた後において、その登録商標が第四条第一項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているとき。

六  地域団体商標の商標登録がされた後において、その商標権者が組合等に該当しなくなつたとき、又はその登録商標が商標権者若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの若しくは第七条の二第一項各号に該当するものでなくなつているとき。


 この無効審判の申立ては、同法47条に該当する理由に基づくときは商標権の設定の登録の日から5年以内に申し立てる必要がありますが、それ以外の場合は特に申立期限はありません。ただし、無効審判請求を行い得るのは、商標登録を無効とすることに何らかの利害関係があることが必要だとされています。

 まあ、まだそもそも出願が公開された段階なので、除斥期間の心配をする必要はないし、「UQiYO」というユニット名で活動している以上「Uqiyo」の商標登録を無効とすることに利害関係があることは認められるでしょうから、「Uqiyo」についての商標登録がなされてもとりあえず「UQiYO」のメンバーにこの登録異議申立てや無効審判の申立てができることは問題ありません。

 では、株式会社ビーグリーが「Uqiyo」という標章につき商標登録を行うことは法的に許されないのでしょうか。

 こういうときは、通常、商標法3条ないし4条1項の各号の規定のどれかに該当しないかを見てみることになります。

 すると、4条1項8号の

他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

や、10号の

他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

や、15号の

他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

や、16号の

商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

あたりが、目に飛び込んできます。

 16号は遠いように思われるかも知れませんが、「LADY GAGA」という登録商標について、

本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」のうち「LADY GAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しない品質(内容)の商品に使用した場合,「LADY GAGA」(レディ(ー)・ガガ)が歌唱しているとの誤解を与える可能性があり,商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。したがって,本願商標は,商標法4条1項16号に該当する

とする裁判例(知財高判平成25年12月17日)があるので、検討の対象となります。

 まあ、本筋は10号該当をメインに争うというものだとは思います。そこでは、「UQiYO」が「需要者の間に広く認識されている」と言えるかどうかという点が争点になるのだろうとは思いますね。インディーズながら注目され始めているユニットについて、ユニット名について商標登録がなされていないことを奇貨として、「通信ネットワークを用いて行う画像の提供,通信ネットワークを用いて行う静止画及び動画の提供」「通信ネットワークを用いて行う映像・音楽及び音声の提供」「通信ネットワークを用いて行う音声付き画像の提供」「通信ネットワークを用いて行う音声付き静止画及び音声付き動画の提供」等の役務について商標出願してしまうと言うことが広く認められてしまうと、「インディーズデビュー時にユニット名を商標登録しておく」ということが頭の片隅にすらないほとんどのアーティストは厳しいだろうなとは思います。

 「UQiYO」の場合、そのCDはAmazon.co.jpやHMV等で購入出来ますし、その楽曲をiTunes Store等でダウンロードすることもできますし、主要都市でのインストアライブを成功させていますので、「地域性」のところでは問題は生じないと思います。ただ、音楽市場においては、ジャンルごとの市場の細分化が進んでいることから(NHKの紅白歌合戦に出場している歌手ですら、音楽CD等の需用者の1割に知られているというのはごく一部です。)、「需要者の間で広く認識されている」と認められるためにどの程度の「浸透度」が必要かは、問題となり得るところです。「細分化された音楽ジャンルの愛好家の中での浸透度」で周知性の有無を判断しないと、音楽ジャンルでは、現実的妥当性のある結論を導けないのではないかという気がしてならないところです。

 まあ、「需要者の間で広く認識されている」とはいえないとして4条1項10号の適用が認められなかったとしても、「先使用権」(32条1項)の要件としての「需用者の間に広く認識されている」はそれよりも緩く解釈されるとするのが一般的ではあるのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 08:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/12/2014

スポーツと知的財産

 日本弁理士会が発行している機関誌に「パテント」があります。

 その2014年4月号では、「スポーツと知財」特集が組まれています。

 その中で「スポーツと知的財産」というタイトルで、スポーツにまつわる知的財産権を総花的に解説する論文を掲載していただいております。

 そういう意味では新規性には乏しいのですが、フィギュアスケートの演技が著作権法により保護されるのかについて少し詳し目に解説してあるのと、スポーツ中継への「ユニバーサルアクセス」について言及してあるあたりに注目していただければとは思います。

 なお、私の論考以外だと、黒田健二弁護士や、中村仁・土生真之弁護士がアンブッシュ・マーケッティングについての解説をしていたり、西村雅子弁理士がスポーツブランドの保護について論考をお書きだったり、國安耕太弁理士がスポーツ中継映像にまつわる著作権問題等に言及されていたりするので、そういった向きに関心がある方にはお得な号かなとは思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:08 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/14/2014

音楽コンテンツにおける創意工夫

 今年書きたい論文のテーマの一つが、音楽コンテンツにおける創意工夫の配分問題です。

 メンバーの1人が作詞・作曲した楽曲を自分たちで演奏するバンドを想定してみてください。バンドのメンバーは各々、自分のパートを具体的にどう演奏するのか創意工夫するわけです。もちろん、他のメンバーやプロデューサー等がいろいろ意見してくることもあり、その場合にはそれを参考にして演奏方法を変えたり、変えなかったりするわけです。ライブの場合、具体的にどう演奏するのかはそのたびごとに微妙にまたは大胆に変わっていきます。また、レコード(CD)にその楽曲についての実演を収録する場合、様々な方法で行われた実演のうち特定のものをピックアップして(ときにはデジタル的に加工を加えた上で)一体のものとして組み上げる作業は、多くの場合プロデューサーが行います。

 このように、実際に公衆の耳に届く特定の音の連なりを作りあげる過程では様々な人々の様々な創意工夫が介在しています。それらのうち、作曲または編曲として「著作権」をもって保護するもの、実演あるいはレコード製作における創意工夫として「著作隣接権」をもって保護するにとどまるもの、あるいは、著作権法による保護の対象外とするものは、どのような根拠をもって、どのように区分されるのか。それが今年のテーマの一つです。

 そこには、音楽上のアレンジをもって即著作権法上の「編曲」としてしまうと実務的な不都合が大きすぎるという問題意識があります。例えば、著作権管理事業者は編曲件についての信託譲渡を受けていないため、ある楽曲を実演する上で通常なされる程度のアレンジまで著作権法上の「編曲」に含めてしまうと、「著作権管理事業者から著作物の利用許諾を受ければ、合法的に、他人が作詞・作曲した楽曲の演奏ができる」というスキームが成り立たなくなってしまいかねません。また、著作権法第43条を文理解釈する場合、編曲した上で行う演奏については、無償かつ非営利目的で行ったとしても、著作権法第38条第1項による権利制限の対象外となってしまいます。

 「実演」を媒介にして情報が公衆に提示・提供されることが予定されている著作物類型において、「実演」における創意工夫の結果生ずる、伝達される情報の変更が全て著作物それ自体の変更として評価されるのはおかしいのではないか。それが議論の出発点です。同じ現象は、演劇についても、あるいは舞踊についても生ずるわけですが、音楽の場合、元の著作物の演奏またはその録音という範囲にとどまるのか、あるいは、二次的著作物を創作した上での演奏または録音と評価されるのかで権利処理コストが大幅に異なってしまいますので、より先鋭な利害対立が生じうるのです。

 まだ今年は始まったばかりですので、今日はここまで。

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12/08/2013

コスプレと著作権

 今日は、広島の方で「イベント:同人誌・コスプレの自由と、著作権訴訟」という target="_blank">イベントがあるそうなので、コスプレと著作権の関係について考えてみましょう。


 「コスプレ衣装専門店の経営者が、『海賊戦隊ゴーカイジャー』のキャラクターが着るジャケット4点を、著作権者(東映)の許可を得ずに複製されたと知りながら、3万2000円で売った疑いで逮捕された」事件を覚えているでしょうか。


 この事件は、コスプレ衣装が「輸入の時において国内で作成したとならば著作権の侵害となるべき行為によって作成されたもの」であることを前提に、その情を知ってこれを頒布した行為を著作権侵害行為とみなしたものです。

第百十三条  次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。


一  国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為


二  著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為M/p_,



 しかし、コスプレ衣装を作成することが著作権侵害行為にあたるとする警察の法解釈は、これが判例として定着すると、その影響力は甚大です。


 「コスプレ」は、政府が推進する「Cool Japan」の中核をなすコンテンツの1つであり、自治体の中には、コスプレサミットを開くなどして、世界中のアニメファンを呼び込んできたところもあるからです。コスプレイベントに参加するアニメファンたちがアニメの権利者から事前に許諾を得るということは事実上困難ですし(とりわけ、今日では外国在住の外国人もコスプレをしに日本に来ます。)、イベント運営者が代わりに権利者から許諾を取ると言うことも困難です(許諾を取れた権利者の作品についてのコスプレしか認めないという運用は実際問題無理でしょう。)。したがって、この件が立件され、起訴され、有罪判決が下されるようなことがあれば、この国では、事実上コスプレイベントが開けないということになります。


 実際のところは、いかがでしょうか。

 まずは、「海賊戦隊ゴーカイジャー」が、ゴレンジャー以来連綿と続く「スーパー戦隊」シリーズの1つであり、そもそも実写テレビ映画がオリジナルだということに注目してみましょう。ここでは「キャラクターが着るジャケット」は、まさに最初からジャケット、すなわち、衣装としてデザインされているということです。


 衣装のデザインについては、意匠登録がなされた場合に限り、意匠法により保護するというのが原則です。例外的に、純粋美術に匹敵する高度の観賞性が認められる場合に限り、著作権法による保護の対象となるとするのが、判例・多数説です。


 すると、ゴーカイジャーが身につけているジャケットは、多少派手ではあるものの、ジャケットという枠を超えて、純粋美術として鑑賞するに値するかと言われれば、私にはそうは思えません。そうだとすると、このジャケットデザイン自体は著作権法による保護の対象とはならず、これと同じデザインのジャケットを輸入して販売しても、113条1項1号のみなし侵害にはあたらないということになります。


 では、仮に「海賊戦隊ゴーカイジャー」がアニメ作品だったらどうでしょうか。アニメのキャラクターが普段身につけている衣装のデザインは、アニメキャラクターという「著作物」の一部として、著作権法による保護を受けることになるのでしょうか。


 これには2通りの考え方があろうかと思います。


 1つは、衣装デザインがそのアニメキャラクターの「表現上の本質的特徴部分」にあたるといえる場合に限り、それを直接感得しうるような形状の衣装を作成することは「複製」に当たるとする考え方です。ただし、アニメキャラクターの表現上の本質的特徴部分は、顔立ちや体つきにあるのが通常なので、たいていの場合衣装デザインが似ていると言うだけでは、元のアニメキャラクターの「表現上の本質的特徴部分」を直接感得できることにはならないとする考え方です。


 なお、コスプレイヤーの顔立ち及びスタイル、髪型等により、一層特定のアニメキャラクターを想起させるコスプレというのもあるとは思いますが、人体を用いて表現している要素を織り込んで著作物を「複製物」とするのは、「人を『物』として扱ってよいか」という問題を生じさせるように思います。「複製物」という場合の「物」は、有体物を指しているからです。

 もう1つは、衣装のデザインの類似性は基本的に意匠法で対処すべきなので、アニメキャラクターの衣装デザインと類似する衣装が製作されたとしても著作物としての利用がなされていないので原則として著作権侵害とすべきではないが、例外的に、その衣装が純粋美術に匹敵する高度の観賞性を認められるようなものであった場合には、美術の著作物として有形的に再製されたとする考え方です。商標法においては、形式的には第三者の登録商標を使用している場合であっても、商品等の出所を識別するという商標本来の用法で使用されているわけではない場合には、「商標としての使用」ではないので、商標権侵害にはあたらないとするのが判例・通説です。この考え方を著作権法にも応用して、衣装のデザインが著作物たるアニメキャラクター衣装デザインと類似するものであったとしても、その衣装のデザイン自体が高度の観賞性を有せず、著作物としての評価を得られる類のものに至っていない(意匠として評価されるにとどまる)場合には、「著作物」としての衣装デザインが有形的に再製されたとはいえないので、「著作物としての利用」ではなく、著作権侵害にはあたらないとするのです。


 いずれにせよ、このような難しい法律問題を、著作権法のエキスパートではない検察官に提起させ、著作権法のエキスパートではない刑事裁判官に判断させるのはいかがなものかという気はします。コスプレ衣装をネット通販で売っていたということは、特定商取引法に基づく表示がなされており、その営業主体がどこの誰であるかを権利者は容易に知り得たと思いますので、警察は「民事でやれ」と突き放すべきだったのではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 01:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/03/2013

「加護亜依」というブランド

 ゲームラボの10月号に掲載したコラムの元原稿です。



 元モーニング娘。の加護亜依さんが「威風飄々」というプロダクションから芸能界に再復帰しようとしたところ、加護さんの前所属事務所である株式会社メインストリームから、加護さんがその名前で芸能活動を行うことは同社の商標権を侵害することになるとして、ストップがかかったというニュースが話題となっています。

 確かに、特許電子図書館で「加護亜依」という商標が登録されているかを調べてみると、メインストリーム社が平成21年12月11日に、41類の「演芸の上演、演劇の演出又は上演、音楽の演奏、歌唱の上演、ダンスの演出又は上演、映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営、映画の上映・制作又は配給、放送番組の制作」云々という指定役務で商標登録をしているようです。

 では、加護さんは、「加護亜依」という本名を使って芸能活動をすることが本当にできないのでしょうか。

 商標法26条1項1号は、「自己の肖像又は自己の氏名若しくは自己の名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標」については、商標の効力は及ばないとしています。「加護亜依」は本名とのことですので、加護さんから見ると、これは「自己の氏名」にあたりますから、本号でいけそうな気がします。

 ただし、本号で正当化しようとする場合、今後、加護さんがソロCD等をリリースする際に、加護さんの名前を「一般需用者の注意を引くような特別な字体」を用いてしまうと、「普通に用いられる方法で表示したもの」とはいえないとして、商標権侵害が認められてしまう危険があります(名古屋高判昭和61年5月14日【東天紅事件】)。

 もっとも、加護さんがライブ活動を行う場合、役務提供の主体は、加護さんなのか、現所属事務所の威風飄々社なのか、あるいはライブの主催者なのかということも問題となります。後二者だとすると、「加護亜依」という標章は、「自己の氏名」にはあたらないとして商標権侵害が成立しそうにも思われるからです。もっとも、ライブのチケットや会場の看板等にそのアーティストの氏名等が記載されている場合、その主催者によるライブであることを示す標章としてそのアーティストの氏名を使用しているわけではありません。したがって、ファンこそが役務提供の相手方と考えて役務提供の主体こそが主催者だと解した場合、「加護亜依」という名称は商標として使用されていないので、商標権侵害とはならないということになりそうです。

 これに対し、主催者を役務提供の相手方と考えた場合、主催者と上演契約を結ぶ主体は通常所属事務所ですから、役務提供の主体は所属事務所とみることもできそうです。この場合、芸能事務所にとっての所属タレントの芸名(実名と同じ場合を含む)は、その事務所が提供する役務を他の事務所が提供する役務を識別するものとして使用されるものと言いうるかが問題となるように思います。言いうるのであれば、威風飄々が自社の所属タレントとして「加護亜依」という芸名の者がいることを示して、主催者にタレントを派遣し上演等をさせるのは、「加護亜依」という商標の使用にあたるといえそうです。

 ただ、商標法4条1項8号は、他人の氏名を含む商標については商標登録を受けることができないのを原則としており、その他人の承諾を得ている場合に限り例外的にそのような商標の登録を可能としています。問題となっている商標についても、加護さん自身がその登録を承諾したのだろうと推測できます。それはなぜかと言えば、当時加護さんとメインストリーム社との間で専属契約が締結され、これに基づき加護さんの芸能活動をプロモートする義務をメインストリーム社が引き受けたからでしょう。だとすると、専属契約が解除等により終了した場合は、この前提が覆されているわけですから、メインストリーム社は、「加護亜依」という標章について商標登録を維持する社会経済的な基礎を失っているといえます。このような場合に、形式的に商標登録が維持されることを奇貨として、加護さんの芸能活動を妨害する目的で商標権を行使することは、権利の濫用に当たると解することは十分可能だと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:44 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

もう、従量制で行こうよ

NHKの最高意思決定機関である経営委員会が、NHK執行部に対し、インターネットサービス充実のため、受信料制度の見直しを求めたとこ ろ、テレビがなくても全世帯から受信料を徴収する義務化を明記した回答文書を提出していたことが2日、分かった。

とする毎日新聞の記 事が反響を呼んでいます。

 ただ、インターネット配信の場合、各IDの視聴時間を配信事業者は把握できるわけですから、単純に従量制サービスを充実させたらいいのではないかと思 います。現在、NHKの受信料は地上波で2ヶ月2550円(振込の場合)ですから、1日2時間視聴したとして1時間平均約43円です。同時再送信、異時再 送信ともに1分1円なら、価格として妥当だと思うんですけどね。例えば、サッカー中継等で、試合前のセレモニーや解説、ハーフタイム、試合後の得点シーン のリプレイなどと合わせて約120分で120円なら、悪くない数字です。

 もちろん、異時再送信の場合、権利処理が面倒ではあるのですが、ただNHKの場合、既にオンデマンドサービスで権利処理のノウハウは積んであるはずで す。まあ、ワールドカップ等は難しいんでしょうけど、そういう特別なものについては異時再送信できないってことにしてしまえば済むと思いますけどね。

Posted by 小倉秀夫 at 11:16 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/17/2013

JASRACと私的独占行為

 昨日のTokyo BootUP Conferenceで、JASRACに対する排除措置命令取り消した審決を破棄した東京高裁判決についての解説を、ワタベさんと一緒に行いました。とはいえ、Tokyo BootUPConferenceは、ミュージシャンや音楽業界関係者が集まることを予定していますので、平易に解説しないといけないという要請が通常よりも強かったので、ここではもう少し詳しい話をしようと思います。

 そもそもの発端は、公正取引委員会がJASRACに対し、私的独占行為の排除措置命令を下したことにあります。ここで、私的独占行為とされた行為(「以下、「本件行為」といいます。)は下記の通りです。

社団法人日本音楽著作権協会は,放送法(昭和25年法律第132号)第2条第3号の2に規定する放送事業者及び電気通信役務利用放送法(平成13年法律第85号)第2条第3項に規定する電気通信役務利用放送事業者のうち衛星役務利用放送(電気通信役務利用放送法施行規則(平成14年総務省令第5号)第2条第1号に規定する衛星役務利用放送をいう。)を行う者であって,音楽の著作物(以下主文において「音楽著作物」という。)の著作権に係る著作権等管理事業を営む者(以下主文において「管理事業者」という。)から音楽著作物の利用許諾を受け放送等利用(放送又は放送のための複製その他放送に伴う音楽著作物の利用をいう。以下主文において同じ。)を行う者(以下主文において「放送事業者」という。)から徴収する放送等利用に係る使用料(以下主文において「放送等使用料」という。)の算定において,放送等利用割合(当該放送事業者が放送番組(放送事業者が自らの放送のために制作したコマーシャルを含む。)において利用した音楽著作物の総数に占める社団法人日本音楽著作権協会が著作権を管理する音楽著作物の割合をいう。)が当該放送等使用料に反映されないような方法を採用することにより,当該放送事業者が他の管理事業者にも放送等使用料を支払う場合には,当該放送事業者が負担する放送等使用料の総額がその分だけ増加することとなるようにしている行為

 括弧書きが多くてわかりにくいので枢要部分だけ取り出すと次の通りとなります。

放送事業者から徴収する放送等使用料の算定において,放送等利用割合が当該放送等使用料に反映されないような方法を採用することにより,当該放送事業者が他の管理事業者にも放送等使用料を支払う場合には,当該放送事業者が負担する放送等使用料の総額がその分だけ増加することとなるようにしている行為

ここでいう「放送等利用割合」とは、「当該放送事業者が放送番組において利用した音楽著作物の総数に占めるJASRACが著作権を管理する音楽著作物の割合をいいます。

 公正取引委員会は当初、JASRACの上記行為を「排除型の私的独占」にあたるとして排除措置命令を下しました(実はこれ、非常に適用事例が少ないのです。)。では、排除型の私的独占ってどのような場合に成立するのでしょうか。

 独占禁止法2条5項は次のように定めています。

この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

 すなわち、排除型私的独占が成立するためには、次の3つの要件を満たすことが必要です。


  1. 事業者が他の事業者の事業活動を排除したこと

  2. 上記排除により一定の取引分野における競争が実質的に制限されたこと(③)

  3. 上記競争の制限が公共の利益に反していること(④)


です。公取の審決では、1の要件は、結果と行為とを分けて、


  • 本件行為が、他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有すること(①)、

  • 本件行為が、正常な取引手段の範囲を逸脱するような人為性を有すること(②)、


に分解されています。そして、審決では、①の要件を満たしているとは言えないとして、②〜④の要件を満たしているかを判断することなく、排除命令を取り消したのです。

 これに対して、高裁判決は、本件は①の要件を満たしているので審決は取り消す、②〜④の要件を満たすのかについては、審決で判断をしていないので、判断するようにということで、事件を公取に差し戻しています。

 公取の審決が、①要件の充足を否定した理由は、簡単に言えば次の2つです。


  1. 放送事業者の多数の社内通知文書について、イーライセンス管理楽曲の利用を差し控えさせる効果があったとは認められない。

  2. 放送事業者がイーライセンス管理楽曲の利用について慎重な態度を取ったことが認められるとしつつも、利用を回避したとは認められない


 高裁は、この2点を覆していきます。

 ここでいう「社内通知文書」とは、例えば、テレビ朝日において番組制作担当者に送られた社内通知文書には以下の内容が記載されていたと認定されています。


  • イーライセンスの管理楽曲を使用する場合は「使用報告書の提出」と「放送使用料の支払い」が必要になること

  • 使用報告書には、楽曲名、アーティスト名等を記入して、放送日から1カ月以内に提出すること

  • 放送等使用料の額

  • 放送等使用料は番組負担となること


 このような文書が社内で配布されることにより、番組制作担当者は、番組の制作費用からイーライセンスへの放送等使用料の支払いを避けるため、同社の管理楽曲の使用を差し控えたわけです。審決では、そうはいっても使用されていなかったわけではないということが強調されるわけですが、高裁は次のような判断を示して、これを一蹴するのです。

 楽曲の選定については、さまざまな要因があり、例えば、歌手、演奏者の人気度、聴取者の嗜好等に影響を受けたり、カウントダウン番組、リクエスト番組、歌手がパーソナリティやゲストとして出演する番組など、番組の性格により影響を受けたりする面があることは否定できない。

 そのような特別な場合を除くと、多くの場合は、選定の対象とされる楽曲は、1つではなく、複数となると考えられる。

(中略)

複数の選定対象楽曲の中に、放送等使用料の追加負担が不要な楽曲と必要な楽曲があれば、経費負担を考慮して追加負担の不要な楽曲が選択されることは、経済合理
性に適った自然な行動と言える。

 そして、エイベックスグループが、放送等使用料に関してイーライセンスとの契約を解約するに至った経緯についても次のように認定します。

 まずは、上記のようにイーライセンスの管理楽曲の利用が差し控えられているということをエイベックスグループの側で把握するところから始まります。これを受けて、エイベックスグループとイーライセンスはH18.10.16に協議を開き、次のことを決めます。


  • 同年12月末まで、エイベックス楽曲の利用を無償とする。

  • 同年12月末までに、イーライセンス管理楽曲の利用回避について決着をつける。


 その後、イーライセンスは、放送局に足を運び、事態の打開を図ろうとするわけですが、結局うまくいかないわけです。このため、エイベックスグループでは、無償化の終了する平成19年1月以降、イーライセンスの管理楽曲をベイエフエム等が利用することについて、確証を得られなかったため、イーアクセスとの契約を解約したのです。

 審決では、現実には,放送事業者が一般的にイーライセンス管理楽曲の利用を回避したということはできず,イーライセンス管理楽曲の利用について慎重な態度をとったことが認められるにとどまるのであるから、エイベックスグループが正確な情報に基づいてイーライセンスとの委託契約を解約したとはいえないと認定して、JASRACの行為とエイベックスグループによるイーライセンスとの契約の解約との間の因果関係を否認します。

 これに対して高裁は、現に利用回避がなされていた以上、エイベックスの認識が間違っていたとは言えないと判示します。

 また、審決では、

イーライセンスがNHKとの間で平成20年3月以降も利用許諾契約を継続し,それに応じた放送等使用料を徴収していることが認められることを併せ考えると,イーライセンスが,放送等利用に係る管理事業を営むことが困難な状態になっていたというには疑問が残る。

として、イーライセンスが排除されていたということすら否定しにかかるのですが、高裁は、イーライセンスと契約を結んでいるNHKですら、平成20年に4曲、平成21年に3曲
利用しただけであり、イーライセンスが徴収した放送使用料は平成22年になっても9月末までの概算値で2〜30万円程度にしかなっていないことを指摘します。この売り上げでは、事業としてやっていくのは困難です。

 何でそういうことになっているのでしょうか。著作権等管理事業法制定前は、JASRACのみが音楽著作権の管理事業を行っていました。ですから、当時は、放送事業を営む者は、市販のレコード等に収録されている楽曲を合法的にしようと思えば、JASRACと利用許諾契約を締結せざるを得ませんでした。だから、ほとんどの放送事業者は、放送にかかる音楽著作物の利用に関して、JASRACと利用許諾契約を結びました。その際、JASRACは、放送事業収入の1.5%を支払えば管理楽曲を使い放題使える包括許諾契約を推奨し、ほとんどの放送事業者は、これに応じました。IT技術が未発達のころは、日々の放送の中でどの楽曲を何回使用したのかを管理することはJASRACにとっても放送事業者にとっても相当の手間がかかることだったので、この仕組みは当時としては合理的だったのでしょう。その後、著作権等管理事業法が制定され、JASRAC以外の事業者が音楽著作権の管理事業を行えるようになり、実際にそのような事業者があらわれたわけですが、ほとんどの放送事業者は依然として、放送におけるJASRAC管理楽曲の利用について包括許諾契約を引き続き結んでおくという道を選びました。現状を変える合理的な理由がないからです。

 このような事情の下では、放送局がJASRAC管理楽曲を放送で使用することの追加コストは0円ということになります。したがって、JASRAC以外の管理事業者は、放送局から徴収する放送等使用料の価格付けという側面においてJASRACに価格競争を挑んでも、勝ち目がありません。実際、イーライセンスと契約締結にいたっているNHKですら、上記程度でしかイーライセンスの管理楽曲を使用しなかったのです。

 そして、このような事情の下では、JASRC以外の管理事業者に放送にかかる利用の管理を委託してしまうと放送局においてどうしてもその楽曲を使用しなければならないという場合以外放送等において使用されなくなるわけですから、放送等において使用されることを権利者自らが望んでいる楽曲については、JASRAC以外の事業者には管理を委託できないということになります。その結果、放送等で使用されるようなメジャーな楽曲は、管理委託先がJASRACにますます集中していくわけですから、放送事業者としてはJASRAC以外の管理事業者と契約を結ぶ必要性がますます薄れていくわけです。

 このように、管理事業法制定前の法制度の関係でスタートラインが圧倒的に不均衡な状況下で、管理著作物(音楽)の利用許諾という取引分野において、漫然と市場に委ねた場合には、新規参入者が市場で生き残る余地はなくなっていきます(本件に関して、イーライセンス側の努力不足を責める見解もありますが、上記の通り、JASRACが包括契約を放送事業者に提供し続ける限り、新規参入者がどんな企業努力をしようと、放送等における音楽著作物の利用許諾という分野において、採算を度外視することなくJASRACのシェアを奪い取る余地はありません。)。

 このように考えていくと、本件において、「本件行為が、他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有すること」という要件を満たさないとした公取の判断自体に無理があったといわざるを得ません。

 では、JASRACの行為は、私的独占行為であって許されないと解するべきでしょうか。もちろん、今回の判決では、上記①の要件を満たすと判示しただけです。②〜④の要件の充足の有無は、これから審決で判断されることになります。その際、最も問題となるのは、本件行為による競争の制限が「公共の利益」に反しているといえるかどうかという点なのだろうと思います。

 独占禁止法2条6項にいう「公益に反して」の意義について最判昭和59年2月24日刑集38巻4号1287頁は下記のように判示しています。そして、これは、2条5項の「公益に反して」の意義としても妥当するものと一般に考えられています。

独禁法の立法の趣旨・目的及びその改正の経過などに照らすと、同法二条六項にいう「公共の利益に反して」とは、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを指すが、現に行われた行為が形式的に右に該当する場合であつても、右法益と当該行為によつて守られる利益とを比較衡量して、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法一条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合を右規定にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨と解すべきであり、これと同旨の原判断は、正当として是認することができる。

 つまり、形式的には「排除型私的独占」にあたる(①〜③の要件を全て満たす)としても、「自由競争経済秩序」を守るという法益と、当該行為によって守られる法益を比較考量して、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法一条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合には、「公益に反して」いないとして、当該行為の私的独占該当性を否定することになります。

 ここでは、JASRACによる放送事業者に対する包括許諾契約により、放送事業者のJASRACに支払う放送等使用料及び放送使用料支払いにかかる経費が抑えられており、その結果、放送事業者はふんだんにJASRAC管理楽曲を放送の中で使用できているということをどう評価するのかが問題となっていきます。

 「放送事業者のJASRACに支払う放送等使用料が抑えられる」というのは他方で著作権者の犠牲の下に成立している話であり、また、IT技術の発展により、包括許諾方式をやめて全曲個別申請としたとしても、そのための事務経費は以前ほどではなくなってきています。そのようなこと等を考えたときに、包括契約を提供することによるこれらの利点が、私的独占を排除することによる「自由競争経済秩序」を守るという法益に優越するのかといわれると、どうかなと思ってしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 05:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/02/2013

ゼミ選抜用のレポート課題

 中央大学法学部での著作権法ゼミでは、入ゼミ希望者の選別を「レポート&面接」で行うということをずっと続けているのですが、どうもレポートの課題が難しくて躊躇してしまったという声を3年生から聞いたので、今年、志願者が少ないようだったら、難易度を相当引き下げないといけないかなと反省しています。

 なお、今年の課題は下記の通りです。


下記のいずれかを選んでください。

課題1:政府の「クールジャパン戦略」が成功しない理由を説明するとともに、具体的なアーティスト又はコンテンツを例にとって、これを世界市場に売り込むための戦略について論じてください。

課題2:SNSにおいて18歳未満の利用者に特定のサービスを受けさせないために現在とられている手段について説明するとともに、年齢ゾーニングをより確実にするための方策について論じてください。


Posted by 小倉秀夫 at 03:26 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

「自炊代行」事件第1審判決を見ての雑感

 自炊代行の適法性に関して、東京地方裁判所の判断が下されたようです。

 近々某所での勉強会でこの判決がテーマとされ、かつ、私はそのチューターを務めなければならないので、私自身のこの判決についての評釈は、それまで公表を差し控えることにします。ここでは、この判決のもたらすであろう影響について簡単に述べることにします。

 自炊代行業者の主たる顧客は、たくさんの蔵書を抱える人たちです。すなわち、それは、出版社や作家にとっては、たくさんの書籍や雑誌を購入してくれる良き顧客たちです。そういう良き顧客たちの「収蔵スペースを節約したい」という思いが、彼らを「自炊」という行為に走らせたわけです。自炊代行業を潰しにかかった作家たちの今回の行動は、間接的に、自分たちの良き顧客を敵に回したものと言えます。

 もちろん、書籍等の所有者が、自分だけで使用する目的で自ら自炊すること自体はなお適法です。NHKのNewswebの解説でも、その点は強調されていました。まあ、1冊、2冊を自炊するのであれば、「代行業者に頼まずに、自分で自炊すればいいだけですよ」で済むかもしれません。しかし、たくさんの書籍や雑誌を購入してくれた「良き顧客たち」に対し、「収蔵スペースのためにその蔵書を自炊したければ、代行業者など頼まずに、自分自身で自炊作業をおやりなさい」と言ってみたところで、「そのために、何時間、何十時間を費やせというのか!」という話にしかならないのではないでしょうか。

 この判決がきっかけとなって自炊代行業者が次々と廃業に追い込まれるとすると、今後はどうなっていくでしょうか。本好きの人はあきらめて自宅とは別の場所に書籍を収蔵するための部屋を借りるようになるでしょうか。

 むしろ、非破壊型の書籍スキャナーの需要が高まり、OA機器メーカーの技術開発がこの分野に集中していく可能性があるように思います。とりわけ、自動ページめくり機能付きの非破壊型書籍スキャナーは、自炊代行業に代わって、自炊作業に要する手間と時間を節約してくれますので、それなりの価格をつけても、「自室が蔵書でいっぱいになる」程度の購買力のある層に受け入れられる可能性が高まっていきます。そういている間に、メーカー同士の激しい技術開発競争と大量生産効果とが相まって、自動ページめくり機能付きの非破壊型スキャナーの価格が著しく下落することになるのではないかとの予測が成り立ちます。この場合、そんなには書籍等を購入しない人々もその種の機能を有するスキャナーに手が届くようになる可能性があります。そこでは、エンドユーザーは、「自炊」をするために書籍を購入する必要すらなく、誰かから/どこかから借りてくれば足りると言うことになります。それは、却って、作家や出版社のためになっていないようにも思います。

 エンドユーザーの立場から見れば、海賊版を購入するあるいは違法にアップロードされているコンテンツをダウンロードするということについてある種のやましさを感ずることがあるにしても、「Time Shift」「Space Shift」「Media Shift」による利便性の確保については、ITの進歩の成果として当然我々が享受できるものと捉えています。したがって、今回の判決のように、そのような我々の当然の利益が「著作権法」を盾に阻まれると、著作権法自体が、そして、著作権法をそのように反動的に運用する権利者や裁判所自体が怨嗟ないし嘲笑の対象となっていきます。とりわけ、ロクラクⅡ法理が「著作権者を勝たせるために恣意的に利用主体を認定するためのツール」として裁判所により運用される実態が広く知れ渡ると、裁判所の中立性に対する信頼自体が損なわれていきます。

 裁判所の知財部も、権利者団体も、そろそろそういうことに配慮して良いところまで来たのではないかという気がしないでもありません。

Posted by 小倉秀夫 at 02:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/18/2013

陛下プロジェクト事件

 佐藤秀峰先生が@udxさんを訴えた事件の判決が7月16日に下されました。

 佐藤先生が直々にお描きになった絵を無断でアップロードしたわけですから、公衆送信権侵害が認められるのは当然として、注目すべきは、このようなケースで著作権法113条6項のみなし人格権侵害規定が適用された点です。判決文を引用すると下記の通りです。


 被告は,自作自演の投稿であったにもかかわらず,被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく,あたかも,被告が本件サイト上に「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。」「陛下プロジェクト」なる企画を立ち上げ,プロのクリエーターに天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ,原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて,本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである(本件行為1)。本件似顔絵には,「ゆぅ様へ」及び「佐藤秀峰」という原告の自筆のサインがされていたところ,「ゆぅ様」は,被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった(乙2の1・2,弁論の全趣旨)。

 上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示したものである。

 そうすると,本件行為1は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。


 著作権法コンメンタールでも書いたとおり(113条6項の注釈は、私自身が担当しています。)、同項の「著作者の名誉または声望を害する」とはどういうことをいうのかについては大きく分けて二通りの考え方がありますが、今回の判決は、「著作物の利用を通じての著作者の社会的な評価の下落をもたらすような利用」を名誉・声望を害する方法での利用ととらえる近時の裁判例の流れに沿ったものと言えるでしょう。とはいえ、特定の政治的、思想的な傾向を有していると誤解されるような利用を「著作者の名誉または声望を害する」方法によるものと認めたのは、悪妻物語事件(東京地判平成5・8・30知財集25巻2号310頁)以来のようにも思いますし、そういう意味では先例的な価値は高いのではないかと思います。

 実際には、法廷では、天皇についてどう思っているのか云々と被告から問いただされたりしたのですが、問題は、自己が有していない政治的・思想的傾向を有していると誤解される状態を作り出すこと自体が「名誉又は声望」を害するのであって、その政治的・思想的傾向自体の価値ないし世間からの評価が低いかどうかは問題ではありません(以前、学部のゼミで、あたかも読売ジャイアンツのファンであるかのように誤解されるような方法で、ある阪神タイガースファンの著作物を利用した場合に見なし人格権侵害の規定が適用されるかという問題を出したことがありましたが、阪神タイガースファンには阪神タイガースファンとしての社会的評価が形成されているわけですし、「天皇」についての政治的・思想的な立ち位置を明示せずして太平洋戦争についての作品を創作している漫画家にはそういう漫画家としての社会的評価が形成されているわけです。そのような社会的な評価が害されるのであれば、それはそれで「名誉又は声望を害する」といえるのだろうと思います。)。

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07/17/2013

TPPに関するパブリックコメント

 TPP関係のパブリックコメントですが、個人としての応募が可能かどうかよくわからず、また、ちょうど忙しい時期に重なってしまいましたので、この程度しか送りませんでした。


TPPの趣旨からいえば、ベルヌ条約を超える長期の著作権保護期間、著作物を利用した商品の流通を阻害するような規制の設定を禁止するルールを盛り込むことが望ましい。

また、著作権の間接侵害についても、制限従属性説を加盟国間の共通ルールとすべきであり、エンドユーザーによる適法な著作物の利用・使用を容易にする商品,サービス等の提供等を違法とすることは禁止されるべきである。

また、加盟国の一カ国で行われたサービスが他の加盟国でも行えるように、権利制限規定や強制許諾制度についても、拡張する方向で統一を図るべきである。


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07/10/2013

パブリシティ権侵害と差止め請求

 ピンクレディ事件最高裁判決は、肖像等が商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合に、人格権に由来する「肖像等をみだりに利用されない権利」の一態様として、その顧客吸引力を排他的に利用する権利があるとして、最高裁レベルで初めて「パブリシティ権」を認めました。とはいえ、同再々判決は、肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるとして、具体的には、肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とすると言える場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当であると判示しました。つまり、最高裁は、人格権の一態様であるパブリシティ権と、基本的人権の中核をなす表現の自由との調和を図る観点から、他人の肖像等を無断で使用する行為が不法行為法上違法となる場合を上記3類型に限定したわけです。

 では、この3類型のいずれかに合致することを理由として出版物の出版及び販売等の差止めを命ずることはできるでしょうか。

 「お金を払えばいい」ということと比べて、「その表現を公衆に流布すること自体が禁止される」ということは、表現の自由を制約する度合いが大きいと言えます。したがって、「人格権の一態様であるパブリシティ権と、基本的人権の中核をなす表現の自由との調和」という意味で言えば、「その表現を公衆に流布すること自体が禁止される」場合というのは、それを放置することによりパブリシティ権者の被る不利益がより大きい場合に限られると考えるのが素直です。

 実際、最判平成14年9月24日(石に泳ぐ魚事件最高裁判決)は、「人格的価値を侵害された者は、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる」としつつ、「どのような場合に侵害行為の差止めが認められるかは、侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ、予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべきである。そして、侵害行為が明らかに予想され、その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり、かつ、その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきである」と判示しており、「人格権侵害」即「差止請求認容」という単純なルールを否定しています。

 では、パブリシティ権侵害があきらかに予想される場合、その侵害行為によって被害者は「重大な損失を受ける恐れがあり」、かつ、「その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められる」のでしょうか。

 ピンクレディ事件最高裁判決においては、パブリティ権は、「肖像等それ自体の商業的価値に基づくもの」であると位置づけられています。商業的価値に基づく権利が侵害されても、その被害者が受ける損失は、金銭賠償等により事後的に回復を図ることができるのが通常です。名誉毀損の場合、名誉毀損行為により社会的評価が低下したことによる不利益が金銭賠償により完全に回復するかといえば回復しないので名誉毀損表現を含む出版物等について差止め請求を認容することは上記差止めの要件を満たすと言えると思いますが、たとえば、芸能人の写真が商業誌にて無断で使用されていたという場合に、金銭賠償により回復できない不利益が生じているのかといえば、多分に疑問です。

 これに対し、肖像等が商品等の広告として使用されている場合には、その商品に対する評価がその著名人の評価に結びつきかねないため、金銭賠償によっては回復し得ない不利益が生ずるかもしれません。商品等の差別化を図る目的で肖像等が商品等に付される場合であっても、商品等の種類によっては、その商品のイメージがその著名人の評価に結びつきかねないため、金銭賠償によっては回復し得ない不利益が生ずるかもしれません。ただ、そのような特段の事情が主張・立証されない場合には、不法行為法上違法となる程度にパブリシティ権が侵害されたというだけで、出版の差止め等を認容するのは、表現の自由を過剰に規制するものであって、許されないというべきではないかと思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 07:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/17/2013

「『出版社への権利付与等』についての方策」のB案について

 「『出版社への権利付与等』についての方策」のうち、B案が近々成立してしまいそうな雰囲気です。

 ただ、この、

【内容】

著作権者との契約により権利が発生する「出版権」は、自己の名において侵害者に差止請求等を行うことができるが、現行の著作権法では、電子書籍を対象としていないため、電子書籍を対象とした場合についても同様の権利が認められるようにするなど、制度改正を行う。

【権利者】

著作権者と設定契約を締結した者

【権利の対象】

設定契約の対象となった著作物


って、今ひとつよくわかりません。

 もちろん、79条1項の「その著作物を文書または図画として出版することを引き受ける者に対し」の部分を拡張し、電子書籍として「出版」(定義規定でこの「出版」という語の意味が拡張されるんだと思いますが。)することを引き受ける者に対しても、出版権を設定することができるとするのだろうということは予想できます。問題は、その効果をどうするのかということです。

 「海賊版対策」という触れ込みを信じるのであれば、出版権の内容として、「出版権の目的である著作物を原作のまま」公衆送信(送信可能化を含む。)する権利を出版権者が専有することになるのだろうと思うのですが、そうだとすると、出版権が付与された著作物については、電子書籍が作成できなくなるのではないかというおそれがあります。というのも、出版権者は、他人に対し、その専有している方法での著作物の利用を許諾することはできないからです(80条3項参照)。もちろん、電子書籍化をするにあたっては、ePub形式やmobi形式への変換作業を行っているので「原作のまま」ではないという考え方もあろうとは思いますが、裁判所が取り得る解釈かというと疑問です。また、電子書籍化したデータを、AppleやAmazonやSonyに渡して各社のプラットフォームで販売してもらっているときに、プラットフォーマーではなく出版社が送信の主体であるとすることも解釈としては苦しいように思います。

 また、出版権者には、「複製権者からその著作物を複製するために必要な原稿その他の原品又はこれに相当する物の引渡しを受けた日から六月以内に当該著作物を出版する義務」及び「当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務」があります(81条)が、著作物を電子書籍として出版する権利までも出版権の内容に取り込んだときに、出版権者としては、① 紙の書籍または電子書籍として出版していればこの義務を遵守したことになるのか、② 紙の書籍及び電子書籍として出版していなければこの義務を遵守したことにならないのかという問題が生じます。

 さらに、「著作者は、その著作物を出版権者があらためて複製する場合には、正当な範囲内において、その著作物に修正又は増減を加えることができる。」という規定があります(82条)が、電子書籍の出版まで出版権に取り込んだ場合、常に「その著作物を出版社があらためて複製する場合」にあたるということにするのかが問題となるところです(そうしない場合、電子書籍の場合、人為的に設定しなければ、増刷等の「区切り」が発生しないので、著作者が修正増減の申し立てを行える「区切り」を設ける必要があります。)。

 独占的利用許諾を受けた出版社が著作権侵害行為者に対し著作権者を代位して侵害行為の差止め請求を行うことが下級審レベルで認められている現状で、上記のような法改正を行う必要があるのかということを含め、検討すべき課題は多いように思われます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:28 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/27/2013

立命館での先行販売

 いよいよ、「著作権法コンメンタール」が発売されます。

 実のところ、5月25日に立命館大学朱雀キャンパスにおいて開催された日本工業所有権法学会の研究大会では、版元のLexisNexis Japan社がブースを出し、定価14700円のこの書籍を特別限定価格12000円で先行販売いたしておりました。「重いので、ここで購入して持ち帰るのは躊躇する」と仰っていた諸先生方もおられましたが、この価格差だと、購入後即下のコンビニで事務所に託送した方が安上がりであったことはいうまでもありません。

 スキャンしたデータをアップロードしたり共有したりしないなど所定の条件をお守りいただく限度において、購入した本書を自らまたは自炊代行業者に委託して自炊していただいて構いませんので、その重さにめげず、ご購入いただければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/26/2013

2013年著作権法ゼミ用のテキスト

 著作権法ゼミのゼミ生の皆さまは、以下を参考にして教材を各自調達して下さい。

 著作権法ゼミも、基本的にはやることは制定法の解釈論ですから、「六法」「基本書」「判例集」が必要です。

 ただ、著作権法というのは法学系では依然としてマイナーな領域でありますので、通常の六法では適切な処遇を受けていません。なので、知的財産権法用の六法を別途用意して下さい。


のどちらかにしておけばいいと思います。著作権法は平成24年に大分改正がありましたので、六法は平成25年度版にしておいた方が無難です。

 なお、大渕編の場合、著作権法関連条文の掲載が少ないですので、著作権情報センターのサイトで著作権関連条文をダウンロードして印刷して補充しておくといいと思います。

 基本書としては、薄くて全体を読み通しやすいものから、学説や判例をふんだんに盛り込んであるものまで、色々あります。ロースクールを受験するような人たちは後者の方が読みやすいかも知れませんが、政治学科や国際企業関係法学科の皆さんのように法律書を読み慣れていない人たちは、そういうボリュームのある本だと消化不良を起こしてしまうかもしれません。

 基本書として使える本を軽量→重厚順に並べていくと、

  1. 島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門

  2. 三山裕三「著作権法詳説:判例で読む15章

  3. 中山信弘「著作権法

  4. 岡村久道「著作権法

  5. 作花文雄「詳解著作権法


といったところになろうかと思います。

 もっとも、平成24年に大分法律が変わったので、年内に改訂版が出るものがあるかもしれません。それ以外にも新しい基本書等は大分出たのですが、私が読んだ感想としては、学生向きではなかったように思いました。

 判例集については、別冊ジュリストの「著作権法判例百選」が無難だと思います。とはいえ、これが2009年の刊行なので、それ以降の判例については別途補っていく必要があります。

 日本ユニ著作権センターのサイト駒沢公園行政書士事務所日記等を使っておくといいのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 11:33 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/18/2013

著作物として保護する

 著作権法2条1項1号は、「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義し、さらに10条1項で、「この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。」とした上で、言語の著作物、音楽の著作物、舞踊又は無言劇の著作物、美術の著作物、建築の著作物、図形の著作物、映画の著作物、写真の著作物、プログラムの著作物の9種類を著作物の例として示します。その上で、12条では、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。」と定め、12条の2では、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。」と定めます。この「著作物として保護する」とはどういう意味でしょうか。

 加戸守行「著作権法逐条講義(五訂新版)では、「編集著作物は、第10条第1項各号の著作物の例示の中には入っておりません。というのは、著作物の例示は表現形態別のものであって、編集著作物は材料の集合体という特異なもので分類になじまないということです」(130頁)と説明されています。果たしてそうでしょうか。データベースの著作物は、「材料の集合体」という表現形態なのだと考えれば、10条1項の例示に含まない合理性を欠いているように思います。

 むしろ、編集物やデータベースについては、文化的な所産と言うより産業的な所産としての色合いが強く、2条1項1号で定義した本来の「著作物」とは必ずしも合致しない(それ自体、独自に「思想又は感情」を表現しているとは言い難い場合が多いし、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」といえない場合も少なくない。)から、「著作物として例示するのは不適切だから例示に含めなかったと考えてみた方が素直ではないかという気がします。そう考えれば、編集著作物及びデータベース著作物について、「著作物として保護する」という文言が用いられた理由が明確になります。編集物にせよデータベースにせよ、素材の選択と配列(または体系的な構成)に創作性が認められたからといって、「思想又は感情」を表現していない、あるいは、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」ではないとの理由で、2条1項1号の著作物の定義を満たさない場合が多々あり得るが、そういうものであっても、12条ないし12条の2の要件を満たすのであれば、政策的観点から、著作権法上「著作物」として取り扱うことにする。それこそが、「著作物として保護する」という文言の趣旨だと解するわけです。

 そうだとすると、編集物及びデータベースについては、「思想又は感情」を表現したものとはいえない、あるいは、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とはいえないとの主張は、その著作物性を否認する際の理由とはなり得ないということになります(逆に、編集著作物もデータベース著作物も2条1項1号の「著作物」の態様であるとした場合には、「思想又は感情」を表現したものとはいえない、あるいは、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とはいえないとの主張が、著作物性の主張に対する否認理由となり得ることになります。)。

Posted by 小倉秀夫 at 03:39 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/08/2013

2012年度最後の課題

中央大学で担当している著作権法ゼミの2012年度最後の課題をちょっとオープンにしてみます。



 Aは、レコード業界の衰退の原因を研究し、これを論文「甲」としてまとめ、B大学の紀要論文誌「乙」に応募した。「乙」の編集長Cは、この論文を「乙」の2013年1月号に掲載することに決め、その旨をAに通知するとともに、論文「甲」を「乙」所定のフォーマット(レイアウトのみならず、用語の略し方等を含む。)に合わせて修正したゲラ稿「甲'」をAに送付し、さらに改善すべきポイントを示した上で、1ヶ月以内に最終稿を提出するようにAに要請した。Aは、ゲラ稿「甲’」に適宜修正を加えた最終稿「甲"」をCに送付した。Cは、最終稿「甲"」において大幅に加筆された部分αについても「乙」所定のフォーマットに従った修正を付した版面「甲"'」を作成し、これを「乙」の2013年1月号に掲載した。

 Aは、その開設するウェブサイトに論文「甲"」を掲載しようと考え、論文「甲"」をHTML化した。その際、論文「甲"」で言及した楽曲丙(作詞作曲D、実演E)については、YouTubeにアップロードされているプロモーションビデオに埋め込み型リンクを貼った。また、論文「甲"」で言及した楽曲丁(作詞作曲F、実演G)についてはYouTubeを探しても見当たらなかったので、初音ミクを用いて作成した音源を自らYouTubeに投稿してリンクを貼った。また、Aは、学生を対象に行ったアンケート調査の結果をもとにグラフβを作りこれを論文「甲"」に組み入れていたが、このグラフについては、jpeg化した上で自分のウェブサーバにアップロードした上で、IMGタグを用いてリンクを貼った。

 Hは、その開設するウェブサイトに論文「戊」を掲載した。その際、論文「甲"」とは全く逆の主張を裏付ける資料として、IMGタグを用いてグラフβ(ただし、ここではグラフβには創作性が認められるものとする。)に直リンクを貼った(なお、「戊」の中では、グラフβの作成者がAであるということには特段言及されていない。)。

 ウェブ検索サービス会社Iは、その提供するウェブ検索サービス用データベースに、論文「戊」及びグラフβを取り込んだ。Iは、Hと日頃敵対するネットユーザーJから論文「戊」はAの著作権ないし著作者人格権を侵害するのではないかとの指摘を受けたが、Aからクレームを受けたわけではないとして、これを放置した。


 誰のどの行為が誰のどんな権利を侵害したといえるのか、列挙してください。

Posted by 小倉秀夫 at 12:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/24/2012

ACTA条約と著作権侵害罪の非親告罪化

 ACTA条約第26条が著作権侵害罪の非親告罪化を義務づけたものか否かについて、東京新聞に私のコメントが掲載されて以来問合せが散見されるので、少しまとめてみることにします。

 この点に関し、平成24年7月31日に行われた参議院外交防衛委員会で八木毅外務省経済局長は、

ACTAの第二十六条は、第一に、故意により商業的規模で行われる商標の不正使用並びに著作権及び関連する権利を侵害する複製、それから第二に、登録商標を侵害するラベル、包装の輸入、使用、第三に、それらの幇助及び教唆等であって、自国が刑事上の手続及び刑罰を定めるものに関し、適当な場合には権限のある当局が捜査を開始し、又は法的措置をとるために職権により行動することができることを規定しているということでございますが、この適当な場合の範囲でございますけれども、これは各締約国の判断に委ねられていると解されます。したがいまして、必ずしも、今申し上げたような犯罪の各類型全てについて権限のある当局が職権により行動できることを国内法令上定める必要はないということでございます。

 以上を踏まえまして、我が国としては、同条の実施のために現行国内法令の改正を行う必要はないと判断しております。


と述べ、玄葉光一郎外務大臣も、

先ほど政府委員から答弁ありましたけれども、結局、職権でやってもよくてやらなくてもいいということなので、日本はまあやらなくていいと、そういうふうに解釈をしているわけです。ですから、第二十六条に関して、適当な場合の範囲について各締約国の判断に委ねられていると。したがって、第二十六条に言う犯罪の各類型全てについて権限のある当局が職権により行動できることを必ずしも国内法令上定める必要はないと。したがって、著作権侵害について、今、非親告罪化という話がありましたけれども、本協定によって各締約国に義務付けられているわけではないというふうに考えております。

と述べています。果たしてそうでしょうか。

 第26条についての原文(英文)を見てみましょう。

ARTICLE 26: EX OFFICIO CRIMINAL ENFORCEMENT

Each Party shall provide that, in appropriate cases, its competent authorities may act upon their own initiative to initiate investigation or legal action with respect to the criminal offences specified in paragraphs 1, 2, 3, and 4 of Article 23 (Criminal Offences) for which that Party provides criminal procedures and penalties.


 これを見ると、「in appropriate cases」(適当な場合)という言葉は、that節の中に組み込まれていますので、「shall provide」(規定しなければならない)を修飾するものではなく、「may act」(行動することができる)を修飾するものであると読むのが自然です。「適当」っていう言葉は日本語では多義的ですが、ここでは「appropriate」という言葉が使われていますから、「適切な」という意味です。結局、ここでは、「特定の犯罪に関して、適切な事案では、権限のある当局は、職権で、捜査を開始したり、法的な措置を講じたりできる」ような条項を「規定しなければならない」といっています。

 つまり、この条文を素直に読めば、加盟国において著作権侵害罪を非親告罪化することが適切だと判断した場合に非親告罪すればいいという趣旨に読むことは困難であって、権限ある当局が捜査を開始したり法的な措置を講ずることが適切だと判断した時にはそれをなし得るような国内法を規定する義務が加盟国に課せられるということになります。つまり、加盟国は、起訴便宜主義まで放棄することはないけど、当局が職権で捜査、起訴できるようにする義務を負うということです。これは、普通に表現すれば、「立法による非親告罪化が義務づけられる」といってよいのだと思います。

 少なくとも、ACTA条約第23条1項に定める刑事犯罪のうち、「少なくとも故意により商業的規模で行われる…著作権及び関連する権利を侵害する複製」については、日本では既に国内法で罰則規定が定められており、かつ、現在のところそれは親告罪として規定されているわけですから、上記行為を非親告罪とする立法までは、ACTA条約の発効によって義務づけられると思います。

 それだけであればそれほど悪くはないようにも見えるのですが、問題は、上記条約上の義務に基づく著作権法改正を行うにあたって、非親告罪化する範囲を本当に「故意により商業的規模で行われる…著作権及び関連する権利を侵害する複製」に限定することが政治的に、あるいは内閣法制局的な意味で行えるのかということです。「商業的規模で行われる」という要件が曖昧すぎるというチェックが入り、結局、著作権侵害罪全体に及ぶような非親告罪化が行われる危険があるということが問題だということになります。

Posted by 小倉秀夫 at 05:28 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/20/2012

新設119条3項の解説(ちょっと更新、でもまだ未完)

 新設著作権法119条3項は、以下のような条文となるようです。

第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 簡単に解説してみましょう。

有償著作物等

 本項の罪の客体は「有償著作物等」である。

 有償著作物等とは、「録音され、又は録画された著作物又は実演等…であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの」であって、「その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないもの」をいう。

 「有償」とは、当該著作物等の提示・提供を受ける者から対価の支払いを受けることをいう。したがって、当該著作物等の提示・提供を受ける者から対価の支払いを受けない場合には、広告収入等により利益を得る目的であったとしても、「有償」要件を満たさないことになる。

 同一の著作物等について、有償での提示・提供と無償での提示・提供が同時並行的に行われている場合は、有償著作物等となるのであろうか。例えば、① 同一の楽曲について、プロの実演家による実演がCD等に収録されて有償で販売されている一方、アマチュアの実演家による実演が動画配信サービスで無償で配信されている場合、② プロの実演家による同一の実演がCD等に収録されて有償で販売されている一方、プロモーション動画として当該実演家のSNSサイトにおいて無償でストリーム配信されている場合、③ 同一の放送用番組について、地上波テレビ局により無償で放送される一方、当該テレビ局又はその関連会社により有償でオンデマンド配信がなされる場合などがこれにあたる。

 この点につき、A説:どこかで有償での提示・提供がなされていれば有償著作物等にあたるとする説、B説:どこかで無償での提示・提供が適法になされていれば有償著作物等にはあたらないとする説、C説:主たる提示・提供方法が有償でなされていれば有償著作物等にあたるとする説があり得る。なお、音楽の書作物については、A'説:どこかで有償での提示・提供がなされているか否かを、著作物ごとに判断するのではなく、録音・録画された実演ごとに判断する説もあり得よう。

 「有償著作物」は、「有償で公衆に提供され、又は提示された」ものではなく、「有償で公衆に提供され、又は提示されている」ものと規定されているから、本項の行為(録音または録画行為)の時点で、有償での公衆への提示・提供が継続されていることが必要である。したがって、本項の行為の時点では既に無償での提示・提供に切り替わっていた場合はもちろん、既に公衆への提示・提供行為が終了していた場合には、文言解釈上は、本項の適用はないということになる。

著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信…を受信して行うデジタル方式の録音又は録画

 本項の「行為」は、「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信…を受信して行うデジタル方式の録音又は録画」行為である。

 ただし、隣接権者は自働公衆送信権を有しないので「著作隣接権を侵害する自動公衆送信」が何を指すかは問題となりうる。隣接権者の送信可能化権を侵害してなされた送信可能化により可能となった自働公衆送信を「著作隣接権を侵害する自働公衆送信」に含めてよいのかということである。

 著作権も著作隣接権も侵害しない自動公衆送信を受信して行う録音・録画には本条は適用されない。そのような自動公衆送信の例としては、権利者から必要な許諾を得て行う自動公衆送信の他、著作権等が制限された結果許諾不要となった状態でなされる自動公衆送信が挙げられる。

 本項の「行為」は、「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信…を受信して行う」ものに限られる。したがって、そのような自働公衆送信を受信して作成した録音・録画物からさらに録音・録画を行う場合には本項は適用されない。

 もっとも、「国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきもの」を「受信して行う」録音・録画も本項による処罰の対象となる。

 送信地国法でも国内法で自動公衆送信を行うには著作権者等の許諾を得る必要があるにもかかわらず、許諾を得ずになされた自動公衆送信を受信して行う行為がこれにあたることは争いがない。問題は、送信地国法では自動公衆送信を行うにあたって著作権者等の許諾を得る必要がないからこそ自動公衆送信について許諾を得なかったが国内法では著作権者から自動公衆送信について許諾を得なければ著作権等の侵害となる場合に、そのような自動公衆送信を国内で受信して録音・録画する行為が本校による処罰の対象となるかは問題である。文理解釈上は処罰の対象となると解釈するのが素直であるが、そうすると、著作権の内容として自動公衆送信権が含まれていない国から自動公衆送信される有償著作物等については、常にこれを受信する行為が犯罪行為とされる危険があるからである。

 この点については、A説:利用許諾契約の内容を実質的に捉え、形式的には自動公衆送信以外の利用についてのみ許諾がなされている場合であっても、その利用の結果自動公衆送信がなされることまで想定されているときは本項を適用しないとする見解、B説:送信地国で許諾を必要としていない自動公衆送信については、そのような法律を改正を強く求めないことにより、送信地国からの自動公衆送信は著作者等により黙示的に承諾されたものとみなして本項を適用しないこととする見解があり得よう(後者の解釈はアクロバティックにすぎる嫌いがあるが、パロディ等が明文であるいはフェアユースの一環として許諾なくして行える国で作成されたパロディ作品等を受信して録音・録画する行為を犯罪行為としないためには、A説ですら不十分である。)。いずれにせよ、特定の国から自動公衆送信された音声や動画を受信する行為をあまねく犯罪行為としかねない本項の文言は、立法上の瑕疵といえよう。

 本項の「行為」は、「デジタル方式の録音又は録画」である。「録音」とは、「音を物に固定し、又はその固定物を増製すること」(2条1項13号)をいい、「録画」とは、「影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製すること」(2条1項14号)をいう。

 コンピュータゲームの映像表現を「映画の著作物」とする最高裁判例があることから、ゲームソフトをダウンロードすることが「録画」すなわち「映像を連続して物に固定した固定物の増製」にあたるかが問題となりうる。

 また、YouTube等のストリーミング・データを受信して視聴する場合であっても、ハードディスク等の外部記憶装置にキャッシュデータを記録するのが通例であるが、このようなキャッシュデータの記録が「固定物の増製」にあたるかが問題となりうる。この点については、A説:この種のキャッシュデータは通常反復継続して使用されるものではなく、自動的に順次消去されるものであるから「複製」にあたらないとする見解、B説:「複製」にはあたるが「増製」にはあたらないとする見解、C説:「複製」すなわち「増製」にあたるとする見解があり得る。もっとも、「増製」にあたるとする見解に立ったとしても、ストリーミング・データの受信→映像の特定少数人間で視聴する目的での上映という適法な使用に伴うものであるから、著作権法47条の8により著作権侵害とはなり得ないものである。

Posted by 小倉秀夫 at 03:26 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/08/2012

違法ダウンロードに刑事罰は必要か

表題のシンポジウムで短くスピーチをしてきました。そのために用意して置いたメモは下記のとおりです。


違法サイトからのダウンロード行為を犯罪化する法改正は何が最大の問題か。

持っていない情報を手に入れること、すなわち、知らないことを知ることを犯罪とすることこそが最大の問題です。

今回の議員立法では、日本では正規ルートで入手できないコンテンツをダウンロードする行為も処罰の対象となります。それは、レコード会社、映画会社の巨人たちが、「日本人たちに知らせるのはもったいない」と思った情報を日本人は知る術を失いということを意味します。また、世界中のテレビ局で放送されたニュースをネット経由で日本人が知ること自体が犯罪とされることをも意味することになります。

また、情報を入手すること自体が犯罪となりますから、警察は、私たちが、どんな情報をどんなルートで入手したのかを調査する権限を持つこととなります。当然、警察は、私たちが使用しているPCを差押えし、私たちがPCにセーブしている情報を全部調査することが出来ることとなります。

この点に関して、公衆送信者を処罰する場合と一つ大きく異なることがあります。公衆送信を行う人は、公衆に対して積極的に居場所を示しています。ウェブサイトであればURL、ファイル共有サービスであればIPアドレスを晒しているわけです。だから、警察は、これらの情報を基に、公衆送信を行っている蓋然性の高い人々を絞り込んだ上で、強制捜査に踏み切ることになります。しかし、ダウンロードをする人たちは、公衆に対して一切居場所を示しません。だから、ダウンロード行為に対する罰則規定を実効的に運用するためには、十分な絞り込みを行わなくとも、PCの捜索差押えがなされる必要が生じてきます。通常逮捕とは異なり、捜索差押令状は、犯罪の捜査をするについて必要があれば、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がなくても発せられますから、インターネットに接続させてPCを使用している国民は、いつでも自分のPCを差し押さえられる危険が生ずることとなります。逆にいえば、その程度で捜索差押えが認められないと、ダウンロードの犯罪化は絵に描いた餅に終わります(すると、もっと劇薬のような法改正が導入される危険が生まれます。)。

だからこそ、ダウンロードの犯罪化はすべきでないのです。

Posted by 小倉秀夫 at 06:41 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

04/14/2012

ダウンロード罰則化に抗議

刑罰で脅されてまで、音楽CDを買いたくはない。
だから、ダウンロード行為が刑罰の対象となった暁には、私は、邦楽CDは買わない。
子どもたちを刑務所に送り込みたくなかったら、賛同して欲しい。
刑罰で脅して買わせるのではなく、自発的に買いたくなる工夫をする──日本の音楽業界がそう目を覚ますように。

Posted by 小倉秀夫 at 02:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2)

03/19/2012

出版社に隣接権を付与するよりも役立つこと


出版社に著作隣接権を云々という議論が喧しいようです。この点について私も、日経新聞の取材を受け、その一部が今日の朝刊に掲載されたようです。



ただ、著作隣接権を求める理由として出版社サイドが表向き唱えていることを実現するためには、別の方法をとった方が早道なのになあと正直思ったりする私がいます。



著作物の利用を円滑化するためには、権利処理の窓口を一本化することが有益です。そして、この一本化された窓口は、その著作物の利活用の活性化とは別の思惑で恣意的な利用許諾拒否を行わないことが有益です。その意味では、JASRAC類似の権利処理機構を、文芸著作物や漫画の著作物についても作ってしまうのが有益です。



とはいえ、漫画雑誌を発行している出版社からすると、自社の雑誌で連載させている作品の中で特に人気が出た作品について、他の出版社から自由に単行本が出されてしまうというのは問題でしょう。その意味では、出版社にも一定の独占権を付与する必要がある。そこまではいいのですが、それが隣接権という「大なた」である必要はありません。



作家、漫画家と出版社との間では、その作品の利用に関して契約が結ばれるのが通常ですが、その契約において、契約の有効期間中、その作品の著作権をその出版社に信託譲渡し、または、独占的利用許諾を受けることにすれば、事が足ります。



もっとも、作家、漫画家としては、そのような強い権利を出版社に付与してしまうと、その出版社に干されたときに困ってしまいます。したがって、作家や漫画家が安心して上記のような権利を出版社に付与できるようにするためには、一定の解約事由を法定してしまうのが便利です。例えば、在庫がなくなったときに増刷を作家側が求めてもこれを拒絶するとか、広く普及している電子書籍端末に対応する電子書籍バージョンを販売するように作家が求めたのに不当にこれを拒絶するとかの事由が生じた場合です。そのようなことをする出版社は、著作物の普及を通じたわが国の文化の発展を阻害しようとしているわけですから、一定の不利益を被ることはやむを得ません。



著作権法に関する立法政策において、排他権を増やすことこそ著作物の利活用の活性化に繋がるのだという根拠のないドグマから、一日も早く抜け出すことを望む次第です。

Posted by 小倉秀夫 at 12:33 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

03/12/2012

ダウンロード罰則化について松あきら議員に質問してみた

とりあえず、松あきら参議院議員のウェブサイトにアクセスし、所定のフォームにデータを入力することで、下記の質問をしてみました。回答が返ってくることを望む次第です。



 私は、弁護士を務めるとともに、中央大学にて兼任講師として、著作権法のゼミを担当するものです。

 先生は、違法にアップロードされた音楽・動画ファイルを私的使用目的でダウンロードする行為(以下、「ダウンロード行為」といいます。)に刑事罰を科すこととするように求めていると伺っております。この点につき、いくつかお聞きしたいことがあります。


  1.  ダウンロード行為を民事法的に違法とする著作権法改正がなされてからまだ日が浅く、その効果も明らかになっていないのに、これに刑事罰を付そうとするのはなぜでしょうか。

  2.  ダウンロード行為に刑事罰を付す法律改正を請願された方々は、民事法上の権利をきちんと行使した上で、なおダウンロード行為に刑事罰を付することが必要だといっていたのでしょうか。どのような権利行使をどの程度されたのか、データはご覧になったのでしょうか。

  3.  ダウンロード行為に刑事罰を付することとした場合、警察は、捜索差押え令状を得て個人のPCを押収し、そのPCにどのようなデータが蔵置されているか、どのPCからインターネット上のどのサイトにアクセスしたのかを調査することが許されることになります。それは、個人のプライバシー権を大いに侵害することとなりますが、その点についてはどうお考えでしょうか。

  4.  違法アップロード行為と異なり、個々人のPCを押収してその中を検査する以外に、誰が違法ダウンロードをしているのかを特定する手段はありませんので、ダウンロード行為を行った個人を処罰するために必要な捜査を行えるようにするためには、嫌疑が希薄でも個々人のPCに対して捜索差押えをなし得るようにする必要があります。そこまで視野に入れた上で、ダウンロード行為に刑事罰を付すことを求めておられるのでしょうか。

 ご多忙のこととと存じますが、よろしくご検討下さい。

Posted by 小倉秀夫 at 07:13 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/11/2012

中立的行為による幇助の成否について(再論)


某所で、Winny事件の最高裁判決についての評釈を書きました。そちらは、判例評釈のフォーマットにしたがって論述していきましたが、こちらは単なるブログですので、Winny事件の各段階での判決やこれについての評釈等を読んだ上で、中立的な技術の公衆への提供者の刑事責任について、現段階で考えていることを備忘録的に書いていこうと思います。



価値中立的な技術を公衆に提供すると、それを用いた特定の法益に対する具体的な侵害がある程度の頻度で発生する。しかし、それだけで、その技術の提供者は、その特定の法益侵害行為を容易にしたといっても良いのだろうか。今回の最高裁判決、とりわけ多数意見は、この点から出発しています。



幇助責任を問う以上、特定の法益侵害の発生する蓋然性を有意に高めたことが必要だ──この前提に立ったとき、その蓋然性の高まりは、何と比べてのものなのかを特定する必要があります。



「正犯者がその技術を手にしなかった場合」と比べてしまうと、特定の法益侵害の発生する蓋然性は有意に高くなったといえる範囲が広くなってしまいます。価値中立的な技術の公衆への提供行為はその提供を受ける相手の個性に着目することなくなされているのですから、それが幇助行為として処罰の対象とされるほどに正犯の行為を通じた法益侵害の蓋然性を高めたかどうかは、個々の正犯についてみるのではなく、その技術の提供を受けた人々全体についてみるべきだというべきです。



では、その技術の提供を受けた人々による正犯行為により特定の法益侵害の発生する蓋然性が高まったかどうかは、何と比較して判断するべきでしょうか。



新しい技術というのは、常に既存の技術に何か新たなものを組み合わせることにより成立します。そして、既存の技術も正犯の行為を通じて同種の法益侵害を発生させる蓋然性を有している場合、この蓋然性が既存の技術と新しい技術とで有意に差を生じさせない場合、新しい技術を提供することにより、正犯の行為を通じた法益侵害の蓋然性を高めたことにはなりません。そのような技術の提供行為を幇助犯として処罰の対象とすることは正当ではありません。すると、新しい技術を公衆に提供したことについて特定の犯罪の幇助責任を問いうるのは、まず、既存の技術に「新しい要素」を付加することにより、正犯行為を通じた法益侵害発生の蓋然性を有意に高めたことが必要だというべきです。



では、それだけで足りるのかというと、そこには疑問があります。正犯行為を通じた法益侵害の蓋然性を有意に高める「新たな要素」が、その技術の社会的な有用性を高めるものであった場合には、そのような新しい技術の公衆への提供を刑罰をもって禁止することは、科学技術の発展を阻害することとなりかねないからです。そこでは、侵害の蓋然性が高まる法益の重大性および蓋然性が高まる程度と、その「新たな要素」がもたらす有用性とを比較考慮した上で、後者の要素が勝る場合には、当該新しい技術を公衆に提供する行為にはなお社会相当性があり、当該法益侵害の蓋然性が高まったとしても幇助犯として処罰するに足りる違法性を欠いていると解するべきです。



ここで注意すべきは、技術は長い年月をかけて累積的に「新しい要素」を付加していくことにより発生していくものだということです。それ故、比較対象とすべき「既存の技術」をどこにおくのかが問題となります。ただ、技術の発展段階を網羅的に押さえることは困難であること、それを公衆に提供することが幇助犯として処罰に値する技術と同程度の法益侵害発生の蓋然性を有する新たな技術の公衆への提供を容認すべき理由はないことを考えると、どこに置いても構わないというべきだと思います。ただ、正犯行為を通じた法益侵害発生の蓋然性が相当低かった初期の既存技術と比べた場合には、それと問題の「新しい技術」との差異となる「新しい要素」の有用性が高まるため、幇助犯として処罰するに足りる違法性を欠くこととなる可能性が増大することとなります。したがって、実際には、社会的に容認されている直近の既存技術と比較していくことになると思います。もっとも、Winny事件の場合、公衆との「ファイル共有」という技術、あるいはその中でも「検索用サーバ不要型ファイル共有」という技術を、「社会的に容認されている技術」と位置づけられるかは、争点となり得るところだと思います。



そして、これらの要素を勘案した結果、当該新しい技術を公衆に提供する行為は幇助犯として処罰するに足りる違法性を客観的に有しているとなった場合に、当該技術の提供者が上記考慮要素を認識し、正犯による特定の法益侵害の発生の頻度が高まることを認容して、当該技術を公衆に提供した行為者に幇助の故意を認め、その技術の提供を受けて果たして当該法益侵害行為を行った正犯との関係で幇助犯として処罰しうると解するべきでしょう。当該技術の利用者によって特定の類型の法益侵害行為が1回以上行われる可能性があることを認識・認容していただけでは幇助の故意を認めることはできず、当該価値中立的な技術の公衆への提供行為を特定の類型の法益侵害の幇助行為と認めるに至る考慮要素を認識・認容している必要があるというのは、Winny事件最高裁判決と考えを一にしています。

Posted by 小倉秀夫 at 01:16 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/17/2012

山本博司参議院議員のブログエントリーにコメントしてみた

 山本博司参議院議員のブログエントリーに次のようなコメントを投稿してみました。


 私は、中央大学法学部で著作権法のゼミを担当し、また、「著作権法コンメンタール」(東京布井出版)の編集代表を務めた弁護士です。

 違法コンテンツの氾濫を防ぐには、作家たちが著作権を行使すれば足りるのであって、出版社に著作隣接権を認める必要はありません。その行使を出版社に委ねたいという作家は、出版契約の存続期間中、著作権(またはその中の送信可能化権)を出版社に時限的に信託譲渡すれば足ります。

 出版社に隣接権を認めた場合、出版社には物理的な書籍の許諾しかしたくないと思っている作家たちが、出版社とは別に、自分の作品を電子書籍化することができなくなってしまいます。また、出版契約よりも隣接権の方が存続期間が長いので、出版契約終了後も、作家たちは、自分の作品を、他の出版社から出版することができなくなってしまいます。そしてこの弊害は、版面の持つ意味が大きい漫画においては、より重要な意味を持ちます。

 従いまして、出版社への隣接権の創設はご再考いただければ幸いです。


 出版社に隣接権を認めた場合、出版社との出版契約が切れた漫画は出版できなくなる危険があることを国会議員の方々にもご理解いただきたいところです。専有権を保持する人が多いと作品が世に出なくなる危険が高まることは、キャンディキャンディの惨状を見ればおわかりいただけるかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 08:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/14/2012

2012年 著作権法ゼミの受講生へのメッセージ

 2012年度の著作権法ゼミに先だって、読んでおくべき書籍等について説明します。ゼミを受講予定の人は参考にして下さい。

 まず基本書についてです。特に指定はしませんが、予備校系のものでないものを4月までに1回通読しておいて下さい。わからない部分があっても、途中で立ち止まらずに、まず通読してみて下さい。

 一応、下記の4冊をお薦めはしますが、これでなくても構いません。

     
  1. 島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門

    この分野では珍しく、比較的薄くて読みやすいと思います。なお、法律の教科書としては珍しく、電子書籍版もあります。

  2. 中山信弘「著作権法

    わが国における著作権法の第1人者の手によるもので、様々な論点をバランスよく解説されています。民法や会社法等で普通に基本書を読むことに違和感がない、法律学科の人にはしっくり来ると思います。

  3. 作花文雄「詳解著作権法[第4版]

    初学者が通読するのに向いているとは思いませんが、とにかく様々な論点に触れています。

  4. 岡村久道「著作権法

    この分野での第一線で活躍する弁護士によるもので、要件事実論に対する配慮がなされています


 また、著作権法は裁判例が面白いので、判例集も買い求めておいて下さい。

 一冊だけしか買わないのでしたら、別冊ジュリスト「著作権法判例百選(第4版)」を持っておけばいいと思います。

 また、通常の六法では著作権法はまだしも関連法規が掲載されていないので、知的財産権法専用の六法を持っておく必要があります。

 三省堂の「知的財産権六法」の2012年度版がおそらく3月末にでるので、それで事足りると思います。

 通常の六法の外に知的財産権法専用の六法を購入したくないという人は、国の法令データベース等から必要な法令をダウンロードして、自分が見やすいようにレイアウトした上でプリントアウトしてこれを持っておくというのも一つの考え方です。その場合、次の法令は漏れなくプリントアウトしておくようにして下さい。


  1. 著作権法

  2. 著作権法施行規則

  3. 著作権法施行令

  4. 旧著作権法

  5. 著作権等管理事業法

  6. 著作権等管理事業法施行規則

  7. 映画の盗撮の防止に関する法律

  8. プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律

  9. 万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律

  10. 連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律

  11. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約

  12. 著作権に関する世界知的所有権機関条約

  13. 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約

  14. 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定)

  15. 万国著作権条約

  16. 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約



Posted by 小倉秀夫 at 04:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/08/2012

コンテンツの実質価格とコンテンツ産業総体の収入

 総体としてのコンテンツビジネスが栄えるためには、総体としての消費者のコンテンツに対する消費の総量を増加させていく必要があります。そのためには、1コンテンツあたりの実質価格を上昇させることが効果的なのでしょうか、下降させることが効果的なのでしょうか。

 コンテンツを収録したパッケージの小売価格を下げることは、1コンテンツの実質価格を下げる方法の1つですが、それが全てではありません。1つのコンテンツを満足のいくまで享受するのにかかる時間が、そのコンテンツの収録したパッケージの「物」としての商品寿命より顕著に短い場合、1つのパッケージを複数人で時間差で消費することにより、1コンテンツあたりの実質価格を引き下げることができます。その方法としては、団体での行動購入の他、パッケージのレンタルやパッケージの中古流通などがあります。

 消費者がコンテンツを消費するのに費消できる資金が一定だとすると、1コンテンツあたりの実質価格が上昇しようが下降しようが、消費者側からコンテンツビジネス側に移転する資金は一定ということになります。実際には、消費者に届くパッケージの個数が増えれば、パッケージの製産・流通コストの分、コンテンツ事業者側の取り分が減りますが、IT革命によりこのコストが下がっていくに連れて、このコストは次第に無視できるものとなっていきます。他方、1コンテンツあたりの実質価格が下降すると、消費者側はより多くの種類のコンテンツを享受できるようになります。

 すると、コンテンツビジネス側の総体としての収入を概ね維持しつつ、消費者の満足度を引き上げられるという意味において、1コンテンツあたりの実質価格を引き下げることには合理性があり、逆に、1コンテンツあたりの実質価格を引き上げるような改革は、コンテンツビジネス側の総体としての収入を引き上げないのに、消費者側の満足度を引き下げるという意味において最悪です。

 さらに問題なのは、1コンテンツあたりの実質価格を引き下げ、消費者が享受できるコンテンツの種類を減少させた場合に、当該類型のコンテンツを消費するという娯楽の満足度自体が下がり、結果として、消費者がその類型のコンテンツから離れていくおそれがあります。そうなった場合には、コンテンツビジネス側の総体としての収入自体が縮小していくこととなります。

 他方、1コンテンツあたりの実質価格が下がった場合、消費者は可処分所得の上昇に合わせてコンテンツ消費への支出を増やすことが容易になります。それは当該コンテンツ類型への消費者の満足度を高めるので、コンテンツビジネス側の総体としての収入自体を拡大することに繋がります。

 もちろん、個々の消費者が享受するコンテンツの総量には自ずと限界があるので、1コンテンツあたりの実質価格が下がりすぎると、コンテンツビジネス側の総体としての収入自体が縮小することになります。ただ、それは「これ以上値下げされたからって、これ以上購入してらんないよ」というレベルになってはじめて遭遇する事態であって、我が国では当面そういう域に達することはなさそうです。

 ですから、結論から言うと、レンタルを禁止すれば、中古品の売買を禁止すれば、コンテンツ産業の売り上げが向上するはずだ、というのは幻想であり、むしろ逆効果を生ずるのではないかと思う次第です。

Posted by 小倉秀夫 at 08:36 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/06/2012

「知的財産推進計画2012」の策定に向けた意見

 「知的財産推進計画2012」の策定に向けた意見募集がなされていたので、以下のとおり応募してみました。

戦略4 クール・ジャパン戦略


 商用コンテンツとして公表された著作物の活用が3年以上なされていないときも、裁定による著作物の利用を可能とすべきである。

 著作権法は文化の発展に寄与するために「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図」ることとしたのであるから、著作物を通した文化の発展を阻害する方向で著作権を行使することは本来許されるべきではない。

 しかし、現行著作権法の下では、「創造のサイクルの確保」とは全く別の理由で、コンテンツの再利用を阻むために著作権法が活用される例が散見される(例えば、世界的にも人気がある「キャンディ・キャンディ」はもはや利用困難である。)。「著作権」は純粋な私権ではなく、創作に対する投下資本の回収機会を保障するための競争制限規制である以上、創作物の活用を阻むために著作権が活用されるという本末転倒ぶりをこのまま放置しておくべきではない。

 したがって、3年使用されない商標が取消の対象となるのと同様に、3年以上活用されないコンテンツは、裁定による利用が可能となるような法改正が望まれる。

戦略3 最先端デジタル・ネットワーク戦略について


 著作権、著作隣接権等に関して、広く国民や団体(企業を含む。)から新たに創設を希望する権利制限規定についての案を募集し、これを法案化して定期的に閣議に提案する。

 検索エンジンに関する著作権の制限規定が立法されるまで長い年月が過ぎ、その間に米国企業が市場を支配してしまったことは記憶に新しいところである。このように、ITを駆使した新たなサービスに関しては、従前の立法のスピード感では、権利制限規定が制定されるころには、広汎なフェアユース規定を背景に先行投資をなし得る米国企業に太刀打ちができないのが実情である。

 もちろん、米国並みの広汎なフェアユース規定が置かれることが理想ではあるが、これまでの文化審議会での議論を見る限りにおいては、それも期待しがたい。

 であるならば、個別的制限規定の制定速度を速めることにより、新しいITビジネスが米国企業に牛耳られるのを回避するような制度設計をすべきである。

 そして、個々の権利制限規定についていえばこれを活用する人や企業は少数に留まる場合が少なくないこと、また、新しいITビジネスを始める企業の多くは人的及び金銭的な資源に恵まれていないこと等を考えると、彼らはロビー活動能力が低いので、文化庁の官僚に取捨選択権限を付与すると、権利制限規定の創設に関する陳情のほとんどが法案化されず、お蔵入りとされる蓋然性が高い(検索エンジンに関する権利制限規定も永らくお蔵入りとされていたのである。)。

 したがって、文化庁には全件法案化の義務を課し、取捨選択は内閣による政治判断に委ねるのが適当である。

戦略2 知財イノベーション競争戦略について


 難視聴地域に受信させる目的で東京キー局が地上波番組について衛星放送設備を用いて行っているサイマル放送を、難視聴地域であるか否かにかかわらず、日本全国で受信できるようにする。

 日本全国にある地方テレビ局は、そのほとんどの時間を、東京キー局で放送された番組を、同時又は異時に再放送することに終始しているのが実情である。これは、衛星放送やインターネットなどの技術がなかった時代には合理性があったが、現在では合理性を欠いている。のみならず、当該地域を放送対象地域とする系列局がないキー局の放送は視聴できない、地方テレビ局が希に自主制作番組(関西の準キー局を除けば、概ね1割前後である)を放送している間はキー局の放送を視聴できない、キー局で放送されている番組を放送していてもなぜか1週遅れで放送されている場合がある等の不便が存在している。

 考えてみれば、貴重な電波使用権を与えられている地方テレビ局が、その放送時間のほとんどを東京キー局のテレビ番組の再放送に充てているということこそが不合理である。衛星放送やケーブルテレビ等によって日本全国どこにいても東京キー局のテレビ番組の全てを時間差なしに視聴することが出来るとなれば、地方テレビ局は、自主制作番組を制作して放送しなければならないこととなる(東京キー局の放送を受信可能な地域を放送対象地域としている千葉テレビやテレビ埼玉、東京MX等は実際そうしている。)。それは、テレビ番組という著作物を新たに創作して東京キー局と競争することを促進するとともに、実演家等のさらなる活用を促すことになるのである。

 もちろん、東京キー局の制作した番組を右から左に垂れ流すだけで高収益を挙げることができている地方テレビ局は猛反対することとは思うが、放送コンテンツにおける競争を促進するためには、上記施策が有意義である。

戦略4 クールジャパン戦略


 J-POPの歌詞に関するデータベースを作成し、世界に向けて公表する。

 J-POPをさらに世界中で普及させるために、「言葉の壁」を取り除く工夫が必要である。そのための施策として、J-POPの歌詞の日本語表記、ローマ字表記、英訳を検索、表示可能なデータベースを国として制作し、または、そのようなデータベースを制作する企業・団体等を資金面及び法律面から支援すべきである。

戦略4 クール・ジャパン戦略


 商用コンテンツとして公表された著作物の活用が3年以上なされていないときも、裁定による著作物の利用を可能とすべきである。

 著作権法は文化の発展に寄与するために「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図」ることとしたのであるから、著作物を通した文化の発展を阻害する方向で著作権を行使することは本来許されるべきではない。

 しかし、現行著作権法の下では、「創造のサイクルの確保」とは全く別の理由で、コンテンツの再利用を阻むために著作権法が活用される例が散見される(例えば、世界的にも人気がある「キャンディ・キャンディ」はもはや利用困難である。)。「著作権」は純粋な私権ではなく、創作に対する投下資本の回収機会を保障するための競争制限規制である以上、創作物の活用を阻むために著作権が活用されるという本末転倒ぶりをこのまま放置しておくべきではない。

 したがって、3年使用されない商標が取消の対象となるのと同様に、3年以上活用されないコンテンツは、裁定による利用が可能となるような法改正が望まれる。

戦略3 最先端デジタル・ネットワーク戦略


 著作権法上の「公衆」の定義を見直す。

 まねきTV事件及びロクラクⅡ事件の最高裁判決により、契約により関係性が築かれる相手方への情報の送信は公衆に対する送信とされ、広く著作権法により規制されることとなってしまった。

 しかし、このような解釈は、オンラインストレージサーバやクラウド事業の国内展開を不可能としかねず、わが国のデジタルネットワーク産業を破壊しかねない。したがって、「公衆」を「特定/不特定を問わず、多数の者」とするなり、「不特定…の者」から「当該著作物の提供又は提示に関して契約関係を結んだ者」を除外する等の措置を早急に講ずる必要がある。

Posted by 小倉秀夫 at 12:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/24/2011

「原則自由」な社会における自炊代行論争

 自炊代行というサービス自体を著作権法により規制するのは、過剰規制なんだと思うのです。

 これは、なぜ著作権が保護されるのかという議論に繋がる話です。

 著作物の創作にかかる投下資本を回収する機会を保障するために、そのような資本投下を行っていない第三者との価格競争に晒すことを一定期間猶予し、その間、創作者等に超過利潤を得さしめる。──これこそが著作権の存在意義だと考えた場合、当該著作物に関して創作者等が対価等を得るために通常用いる利用方法を一定期間創作者等に独占させれば足りるのであり、著作権の保護を名目として、当該著作物についてそれ以上の自由を第三者から奪うのは、過剰規制ということになります。

 では、自炊代行は、当該著作物に関して創作者等が対価等を得るために通常用いる利用方法と競合し、著作物の創作にかかる投下資本を回収する機会を失わせるといえるのでしょうか。

 自炊代行業者が自炊作業を行うために分解した書籍を自炊作業終了後廃棄した場合、当該書籍に記録されていたアナログ形式のデータはデジタル形式に変換されてその利用者に引き渡される反面、当該書籍自体は消滅します。すなわち、当該著作物が記録されている媒体が紙から電子媒体に移転するだけで、その著作物を同時に閲読可能な人が増えるわけではありません。そして、自炊代行業者に持ち込まれた書籍は、その顧客が市場において正規に購入したものであり、著作権者又はその許諾を得た者により、著作権者の印税が乗っかった状態で市場に置かれたものです。したがって、顧客が手にするデジタルデータは、著作権者の印税を載せて市場に置かれた著作物が単にデジタル形式に姿を変えただけだということができます。

 すると、譲渡権について消尽論を肯定し、著作権者の印税を載せて市場に置かれた著作物の複製物の転々流通は著作物の創作にかかる投下資本を回収する機会を失わせないと考える我が国においては、上記自炊業者が書籍の廃棄と引き替えに書籍のデジタルデータを顧客に引き渡したとしても、そのデータに関する報酬は廃棄された書籍を市場に置いたときに著作権者に渡っているので、著作物の創作にかかる投下資本を回収する機会は損なわれていないということになります。

 このことは、紙の書籍から電子媒体へデータを移し替える作業を、その書籍の所有者自身が行うか、事業者が業として委託を受けて行うかによって変わることはありません。事業者が得る報酬は、書籍の存在形式を変換したことに対する報酬であって、著作物の複製物を頒布したことに対する報酬ではありません。

 人格権的な要素を捨象すれば(もっとも、著作物の複製物を廃棄する行為は著作者人格権を侵害しないとするのが多数説です。)、著作物の創作にかかる投下資本を回収する機会を損なわない行為を著作権に基づき規制するのは、過剰規制であると言えます。従って、少なくとも自炊作業完了後書籍の残骸を廃棄するタイプの自炊代行業者の事業を著作権に基づいて差し止めるのは、憲法上の疑義が生ずるおそれがありますし、著作権法はそのような憲法との抵触が生じないようになるべく解釈されるべきです。私たちは、「原則自由」の社会にいるのであり、その原理は、「著作権」というマジックワードによって枉げられるべきではないのです。

 なお、このような見解に対しては、たとえば、書籍がデジタル化されるとそれが違法アップロードされる危険が生ずるではないか(その場合、著作物の創作にかかる投下資本を回収する機会が損なわれるではないか)という反論がなされるかもしれません。しかし、デジタル化された書籍データをネット上にアップロードする行為は、自炊又は自炊代行の是非とは無関係に、著作権侵害行為として取り締まることが可能です。また、自炊または自炊代行がなされると必然的にあるいは高度の蓋然性をもってデジタルデータがネット上にアップロードされるという事実はないようです。したがって、自炊代行を規制することの可否を議論するにあたって、そのような事情を斟酌することは適切ではないと言うべきです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:38 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/07/2011

権利請願21

 「日本にもフェアユース規定を設けるべき」って、それには基本的に賛成なのですが、それはいつになるか分からないし、文化審議会の議論を見ている限り、米国のフェアユース規定に比べて適用範囲のかなり狭いものとなりそうだし、規定の抽象度が高い分、誰かが訴えられて判例が形成されるまではどういう行為に適用があるか否かの判断が確実になし得ないわけで、「日本にもフェアユース規定を設けるべき」一本で行くことがよいことなのかなあということに躊躇を感ずる今日この頃です。

 考えてみると、私たちは、「こういう個別的権利制限規定が必要なんだ」ということを集約して、文化庁なり、国会議員なりに持っていったことがあるのか、というと、結構お寒い限りだったなあと反省せざるを得ないように思ったりします。

 もちろん、知的財産戦略本部等がパブリックコメントを募集したときには、個人的にこういう権利制限規定が必要ではないか?ということを進言してきたわけですが、パブリックコメントってかなり受け身の意思表明手段であり、それによって新たな論点形成まではしてくれないというのが、これまでの実績で明らかになったところだといって差し支えなさそうです。

 そういう意味では、私たちは、そろそろ、「著作物や実演、レコード、放送等のこういう利用は文化の発展にとって有益であり、かといって、こういう利用について事前に権利者の許諾を得ることはこういう理由で困難なので(あるいは、こういう利用について権利者にさらに対価を与えるのはこういう理由で利益の二重取りになると思うので)、こういう利用を可能とするような個別的権利制限規定を設けて欲しい」ということを、ある程度意見集約して文化庁や二大政党に陳情することが必要なのではないでしょうか。

 これまで、私たちは、著作権法の改正問題については、フェアユース導入要求を除けば、ほぼ受け身だったわけですが、そろそろ、能動的になって、いわば権利請願をしてもいいのではないかと思うのです。

 こういう21世紀型の新たな権利請願運動、いわば「権利請願21」の意見集約母体にMIAUがなってくれればなあと期待している月曜日の朝でした。

Posted by 小倉秀夫 at 11:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0)

06/14/2011

エンターテインメント法

 金井重彦=龍村全編著「エンターテインメント法」が学陽書房から出版されました。

 私は、「インターネット配信」の部分を担当させていただいています。

 初稿は随分前に出版社に送ってあったのですが、さあそろそろ出版かなという時期になって、放送法の大改正があり、緊急に内容を大幅に差し替えることになってしまいました(さらに、まねきTV事件、ロクラクⅡ事件の最高裁判決に見舞われるという大惨事!)。だから、私の担当部分はばたばた感が否めないのですが、全体的には、一流の実務家が現実のエンターテインメントビジネスを解説したという意味で貴重な書籍だと思いますので、7560円という定価にもかかわらず、お買い得だと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:42 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0)

02/13/2011

ポケモンのセーブデータの売買

 『ポケットモンスターDS』についてのセーブデータがヤフーオークションなどで売買されていることを問題視している人たちがいるそうです

Zakzakの記事によれば、

ポケモンのポータブルゲームとは、プレーヤーが数百種類の「ポケモン」と対戦し、経験値やお小遣いを増やしながらキャラクターを捕獲するのがストーリー。キャラの種類を増やしたり、データ通信で捕獲したキャラの交換もできる

とのこと。これに対して、ポケモン社の「関係者」は、

そもそも、セーブしたデータを何らかの手法で繰り返しコピーし、販売するだけでも著作権法違反にあたります。任天堂が配信してない改造ポケモンを発売したりするのも、オリジナルの楽曲に手を加えてアーティストに無断で販売しているのと変わりません

とのべているのだそうです。

 しかし、「経験値」や「お小遣い」等とパラメータデータは、思想または感情を表現したものではないし、それを創作的に表現したものでもないので、著作物にあたりません。したがって、これをコピーし、販売しても、著作権法違反とはなりません。

 パラメータデータが収録された媒体を販売することがゲームについての同一性保持権侵害を惹起させるとした最高裁判決はありますが(ときめきメモリアル事件)、これは、その「使用によって,本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらすことになる」ものであったことが前提です。したがって、上手な人が実際にポケモンをプレーした結果取得したセーブデータをコピーして販売した場合には、そのゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開したわけではありませんから、上記判例の基準で言えば、同一性保持権侵害を生じていないということになります。

 「任天堂が配信してない改造ポケモンを発売」した場合はどうかという問題はあります。「改造ポケモン」というのが、ユーザーの側で独自に制作したオリジナルの「ポケモン」という意味ならば、それをゲーム上に登場させることができるようになることによって、「ストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され」ることになると言えるか否かによることになります。ただ、どうなんでしょう。いくつか独自キャラクターが登場するくらいでそこまで言えるものでしょうか。

 もう一つ検討すべきは、セーブデータの中に、任天堂が配信する「ポケモン」についての画像データが含まれている可能性です。この場合、そのようなデータをコピーして販売すると、客観的には複製権侵害、譲渡権侵害が生ずる可能性があります。

 ただし、セーブデータを保有しているユーザーとしては、セーブデータの解析をしない限りそこにどのようなデータが含まれているのかを知り得ないのであり、仮に、「ポケモン」についての画像データが含まれていたとしても、通常そのことを知り得ないということになります。そうすると、故意が必要とされる著作権侵害罪が成立しないことはもちろん、故意または過失が必要な著作権侵害に基づく損害賠償請求権すら成立しないのではないかという気がしなくはありません。

 ユーザーの行動に文句をつけるのであれば、もう少し丁寧に説明をすべきなのではないかと思う次第です。

Posted by 小倉秀夫 at 07:32 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/25/2011

Persona non grata

 話題になっている写真があります。地デジ推進キャラクターの草彅剛さんや、地デジカ、萩本欽一さんや高橋英樹さんら「地デジ化応援隊」、そして地デジ推進大使の各局アナウンサーらが明治記念館に集合した際に撮影した集合写真です(このページの上方に掲載されている写真です。実は、この画像この画像の二つの画像から成り立っています。)。

 どうしてこのような無様な写真になっているのかというと、地デジ推進キャラクターである草彅剛さんの所属するジャニーズ・エンターテインメントがその所属するタレント(草彅さんを含みます。)の肖像をインターネット上に掲載することを許さないため、元の集合写真のうち、草彅さんが写っている部分を縦に切除してつなぎ合わせたからです。

 インターネットもまた重要な広報手段となった現代において、その肖像をインターネット上で掲載させてくれないタレントを広報キャラクターに使うこと自体が間違っています。また、草彅さんも、広報キャラクターとして十分な役目を果たせないのだから、そもそも広報キャラクターのオファーがあっても辞退すべきだったというべきでしょう(草彅さんの肖像を削除したために、北島三郎さんたちがせっかく持っている横断幕の文章が途中で途切れてしまっています。)。

 それはともかく、このページの掲載者であるインプレスは、あの集合写真のうち草彅さんが移っている部分を切除する必要があったのでしょうか。

 1つ考えられるのは、切除しないと、肖像権侵害にあたるのではないかということでしょう。しかし、芸能人については、その肖像が撮影され、使用されたとしても、原則として人格権(肖像権)侵害にはあたらないとするのが、従前の裁判例の流れであり、多数説です。芸能人の私的生活領域における肖像がどこまで保護されるのかという点については争いのあるところですが、公的生活領域における芸能人の肖像については、元々多くの人に見られ知られることを希望して芸能活動に身を投じたわけですから、これが撮影され、様々なメディアに載せられて広く公衆の目に触れることになったとしても、その受忍限度を超えて人格的価値が損なわれることはないと考えるわけです。

 すると、地上デジタル推進全国会議の「完全デジタル化最終行動計画」の記者発表会において、地デジ推進キャラクターとしての仕事の一環として撮影された草彅さんの肖像を、草彅さんの許諾なくして、同記者発表会があったこと及びその内容を報ずるウェブニュースにおいて掲載することが、草彅さんの人格権(肖像権)を侵害するものとは考えられないというべきかと思います。

 もう一つが、切除しないと、パブリシティ権にあたるのではないかということでしょう。

 判例法上の財産権としてのパブリシティ権はギャロップレーサー事件最高裁判決で否定されたのではないかと私は思っているのですが、仮に、判例法上の排他的権利としてのパブリシティ権を認める見解に立ったとしても、パブリシティ権は、著名人の氏名・肖像等が有する顧客吸引力を専ら利用する目的でその氏名・肖像を利用することを禁止する権利ですから、地上デジタル推進全国会議の「完全デジタル化最終行動計画」の記者発表会についての報道を行う際に、地デジ推進キャラクターたる草彅さんを含む関係者一同の集合写真を、草彅さんの肖像部分を切除せずに掲載することが、パブリシティ権侵害になるとは到底思われません(草彅さんの肖像が見たくてその集合写真にアクセスする人ってそんなにいないと思いますし。)。

 そういう意味では、インプレスの行動は、過剰規制だったような気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 02:27 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/07/2011

2011年パブコメの続き

昨日の中間まとめに対するパブコメですが、さらに2つ追加しました(最後のは多少反則気味ですが)


第2章 10頁


中間まとめ」では次のように記載されている。


○ このようなアクセスコントロール機能とコピーコントロール機能とが一体化 している保護技術を著作権法上の技術的保護手段の対象外としていることは、 保護技術の高度化・複合化など技術の進展に著作権法が対応できないという問 題とともに、前述したように著作権等の実効性の低下が強く指摘されている中 にあって、著作権者等の保護の観点から、もはや放置することのできない問題 となっていると言える。

○ また、ネット上の違法流通を恐れて著作物のインターネット配信等を躊躇し 著作物の円滑な利用を妨げることにもつながるなど、インターネット上の著作 物流通の促進の観点からの問題、さらに、欧米諸国にあっては広くアクセスコ ントロール「技術」を含め著作権法の規制対象としており、国境を越えた著作 物流通が増大する状況にあって、国際的な協力のもと著作権保護を図っていく ことの重要性の観点からも問題があり、対応が急務となっているものと考える


しかし、著作権法は既に、著作物の違法ネット流通については送信可能化権を創設することにより対応しており、さらに昨年は、音楽・映像等に関して違法アップロードサイトからのダウンロードを違法化させる改正法を施行しています。また、中国を含む主たる諸外国も、著作物の違法ネット流通については著作権法による網をかけるとともに、ISP等を通じて違法アップロードの迅速な削除を行えるような仕組みが採用されています。したがって、今ある法的な権利を適切に行使すれば、著作物の違法ネット流通は相当程度抑止することが可能です。

ところが、我が国のコンテンツホルダーは、新たな法的な仕組みを作ることには熱心ですが、これを活用することは不熱心です。新たな制度に市民が恐れおののいて自主的に著作物の違法ネット流通に関与するのを回避することを求めるがあまり、規制を求める範囲が過剰に広がってしまっています。しかし、権利を創設しても権利者がこれを積極的に活用しなければ当初予定していた効果が得られないのは当然のことで、これは現行制度がさらなる法規制を必要とするほどに不備であることの結果ではありません。

つきましては、新たな法規制を行う前に、既に創設した諸権利をコンテンツホルダーたちがどの程度活用してきたのか(民事訴訟や民事保全を国内外でいくつ申し立てたのか、刑事告訴をいくつ行ったのか、ISP等への削除要求はどれだけ行ったのか、著作物の違法ネット流通を発見するためにどのような体制を組んだのか)等を調査した上で、十分に活用してもなお現行法では足りないと言えるのかを、検討していただければ幸いです。


おわりに 26〜27頁


「中間まとめ」26頁には、第10期文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 技術的保護手段ワーキングチーム 名簿が掲載されています。そこには、社団法人日本映像ソフト協会(JVA)管理部部長代 理兼管理課長である酒井信義氏が入っています。酒井氏は、有識者ではなく、むしろ、著作権法による規制範囲が広がることにより利益を受ける業界団体の側の人間です。このような人物をワーキングチームに加えるのが文化審議会の公平性・公正性の理念に合致するのか疑問があります。

 他方、この中間まとめが作成されるに至る過程で、その提言に基づく立法がなされれば不利益を受ける側の人々(たとえば、「マジコン」の製造・流通に関与している事業者等)からのヒヤリング等は全くなされていません。

 このようなアンバランスな体制で審議を行えば、今回の中間まとめのような、とにかく必要性や許容性などさして配慮せず、とにかく新規規制を行うのだという答申ができあがるのは無理もないところです。しかしそれは、文化審議会、ひいては、政府に対する信頼を失わせるものであります(一部の業界団体の声のみを聞き入れる政府に国民が満足する時代はとうに終わっていることに、文化庁はいい加減気がつくべきです。)。

 つきましては、今後は、その提言する法改正によって不利益を被る側のヒヤリングをも行い、それを最終的な答申に反映させることを望んでやみません。

Posted by 小倉秀夫 at 09:24 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/06/2011

文化審議会パブコメ第1弾

 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会「技術的保護手段に関する中間まとめ」に関する意見募集について、さきほど、下記のとおり私なりの意見を送信しました。

第2章 14頁


ニンテンドーDSに用いられている保護技術は、任天堂が供給する記録媒体に記録されたコンテンツのみを実行可能とするものです。任天堂が供給する記録媒体以外の記録媒体に記録されているコンテンツについては、その著作権者等が自ら又は第三者に許諾して送信可能化しているものであっても、その実行を制限するものです。しかも、自社が開発したコンテンツを任天堂が供給する記録媒体に記録することができるのは任天堂の工場のみであり、報道等によれば数千個というロットで発注することを余儀なくされ、その代金は前金で支払うことが求められるとされており、数百万円単位を予め支払わなければ自社コンテンツを上記記録媒体に記録して販売することは叶いません。さらにいえば、それだけの資金を工面して自社コンテンツを上記記録媒体に記録するように任天堂に申し入れても、この申し入れに応ずるか否かは任天堂の胸三寸で決まるのであり、また、そのコンテンツがヒットしたときに、いつまでに、何個追加生産するのかも、任天堂の了承無くしては決定できません。

 このため、アマチュアプログラマーが開発したコンテンツ、プロのプログラマーが会社等の業務とは別に趣味で開発したコンテンツ、あるいは、零細のソフトハウス等が開発したコンテンツ等(以下、「自主制作ソフト」といいます。)については、任天堂が供給する記録媒体に記録する術が事実上存在しないため、インターネット上で無償で送信可能化したり、これを記録したminiSD等を「同人系ショップ」等で販売するなどした上で、利用者の側でニンテンドーDSに「マジコン」をセットしてこれを実行してもらっているというのが実情です。

 これまで我が国では、ある機器等で稼働するコンテンツを制作し、販売等をするにあたって、当該機器の開発・製造会社の許諾を要しないものとされてきました。その考え方が今後も維持されるのであれば、自主制作ソフトは「非正規のゲーム」にはあたらないのではないかと思います。法制問題小委員会は、この考え方自体を改めたのでしょうか?

 それはともかく、この保護技術が社会的にどのように「機能」しているかといえば、次のとおりです。

 エンドユーザーとの関係でいえば、メーカーを通じて、任天堂が供給する記憶媒体を1コンテンツに付き1枚購入することを義務づけるものとして機能しています。そのコンテンツが「違法に複製され、さらに違法にアップロードされたゲームソフトを単にダウンロードしただけ」のものか、著作権者の許諾を得て複製され、アップロードされ、ダウンロードされたものであるか否かは、ここでは全く関係がありません。

 コンテンツ提供者との関係でいえば、この保護技術は、適法に複製され、適法にアップロードされた自社コンテンツを、単にダウンロードするだけでは、これをエンドユーザーが記録した記録媒体にはゲーム機本体にあるセキュリティに適合する信号が記録されていないため、結果としてゲーム機で使用することのできない、意味のない不完全な複製とすることにより、アップロードの際に行われる適法な自社コンテンツの複製を抑止する技術だということになります。すなわち、これは、コンテンツの流通を妨げる技術だということです。

 したがって、仮にこのような技術を技術的保護手段の対象として位置づけるのであれば、コンテンツ提供者が自らまたはその許諾を得て自社コンテンツをアップロードすることを抑止しないものであることを要件に含めるべきだと思います。具体的には、任天堂が供給する記憶媒体の複製不可能領域に記録されている信号が記録されていない場合にはコンテンツの稼働が中断するような仕組みをゲーム機本体ではなくコンテンツの中に組み入れるなどすれば、その実現は容易です。

 コンテンツは表現物であり、その創作、頒布等は表現行為として、憲法第21条により手厚く保障されるべきものです。そのような表現行為が、現在、ゲーム機器本体の開発・製造者によって踏みにじられています。本来であれば、文化審議会は、そのような表現行為に対する妨害行為をやめるように任天堂に対し行政指導等をする立場にいるとすらいえます。しかるに、今回の中間まとめでは、むしろ、表現行為に対する妨害行為を側面から支援するような法改正が提言されています。多様な作品を世に送り出し公衆に享受させることにより文化の発展を図ろうとする著作権法の究極目的からすれば、本末転倒とすらいうべきものです。

 文化審議会におかれましては、巨大な資本に迎合したいという誘惑に打ち勝ち、コンテンツの多様性を確保するための施策を打ち出して行かれますよう期待しております。


第2章 10頁


中間まとめは、概ね次のように提言しています。

現行のように保護技術の「技術」のみに着目して、コピーコントロール「技術」か否かを評価するのではなく、後述するように、ライセンス契約等の実態も含めて、当該技術が社会的にどのような機能を果たしているのかとの観点から保護技術を改めて評価し、複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限する「機能」を有する保護技術については、著作権法の規制対象とすることが適当であると考える。

 しかし、「当該技術が社会的にどのような機能を果たしているのかとの観点から保護技術を改めて評価し」た結果「複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限する「機能」を有する保護技術」とされることになる技術とは、結局のところ、「複製等の支分権の対象となる行為が行われた結果利用者の手元に届いたデータからは著作物等を再生できないこととする技術」を指している過ぎないようにも見えます。そうであるならば、不正競争防止法上の技術的制限手段の回避装置の流通規制とは別個に、著作権法でこれを保護する必然性を見いだすことができません。

 また、中間まとめでは、技術的保護手段の対象として位置づけることが適当であるとされている「エラー惹起型」技術の例として、「コピーコントロールCD」が挙げられています(13頁)。しかし、これは、PCでの音楽データの読み取りを妨害する技術であり、支分権の対象ではない「公衆に直接聞かせる目的なき音楽の演奏」をも妨害するものであり、有り体に言えば、著作物の再生に用いる機器の種類をコントロールしようとする技術です。このようなものまで「中間まとめ」が「複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限する『機能』を有する保護技術」と位置づけていたとなると、今後開発されるである新技術のうちどのようなものが「複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限する『機能』を有する保護技術」に含まれるとされるのか、皆目見当がつかなくなります。

 さらにいえば、「コピーコントロールCD」は、機器メーカーの団体等と協議して定めた規格に則って異常動作を引き起こすような信号をコンテンツに混在させるのではなく、コンテンツ提供者の側で一方的にエラー惹起情報をコンテンツに混在させてエラーを惹起させるものです。このようなものまで「複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限する『機能』を有する保護技術」に含まれるとなると、機器メーカーとしては、特定の種類のエラー情報によって機器が正常に動作しないというクレームが寄せられたときに、これを是正して機器が正常に動作する仕組みを講じてよいものかどうか、コンテンツ提供者に確認しなければいけないということになります。これは、エラーに強い高機能な機器を開発して世界的な競争に打ち勝とうという機器メーカーにとって大きな足かせとなるおそれがあります。

 したがって、「中間まとめ」にて提言されているような法改正は、見送るべきだと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 08:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/22/2010

電子書籍に関する市場分割への対処

 電子書籍のもう一つの問題は、「著作物に関する地理的な市場分割」にどう対処するかということです。

 平たくいえば、送信要求をするIPアドレスあるいは利用者が決済用に使用するクレジットカードのビリングアドレスによって、特定の電子書籍をダウンロードできるか否かが決まっていることについて、どう対処するのかという問題です。

 既に、Barnes & Noble系のNook等は、基本的にUS onlyであり、Nook本体を並行輸入で入手しても、日本在住者は正規にコンテンツをダウンロードして読むことができません。今は、「電子書籍 Only」という書籍がほとんどないので、紙の書籍を並行輸入することで「そこに書かれている内容を知る」ことはできていますが、今後「電子書籍 Only」という書籍が増えていくと、日本にいては世界の最先端の議論に触れることすらできないという事態だって生じて来かねません。

 もちろん、お金に糸目を付けなければ、米国在住者に所定の電子書籍をダウンロードしてもらって、それが収蔵されている端末機器を購入するという方法も物理的にはとりうるのですが、著作権者の許諾を得た第一頒布がないだけに、「US Only」のコンテンツがインストールされた電子書籍が関税法第69条の12にいう「輸入してはならない貨物」(特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品)にあたってしまうのではないかという危惧があります。

 電子書籍が本格的に普及し、少なくない作品が「電子書籍 Only」で発行されるようになる前にこの問題って立法により解決される必要があるように思えてなりません。

Posted by 小倉秀夫 at 12:14 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/21/2010

電子書籍とプラットフォームの選択権

 昨日は、早稲田大学で行われたJASRAC公開講座「電子出版をめぐる著作権法上の課題」を聴講してきました。で、最後に質問もしました(後でツイッターで聞けばいいではないかという声はこの際無視です。)。

 質問の背景はこういうことです。

 電子書籍について、著者、出版社、利用者の3者関係で語られることが多く、実際今回の公開講座でもそうだったのですが、実務的には、プラットフォーマー(Kindleを出しているAmazon等)を含めた4者関係で考えないといけないのでは、という問題意識があります。そして、プラットフォーマーに関しては、通常の人は何種類もの端末を持ち歩かないでしょうから、必然的に寡占化します。それは、音楽配信サービスにおいてもビデオゲームについても見られる現象です。

 で、音楽配信サービスでは、特定のプラットフォーマーと特定のレコード会社が強い結びつきを持っていたことにより、そのレコード会社が隣接権を持っている楽曲についてはそのプラットフォーム用にしか配信サービスを行うことができないという事態が発生しました。つまり、実演家が、他のプラットフォーム向けにも自分の楽曲を配信したいと考えても、実演家にはプラットフォームを選択する自由がなかったわけです。

 このことは、電子書籍に関して、出版社に強い権限を与えると、同じように出現する可能性があります。出版社に送信可能化権を含む広い版面権を付与した場合や、出版権に送信可能化権を含めた場合もそうですし、利用許諾契約により送信可能化に関する独占的利用許諾(再許諾権を含む。)の設定を受けた場合もそうです。で、それでいいんだろうか、ということがひとつの問題です。作家としては、できるだけ多くの人に自分の作品を読んでもらいたいと考えるのが一般的であり、「特定のプラットフォームを市場で優位に置く」ために自己の作品の普及が犠牲になるというのは耐え難いのではないかということです。

 もう一つ、昨日は直接質問しなかったこととして、プラットフォーマーからその作品の配信を拒まれた場合をどう考えるのかという問題です。今は電子書籍は紙の書籍の補完でしかないので、それで大して困ることにはなりませんが、電子書籍がむしろ主流となり、紙の書籍はむしろマニアグッズになっていった場合、プラットフォーマーからその作品の配信を拒まれると、その作品を広く流通させる機会が大きく損なわれることになります。すると、そこでは、プラットフォーマーは、緩やかながらも、事実上の検閲を行いうるということになるが、それでよいのかということです。「検知→可能型」のアクセス制御を法的に保護するということは、プラットフォーマーによるコンテンツ支配を許すということになるのです。そして、その弊害は、電子書籍において「検知→可能型」のアクセス制御がなされるときに最も大きくなります。

 前者の問題は契約でクリア可能ですが(でも、実際にはそんなところに最初から気を配れる作家ってほとんどいないのでは?)、後者は契約ではクリアできないので、立法的な対処をしておくべきなのでは?ということです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:01 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/26/2010

講談社の電子書籍に関する契約雛形

 池田信夫さんが、講談社の電子書籍に関する契約雛形に関し、次のようなことを言っています。

最大の問題は、上の第3条と第4条の講談社がデジタル化権を著者から奪って独占するという規定である。したがって他の出版社から電子出版したいという話があっても、著者は出すことができない。しかも講談社は、この本を電子出版すると約束していないので、彼らが出さないかぎりどこの電子書店でも売れない。

 でも、この種の契約書の作成を弁護士が受注したら、100人が100人その旨の条項を入れるのではないかと思います。日本法では、書籍を電子化した事業者に対して、版面権等の排他権を付与していないので、電子書籍化に伴い行った投下資本を回収する機会を維持するためには、契約で縛りを掛ける必要があるからです。

 それに、紙の書籍だって、同じ作品について、同一スタイルの書籍を同時に他の出版社から出版されて黙ってはいないと思うのですけどね(文庫本を出すときに出版社を変えるということはあるかもしれませんが、ハードカバーと文庫は市場的には別物ですから。)。

 さらにいうと、講談社が「所有権」を持つと記載されている「デジタル化の過程で発生した本デジタルコンテンツ」というのは、元の書籍をデジタル化した上で、電子書籍の規格にあわせて、読みやすいように適宜タグを埋め込んだデジタルデータのことを言っているように思われます。だとしたら、「所有権」という用語を使ったことは勇み足だとしても、そのデジタルデータに一種の独占権が自分のところにあるのだと契約書上で謳い上げるのは、それほど不思議なことではありません(まあ、謳い上げたからって、契約当事者ではない者にそこまでそれが通用するかという問題はありますが、謳い上げておかないと積極的債権侵害という議論もしにくいですし。)。

 ちなみに、英米法で言う「property」に近い概念として「所有権」という言葉を使う契約書(案)というのは、現実には結構見かけますので、日本法に基づく契約書としては適切さを欠くとは思いますが、まあ、よくある話といったところでしょう。

 で、「講談社は、この本を電子出版すると約束していないので、彼らが出さないかぎりどこの電子書店でも売れない」かどうかですが、それは、この条項だけ見てもわからないです。さらにいえば、契約期間が何年とされていて、著作者の側から更新拒絶ができるように成っているかにも大きくよってきます。これが短いと、作者の意に反して電子書籍の出版を講談社が拒んだ場合、契約の更新を拒絶されてしまうので、講談社が囲い込むだけ囲い込んでおいて電子書籍を出させないとすることは難しくなります。

 もちろん、更新期間の到来を待てない著作者は、電子書籍の出版時期・流通プラットフォームの選択等について、自らが主導権を握れるような条項を挿入するように、署名する前に要求すればよいだけの話です。出版社と著者の契約なんて、保険約款等と異なり、適宜修正が可能です。

 講談社とは敵対することはあっても仕事を依頼されることはないので肩をもつ筋合いはないのですが、あまりにもあまりにもだったので、言及してみました。

Posted by 小倉秀夫 at 08:28 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/19/2010

マジコン規制は、タガタメだ。

 マジコン規制の可否を巡る議論を見ていると、マジコンにより回避される制限手段が誰による誰のためのものかという点に関する誤解が多いように感じられます。

 不正競争防止法第2条第1項第10号制定時に想定されていた制限手段は、各コンテンツの販売元に、アクセス制御を付するか否か、付するとすればどのようなものにするかについての選択権があるものでした。このころの議論は、コンテンツの販売元が媒体にアクセス制御のために記録した信号に反応する機能を再生機器に付する義務が機器メーカーにあるのかという話でした。

 しかし、マジコン論争のもとにあるDSの制限手段は違います。

 任天堂側が用意した特定の信号が媒体に記録されていなければDS上でプログラムが正常に稼働しないわけですから、アクセス制御を付するか否かについて、コンテンツの販売元に選択権はありません。むしろ、コンテンツの販売元は、そのプログラムがDS上で稼働するようにするために、任天堂に「ライセンス料」を支払うことすら余儀なくされています。

 すなわち、マジコンにより回避される制限手段は、任天堂等の再生機器メーカーによる、再生機器メーカーのためのもの、ということになります。

 だから、コンテンツの開発者・販売元のためにマジコンの製造・販売を規制するというスタンスを取るのであれば、アクセス制御を付さずにその再生機器上でコンテンツを再生・稼働できるようにするという選択肢をコンテンツの開発者・販売元に与えるような仕組みを採用することをマジコン規制の条件とする必要があるし、「検知→稼働」という反応を引き起こす信号等を付与するにあたって「ライセンス料」その他の名目で対価を徴収することを禁止したり、適・違法の審査を超えて、どのコンテンツに上記信号等を付与するか否かを判断する権限を再生機器メーカーから奪う必要があります。

 さもなくば、今度の法改正で狙っているのは、プラットフォーマーのコンテンツ流通への支配強化だ、と正しく国民に説明すべきだと思います。

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10/18/2010

メディアは「マジコン」について正確に報じない。

 産経新聞によれば、

 海賊版のゲームソフトをインターネットでダウンロードして遊べるようにする機器(回避機器)について、文化庁は製造・販売やサービスの提供などを規制するため、刑事罰の導入を盛り込んだ著作権法の改正案を今年度中にまとめる方針を固めた。早ければ来年の通常国会に提出する見通し。アジアや欧米各国では、携帯ゲーム機向けの「マジコン」と呼ばれる機器が多数出回り、国内でも被害が深刻化しており、歯止めをかけるのが狙いだ。

とのことです。

 そのことの当否もさることながら、新たな規制のターゲットとなる「マジコン」について正しい理解をしようともしないマスメディアの体質にはうんざりします。

 産経新聞は、上記のように、「マジコン」を、「海賊版のゲームソフトをインターネットでダウンロードして遊べるようにする機器(回避機器)」と表現した他、同じウェブページにおいて、「ゲーム機本体には、違法にダウンロードした海賊版ソフトを正常に起動させないアクセスコントロール機能がついているが、マジコンを使えば、誰でも簡単に制御機能を無効にすることができる。」と説明しています。

 しかし、これは誤りです。DSについているアクセスコントロールは、適法にダウンロードしたフリーウェア/シェアフェア系のゲームソフトすら正常に起動させないものです。より正確に言えば、任天堂がデータを焼き付けた媒体に収蔵されているソフト以外のソフトを正常に起動させないものです。

 従って、「マジコン」の流通を禁止するということは、任天堂を経由しないゲームソフトのDS上での稼働を禁止するということとほぼ同義です。産経新聞の上記記事を読んで、そのことに気がつく読者って、ほとんどいないのではないでしょうか。これを「ミスリーディング」といわずに何をミスリーディングというのでしょう。

 もちろん、産経新聞の名誉のためにいうと、「家庭用ゲーム機のソフトウエアの不正コピーに使われる「マジコン」と呼ばれる機器の取り締まりを強化するため、技術的保護手段の回避規制の強化について検討を開始」と報じた日経BP社よりはまだましですよ。「マジコン」には、コピー機能はありませんから。

 また、日経BPの上記記事は、「規制対象の機器が技術的保護手段の回避機能のみを備えたものに限られるという、いわゆる“のみ要件”から逃れるため、音楽・映像の再生機能を名目上加えたり、機器販売時には技術的保護手段の回避機能を搭載せず、別途インターネット上でファームウエアを配布したりしている」とも説明しています。

 しかし、第1次マジコン訴訟の判決文を読めば、争点は、DS用に開発し、開発者が自らの意思でオンライン上にアップロードしたフリーウェア系のプログラム(自主製作ソフト、Home Brew、インディーズ系ソフト)を稼働させる用途にも用いられるのに、「のみ」要件を具備すると言えるのかという点にあったことは明らかです。「音楽・映像の再生機能」が名目上加わっているから「のみ」要件を具備していないのだ、などという主張はなされていません。

 日経BPの上記記事を読んだ人は、「不正コピーされたゲームソフトが起動しないようプロテクト」を解除する機器を販売している業者が、「音楽・映像の再生機能を名目上加え」ただけで、「のみ」要件を具備していないではないかと抵抗しているかのように誤読してしまうのではないかと心配してしまいます。そして、国会議員やその支持者たちがそのように誤解してしまうと、それがどういう影響を社会に与えるのかを正確に理解することなく、「“のみ要件”を見直し、対象機器を柔軟に解釈できるようにする」法改正に賛同してしまう危険を生じさせます。

 「マジコン」の製造・販売等を刑事罰をもって禁止するというのであれば、それは、特定の電子端末の開発者が、その端末上で稼働するコンテンツを支配することを、刑事罰をもって保護することを意味するが、それでよいのか、ということを、正確に国民に問いかけるべきだと思います。マジコンの禁止がそのようなものであることを正しく理解すれば、マジコンの禁止と引き替えに、あらゆるコンテンツについて、その開発者から申請があったときは、その電子端末上で稼働するような措置を無償で施す義務を当該電子端末の開発者に課す等することだってできるわけです。しかし、国会議員を含めた多くの国民が、「マジコン」を禁止することによって稼働しなくなるのが「違法にダウンロードされたコンテンツ」だけだと勘違いしている現状では、そんな話すら出てくる余地がないように思われます。

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10/16/2010

ゼミ選抜レポート FOR 2011

 今年も、来年度に向けてゼミ員選抜を行う季節となりました。

 この数年は、レポート&面接で選抜しており(なお、面接は、現3年生の意見重視)、著作権法という科目の性質上、アート方面に関心がある人と、IT系に関心がある人とが併存するので、最近は課題を2つ出し、どちらかを選択するようにしています。

 で、今年のレポートの課題は下記の通りです。


【レポートテーマ】下記のテーマのうち一つを選んで下さい。

(テーマ①) 日本のミュージシャンを一人(一組)北米に進出させる密命を受けたとします。あなたなら誰を進出させますか。そして、ファーストシングル、セカンドシングルとして何を選択しますか(他人の楽曲を新たにカバーさせてもよい。)。その理由も述べてください。

(テーマ②) 現在の電子書籍に足りない機能的要素は何でしょうか。

【書式・枚数】 A4で4枚まで。

Posted by 小倉秀夫 at 10:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/08/2010

優越的地位の濫用を保護するための著作権法の改正

 文化審議会は、「マジコン」の規制強化目指し著作権法改正の検討を集中的に行うこととした旨が報じられています

 また、一部権利者たちの意見しか聴かずに立法してしまうのかと、手続面でもううんざりしてしまいます。

 リンク先の記事を見ても、マジコンって、インターネットなどから入手したゲームソフトの不正コピー版だけでなく、ゲームソフトの開発者自身がインターネットなどを通じて無償で配布している正規版の起動をも可能とするものであることが全く無視されています。そして、マジコン規制を強化すると、あるプラットフォームで起動するコンテンツを市場にリリースするにあたっては、そのプラットフォームの開発者が高額の上納金を徴収する(あるいは、そのプラットフォーム開発者自身がリリースしているソフトウェアと市場において競合するプログラムをリリースさせない)という、プラットフォームの開発者による不公正な活動を法的に擁護することになってしまうという視点は、全くそこに含まれていません。

 マジコン規制が不公正な競争制限や優越的地位の濫用に活用されないようにするためには、各プログラムの著作権者がアクセス制限を望まない場合にはアクセス制限なしにそのプログラムをリリースする環境が現実に整備されていることを、「検知→起動」型のアクセス制限を法的に保護するための要件とするとともに、そのプラットフォーム上でプログラムを起動できるようにすることの対価をプラットフォームの開発者がソフトハウス等から徴収することを禁止することが不可欠です。「不正コピーされたゲームソフトが起動しないようプロテクトを設け」ることが規制の主眼であるならば、それで何の問題もないはずです。

 技術的保護手段ワーキングチームの座長である土肥一史教授は存じあげていないわけではないのでお手紙等を差し上げることはできるとは思うのですが、文化庁は知っていてそういうことを無視する報告書を創り上げて、プラットフォーマーのための著作権法改正に邁進するのではないかとの疑念が頭をよぎる今日この頃です。

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08/10/2010

「音楽CDが売れなくなったのは違法アップロードの影響が大きい」とレコード会社が未だに考えていることの衝撃。

 J-CASTの「音楽ファイルを違法アップ 個人に540万円支払い判決の衝撃」という記事によれば、

大手レコード会社幹部は、音楽CDが売れなくなったのは違法アップロードの影響が大きく、業界全体の売上げの10%近くに影響を及ぼしている、と考えている。

とのことです。しかし、P2Pファイル共有等により音楽ファイルが違法アップ/ダウンロードされるということが普及していなかった時代よりも広く普及するようになってからの方がCD等の売上げが落ちた要因の一角を違法アップ/ダウンロードに置くことの当否はともかくとして、P2Pファイル共有等により音楽ファイルが違法アップ/ダウンロードされるということが定着した以降もCDの売上げが落ち続けている要因を違法アップ/ダウンロードに置くのは的を射ていないというべきでしょう。

 音楽業界はむしろ「違法アップ/ダウンロード」に直接影響されない指標との比較でCDの売上げが落ち続けている要因を考えてみるべきではないかと思ったりします。

 例えば、オリコンのカラオケ週間ランキングを見ると、1位 坂本冬美「また君に恋してる」、2位 西野カナ「会いたくて 会いたくて」、3位 GReeeeN「キセキ」、4位 高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」、5位 AKB48「ポニーテールとシュシュ」、6位 一青窈「ハナミズキ」、7位 西野カナ「Best Friend」、8位 MONGOL800「小さな恋のうた」、9位 ヒルクライム「春夏秋冬」って感じで、ここまで今年の歌って西野カナとAKB48しか入っていないわけで、今年の新曲って、違法ダウンロード以前に、そもそも大衆に受け入れられていないとみるべきなのではないかなあっていう気がしてなりません。ミリオンセラーが続出した90年代って、みんなこぞってカラオケボックスで新曲を歌っていたわけで、だからこそ新譜を買ったわけだけど、こんな風に新曲が歌われもしないのであれば、P2Pがあろうとなかろうと新譜なんて買ってもらえないよなあと正直思ってしまいます。

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08/09/2010

試行運用終了後のプログラムの継続利用

 大学生、法科大学院生もまた夏休みでしょうから、事例問題を出してみることにします。興味がある方は考えてみてください。



【設例】

 大手電気通信会社であるYは、カード情報管理会社Zと提携して、TCP/IPを用いたクレジットカード認証システムを構築することを予定していた。しかし、TCP/IP用の認証プログラムを作成することができなかった。そこで、Yは、TCP/IP用の認証プログラム「甲」について著作権を有しているXに、正式採用した場合にはX社からクレジットカードの認証端末を購入するので、甲を試行運用させて欲しいと申し向けた。この説明を信じたXは、一時的な試行運用に供する目的で、YがAに委託して調達したサーバコンピュータ「乙」にプログラム「甲」をインストールし、Yが管理するデータセンターにこれを設置した。

 Yは、程なくしてサーバコンピュータ「乙」をZに譲渡してその運用を任せるとともに、Zと提携して、Xに無断で、プログラム「甲」を用いたクレジットカード認証システムを正式に運用し始めた。

 その後、Yは、Xに対して、「Yは、プログラム「甲」は正式に採用しないことにした」と通告し、認証端末をXから購入しない意思を明らかにした。そこで、Xは、Yに対し、プログラム「甲」のインストールされたサーバコンピュータ「乙」の引渡しまたは破壊を要求したが、Yはこれを拒み、Zとともに、サーバコンピュータ「乙」にインストールされたプログラム「甲」を用いてクレジットカード認証業務を継続した。

 Xは、Y及びZに対し、いかなる請求を行うことができるか。



 まあ、現実の著作権紛争を単純化すると、こんなものです。

Posted by 小倉秀夫 at 04:42 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/31/2010

その事実を知っているか否かは「その事実を知りながら」複製したか否かに関係がない。

 大阪大学の茶園成樹教授がジュリスト1405号85頁以下に「違法配信からの録音・録画」という論文を発表されています。

 その前におさらいをしておくと、平成22年1月1日施行の著作権法第30条第1項第3号では、

著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

については、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的として、その使用者が行う複製であっても、複製権侵害とすることとされました。

 ここでいう「その事実を知りながら」とはどういうことをいうのかという点に関しては、具体的な法案の文言が明らかになって以降論争となっていました。

 この点に関し、茶園教授は、上記論文の中で、

一般人が有する通常の知識から、自動公衆送信が著作権を侵害するものであることを高度の蓋然性をもって認識することができる場合には、「その事実を知りながら」の要件を満たすと解されるべきであると思われる。

とされています。具体的には、

現在、ヒットチャートの上位にランクインしており有料で提供されている楽曲や映画館において有料で上映されている映画が無料で自動公衆送信されている場合、一般人が有する通常の知識によれば、その自動公衆送信が著作権を侵害しないものである可能性はほとんどないと考えることができるため、この要件を満たすと判断されよう。

とされています。

 しかし、起草担当者ががわざわざ「その事実を知りながら」という文言を用いることで反対論者の唱える危惧(違法にアップロードされたものかどうか解らないではないか!)を抑えこもうとしたのに、「その事実を知りながら」という文言を、いわば重過失まで含むものとアクロバチックに読み込んで、反対論者からの危惧を現実化しようというのはいかがものかなあと首をかしげざるを得ません。裁判所が想定する「一般人」が有する通常の知識を備えていなければ──それはネット上ではどういうものが違法コンテンツとして流通しているのかについて絶えず「一般人」並みの情報を仕入れていなければ、違法行為を行ったものとして糾弾されてしまうことを意味しかねません。そのような法制度を採用するのであれば、「その事実を知りながら」という故意犯限定の文言等使うべきではなく、立法段階で、「ネット社会に関する情報に疎い奴はガンガン摘発してやるぜ」という宣言を法案推進者はすべきであったというべきでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 12:38 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

06/05/2010

iTunesクラウド

 iTunesのクラウド化なんて話が世の中にはあるようです。iTunes用の音楽データをノートパソコンに保管するとHDDが一杯になってしまうので、高速無線LANが確保されている場所で生活する限りにおいては、便利そうです。

 ただ、Appleがそういうサービスを開始するとしても、日本だけは爪弾きにされる可能性があります。日本には、悪名高き「カラオケ法理」があるからです。

 クラウド用のサーバコンピュータはApple社が管理支配しているのでしょうし、データの作成、アップロード、ダウンロード、再生に用いるソフトウェア(iTunes)もまたApple社が独自に開発し、提供するわけですし、もちろん、Apple社はそのクラウドを営利目的で提供するのでしょうから、MYUTA事件地裁判決の論理に従えば、著作権法の規律の観点からは、楽曲データをクラウドサーバに複製し、また、クラウドサーバからクライアントコンピュータに送信する主体はApple社だということになりそうです。すると、ユーザーが自分のiPhone等に転送する目的でiTunesクラウドにデータを蔵置したに過ぎないとしても、私的使用目的の抗弁は適用されないということになります。また、クラウドサーバからユーザーのiPhone、iPadに音楽データを転送する行為は、Apple社による自動公衆送信ということになります。そして、私的使用目的であっても、違法に送信可能化されている音楽ファイルをダウンロードして自己の所有する媒体に保存することは平成22年改正により違法とされましたから、iTunesクラウドから自分のiPhone等にデータを転送する行為は複製権侵害ということになります。

 もちろん、iTunesクラウドを開始する段階では、iTunes Storeから購入した音楽データに付いては、iTuneクラウドにこれを保存し、iTunesクラウドからiPhone等にデータを転送する行為についてまでは必要な権利処理を行うのだと思うのですが、問題は、iTunesクラウドサービス以前にiTunes Storeから購入した楽曲データ並びにユーザーがCD等からリッピングしてPC上に保存していた楽曲データです。特に、後者について、各著作権者、隣接権者から、もれなく許諾をとるというのは至難の業です。

 日本が世界に取り残されないためには、カラオケ法理の早期廃止が望まれる所以です。

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05/24/2010

研究等の目的による書籍スキャンと私的使用目的複製の抗弁

 研究や業務で使用する目的で、購入した書籍を自ら裁断し自ら所有するスキャナでScanするということが、しばしば行われています。これは著作権法上問題があるでしょうか。

 まず、書籍等をScanし、デジタルデータとしてハードディスクに保存する行為は、その書籍等に掲載されている文章や絵画等をパソコン等で再生することを可能としますので、「複製」にあたることは疑いの余地がありません(もとの書籍等が裁断され、使い物にならなくてもダメです>弾さん。)。

 そこで、検討すべき課題は、このような「複製」は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を目的として、「その使用する者」が行う複製と言えるかどうかということです。いえる場合には、著作権法第30条第1項により、この複製は、著作権者の同意なくして行われたとしても、適法となります。

 まあ、「BOOKSCAN」サービスは異なり、書籍等の購入者が自ら使用する目的で自ら書籍を裁断し、自ら所有するスキャナでScanする場合、「その使用する者」が行う複製と言いうる点は疑問の余地がないように思います(業者が所有し、有償で公衆に提供しているスキャナが用いられる場合、カラオケ法理との関係で、「著作権法の規律の観点」から見て誰が複製をしていることにされるのかよく分からないのですが。)。

 すると、問題は、このような複製は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を目的としてなされていると見ることができるのかということになります。

 この点につき、現行著作権法の起草を担当された加戸守行氏の「著作権法逐条講義[五訂新版]」では、

『これに準ずる限られた範囲内』といいますのは、複製をする者の属するグループのメンバー相互間に強い個人的結合関係のあることが必要で」あり、「会社等における内部的利用のための複製行為は、よく問題となりますけれども、著作権法上の『家庭内に準ずる限られた範囲内』での使用には該当いたしません

と説明されています(225頁〜226頁)。ここで注意すべきは、起草者の説明では、あくまで、作成した複製物を複数人で使用する場合に、その複数人の間にどのような関係がある場合に、「これに準ずる限られた範囲内」といえるのかが問題とされているに過ぎないということです。作成した複製物を作成者のみが使用することが予定されている場合に、作成者の主観如何で「個人的に」使用する目的とはいえない云々という話は出てきていないということです。むしろ、会社の社長が秘書にコピーをとってもらうというのは、社長がコピーをとっているという法律上の評価をするわけでありますとの説明が加戸・前掲227頁でなされていることを考えると、会社の業務に資するための複製であっても、それが複数人間で使用されることを目的としていないものである場合には、なお、「個人的に」使用する目的での複製であるとして30条1項が適用されるものと起草者は考えていたのではないかと思われます(社長が秘書に命ずるのは、通常、会社の業務に役立てるために情報を収集し、把握するために行うコピーでしょ?)。著作権法制定時、安達健二文化庁次長(当時)は、昭和45年4月8日の衆議院文教委員会で、

「個人的に」というのは「一人で」ということになります。

と答弁しており、間接的にも営利目的に繋がらない云々ということまでこの文言に意味を込めていなかったことは明らかです注1

 この分野で唯一の下級審判決である東京地判昭和52年7月22日判タ91号132頁も、

企業その他の団体において、内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為は、その目的が個人的な使用にあるとはいえず、かつ家庭内に準ずる限られた範囲内における使用にあるとはいえない

と判示しているに過ぎず、個人が業務上利用するために著作物を複製する行為が私的使用目的の複製にあたるかどうかには言及されていません。

 実際、研究や会社の業務に間接的に利用するためとはいえ、このような零細な利用について事前にその著作権者にコンタクトをとって許諾を得ることを求めるのは、それによって通常得られる利益に比してコストがかかりすぎることには変わりありませんから、これを30条1項の適用対象外としてしまうと、研究等のために広く情報を収集するという行為を著作権法が阻害することになってしまいます。それは、文化の発展に寄与することを究極目的とする著作権の立法趣旨に却って反します。

 しかし、文化庁は、昭和51年に発表した「著作権審議会第4小委員会(複写複製関係)報告書」において、

第1に使用の目的であるが、個人的な立場において又は私的な場である家庭内若しくはこれと同一視し得る閉鎖的な範囲(例えば親密な少数の友人間)内において使用するための著作物の複製(Personal use又はDomestic useのための複製)を許容したものであり、例えば、企業その他の団体内において従業員が業務上利用するため著作物を複製する場合には、仮に従業員のみが利用する場合であっても、許容されるものではない。

等と言い始めます。そして、研究者もこれに追随します。例えば、作花文雄「詳解著作権法[第3版]」318頁は、『個人的』な利用の意味するものは多義的であるが、立法趣旨としては本条で複製された当該複製物を個人の趣味や教養のために使用することが想定されているものと思われる。その複製物の使用目的が、職業や何らかの事業に結びつく場合には、基本的に個人的とは言わない

と説明します。しかし、少なくとも立法当時の国会での議論を見る限り、立法趣旨がそのようなものであるといえる根拠はないようです。

 このように考えていくと、自己の研究や業務に活かす意図に基づくとはいえ、Scanしたデータを自分だけで閲覧する目的で、購入した書籍を自ら裁断し自ら所有するスキャナでScanする行為は、「個人的に」使用することを目的としているが故に、30条1項の適用を受ける(すなわち、著作権侵害とはならない)と解するのが適切だし、それは、起草担当者の意思や、過去の下級審裁判例とも抵触しないといいうるように思います。


注1このとき、安達次長は、たとえば三、四人程度のごく少人数の友人で組織する音楽の同好会というようなものが、その楽譜を印刷してお互いに歌うというような、そういう家庭に準ずるような、家庭といっても大体大きさというものがあるわけであります、それに準ずるような小グループの中で――これは家庭ではないけれども、家庭くらいの人数の小グループの範囲内というような意味で「これに準ずる限られた範囲内」、こういうように表現した次第でございます。と答弁しており、ここではグループの人数のみが問題とされています。「グループのメンバー相互間に強い個人的結合関係がある場合」でなければ云々という話にはなっていません。

Posted by 小倉秀夫 at 07:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/23/2010

FairUse規定のある国とない国の違い

 昨日は、著作権法学会の研究大会に出席し、懇親会にも出てきました。

 しかし、未だにFairUse規定など必要ないという専門家もいるのだなあということが驚きです。FairUseがあるとないとでどういう違いが生ずるのか、理解できていないのかもしれません。

 事業家が新しいビジネスモデルを思いついたが、それは第三者の著作権等と形式的に抵触する可能性が高い場合を考えてみると、よくわかると思うのです。

 FairUse規定があれば、そのビジネスモデルをまず実施した上で、その過程で行われる著作物等の利用が「Fair」であることを著作権者等に向けて説得し、説得に失敗し訴訟を提起されたときは裁判所に向けてそれが「Fair」であることを主張することができます。

 そして、その過程では、第三者の著作権等との折り合いをつけるために、ビジネスモデルなりそれを実現するためのソフトウェア等を微妙に修正していったりすることができますし、著作権者等に著作物利用料(相当金)を支払うための原資を、営業利益または増資によって確保することも可能です。

 しかし、FairUse規定がないとこうはいきません。

 このビジネスモデルを正当化する個別の権利制限規定が新設される前に、そのビジネスモデルを先行実施すると、ほぼ確実に敗訴することになります。従って、FairUse規定がある国の企業がそのビジネスモデルを先行実施し、デファクトスタンダードを築き上げている間、FairUse規定がない国の企業は手を拱いてみているしかありません。このため、個別の権利制限規定が新設され、そのビジネスモデルを国内で実施することが可能となったころには、海外でデファクトスタンダードを築き上げた企業が国内に参入してきた場合に、これと太刀打するのが非常に困難となってしまいます。

 さらにいえば、新たなビジネスモデルをベンチャー企業や創造力のある学生等が考案したとしても、それを正当化する個別の権利制限規定を創設するように文化庁や国会議員に対してロビー活動を行う資金的余裕はないし、人的なコネクションもないのが普通です。そもそも、まだ実施されていない新たなビジネスモデルを実施可能とするために個別の権利制限規定を創設しようということに、文化庁や国会議員が賛同してくれるのか、冷静に考えると疑問です。結局、FairUse規定がある国の企業がそのビジネスモデルを実施して普及させた後に、これを国内でも実施することが可能とする権利制限規定が創設されるのが関の山といったところでしょう。

 FairUse規定をこのまま設けずにいると、FairUse規定がある国の企業にこれからも先行者利益を攫われ続けるというお話でした。

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04/11/2010

情報に国境を作らない工夫

 既に米国ではiPadが発売され、Amazon社のKindleとともに、電子書籍の普及を後押ししていくことでしょう。
 ただ、そうなっていくと一つ心配しなければならないことが出てきます。音楽・映像の世界で既に生じている「国境での情報の遮断」がテキストの世界でも生
じてしまいかねないということです。

 従来の書籍であれば、日本国外でのみ出版された書籍であっても、最悪並行輸入をすれば、日本国在住者でもこれを閲読することができます。しかし、オンラ
イン配信で提供される電子書籍においては、日本がその配信対象区域から外れるものについては、誰かが現行の著作権を侵害することなくして日本国在住者がこ
れを閲読することができなくなります。電子書籍が紙の書籍の補完物である間は「電子書籍が入手できなければ紙の書籍を読めばいいではないか」ということは
可能なのですが、今後出版コストの安い電子書籍オンリーの著書・論文等が増えてきた場合には、「知らぬは日本ばかりなり」ということが増えていく危険があ
ります。

 著作権者の投下資本回収可能性を損なう可能性の乏しい著作物の利用をフェアユースとして禁止権の対象から外す広範なフェアユース規定を設けていただける
のであれば、日本国を配信対象区域から除外する電子書籍オンリーの作品については著作権者の許可無くオンラインで日本国内に転送する行為を禁止できないと
することはできなくもないのかもしれませんが、どうもそういう広範なフェアユース規定は新設していただけそうにありません。

 そうであるならば、文化庁なり学術系諸団体なりは、アップル社やアマゾン社等に対し、電子書籍の配信対象区域を限定しないように、少なくとも諸外国で発行された電子書籍の配信対象区域から日本を除外しないように今から働きかけていくべきだということになります。

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04/07/2010

春の学会シーズン2010

 今年度の春の学会シーズンがもうじき始まりますが、出向くとすればこのくらいでしょうか(この全てに出るかはまだ決めていませんが。)。





















学会名 日付 場所
民事訴訟法学会 5月15日・16日 関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス
著作権法学会 5月22日 一橋記念講堂
工業所有権法学会 6月13日 東北大学

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04/05/2010

著作権法ゼミの推奨教材(2010)

 今年度著作権法ゼミを受講される皆様へ

 そろそろゼミが始まりますので、一応教材についての案内をしておきます。

 まず、六法ですが、著作権法はどうしてもマイナー分野なので、通常の授業で使っている六法ではどうしても足りません。だから、知的財産権法用の六法を別途用意しておいた方がよいと思います。

 角田政芳編「知的財産権六法2010」(三省堂)なんかが使いやすいのではないかと思います。「知的財産権法文集平成22年1月1日施行版」(発明協会)も悪くはありません。そのようなものを買うお金が惜しいという人は、以下の法令をウェブで探して印刷し、バインダーにとじておくとよいでしょう(その際、ウェブブラウザーから直接印刷するよりは、テキストをコピー&ペーストでワープロソフトに移した上で、適宜書式を設定した上で、プリントアウトした方がよいと思います。)。


  1. 著作権法(附則を含む。)

  2. 著作権法施行令

  3. 著作権法施行規則

  4. 旧著作権法

  5. 著作権等管理事業法

  6. 著作権等管理事業法施行規則

  7. 万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律

  8. 連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律

  9. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約

  10. 万国著作権条約

  11. 著作権に関する世界知的所有権機関条約(WIPO著作権条約)

  12. 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WIPO隣接権条約)

  13. 実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約

  14. 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約

  15. 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(とりわけ附属書一C)


 また、著作権法でも判例の学習は重要ですので、判例集はもっておいた方がよいと思います。

 「著作権判例百選(第4版)」(有斐閣)は改訂したばかりなので、収録判例も新しくてよいです。今のうちに古本屋さん等で「著作権判例百選(第3版)」(有斐閣)を入手して新旧2冊押さえておくのもよいでしょう。

 教科書についてですが、さっと読んで全体像を押さえておきたいということでしたら、島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門」(有斐閣)がよいでしょう。もう少し重厚な本を読みたいということでしたら、中山信弘「著作権法」(有斐閣)がよいでしょう。田村善之「著作権法概説」(有斐閣)、作花文雄「詳解著作権法」(ぎょうせい)は、改訂版が出たら、買いだと思います。

 そのほか、参考書ですが、音楽著作権に特に興味がある人は、安藤和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス──基礎編3rd Edition」、同「よくわかる音楽著作権ビジネス──基礎編3rd Edition」(いずれもリットーミュージック)を読むとよいでしょう。論点ものとしては、牧野利秋=飯村敏明編「新・裁判実務体系(22)」(青林書院)がレベルが高いです。

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03/05/2010

著作権・フェアユースの最新動向

 このたび、私も参加していたフェアユースに関する研究会での討論内容が書籍になり出版される運びとなりました。

 私なりの立法提言などもさせていただいておりますので、日本版フェアユースにご関心をお持ちの方は、ご購入いただければ幸いです。

 「お前のような叱られるべき若造の発言など金を出してまで読んでいられるか」という向きもあろうかと思いますが、私以外の参加メンバーは下記のとおりとても立派な方々ばかりなので、そういわずにお求めいただければ幸いです。


委員長


泉 克幸 徳島大学 総合科学部教授

委員


上野達弘 立教大学 法学部准教授

小川憲久 弁護士(紀尾井坂テーミス法律特許事務所)

小倉秀夫 弁護士(東京平河法律事務所)

亀井正博 富士通㈱ 法務・知的財産権本部本部長代理

河野智子 ソニー㈱ スタンダード&パートナーシップ部著作権政策担当部長

駒田泰土 上智大学 法学部准教授

椙山敬士 弁護士(虎ノ門南法律事務所)

三木茂  弁護士(三木・吉田法律特許事務所)

水谷直樹 弁護士(水谷法律特許事務所)

三村量一 東京高等裁判所 判事(現・弁護士(長島・大野・常松法律事務所))

宮下佳之 弁護士(西村あさひ法律事務所)

吉田正夫 弁護士(三木・吉田法律特許事務所)

ゲスト


田村善之  北海道大学大学院 法学研究科教授

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02/14/2010

知的財産戦略の推進について

 先程、知的財産戦略本部に、「知的財産戦略の推進について」のパブリックコメントを提出しました。内容は下記の通りです。

  1.  インターネットラジオ・インターネットTV事業者も既存の放送事業者等と同じスタートラインでコンテンツ制作を行えるように、事前に許諾を得ずとも後に二次使用料を支払えば商用CD等に収録されている楽曲をBGM等で使用できるようにする。

  2.  「放送対象地域」という考え方をやめ、各放送事業者に対し、その制作した番組を、日本全国ないし全世界に配信するように、放送免許の剥奪をちらつかせてでも促す。インターネットを通じて情報が国境を超える時代に、放送コンテンツのみ、「放送対象地域」に情報が閉じ込められるのは不自然である。

  3. テレビ放送については、通信販売のために公共の電波を用いることを禁止し、テレビ局が独自の放送番組を容易出来ない放送枠については、放送枠をオークションにかけることを義務付ける。

  4.  芸人、芸能人等について1週間の労働時間の上限を定める。才能が短期間に集中的に費消され消耗させられてしまう現状では、継続的な知財立国の実現は困難である。

  5.  日本版フェアユースを早期に導入し、世界に先駆けて新しいビジネスモデルを開発した日本企業が、それを法的に可能とする個別の権利制限規定が立法されるのを待たずに、米国企業に先んじて、これを市場に提供できるようにする。

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02/13/2010

インターネット上での映画や音楽などの海賊版を取り締まる方策として政府が考えていること

 日経新聞社によれば、


 政府はインターネット上での映画や音楽などの海賊版の取り締まり強化に乗り出す。ネット接続サービス事業者(プロバイダー)に海賊版を自動検出する技術の導入を義務付けることや、違法ダウンロードを繰り返す利用者との接続を強制的に切断する仕組みを検討する。海賊版の利用に歯止めをかけ、制作者の著作権を保護して収益を得られるように支援する。

とのことです

 ISPが「海賊版を自動検出する技術」を導入する場合にはいくつものハードルがあります。

 一番のハードルは、「海賊版を検出する」ためには、マッチングの対象となるコンテンツに関するデータを各ISPがもれなく入手する必要があるということです。しかし、過去にレコードまたはCDに収録されて公表された音源に対象を限定しても、各ISPが過去に遡ってこれらをあまねく入手するというのは現実問題として不可能です。また、今後公表されるものに限定しても、各ISPがこれらをすべて購入することは、理論的には可能でも、財政的に困難です。テレビ番組などの映像作品に至っては、ビデオ化またはDVD化された一部の作品以外は、マッチングの対象となるデータを入手することが公式には不可能です(これから放送されるテレビ番組については、各ISPが全テレビ局の全番組を録画すればマッチングデータを入手することは理論的には可能ですが、全国ないし全世界のいずれかで放送される各テレビ番組について著作権、隣接権の保護期間が切れるまで全ての番組に関するデータをISPがマッチングデータとしてサーバに保持しておくとなると、どれだけの容量の記録媒体が必要となるのでしょうか。関西ローカルの番組をたった1週間保存するだけの選撮見録ですら1テラバイト用意していたというのに。)。

 これらマッチング対象のコンテンツを網羅的に入手しサーバに保存し続ける義務を負わせるだけで、大半のISPを倒産に追い込むことが可能でしょう。

 次のハードルは、求められるフィルターの精度が高くなれば高くなるほど、送受信されるデータが特定のコンテンツの複製物でないとしてフィルターをスルーさせるためにかかる処理時間が長くなるということです。特定のコンテンツがどのようなファイル形式でどのような品質でデジタルデータ化されて送受信されるのかについては、天文学的なバリエーションがありうるわけですが、可能性がある限り全てマッチングさせるのだということになると、そのISPの電気通信設備を通り抜けようとするデータがひとつの特定コンテンツの複製物ではないと判別されるまでに相当の時間がかかってしまいます。それを、公表済みの全ての商用コンテンツについて行うとなると、相当の時間がかかりそうです。それを、そのISPの運営する電気通信設備を通り抜ける全てのデータに付いて行うとなると、猛烈な時間がかかりそうです。テレビ局と映画会社とレコード会社のわがままを叶えるために、メールを送信したらISPのフィルターを通り抜けるまでに1ヶ月かかるなんて未来が現実のものとなりそうです。

 結局のところ、政府は、「インターネット上での映画や音楽などの海賊版の取り締まり」を行う手段として、インターネットを実用に耐えないものにしてしまおうと考えているということなのだと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 11:51 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

01/27/2010

フェアユースが日本の法体系にも馴染む

 前回のエントリーに対し、vidさんが次のようなはてブコメントを残しています。

そもそもフェアユースが日本の法体系に馴染まないってのも問題なんだよな。日本は成文したものが「許諾」と言うやり方。米英は「フェア」をつど裁判で決めようというやり方。米英式に変えるにも法体系の問題があるし

 果たしてそうでしょうか。

 著作物の公正な利用に対する著作権の行使の制限を明文の定めなくして裁判所が行うということが日本の法体系に馴染まないという趣旨であればまだわからなくはありませんが、抽象度の高い文言の条文で私権の行使を制限すること自体が日本の法体系に馴染まないという趣旨であればそれは明らかに違います。なにしろ、日本の民法という基本的な法律の第1条には、

権利の濫用は、これを許さない。

という非常に抽象度の高い規定があるのですから。私は、民法第1条第3項は日本の法体系には馴染まないので、これを廃止して、私権の行使を制限する必要があるものについてはすべて個別立法によるべきであると提唱する民法学者並びに法律実務家に出会ったことがありません。

Posted by 小倉秀夫 at 12:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

01/25/2010

国破れて著作権あり──何を恨んで鳥にも心を驚かさん

 文化庁は、日本版フェアユースを「写真の端に絵画が写ってしまう場合など、意図しない付随的利用などに範囲を限定する」意向であると伝えられています。日本新聞協会等はその程度のフェアユースにすら反対のようです。

 しかし、著作物の公正な利用であっても著作権侵害に当たるという規定を維持し続けること、若しくは、その著作物の利用が「公正」とされる場合を極めて限定的な範囲に留めることが何をもたらすのか、きちんと理解されているのか疑問です。

 例えば、著作権法の平成21年度改正によって適法であることが明文化された著作物の利用には、Web検索サービスにおける著作物の複製及び送信可能化、インターネット販売等における商品画像の複製・公衆送信、情報解析のためのウェブ上の情報のコンピュータへの蓄積、通信事業者によるキャッシュサーバ又はバックアップサーバにおける著作物等の複製、コンピュータ稼働の際のハードディスク等へのキャッシュデータの蓄積等があります。これらは、平成21年改正以前にも、現実には行われていたことです。平成21年改正は、その後追いに過ぎません。

 日本の著作権法にはフェアユース規定を導入するな又は意図しない付随的利用などに範囲を限定せよという論者は、平成21年改正のような個別規定が立法され施行されるまでは、いかに日本以外の先進国では、Web検索サービスが提供され、インターネット販売では商品の画像が提示され、様々な企業が情報解析のためにウェブ上の情報を利用し、通信事業者はキャッシュサーバによりサーバの負荷を軽減し、バックアップサーバにより不意の事故からデータを守り、または、メインメモリ上のデータをハードディスク上にキャッシュとして書き出すことによりメインメモリの負担を軽減するような仕組みをアプリケーションに施すことが一般化していたとしても、日本国では、そのようなことは行われるべきではなかったと考えているということでしょうか。今後も、新たな情報通信技術が開発された場合に、それが著作物の複製・公衆送信を伴うものであった場合には、個別の権利制限規定が設けられるまでの間、日本だけは、他国でのその技術の利用は、手を加えてみていなさいと考えていると言うことなのでしょうか。

 それとも、上記のようなことがしたかったら、著作権侵害罪に問われる覚悟で行うべきだと考えているのでしょうか。しかし、著作権法を遵守していたら国際的な技術開発競争に負けてしまうという制度のもとで、著作権法に関するコンプライアンス意識を高めようというのは無理があるのではないでしょうか。


 国破れて著作権あり


 フェアユース規定導入消極派の望む未来は、そのような荒涼とした世界のように思われてなりません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:57 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/22/2010

これからは新聞記者は資料としてウェブをプリントアウトしたりなどしない。

 社団法人日本新聞協会等が「『権利制限の一般規定』導入に関する意見書」を提出したのだそうです。

 その中で、ウェブページが無断で印刷されることを問題視されているようです。ただ、私は、何度も新聞記者さんから取材を受けていますが、その際、多くの記者さんが、ウェブページを印刷したものを資料としてお持ちだったと記憶しています。さらにいえば、私は、新聞社のカタから、「あなたのウェブページを、取材の際の資料に使いたいので、印刷させて下さい」との許諾願いを受けたことがありません。私の文章は、基本的に解説文ですから、「当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物」にはあたらないはずですし、新聞社は営利活動の一環として取材活動を行っているので、取材活動において資料として使用するためのプリントアウトは「私的使用の範囲」を超えているとするのが多数説です。

 今後、記者さんの取材活動がどう変わっていくのか、楽しみです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

01/05/2010

ドメイン登録者名義の冒用

 どうも、私の名前を使ってドメイン名を登録している人がいるようです。

 もちろん、「Hideo Ogura」だけだと同姓同名ってことも十分あり得るのですが、住所地が「Katsusikaku Tokyo JP」になっているので、その可能性は低そうな気がします。

 まあ、そのドメイン名は、セカンドレベルドメインがアルファベット1文字という、ある意味すばらしいドメイン名なので、私にその権限を引き渡してくれるのであれば、過去は問わないということでよいとは思っているのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 11:53 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

何が分子で何が分母か

産経新聞はつぎのような記事を掲載しています。

 確かに、法改正の効果については議論を呼んだが、レコ協は、適法な音楽配信サイトを認証する「Lマーク」が全体の97%に普及していることから、ユーザーは違法サイトを見分けられるとみている。

 97%って、分母が何で分子が何なのでしょうか。これをみると、
例えば、ゆずmobile(http://yuzu.senha.jp/)、ゆずムービー(http://yuzu.senha.jp/pv/)、ゆずコール(http://yuzu.senha.jp/mc/ )、ゆずうた(http://yuzu.senha.jp/uta/)、ゆずうたフル(http://yuzu.senha.jp/uta_full/)をそれぞれ別サイトとしてカウントするなど、分子が水増し気味のようにも思われるのですが。配信楽曲数では、全体の1割近くを占めるiTunes Storeが「Lマーク」を使用していないわけですので、「Lマーク」が全体の97%に普及しているともいえないです。OTOTOYも「Lマーク」を使用していないようにも見えます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:08 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/04/2010

番組のギャラってそんなに安いと思われていたの?

Rocket News24が次のような記事を掲載しています。

人気テレビ番組のスペシャル版『新春大売り出し!さんまのまんま』の番組内で、ゲストとして呼ばれた女性タレントが800曲の音楽が記録されているiPod nanoを明石家さんまにプレゼントするという衝撃のシーンが放送された。iPod nanoのプレゼントは問題ないが、楽曲が記録されたiPod nanoのプレゼントは著作権法違反に触れる可能性がある。しかも800曲という膨大な量の楽曲の為、巨額の罰金が発生する可能性が高い。

 果たしてそうでしょうか。

 公衆の定義については争いがありますが、行為者から見て行為の相手方が「不特定人」である場合にはそれが一人であっても「公衆」にあたるという見解をとったとしても、特定の友人に複製物をプレゼントしたということであれば、「その著作物……をその原作品又は複製物……の譲渡により公衆に提供」したとはいえないので、譲渡権侵害は成立しません。

 友人にプレゼントをする目的でiPod nanoに(CD等からリッピングした)楽曲データを転送することが「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること……を目的とする」「その使用する者」による複製にあたるかということは、実は難しい問題です。複製物の作成者自身がその複製物からその著作物を知覚する場合のみ「その使用するものが複製する」といえるという解釈をとると、「少人数の勉強会で発表者が関連する文献をコピーして参加者に交付する」ということも第30条第1項で正当化されなくなってしまいますが、それは「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること……を目的とする」場合もカバーすることとした同項の趣旨をないがしろにするものであるように思われるからです。複製物を譲渡することも著作物の「使用」に含めてしまえば、それが「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において」なされる限度においては、そのことを目的としてiPod nanoにデータを転送することは第30条第1項によりカバーされることになり得ます。

 さらにこれが著作権侵害に当たるとしても、賠償額が「巨額」といえるかは大いに疑問です。

 Rocket News24は、

このプレゼントを合法的なプレゼントにする方法もあるが、それには事前にJASRACに対して800曲分の著作権料を支払う必要があり……。番組のギャラ以上の巨額が必要となることもありえる!?

などと煽っていますが、オーディオ録音の場合のJASRACに支払うべき使用料は、定価の明示のない場合、1曲8円10銭ですから、800×8.1=6480円程度にしかなりません。「番組のギャラ」ってそんなに安くはないと思います。まあ、隣接権者に支払うべき賠償金も計算に入れよと善解すべきなのかもしれませんが、邦楽CDだって概ね1曲200円前後(アルバムごとに差があるにせよ)で、掛率約7割とすると、JASRACと隣接権者が分け合う基礎って1曲あたり140円前後です。800曲分でも140×800=112000円程度です。その番組を見ていないのですが、明石家さんまの友人として同人に番組上でプレゼントを渡す程度の芸能人であれば、「番組のギャラ」ってそんなに安くはないと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 09:33 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

12/31/2009

2010年以降のISPの運命は如何。

 明日から違法にアップロードされた音声、動画ファイルの私的使用目的のダウンロードを著作権侵害とする改正著作権法が施行されます。

 当面の関心は、JASRAC等が「あいつは、違法にアップロードされた音声、動画ファイルをダウンロードした可能性がある」として申し立てた証拠保全を裁判所が認容するのかということと、違法にアップロードされた音声、動画ファイルの私的使用目的のダウンロードにそのサービスが利用された事業者がどのような責任を負わされるのかということです。

 後者についてより詳しく述べると、例えば、ゲームラボの1月号のコラムでも触れたのですが、ZDNet.co.ukがこの11月27日に報じたところによれば、無料公衆WIFIサービスを提供していたパブのオーナーが、そのWIFIサービスの利用者による違法ダウンロードに関して8000ポンド(約115万円)の賠償金の支払いを命じられていたわけで、日本でも同じようなことが起こるかもしれないということです。理論的にいえば、「特定電気通信」を「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信……の送信」と定義するプロバイダ責任制限法において、「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたとき」に、「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」を、「これによって生じた損害」の賠償義務から解放する第3条第1項が、権利侵害情報の受信の用に供される電気通信設備の提供者を、権利侵害情報の受信によって生じた損害の賠償義務から解放してくれるかは、文言上は必ずしも明らかではないということです。

 何でプロバイダ責任制限法を改正して、受信行為自体が権利侵害を構成する場合にもその受信行為に用いられる電気通信設備の提供者を賠償義務から解放してあげるようにしておけば良かったのにと思わなくはありません。

Posted by 小倉秀夫 at 07:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

12/21/2009

スリーストライク法導入を検討するよりアップローダー対策した方が効率的では?

 ITmediaの記事によれば、JASRACの菅原瑞夫常務理事は「スリーストライク法の導入が可能か国内でも可能かどうか検討したい」と語ったとのことです。

 検討するのは自由ですが、どういう法律構成を考えているのでしょうか。

 考えられるのは、立法により創設される一種の幇助行為についての差止請求権という構成です。ただ、著作権法第112条第2項が、廃棄請求の対象となる「侵害の行為に供された機械若しくは器具」を「専ら」侵害の行為に供されたものに限定している趣旨を考えると、2回の警告を受けてもなお違法にアップロードされた音楽・映像データのダウンロードを繰り返した利用者(三振ユーザー)に対するインターネットサービスの利用を一律に規制することは、私法上の権利の救済という枠を超えるような気がします。

 さらに、この「スリーストライク法」の実効性を確保するためには、ISPには1回目の警告と2回目の警告に関する情報の保存義務を負わせることが必要となります。保存義務の内容としては、警告先の氏名・住所をISPで記録保存しておくというだけでは足りず、当時のアクセスログを保存しておくことが必要となります。なぜなら、三振ユーザーと疑われている利用者が過去の2回の警告の正当性について争ってくる可能性があるからです。

 さらにいうと、著作権者側は、違法にアップロードされている音声・映像データをダウンロードしていることが新たに発覚したユーザーのうち、誰が過去に2回警告を受けていたのかを知り得ないのが通常ですので、「スリーストライク法」に基づく三振ユーザーへのインターネット接続サービス提供の停止を求める訴訟を提起し又は仮処分の申立を行う前に、上記ダウンロードが発覚したユーザーについて過去の警告歴を照会する方法を確立する必要があります(闇雲に訴訟を提起して、接続サービス中止命令の客体たる利用者は過去2回の警告を受けていないという理由で否認されたら請求を取り下げる、ということを繰り返すわけにもいかないでしょう。)。ISPが弁護士会照会でその情報の開示に応じてくれればよいですが、そうでない場合には、訴え提起前の証拠保全として当該ISPの担当者の証人尋問でもするのでしょうか。それも大変な話です。

 P2Pファイル共有ソフトのユーザーをターゲットにしたいのであれば、ダウンローダーとしての側面に着目するのではなく、アップローダーとしての側面に着目した方が、プロバイダ責任制限法上の発信者情報請求権も行使できるし、法的処理がよほど楽だと思うのですが、権利者団体はなぜダウンローダーをターゲットとする茨の道を選ぼうとするのでしょうか。

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12/15/2009

著作権法判例百選[第4版]

 有斐閣から、著作権法判例百選[第4版]を送っていただきました。というのも、私も執筆者の一人だからです。

 私は、東京地判平成10年11月20日[ベジャール事件]の解説を担当させていただいています。第3版では田村善之先生が担当されていた裁判例なので、田村先生とは異なる視点で解説させていただくことにしました。

 なお、「事案の概要」部分においては、原告と被告以外の関係者をそのイニシャルで標記しています。ゲラ稿段階までは、ロシア人である某について「Я」というイニシャルを使っていたのですが、それはなじみがなさすぎるということで「J」を用いることになってしまいました。「Я」の方が人目を引くかと思ったのですが、そこは有斐閣です。ゲームラボほど自由にはいきません。

Posted by 小倉秀夫 at 03:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/13/2009

パブリシティ権って?(続)

 「パブリシティ権」を人格権の一種とする見解もあります。

 東京高判平成14年9月12日判タ1114号187頁[ダービースタリオン事件事件]がその典型です。

自然人は、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有すると解すべきであるから(商標法四条一項八号参照)、著名人も、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有するということができる。もっとも、著名人の氏名、肖像を商品の宣伝・広告に使用したり、商品そのものに付したりすることに、当該商品の宣伝・販売促進上の効果があることは、一般によく知られているところである。このような著名人の氏名、肖像は、当該著名人を象徴する個人識別情報として、それ自体が顧客吸引力を備えるものであり、一個の独立した経済的利益ないし価値を有するものである点において、一般人と異なるものである。自然人は、一般人であっても、上記のとおり、もともと、その人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に利用されない権利を有しているというべきなのであるから、一般人と異なり、その氏名、肖像から顧客吸引力が生じる著名人が、この氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利を有するのは、ある意味では、当然である。著名人のこの権利をとらえて、パブリシティ権」と呼ぶことは可能であるものの、この権利は、もともと人格権に根ざすものというべきである。

 著名人も一般人も、上記のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者に使用されない権利を有する点において差異はないものの、著名人の場合は、社会的に著名な存在であるがゆえに、第三者がその氏名・肖像等を使用することができる正当な理由の内容及び範囲が一般人と異なってくるのは、当然である。すなわち、著名人の場合は、正当な報道目的等のために、その氏名、肖像を利用されることが通常人より広い範囲で許容されることになるのは、この一例である。しかし、著名人であっても、上述のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者により使用されない権利を有するのであり、第三者が、単に経済的利益等を得るために、顧客吸引力を有する著名人の氏名・肖像を無断で使用する行為については、これを正当理由に含める必要はないことが明らかであるから、このような行為は、前述のような、著名人が排他的に支配している、その氏名権・肖像権あるいはそこから生じる経済的利益ないし価値をいたずらに損なう行為として、この行為の中止を求めたり、あるいは、この行為によって被った損害について賠償を求めたりすることができるものと解すべきである。

 ただ、従前の議論からすれば、立法によらずして私法上の権利として認められる人格権は、個人尊厳の原理と密接に結びつき人格的生存に不可欠と考えられる利益であることを要するわけですから、人格権としての氏名権・肖像権って、「正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利」というほど広範囲なものとしては認められてこなかったわけです(だから、桜井さんはディカプリオの名前を歌詞の中に盛り込むことができたし、野球中継で客席を映すことができるわけです。)。上記高裁は、商標法4条1項8号を参照しているのですが、同号は、他人の氏名をその同意なくして商標登録してもこれを無効とするという規定であって、他人の氏名をその同意なくして商標として使用することを禁止する規定ではありません。

 また、人格権としての氏名権・肖像権という枠組みを維持する限り、その使用が許されるか否かを判断する基準として、顧客吸引力を侵害するか否かを持ち出すというのはおかしいと思うのです。なぜなら、その氏名・肖像の持つ顧客吸引力自体は、「個人尊厳の原理と密接に結びつき人格的生存に不可欠と考えられる利益」ではないからです。むしろ、その肖像等の使用が個人の尊厳を冒すものであるのか否か、こそが判断基準となるべきです。

 さらにいえば、人格権としての氏名権・肖像権の一種としてパブリシティ権を構成するのであれば、その侵害にかかる損害は精神的な損害にのみ限定されるべきであって、その氏名・肖像が商用利用される場合の許諾料相当金をもって損害額と構成するのは、「人格権としての氏名権・肖像権」という判断枠組みとは矛盾しているように思われるのです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:11 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/12/2009

パブリシティ権って?

 「パブリシティ権」って、いったい何なのでしょうか。

 東京高判平成3年9月26日判タ772号246頁[おニャン子クラブ事件]は、次のように判示しています。

固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがあることは、公知のところである。そして、芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価格として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。したがって、右権利に基づきその侵害行為に対しては差止め及び侵害の防止を実効あらしめるために侵害物件の廃棄を求めることができるものと解するのが相当てある。

 「固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがある」という点は認められると思うのです。しかし、そこから、「芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力」が「当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のこと」と言ってしまうのは、明らかに論理の飛躍だと思うのです。

 というのも、自由主義経済を原則とする我が国においては、商品の販売促進に効果のある情報を自社の商品に付することは原則なのであって、そのような情報は本来公有(パブリック・ドメイン)となるべきだからです(実際、競走馬の氏名等が持つ顧客吸引力は二つの最高裁判決によってパブリックドメインとして扱われています。)。それを、芸能人の氏名・肖像の持つ顧客吸引力に限って、立法によらずして、裁判所が恣意的に「当該芸能人に固有のものとして帰属する」と認定するのは、許されるべきではないように思われるのです。

 では、パブリシティ権を保護する新規立法をすればいいのかというと、そんなに簡単な話なのだろうかと思ったりもします。というのも、パブリシティ権のような財産権を新設するということは、権利者以外の人の営業活動の自由や表現の自由を制限することになりますので、それ相応の社会経済的な合理的な理由が必要となります。例えば、特許法であれば、発明を奨励するとともにこれを公開させて産業を発展させるために公開後一定期間その利用を独占させるという合理的な理由があります。

 しかし、パブリシティ権を芸能人に独占させると何かが奨励されるようになるのか、というとそこが疑問なのです。筆箱やクリアファイルに自分の氏名・肖像を掲載させて対価を得るというのは芸能人の本来的な投下資本回収手段ではないわけで、そのような非本質的な投下回収手段についてある程度自由競争に晒されたところで、芸能人になろう、自分の芸能に磨きをかけようというインセンティブが損なわれるということは通常ないように思われるからです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/29/2009

「NHKオンデマンド」の利用は思ったより増えず

  

NHKのテレビ番組をインターネットで有料配信する「NHKオンデマンド」が始まって12月で1年。予想したほどには利用は増えず、今年度の料金収入は当初見込んだ23億円の半分にも届かない見通しだ。

とのことです。

 エンドユーザー向けのサービスでMacを対象から除外するのだから,普及しないのは当然のことです。

 さらにいえば,デジタルデータをiPhone等の携帯型再生機に組み入れて視聴することを認めないのだから,普及しないのは当然のことです(NHK教育の番組など,むしろiTunes Store等で配信するのに向いています。)。

 NHKがこの種のサービスの開拓に民放よりも積極的なのは評価しますが,ユーザー目線に立ってサービスを組み立ててみると良いのではないかと思ったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 06:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

11/28/2009

由是著作者怠倦?

 少し日本史の復習をしてみましょう。

 朝廷は,西暦723年に三世一身法を制定し,灌漑施設を新設して墾田を行った場合には三世までの私有を許し,季節の灌漑施設を利用して墾田を行った場合は開墾者本人のみの土地私有を認めることとしました。ところが,朝廷は,西暦743年には墾田永世私有法を制定し,墾田の永世私有を認めることとしました。その理由は,

墾田拠養老七年格。限満之後、依例収穫。由是農夫怠倦、開地復荒。自今以後、任為私財無論三世一身。悉咸永年莫取。

というものでした。三世一身法の制定から20年では墾田の返納期限には未だ到達していないと思われますので,「限満之後、依例収穫。由是農夫怠倦、開地復荒」という実態があったのかは多分に疑問ですが,大和朝廷ですら,現状では「由是農夫怠倦、開地復荒」ことを,独占期間の延長をするための立法事実として提示していたわけです。

 他方,オリコンは,「『著作権保護期間の延長』はなぜ必要か」という文章を発表しています。しかし,「限満之後、依例収穫。由是農夫怠倦、開地復荒」に相当するような立法事実は提示されていません。著作権の保護期間が著作者の死後50年しかないが故に,アーティストがやる気を失って怠けているだとか,出版社が作品の継続的な出版を怠っているだとかという立法事実はいまだ提示されていないのです。

 オリコンは,

クリエーターの権利が保護され、それを基盤として創作活動が活性化されることが、ひいては国民の生活を豊かにする知的財産を生み出していくという考え方が是とされたわけだ。

と述べてはいるのですが,ベルヌ条約で定められた通りに「著作者の死後50年」の保護期間では創作活動が活性化されず,そのために現在国民の生活を豊かにする知的財産が生み出されていないという実情が存在することは何ら示されていないのです。そして,より開発にコストがかかる傾向が高い「発明」という知的財産についていえば,より短い保護期間しか保障されていなくとも次々と新たな創作がなされているのに,開発コストがより小さい「著作物」という知的財産については「著作者の死後50年」程度の保護期間では創作活動が活性化されない(しかし,著作者の死後70年著作権を保護すれば創作活動が活性化される)ということについて説得的な説明は未だなされていないのです。

 墾田永世私有法が認められると,貴族や寺院等の大土地所有者は不輸不入の権を認めさせるにいたり,朝廷を弱体化させることになりました。著作権についても,保護期間が延長,延長され,事実上永久に保護されることになると,例えば音楽についていえば,膨大な数のメロディラインについて独占的な権利を握っている大企業の傘下に入らなければ人の耳に心地の良い作品を発表することができないという事態に至り,むしろ,国民生活は貧しくなるかもしれません。あるいは,貴族たちが不輸不入の権を認めさせその荘園に「公」が介入することを拒んだように,次は著作権の制限規定の廃止を狙いに来るかもしれません。歴史の教訓としていえば,3世程度の独占期間では足りないという人々には,「公」を尊重するという意識はなく,欲望だけはとどまるところを知らないのですから。

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11/20/2009

闇米

 石坂会長はまた、道義的・倫理的な側面でも啓発の必要性を訴えた。「CDという固形物を万引きすることは、おそらく多くの若者にとって悪いことだという認識が徹底しているのに対して、音楽ダウンロードは無形のものであるため、いともたやすく法律に違反したり、道義に反する行為に出る。CDは盗まないが、デジタル音楽はタダでもらっちゃう」と指摘。「これほど国民性が乱れるのを容認するのは、大げさに言えば歴史上初めて」と憂慮した。

とのことです

 でも,道義的・倫理的な側面からいうと,不労所得を得んがために情報の流通をブロックする行為と,ひとたびブロックされたが誰かがブロックを壊して再び流通させた情報を入手する行為とを比べたときに,後者の方が道義的・倫理的に悖るとは必ずしも言えないのではないかと思ったりはします。著作権侵害罪って,今はやりのインセンティブ論から言えば,法定犯であって,自然犯ではないですし。

 歴史的に言えば,特定の流通経路以外から商品等を入手することが法律上禁止されていたが多くの人がそれを守っておらず,守らないことが道義的・倫理的に問題があるとさほど考えられていなかった例としては,例えば,戦後の「闇米」などがあります。

Posted by 小倉秀夫 at 02:36 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/19/2009

民主党への手紙

 民主党はそのウェブサイトで国民からの意見を募集しているようなので,次のような意見をお送りいたしました。



報道によれば,鳩山 由紀夫首相は18日に開かれた「JASRAC創立70周年記念祝賀会」において、著作権の保護期間を現在の「著作者の死後50年」から、欧米などと同等の「著作者の死後70年」に延長するために最大限努力するとの考えを示したとのことです。これが本当だとすれば,心底失望いたしました。

高速道路の無償化が骨抜きになったとしても民主党を責める気はありませんでした。自民党が最後に焦土作戦をとった後です。予算措置を必要とする政策が思うに任せないのはやむを得ないことです。

米軍基地の沖縄県外移転が果たせなかったとしても民主党を責める気がありませんでした。外交問題は相手があることです。相手国の同意を得なければ進まない政策が思うに任せないのはやむを得ないことです。

しかし,著作権の保護期間問題は違います。これを延長しないことについて予算措置も不要ですし,第三国の同意も不要です。50年以上前に発掘された文章について,メロディについて,絵画について,その発掘者又はその承継人の既得権をさらに保護することで,政治献金等の形でおこぼれに預かろうという意思以外に,著作権の保護期間の延長を志向する要因はありません。そして,その結果,歴史の陰に埋もれてしまった多くの作品がボランティアの手により再び日の目を見ることが阻害され,著作権により囲われてしまった「表現」を若い芸術家たちが新たな表現のために再利用する道が閉ざされます。

民主党が,我が国の文芸的な歴史を知り,享受し,発展させようという市民の希望を踏みにじって,一部の既得権者に尻尾を振って著作権の保護期間を延長しようというのであれば,そのような政党はその他の分野でも必要以上に市民の希望を踏みにじって一部の既得権者に尻尾を振るのだろうと予測できます。そのような政党は我々には不要です。

「過ちを改むるに憚ることなかれ」といいます。民主党が市民から失望されないためにも,民主党としては著作権の保護期間を延長することは考えていないということを,党として表明していただければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

11/07/2009

著作権関連六法

 iPhone用の模範六法にも著作権法は収録されているのでしょうが,たぶん,著作権法施行令や施行規則,旧著作権法,ベルヌ条約やWIPO著作権条約等は収録されていないのでしょう。でも,これらって,まともに著作権法を学習しようと思うと避けて通れないのです。

 さらにいえば,著作権法って,頻繁に改正されている法律なので,改正履歴がすぱっと調べられると嬉しいです。

 ということで,iPhone用の著作権関連六法ってつくってみたいと思うのですが(iPhone用に設定されたWebを作るっていうのでもいいようにも見えますが,会議とかってSoftBankが届かないところで行われることも少なくないのです。),一人でそれをこなすのは大変です。プログラミングが得意な人を含めてプロジェクトチームが作れると嬉しいなあと思う今日この頃です。

Posted by 小倉秀夫 at 07:43 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/05/2009

私的録音録画補償金訴訟のリスク

 私的録音録画補償金に関してSARVHが東芝に訴訟を起こしたとして,訴訟自体の勝ち負けはおそらくどちらにとってもたいしたリスクではないのだと思います。

 しかし,SARVHにとっては,理由中の判断又は傍論として,補償金相当額を出荷価格に上乗せした上で補償金をSARVHに支払うという方法以外の協力義務の履行方法が認められた場合には,SARVHにとっては,大きな打撃となります。ことは,地デジ専用DVDレコーダーにとどまらなくなるからです。

 AV機器メーカーとしては,製品の入った段ボールにホチキス等で留められた,保証書等が梱包されているビニール袋の中に,SARVH作成の請求書を入れておけば,これまでSARVHに納めてきた補償金を納めなくとも済むということになれば,それはそれで幸せなことです。ユーザーとしては,私的録音録画補償金を支払わなくとも,その機器によって行われる私的使用目的の録音録画が違法となるわけではないので,仮にSAVRAから訴訟を提起されて敗訴しても,最大で1台あたり1000円を支払えば済むことです。

 そうなったら法改正によって製造業者等を支払義務者にすれば足りると考えているのかもしれませんが,利用者による私的録音録画により著作権者等が被った損失の一部補填をAV機器の製造業者に義務づける合理的な理由がありません。にもかかわらず,AV製造業者に対する一種の徴税権を指定管理団体に与えることは憲法上大変な疑義が生ずることになります。しかも,自民党は下野してしまいました。そう簡単にはいかないと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:30 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1)

11/03/2009

先輩を思いやる気持ち

 私的録音録画補償金制度を巡る混乱は,文化庁の役人の天下り先を思いやる気持ちにその発端があるというべきでしょう。

 平成20年6月付けで文部科学省と経済産業省との間で取り交わされた「ダビング10の早期実施に向けた環境整備について」と題する文書においては,

現在のブルーレイディスクレコーダーがアナログチューナーを搭載しておりアナログ放送のデジタル録画が可能であることも踏まえ、暫定的な措置として、ブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体を政令に追加する。

とあります。現在のブルーレイディスクレコーダーがアナログ入力ポートを備えていることを踏まえてブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体に追加したのではありません。

 このように,ブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体を特定機器に加える際には,著作権法施行令第1項第2項の「アナログデジタル変換が行われた影像を……連続して固定する機能」とはアナログチューナーを搭載することによりアナログ放送のデジタル録画を行う機能のことをいうとの理解に文部科学省も立っていたわけです。だからこそ,4号を付加する際に,なおも「アナログデジタル変換が行われた影像」という要件を付したわけです。

 従って,文化庁の課長が,その傘下の財団法人であり渡り先(田原昭之理事は元文化庁)でもある私的録画補償金管理協会からの照会を受けて,何らの根拠も示さずに,独断で,上記前提と異なる回答をするというのは,およそ役人としての分限を超えてしまっているわけです。結局,文化庁課長の軽はずみな発言が,実務に混乱をもたらしてしまったわけです。

 前にも述べましたとおり,製造業者は,指定管理団体が指定機器等の購入者に対して補償金の支払いを請求しこれを受領することに協力する義務を負っているに過ぎず,補償金を自らの名において購入者に請求し(支払いを拒む購入者から強制的に)徴収する権限を有していませんし,義務も負っていません(この点,条文を読まずに製造業者の義務の内容を誤解されている方が多いようです。)。である以上,「アナログチューナーを搭載することによりアナログ放送のデジタル録画を行う機能」を有しないデジタル放送専用機においても補償金を支払ってもらおうと思ったら,私的録画補償金管理協会が,デジタル放送専用機の購入者にそのことを納得してもらう必要があります。そのためには,デジタル放送専用機が指定機器に含まれることの説得的な理由付けを私的録画補償金管理協会自身が示す必要があります。しかし,私的録画補償金管理協会のウェブサイトを見てもいまだにその説明は掲載されていません。また,主婦連やMIAU等の消費者団体にもその説明はなされていないようです。支払い義務者である機器購入者の理解も得ずに無理矢補償金を徴収する義務を製造業者を負わせておいて,自分たちは涼しい顔でその補償金にしゃぶりつこうというのは,虫が良すぎる話のように思われてなりません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:20 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/02/2009

主役が怠けているのに,脇役が協力しないのが怪しからんといわれても。

 私的録音録画補償金請求権の行使方法について,著作権法の規定を整理してみましょう。

 まず,著作権法第30条第2項は,

私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

と定めています。ここでは,補償金の支払義務者は製造業者ではなく「録音又は録画を行う者」であるということに注目をしましょう。

 これを受けて,著作権法第104条の4第1項は次のように定めます。

第三十条第二項の政令で定める機器(以下この章において「特定機器」という。)又は記録媒体(以下この章において「特定記録媒体」という。)を購入する者(当該特定機器又は特定記録媒体が小売に供された後最初に購入するものに限る。)は、その購入に当たり、指定管理団体から、当該特定機器又は特定記録媒体を用いて行う私的録音又は私的録画に係る私的録音録画補償金の一括の支払として、第百四条の六第一項の規定により当該特定機器又は特定記録媒体について定められた額の私的録音録画補償金の支払の請求があつた場合には、当該私的録音録画補償金を支払わなければならない。

 ここでは,特定機器又は特定記録媒体の購入者に対し指定管理団体から補償金の支払い請求があった場合に初めて,購入者は録音録画補償金を一括払いする義務を負うということに注目をしましょう。

 さらに,著作権法104条の5に注目してみましょう。

前条第一項の規定により指定管理団体が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者(次条第三項において「製造業者等」という。)は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない。

 このように,法律の文言上は,特定機器の製造業者が負っているのは,「当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力」する義務であって,その出荷した特定機器に応じた補償金相当額を支払う義務を指定管理団体に対し直接負っているわけではありません。といいますか,製造業者は,特定機器の購入者に対し自己の名で補償金の支払いを請求する権利自体がありません(あくまで「協力」義務を負っているに過ぎませんから)ので,本来であれば,指定管理団体から渡された私的録音録画補償金の請求書を特定機器を混入した段ボール箱の表面に貼って「支払いの請求」に協力したり,また,直営店や提携小売店で特定機器を購入する消費者から任意に補償金相当金を預かって一括して指定管理団体に送金するということで補償金の受領に協力したりしても良いはずです。むしろ,当該製品が特定機器にあたること,それ故製品価格とは別に私的録音録画補償金の支払いを指定管理団体が要求していることを消費者が特定機器を購入するに際して具体的に示すことなく,補償金相当額を製品価格に上乗せすることによって,補償金を支払わされているのだと言うことを消費者に意識させることなく補償金を支払わせるという現在の運用の方がまずいといわざるを得ません。

 以上を前提とするとき,その製品が特定機器に当たりその購入者には私的録音録画補償金が生ずるということについての購入者を納得させるような合理的な説明がなされていない段階で,補償金相当額を出荷価格に上乗せすることなくこれを出荷した製造業者に対し,上記協力義務の不履行に基づく損害賠償請求権として,補償金相当額の賠償を指定管理事業者が製造業者に請求しうるのか疑問の余地無しとはしません。なんといっても,製造業者は,特定機器の購入者から強制的に私的録音録画補償金を徴収する権限が与えられおらず,かつ,補償金の支払いを拒む者に特定機器の販売を回避する義務を負っていないのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:21 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (0)

10/30/2009

アナログデジタル変換を行うのはどこで?

 著作権法施行令第1条第2項の「アナログデジタル変換が行われた影像」について,録画機器において「アナログデジタル変換」が行われた影像に限定されていないではないかとの見解もあるようです。

 ただ,岸本織江「著作権法施行令の一部改正について」コピライト1997年7月号37頁によれば,

「特定機器・特定記録媒体の政令指定にあたっては,機器等の有する機能に着目し,①記録方法,②標本化周波数(アナログ信号をデジタル信号に変換する1秒あたりの回数),③記録媒体,の3つを規定することにより,対象機器等を特定してきている。

とされています(実際,例えば同条第1号では,「その輝度については十三・五メガヘルツの標本化周波数で、その色相及び彩度については三・三七五メガヘルツの標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像」と細かい指定をしています。)。従って,当該機器の外で(端的に言えば放送事業者の側で)アナログデジタル変換した影像をここでいう「アナログデジタル変換が行われた影像」に含めて上記規定を読むのは,標本化周波数で対象機器等を特定するという立法趣旨をないがしろにすることになります。よって,録画機器自体において「アナログデジタル変換」を行う機能を有しない録画機器は「特定機器」に含めないと解釈するのが素直な解釈だということになります。

Posted by 小倉秀夫 at 09:09 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (0)

10/28/2009

島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門」

島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門」(有斐閣)の献本を上野先生よりいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

 著作権法の分野ではこの種の入門書が久しく出版されていなかった(Q&A集や本格的な基本書は結構あるのですが)ので、来年入ゼミ予定の現2年生に読ませるには良さそうです。

 一通り読み終えたら、また感想を述べるかも知れません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:17 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/26/2009

政令の内容を課長の回答で変更すること

 エイベックス取締役の岸博幸さんが次のように述べています。

 また、東芝が補償金を徴収していない今回の機器は、以前から補償金制度の対象となっているDVD録画機であり、政令上は「アナログチューナー非搭載機を除く」といった留保条件が付いていない。家電メーカーやその背後にいる経産省の主張どおりに補償金が払われないとすれば、政令の中身が、政令よりも下位に位置する通達で変更されることになる。これほど法律の世界の秩序を無視した主張はないのではないだろうか。

 著作権課長は、アナログチューナー非搭載のDVD録画機器は、著作権法施行令第1条第2項第3号の特定機器に該当すると解してよいか。とのSARVHの照会に対し、・・・貴見のとおりで差し支えありません。と回答したとのことです。

 そこで、同施行令第1条第2項第3号を見ると、その文言は以下のとおりとなっています。

三  光学的方法により、特定の標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像又はいずれの標本化周波数によるものであるかを問わずアナログデジタル変換が行われた影像を、直径が百二十ミリメートルの光ディスク(レーザー光が照射される面から記録層までの距離が〇・六ミリメートルのものに限る。)であつて次のいずれか一に該当するものに連続して固定する機能を有する機器

イ 記録層の渦巻状の溝がうねつておらず、かつ、連続していないもの

ロ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続しているもの

ハ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続していないもの

 この規定を素直に読めば、「光学的方法により、……アナログデジタル変換が行われた影像を、……光ディスク……に連続して固定する機能を有する機器」となっていますから、「アナログデジタル変換」を行う機能を有しない「アナログチューナー非搭載機」は補償金制度の対象外となっているように見えます。つまり、同施行令第1条第2項第3号の「特定機器」が連続して固定するべき「影像」を「アナログデジタル変換が行われた影像」に限定することによって、「アナログチューナー非搭載機を除く」といった留保条件を付したものと解するのが常識的な法文の読み方ではないかと思われます。

 「政令の中身が、政令よりも下位に位置する『著作権課長による回答』で変更されることになる」ということの方が、法律の世界の秩序を無視したものであるように思われます。

 岸さんは、続けて、

 デジタルとネットは社会の便益向上のために不可欠であり、その普及を止めるべきではない。ただ、その普及は違法コピーや違法ダウンロードの激増、コンテンツ供給量の増大などをもたらし、ユーザーは多くのコンテンツをタダで容易に入手できるようになった。ユーザーにとってのコンテンツの価値は限りなくゼロに近づいてしまったのである。

 一方で、コンテンツは文化という社会の重要な価値観、インフラの一部であり、社会にとっての価値は不変である。その結果、コンテンツのユーザーにとっての価値と社会的な価値の間に大きな乖離が生じてしまった。それが社会的なコストに他ならない。

と述べた上で、

補償金はこの社会的コストを埋める役割をある程度果たしていたと評価できる

と結論づけるのですが、「アナログチューナー非搭載機のDVDレコーダー」って、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」とは何の関係もないように思われてなりません。その本来の放送時間にゆっくりテレビ番組を視聴していられない人が、その番組をあとでYouTubeで見るのではなく、「アナログチューナー非搭載機のDVDレコーダー」を用いて自分で録画した上でこれを見ようという人に、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」によって生じた「社会的コスト」を負担させようとすれば、反発を招くのは必至です。

 「違法コピーや違法ダウンロードの激増」により生じた「社会的コスト」を誰かに負担させたいのであれば、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」により利益を得ている事業者に負担させる方がまだ筋が通ります。具体的には、無許諾に投稿されたコンテンツについてそのダウンロード回数に応じて一定の「補償金」の支払義務をYouTube等の動画投稿サイトの運営者に課す等の方法が考えられます(「補償金」を支払えば削除義務を免れるというのであれば、YouTube等の動画投稿サイトの運営者はむしろ歓迎することでしょう。彼らはただで他人のコンテンツを利用したいのではないですから。)。

Posted by 小倉秀夫 at 05:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/19/2009

マジコン問題は違法複製問題ではない

 mohnoさんが次のようなはてなブックマークコメントをしています。

匿名さんが責任を取らないから、西村氏の責任を追及したわけだよね? マジコンの違法複製問題も、違法複製当事者が責任を取ってくれれば、製造元の責任は問われないと思うよ。

 まあ、根拠のない話です。

 任天堂を中心とするギルドがマジコン訴訟でつぶそうとしたのは、彼らが製作したソフトウェアの違法複製物の流通ではなく、無償又は安価で提供される自主製作ソフトの流通です。違法複製物の流通を阻止するのであればもう少しマシな技術的手段が使えたと思いますが、実際には、任天堂に高額の上納金を支払うことを約束した企業が製作したソフトウェアしかDS上で稼働しないような技術的手段を敢えて講じたのです。

 例のマジコン訴訟の時は、任天堂らに対し、これまで違法複製物のアップローダーに対しどのような措置を講じてきたのかについての釈明を求めるとともに、アップロードサイトのドメイン保有者≒開設者の住所・氏名がwhoisデータベースにより入手できることを示し、違法複製物の流通を問題とするのであればマジコン自体を規制する必要はないことを示してきましたが、任天堂側はそのようなことには一切関心を持たず、一切の釈明に応じないという路線を貫いたのです。

 考えてみれば当然の話で、中国語で書かれた違法複製物のアップロードサイトをつぶしたところで、国内向けに流通させているソフトウェアの売上げに大した影響を与えそうにないのに対し、自主製作ソフトが広く製作され、流通されるようになった場合に、面白いソフト、役に立つソフトが、無償又は極めて安価に流通することとなることにより、商用ソフトが値崩れすることの方が、任天堂側に与えるダメージは大きいわけです(自主製作ソフトからは上納金が取れませんし。)

Posted by 小倉秀夫 at 02:15 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

10/14/2009

Copyright and You

 コピライト2009年10月号が翻訳しながら引用するWIPR誌8月号によれば、カナダ政府は、2009年7月20日から9月13日までの間、著作権法改正への意見として、下記の事項につき、広く意見を求めたのだそうです(コピライトの訳文はこなれすぎているので、原文から翻訳し直してみました。)。


  1.  How do Canada’s copyright laws affect you? How should existing laws be modernized?(著作権法は、あなたにどのような影響を与えていますか。現行法はどのように近代化されるべきでしょうか。)

  2.  Based on Canadian values and interests, how should copyright changes be made in order to withstand the test of time?(カナダの価値および利害に基づいたとき、時の試練に耐える著作権の改革はいかにあるべきでしょうか。)

  3.  What sorts of copyright changes do you believe would best foster competition and investment in Canada?(どのような種類の著作権改革がカナダにおける競争と投資をもっとも促進するとあなたは考えますか。)

  4.  What sorts of copyright changes do you believe would best foster innovation and creativity in Canada?(どのような種類の著作権改革がカナダにおける技術革新と創造性をもっとも促進するとあなたは考えますか。)

  5.  What kinds of changes would best position Canada as a leader in the global, digital economy?(どのような種類の改革が、もっともカナダを世界的なデジタル経済におけるリーダーに立たせるでしょうか)。


 その結果寄せられたコメントを、こちらから閲覧することができます。しかも、寄せられたコメントに対して更にコメントを投稿できるようになっています。

 そして、カナダ政府は、FAQの冒頭に

Why is the government consulting on copyright? Why now?

という質問を用意し、

The current copyright legislation was enacted in 2001. It is important that any new legislation that is tabled not only reflect the current technological reality, but is also forward-looking and can withstand the test of time. The government is taking this opportunity to listen to Canadians about what is important to them on copyright.

と自答しています。

 日本政府も、折角政権交代したのですから、著作権に関して何が重要なのかということの意見募集を、一般の日本国民対象にしてくれないかなあと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 05:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/13/2009

中央大学法学部著作権法ゼミの2010年用入ゼミ選抜レポート

 中央大学法学部で担当している著作権法ゼミの、今回の選抜用レポートの課題は、下記のとおりとしました。


下記のテーマのうち一つを選んで下さい。

【テーマ1】 音楽産業がどのような措置を講じたら、音楽コンテンツに関して1年間にあなた自身が支出する金額を増大させることになると思いますか。

【テーマ2】 「Web3.0」と呼ぶに値するのはどのようなコンセプトでしょうか。


 この10年くらいコンテンツ産業側のいろいろな試みは拝見しているのですが、その試みによってコンテンツへの支出を増やす主体として自分を除外する議論には正直辟易していたので、【テーマ1】を出題してみました。

Posted by 小倉秀夫 at 01:57 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/08/2009

Winny事件第2審判決について

 Winny幇助犯事件に関して大阪高裁は、被告人を無罪とする逆転判決を下したそうです。

 「雨にも負けず風にも負けず」に大阪まで傍聴に行った落合先生のメモによると、

winny自体は価値中立的な、有用なソフトであるところ、このようなソフトの提供者に幇助犯が成立するかどうかについては、新しい問題であり、慎重な検討が必要である。当審(大阪高裁)における証拠調べの結果も踏まえると、winnyによる著作権侵害コンテンツの流通状況は調査、統計結果により差異があり明確ではないなどの事情が認められる。

被告人の行為は、価値中立的なソフトを提供した価値中立的な行為であり、提供されたソフトをいかなる目的でいかに利用するかは個々の利用者の問題であって被告人には予想できなかった。罪刑法定主義の観点からも、このような行為につき幇助犯が成立するためには、原審(京都地裁)が示したような、違法行為に利用されることを認識、認容していたという程度では足りず、提供された不特定多数が違法な用途のみに、あるいは主要な用途として違法に利用することを勧めている場合にのみ、幇助犯が成立すると解するべきである。

被告人は、違法な利用があり得ることの蓋然性を認識、認容してはいたが、違法な利用をしないよう注意するなどしており、不特定多数が違法な用途のみに、あるいは主要な用途として違法に利用することを勧めて提供していたものではなく、幇助犯は成立しない。

したがって、被告人は無罪である。

とのことです。これを見る限り、幇助犯の成否の判断基準は、Grokster事件米国連邦最高裁判所判決に近いように思います(Grokster事件米国連邦最高裁判所判決では、ベータマックス事件米連邦最高裁判決以来の「実質的な非侵害用途があるか否か」という基準に、「違法な利用を誘引していたか否か」という基準を加えて判断しています。)。

 この判決が仮に上告されることなく確定したとして、問題は、この判決は、中立的な行為による幇助における「幇助の故意」を厳格に解釈したものなのか、中立的な行為による幇助における「因果の相当性」を厳格に解釈したものなのかということになろうかという気もします。単に幇助の故意が否定されただけですと、その公衆に提供した「中立的道具」により、過失犯も処罰される法益侵害行為がなされた場合には、過失による幇助として処罰されうるのではないか、あるいは、「被害者」から損害賠償請求がなされた場合にこれが認容されるのではないかという問題が生じうるからです(後者については、下級審の、しかも刑事部における「幇助」の要件についての判示に、地裁知財部ないし知財高裁が拘束されるわけないではないかという批判は大いにあり得るところですが。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:54 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/01/2009

The Beatlesのリマスターとレコード輸入権

 リマスター版の「Abbey Road」のメーカー希望小売価格が2600円、Amazon.comでの販売価格が$11.99(約1080円)。価格差約2.5倍。あまり物価水準に差がないと文科省の役人が数年前に言っていた、日米間で、同じCDの価格差が約2.5倍。

 Amazon.comで、「Abbey Road」を並行輸入しようとしたときに、レコード輸入権侵害として、後で損害賠償請求されるのではないか、あるいは税関に輸入差し止めを食らうのではないか、とても心配です。

 あとは、リマスター版についても、独自に「国内において最初に発行された日」というのが設定されるのか、元のレコードの「国内において最初に発行された日」が援用されるのかによってくるのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 10:24 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/26/2009

「こち亀」の終わり

 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」実写版は,案の定だめだったようです。葛飾区民としては残念な限りです。

 主役の両津勘吉を香取慎吾氏に配した時点でだめだめなことはわかっていたわけですが,残念です。亀有→香取神社→香取慎吾という安易な発想では,もうだめなのです。

 なぜ,香取慎吾ではだめなのか,といえば,一つには,容姿端麗でないことが前提となっているキャラクターに容姿端麗であることが前提のアイドルタレントをあてているということがあります。もちろん,ロケ現場を見学に行こうという地元民のお目当てが香取慎吾ではなく速水もこみちに移っているので,もはや香取慎吾は「二枚目キャラ」ではないではないかとの反論があるのかもしれません。また,香取慎吾は,スマスマや「慎吾ママ」などで「三枚目」を演じてきたではないかという反論があるかもしれません。でも,三枚目キャラが演じられるということと,醜男キャラが演じられるということとは,明らかに違うのです。

 また,香取慎吾がジャニーズ事務所に所属しているという点も,香取慎吾ではだめな理由の一つです。なぜだめなのかというと,ジャニーズ事務所の頑ななネット拒否戦略のため,ネットを宣伝媒体として十分に活用できないからです。

 例えば,TBSのウェブサイトを見ると,第1話放送直前スペシャル企画として,「出演者の皆様の"生の声"を動画で紹介」するコーナーを設けていますが,肝心の,主役である香取慎吾の「生の声」は紹介されていません。さすがに「人物相関図」で香取慎吾のみを似顔絵にする愚こそ避けていますが,関係者のインタビューコーナーに主役である香取慎吾の単独インタビューは掲載されていない,準主役の速水もこみち,香里奈を交えての三者対談でも主役である香取慎吾だけ画像が掲載されていない,云々と,まあひどいものです。ひどいといえば,ゲスト紹介コーナーで,ジャニーズ事務所所属のタレントのみ画像が掲載されていないというあたりも,ひどいものです。いまどき,主役とメーンゲストがここまで露骨にネットを蔑んでいたら,視聴者にそっぽを向かれても仕方がないというべきでしょう。

 これらの点は,ジャニーズ事務所所属の芸能人を使わないおかげでネットとのコラボレーションが自由に行えている「天地人」と比べれば明らかです。NHKは,公式サイトに掲載する最初のインタビュー記事として,主役を演じる妻夫木聡の単独インタビューを掲載し,そこに何枚もの主役の画像を掲載するという,いわば番組宣伝の王道をネット上でも展開できています。「天地人」公式サイトのQ&Aコーナーによれば,

連続テレビ小説、大河ドラマの番組ホームページの作成にあたっては、「番組宣伝の目的で開設し、番組終了後は速やかに閉鎖する」というお約束で、出演者・関係者の皆様から開設・公開についての了承をいただいております。
とのことです。逆に言うと,この程度の肖像の利用すら了承できないタレントを使うのは,もうやめた方がいいのではないかという気がします。

 まあ,すでに「大企業病」が蔓延している民放キー局においては,「ジャニーズタレントを主役級に抜擢しておけば,キャスティングミスで責任をとらされることがない」くらいの感覚なのかもしれませんが。

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09/21/2009

日本企業は今後常に米国の後塵を拝していれば良い?

 日経BPの記事によれば,日経連は,

この著作権法改正を受け、「現状、ビジネスの観点からは、権利制限に関する一般規定を置く具体的必要性は、基本的に無くなった」とし、「今後、何らかの具体的必要性が生じた場合には、その時点で検討すれば足る」との見解を示している。

とのことです。なるほど,大企業の経営者たちが集まる団体がこの体たらくでは,日本がこの20年間経済成長から取り残されるのも宜なるかなといったところです。

 日経連としては,起業家たるものは,著作物を公正に利用するビジネス手法を思いついたとしても,それが形式的に現行著作権法に抵触する場合には,文化庁の役人または政権与党にロビー活動を行いそのようなビジネスの具体的必要性を納得させてそのビジネスが明確に射程範囲に含まれる権利制限規定を創設させてから,そのビジネスを実行すれば足りるのだとお考えのようです。

 そこでは,素晴らしいアイディアと実装能力のある若者たちが著作物を公正に利用する新たなビジネス手法を思いついたとしても,文化庁の役人または政権与党にロビー活動を行う資金力と人脈がない限り,そのアイディアを実装したビジネスを行うことは許されないということになります。そして,おそらくは,文化庁の役人や政権与党にそのビジネスを適法化する個別の権利制限規定を創設する「具体的必要性」が生じたと納得していただくためには,米国等で既にそのビジネスが行われて世界的なシェアを獲得する企業が現れた後になるのではないかと思われます(実際,立法府が検索エンジンの具体的必要性を認めて,これを適法化する個別の権利制限規定を創設するのに,10年以上の月日がかかったのです。)。すなわち,日経連としては,著作物を公正に利用するビジネス手法に関していえば,日本企業は今後常に米国の後塵を拝していれば良いということを言っているのだということになります。

 あるいは,ベンチャー企業が素晴らしいアイディアを思いつき,ベンチャーキャピタルなどから資金を集めてそのアイディアを実装すべく準備している段階で,そのアイディアの実行を適法とする個別の権利制限規定を創設する必要性を立法府が汲み取って早急にそのような規定を創設してくれるというのであれば,「何らかの具体的必要性が生じた場合には,その時点で検討すれば足りる」かもしれません。が,いくら政権が変わったからといって,立法府がそんなに機動的に動けるとまで信頼するのって無理があると思えてなりません。

Posted by 小倉秀夫 at 02:40 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

09/19/2009

日本版フェアユースに関する議論の出発点

 日本版フェアユースに関するシンポジウムが盛んに行われているようです。ただ,tsudaられたものを見ている限り,議論の出発点が違うような気がします。


 そもそも,著作物の「公正な利用」までも禁止する権限を著作権者に付与することは,そもそも憲法上許されるのだろうか。
仮に許されるとして,著作権法の根本目的との関係で合理的なのか。


 議論の出発点はそこにあります。著作物の「公正な利用」までも禁止する権限を著作権者に付与することは憲法上許されない又は著作権法の根本目的との関係で合理的ではないということが承認されれば,次は,著作権者に禁止権を付与すべきでない「公正な利用」を全て適法とすべく権利制限規定を適切に立法する能力が立法府にあるのかということが議論の対象となります。すなわち,立法府にそのような能力があるということであれば抽象的・包括的な権利制限規定たる日本版フェアユースは不要だということになりますし,立法府にはそのような能力はないということになれば,日本版フェアユースは必要だということになります。

 そういう意味では,日本版フェアユースの要否というのは,制定法を違憲無効とする制度,とりわけ適用違憲とする制度の要否と似ています。常に適切に例外規定を設けて過剰規制を回避する能力が立法府にあるのであれば適用違憲などという「予測可能性が乏しい」制度は不要ですが,実際にはそうではないので,適用違憲という仕組みが認められています。現在のところ,予測可能性が乏しいから,あるいは,弁護士に多額を報酬を支払わないと権利主張を行うことができないから,という理由で適用違憲という仕組みを認めることは許されないと主張している法律専門家はほとんどいないようです。

 さらにいえば,その著作物の利用が「公正利用」にあたると裁判で主張するには時間と費用がかかるといってみたところで,その利用を適用対象とする権利制限規定を創設してもらうべくロビー活動を行うのに要する時間と費用と比べたら,よくよく安上がりです(おそらく,桁が一つから二つ違います。)。従って,「裁判闘争には時間と費用がかかる」ということは,日本版フェアユースを創設しない理由とはなりません。それは,「裁判闘争には時間と費用がかかる」ということが,裁判所による違憲立法審査を認めない理由とならないのと同様です。

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08/18/2009

ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会

 久保田裕さんがまた「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会」なる団体を立ち上げたようです。

 でも、こういう団体を立ち上げるのであれば、MIAU等の利用者団体にも声を掛けるべきだったのではないかなあと思います。特に、WinMXのディープユーザーへのインタビュー経験豊富な津田さんを中に入れないだなんて、もったいないなあと思います。更にいえば、私ならば、Winnyの金子さんにも声を掛けるけどなあと思います。この発表されているメンバーだけだと、ファイル共有ソフトの利用者の実像を過度に醜悪なものとする認識を共有してしまうがために、彼らの心理にあった有効な対策を打ち出せないような気がします。

 さらにいえば、このメンバーの中に法律屋さんが含まれていないことも問題でしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 05:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

新設著作権法第30条第1項第3号の解説

 新設著作権法第30条第1項第3号の解説を、SOFTIC LAW NEWSに寄稿しました。

Posted by 小倉秀夫 at 05:06 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

ダウンロード違法化の具体的な問題点

 高木浩光さんとMIAUとの関係が少々険悪になっているようで、心配です。

 MIAUについてはいろいろな批判があるのは分からないでもないし、私はMIAUが有害コンテンツ関係や児童ポルノ関係に手を出すのは戦略的に拙いなあと思いはしますが、自分が会員にすらなっていない団体がどの領域に主たる関心を示し、どの領域に関心を示さないかについてとやかく言ってみても始まらないので、その点は基本的に静観しています。

 Googleとプライバシー権の関係一つとっても、高木さんはストビューの問題に関心を持っているのに対して、私は、グーグル検索(ウェブ検索のみならず画像検索を含む)によるプライバシー情報の拡布の問題に関心を持っているというように、関心のあることがそれぞれ異なるのだから、その問題に強い関心を持っている人がその問題に関して動いていくしかないように思ったりしているからです。

 もちろん、MIAUは、入会資格をオープンにしているという程度しかインターネットユーザーを代表する資格の担保をしていないわけですが、インターネット利用者の匿名性が強く保証されている現状でそれ以上の代表資格の担保を求めると、結局、どこもインターネット利用者の代表者たる資格はないという話にしかならないような気がします。そして、それは結局、インターネット利用者の声など、審議会等で聞く必要はない(いや、聞いた方がよいと思うのだが、聞く手段がない)という話になっていきそうです。

 その上で、ダウンロード違法化との関係について若干言及すると、高木さんは、

Winny等はその仕組み上、ダウンロードすると同時にアップロードする(送信可能な状態におかれる)ようになっており、そのことをよく知らない大量のネット中級者が無差別にファイルを溜め込んで送信可能な状態においていることが、違法コンテンツ流通蔓延の原因になっている。ネット上級者であるMIAUの人達ならよく知っていることだろう。

アップロードを自覚しないWinny利用者らは摘発できない(故意が認められない)のだから、津田代表理事が言うように「アップロードの摘発をもっと効率的に行うべき」であるなら、Winny等の利用者に向けて、「あなたがやっていることはアップロードですよ」という注意喚起をしたらいいのに、MIAUはそういうことをやらないのだろうか。MIAUは、インターネットリテラシ読本作成のプロジェクトも活動の柱の一つとしているのだから、そうした啓発活動をするのも本来、自然なはずではないか。

仰るのですが、民事的に、不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求をする分には、Winny利用者に故意がなくったって大丈夫なのですから(過失なしとはいえないでしょう。)、権利者側に「摘発」する気があれば摘発できます。民事上の発信者情報開示請求手続が正常に機能しているのであれば、権利者が、その手続を利用して発信者を突き止めて損害賠償請求権を行使するというのが本筋だと思うのです。いきなり警察がやってきて一罰百戒とばかりに逮捕→起訴→失業→執行猶予という制裁を、アップローダーのごくごく一部に加えるよりはよほどましかなあと。

 そういう意味では、権利者側が「発信者情報開示請求→アップローダーに対する損害賠償請求」に踏み切らない理由が発信者情報開示請求制度の中にあるのであればそこを改善すれば良いではないかというのは、分かりやすい話ではないかと思うのです。そして、「Winny等はその仕組み上、ダウンロードすると同時にアップロードする(送信可能な状態におかれる)ようになって」いることすら理解していないライト感覚のInfringerは、IPアドレス偽装とかそういうことにも頭を使っていなさそうなので、権利者側からすれば簡単に「摘発」できるはずなのになあと思ったりします(真実性の抗弁が成立しないことの立証まで求められる名誉毀損事例と比べると、遥かに簡単だと思ったりします。)。

 で、アップローダー規制だと、アップローダーの共有フォルダに蔵置されているファイルに蔵置されている著作物等のみが被侵害著作物となるので、アップローダーの共有フォルダは通常公開されている以上、アップロードに用いられているコンピュータのハードディスク自体を検証する必要がないのに対し、ダウンローダー規制の場合、アップローダーではない純粋ダウンローダーに対して権利行使をする場合は、被侵害著作物の全容を明らかにするためにはダウンロードに用いられているコンピュータのハードディスク自体を検証しなければならず、その過程でダウンローダーのコンピュータ・プライバシーは全て権利者側に筒抜けとなるのです。そして、権利者の一極は、テレビ局という報道機関であり、そのような報道機関に自分のプライバシー情報が丸裸にされるわけです(しかも、それらの情報の目的外使用を禁止する条項はありません。)。

 だから、ダウンローダー規制の旗を振ってきた松田政行弁護士だって、ダウンローダー規制を新規立法しても大した弊害がないということを説明するためには、そのような法規制ができても権利者は権利行使しないから大丈夫だという話をするしかなかったわけです。で、新規立法によって可能となった権利が権利者によって行使された場合に、メディア企業によるプライバシー侵害等の弊害を何ら抑止できない、そういう立法について「具体的な問題がない」といってしまうのは、私は抵抗を感じます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:33 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/06/2009

対案や妥協策の提示がなかった理由

 高木浩光さんがMIAUの中川さんをはてブコメントで非難する過程で,

これはMIAUの活動の話かな?ダウンロード違法化反対運動と児童ポルノ単純所持処罰化反対運動はまさに「考えられる危険性をリスト」しまくったあげく対案や妥協策の提示がなかった。そもそも何のための反対なのか。

と述べています。

 JASRACやテレビ局に個々人の使用しているパソコンのハードディスクの内容を検証する権限を付与する「究極のプライバシー侵害」法である「ダウンロード違法化」について,どんな対案や妥協策を提示すべきだったというのか,はなはだ疑問です。改正法案を作る前から,改正法が成立しても,改正法により行使可能となった権利を行使しないと,ロビー活動を行った側の弁護士が表明(あくまで弁護士しか表明していないことに注意。レコード輸入権のときは業界団体の長が不行使宣言をしたことと対比すべき。)せざるを得ないほど,この改正法により可能となるプライバシー侵害の度合いは大きいのです。それに,「考えられる危険性をリスト」しまくったといわれても,権利者側に証拠がない場合に証拠保全等による公的な証拠収集手続がとられる可能性があると考えるのは,法律実務家からすると当たり前の感覚であって,「証明が大変だから,権利行使は実際にはなされないので,安心せよ」みたいな言い方に疑問を提示するのは「考えられる危険性をリスト」しまくったといわれるほどのことなのか,大いに疑問です。

 もちろん,実際の条文案が公開されてからは,想像以上にずさんな条文を改善する方向で提案をすることは可能だったかもしれないですが,ただ,レコード輸入権のときとは異なり,改正法の目的自体が私たちのコンピュータ・プライバシーとは相容れないので,いくら条文案を手直ししても,さしたる意味はありません(解釈上不明確な点を明確化できる程度のお話です。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:30 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/01/2009

違法コピー現象の立役者

 NBLの2009年7月15日号では,ACCSの久保田裕さんの巻頭コラムも掲載されています。

 もっとも,日本におけるソフトウェアの違法コピー率の低下をさもACCSの手柄のようにいうのは正確さを欠くかなあという気がします。

 日本において,ソフトウェア,とりわけビジネスソフトの違法コピー率が低下した最大の要因は,違法コピーをする必要がなくなったということにあります。

 私のゼミ生などはほぼその時代のことを知らないわけですが,昔は,たかだかワープロソフト1本で定価9万8000円など当たり前という時代があったわけで,そういう時代においては,比較的金銭的なゆとりのある企業においても,社内のパソコン1台につき1パッケージを購入するように社内的に申請を出すことはかなり抵抗感を感じざるを得なかったわけです。ところが,最近は,オフィススイートが非常に安くなりましたし,さらにパソコンにプリインストールされて提供されることが増えてきました。こうなってくると,例えば,Win系のパソコンを導入する場合に,MS OFFICEのプレインストールされているものを導入するように社内申請を行うことに,従業員はさほど抵抗を感じずに済みます。すると,わざわざ,「違法コピー」する必要がなくなるわけです(だから,今でも十分高いアドビ系のソフトは,今でも違法コピーの対象となりやすかったりします。)。

 また,ビジネスで通常利用するソフトウェアが固定化してきたために,アーリーアダプターな同僚が使用しているソフトを──どうも便利そうなので──試しにインストールしてもらうみたいなこともかなり少なくなってきているのではないかと思います。もちろん,「痒いところに手が届く」ようなニッチなソフトは今でも栄枯盛衰は激しいのですが,そういうのって,フリーウェアかシェアウェアだったりするではないですか。

 そういう意味では,ソフトウェアの違法コピーを減少させる最大の方策は,正規商品市場を成熟化させることにあったということになるのだろうなと思ったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 07:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/31/2009

ヴェルヌ?

 NBLという企業法務系の法律雑誌は、巻末に「惜字炉」というコラムを掲載しています。2009年7月15日号の「惜字炉」は、「憂国の啓明子」という方による「グーグルのライブラリプロジェクト和解案が投じた、一つの法的争点」と題するコラムです。

 そのコラムを読んでいて、一つどうしても気になってしまうことがあります。ベルヌ条約を、わざわざ、

ヴェルヌ条約

と記載しているのです。それも、一度ならず二度もです。

 「ベルヌ条約」は、英文表記では「Berne convention」ですから、「ヴ」という表記を認める見解に立ったとしても、「ヴェルヌ」とは書きません。「海底二万里」の作者「Jule Verne」であれば「ヴェルヌ」というカタカタ表記でも良いのですが、「Berne」を「ヴェルヌ」とカタカナ表記するのは明らかに間違っています。

 「Berne」の語源がドイツ語で「熊」を意味する「Bär」に由来しているということを思い出せば、「V」ではなく「B」から始まるのだと見当がついたと思うのですが、社会人になると、学生時代に勉強したことは忘れてしまうものですね。

Posted by 小倉秀夫 at 04:11 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

07/21/2009

「情を知って」から「事実を知りながら」への変更

 いろいろなところで、改正著作権法の解説を!という要請があって色々頑張っているところです。

 ところで、ダウンロード違法化を導入するにあたって「情を知って」という条件が付されるから大丈夫だみたいな言い回しが随分広く行われていたような気がするのですが、実際の改正案では「情を知って」ではなく「事実を知りながら」という文言が用いられています。

 「事実を知りながら」という文言は、第30条第1項第2号でも用いられていますが、あちらでは、その行う複製が、技術的保護手段の回避を行うことにより可能となり又はその結果に障害が生じないようになったものであるということを知っているか否かが問題となるので、「事実を知りながら」でもよいと思うのですが、第3号の場合、その受信する自動公衆送信が著作権を侵害するものか否かということが問題となるので、その送信行為を違法な自動公衆送信であると裁判所が相当の確度で判断するであろうというところまで知っていたかを問題としないとまずいのであって、そうだとすれば第113条第1項第2号のような「情を知って」の方がよかったのではないかという気がします。例えば、「MYUTA」事件の場合、その受信する音声データの送信元が何をやっていたのかということをその受信者は知っていたかも知れないけれども、それが著作権を侵害する自動公衆送信にあたるという法的評価はおそらく知らなかったのであって、そのような場合、「事実を知」らなかったとしてもらえなかったら、利用者保護に全然ならないよなあという気がどうしてもしてしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 10:20 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/29/2009

ウェブ魚拓

 私のブログのエントリーについて大量にウェブ魚拓している人がいるようなので、「ウェブ魚拓の考え方」と題するページを見ていたのですが、複製権侵害または公衆送信権(送信可能化権を含む)侵害を主体的に行いまたは幇助しているのではないかという疑問に対して答えていないという時点で、予防法務的には絶望的だなあと思ったりします。

 サービスの特性上、その著作権者から削除要求がなされたときに削除するというふうにはしがたいのかも知れませんが、それをしないと、プロバイダ責任制限法第3条第1項の免責は受けられませんし、「丸ごとコピー&主たる著作物なし」では著作権法第32条により適法とされることもまずあり得なさそうです。

 サービスの特性上、その著作権者を攻撃する目的で活用されることが予定されているのに、その著作権者からの「著作権侵害だ!」という攻撃に対し無防備でいるというのは、如何なものかなあと思ったりします。

 このサービスを続けるのであれば、怒りの矛先が魚拓者に向かうように、魚拓者のIPアドレスを標準で表示するようにしておくところからはじめないと厳しいかなあと思ったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 01:28 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/26/2009

翻案権侵害の例

 中央大学での著作権法のゼミで、

問6 下記文章のA~Fに適切な語を入れて下さい。

「AのBという楽曲のうちCと歌っている部分は、DのEという楽曲のうちのFという歌っている部分の歌詞/曲の『表現上の本質的な特徴の同一性を維持』 しており、その『表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる』ので、翻案権侵害に当る。」


という課題を出したのですが、どのような答えが返ってくるのか楽しみです。

 もちろん、

問5 「料理の鉄人」と同様の料理バトル番組を、「料理の達人」というタイトル名で制作し、放送することは許されるか。どのような点につき「料理の鉄人」を真似たら、フジテレビの著作権を侵害することとなるでしょうか。
等普通の課題も出してはいます。

Posted by 小倉秀夫 at 11:47 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/22/2009

国立メディア芸術総合センター(仮称)

 里中満智子さんが次のように述べています。

マンガは“原画の収集・保管”が難しい。既に本として見られない物もあるし、失くしたくない、文化遺産としてのマンガ原稿がたくさんありますが、作者が亡くなった後、散逸してしまう事もあります。散逸の危機にあるマンガの原稿を保存する、劣化したマンガの原画を修復するなど、公的な施設でしか出来ない事をやるべきです。

関連してその原画の作品がどういう作品なのかという事をアーカイブで見せるという事が有効です。国立メディア芸術総合センター(仮称)がその窓口機能を担って、既存の施設とうまく連携して行ければといいと思います。

 この種の資料館作りをする上での最大の関門は如何に遺族(の一部)の反対に遭わないようにするかということなのですが(遺族全員の承諾がなければ,散逸の危機にあるマンガの原稿を保存する、劣化したマンガの原画を修復する,デジタルアーカイブを作成するということはできないのですから。),国立メディア芸術総合センター(仮称)構想の中に,そのような遺族の権利を制約していこうという発想まで含まれているのかというと大いに疑問です。そこをクリアしないと,箱物はできたけど,箱物の中身はがらんどうということだって十分あり得るのです。

 もちろん,生前に預けたっていいのですが,国立メディア芸術総合センター(仮称)が完成したら,自分が保管している原稿を無償で寄贈し,その修復やデジタルアーカイブ化を無条件で許可・同意するという漫画家がどれだけいるのかというと,結構疑問だったりします。しかも,権利自体は漫画家個人ではなくて,法人が有している場合が少なくなく,その場合,その種の法人は漫画家が死んだ後もスタッフで続編作って喰っていこうとする傾向があるので,そうなると,原稿だってなかなか手放さないのだろうなと危惧したりします。

 国立メディア芸術総合センター(仮称)の箱物を設計する前に,その辺の覚悟の程を,漫画家たちが示すのが先ではないかと思ったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 02:07 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (0)

06/21/2009

JASRAC寄付講座

 昨日は,早稲田大学法科大学院で行われている著作権法の特別講義にゲストスピーカーとして呼ばれ,上野達弘先生と一緒に,間接侵害についてお話ししてきました。いや,JASRACの寄付講座で私をゲストスピーカーに呼び,しかも間接侵害について語らせてしまう上野先生の剛毅さというのが光っています。

 そのあとは,学生の有志とともに,西北の風(大隈記念タワー15階)で軽く雑談をしてきました。

Posted by 小倉秀夫 at 10:14 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1)

06/20/2009

芸術・技術分野の知識

 6月22日締め切りの判例解説の初稿を完成させて,今日,編集者に送信しました。

 前回のゼミの課題として,プロデューサー,監督,撮影監督,美術監督がその実体験について書いた書籍を読んで,プロデューサー,監督,撮影監督,美術監督というのは,どのようにして映画の著作物の全体的形成に寄与するのかをレポートしなさいという課題を出したわけですが,著作権法の難しさの一つは,法律の条文や判例や学説をいくら勉強しても,その対象となる芸術・技術分野についてもそれなりに勉強していかないと,何が何だかよくわからないというところです。もちろん,新司法試験にパスするだけなら,基本書に書いてあることをきちんと身につければ何とかなると思いますが,実務的にはそこで止まってしまう人は厳しいわけです。

 「舞踊の著作物」について創作的な部分が共通しているといえるか否かという問題についていえば,例えば,長い歴史を持つクラッシックバレエや花柳流舞踊等において,「振付け」のレベルで創作性が加わるとはどういうことなのかということを議論しなければならず,それは,バレエ等の舞踊を実演することや鑑賞することを趣味とはしない私には非常に難しい問題です。一応,舞踊等に関する文献等を読みはするものの,果たして,それほど外すことなく理解できたといいうるか,その道に通暁した読者の評価を仰ぐより他ありません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:22 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/10/2009

海賊党,躍進

 以前ご紹介した海賊党ですが,とうとう欧州議会で議席を獲得したとのことです。

 スウェーデン票の7.1%を獲得とのこと,立派なものです。7%といえば,前回の日本の参議院選挙でいえば,共産党とどっこいどっこい,社民党の倍近い得票率です。少なくともスウェーデンでは,著作権法はそこまで嫌われているということです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/08/2009

Twitter Squatting

 ABA Journalによれば、セントルイス・カージナルスのTony La Russa監督が、自分の名前を騙ったTwitterページが作成されているので削除せよと要求したのに拒否されたとして、Twitterを訴えたようです。

 同ジャーナルによれば、請求の原因として、" trademark infringement, cybersquatting and misappropriation of likeness and name"といったものをあげているようですが、日本法の感覚だとどれも厳しそうな気がします。Twitterの場合、「商標的使用」からは遠そうですし(具体的な商品やサービスと結びついていれば別ですけど。)。

 偽Tony La Russaがつぶやいた言葉次第によっては、名誉毀損が成立するかなあとは思います(実在の女性の名前を騙って、卑猥な内容を掲示板等に投稿したりするのと、同レベルの話として。)。

Posted by 小倉秀夫 at 04:57 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/03/2009

Farewell to "Pretty Woman"?

 衆議院を通過し、参議院にかかっている著作権法改正案が可決成立したら、FairUseにあたるとしてそのアップロードが適法となっている楽曲(例えば、2 Live Crewの「Pretty Woman」)をiTunes Store等でダウンロードする行為も違法になってしまうのでしょう。

 少なくとも、この種の利用まで「公正利用」に含めるフェアユース規定が日本の著作権法に導入されるまでは、です。

Posted by 小倉秀夫 at 10:15 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/31/2009

他人に迷惑をかけなくてもアンフェア?

 昨日のエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークのシンポジウムは盛況でした。

 当日の私の質問は,結局,(著作権者の許諾を得ない)著作物の利用が「フェア」であるか否かの判断基準に関するものでした。その利用が,著作権者による著作物を通じた投下資本の回収可能性を阻害しないような利用(三田先生の挙げた例に則していえば,問題集を発行する出版社が,どの問題を問題集に掲載するかを検討する資料として,入試問題を社内サーバに蓄積する行為)って,アンフェアなのでしょうか,ということでした。

 私たちは,他人に迷惑をかけずに,別の他人の利益になることを行っている場合にも,それは「フェアではない」として制裁を受けなければならないのか。それは,公共の福祉に反しない限り自由な行動が許されるとする日本国憲法下のルールとして適切なのかという問題でもあります。「あちら側」の人の意識というのは,よくて「著作権法」によっていくらでも国民の自由を制約することができるという明治憲法的意識にとどまっているのではないかと思うことがあります。

Posted by 小倉秀夫 at 12:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

05/28/2009

「Tsudaる」問題

 ゲームラボの7月号のコラムで、「Tsudaる」問題を取り上げてみることにしました。

 さっき初稿を送信したばかりなのでどうなるか分かりませんが、端的に言うと、「営利目的バリバリのシンポなどについては、やり方次第で結構グレイ」といったところでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 02:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

05/18/2009

「フェアユースは本当にフェアか!? 」シンポジウム

 私も所属しているエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークで、「フェアユースは本当にフェアか!? −フェアユースが著作権にもたらす論点分析—」というお題でシンポジウムを5月30日に開催するとのことです。

 基調報告が、モリソン・フォースター(伊藤見富)の古島ひろみ弁護士と、文化庁の川瀬真さん、パネリストが、上野達弘・立教大学准教授、
菅原瑞夫・社団法人日本音楽著作権協会常務理事、田村善之・北海道大学教授、丸橋透・ニフティ株式会社法務部長、三田誠広・社団法人日本文藝協会副理事長、ということで、「こちら側」がいないことを除けば、豪勢な布陣ではあります。

 これだけの陣営を揃え、かつ、シンポジウム終了後懇親会まで開くのに、何と参加費が無料です(同じ日に行われる「アゴラ」のシンポとは、大違いです。)。

 伝統的に、知財系は、懇親会等では「あちら側」も「こちら側」も紳士的に交流するのが常ですので、フェアユース問題に関心のある方は参加してみては如何でしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 07:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/16/2009

著作権法学会(周辺領域)

 先ほど,著作権法学会から帰ってきました。

 こういう学会は,研究大会に出席し,さらに懇親会に出席してこそ意味があります。

 ということで,いろいろなアイディアを頂きました。

Posted by 小倉秀夫 at 11:13 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/13/2009

サーブがまずすべきこと

 地上デジタル放送専用のDVDレコーダーについて,東芝及びパナソニックが私的録音録画補償金を上乗せして消費者から徴収しないこととしたとのニュースが話題になっています。

 私的録音録画補償金については,法の建前上は支払義務者は機器等の購入者であるのに,権利者団体は機器等の購入者である消費者からなる団体と協議して,私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の範囲について合意を形成する努力を怠ってきたわけですから,いずれこういう動きにはならざるを得なかったのだろうと思います。私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等に該当しないものについて,該当すると誤信して私的録音録画補償金相当金を上乗せして消費者から徴収してサーラやサーブに支払ってしまい,後にその機器が私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等に該当しないことが明らかになった場合,ややこしい問題となりうるからです(各製造業者がサーラやサーブから支払い済みの補償金の返還を受けて,これを消費者に返却することになるのでしょうか。その場合,返還に伴う事務経費を専ら負担するのはメーカーっぽいです。)。

 そして,私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の範囲を定める著作権法施行令第1条では,媒体に固定される音・影像が,特定の標本化周波数で「アナログデジタル変換」されたものであることが私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の要件となっているところ,最初からデジタル方式で受信してそのままデジタル方式で影像を録画する地上デジタル放送専用のDVDレコーダーに関して,それが特定の標本化周波数で「アナログデジタル変換」された影像を録画するものである(それゆえ,私的録音録画補償金の支払い義務が購入者に生ずる)ということを,サーラもサーブも,購入者が納得できる形で説明できていないわけです。といいますか,自説の結論だけをそのウェブサイトに記載しているだけで,著作権法施行令第1条との関係でそれらの機器がどうして私的録音録画補償金の対象となるのか,筋道を立てて説明を行っていません。購入者から説明を求められたときの理屈の組み立てまで丸投げされたのでは,メーカーが匙を投げるのも宜なるかなと言ったところです。

 そういう意味では,サーブがまずやるべきことは,MIAUや主婦連等の消費者団体にコンタクトをとって,私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の範囲について,コンセンサスを得ることではないかと思います。

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05/02/2009

何も畏れることはない

 朝日新聞によれば,

インターネット検索最大手の米グーグルが進める書籍検索サービスについて、詩人の谷川俊太郎さん、作家の三木卓さんらが30日、東京都内で記者会見し、著作権侵害の恐れがあると危機感を訴えた。

とのことです。

Google Inc.も,著作権者が検索サービスに組み入れるなと明示的に意思表示をしているものについてそれでも組み入れてやると言っているわけではないのですから,和解した上で,検索データベースからの作品の削除を申し出ればいいだけであって,何も危機感を覚える必要はないのではないかという気がします。むしろ,和解から離脱することにより,終局判決において,書籍データベースでの書籍データの利用はフェアユースにあたるという判断が下される可能性だってあるわけですから,検索されたくないのだったら,和解に乗った方がいいのではないかという気がしなくはありません。弁護士からどういうレクチャーを受けているのかわからないのですが,書籍データベースへの組み込みのために複製・翻案って,検索結果の出力さえ工夫しておけば,正規商品たる書籍と代替性のないものとすることが可能ですので,フェアユースにはなりやすいように思ったりはします。

 CNet Japanによれば,社団法人日本ビジュアル著作権協会は,

弁護人を立て、米国の出版ルールに即した今回の和解案ではなく、ネットでの利用方法や利用料の分配について、日本の慣行に即したルールづくりを目指し、独自にGoogle側と交渉を進めていく意向を明かしている。

とのことです。

 「日本の慣行に即したルールづくり」って,同種のサービスが日本で行われていない以上どこにいったら「日本の慣行」とはなんぞやがわかるというのか,訳がわかりません。書籍の貸与権のときに現れた,「著作権者でも,著作隣接権者でもない,著作権法上は何らの排他的権利をも有しない出版社に相当の分け前を与える」っていう,根拠不明のルールに従えということではないことを望むばかりです。それって,出版社としての優越な地位を悪用した,(法律の原因に基づかない)単なる搾取なのではないかと思えてなりませんし。

Posted by 小倉秀夫 at 02:35 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

04/29/2009

disrespect

 現代の日本には,弁護士が代理人として内容証明を出すまでアーティスト等に約定の印税を支払わないレコード会社や音楽出版社が多すぎるような気がすると,そのような代理人の一人である私は思ったりします。

 権利者団体の人たちは,自分たちの構成員こそがアーティスト等をdisrespectしていないか,きちんとチェックした方がよいのではないかという気がしたりします。

Posted by 小倉秀夫 at 12:09 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/25/2009

出版権の内容

 mohnoさんがそのブログで次のように述べています。

福井氏の話で注目したのは、「日本の著作権はあいまいなので、出版社も著者も明確な対応ができずにいる」「現状は、とりあえず和解に残留した上で、数年をかけて明確化していくべき。」「今回のは第1ラウンドで、この先の第二ラウンドに期待している」といったところ。だが、後述のとおり「あいまい」ですませていることが問題を引き起こす可能性もあると思う。

さて、これが、どういう流れだったかというと、まず福井氏が「出版社には契約によって出版権があるけれど、インターネットで配信する場合の権利はあいまい。電子出版が明記されている例は、少ない。そういうあいまいさが、対応を難しくしている」という話をされていた。私はインターネット配信も「出版権」の一部だろうと考えていたから、「出版権とインターネット配信が別個のものとして考えうるというのは意外だった」というところで、「別個とは言っていない。そういう理解になるのかわからない」という話になってしまったわけだ。

 著作権法上の「出版権」についていえば,設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(著作権法80条1項)と定義されているので,インターネットで配信する場合を含まないことははっきりしています(著作権法上の「頒布」は複製物を公衆に譲渡又は貸与することを言いますから。)。

 もちろん,出版契約に付随して,「出版権」の枠外の利用行為について許諾を受けることは可能であり,契約において明記されていれば,インターネット配信に関しても,排他的又は非排他的な利用許諾を受けることは可能でしょう。明記されていないときはどうかといえば,利用方法を特段限定しない利用許諾契約ならばともかく,出版権設定契約においてインターネット配信に関する利用許諾が契約書上に明記されていなかったら,別途明示的な意思表示がない限り,インターネット配信については許諾を受けていないと見るより他ないでしょう。

 実務的にも,少なくとも私が著者として関与している出版社に関しては,インターネット配信をするにあたっては私の許諾を別途取りに来ています。

 もっとも,Google Book Searchの例のクラスアクション和解への日本文芸家協会の対応で理解しがたいことは,何で協会で弁護士を雇ってGoogleへの回答書のひな形を作らせて会員に頒布する程度のことをしないのかということです。回答のパターンはそんなにたくさんないのだから,費用もそんなにかからないと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 02:39 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

Pirates Bay訴訟はやり直し?

 Pirates Bayの創業者たちがスウェーデンの裁判所で実刑判決を受けたというニュースは日本でも注目されましたが,この記事によれば,その裁判はやり直しになるかもしれないとのことです。

 というのも,この裁判に関与した裁判官の一人であるTomas Norstroem判事が,映画会社やレコード会社もメンバーとなっている著作権保護協会のいくつかに所属していることがラジオ局にすっぱ抜かれたからです。Norstroem判事自身は,自分はそのことによって偏ったことはないと言ってはいるようですが,個人的な利害と対立する可能性がある事件については,「公正な裁判」に対する信頼を守るという意味からも,自ら「回避」すべきではあったといえるでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 01:38 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

04/22/2009

「代表なくして課金無し」

 今年度の文化審議会著作権分科会の基本問題小委員会は,エンドユーザーの意見など斟酌しない方向で委員の人選を行ったようです。

 「代表なくして課税無し」という標語に象徴されるように,ある種の集団に不利益を課す制度変更を行うに際して,その決定過程からその集団の代表を排除しようということは,民主主義社会においてはそれ自体が悪徳です。だから,私たちは,まず私たちの代表を「著作権法」というアンシャンレジームにより人民から搾り取ったお金で不労所得をむさぼる「著作権貴族」たちとほぼ同数の代表を受け入れるように要求していくところから始めていくのが筋ではないでしょうか。そういう意味では,JEITAもMIAUも,自分たちの代表を受け入れよと文化庁に要求すべきだと思います。そして,彼らがその受け入れを拒むときは,「貴族部会」が「著作権貴族」の利益にのみ腐心した議論を行うのと並行して,私たち「第三身分」で著作権法に関する「国民議会」を立ち上げていくことすら必要になっていくのではないかという気がします。

 昔の国王にあたる立法府が,「貴族部会」の結論と「国民議会」の結論のどちらを尊重するのか,予断を許しませんが。ただ,「国民議会」を,そして「第三身分」をリスペクトしなかった某国王がどういう運命をたどったのかは,歴女でなくとも常識に属する範囲の事柄です。もちろん,今日物理的に「ギロチン刑」にかけるということはないのでしょうが,既に「第三身分」は,選挙権という細分化された,社会的な「ギロチン」をもっているのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:30 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

04/15/2009

一太郎の終わりの始まり

 「一太郎」で知られるジャストシステムがキーエンスの傘下に入ったというニュースは、今や昔といったところでしょうか。

 先日の知的財産研究会で、「一太郎」特許事件においてジャストシステム側の代理人を務めた弁護士さんがレポーターとして研究発表をされていたのですが、官公庁を大口の顧客とする製品に関して、なぜしなくともよい冒険に敢えて踏み切ったのか(この事件で問題とされたところって、パッチを当ててプログラム本体から削除しても、特段の問題もなくプログラムを使える程度の些末的なところだったわけではないですか。)、「予防法務」という観点からは不思議でたまりません。このような技術が特許として認められていることが許せないというのであれば、特許無効審判を申し立てた上で、それが認められた段階で、次期バージョンからその技術を利用すればよかったはずであり、当時の一太郎のシェアからいえば、それで何の問題もなかったはずです。

 結果的に、第2審で逆転勝訴しそれが確定はしたものの、第1審で敗訴したときの印象が強い為に、あのころから保守的なところから「一太郎」回避に向かっていったのではないかという気がします(実証データはかき集めていませんし、今後も集める気はありませんが。)。そういう意味では、あの事件は、結果的にジャストシステムが勝訴したものの、「一太郎の終わりの始まり」だったような気もします。

 もっとも、一太郎文書については、一太郎ユーザー以外でも内容を閲覧できるビューワーないしコンバーターを積極的に頒布しなかったということ自体が、プリントアウトした書類をやりとりするのではなく、データファイル自体を添付形式でやりとりする時代には合わなくなってきているように思うので、あの事件がなくても、圧倒的なシェアを保っていた時代の感覚を抜け出せていないジャストシステムが衰退していくのは歴史の必然だったような気もしなくはありません。一太郎のシェアが圧倒的なままであれば、ビューワー等を敢えて用意しないことにより、「一太郎文書が読みたければ、一太郎を買え。今の機種では一太郎が動かないのであれば動く機種を買え」と殿様気分で言えたのでしょうが、MS WORDというライバルがいる現状でそれをやってしまえば、「一太郎文書だと、Winユーザー以外には迷惑がかかるから、MS WORDにしておこう。我が社は、Macユーザーを切り捨てるわけにも行かないし」ということになってしまうのは、仕方のない話です。

 といいますか、「一太郎」に関して言及されているブログのエントリーをチェックしていれば、「一太郎文書が読めなくて困っている」というMacユーザーの怨嗟の声がいくらでも目に入ってくるはずであって、そのような声をフィードバックして、Mac用のビューワーやコンバーターを開発して無償配布しようという声が、少なくとも会社としての正式決定に至る程度に上がってこないという点で、組織として硬直化してしまっているのではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 04:42 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

04/04/2009

放送時間の多くをテレビ・ショッピングに割けるはずもない?

 岸博幸・エイベックス取締役が次のように述べています。

 もちろん、楽天はネット上の商店街ですから、テレビ・ショッピングとの連動というのは十分にあり得たのかもしれません。しかし、放送時間の多くをテレビ・ショッピングに割けるはずもないので、TBSからすれば、収益へのインパクトという点で、楽天との経営統合にあまりメリットを見いだせなかったのではないでしょうか。

 TBS系のBSデジタル放送であるBS-TBS(旧BS-i)の番組表を見てみましょう。

 例えば,3月30日(月曜日)をみてみると,テレビショッピング以外の番組は,


  • 05:00〜05:30 お目覚めハイビジョン・夢の彼方に「ヨーロッパ編」

  • 07:00〜07:54 恋人「クリスマスイブ」(字幕)

  • 08:00〜08:54 恋人「真実」(字幕)

  • 11:00〜12:54 ミステリー・セレクション・カードGメン・小早川茜5「黒いデータ」

  • 14:00〜15:54 ミステリー・セレクション・税務調査官・窓際太郎の事件簿15

  • 19:00〜19:54 韓国ドラマ・フルハウス「再会は突然に」(二カ国)

  • 20:00〜20:54 韓国ドラマ・フルハウス「君さえいれば」(二カ国)

  • 21:00〜22:54 天使たちの真実〜元従軍看護婦の証言〜

  • 23:00〜23:30 美の京都遺産

  • 23:30〜24:00 天使たちの真実〜元従軍看護婦の証言〜


といったところです。合計648分。一日の45%をテレビ・ショッピング以外の番組に割いているということになります。「放送時間の多くをテレビ・ショッピングに割け」ているではないですか!

 東京キー局は関連会社を含めてチャンネルを持ちすぎており,それらのほとんどにテレビ・ショッピングではないオリジナル番組をあてられるほどの番組制作力を持ち合わせていないので,放送と通信の融合は不可能だと放送側が主張し続けるのであれば,キー局は,まともに活用できていないチャンネルを返上すべきではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 11:31 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/22/2009

学生のうちに経験を積め

 高橋直樹さんが次のように述べています。

俺は音楽は知らんのだけど、例えば物書きなら、何かの小説やラノベや脚本の新人賞にでも送って、佳作でもなんでも取ればいい。新人賞は未経験者お断りなんて言わないぜ?

そういうのが直接そっちの世界の仕事につながるかもしれんし、たとえ繋がらなくてもゲーム屋に送る履歴書には書ける。選考の際有利にはなるだろうよ。少なくともエロゲ業界ではかなり箔がつくと思うけどな。

俺よか教養があるっぽいし、心身ともにとりあえず健康なのだったら、時間を作ってコツコツとやってみればいいのに。誰だって最初はキャリア無しなんだから、積むところからはじめなきゃいけないんだ。


 クリエイティブな職業に就きたかったら,がんがん作品を作ってみて,しかるべきところに送ってみれば良いではないかという点については,基本的に賛成です。これは,ゼミ生(「著作権法ゼミ」という特殊性もあって,クリエイティブな職業に就きたい学生の割合は他のゼミより高いと思います。)にもたまに話すことがあるのですが,まず作品を作り発表するところから始めないと,無名の新人のクリエイティブな才能なんて拾い上げようがないのです。

 過去の記録がコンピュータ上に蓄積されて後に検索されるWeb時代において未熟な作品を発表することの危険性を気にする人もいるようですが,そりゃ他人を冷笑することで何とかアイデンティティ・クライシスを回避している「一部の人」たちは過去の失敗や未熟さをあげつらうことはあるかも知れないけど,クリエイティブな才能を探している連中は,クリエイティブな才能の未熟時代のダメダメぶりなんて気にしたりしないので,そんなことを気にしてみても始まりません。

 もちろん,ジャンルによってはコミケに作品を発表してもよいし,Webで作品を公開したってかまいません。DS用のソフトウェアについては任天堂がライセンス契約を結んでくれるようなソフト会社に就職してからでないと作品を作って発表することができないけれども,それ以外のジャンルについては,まず作品を作って発表し,その才能の一端を見せつけることが可能なのです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:07 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

汎国家的配信の義務づけ

 ITmediaに次のような記事が掲載されていました。

 米音楽売り上げのうち、デジタルダウンロード販売が占める割合が3分の1に達した。米調査会社NPD Groupが3月17日に報告した。

 「コンテンツ」が電子機器により再生されることが一般化すると,コンテンツを一旦物理媒体に固定した上でその物理媒体を物流網に載せる必然性が低下します。すると,物流コストが低いコンテンツのネット配信が主流を占めていくことは容易に想像が付きます。日本では,「コンテンツホルダー」側の不可解な抵抗によって,この動きがコンピュータプログラムと商用音楽程度にしか普及していませんが,AppleTVやKindle等が利用できる米国では,映画や書籍などもネット配信が徐々に物理媒体による頒布を凌駕していく可能性があります。

 現状では,そうはいっても電子端末の普及率がそれほどでもないので,多くの場合,「物理媒体でも頒布するコンテンツをオンラインでも配信していく」という程度にとどまっていますが,将来電子端末の普及率が高まると,コンテンツをオンラインでのみ配布するということが一般化していくと予想されます(既に,プログラムではそのような営業政策が採用されている場合が普通に存在します。)。物理媒体での頒布の場合売上げの見通しを間違えると在庫を抱えることになってしまうというリスクがありますし,(大抵の場合寡占状態にある)流通業者にその流通網に載せてもらうのが個人または弱小コンテンツホルダーとしては結構しんどいということもあるからです。

 その際に問題となるのは,そのコンテンツの配信を受けられる人的範囲がその居住する地域により限定されていると,その地域外に居住する人々は,誰かによる違法行為を経ない限り,そのコンテンツを享受することができなくなる可能性が高いということです。コンテンツが物理媒体により頒布されていた時代は,それが日本国内向けには頒布されていなかったとしても,一度日本国外で頒布された物理媒体を「輸入」することにより,日本国内に居住する人々がこれを享受することができます(いわゆる「101匹わんちゃん」事件の担当裁判官はそれを許すまじと思ったようですが,まあ,中古ゲーム訴訟最高裁判決でその考え方は覆されたと考えるのが一般的です。)。しかし,日本国外向けのオンライン配信でのみ配布されているコンテンツを日本国外で受信して物理媒体に固定して日本国内に輸入して販売することは概ね違法となってしまいます。それは,例えばある重要な論文がKindle用コンテンツとして米国国内向けに公表された場合,日本の研究者はその論文に記載されている内容を読むことすら許されないということに繋がっていきます。それは,技術と著作権法(あるいは不正競争防止法も)が,コンテンツを通じた文化の発展が日本国内にもたらされることを阻害することを意味することになります。

 そのような事態を避けるためには,コンテンツがオンラインでのみ配信されるという時代を本格的に迎える前に,政府(文化庁なのか,知的財産戦略本部なのか,所管が難しいところではあります。)が,AppleやGoogle等のコンテンツ配信事業や国外のコンテンツ企業を回ってそれらがオンラインでのみ公開するコンテンツについては日本国内に向けても公開するように働きかけ,または,他の先進諸国とも協議して少なくともオンラインのみ配信するコンテンツについては汎国家的配信を義務づける等のルール作りをするなどの対策を講ずる必要があるように思われます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

03/18/2009

2009年度の著作権法ゼミの受講生の皆様へ

 2009年度の著作権法ゼミの受講生の皆様へ

 基本書は特に指定しませんが,なにがしかは入手して,できるだけ早めに一回通読して下さい。

 現状ですと,とりあえずお勧めできるのは,


  1. 中山信弘「著作権法」

  2. 田村善之「著作権法概説(第2版)」

  3. 三山裕三「著作権法詳説(第7版)」


といったところです。加戸守之「著作権法逐条講義」や作花文雄「詳解著作権法」は,何かを発表するに際しては参照すべき文献だと思いますが,通読するにはきついと思います。半田正夫「著作権法概説 」や千野直邦=尾中普子「著作権法の解説」,斉藤博「著作権法」は,その薄さに惹かれるところだとは思いますが,現代型の論点を考える手がかりとして使うにはいまや少し厳しいような気がします。

 言わなくても買わないとは思いますが,半田正夫=松田政行編「著作権法コンメンタール」は買う必要ありません。その価格に情報量が見合っていないように思います。注釈書が欲しければ,後数ヶ月待って下さい。

 判例集はもっておいた方がよいです。現行の著作権法判例百選を買うのなら今のうちです。著作権法分野は21世紀に入ってからも重要判例が目白押しという珍しい法領域なので,きっと次期バージョンとは収録判例ががらっと変わると思います。本橋 光一郎=本橋 美智子「要約 著作権判例212」でもよいです。岡邦俊「著作権の事件簿—最新判例62を読む」もいい本ですが,学生にはつらい値段だと思います。また,ユニ著作権センター駒沢公園行政書士事務所日記等で最新の判例をチェックしておくのも良いことだと思います。

 特に音楽著作権に興味がある人は,安藤和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス—基礎編 3rd Edition」,「よくわかる音楽著作権ビジネス—実践編 3rd Edition」を読んでおくと良いと思います。その他のエンターテインメント系の著作権問題やIT関係の著作権問題については,たくさんの書籍は出ていますが,「これはお勧め」というものはなかなかありません。学生のうちは時間が余っているので,片っ端から大学の図書館に買わせて読みまくるというのも一つの手だとは思いますが,ただ,中途半端なQ&A集を読んでいるより,それぞれの業界のありかたを説明している文献(例えば,映画だったら,兼山錦二「映画界に進路を取れ (エンタテインメントビジネス叢書) 」等)を読んだ方がよいような気がします。

 六法については,著作権法が全文掲載されているものを使用することは大前提です(小型の六法だと,抄録扱いになっている場合があります。)が,できるだけ,著作権法施行令,同施行規則,旧著作権法,ベルヌ条約,WIPO著作権条約等が掲載されているものを選んで下さい。角田政芳「知的財産権六法」あたりで良いと思います。まあ,今は法令等はオンラインで入手できるので,A4のバインダー用紙等に必要な法律をプリントアウトしてオリジナルの「知財六法」を作ってしまうというのも一つの手ではあります。

Posted by 小倉秀夫 at 01:45 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

03/14/2009

ユーザーはレコーディングされた音楽に対してそれを気に入ればお金を払う習慣を失っていない

 岸博幸エイベックス取締役は,

 そうした中で音楽産業は、ユーザがなかなかお金を払わないという現実に苦しんでいます。面白い数字を紹介しましょう。米国のインターネット上は日々無数の音楽ファイルが流通していますが、その中で正規(=有料)ダウンロードの割合は、平均すると20曲中1曲だけです。米国の音楽配信サイトの一つであるLalaはユーザに対して、(1)1曲99セント払えば自分のパソコンにダウンロードできる、(2)1曲10セント払えばLalaのサーバからいつでもその曲を聴ける、(3)お金を払わなくても1回は曲を試聴できる、という3つの選択肢を用意していますが、この会社のサーバに蓄積された曲へのアクセス状況をみると、1000曲中99セント払ったのは72曲、10セント払ったのは108曲、無料での試聴が820曲です。

との事実から,

 そうです。違法ダウンロードが当たり前になる中で、ユーザはレコーディングされた音楽にはお金を払わない習慣を身につけてしまったのです。

との結論を導いています

 しかし,無料で試聴された楽曲の約8.7%が正規に購入され,その他約13.2%が有料で継続的視聴オプションが選択されたということであれば,プロモーションとしては成功しているのであり,むしろ,未だユーザーはレコーディングされた音楽に対してそれを気に入ればお金を払う習慣を失っていないと分析する方が適切であるように思います。

 プロモーションをテレビやラジオなどの放送メディアに頼っていた時代,無料で視聴された楽曲の8.7%も正規商品を購入するなどと言う現象はなかった(音楽自体を聞くことを目的とした番組で視聴した楽曲に限定しても,そこで聴いた楽曲の8.7%も正規商品を購入するなどということは一般的な慣習にはなっていなかったはずです。)わけです。結局のところ,岸取締役の不満は,レコード会社に都合の良い期待をネットユーザーにかけた上で,これを達成しないユーザーに裏切られたということにすぎないように思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/11/2009

キャッシュの運命は如何に。

 私的使用目的のダウンロード行為の違法化については,YouTube等のストリーミング配信を受信するときに生成されるキャッシュはどうなるのだという批判がありました。今回閣議決定された改正案では,

(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)

第四十七条の八 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

という規定を新設することにより,この批判に答えようとはしているようです。ただ,「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る」という括弧書きと,新設第30条第1項第3号において「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」を複製権侵害としたこととの関係をどう捉えるのかは問題となってきそうです(といいますか,「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害」する場合にはその著作権侵害を問題視すればよいだけの話なので,この括弧書き自体不要だと思いますが。)。

 また,改正案では,著作権法第49条第1項に,

七 第四十七条の八の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を、当該著作物の同条に規定する複製物の使用に代えて使用し、又は当該著作物に係る同条に規定する送信の受信(当該送信が受信者からの求めに応じ自動的に行われるものである場合にあつては、当該送信の受信又はこれに準ずるものとして政令で定める行為)をしないで使用して、当該著作物を利用した者

という規定を付加することにより,これらの者が「第二十一条の複製を行つたものとみなす」こととしているわけですが,キャッシュというのは,キャッシュ元のデータに逐一アクセスするよりもキャッシュされたデータにアクセスした方がデータの読み込み時間が短くなるということで情報処理を効率化させるものなので,本体のデータに替えてキャッシュデータにアクセスしたら複製を行ったものとみなされるのでは,キャッシュとしてのデータ複製を合法化した意味がないような気がしなくもありません(「複製」とみなすだけで「録音」「録画」を行ったものとはみなさないから,新設第30条第1項第3号の適用はない,というのでしょうか。それもアクロバティックに過ぎるような気はしますが。)。

 改正案の第30条第1項第3号では,わざわざ括弧書きで,「国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの」を私的目的でのダウンロードが禁止される複製物に含めている点も問題となるでしょう。自動公衆送信が著作財産権に含まれていない国でアップロードされたもの(当然,著作権者の意図にかかわらず,許諾はなされていない。)や,日本にはない権利制限規定(例えば,米国法のフェアユース等)により合法的にアップロードされているものをダウンロードする行為が違法となってしまいます。それはそれで価値判断的に如何なものかなあという気がしてしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

03/10/2009

著作権法改正案2009

 著作権法の改正案が閣議決定されたようです。

 一時は違法アップロードサイトからのダウンロードの違法化だけでお茶を濁すのではないかと思われていたのですが,ふたを開けてみたら結構広範囲の改正を目指すようです。

 違法アップロードサイトからのダウンロードの違法化については,第30条1項に3号として,

三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

という条文を付け加えることで実現しようという算段のようです。

 その他,国会図書館におけるバックアップのための複製や視覚障害者・聴覚障害者のための自動公衆送信の合法化,インターネット通販のための美術・写真の著作物の複製・公衆送信の合法化,電気通信事業者のキャッシュ・バックアップのための複製の合法化,検索エンジンのための複製等の合法化,情報解析のための複製等の合法化,インターネット等でのデータを受信した際に受信側で行われるキャッシュとしての複製の合法化,裁定手続の整備,著作権原簿の電子化等をまとめて改正案としてあげてきたようです。

Posted by 小倉秀夫 at 03:39 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

プログラム開発の自由を阻害する動きに対する寛大さ

 昨日のエントリーに対しては,オーストラリアでのマジコン訴訟で敗訴したマイクロソフト社の大野さんその他から反発を受けてしまったようです。

 ただ,「検知→可能方式」型の技術的手段が「早熟の天才」の出現を阻害しないかについては,「検知→可能方式」型の技術的手段が採用されていない環境で「早熟の天才」の出現してきた例を引いて反論した気になってみても始まらないのではないかと思ったりはします。

 もちろん,NintendoDSのような「検知→可能方式」型の技術的手段を講じても,市井で行われるソフトウェアの開発に何ら差し支えないというのであれば,是非ともWindows7の正規バージョンで採用したら良いのだと思うのです。例えば,Windows7がインストールされたPC上では,MS社とライセンス契約を結んで提供を受けた特別な信号が組み込まれたCDまたはDVDからでなければソフトウェアのインストール作業等が行えず,「正規」のインストール作業の際にソフトウェアごとにMS社から割り当てられた特別な信号がPC上の特別な領域に書き込まれなければそのソフトウェアをPC上で稼働できないようにすれば良いのではないでしょうか。その結果,アマチュアまたはセミプロのプログラマーが,その作成したプログラムを,無料または安価で,オンライン上で公開するということが事実上できなくなり(公開しても構いませんが,誰もそれを実行できないので,公開する意味はなくなります。),自主製作ソフトを作成するということがほとんど無意味な行為となるとしても,「早熟の天才」たちはせっせとWindows7用のソフトウェアの開発に明け暮れるようになるとMS社として考えているのであれば,さっさとそうしたらよいのではないかと思うのです。

 それにしても,いつからコンピュータ業界は,プログラム開発の自由を阻害する動きに対してこんなにも寛大になっていったのでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 12:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

03/09/2009

早熟の天才は不要

 マジコン訴訟に関していえば、真の争点は、

  • 不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は「検知→制限方式」に限られるのか、自主制作ソフト等の実行を制限する「検知→可能方式」を含むのか

  •  いわゆる無反応機及び偶然「妨げる機能」を有している装置だけが、不正競争防止法2条1項10号の「機能のみ」の要件を満たさないと解されるのか、技術的制限手段が付されていない自主制作ソフト等の実行を可能とする機能をも有している場合にも「機能のみ」の要件を満たさないものと解されるのか
の2点です。

 何せ、自主制作ソフトのタイトル数及びダウンロード数は決して無視できる数ではない(1ダウンロードサイトごとの1タイトルの平均ダウンロード数は、自主制作ソフトと違法複製ソフトとでほぼ拮抗していた。)ので、自主制作ソフトを使うためにマジコンを使うということはWinnyのポエム流通よりははるかに現実味のある話だったわけですし、任天堂側は、違法複製ソフトのアップロードサイトに対し何らのアクションをも起こしていない(whoisを用いれば当該ソフトの開設者の氏名・住所等が容易に知りうるというのにです。まあ、違法複製ソフトのアップロードを禁止するためにどのような対策を講じてきたのかという求釈明に対して、任天堂側は一切の回答を拒否しています。)わけです。

 結局、紛争の実態は、ゲーム機器メーカーが「検知→可能方式」の技術的手段を採用することにより、当該機器メーカー及びそれと「ライセンス契約」を結んだソフトハウスにより形成される「ギルド集団」を守ることまで不正競争防止法の守備範囲に属するのかということであり、市川正巳裁判長は、平成11年改正の審議の際に規制すべきものとして「MODチップ」が含まれていたとの一点から、条文の具体的な文言との整合性を軽視して、これを肯定したのです。

 「ゲームソフトなんて、専門学校かなんかを卒業してそこそこのソフトハウスに入社してから開発を勉強すれば十分だよね。学生時代から自主的にソフトを開発してしまうような天才はわが国のゲーム業界には不要だよね」ってお話なのだと思います。私の小学校の友達には、中学生時代からゲームソフトを開発しては賞金稼ぎをしていたような人もいるのですが、任天堂はそういう人材は不要ということのようです(彼は、大学卒業後任天堂に入社したはずですが。)。まあ、早熟の天才は、iPhone用のゲームを開発していろということのようです。

【追記】

 「拮抗」とまでいってしまうのは言い過ぎかも知れません。ただ、ダウンロード数がカウンター表示されているサイトに関していえば、違法複製物アップロードサイトにおける1サイト1タイトルあたりの平均ダウンロード数が約8885回であったのに対し、自主製作ソフトアップロードサイトにおけるそれは約6124回でありましたので、「遜色ない」とは言いうるように思います。

Posted by 小倉秀夫 at 12:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

03/08/2009

southwestern大学でのシンポ

Southwestern

 昨日は,シンポジウムが終わって,夕食を食べて,ホテルに戻ったら,どっと疲れが出て,あっさり寝てしまいました。

 詳しい内容については報告書の提出が決まっているのでそちらに譲るとして,報告書には書けない感想をいくつか。

 アメリカのコメディ番組とか見ていると,時折女性の甲高い笑い声が入って来るではないですか。常々あれはさすがに不自然だろうと思っていたのですが,昨日で考えを改めました。著作権法を見直そうというシンポジウムで,出席者のインテリ度も相当高いというのに,いくら発言者が冗句を交えて話をしているからといって,あの笑い声が何度も何度も,ライブで聞こえてきました。それがアメリカなのですね。

 あとは,各パネリストが最初のショートスピーチをしている最中に,それが終わるのを待ちきれずに,聴衆(といっても,相当社会的ポジションの高い人たちなのですが)が反論してしまうその姿が印象的でした(いくら西海岸とはいえ,フランクに過ぎます。)。

 まあ,アメリカでも,「あちら側」と「こちら側」の対立は根深くて,「Revision」なんて言っても,制定法での「Revision」は難しそうだなあとは思いました(パネリストの一人は5年以内に何とかなると言っていましたが。)。

Posted by 小倉秀夫 at 06:14 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/04/2009

出版差止め請求における被告適格

 弁護士会の図書館で、半田正夫=松田政行編「著作権法コンメンタール」をパラパラと見てきました。3分冊だし、1冊1万円弱だし、執筆者は大御所が多いし、ということで青林書院の注解特許法のような網羅的なものを想像していたのですが、実際には判例や学説の紹介、論点の提示などが万事控えめで、我妻=有泉編民法コンメンタールのようだなあという感想を持ちました。

 で、仕方がないので、著作権等の侵害を理由とする出版等差止請求事件について、当該書籍の著者を、出版社とともに、または単独で被告とする請求が認容された例をまとめてみました。著者自体は、印刷機を動かすわけでもないし、在庫を抱えているわけでもないので、出版差止め請求に関しては、その被告適格が一応問題となりうるわけです。

 著者のみを相手方とする複製及び配布の差止め請求が認容されたものとして、最判平成13年10月25日判タ1077号174頁があります。

 著者と出版社に対する印刷及び頒布の差止めを命じたものとしては、東京地判平成14年4月15日判タ1098号213頁,東京地判平成16年5月31日判タ1175号265頁があります。その亜種として、雑誌の発行人と出版社に対する複製・頒布等の差止めを命じたものとしては、東京地判平成10年10月29日判タ988頁271号があります。

 出版社に対しては発行の差止めを命じ,著者に対しては出版の許諾及び自らによる出版の差止めを命じたものとしては、東京地判平成10年11月27日判タ992号232頁があります。

 このように、裁判所は、概ね被疑侵害著作物の著者を被告とする出版差止請求を認めています。依拠の有無を含め、著者を当事者とした方が審理は充実することが予想されますし、著者との間でその書籍が著作権侵害物だということが確定すれば、出版社が更にこれを増刷し又は在庫品を頒布する事態は通常想定しがたいので、出版社を被告とする必要は必ずしもないということなのでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 11:57 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/03/2009

NBL900号

 昨年の11月28日に行われた「特定領域研究『日本法の透明化』プロジェクト主催シンポジウム『ここがヘンだよ日本法』」の結果報告が,NBL900号に掲載されています。

 私は,その第1セッションの「著作権法における『間接侵害』と権利制限」にゲストコメンテーターとして参加しており,そこでの私の発言を要約したものも,NBLに掲載されています。

Posted by 小倉秀夫 at 01:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/27/2009

条文の文言など気にしない裁判官

 裁判官が普通に条文解釈をしてくれればこちらが勝訴できる案件で,よりによって普通に条文解釈をする気のない裁判官にあたるというのは,実に不運というより他ありません(「へえ,どこに係属になっているの?ああ,○○さんのところですか。○○裁判官ではなあ」と研究者たちに同情されるというのも,何だかなあという感じです。)。

 巨大企業や組織の利益なんて,裁判所が条文の文言を無視した解釈をしてまで救済しなくとも,必要とあれば立法府が何とかしてくれます。裁判所まで,お金のある側にすり寄っていったら,お金のない側は何に頼ればいいのでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 02:32 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/26/2009

Best Lawyers

 米国のBest Lawyers社から,日本のIntellectual Property部門のBest Lawyers58人のうちの一人に加えていただいたようです。

 知財弁護士を「あちら側」と「こちら側」に分けたときの「こちら側」でこういうものに選んでいただくのは大変そうな気もするので,とりあえず自信を持っていこうと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 02:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/08/2009

英語と著作権法を勉強したいあなたのために

 きっと大学生は、学部試験が終わって暇な時期に入っていると思います。就職活動で忙しいという人もいるかもしれませんが、就職活動は、移動時間と待ち時間に時間をとられるだけで、正味とられる時間はそれほどでもありません。そのような時期だからこそ、今のうちに、著作権法や英語の勉強をしておきたいという人も多いと思います。

 そんなあなたに朗報です。こちらのサイトに行くと、Kenneth Crews先生による米国著作権法の概略の講義をただで聴くことができます。mp3形式でデータを提供してくれるので、どの音楽プレイヤーでもOKです(DSiはともかく)。

 また、こちらにアクセスすると、Lessig先生の講演やら、You TubeのZahavah LevineさんやCBSのAlison Waukさん等のパネルディスカッションやらをただで聞くことができます。

 私が学生だったときには考えられなかったような、勉強したい人には天国のような時代ですね。

Posted by 小倉秀夫 at 05:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/01/2009

Avec Tout Mon Amour

 Melissa Mのアルバム「Avec Tout Mon Amour」がiTunes Storeに上がっていた(→Melissa M - Avec tout mon amour)ので、アルバムごとダウンロードしました。

 「Cette Fois」等のダンサブルなナンバーも良いですし、

 「Benthi」のようなアラブっぽいナンバーも素敵です(彼女自身、アルジェリア系フランス人なので。)Benthi

Posted by 小倉秀夫 at 01:46 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/30/2009

網羅的な関係者名簿への条理上の掲載義務

 「○○名鑑」とか「○○関係者名簿」等という名称で、ある職業なり地位なりに就いている人について網羅的に、その氏名、連絡先、経歴等を掲載している書籍って結構ありますね。弁護士だと、法律新聞社が発行している「全国弁護士大観」がこれにあたります。

 ところで、ある程度定評のあるこの種の名鑑において、特定の人物に関する情報を恣意的に掲載しなかった場合、それは不法行為にあたるのでしょうか。

 現実問題としていえば、その種の名鑑に載っていないと、その道のプロだと名乗ってもモグリだと思われる危険もありますし、また、その人の過去の実績からその人に仕事を依頼しようと思って名鑑を見たらその人に関する情報が載っていなかったということになると、てっきり引退ないし廃業したものと思いこんでしまう可能性も十分にあります。ミシュランのレストランガイドのように掲載するかしないかは編集者側が恣意的に決定することを最初から謳ってあるものならば単に編集者のお眼鏡に適わなかったのだろうで済みますが、一定の条件に見合う人々を網羅的に取り上げているかの如き外観のある「名鑑」ものの場合、そこにその情報が掲載されていないということ自体が、社会的に相当な意味を持つことになります。

 そういう意味では、網羅性のある名鑑を発行する出版社は、そのような名鑑を発行するという先行行為に基づき、一定の条件に合致するプロフェッションについての所定の情報を当該名鑑に掲載させる条理上の義務を有しているのではないかと思ったりします。


 小林伸一郎さんの写真を雑誌の巻頭カラーにもってくるなど小林さんとのつながりの深い日本カメラ社が発行する「写真年鑑」の「写真関係者名簿」に関して、2008年度版から、丸田祥三さんに関する情報が掲載されていなかったりするのですが、2009年度版からはそういうことがなくなると良いなあ、と思う今日この頃です。

Posted by 小倉秀夫 at 12:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/29/2009

ロクラクⅡ事件

 ロクラクⅡ事件で、テレビ局が知財高裁で逆転敗訴したそうです。

 この判決の解説は時間があるときにおいおいやりたいと思いますが、属人的な話をすると、いわゆる選撮見録事件でクロムサイズ側代理人として苦汁を飲んだ弁護士のうち、私が「まねきTV」事件で、岡邦俊弁護士らが「ロクラクⅡ」事件で、テレビ局に一矢報いたということになるのですね。

Posted by 小倉秀夫 at 09:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/26/2009

Winny事件第1審判決についての評釈

Winny事件について控訴審がようやく動き出したようですので,第1審判決に関して,ジュリストに掲載していただいた文章の,校正前原稿をアップロードいたします。


 匿名性が高度に保障されることがその特徴の一つとされていたP2Pファイル共有ソフトの公開と著作権侵害罪の幇助犯の成否

一 初めに

 近時飛躍的な発達を見せている情報通信技術の多くは、これを利用して送受信される情報の内容及び適法性の有無にかかわらず、所定の効果を発揮する。そして、多くの場合、一旦その技術を公開した後は、これが違法な情報流通にしばしば利用されるようになったとしても、当該技術の開発者ないし公開者には、違法な利用を事前に阻止する現実的な手だてはない。

 このような情報通信技術の特徴は、刑罰法規を適用することによって違法ではない情報流通のために利用され得る技術の公開を阻碍するべきではないという考えとも結びつく反面、一度公開されると取り返しのつかない危険な技術の公開を刑罰法規によって事前に規制すべきだという考え方とも結びつくものである。

 「Winny」という情報発信者の匿名性が高度に保障されることをその特徴の一つとするP2Pファイル共有ソフトの開発・公開者が、著作権侵害罪の幇助犯として逮捕され、起訴された事件(以下、「Winny事件」という。)は、法曹関係者のみならず、ソフトウェア技術者等の間でも大きな反響を呼んだ1が、まさに、上記相反する考え方をどのように調整するのかが問われた事件であるということである。

 本稿では、上記事件に関する京都地裁判決2を題材として、上記点について検討を加えることとする。

二 Winny事件の概要

 WinMX3というP2Pファイル共有ソフトを利用してパッケージソフトをアップロードしていた大学生等が京都府警に逮捕された直後、Xは、「2ちゃんねる」という匿名電子掲示板4の「ダウンロード板」に、「暇なんでfreenet5みたいだけど2chネラー向きのファイル共有ソフトつーのを作ってみるわ。もちろんWindowsネイティブな。少しまちなー」とのコメントを匿名で投稿し、程なくして、「Winny」という名称6の新たなP2Pファイル共有ソフトを開発し、自己の開設した匿名ウェブサイト「Winny Web Site」にて公開した7

 「Winny」のP2Pファイル共有機能には、特定の電子ファイルを意図的に「Winny」ネットワークに置いた者のIPアドレスを隠蔽する「キャッシュ」8機能が組み込まれていたことから、誰が特定の電子ファイルをアップロードしたのかを隠蔽してくれるP2Pファイル共有ソフトとして、日本国内のP2Pファイル共有ソフトの利用者の間で瞬く間に普及していった。「Winny」自体は、電子ファイルの形式、性質、違法性の有無等を問わず中立的にP2P間でファイルを送受信する機能を有していたが、実際に「Winny」を利用してアップロードされている電子ファイルの大部分は、著作権者の許諾なくしてアップロードされていると思しきものであった9

 Xは、その後も「Winny」の改良を重ね、そのたびごとに、改良版を「Winny Web  Site」にて公開した。その後、Xは、P2Pファイル共有機能を主たる機能としたバージョン(以下「Winny1」という。)はほぼ完成したとしてその開発を一旦終了し、大規模匿名電子掲示板機能を主たる機能とするソフトウェア(これを「Winny2」という。)の開発に移行し(但し、「Winny2」にも、「Winny1」と互換性はないが、ほぼ同様の特徴を有するP2Pファイル共有機能が組み込まれていた。)、これをXが開設する匿名ウェブサイト「Winny2 Web Site」にて公開した。Xは、「Winny2」についても頻繁に改良を重ね、そのたびごとに改良版を「Winny2 Web Site」にて公開したが、著作権侵害目的で用いられることを抑制するような改良は行わなかった。

 その後、「Winny2 Web Site」からWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」をダウンロードして、自己の使用するパーソナルコンピュータにインストールし、「スーパーマリオアドバンス」ほか25本のゲームソフトの各情報が記録されているハードディスクと接続したパーソナルコンピュータを用いて、インターネットに接続された状態の下、下記各情報が特定のフォルダに存在しアップロード可能な状態にあるWinnyを起動させ、同コンピュータにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に上記各情報を自動公衆送信し得るようにし、上記各著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害したY等が著作権法違反の疑いで逮捕・起訴され、有罪となった10。さらに、「Winny」を開発しその匿名ウェブサイトにて公開したXもまた、上記著作権法違反の幇助犯として逮捕され、起訴されるに至った。

 これについて、京都地裁は、Yが著作物の公衆送信権を侵害して著作権法違反の犯行を行った際、「これに先立ち、Winnyが不特定多数者によって著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害する情報の送受信に広く利用されている状況にあることを認識しながら、その状況を認容し、あえてWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」を被告人方から前記「Winny2 Web  Site」と称するホームページ上に公開して不特定多数者が入手できる状態にした上、Y方において、同人にこれをダウンロードさせて提供し、もって、Yの前記犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである。」として、Xを罰金150万円の刑に処した。

三 幇助の行為

 刑法第62条1項の従犯(幇助犯)とは、「それ自体犯罪の実行でない行為によって、正犯の行為を助けその実現を容易ならしめたもの」11をいう。幇助犯が成立するためには、幇助の意思と幇助の行為が必要とされる。

 幇助行為は、実行行為に用いる道具等の提供等の有形的・物質的なものと、激励・助言を与える等の無形的・精神的なものとに大別される。後者はさらに「技術的な助言」と「意思決定の強化(心理的幇助)」に分けられる12。一般に、実行行為ないしその行為者の発覚を困難とする行為は、そのことを正犯が認識している場合には、正犯の犯罪意思を維持・強化・喚起することに繋がるので、心理的幇助にあたると解されている13  。

 情報通信技術は、違法な情報の送受信を物理的に容易にするのが通常であるが、情報発信者の匿名性を高めることにより心理的に幇助するものも少なくない。本判決においても、「Xが開発、公開したWinny2がYの実行行為における手段を提供して有形的に有形的に容易ならしめたほか、Winnyの機能として匿名性があることで精神的にも容易ならしめた」として、物理的幇助と心理的幇助の2つの側面から幇助行為を認めている。

 もっとも、本判決における補足説明によれば、「Winny」において実際に「中継」が発生するのは4%程度と例外的であり、警察官がダウンロードした際の電子ファイルの送信元のIPアドレスの割当てを受けていたYが著作権法違反の罪(公衆送信権侵害)の正犯として認定されている14のであって、「Winny」の利用者が期待しているほどの「匿名性」は得られていない15。このような場合にも、「実行行為ないしその行為者の発覚を困難」としたとして、心理的幇助を認めることができるのかということは問題となり得る。客観的にはどうであれ、正犯はその匿名性保障機能を信じて「Winny」を利用することでその犯罪意思が実際に強化された場合には心理的幇助の成立を認めることができようが、「Winny」の匿名性保障機能を正しく理解しつつ「Winny」ネットワークのもつ高い国内シェアに着目して16正犯が「Winny」を用いていた場合には心理的幇助まで認めるのは理論的には困難ではなかろうか17

 Xは不特定の者に対して「Winny」をダウンロードさせていたことから、「Winny」をダウンロードさせたことが幇助行為であるならば、それは「不特定人に対する幇助」ということになる。通説が被教唆者は特定の者でなければならないと解している18こととの関係で、このような「不特定人に対する幇助」が可罰性を有するのかという点も問題となる。① 教唆犯の場合「人を教唆して犯罪を実行させた者」(刑法61条1項)という文言になっているのに対し幇助犯の場合「正犯を幇助した者」(同62条1項)という文言になっていること、② 不特定人に対する教唆の場合「扇動」ないし「あおり」としてこれを処罰する場合が特別法により制限列挙されているのに対し不特定人に対する幇助についてはそのような規定は特にないこと、③教唆者を教唆する行為は教唆犯として処罰される(刑61条2項)が従犯の幇助を従犯(幇助犯)として処罰する旨の規定はないため間接従犯を処罰するためには不特定人に対する幇助も幇助犯として処罰するという構成を取らざるを得ないことなどから、不特定人に対する幇助も刑法62条1項を適用する見解が有力である19

 正犯が犯罪行為を実行し犯罪結果を実現するにあたっては、日常的な行為によって提供されている様々な物やサービスがこれに寄与するのが通常である。このような物やサービスを提供した者は、故意・過失等の主観的要件を具備する限り、その提供する物やサービスにより促進された犯罪について幇助犯としての刑事責任を常に負うとするのは、処罰範囲が広すぎるとして、その可罰性を疑問視する見解がある20

四 幇助の意思

 幇助犯が成立するためには、幇助行為が、「幇助の意思」に基づいてなされなければならない。しかし、正犯と意思を通じ合っている必要はない2122

 通常、「幇助の意思」は「幇助の故意」と同視されるが、軽油引取税を納入する意思がない販売業者から経由を購入した客について、「軽油販売の相手方になることによって、(正犯らの)犯行を実現せしめる役割を果たしたわけであるが、それはあくまで、被告人が自己の利益を追求する目的にもとに取引活動をしたことの結果に過ぎないと見るべきである」として、正犯らの犯行を幇助する意思を認めなかった裁判例もある23

 「幇助の故意」をどう捉えるかは、「故意あり」といえるためにどのような心理状態を要求するのかという論点と、「幇助の故意」の対象をどこに置くのかという論点の組合せで決まる。前者については、歴史的には、大きく分けて、① 結果の発生を意欲している場合のほか、結果が発生しても「かまわない」という消極的認容があれば「故意」を認めてよいとする認容説と、② 結果発生のある程度高い可能性(蓋然性)を認識しているか否かで「故意」の有無を判別する蓋然性説とが対立している。後者については「故意」の対象を、ⓐ 正犯の実行行為の遂行を促進することについてまであれば足りるとする見解、ⓑ さらに構成要件的結果が発生することについてまで必要とする見解が従前より対立していたが、最近はⓒ さらに自己の行為が構成要件的結果の発生に対し幇助犯としての因果的寄与をすることについてまで要するとする見解も有力である24

 また、どこかに構成要件的結果が発生するであろうことは認識等していたが、どこにどれだけ発生するかまでは具体的に認識等していなかった場合(概括的故意)については故意責任を認めるのが通説であるが、誰かが正犯として実行行為を行うであろうことは認識等していたが、誰と誰がどの程度実行行為を行うかまでは認識等していなかった場合に、上記古典的な概括的故意論とパラレルに考えて、幇助の故意を認めてもよいのかという問題もあり得る。

 本判決は、「Winnyが不特定多数者によって著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害する情報の送受信に広く利用されている状況にあることを認識しながら、その状況を認容し」たことをもって「幇助の故意」ありとしている。後述するように、本判決は、「Winnyそれ自体は価値中立的な技術である」との前提に立って、「価値中立的な技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解すべきである。」と判示していることから、「幇助の故意」一般について、構成要件的結果発生の蓋然性の認識まで要求しているかは明らかではないが、どの正犯者による実行行為を幇助するのかについての具体的な認識までは要求していないことは明らかである。

五 価値中立性と幇助

 既に述べたとおり、情報通信技術の多くは、これを利用して送受信される情報の内容及び適法性の有無にかかわらず、所定の効果を発揮する。「Winny」というP2Pファイル共有ソフトもまた、それ自体は、電子ファイルの形式、性質、内容等を特に問題にすることなく、利用者からの指示に応じてこれをP2P間で送受信する機能を有しており、その意味では価値中立的である。また、実際になされる電子ファイルの送受信の内容次第では、有意義なものともなりうる。このような価値中立的なソフトウェアが、犯罪実行行為の手段として利用された場合に、その提供者が幇助犯としての刑事責任を負うのかということがここでは問題となる。本判決においても、「もっとも、WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり……それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとして様々な分野に応用可能で有意義なものであって、被告人がいかなる目的の下に開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でないことは弁護人らの主張するとおりである」と判示されている。

 「中立的行為による幇助」の問題は、従前ドイツを中心に議論がなされ、我が国でも近時これを受けた議論がなされている25

 「法益侵害を惹起する行為であっても、行為それ自体が社会的相当性の範囲内にある場合には、構成要件該当性または違法性を欠き、不可罰である」とする社会的相当性説を幇助の処罰範囲の議論に組み入れる考え方がある。関与行為が日常的行為である場合には不可罰とすべきとする見解や、プログラムの開発・頒布行為の有用性を強調してこれを幇助行為として処罰すべきではないとする見解26も、この社会的相当性論の一バリエーションであるように思われる。これに対しては、「社会的相当性という標語の下に、厳密な理論的説明がなされずに、恣意的に結論が導かれるおそれがある」27等の批判がなされている。

 また、利益考量型の「許された危険」論を幇助の処罰範囲の議論に組み入れる考え方がある。例えば、「問題となっている犯罪行為の重大性と、潜在的共犯者の行動の自由の強度の両方を媒介変数として考慮すべき」28とする考え方等がこれにあたる。これに対してもまた、「こうした一般論は不明確であり、そこから自分の好きな結論を恣意的に導くことができてしまう」29等の批判がなされている。

 これに対し、因果的共犯論の立場から、関与行為が正犯行為の等が具体的結果発生の危険を高めていた場合に処罰範囲を限定する考え方がある。但し、この見解も、関与行為がなかった場合にその行為と同様の効果のある行為(代替的行為)を第三者又は正犯自身が行っていた可能性をどの程度斟酌するかによって恣意的に結論を導きうるようにも思われる。例えば、島田・前掲88頁は、高度の蓋然性が見込まれ、かつ正犯者又は第三者による代替的行為それ自体が犯罪でない場合に限り、その代替的行為によって、危険性の観点から見て同様の効果が生じていたかどうかを検討することを提唱する。しかし、例えばこれを本件に即して考えたときに、XがYに対して「Winny2 Web Site」からWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」のダウンロードをさせなかったとしても、Yは、① WinMX 等の他のP2Pファイル共有ソフトを用いて公衆送信権侵害行為を行ったであろう可能性30、② 「Winny」の従来バージョンを用いて31公衆送信権侵害行為を行ったであろう可能性、③ 「Winny」の従来バージョンや「WinMX」等のネットワークを利用して「Winny 2.0 β6.47」を入手した上でこれを用いて公衆送信権侵害行為を行った可能性がある32が、では、これらの代替的行為の蓋然性をどのように見積もるか、そしてそれを「高度」と評価するかどうかは、一意的に決まるものではない。

 本判決は、「WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり、それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとして様々な分野に応用可能で有意義なものであって、Xがいかなる目的のもとに開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大は妥当でない」として中立的行為による幇助については幇助犯の成立範囲を限定しなければならないとする弁護側の問題提起を容れた上で、「価値中立的な技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解すべき」と判示している。その上で裁判所は、XがWinnyを提供する際の主観的態様として、Winnyによって著作権侵害がインターネット上にまん延すること自体を積極的に企図したとまでは認められないが、著作権を侵害する態様での利用が広がることで既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることも期待していた旨を認定した33

 本判決は、幇助の因果性を重視して幇助の成立範囲を制限する近時有力説に立たないことは明らかであるが、では、いかなる理論的な枠組みで上記3要件を導いたのかは全く明らかではない。但し、「現実の利用状況」や「提供する際の主観的態様」を重視している点や違法性の問題としている点からすると、価値中立的な技術の公衆への提供行為に関しては、当該技術を公衆に提供する際の意図等を含めた利益考量論をベースとした「許された危険」論を採用していると見る余地はある。

 当該技術の社会における現実の利用状況がどのようなものであった場合にその技術を提供し続ける行為が幇助としての違法性を有することになるのか34が具体的に明らかにされていれば、新規技術の開発・提供者が不意に刑事罰を科される危険を回避することは可能とはなろうが、本判決は、「提供する際の主観的態様」がいかなるものである場合に提供行為が幇助としての違法性を帯びまたはこれを欠くことになるのかという点を含めて何ら具体的に明らかにされていないため35、新規技術の開発・提供行為に対する萎縮効果を一定程度生じさせてしまっていることは否定できないように思われる36

>六 最後に

 情報通信技術において違法な情報の送受信行為を物理的に幇助してしまうことを回避するのは容易ではなく、結果的に違法な情報の送受信行為に利用されたらその技術の提供を中止しなければならないとするのは、確かに新たな情報通信技術の開発・公開に対する萎縮効果が大きい。しかし、違法な情報の送受信を防止ないし遮断する機能がない情報通信技術において、さらに発信者の匿名性を高度に保障するとなると、違法行為の蔓延を抑止する手段を国家・社会から奪うことになりかねないことから、特段の必要性が認められない限り、そのような技術の開発・公開を刑罰をもって抑止することがあながち不当とも言い難いように思われる。Winny事件についていえば、ファイルをWinnyネットワークに流した人のIPアドレスを隠蔽しようとした目的37並びに大規模BBSを目指したWinny2にファイル共有機能を残した目的等を弁護人らが説得的に主張・立証できていなかったことから、「Winny」の提供行為を刑事的に処罰すべきではないとの価値判断を裁判官になさしめるに至らなかったように思われる。

 Winny事件は、弁護側、検察側双方から控訴がなされたとのことであり、控訴審では、新技術の開発・提供者の指針となるような判決が下されることを希望する次第である。

 

  1   ソフトウェア技術者を中心に「金子勇氏を支援する会」が結成され、平成14年5月28日の段階で約1500万円の支援金が集まった。  

 

  2   京都地判平成18年12月13日判タ1229号105頁。なお、以下、「本判決」ということがある。  

 

  3 Frontcode   Technologies社が開発した、Napster互換のプロトコルを利用した中央サーバ型のファイル交換機能と、独自プロトコルを利用したサーバに頼らないピュアP2P型ネットワーク機能の両方を併せ持つP2Pファイル共有ソフトであり(Wikipedia   日本版による)、2バイト文字が使用可能であったことから、日本のネットワーカーの間で広く利用されていた。  

 

  4   http://www.2ch.net  

 

  5   Freenetとは、Ian Clarke の論文 "A Distributed Decentralised Information Storage   and Retrieval System" (分散自立型情報の保管と検索システム)に基づき、"The Free Network   Project"で開発しているソフトウェアであり、完全な分散処理と暗号化により、誰が誰に対しどんな内容の情報を送受信しているのかを外部の者(警察との捜査機関を含む。)が傍受できないようにすることを最大の目的とするものである(http://freenetproject.org/whatis.htmlを参照。)。  

 

  6   「Winny」との名称は、「WinMX」の「MX」の部分を、アルファベット一文字分ずつずらした(M→n、X→y)ものといわれている。  

 

  7    Xは、趣味で開発したソフトウェアを公開するための実名を用いたウェブサイトを開設していた(「Kaneko's Software   Page」<http://homepage1.nifty.com/ kaneko/>)が、そこには「Winny」をアップロードしなかった。  

 

  8   「Winny」の場合、ファイルの位置情報等が要約された「キー」が一定の割合で書き換えられ、書き換えられたキーをもとにダウンロードがなされると、もともと当該ファイルのあったパソコンとは別のパソコンにファイルが複製され、この複製されたファイルがさらにダウンロードされるという「中継機能」を有している。従って、「Winny」ネットワーク上で共有されている著作物等の著作権者や捜査機関等がおとり捜査的に当該著作物等の複製物である電子ファイルの送信を受けてその送信者のコンピュータに割り当てられたIPアドレスを知得したとしても、当該コンピュータは単に当該電子ファイルを「中継」しただけかも知れず、誰が当該電子ファイルを「Winny」ネットワーク上に置いたのかは定かにはわからない。このようにして情報発信主体の匿名性を確保しようとするのが「Winny」の特徴の一つである。Xはこの中継機能を「キャッシュ」機能と呼ぶが(金子勇「Winnyの技術」43頁)、本来の「キャッシュ」とは性質・用法が異なることから、これを「キャッシュ」と呼ぶことに批判的な見解もある。  

 

  9    京都地裁が引用しているACCS   社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会による「2005年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要」<http://www2.accsjp.or.jp/   news/pdf/p2psurvey2005.pdf>のほか、田中辰雄「著作権の最適保護水準を求めてⅡ:ファイル交換の全数調査 ──違法にも合法にも使える機器・サービスの是非──」<http://www.moba-ken.jp/kennkyuu/2005/final/final_tanaka.pdf>。なお、後者は、一部で誤った理解をされているが、「市販製品をそのままコピーした代替品の割合はほぼ4割であり、6割は市販製品のごく一部か出所不明の画像など代替品にはなりにくいものであった。ファイ交換で交換されるファイルの9割が著作権法的に違法であるというのは正しいが、被害の程度まで見ると実質的被害を与えうるのは4割にとどまる。」としているのであって、ファイル交換で交換されるファイルの約半数が適法なものであるといっているわけではない。  

 

  10   京都地判平成16年11月30日  

 

  11   福田平「注釈刑法(2)-Ⅱ」802頁  

 

  12   堀内=安廣「大コンメンタール刑法[第2版]第5巻」549頁  

 

  13 大阪地判平成12年6月30日判タ1098号228頁  

 

  14   日本の刑事裁判では「99%間違いない」というほどの心証は要求されておらず、「96%」の確率があるのであれば通常有罪認定される。  

 

  15   確率4%の「転送」がなされた場合には「転送」先に罪をなすりつけることができるものの、「転送」がなされなかった場合には、「WinMX」等の既存のP2Pファイル共有ソフトを利用した場合と同様に、そのIPアドレスを動的に割り当てたアクセスプロバイダが捜査事項照会や捜索差押令状等に応じてしまえば、その匿名性は破られることになる。  

 

  16   P2Pファイル共有の場合、ネットワーク参加者が多ければ多いほどファイル転送が効率的となる。  

 

  17   尤も、情報発信者の戸籍上の氏名及び住民票上の住所を登録することなくWinnyネットワークを利用できるという点をもって「匿名性が十分に保障されている」と解するのであれば、この限りではない。  

 

  18   福田・前掲781頁。但し、佐久間「Winny事件にみる著作権侵害と幇助罪」ビジネス法務2004年9月号68頁は「教唆犯においても、電子掲示板で何者かに犯罪の実行を呼びかける場合など、匿名の相手方に向けた犯罪の『そそのかし』が、単なる扇動の程度を越えたときには、教唆犯も成立しうると考える」とする。  

 

  19   民法上の不法行為に関してであるが、最判平成13年2月13日民集55巻1号87頁。なお、本判決は、「刑法62条は、特定の相手方に対して行うことが必要であり、不特定多数の者に対する技術の提供は刑法62条の幇助犯にあたら」ないという弁護人の主張について、「刑法62条に、弁護人らが主張するような制限が一般的に存するとは解されない」と判示している。  

 

  20   堀内=安廣・前掲554頁。但し、その理論構成までは明らかにされていない。  

 

  21   例えば、共同意思主体説を採った場合は、正犯と従犯とで意思を通じ合っていることが必要となろう。但し、共同意思主体説自体は広い支持を得られてはいない。  

 

  22   大審判大正14年1月22日刑集3輯21頁  

 

  23   熊本地判平成6年3月15日判タ963号281頁  

 

  24   例えば、西田典之「刑法総論」322頁  

 

  25   松本光正「中立的行為による幇助」姫路法学27巻27=28号204頁以下、同31=32号238頁以下、島田聡一郎「広義の共犯の一般的成立要件──いわゆる『中立的幇助』に関する近時の議論を手がかりとして──」立教法学57号76頁以下、山中敬一「中立的行為による幇助の可罰性」關西大學法學論集56巻1号34頁以下  

 

  26   結論を留保しているが、小川憲久「技術的中立性とP2Pソフト製作者の責任」L&T25号146頁  

 

  27   島田・前掲62頁  

 

  28   島田・前掲70頁が紹介するヘーフェンダールの見解。  

 

  29   島田・前掲71頁  

 

  30   もっとも、Winnyの匿名化機能の心理的因果性に着目する場合は、WinMX等Winny以前のP2Pファイル共有ソフトの提供に、Winnyの提供と同様の効果を認めることができるかは疑問である。  

 

  31   プログラムの通常のバージョン番号の付け方からすると、0.01の位は些末的なバグ等の修正がなされた場合にカウントを進めることとされているから、「Winny  2.0 β6.47」と「Winny 2.0 β6.4x」との間に機能的な差異は殆どなかったと予想される。  

 

  32   ピュア型P2Pファイル共有ソフトの先駆けである「Gnutella」がその開発元である「Nullsoft」のウェブサイトにアップロードされていたのはわずか一日であるが、「Gnutella」はそのときにこれをダウンロードできた人々を起点として転々流通し広く流布されるに至った。また、「Winny」にしても、Xによるウェブサイト閉鎖後もユーザー間で転々と流通している。  

 

  33   ここでいう、既存のビジネスモデルとはパッケージベースのコンテンツビジネスモデル、すなわち、大量の複製物を製造・販売することで投下資本を回収するビジネスモデルをいい、これとは異なるビジネスモデルとは、コピーフリーでも成り立つビジネスモデルをいう。  

 

  34   例えば、違法行為に利用される割合がどの程度以上となったら違法性を有するのか(いわゆるベータマックス事件の米国連邦最高裁判決のように「実質的な非侵害用途」があれば適法となるのか、過半数が非侵害用途であっても違法性を有するとされる例があり得るのか等。  

 

  35   3要件の理論的な位置づけが明らかにされていないため、実務サイドとしては予測のしようもない。  

 

  36   提供開始時の予想とは異なり実際にはそのほとんどが違法行為に活用された場合にその技術の継続的提供を中止しなければ幇助犯としての違法性を帯びるということになれば投下資本回収のめどがつかなくなるという意味で萎縮効果が残るとする見解もあり得るところではあるが、但し、新規技術を公衆に提供した後にその多くが違法行為に活用されていることを知った場合にはその技術の継続提供を中止したり違法行為に活用されにくくするような改善措置を講ずるなどの条理上の作為義務が生ずるのであって、これに違反して漫然と当該技術を継続的に提供し続けた場合には、不作為による幇助が成立すると解される余地もあるので、その意味での萎縮効果は避けがたいであろう。  

 

  37   これに対し、情報発信者の匿名性の保障を重視した「Freenet」の開発者であるIan Clarke氏は、政治的な表現の自由が十分に保障されていない国での政治的表現の自由を守るという目的を高らかに謳い上げる。  


Posted by 小倉秀夫 at 12:23 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/22/2009

指導者不足

今年のオリコンのシングル年間トップ10のうち8曲について,テレビ局の子会社が単独又は共同で音楽出版社となっています。テレビ番組の主題歌等として用いることによってCD・音楽配信等の売上げが伸びた分の分け前を要求して当然だとテレビ局が考えていて,それ故にタイアップの条件としてタイアップ楽曲に係る音楽出版権の全部又は一部の譲渡を求めてくるので,そういう現象が発生します。

 ただ,テレビ放送,とりわけ地上波テレビ放送を流せる地位というのは国の免許制度により特別に認められたものですから,国によって特別に認められた地位による優越性を利用して,そのような本来的でない収入を得ようとするのは,いい加減にやめるべきではないかという気がします。

 作詞家や作曲家の協会だって,私的録音録画補償金の対象拡大なんてけちなことに血道を上げている暇があったら,テレビ局又はその子会社,関連会社が,その放送する番組で使用する楽曲の音楽出版権を単独又は共同して保有することを禁止する旨の放送法改正に向けてロビー活動を行ったり,タイアップに際して音楽出版権の全部又は一部の譲渡を求めてくることが優越的地位の濫用にあたるとして公正取引委員会に申し立てるなりした方がよいのではないかと思ったりします。デジタル媒体への私的複製がなされることによる正規商品の販売機会の喪失割合より,音楽出版権の一部をテレビ局に召し上げられることによる印税の喪失割合の方が遥かに大きいのではないかと思いますし。

 作詞家・作曲家にしても,レコード会社にしても,業界団体を作っているわけですが,業界団体を作って行動する最大のメリットは,そのバーゲイニングパワーを用いて不当な契約条件を押しつけてくる「社会的強者」に共同してあたれることにあるのであって,「RESPECT OUR MUSIC」とか言ってエンドユーザー等に居丈高に譲歩を迫ることにあるわけではないのです。そういう意味では,作詞家・作曲家の団体にせよ,レコード会社の団体にせよ,有能な指導者を欠いているような気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 06:19 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (0)

01/11/2009

不正競争防止法が保護するアクセス制御と、保護しないアクセス制御

 不正競争防止法第2条第1項第10号ないし11号の保護を受ける「技術的制限手段」は、同条5項により、「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるもの」と定義されています。

 この条項を素直に解釈すると、「技術的制限手段」は、信号方式のものについていえば、

  1. 影像等の視聴等を制限する手段であること
  2. 並びに、
  3.  視聴等が制限される影像等と、視聴等機器に特定の反応をさせて当該影像等の視聴等を制限手段とが、同一の記録媒体に記録され又は同梱されて送信されること
が要求されているように読めます。実際、不正競争防止法の平成11年改正の目的はコンテンツの保護であって、その記録媒体に制御信号を敢えて組み込まなかったコンテンツについてのアクセス制御まで法的に保護する必要はありませんし、不正競争防止法の平成11年改正の目的はプラットフォーマーの保護ではありませんから、制御信号の使用をプラットフォーマーから許可されなかったコンテンツの当該プラットフォーム上でのアクセス制御を法的に保護することは、多様なコンテンツの流通を促進しようという、平成11年改正の根本趣旨に却って反するといえます。

 すると、「正規商品のROMに記録されている特定のデータが視聴等機器に接続された記録媒体に記録されていない場合には、当該記録媒体に記録された影像等の視聴等ができないこととする」という類のアクセス制御は、不正競争防止法による保護を受ける「技術的制限手段」にはあたらないということになろうかと思います。

 したがって、例えば、株式会社セガ・エンタープライゼスの出願に係る特開平9-50373の請求項4を特定の機種のゲーム機に関して満たす記録媒体以外の記録媒体が当該機種のゲーム機にセットされても当該記録媒体に記録されたゲームソフト(自主制作ソフトを含む)が当該ゲーム機上で実行できないようにするタイプのアクセス制御方式は、不正競争防止法上の「技術的制限手段」にあたらないので、このアクセス制御方式を回避して当該機機上で「正規商品」以外の記録媒体に記録されているソフトウェアを実行できるような装置等を製造し又は販売等したとしても、不正競争防止法違反とはならないと考えるのが、法律の文言から見ても、平成11年改正の趣旨から見ても、素直だと思います。


【追記】

 某社からクレームが来たので,最終段落を一部書き換えました。

 なお,「株式会社セガ・エンタープライゼスの出願に係る特開平9-50373の請求項4を満たす記録媒体」とは,「CPUを含む装置に装着して使用する情報記憶媒体であって、前記情報記憶媒体は、アプリケーションプログラム及びセキュリティコードを前記装置により読み出し可能に記録しており、前記装置は、比較基準となるセキュリティコードをメモリに予め記録しており、前記情報記憶媒体から読み出したセキュリティコードと前記メモリに記録されたセキュリティコードとを比較してセキュリティチェックを行うように構成されており、前記セキュリティコードとして所定の表示を行うためのプログラムを含むことを特徴とする情報記憶媒体」であって,前記セキュリティコードとして、所定の表示を行うための表示用データおよび前記表示用データを用いて所定の表示を行うプログラムを含むことを特徴とするもののうち,前記表示用データには、所定のロゴを表示するデータ、真正制作者により制作されたものであることを表示するデータあるいは真正権原者からライセンスされたものであることを表示するデータを含むもの」を言います。

Posted by 小倉秀夫 at 11:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/09/2009

「廃墟写真」というジャンルにおける「表現」の構成要素

 私は、知財関係ですと被告側代理人を務めることが多いのですが(ドメイン関係で債務不存在確認請求訴訟を提起する場合はともかくとして)、本日は、原告側代理人として訴状を提出してきました。

 その事案は、いわゆる「廃墟写真」というジャンルのさきがけである丸田祥三さんが個展で展示し又は写真集に収録した写真と同じ被写体、類似する構図の写真を、小林伸一郎さんという職業写真家がその写真集に収録して出版したというものです。

 写真の著作物の場合、「何を、どのような構図で撮るか」ということに写真家の個性並びに商品価値が決定的にあらわれるので、「何を、どのような構図で撮るのか」ということが、単なる「アイディア」を超えて、「表現」の一内容を構成するのではないか、ということが、根本の問題としてあります。これを積極的に認めたものとして、いわゆる「みずみずしい西瓜」事件高裁判決があるわけですが、風景写真の中でも、その光景に「美」を見出すこと自体が個人の(類い希な)美的センスの発露である「廃墟写真」というジャンルにおいては、「何を、どのような構図で撮るのか」ということを「表現」を構成する要素として捉えても良いのではないかと考えたのです。また、例えば、先行する廃墟写真集と同じ被写体、同様の構図の廃墟写真を別の写真家に撮らせて新たな廃墟写真集を製作して販売する場合、被写体たる廃墟を探すまでに費やした時間とコストを節約できる分後行作品の方が安く上がる可能性が高いわけですが、それって著作権法により制限しようとする「フリーライド」に他ならないわけで、フリーライドにより資本投下を節約した後行作品の市場への進出を抑制することにより投下資本を回収する機会を表現創作者に付与するものとしての著作権法が存在する以上、今回問題視している小林さんの行為を制約するために著作権法が活用されるというのは、方向としてはあっているのではないでしょうか。

 まあ、もちろん、この種の案件では近時は訴訟物を著作権一本の絞らずに、一般不法行為も予備的ないし選択的に付けておくのが流行なわけで、この案件でも、職業的写真家が多大な時間とコストを費やして探し当てた廃墟写真の被写体と被写体とする写真を、これと市場にて競合する関係に立つ職業的写真家が撮影して、あたかも自分が独自にその被写体を探し当てたかのような文章等とともにこれを写真集に収録して販売していた場合には、一般不法行為にあたるのではないかとか、そういうことを含めて諸々の主張をしていたりします。

 ということで、タイマーが発動してこのエントリーが自動的にアップロードされる頃に、記者クラブでこの件に関する記者会見を行う予定です。

Posted by 小倉秀夫 at 01:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/25/2008

アジア海賊版文化

 土佐昌樹「アジア海賊版文化──『辺境』から見るアメリカ化の現実」の第2章,第3章は面白かったです。

 軍事独裁が続くビルマ(ミャンマー)では,外国放送局による衛星放送の域外受信と,外国映画の海賊版VCDおよびDVDこそが,市民にグローバルな文化を届ける数少ない手段となっている事実。イギリス植民地時代に作られたイギリス著作権法とほぼ同様のビルマ著作権を可能な限り完全実行せよと西側先進国がビルマ政府に迫ることは,軍事独裁政権による情報統制をさらに強めることになるという現実。このような極端な実例こそが,著作権法が情報統制の為のツールという側面を本来的に有することを私たちに改めて思い起こさせます。

 もちろん,理論的にはビルマ国民が正規商品を購入すれば政府から著作権法違反を理由とする統制を受けずに済むといえなくもありません。しかし,DVD等の正規商品は,その国の,一般大衆の購買力に応じた値付けがなされていないので,そもそもこの国の一般大衆が西側先進国で作られた映画等の正規DVD等を購入するというのは無理がありますし,また,軍事独裁政権なので正規商品を輸入しようとすると厳しい検閲に晒されます。従って,国民がグローバルな情報を知るためには,域外放送の受信と海賊版VCDおよびDVDが事実上不可欠となっているのです。


 日本を含む西側先進国では,さすがに政府が外国からの情報を逐一検閲して排除するということは──わいせつ系をのぞくと──ほぼなくなってはいます。しかし,「コンテンツホールダー」といわれる人々が正規商品による情報の流通を地理的に統制しようとする動きは日に日に強まっています。地上波放送のデジタル化により域外放送の受信が困難となれば,佐賀,徳島は,たちまち「情報鎖国」に陥ります。また,「オンライン配信のみ」のコンテンツが増えると,受信者の滞在国ないしビリングアドレス所在国によりその正規サービスによる受信が拒まれるシステムの下では,「日本在住者は正規には知り得ない情報」がどんどんと増えていくことになります。それは音楽・映像作品にとどまりません。Kindleの普及により,堅い内容の書籍もオンラインで配信される例が実際に米国で増加しています。今後は,そのような形式で配布される論文等については,日本在住者のみ蚊帳の外に置かれるという事態も増えてきそうです。

 「軍事独裁政権による情報統制は悪い情報統制だが,コンテンツホルダーによる情報統制は良い情報統制」と考える人たちは,ダウンロード行為の違法化に賛成するのでしょう。実際,ある研究会で,コンテンツホルダー側の代理人をされる弁護士さんは,どの情報を日本国民に視聴させ,どの情報を視聴させないかを含めて,コンテンツホルダーが決定をするということで何が悪いのだと言っていましたし。しかし,民間企業に情報コントロール権を認めてしまって,本当によいのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 08:46 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/17/2008

テレビ局等のロビー活動の費用の回収方法は?

 ITProの報道によれば,

ネット上に無許諾でアップロードされたコンテンツをユーザーがダウンロードする行為については、違法とする方針を明記。上位組織である著作権分科会の承認を経て、早ければ2009年の通常国会に提出される。

とのことです。

 違法サイトからのダウンロード行為を違法化しても,権利者は実際には権利行使しないから大丈夫だ──これは,ダウンロード行為の違法化が認められた場合権利行使の過程で私たちのパソコンのハードディスク等の中身が一部の著作権者たちに丸ごと把握されてしまうという批判をした場合に,違法化推進論者からなされるほとんど唯一の反論です。パブコメにあたって,違法サイトからのダウンロード行為を違法化した場合権利行使の過程で国民のプライバシーが大きく侵害されることのあることを指摘したわけですが,結局,この点については,一切答えないまま,ダウンロード行為を違法とすることを文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会は決めたわけです。

 しかし,「新たな権利を創設しても権利者はその権利を行使しないはずだからその権利が行使された場合のデメリット等考慮する必要がない」なんて議論がまかり通るのは,著作権法以外の分野ではなかなか見出すことができるものではありません。それに,行使するはずのない権利を創設するために,手間暇かけて金かけてロビー活動を行うって,普通に考えてあり得ないでしょう。

 さらにいえば,テレビ局が証拠保全の申立を行って私たちのパソコンのハードディスクの中身を洗いざらい持って行って,何か面白そうなデータがあったら,適当に報道部門で使わないとの保証は一切ありません。私のような職業であれば,依頼者との守秘義務を果たすためには,弁護士としての仕事の一環として文書を作成するのに用いるパソコンではインターネットに接続できないようにすることが必要になるかもしれません。だって,インターネットに接続しているパソコンは,常に違法サイトからのダウンロード行為に用いられる可能性を否定しがたいので,テレビ局による証拠保全の対象となりうるからです。

 証拠保全の結果,そのテレビ局が権利を有する著作物の複製物が見つからなかったり,見つかっても「情を知って」の要件を満たすとの立証ができなくて,結果,複製権侵害の存在を立証できなかったとしても,マスメディアとしては,特定の人物が使用しているパソコンのハードディスクの中身を丸ごと検証できるというのはとてもおいしい話ということになります。実際,私がテレビ局の人間であれば,スキャンダル等の焦点となっている人物について,「自分たちの放送を違法サイトからダウンロードしている虞がある」として証拠保全の申立をして,その使用しているパソコンに蔵置されているデータを丸ごとコピーして解析し,スキャンダルに結びつくデータが見つかったらこれを報道(ワイドショーを含む)に流すことの魅力に抗しうるだろうかと考えると自信がありません。ダウンローダーから数十万円程度の損害賠償金を受領するより,証拠保全の過程でつかんだスキャンダルネタで報道番組の視聴率を1%上げた方がよくよくテレビ局の利益になるわけですし。

Posted by 小倉秀夫 at 08:53 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/15/2008

まねきTV事件高裁判決(速報)

 まねきTV事件について,本日,知財高裁にて,控訴を棄却する旨の判決が下されました。

Posted by 小倉秀夫 at 02:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/11/2008

12月9日のJASRACシンポ

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が12月9日に開いたシンポジウムの様子がITmediaで取り上げられるや,ネット上では様々な批判を声が上げられているようです。パネリストは個々的には正しいことをいっているようなのですが,それを間違った文脈に結びつけてしまうので,全体としておかしな議論になってしまっているようです。

 まず,モデレータの安念潤司教授の

厳しい状況にあると、人は起死回生の魔法を求めたがる

とのご発言は,正規商品をCCCD形式にしたり,違法にアップロードされた音楽等ファイルの私的使用目的の複製を違法とするようロビー活動したりしている人に向けられた言葉であるならば,まさにその通りといわざるを得ません。

 砂川浩慶准教授の

テレビ番組制作会社では離職率の高さが問題になっているという。仕事を任せられる5年目くらいの中堅社員が少なく、「新しいものを作りだそうという土壌が生み出せていない」

という発言と,菅原常務理事の

タダと言っているコンテンツは実はタダではない。ユーザーは通信料は払っている。従来からものには流通コストが含まれていた。流通コストとコンテンツにかかるコストを整理して認識する必要がある

という発言とを組み合わせれば,コンテンツを作成しているテレビ番組制作会社と,これを放送波等を用いて流通させている放送事業者との利益バランスを見直すことが肝要だという結論を導くことができるのではないかという気がします。「あるある大辞典」のときでも分かったことですが,「テレビ番組制作会社では離職率の高さ」の主たる原因の一つと思われる「テレビ番組制作会社の給与水準の低さ」は,YouTube等の動画投稿サイトやP2P File Sharing等による視聴率の低下云々ということではなく,テレビ番組制作会社が制作したテレビ番組についてスポンサーが支払ったスポンサー料がテレビ局その他に次々とかすめ取られて実際に番組を製作している現場に殆ど降りてこないことに起因しているわけです。

 堀義貴社長の

過去の番組のネット配信には賛成だが「お金を払いたくないと言っている人がいるようであれば産業にならない」と指摘し、過去に作ったコンテンツにも対価が支払われ、十分に仕事が成り立つと分かれば、制作者は将来に向けて作品を作る意欲がわくだろう

についても,だから,テレビ制作会社等が制作したテレビ番組を死蔵させることは許されない,その番組を制作した会社がiTunes Store等でそれをオンライン販売することにより幾ばくかの利益を得たいと希望するのであれば,テレビ局はこれを拒むべきではないという結論に至るのであれば誠にその通りです。

 この点,岸博幸教授は,個々的に見ても正しくないことをいうので,期待を裏切りません。

「ネット法で著作権者の権利制限をするならば、権利制限せざるを得ない公益性がなければならないはず。立法論から言っておかしい

とのことですが,著作物等の文化の所産を全国の津々浦々に流通させてわが国の文化の発展に寄与させるということが著作権法の究極目的である以上,著作権法が却って著作物等の流通を阻害する場合に一定の権利制限を設けてその流通を促進することは,まさに公益性があるというより他ありません。

Posted by 小倉秀夫 at 03:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/02/2008

「海賊」という言葉

 著作物の複製物を違法に作成して市場に流通させる行為を「海賊」行為と表現するのは,やはり違和感はあります。「海賊」という言葉に含まれる,武器等を用いた有形力の行使又はその威嚇という要素が,違法複製物流通行為にはないからです。

 もちろん,「倭寇」に代表される歴史上の「海賊」は,必ずしも武力で他人の商品を奪ってばかりいたわけではなく,「御朱印船」に代表される,商品流通の独占又は寡占を保護する法制度に反して,商品の流通を担っていたのであって,それは,消費者のみならず,生産者の利益にもなっていたという深遠なニュアンスを含めて「海賊」という表現を用いているのだという反論はあり得るのかもしれません。しかし,それはそれで一般の人にはわかりにくすぎます。

 「海賊」というと,「直ちに取り締まらなければならないもの」というイメージが持たれがちですが,「海賊」の職務のうち「私貿易」に関していえば,現代ではむしろ,取り締まられるどころか大いに奨励されるべきものとされています。「マスメディア」という交易ルートが一部の事業者に押さえられ,著作隣接権や,著作権のテレビ局等の流通業者による囲い込み等のもとで著作物たる商品の正規ルートでの流通が阻害されている現状においては,現在の「海賊」たちもまた,「私貿易」の担い手という側面がないわけではありません。

 著作権法の黎明期にロビー活動力が強かったという理由で著作隣接権を確保しているレコード製作者や放送事業者の著作隣接権が将来の条約・法令の改正等により消滅した暁には,現在「海賊」行為と呼ばれている著作物等の私的流通行為のいくつかは,取り締まられるべきどころか,むしろ大いに奨励されるべき行為として位置づけられるかもしれません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:24 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/28/2008

日本法透明化プロジェクトのシンポジウムでの発言の趣旨

 今日のシンポジウムで言いたかったことの前半は概ねこんな感じの内容です(まあ,シンポジウムですから,予定通りに全て語れるわけでもないのですが。)。



 著作権法には表現活動に対する規制立法という側面があります。新たなコンテンツを創作して発表するというのももちろん表現活動ですが,他人が創作したコンテンツを配布するのも表現活動ですし(政治的なビラ配りを考えていただければわかりやすいと思います。),また,表現の自由の1カテゴリーとして「知る権利」を認める通説的な考え方に従えば,他人が創作したコンテンツを「知る」こともまた「表現活動」として憲法第21条による保護の対象となります。それ故,著作権法という表現活動規制立法が表現の自由を不当に制限する違憲なものとならないようにするために,著作権等に一定の制限を加えることは,憲法上の要請であり,国際人権規約B規約上の要請でもあるといえます。

 このことから,立法府においては,表現の自由に対する不当な制限とならないように適切な著作権等の制限規定を設けておくことが求められるとともに,司法府においては,著作権法の諸規定を合憲的に解釈したり,一般条項を活用したりするなどして,表現の自由を不当に制限しないような著作権法の解釈・運用をしていくことが求められます。この,著作権法が表現の自由を不当に制約することを回避するための一般法理を「フェアユース」と呼ぶのであれば,それは現行法の下で特別な立法を要せずして裁判所が援用することは可能な(といいますか,むしろ望ましい)のでしょうし,それを「一般条項」という形で明文化することはさらに望ましいと言うことになろうかと思います。

 さて,著作権法による表現規制は,概ね,表現内容に対する規制と,表現の方法に対する規制とに分かれると思います。多くの場合,既存の著作物等と同じ表現を用いなければ想定した内容を表現できないということではないので,「表現の方法に対する規制」ということになると思いますが,翻案とか,引用とかという領域では,特定の既存著作物に用いられた特定の表現を組み入れること自体が「表現内容」の中核をなす場合がありますので,この場合は,さらに「表現内容に対する規制」という側面が強くなっていくこともあろうかと思います。

 表現方法に関する規制については,憲法学説的には,「立法目的は正当であっても,規制手段について,立法目的を達成するために『より制限的でない他の選びうる手段』を利用することが可能であると判断される場合には,当該規制立法を違憲とする,いわゆるLRAの原則が広く支持されていますが,最高裁判所は,いわゆる猿払事件の大法廷判決以来,「合理的関連性」基準を用いているとされています。

 これによれば,表現行為の時・場所・方法の規制は,① 禁止の目的、② この目的と禁止される表現行為との関連性、③ 表現行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討して,当該表現行為を規制することが「合理的で必要やむをえない限度にとどまる」と認められるときには,憲法上許容されるということになります。では,これを著作権法による表現行為の規制に当てはめてみるとどうなるでしょうか。

 まず,著作権法による表現規制の目的をどう捉えるかですが,古典的なインセンティブ論を言い換えるとすると,著作権法による表現規制の目的は,「著作物の創作・流通に資本を投下しない競業者を排除することによって投下資本回収可能性の維持し,もって資本投下を奨励する」ことにあるということになろうかと思います。以下は,ある特定の行為を禁止することとこの目的との関連性があるのか,あるとすればどの程度の関連性があるのか,そして,その行為を当該行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡が取れているのかということを勘案して,著作権法により当該表現行為を禁止することが「合理的で必要やむをえない限度にとどまる」と認めらるかを検討していくことになります。

 例えば, ある企業の総務部において,テレビのニュース番組等で自社がどのように取り上げられているのかをチェックするために,全てのニュース番組を会社が購入し本社の総務部内に設置されている家庭用ビデオ機器で録画する行為を考えてみましょう。これは,企業内での複製は企業内の少人数かつ閉鎖的領域内で使用する目的でなされたとしても著作権法30条1項の適用を受けないとする多数説に従った場合には,複製権侵害行為ということになります。しかし,このような企業内録画というのは,テレビ局等が提供している正規商品では代替できず,従ってテレビ局等の商品・サービスとは競合関係に立ちません。従って,著作権法によってこのような録画行為を規制することは,規制目的との間に合理的な関係がないので許されないということになろうかと思います。その結論を導く論理としては,著作権法30条1項を,企業内複製であっても権利者の提供する正規商品等と競合しない複製については適用されるように合憲的な解釈を行うか,または,そのような複製は著作物の公正な利用にあたるから複製権侵害とはならないとするか,表現の自由を不当に制限する態様での複製権の行使は権利の濫用に当たると解釈するかは,理論的な枠組みの問題ということになります。

 また,東京キー局の放送を受信してインターネットを介して同時再送信する場合を考えてみましょう。これが,関東広域圏内に限り同時再送信する場合,本来その放送が届くべき人にその放送を届けているだけですから,テレビ局の投下資本回収可能性を何ら損なっていないのであり,仮に再送信事業者に営利目的が認められるなどの理由でこれを規制することがあれば,憲法適合性が問題となっていきます。他方,関東広域圏外へも同時再送信する場合には,① これを禁止することとテレビ局の投下資本回収可能性の維持との間に関連性がどのくらいあるのか,そして,② これを禁止することにより得られる利益(正直よく分からないのですが)と,禁止することにより失われる利益(東京キー局の放送を関東広域圏内居住者と同時に視聴できるということは,情報の地域格差を解消するという利益があります。)との均衡等を勘案して,その憲法適合性を判断するということになります。

 今日の小島先生のレポートでは,「著作権の制限規定は厳格に解釈しなければならない」とのテーゼ自体の妥当性が問われました。しかし,著作権の制限規定を拡張的に解釈することにより著作権法が表現行為を不当に規制することを解釈できるのであれば,それを「権利」の方から見て「合憲的限定解釈」と表現するか否かはともかくとして,むしろ好ましいことであって,何ら憚る必要はないということになりそうな気がします。

 なお,表現の方法に対する制限についてLRAの基準を適用できるとすれば,当該行為を差し止めなくとも行為者に権利者への金銭給付を義務づければ投下資本の回収可能性を維持できると裁判所が判断した場合には,差止請求を棄却して,損害賠償義務のみを課したり(宇奈月温泉事件等を考慮すると現行法下でもできる可能性はありますが。),判決をもって強制許諾を命じてしまうということも出来るのかもしれません。まあ,LRAの基準は我が国の最高裁は採用しないのですから仕方がありません。

Posted by 小倉秀夫 at 09:52 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/19/2008

レコード業界は鎖国を目指すのか

 相変わらず,エイベックスの岸取締役がおかしなことを言っています。

そのとき、日本はどのような戦略でどの部分を強化していくのか。少なくとも現状の政府のバラバラな取り組みのままでは、惨敗は必至である。個人的には、日本としての新たな戦略が必要であり、その遂行の過程では、プラットフォーム・レイヤーも含めた全く新しい形での“ネット鎖国”的な取り組みも必要ではないかと思っている。今のままでは、ネットは米国の価値観を具現化する場にしかならず、独自のクリエイティビティーを強化して付加価値に昇華させることもできないであろう。

 コンテンツ立国を目指し,むしろコンテンツを我が国の「輸出品」にしようというのであれば,そのコンテンツは世界標準のプラットフォームで流通させざるを得ないのであって,そのときに日本国内だけ独自のプラットフォームを構築してしまえば,日本のコンテンツ企業は,複数のプラットフォームに対応させるために余分なコストを支払わされることになります。それって,日本のコンテンツ企業の国際企業を低下させる方向にむしろ繋がるはずです。欧米人が好みそうな「Japan Cool」的なアーティストを抱えていないエイベックスはそれでよいかもしれませんが,それって国是に反するよねって感じはどうしても否めません。

 っていうか,エイベックス傘下のアーティストって,Myspaceさえろくに開設していないではないですか。私がよく聞くヨーロッパ系のアーティストは普通にMyspaceを設けてそこでシングルカットされた曲やアルバム収録等をフル視聴させたり,YouTube等にPVを流してそれをMySpaceからリンク貼ったりして,世界規模で自分たちのコンテンツを売り出そうとしているわけですけど,日本のアーティストでそういうことやろうとしているのって,くるりとかCorneliusとか未だごく少数です。そんなことでどうやって,「独自のクリエイティビティーを強化して付加価値に昇華させる」ことができるのでしょう。外国の優れた作品を日本人が聴けないようにすることで,音楽を聴きたい人は日本人アーティストの作品しか聴けないようにすれば,当面,日本国内の需要だけで食べていけるという算段でしょうか。そのためには,正規には日本国内での流通を許されていない海外アーティストの作品をネットを介して視聴する行為を禁止する必要があり,そのために「ダウンロード違法化」を推し進めようと言うことでしょうか。

 そりゃ,じり貧必至ではないでしょうか。「県境」に守られているローカルテレビ局がいつまで経ってもキー局と互角に戦えるコンテンツを生み出せないでいるのと同様に。

Posted by 小倉秀夫 at 02:16 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

11/17/2008

デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会報告書案に関する意見

「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会報告書案に関する意見募集」について,下記のとおり意見を提出しました。


レコード,放送番組に関する権利の集中は,コンテンツのインターネット上での再利用を促進する上では不十分である。


 「レコードについては、実演家等の権利を集中化させるための特別の法律上の措置はないが、原則として製作段階からその後の利用も含めた契約が行われているため、実演家の権利はレコード製作者に集中されている。また、作詞家、作曲家等の音楽の著作権は、一任型の集中管理が進んでおり、管理事業者を通じた権利処理が可能である。このため、ネット配信に伴う権利処理については大きな問題がない。」(4頁)とあるが,これは事実誤認である。

 レコードについては,大手レコード会社の共同出資に掛かる音楽配信事業者があることもあり,当該事業者と競合関係にある事業者がスムーズに許諾を受けられない傾向が強い(なお,実演家が自らの実演をインターネット上で広く利用してほしいのに,レコード会社がこれを拒んでいることから,実演家とレコード会社との間で訴訟に至った例がある。)。また,日本以外の先進諸国では,商業レコードに収録された楽曲をインターネットラジオ等に用いることが広く行われているが,日本ではそうなっていないが,その最大の要因は,送信楽曲数や広告等収入に応じた使用料でレコード音源のインターネットラジオ上での利用を包括的に許諾する仕組みが日本にはなく,かつ,ほとんどのレコード会社は個別に許諾を取りに行ってもこれに応じないからである。

 このように,レコードについては,インターネット上での二次利用に関しては,レコード会社が障害になっている


 また,「放送番組については、ビデオ化が予定されるドラマなど一部のものを除き、製作段階においてその後の利用も含めた契約はほとんど行われてきていない。また、最近は番組ごとの権利情報の整備が進められているが、過去のものについては、権利情報が整備されていない場合も多い。」(5頁)とあるが,放送番組については,東京キー局の製作した番組を再送信するくらいしか能のない地方地上波放送局を救済するために,インターネットを用いて情報を送信するのに,受信者の範囲を「放送対象地域」に限定しなければならないという本末転倒な状況下に置かれている(例 NTTぷららの行う地上波デジタル放送再送信サービス)。

 すなわち,著作物等が広く享受されることによる文化の発展を目指して著作物等を日本中の隅々に行き渡させる役目を担う放送事業者に一定の特権を付与したのに,放送事業者を守るために,著作物等の流通が県境で阻害されてしまっているのが実情であって,これは放送事業者に著作隣接権を付与した趣旨からすれば,本末転倒である。

 

 音楽著作物に関しJASRACが集中管理する体制がそれなりにうまくいっているのはJASRACが自らまたはその出資する会社を介して著作物等を利用して利益を得る事業を行っていないが故に,予め定められた料金を支払うことに合意した上で著作物を利用したいと申し込んできた者に対し中立的にこれを承諾してきたからである。このように権利集中管理システムが功を奏するためには,権利を集中的に管理する者が著作物等の利用を希望する者に対し中立的に許諾を行っていく体制があることが不可欠である。現時点では,レコードにしても,放送番組にしても,自ら又はその出資する会社を介して著作物等を利用して利益を得る事業を行っている者(レコード会社,テレビ局等)が許諾権を集中的に管理しており,それゆえ,適正な利用料を支払って正規に著作物等を二次利用したい者が正規に二次利用できない状況下にある。


 よって,著作物等の(インターネット上での)二次利用等を推し進めるためには,レコード会社やテレビ局が握っている許諾権を中立的な権利集中管理事業者に管理させるか(従わないテレビ局については,「電波の私物化が著しい」として放送免許を取り上げるなどの方法により),条約の許す範囲内で強制許諾制度を導入するなどするべきである。

技術的回避手段が邪な目的で用いられている場合があり,その保護を安易に強化すると,却ってコンテンツの開発の阻害や機器メーカー等による不正な利益の取得に繋がりうる。


 「一方、権利者からは、ネットを通じて大量の違法コピーが行われていること、「マジコン」等の回避装置が若年層を含め一般的に広まっていることなどを背景に、現行制度の対象機器の範囲を見直すべきではないか、また、回避装置の提供行為を刑事罰の対象とすべきではないかなどの意見があった。」(17頁)との記載がある。しかし,「マジコン」等は,ゲーム機器メーカーと「ライセンス契約」を締結していない中小企業や個人が開発したゲームソフト等をゲーム機で実行するためにも広く使われている。「マジコン」等の製造・販売等が禁止された場合には,ゲーム機メーカーがそのゲーム機で使用できるソフトウェアの内容やその開発者の企業規模等をコントロールできることになり,却ってコンテンツやその開発者の多様性を損なうことになり,さらには学生を含むアマチュアが作品を発表する機会を押しつぶすことにより,次世代のクリエイターが育つ土壌を失わせることになる。

 従って,アクセスコントロールの回避装置についての規制を強化する場合には,それが機器メーカー等によるコンテンツの支配を強化することにならないような慎重な配慮が必要であり,コンテンツ提供者が機器メーカー等の審査にパスしなければ,あるいは高額のライセンス料を支払わなければ,その提供するコンテンツが当該機器で使用できないとされるようなアクセスコントロールについてはこれを回避する装置の製造・販売等を禁止すべきではない。

 また,地上デジタル放送については,NHK等が出資するB−CAS社のみが提供するB−CASカードを購入させるために放送波にアクセスコントロールが掛けられるという事態が生じているが,アクセスコントロールの回避装置についての規制を強化する場合には,アクセスコントロールの解除に関する機器や特許等で一儲けを企む事業者(団体)が生まれる危険がある。これは,著作権法によっても不正競争防止法によっても本来正当化されるべきでないものである。従って,アクセスコントロールを適切に回避するための機器等に関しては,機器等の代金・使用料もしくはそこに用いられている特許料等の名目で金銭請求を行い,または,本来義務のないことを行うことを条件とすることを,きっちり禁止することなどが必要である。

Posted by 小倉秀夫 at 02:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/12/2008

L.H.O.O.Q

 前回の中央大学でのゼミの課題として,次のような設問を出しました。

Marcel Duchampが『L.H.O.O.Q.』を製作し,また,『髭を剃られたL.H.O.O.Q.』を公表する行為は,現在の日本で行われたとしたら,犯罪となるでしょうか。

 著作権法第60条は,

著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

と規定し,これを受けて著作権法第120条は,

第六十条又は第百一条の三の規定に違反した者は、五百万円以下の罰金に処する。

と規定しており,このため,著作権の保護期間をどうするかに関わりなく,著作者の人格的利益は半永久的に保護されるとされています。では,有史以来人類が創作した作品全てについて,現代においても,著作者の人格的利益は保護されているのだろうかということがここでは問題となります。

 加戸・逐条講義等ですと,上記の点を肯定しつつ,起訴便宜主義があるから大丈夫だという話をするのですが,遠い昔に創作された作品についてはこれを改変等しても刑事罰を科せられないような解釈論が何かないだろうかということが問題となります。

 この点についての私の試案は,旧著作権法第47条が本法施行前に著作権の消滅せざる著作物は本法施行の日より本法の保護を享有すと規定しているのを反対解釈して,旧著作権法施行前に著作権が消滅した著作物についてはその時点で著作者人格権を含めて権利が消滅したと解した上で,現行著作権法附則第2条1項を類推適用して,「現行法施行日以前に消滅している権利については,現行法の施行により復活しない」という部分を著作者人格権についても拡張して,旧著作権法施行時に既に著作権が消滅している著作物については,現行著作権法60条及び120条が適用されない,とするものですが,技巧的にすぎるような気はしなくもありません。

Posted by 小倉秀夫 at 08:32 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

「著作物の利用についてのアンケート調査」に協力してみる。

 文化庁から「著作物の利用についてのアンケート調査 ~ ご協力のお願い ~」というのが来ていましたので,早速回答しておきました。

 これは,「文化審議会著作権分科会「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理」に関する意見募集の実施に際し、意見を送った個人に対しなされるもので,太田勝造東京大学法学部教授が調査責任者となっているものとのことです。

 個人の著作物についての著作権の保護期間を自由に決められるとしたら,というアンケートについては最短で死後0年という選択肢までしか認めてもらえなかったのは残念でした。もちろん,ベルヌ条約等を改正するか同条約等から脱退する必要があるので現実的ではないのですが,自然人,法人とを問わず,公表後2〜30年くらい保護すれば十分ではないかという気がするものですから(投下資本の回収可能性という点では,それくらいの期間独占権を認めれば十分ですし,人口に膾炙したものについていえば公表後30年も経つと半ばインフラ化してしまうと思いますので。)。

Posted by 小倉秀夫 at 03:19 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/10/2008

「研究開発における情報利用の円滑化について」についての意見

 「第4節 研究開発における情報利用の円滑化について」についても下記のとおりパブリックコメントを提出しました。



 営利目的の有無にかかわらず,研究開発等(商品開発を含む。)の過程における著作物等の利用については,権利制限規定を設けるべきであるし,その過程でなされる改変については,それが公表されるまでは同一性保持権侵害とならないこととすべきである。その理由は下記のとおりである。

 既存の著作物等を利用した作品ないし商品を開発するにあたっては,誰のどの作品のどの部分をどのように利用したら最も効果的かについて試行錯誤がなされるのが通常である。開発部門としては,試作品等を作成する前の段階でその著作権者等に許諾を求めるのは手続が煩雑である。

 他方,当該著作物等の著作権者においては,第三者の研究開発部門等が当該著作物等の全部または一部をそのまま又は改変して試作品等を作成していたとしても,それが公表され市場に供給されるまでは,当該著作物等に係る正規商品の流通を阻害することはない。従って,このような開発段階での著作物等の利用がなされても,当該著作物の著作権者等の経済的権益を害しないので,当該著作権者等にそのような利用を禁止する権利を認める必要はなく,又は,当該権利者等に補償すべき損失も生じない。同様に,試作品等が公表されない限り,当該著作物等により形成される著作者等の社会的評価に変動が生ずることもないので,著作者等に,試作品等の作成過程でなされる著作物等を改変を禁止する権利を認める必要もない。

 実際問題としても,試行錯誤の結果,既存の著作物等のどの部分をどのような形で利用してどのような作品又は商品に仕立て上げたのかが概ね決まってからでなければ,そこでなされる著作物等の改変についての同意を求めにくいし,同意する方もしにくい。

 よって,上記のような法整備が求められる。

Posted by 小倉秀夫 at 02:14 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて」についての意見

 「文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会平成20年度・中間まとめ」について,特に「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて」について,下記のとおり意見を提出しました。


 私的使用目的で違法複製物等から著作物を複製する行為を違法化する法改正は不要であるのみならず,有害である。その理由は下記のとおりである。

 諸外国でも,著作権者等による権利行使の対象となっているのは,P2Pファイル共有システムを用いて違法複製物等をダウンロードした者であって,ダウンロードしたデータファイルを共有フォルダに蔵置していたものである。そして,世界に先駆けて著作物等について送信可能化権を設けている日本法においては,このような者に対しては送信可能化権を行使することが可能である。

 そうではなくて,ダウンロードしたデータファイルを共有フォルダに蔵置していない場合についても著作権者等による権利行使を行いたいとのことであれば,それは世界でもほとんど前例のないことであり,それが認められた場合の弊害はとても大きい。すなわち,その場合,著作権者等の側で被疑侵害者の使用しているコンピュータ内のハードディスク等の中に自分が著作権等を有する楽曲等の複製物が蔵置されていることを証明しなければならないが,そのためには,著作権者等は,第三者が使用しているコンピュータにどのようなデータが蔵置されているのかを検証することが必要となる。そして,それを可能とするためには,自分が著作権等を有する楽曲等が多数違法にアップロードされていることを疎明すれば,任意の第三者を債務者として証拠保全の申立てを行い,その使用しているコンピュータ内のハードディスクの100%物理コピーを入手することがほぼ必須である。従って,上記のような法改正がなされた場合,裁判所は,その立法趣旨に鑑み,現行の民事訴訟法の規定に従い,上記証拠保全手続としてのハードディスクの100%物理コピーを許可する可能性が十分にある(なお,当該第三者が違法にアップロードされた著作物等をダウンロードしていることの疎明は,技術的に困難であるし,それはまさに保全された証拠によって立証しようとする事項であるが故に,要求されないと予想される。)。この場合,当該ハードディスクにて保管しておいたプライバシー情報等は全て著作権者等に知られるところとなり,別の用途に悪用される危険がある(なお,証拠保全で収集した証拠により得た個人情報を他の用途に利活用することを刑事罰をもって禁止する法律は現在存在しないので,民事で慰謝料等を支払っても採算がとれるとなれば,別の用途に悪用される可能性は十分にある。)。

 なお,上記のような法改正が希望される表向きの理由としては,「ファイル交換ソフトによる違法配信からの録音録画については、違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するのが困難な場合があり、送信可能化権や公衆送信権では充分対応できない」ということがあげられている。しかし,上記のような「当てずっぽうで対象を選んでの証拠保全」を行わないとすると,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するよりも,それらの者からデータの送信を受けた者を特定する方が技術的に困難である(今回の資料の中でも,「仮にそのような法改正がなされた場合に,誰が何をダウンロードしたのかをどのように特定することが予定されているのか」について具体的に示されていないのは残念である。)。

 また,電子掲示板等に投稿する際にだけインターネットにアクセスすれば足り,公衆にIPアドレスを晒す必要がない名誉毀損等のケースと異なり,ファイル交換ソフトによる著作物等の違法配信の場合,継続的に自己のIPアドレスを公衆に晒す必要があるから,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するのは,技術的・法的には比較的容易である(日本の著作権等管理団体は,米国やドイツ等の著作権等管理団体と異なり,弁護士費用を惜しんで,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定して権利行使することを怠ってきただけのことである。)。

 また,上記法改正がなされてしまう場合には,いわゆる動画投稿サイトにて,日本では公開されていない海外の作品を視聴したり,民法テレビ局の少ない地域の住民が地元に系列局のないキー局の番組を視聴すること自体が違法とされてしまう等,著作権者等から地理的にブロックされている情報を知ること自体が不法行為とされてしまうのであり,それは国民の知る権利を大いに害することになる。

 なお,「ストリーミングに伴うキャッシュについては、著作権分科会報告書(平成18 年1 月)における一時的固定に関する議論の内容等を踏まえた上で、必要に応じ法改正すれば問題がないと考えられる」との議論があるが,「RAMへの一時的蓄積は著作権法上の複製にあたるか」という点についてはあたらないとするのが多数説並びに下級審判例ではあったものの,ハードディスクに固定されるキャッシュについては,コンピュータの電源を一度落としても繰り返し利用することが技術的に可能であるが故に「複製」と認定される可能性が高く,上記のような法改正がなされた場合には,著作権者等による情報の地理的分割に活用される危険が十分にあり,そのように活用された場合に,上記情報の地理的分割によって利益を得るのがテレビ局やレコード会社等文化庁と繋がりの深い事業者であるが故に,「複製」の定義に関する法整備が速やかに行われる可能性は低いと思われる。  

Posted by 小倉秀夫 at 12:32 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/04/2008

小室哲哉さん逮捕との報道にあたって

 小室哲哉さんが逮捕されたとのニュースがマスコミ各社で報道されています。

 このクラスの商業音楽に関する歌詞・メロディ等の著作権は,作詞家・作曲家→音楽出版社→JASRACというふうに転々譲渡されているのが通常なので,売買の対象とするのであれば,著作権それ自体ではなく,「音楽出版社から著作物使用料の支払いを受ける権利」ではなかったかと思ったりします(小室さんが作詞・作曲したヒット曲約800曲についての著作物使用料の支払いを(未来永劫)受ける権利が10億円ならば,そんなに不思議な買い物ではなかったと思いますし。)。

 もっとも,作詞家・作曲家→音楽出版社への著作権譲渡に関して著作権原簿への登録がなされていない場合には,作詞家・作曲家→投資家への著作権譲渡は有効であり,後に著作権譲渡を受けた投資家は,先に著作権原簿への登録を受ければ背信的悪意が認定されない限り音楽出版社に対抗できるので,後から著作権譲渡を受けた投資家の方に譲渡登録を行ってしまえば,とりあえず詐欺罪は成立しなかったのではないかという気がしたりもします。不動産の二重譲渡であれば先行譲受者との関係で横領罪が成立するところですが,譲渡の客体が著作物だと「財物」性に問題がありそうです(詐欺や恐喝と違って,「利益横領」みたいな規定はありません。)し,かといって,二重抵当と同様に背任に持って行けるのかというとそこも何だか辛そうな気がします(まだちゃんと検討していませんが。)。まあ,刑事罰が科されるか否かが微妙だというだけで,先行譲受人に対する損害賠償義務が認められることは確実なので,おすすめできる話ではありませんが。

Posted by 小倉秀夫 at 11:59 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

11/03/2008

理論的には違うかもしれないけど

 mohnoさんは,次のように述べています。

「新たなサービスが違法行為に使われる可能性がある」のと「新たなサービスが違法行為を前提にしている」は全く違う。

 しかし,違法な著作権・著作隣接権侵害行為に用いられる可能性があることを知りつつ,これを未然に防止する方法を見いだせないまま,新たなサービスを開始した場合には,「新たなサービスが違法行為を前提にしている」どころか,「新たなサービスは,違法行為に使用されることを目的としている」と認定される十分な虞があります(cf.ファイルローグ事件)。

Posted by 小倉秀夫 at 05:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

10/26/2008

昔見た覚えのある光景

 「違法にアップロードされた著作物等のダウンロードを今度違法化しようと思うけど,ストリーミング配信は対象とならないから大丈夫」という言い回しって,「レコード輸入権を創設しても,洋楽CDの並行輸入には適用されないから大丈夫」という言い回しを思い起こさせます。

 で,レコード輸入権の時と大きく異なるのは,レコード輸入権の時は反対運動が盛り上がったこともあって日本レコード協会の依田会長(当時)等が洋楽CDの並行輸入の阻止に活用しないことを表明していたし,国会での付帯決議も入ったりしたおかげで,現在でも,洋楽CDの並行輸入を差し止めるためにレコード輸入権が活用されることは概ねないままここまできているわけですが,YouTube等の視聴者に対し権利行使しないということの表明は,権利者サイドの責任ある立場の人たちからは特段表明されていないし,反対運動が盛り上がらないと,「ストリーミング配信については,権利行使しない」ことを要望する旨の国会での付帯決議は入らないだろうということです。

 川瀬室長がいくらストリーミング配信を受信する際に行われるキャッシュの生成は違法化する対象から外すといってみても,JASRACやレコード会社,テレビ局等がこれを無視して,YouTube利用者を相手取って訴訟を提起したとしても,そのこと自体を法的にはもちろん,倫理的にも大して非難することはできません。そして,ハードディスクへのキャッシュ(RAMへの読み込みと異なり,コンピュータの電源を切っても情報は消失にない。)まで「一時的蓄積」にすぎず複製に当たらないとする見解は必ずしも支配的ではありませんから,請求が認容される可能性があります。そのときに,川瀬室長が責任を取って,川瀬室長のご見解を信じて安心してYouTubeを視聴していた人々がJASRAC等に支払わされた賠償金分を保証してくれるとは思われません。

Posted by 小倉秀夫 at 06:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

純粋ダウンローダーに権利行使した例が見あたらない

 mohnoさんが「ダウンロード違法化を無力化するには 」というエントリーの中で,

ちなみに「日本は終わりだ。外国に引っ越そう」みたいな話をしている人は、文化審議会の資料を読んでないのかな。違法著作物からの複製について、ドイツでは2003年に違法化されたみたいだし、フランスは(悪名高き?)スリー・ステップ・テストがあるし、そもそもイギリスでは娯楽目的で録画録音を認容する規定がないというし、アメリカのフェアユースにも該当しないだろうし、スペインでも私的複製から除外されているらしいし、カナダもアウトのようだ。違法とされていないのはオランダとオーストリアくらい。

と述べています。

 ただ,かなりの点で外しているように思えてなりません。「スリー・ステップ・テストが導入されている→違法にアップロードされているサイトからのダウンロードは違法」とは必ずしもいえないし(例えば,事実上廃盤になってしまった楽曲や日本国内盤がない楽曲など,正規商品を入手することが困難なデータについては,(海外のサイトなどに)無許諾でアップロードされているデータを日本のユーザーが指摘しよう目的でダウンロードしたところで,「著作物の通常の利用を妨げず,その著作者の正当な利益を不当に害しない」と言えなくもないように思ったりします。),イギリスの場合判例法国なので,「娯楽目的で録画録音を認容する規定がない→娯楽目的の録音録画は著作権侵害」ということにはなりませんし(米国でも,フェアユースは,もともとエクイティ(衡平法)の一カテゴリーとして,判例法として発展してきた(後に,判例法をまとめる形で条文化)したわけですし,実際,英国でも,正規商品たる商用音楽CDを正規ルートで購入して,PC経由で,自分のiPodにリッピングすることは,禁止されていないようです。)。

 また,違法サイトからのダウンロードがフェアユースに当たらないとした連邦高裁の判例として文化庁が紹介する事案というのは,ファイル共有に関する事案であって,我が国の法体系でいえば,法改正などしなくとも,送信可能化権侵害ということで,法的措置を講じうるケースだということです(ファイル共有者約3万人に対し訴訟を提起してきたRIAAですら,ファイル共有を伴わない純粋ダウンローダーをターゲットとした訴訟は提起していません。)。

 しかし,日本の著作権等の権利者団体は,送信可能化も行うダウンローダーを摘発するだけでは不十分だということで,純粋なダウンローダーに対しても権利行使を行いたいとして,違法にアップロードされたファイルを私的使用目的でダウンロードする行為を違法化するように要求しているわけですから,米国よりも,かなり個人のプライバシーに踏み込んだ運用を想定していることは間違いありません。同時にアップローダーでもあるファイル共有者の摘発では飽きたらず,純粋なダウンローダーを探し出して権利行使するとなれば,純粋なダウンローダーのIPアドレスを,データの送受信の一方当事者ではない著作権者等が知る機会はありませんから,違法ファイルのダウンロード行為を行っている蓋然性が高いことを示す特段の資料なしに,任意の個人のパソコンの中身をまるごと押さえて精査するよりありません

 いまのところ,このように個人のプライバシーを大いに侵害することなしには権利行使することができない,純粋ダウンローダーの摘発に踏み切った国があることを私は知りません。文化審議会の思惑通りに法改正がなされれば,純粋ダウンローダーを取り締まるために,一般市民のプライバシー等JASRACとテレビ局にくれてやる,世界で最初の国に日本がなるということです。




mohnoさんは「ダウンロード違法化が実現しても、一般市民の情報プライバシー保護には厳重な配慮が必要だ」と言ってはいかんのか?と仰いますが,この法改正自体一般市民をターゲットとしたものですし,一般市民のハードディスクの中にJASRACやテレビ局が著作権等を有する作品の複製物のどれとどれが蔵置されているかを精査するに当たっては,そのハードディスクを丸ごと精査するしかありません。つまり,この改正法により創設された権利を行使する限り,一般市民の情報プライバシー保護に配慮した運用というのはありえません。

Posted by 小倉秀夫 at 03:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

10/21/2008

何が選挙の争点なのかを決めるのは,私たち主権者たる国民である。

 選挙の争点なんて,政治家が決めるものでも,マスコミが決めるものでも,ましてや田原総一郎が決めるものでもありません。我々有権者が決めるものです。だから,私たち一人一人が地元の候補者に連絡を取り,あるいは各政党にメールを送り,自分たちは,私的ダウンロードの違法化に反対であるとの意思を伝えるとともに,各候補者は,各政党はこの問題にどう対処するのか,確認を取ることは有効です。そのような個々人の行動が積み重なっていくと,この問題は,選挙の争点化していく可能性が出てきます。

 基本的には,私的ダウンロード違法化というのは,立法論としては筋が悪いのです。というのも,違法にアップロードされたデータをダウンロードした者に対しJASRAC又はテレビ局等の権利者が権利行使を認めるためには,JASRACやテレビ局等に,我々市民のパソコンの中身を精査する権限を付与しなければならないからです。すなわち,私的ダウンロード違法化というのは,我々市民の私的領域内で行われている行為を,一部の企業や団体の監視下に置くことで初めて実効性を有するに至るのであり,個々人のプライバシー権を包括的に犠牲にすることなしには成り立たない制度だからです。

 ですから,地元の候補者に対しては,文化庁は,私的使用目的のデータのダウンロード行為を著作権侵害とすることによって,私たちのパソコンの中身をいつでも精査できる権利を,テレビ局と文科省傘下の特殊法人に付与しようとしています。先生は,テレビ局や文科省の役人から私たちのプライバシーを守ってくれるのですか,それともテレビ局等に私たちのプライバシーをくれてやるのですか,とお聞きすればよいのです。

 候補者が地元でタウンミーティング等をやっているようであれば,そこに出席をしてこの点を聞いてみるものよいでしょう。「この法律が成立してしまうと,私が,違法サイトからのダウンロードをしていないとテレビ局にわかってもらうためには,恋人と撮ったムービーなんかを含めて自分のパソコン内の全ての動画ファイルを,テレビ局の人に取り上げられて,精査されないといけないんですよね。しかも,テレビ局等は,そうやって入手した個人情報を,スキャンダル報道等に活用することが自由にできるのですよね。先生は,そんな社会を作ることに賛成なのですか」と聞いてみたらよいのではないかと思うのです。この立法案の問題点の一つは,自分は違法にアップロードされたデータをダウンロードしていなくとも,潔白を証明するためには,自分の保有するパソコン内に蔵置された情報を丸ごとテレビ局に差し出さなければならないのであり,しかも,特定の(隠しておきたい)情報だけは見せないということができないと言うことになります。すなわち,このような立法がなされた暁には,裁判所とテレビ局とが「証拠保全」という形で結びつくことにより,一種のAntinyの機能を果たすことになるのです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/20/2008

私的ダウンロード行為の違法化について

 津田さんが,

【速報】私的録音録画小委員会にてダウンロード違法化が決定。iPod課金は見送り。
つぶやいておられたので,自民党,公明党,民主党,社民党の方に,概ね下記のようなメールを送っておきました。共産党は,知り合いが思い浮かばなかったので,共産党のウェブサイトに掲載されているメールアドレスに宛てて,ほぼ同じ内容のメールを送っておきました。

////////////////////////////////////////////////////

 文化審議会の私的録音録画小委員会において,違法にアップロードされた音声または映像をダウンロードする行為を著作権侵害とする旨の法改正を行うことを決定したとの速報が流れてきました。

 そのような法改正がなされた場合,一般市民は,JASRACまたはテレビ局からの証拠保全又は検証物提出命令等により,個人的に使用しているパソコンのハードディスクの中身及び操作ログをがっさりもっていかれた上で,どのような情報をどこから入手したのかを,丸裸にされることになります(「違法にアップロードされているデータ等をダウンロードした疑いがあるとして集められたデータを,JASRACが文科省に引き渡したとしても,JASRACに何ら制裁は加わりません。)。すなわち,政治家やジャーナリストを含めた個人の情報プライバシーは,文科省傘下であるJASRAC及び総務省傘下であるテレビ局の前には,なきに等しいという状況に陥る危険が十分にあります。

 また,そもそも,情報を入手する行為自体を著作権侵害とすることは,国民が知る権利を行使すること自体を違法とするものであって,著作権法がその究極目的とする「文化の発展」の妨げとなるものです(この法案が可決した場合,「著作権」を媒介とした,地域による情報分割が可能となります。)。

 つきましては,総選挙を前にご多忙のこととは存じますが,○○党として,この問題についてどのような方針をとられるご予定なのか,お聞かせいただければ幸いです。

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10/18/2008

ゼミ面接 in 2008

 昨日は,2009年度のゼミへの入ゼミ希望者の面接を行ってきました。

 今年は,レポートを提出した入ゼミ希望者が34人ということで,概ね競争倍率は1.6倍ということになりました。

 著作権法ゼミという関係上,毎年いろいろ一芸に秀でた人が応募してくれるのですが,今年も様々な能力を持った人が応募してくれたので,選ぶ側(面接に関しては,現3年生のゼミ員の意見をとても重視します。)としても選び甲斐があったというものです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:25 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/15/2008

2009年度著作権法ゼミの選抜レポート

 昨日は,中央大学法学部での著作権法ゼミのゼミ員選抜用のレポートの提出期限でした。

 著作権法ゼミですと,例年,IT系に興味がある学生と,エンターテインメント系に興味がある学生とが併存することになりますので,今年は,選抜用レポートの課題を選択制にしました。

 ちなみに,今年の課題は下記のとおりです。

次の2つのテーマのいずれかを選択して下さい。
  1. 仮に、あなたが音楽プロデューサーとして日本のアーティストを海外に売り込むことを命じられた場合、どのアーティストを、どの国や地域で、どのようにしてプロモートしますか。その場合、どのような国その他の諸団体等からどのような支援を受けることが必要または有益ですか。理由も付して具体的に論じて下さい。

  2. なぜ日本ではクリエイティブ・コモンズが普及しないのか、具体的に論じて下さい。


 憲法,民法,刑法のような基本科目については,ゼミの議論の前提となる法律知識・法律理解の高低をためすようなレポート課題を出すことが可能ですが,著作権法の場合,2年生の段階で著作権法の知識があることを前提とするわけに行かないので,著作権法が問題となる領域についての知識やセンスを問うようなレポート課題にせざるを得ないなあ,と思っています。

Posted by 小倉秀夫 at 11:01 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/14/2008

海賊版の図書館への収蔵

 産経新聞によれば,萩原遼さんの著書の海賊版を納入し、貸し出しているのは著作権侵害にあたるとして、東大など8大学と外務省所管の財団法人日韓文化交流基金を相手取り、近く損害賠償を求める訴えを起こすことが判ったとのニュースが話題になっています。

 「公衆送信」云々という部分は萩原さんか産経新聞が勘違いしているだけでしょうからひとまず措くとして,プログラムの著作物以外の著作物については,海賊版の所持者がこれを不特定人に対し展示する行為は特段著作権侵害とならないので,これらの図書館等としては,当該海賊版について館外貸出しの対象としていなければ,損害賠償をしなければならない理由はありません。

 また,仮に館外貸出しの対象としていたとしても,頒布目的の所持が著作権侵害等とみなされるのは,その物が著作権等を侵害する行為により作成された者であるとの「情を知つて」行ったものに限られます。「情を知つて」の意義については,東京地判平成7年10月30日判タ908号69頁は,

著作権侵害を争っている者が、著作権法一一三条一項二号所定の「著作権・・・・・を侵害する行為によって作成された物」であるとの「情を知」るとは、その物を作成した行為が著作権侵害である旨判断した判決が確定したことを知る必要があるものではなく、仮処分決定、未確定の第一審判決等、中間的判断であっても、公権的判断で、その物が著作権を侵害する行為によって作成されたものである旨の判断、あるいは、その物が著作権を侵害する行為によって作成された物であることに直結する判断が示されたことを知れば足りるものと解するのか相当である

と判示しており,問題の「北韓解放直後極秘資料」が萩原さんの「北朝鮮の極秘文書」の複製物or二次的著作物か否かについて争いがある本件においては,この基準が変らない限り,訴訟や保全処分等を行って暫定的な結論を得ることすらしていない段階で「情を知つて」の要件を満たすことは容易ではありません。

 もちろん,上記裁判例は一般的な譲渡権が制定される前のものであり,一般的な譲渡権が制定された現在では,海賊版について譲渡権が消尽していないことを過失により知らずにこれを公衆に譲渡してしまった場合には,不法行為が成立する可能性があります(逆に,複製物の譲渡を受けたときに譲渡権が未だ消尽していないことを過失なくして知らなかった場合には,その後「情を知つて」これを公衆に譲渡したとしても譲渡権侵害とはならないわけですが(著作権法113条の2))。

 しかし,館外貸出しの場合は,譲渡権ではなく,貸与権が問題となりますから,権利の消尽云々は問題とならない反面,無償かつ非営利で行う分には,著作権者の許諾がそもそも不要ですので,過失云々が問題になることはありません。従って,実際上の争点は,館外貸出しを行った図書館等に営利性等を認めることができるのかという点に絞られることになりそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

シンポジウム「ここがヘンだよ日本法」

 特定領域研究プロジェクト「日本法の透明化」の一環として,「ここがヘンだよ日本法」というシンポジウムが,11月28日,29日に開催されます。

 私は,28日の午前10時から行われる「著作権法における『間接侵害』と権利制限規定」というセッションでパネリストを務める予定です。

Posted by 小倉秀夫 at 11:39 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/06/2008

著作権法第2条第1項第7号の2の括弧書きの立法趣旨

 著作権法第2条第1項第7号の2の括弧書きの趣旨について,例えば加戸・逐条講義31ページは,

もともとはコンサートなどで歌手が歌をマイクを通して歌った場合に,前にいる人はその歌手の歌唱(これは第16号の箇所で述べますとおり,「演奏」に該当します。)を聞いていますけれども,後ろにいる人はスピーカーという受信装置を通じて公衆送信を聞いていると言うことになりかねませんが,この場合に公衆送信という概念で押さえるのはおかしかろうということで,少なくとも同一構内で行われている限りは公衆送信という概念をとらないで,演奏という概念で押さえようという観点から,こういう書き方をしたわけでございます。
との記載があります。しかし,現行著作権法が制定される際の国会の議事録はもちろん,現行著作権法の起草に先立つ著作権審議会の分科会の中間報告や最終答申などにも,同一構内か否かで,「演奏」か「公衆送信」かを分けるのだという趣旨の発言はありません。

 現行著作権法制定前において,例えば「有線放送業務の運用の規正に関する法律」が第2条において,

 (定義)
第二条 この法律において「有線放送」とは、左の各号の一に該当するものをいう。
 一 一区域内において公衆によつて直接聴取されることを目的として、放送を受信しこれを有線電気通信設備によつて再送信すること。
 二 一区域内において公衆によつて直接聴取されることを目的として、音声その他の音響を有線電気通信設備によつて送信すること。
 三 道路、広場、公園等公衆の通行し、又は集合する場所において公衆によつて直接聴取されることを目的として、音声その他の音響を有線電気通信設備によつて送信し、又は放送を受信しこれを有線電気通信設備によつて再送信すること。
としつつ,第10条において,
 (適用除外)
第十条 この法律の規定は、左の各号に掲げる有線放送の業務については適用しない。
 一 臨時且つ一時の目的のために行われる有線放送の業務
 二 一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる有線放送(第二条第三号に該当するものを除く。)の業務
(以下,略)
と規定されていることに代表されるように,「一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる有線放送」については「有線放送」としての規制の対象外とされていたことを踏襲したものと見る方が素直ではないかと思います。その際,同「一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる」有線放送については,「公衆送信」には該当するが公衆送信ないし有線放送としての保護・規制を受けないという規定ぶりにするより,そもそも「公衆送信」(及びその一カテゴリーである有線放送)の定義から除外するとした方が,法律の規定の仕方としてわかりやすいので,著作権法第2条において,「公衆送信」の定義規定において,上記括弧書きを付けることにしたと考える方が素直ではないかという気がします。

 ときおり,7号の2の括弧書きの趣旨は,「演奏」等に該当する場合を「公衆送信」から除き重畳適用を避けることにあったのだから,「演奏」等に該当しない場合は括弧書きを適用せず「公衆送信」に該当するものと解すべきだ,みたいな主張がなされることがあるのですが,もし立法者の意思がそのようなものだとするならば,「演奏」等の定義を先に決めた上で,「公衆送信」の定義規定において,「演奏」等に該当するものを除く旨の括弧書きを挿入したのではないかと思います。

 町村先生も,世間では、立法担当者の主観的認識といわゆる立法者意思とを混同している向きが多く、立法担当官が書いた逐条解説を金科玉条のごとく思いこむ人が多い。仰っていましたが,著作権法の分野では,何が立法者意思なのかを加戸知事の逐条解説に頼るのは結構危険だなあと言えそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:26 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

私たちは,「加勢大周」の名を忘れることなどできない。

 テレビ局等々は「加勢大周」の痕跡を消し何事もなかったかのように振る舞えるかも知れませんが,知財関係者にとっては,「加勢大周」の名は忘れることができません。


 数年後の学生には,「加勢大周」事件の話をする際に,「加勢大周」の説明からしなければならないかも知れませんね。

Posted by 小倉秀夫 at 03:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/02/2008

プログラム関連について30条の適用除外とすべきという意見に対して

「海賊版DSソフトのダウンロード違法化求める声も〜著作権分科会 」という記事がInternet Watchにアップロードされています。その中に,
 プログラム関連の取り扱いについて弁護士の松田政行氏は、早急に30条の適用除外とすべきと主張した。松田氏は、「ニンテンドーDSのソフトは、これまで推計185万本の違法複製が行われ、被害額は60億円に達したと聞いている」として、経済的損失が大きいことを指摘。こうしたプログラムをアップロードした人だけでなく、ダウンロードなどの複製行為自体も違法とすべきと訴えた。
との記載があります。しかし,「ニンテンドーDSのソフトは、これまで推計185万本の違法複製が行われ、被害額は60億円に達した」と述べている人がいるということから,「プログラム関連の取り扱いについて……、早急に30条の適用除外とすべき」との結論を導くのは困難です。むしろ,「ニンテンドーDS用のソフトがネット上に大量にアップロードされているという状況を何とかしたいと任天堂が考えているのであれば,新人弁護士が大量に余っているので,任天堂は,企業内弁護士を大量雇用するなどして,ニンテンドーDS用のソフトを違法にアップロードしている人々に対し適切に権利行使すべき」というのが筋ではないかと思います。いや,何度も言っていることですけど,ダウンロード行為を違法としたって,ダウンロードした人を摘発して権利行使するのって,アップローダーを摘発して権利行使するより遥かにハードルが高いので,早急な対策としては意味がないと思います。

 もっとも,30条の例外とすべきとする複製行為について「ダウンロードなど」としている点は不気味です。外出先に何枚ものカードを持ち歩くのが面倒くさいとして,マジコンを使って,複数のDS用ソフトを1枚のカードにコピーする行為まで禁止しようということなのでしょうか。その場合は,30条ではなく,47条の2で権利制限されるから大丈夫ということなのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 11:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/14/2008

ゼミ合宿 in 2008

 この12日〜14日と,神戸までゼミ合宿に行ってきました。朝方雨が降ったりということはあったものの,基本的には汗ばむほどのよい天気でした。

 昨年ゼミ員の評判がよかったので,今年も競技ディベートをしてもらいました。ただし,去年と違って男女比が1対1ではないので(11対9),男女混交でチーム分けをしてもらいました。

 ちなみに今年のテーマは以下の3つとしました。

テーマ1

著作権法第65条第4項として

4 第二項の場合において、過半数の持分を有する共有者が、共有者の一人又は数人が正当な理由なくして第二項の合意の成立を妨げたと認めるときは、当該合意の成立を妨げたことにつき正当の理由があることが裁判で確定するまでは、相当と認める額の使用の対価を当該共有者に支払って、共有著作権を行使することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、当該共有著作権の行使により当該共有者の受けた損害の額が当該共有者に支払った使用の対価を上回るときは、その差額に年1割の割合による支払後の利息を付してこれを支払わなければならない。相当 と認めて支払った使用の対価に不足があるときも、同様とする。
という条項を挿入し、現在の第4項を、第5項とすることの可否。
テーマ2

著作権法第103条の2として、

(裁定による実演等の利用)
第103条の2 第91条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得て商業用レコードに複製された実演を送信可能化しようとする送信可能化事業者(業として送信可能化を行う者をいう。)は、第95条第5項の団体又は第97条第3項の団体に対しその構成員(当該団体が団体の連合体である場合、当該連合体を構成する団体の構成員を含む。以下、本条において同じ。)が著作隣接権を有する実演又はレコードの送信可能化の許諾につき協議を求めたがその協議が成立せず、又はその協議をすることができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を当該団体に支払って、当該団体の構成員が著作隣接権を有する実演又はレコードを送信可能化(公衆送信用記録媒体への複製を含む。以下同じ。)することができる。
という条文を挿入することの可否
テーマ3

著作権法第50条及び第102条の2を削除することの可否

Posted by 小倉秀夫 at 09:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/11/2008

midomi

 iPhone用のアプリケーションですが,「midomi」は面白いです。


 midomiを起動させて,「sing」ボタンを押し,その後で「Tap and Sing or Hum」という部分をタップし,iPhoneに向かって昔聴いたフレーズを口ずさむと,それが誰のどの曲を口ずさんだものか検索してくれます。これを使うと,子供のころテレビかなんかで聴いてメロディは覚えているのだけど,誰の何という曲か思い出せないと言うときに便利です。しかも,検索結果から,iTunes StoreやYouTubeに直接リンクされているので,すぐに視聴したり,購入したりすることが出来ます(日本在住者はできませんが)。

 さっそく,何となくサビの部分だけ覚えているのだけど曲名がわからなかった歌を「midomi」で調べてみたところ,Dennis De Young の「Desert Moon」だとわかって嬉しくなりました(iTunes Store for Japanでも購入できていたら即ダウンロードしていたと思うのですが,それは反実仮想なので,150円使わずに済みました。)。

Posted by 小倉秀夫 at 01:38 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/09/2008

デジタル・コンテンツ利用促進協議会

 今日は,「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」の設立総会&記念パーティに出席してきました。設立総会から会費5000円で帝国ホテルだよ,ということで,MIAUとの資金力の差は歴然としていました。

 「利用促進協議会」といいつつ,壇上に上がって挨拶を述べるお偉いさんは,中山先生を除けば,川上のコンテンツホルダ側のお方ばかりで,川下のエンドユーザーや川中の流通業者の代表が誰も壇上に登っていないという時点で,「コンテンツ利用促進」という協議会の本旨はどこかに行ってしまうのではないかという危機感をたっぷり抱いてしまいました(民主党の来賓の方も,この数年の民主党の知財関係での活動をネガティブに評価されている方のようで,川内議員らの活躍が如何に多くの市民の支持を得たのかを十分理解されていないようでした。まあ,あの政党は寄り合い所帯で,政策の幅が広いから仕方ないですけど。)。

 自民党の世耕議員と名刺の交換をしながらお話をする機会がありましたので,「東京キー局の放送を日本全国で見ることができないのはおかしいので,私はこれを何とかしようと活動しています」と自己紹介をしたところ,世耕議員もこれに同感の意を示してくれました。東京キー局に対して,まねきTV事件の控訴を取り下げるように働きかけてくれると良いなあ,と思いました。

 あと,会場には,池田先生と,津田さんと,小寺さんが出席されていました(まあ,皆さん,呼ばれて当然の方々なのですが。)。多少お話はされていたようなので,必要なときに共闘できる関係に戻ると良いなあと思いました。

Posted by 小倉秀夫 at 09:42 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

09/01/2008

グーグルのブック検索

 先週,グーグルのブック検索を巡る中村彰彦氏とグーグルとの間の紛争について,週刊文春の記者より電話インタビューを受けました。その結果を,週刊文春の9月4日号に掲載していただきました。

 出版社に著作権が譲渡されることが多い米国と異なり,日本においては,書籍・雑誌に関しては,個々の著者に著作権が留保されるのが通常であり,かつ,出版権が設定されることすら希なので,この種のサービスを開始するにあたっては,出版社を相手に権利処理をしてことたれるとするのではなく,作家らが所属している各種団体を通じて作家らを相手に直接権利処理をしないと,なかなかうまくいかないように思います。

 サービス内容自体は,作家たちにとっても悪いものではないので,ちゃんと法務コストを支払って権利処理をすればよいだけの話なのに,何か勿体ない感じはします。

Posted by 小倉秀夫 at 11:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/13/2008

「私的録音録画」なんぞにこだわらなくても

 楠さんが、「払いたい奴だけが追加で私的録音録画補償金を払うってどう?」というエントリーで、

まず従来通り機器に対する上乗せで補償金がある。で、そのままだと機器の振る舞いとしては現行のダビング10と同じ。それからHDレコーダはネットに繋がっている前提で、クレジットカード番号とか入れて毎月いくらかの私的録音録画補償金を支払うことに合意すると、EPNモードに切り替わり、何世代でも自由に複製できるようになって、コンテンツの複製や再生の履歴を記録、ネット経由で送信される。各個人から毎月支払われた補償金は、この複製・再生履歴に基づいて、従前よりも正確に補償金を分配される、みたいな感じ。

と述べています。


 権利者サイドが私的録音録画補償金の延長線のような収入を望んでいるのであれば、私的録音録画の補償なんてみみっちい枠組みではなく、積極的に包括的な録音録画のライセンス料を徴収するという形にすればいいのにと思ったりします。


 もちろん、家庭内でのタイムシフト目的の録音・録画についていえば、そもそも著作権者等の許諾無くしてできるのですから、利用者としてはライセンス料を上乗せされるいわれはありません。しかし、企業内でのタイムシフト目的の録音・録画については、多数説は30条1項の適用を受けないと解していますので、これを録音・録画するには著作権者等の許諾が必要です。しかし、企業活動を行う上でニュース番組その他テレビ番組を録画してタイムシフト視聴するニーズはあるのに、その番組に関し権利を有する全ての著作権者等から個別に事前に複製許諾を受けることは不可能ですし、事後的に許諾を受けることも困難です。


 また、私的使用目的でMDやCD−Rに複製した楽曲を公衆に直接見せまたは聞かせることは、無償かつ非営利であっても、著作権等の侵害となってしまいます。それに、公衆に直接見せまたは聞かせる目的で楽曲をMDやCD−Rに複製する行為はそもそも私的使用目的の複製に当たらないとおそらく判断されます。従って、いろいろなアルバムに収録されている楽曲を1枚のMDやCD−Rにまとめて、ストリートでパフォーマンスをするためのBGMに活用する行為は著作権法上は違法です。企業の運動会や町内会の盆踊り等でも、市販のCDを、1曲1曲CDを入れ替えるなどして、そのまま再生するならともかく、BGMを1枚のCD−R等にまとめた上で再生する行為は、著作権者等の事前の許諾がなければ、無償かつ非営利であっても著作権法上違法です。しかし、事前に複製の許諾を受けると言っても、JASRACの許諾は受けやすいですが、レコード会社や実演家の許諾を受けるのは結構至難の業です。


 そう考えてみると、「このマークのある録画機器を用いれば、オフィスユースであっても、タイムシフト視聴目的のテレビ番組の録画はOK」とか「このマークのあるメディアを用いれば、商業用レコードを複製して公衆の面前で再生することはOK」みたいな形でライセンス料込みの価格で売り出すことには一定の需要があるように思います。といいますか、(多数説によれば)私的使用目的の複製の範疇から外れるものの、個別的に事前に許諾を得ることが不可能または困難であり、かつ、権利者側もこれを探知して取り締まることが困難または費用倒れという類型の複製について、著作権関係権利者諸団体が集まって「物」ごとに事前的包括的許諾をして幾分かの収益に変えてしまおうという発想がなぜ出てこないのか不思議です。


Posted by 小倉秀夫 at 10:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/12/2008

「デジタル・コンテンツの流通の促進」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に対する意見

 総務省が,「デジタル・コンテンツの流通の促進」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に対する意見募集をしていましたので,下記のとおり意見を出してみました。


7頁

意見等

 

私的使用目的の孫コピーを制限するような制御手段は,直ちに廃止すべきである。

理由

 「コピーワンス」であろうが「ダビング10」であろうが,孫コピーを一切許さない現行方式では,携帯型プレイヤー等を介して「ユビキタス」にコンテンツを視聴できる社会は実現しない。

 テレビにおいて放送される番組は,その多くが後にパッケージ化されて販売されることなく終わるのが実情であり,私的使用目的の録画を禁止したからといって,テレビ局や番組出演者等の収入が顕著に増大することは考えがたい(劇場用映画にしても,CMでぶつ切りにされる上に,多くの場合放送時間に合わせて適宜カット等がなされているため,テレビで放送された劇場用映画が録画されたとしても,上記のような不都合がなく,かつ,特典映像等もついているDVD等の市場を脅かすものではない。)。従って,テレビ放送に関してコピー制御を行うことの必要性自体がそもそもない。

 「クリエイターに対する適正な対価の還元」という点についていえば,インターネット等を介して日本中でその番組が視聴されうること,タイムシフト視聴によりいわゆる視聴率により換算される視聴者数(いわゆるリアルタイム視聴している人の統計上の数)よりも多くの人がその番組を視聴していることを前提に,テレビ局がスポンサーから受ける広告料の引き上げ及びクリエイター等への出演料等の引き上げを図ることにより実現すべきである。その際,転送再生視聴率や,録画再生視聴率が計測できるよう,IT企業の協力を仰ぐべきである。

38頁

意見

いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限するべきではなく,仮にするとしても,コピー制御等に対応する技術については,何人も,無償かつ無条件ででこれを利用できるようにすべきである。

理由

 いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限した場合,コピー制御等に対応する技術のライセンスを恣意的に行うことにより,録画機器等の市場が不当に歪められる危険がある。また,上記技術のライセンスを受けるにあたり,制御されている行為とは直接関係のない行為を強要される危険もある(視聴規制に過ぎないB-CASについて,これと直接関係を有しない「コピー制御に反応させる」ということを飲むことを解除技術のライセンス付与の条件とするがごときである。)。もちろん,それは独占禁止法上問題があるが,ライセンスの付与が恣意的に行われることが立証されて公正取引委員会が排除勧告を行うまでには相当の時間を要するため,これを嫌って,海外のメーカーや国内の新規メーカーが国内市場への参入を躊躇する事態が懸念される。

 また,いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限した場合,コピー制御等に対応する技術のライセンスのライセンス料を極めて高額に設定することが考えられる(理論的には,特許権等の保有者の言い値を飲まない限り,録画機器等の製造販売を行い得ないことになる。)。本来クリエイターの権利を保護するために加えられたコピー制御について,上記ライセンス料の製品価格への反映という形で消費者が費用負担をさせられるのは不正義である。

85頁

意見

 放送コンテンツをインターネット上で広く二次利用できるようにするためには,実演家の権利との関係でいえば,著作権法93条及び94条頼みの現状のライセンス実務をまず改めるべきであり,レコード製作者との関係では,レコードの送信可能化等についても強制許諾制度を導入するなどにより「放送」とされた場合の二次使用料と「送信可能化」とされた場合の許諾料がアンバランスを解消し,又は,放送局からなる団体とレコード会社からなる団体とで協議をして「放送」の場合の二次使用料を引き上げる代わりにテレビ放送を「送信可能化」する場合には合理的な価格でレコード音源の使用を許諾するシステムを構築する(放送局の範囲を限定せず,新規の放送局をその取り決めから排除しないことを条件に独占禁止法の適用除外とする等の支援を国はするに留める)べきである。ただし,放送コンテンツのインターネット上での二次利用は,放送事業者又はその関連会社に限定されるべきではなく,放送事業者が恣意的にライセンスをする場合には,強制許諾制度の導入等も視野に入れるべきである。

理由

 著作権法第92条の2第2項は,実演家としての録音・録画権を有する者の許諾を得て録画された実演については,送信可能化権の対象外とするものと規定されている。従って,放送局は,その番組を製作するにあたって,そのコンテンツを二次使用することを前提に,出演者からその実演についてこれを放送することの許諾のみでなく,複製及び送信可能化することについての許諾も受け,その分のライセンス料を実演家に支払っていれば,そのコンテンツをインターネット上で二次利用することが可能である。すなわち,実演家の権利との関係でいえば,著作権法93条及び94条頼みの現状のライセンス実務をまず改めるべきである。

 テレビ番組でのレコードの使用についても,「放送」とされた場合の二次使用料と「送信可能化」とされた場合の許諾料がアンバランスであることが,放送番組での過剰なレコード音源の使用と,これを送信可能化する場合の権利処理コストの過剰性を呼び込んでいる。レコードの送信可能化等についても強制許諾制度を導入するなどにより上記アンバランスを解消するか,放送局からなる団体とレコード会社からなる団体とで協議をして「放送」の場合の二次使用料を引き上げる代わりにテレビ放送を「送信可能化」する場合には合理的な価格でレコード音源の使用を許諾するシステムを構築する等の施策が必要である。

 録画ネット事件からまねきTV事件に至るまでの近時の訴訟を見る限り,テレビ局は,東京キー局の番組を関東広域圏外の住民が視聴することを忌み嫌っており,放送コンテンツのインターネット上での二次使用を放送事業者又はその関連会社に限定した場合,東京キー局の番組をインターネット上で視聴できるのは関東広域圏内の住民に限定されるようないびつな仕組みができかねない。そのような地方住民の知る権利並びに文化的な発展を阻害するようなシステムを21世紀に導入すべきではない。

Posted by 小倉秀夫 at 12:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/07/2008

TVブレイクとJASRACの進歩

 JASRACがTVブレイクの運営会社であるジャストオンラインを訴えた件がネット上で話題となっています。

 ITMediaの記事によれば、JASRACは、JASRACの管理楽曲リスト(一般的なリストで、TVブレイク上の侵害動画を指定したものではない)をCD-ROMで送り、ついで、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策を要請したとのことです。この辺を見ていると、JASRACは、ファイルローグ事件のときから進歩していないような気がします(包括的許諾契約を結びお金を払うという選択肢がある分、ファイルローグのころよりは少しましではありますが。)。

 JASRACの管理楽曲リストを渡されて、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策をとれと要求されたって、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲がJASRACの管理楽曲リストにある楽曲かどうかなんてわからないのだと言うことを何度言ったらわかるのでしょうか。機械的に処理するにせよ、人海戦術を行使するにせよ、JASRACの管理楽曲リストに掲載されている楽曲の歌詞やメロディ等の内容に関する情報がなければ、システム管理者側は、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲がJASRACの管理楽曲リストにある楽曲かを知り得ないわけです。

 ファイルローグ事件で裁判所がJASRACを甘やかしてしまったのがよくないのですが、人海戦術では処理できる量が限られている(JASRACの管理楽曲リストに掲載されている楽曲の歌詞やメロディと、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲とを比較参照しなければならない分、並びに、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲の方はある程度の長さそれを聞かないと、そのメロディも歌詞も把握できない分、誹謗中傷発言の削除よりは手間暇が掛かります。)のは明らかなのですから、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策をとらせたいのであれば、インターネット上で流通している音声データのうち管理楽曲の権利を侵害したものである可能性が高いものを機械的にピックアップするシステムをJASRACの側で開発し、広くネット企業にタダで使用させればよいだけの話です。そのように「管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策」を容易かつ安価に講じうる体制を整えた後に、なおもそのような対策を講じようとしない企業に対して訴訟を起こすというのであればまだ筋は通りますし、YouTube(Google)のようにそのようなシステムを構築する技術力と資金力を有する企業に対して訴訟を提起するというのであればまだ筋は通りますが、ジャストオンラインのような小さな企業に無理を強いる要求を掲げて訴訟を提起するというのは、弱いものいじめとの感が否めません。

 なお、訴訟の帰趨に関しては、権利侵害コンテンツの割合がどの程度あるのか、当該サイトが投稿者や閲覧者を絞り込む工夫をしていたか、運営会社の経営者が余計なことを口走っていないか、運営会社が具体的な削除要請や発信者情報の開示要請等に誠実に応じてきたかにもよりますし、すでに具体的な削除要請を行っていた部分が却ってJASRACに不利に働く場合もあり得るのですが(ファイルローグ事件の時は、管理会社側が用意したノーティス・アンド・テイクダウン手続を無視しきったことにより、この手続は実効性がないと判断してもらえました。)、まあ、どうなることでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 11:08 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

ソフトウェア紛争解決センターがADR法に基づく認証を取得

 そういえば,財団法人ソフトウェア情報センターの主宰する「ソフトウェア紛争解決センター」が,7月28日に,裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)に基づく認証を取得していたのですね。

 私も,若輩者ながら,仲裁人・あっせん人候補の一角に加えていただいています。

 よろしければ,お気軽にご利用下さい。

Posted by 小倉秀夫 at 08:34 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/28/2008

「ネット権」者が許諾義務を負う対象

「ネット法」の政策提言に関する補足説明」には、

ネット権者は、権利を保有すると同時に、収益の公正な配分を著作者などの権利者に対して行う「法的な」義務を負う。また、インターネット上でのデジタル・コンテンツの流通のための利用は、ネット権者が独占するものではない。ネット権者以外の者も、ネット権者から「許諾」を得て利用でき、その際、ネット権者による恣意的な許諾拒否等は許されず、一定の場合には許諾する義務を負うものとする。
とあります。

 ただ、「許諾義務」を負う対象が、インターネット上での一定のデジタル・コンテンツの流通に関してネット法により新たに付与された利用権及び許諾権に限定されるのか、当該コンテンツに関してネット法によらずにネット権者に帰属する利用権および許諾権を含むのかによって、その想定される運用って全然違ってくる(放送コンテンツについて、そこに含まれている音楽著作物や実演等についてインターネット上での流通を許諾する義務を負わされても、テレビ局が有する当該放送コンテンツについての「映画の著作物」の著作者として有する公衆送信権や放送事業者として有する複製権、送信可能化権等に付き許諾を恣意的に拒絶できるとすれば、その放送コンテンツをネット上で流通させられるのは事実上その放送事業者とその関連会社に限定されるように思います。)ので、その話をゲームラボの連載コラムに書こうかなと思っています。

Posted by 小倉秀夫 at 02:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

07/09/2008

B-CAS社の計算書類

 B-CAS社のウェブサイトで、同社の計算書類が公開されています。

 これによれば、2008年3月期のカード発行数1668万3000枚に対し、同期の売上高が98億6900万円。つまり、同社に他に収入減がなかったとして、カード1枚あたりの売上高は約592円。で、売上原価率が約91%。これが本当だとすると、B-CASカードを交換する際に徴収される2000〜3000円の交換料っていったい何なのでしょうっていう気になりますね。メーカーには大量供給に代わりに相応の割引をしているであろうとは理解するとしてもですね。

 2006年3月期はカード1枚あたりの売上高が約768円、2007年3月期は約680円ですから年々下がってはいますね。発行カードにおける3波共同カードの割合は、80%→76%→75%ということで、それほど変動していないのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 11:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

06/30/2008

CDもSOLDES

 約1週間ほどフランスに行っていました。

 もともと、この本の関係の企画にあわせて日程を組んだのですが、ちょうどEURO2008の準決勝やSOLDESのシーズンとぶつかったので、普段とは異なる雰囲気が楽しめておもしろかったです。

 ということで、最後にParisのVirgin Mega StoreやFNACに寄ったら、そこでもSOLDESをやっていました。Virginにいたっては、日本のVirginで売れ残った乏しき日本語の帯がついたCDまでJunk品として売っていました。

 そんな中今回私が購入してきたのは、












































Mademoiselle K jamais la paix 12.99€
Alizeé Psychédélices 21.00€
magalie vaé magalie vaé 23.30€
Christophe Willem Tout En Acoustic 25.20€
Fatal Bazooka T'as Vu 6.99€
BBBrunes Blonde Comme Moi 10€
Plactiscines LP1 7€

です。

 何で購入価格まで掲載したのかというと、アーティストの格・人気や発売時期との関係で、このくらい価格差があるのが正常な姿なのだろうなあと思ったからです。

 それにしても、Fatal BazookaのMichaël Younって、"Stach Stach"でお馴染みのthe Bratisla Boysをやっていた人なんですね。

Posted by 小倉秀夫 at 01:37 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/20/2008

本案でも勝ち

 私は、区民法律相談のために区役所に行っていたので判決言渡期日に出頭していなかったのですが、まねきTV事件は、本案訴訟でも勝訴したようです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:22 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/13/2008

mobile.me

 Apple社は,近々,mobilemeというサービスを始めるのだそうです。しかし,その発表は,少々早すぎたのではないかという気がします。

 といいますのも,モンテネグロの独立に伴って新設された「.me」ドメインのランドラッシュの受付期間が2008年6月9日から同26日までに設定されているからです。

 「mobile.me」ドメインのオークションは凄く盛り上がりそうな気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 07:32 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/11/2008

地上デジタルチューナーの国費による配布を行う前に

 朝日新聞の報道によれば、総務省は、11年7月24日までにすべてデジタル化される地上波テレビ放送を視聴するための専用チューナーなどの受信機器を、経済的に購入が厳しい生活保護世帯に現物支給する方針を固めたのだそうです。

 ただ、専用チューナーに必要不可欠なB-CASカードの販売をNHKら放送事業者らが出資するB-CAS社が独占販売している現状で、家電メーカーの尻だけを叩いて「安価」な専用チューナーを納品させても、それは、国費を投入して、B-CAS社を通じてNHK等を焼けぶとらせる結果になるのではないかという気がします。

 そうならないためには、B-CAS方式のスクランブルを少なくとも地上デジタル放送では行わないように放送局に行政指導を行うか、B-CAS方式の受信カードの製造に必要な技術を解放させてそこに市場競争原理を導入させていくことが先なのではないでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 10:24 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

06/08/2008

Googleですら行う妥協をはてなが行わない理由って?

 はてなブックマークの場合、特定のサイト、特定のエントリーについて利用者がブックマークをすると、ブックマークされたエントリー等の一部が切り取られてブックマークページに表示される仕組みになっています。つまり、はてなブックマークは通常ブックマーク元のエントリー等の一部を複製および送信可能化という形で利用しているということができます。

 既存のウェブサイトやエントリーの一部を切り取って送信可能化するという行為自体はGoogle等の検索エンジンでもやっているわけですが、Google等は、ロボットよけのタグを埋め込むことで特定のウェブサイトをその検索サービスの対象外とする余地を各サイトオーナーに与えています。そのことにより、「黙示の許諾」等の主張をしやすい形にしているわけです。

 そういう意味では、はてなブックマークに取り込まれたくないサイトオーナーのためのオプションを用意しないというのは、いかがなものかなあという気がします。もちろん、多くのサイトオーナーは自分のサイトがソーシャルブックマークされることを拒絶したりはしないということで黙示の許諾の存在を推定するのはぎりぎり許されなくはないとは思うのですが、個々のサイトオーナーから、はてなブックマークの対象から外してくれとの明示的な意思を告げられた場合には、黙示の許諾の推定というテクニックは使えないように思います。かといって、「引用」一本でいくのはそれなりに苦しいように思います。

 といいますか、Googleですら行う妥協をはてなが行わない理由って、何かあるのでしょうか。

【追記】

 SiroKuroさんからコメント欄でご指摘をいただきました。

 ただ、標準的なタグの用法を使用しているGoogleですら、「ヘルプセンター」→「ウェブマスター/サイト所有者」→「Google の検索結果にコンテンツが表示されないようにする方法」で必要な情報があることがわかるのに、はてなの場合、「ヘルプ」→「注意事項:はてなブックマークご利用上の注意事項について。ご利用の際は必ずご一読ください。」の中に置いていますから、わかりにくいですね。

 また、noarchieveタグでテキストを表示しないというのはわからなくはないですが、noindexタグははてなブックマーク自体をしてもらいたくない人のために用いるべきタグではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 05:51 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

06/04/2008

知的財産権研究会を振り返って

 今日私が知財分野を得意とする弁護士と自称してもとりあえず石を投げられないポジションにいられるのも、一つには、先日100回記念シンポジウムを行うことができた知的財産権研究会のお陰といえます。

 弁護士に成り立ての頃から中山先生を中心として、田村先生や、熊谷先生等の一流の研究者や、石原先生や出井先生などの第一線の議論を聞き、ときに参加することができたわけですし、事務局側のイソ弁として長らく受付をやったお陰で、名前を覚えていただき、関先生経由でCIPICの研究会に参加させていただいたり、関先生や杉政先生に知財訴訟に誘っていただいたりしたわけですし、最初に論文らしきものを公表させていただいたのも「知的財産権研究」でしたし(最初はBBS特許並行輸入事件の評釈。)。また、中大の講師にと私を誘って下さった佐藤恵太先生ともこの研究会で知り合ったわけですし、著作権法コンメンタールの企画は、この研究会関係のパーティの際にその場の雰囲気で金井先生と企画して東京布井出版の上野社長の了承を得てしまったわけですし。

Posted by 小倉秀夫 at 01:44 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/31/2008

必要悪な規制としての著作権における過剰規制

 本日の知的財産権研究会のシンポジウムは、相澤先生の見事な司会ぶりもあり、無事盛況のうちに終わることができました。

 シンポジウムの議事録はいずれレクシスネクシスのサイトにアップロードされると思うのですが、最初の自己紹介のときのために用意しておいた原稿をとりあえずアップロードしておこうと思います(必ずしも、この通りしゃべっているわけではありませんが。)。



 私は、いわゆる中古ゲーム訴訟で販売店側の代理人となったり、ファイルローグ事件でハイブリッド型P2Pサービスにおける中央サーバ管理人の代理人となったり、選撮見録訴訟では集合住宅向けのTVチューナーカード付きのサーバシステムの開発・販売者の代理人となったり、あるいは、まねきTV事件においてベースステーションを預かるハウジング事業者の代理人となったりしてきました。また、既存のコンテンツを使った、あるいは、既存のコンテンツをユーザーが使用する可能性のある新たな商品やサービスを開発した事業者から、このサービスを市場に投入して大丈夫だろうかというご相談をいただくこともしばしばあります。また、著作権法等の改正に関するパブリックコメント等が募集されたときには、一市民として、これに応募することを最近は自分の責務として課しています。更にいえば、レコード輸入権が創設された際には、1洋楽ファンとしてこれに対する反対運動をかなり精力的に行いました。

 そのような立場から見たときに、著作権法というのは、市民による文化の享受をより豊かに、より便利にするために新たな情報技術を活用しようとする際に、その前に立ちはだかる「壁」ないし「規制」として写るということになります。もちろん、「排他性に乏しい情報財の流通を単純に市場に委ねたときには失敗が生ずるから一種の「必要悪」として国が一定の規制をかけるのだ」という話は理解するのですが、そのことは、投下資本の回収手段の柱となっている正規商品の流通を阻害しない方法での情報財の利用まで国が規制してもよいということまで意味していないように思うのです。

 つまり、「著作物」が、「著作権者」の許諾なくして、あるいは「著作権者」の意図しない方法によって利活用されたというだけでは、著作物を創作しよう、あるいは著作物の創作に対して投資を行おうというインセンティブは本来削がれないはずです。権利者側のご意見を伺っていると、自分たちが権利を有している情報財を用いて利益を得ている人や企業があること自体が創作へのインセンティブを失わせるのだとするものが少なからずあるのですが、経済法である著作権法により保護すべき「インセンティブ」というのは妬み等の感情的なものによって左右される純主観的なものではなく、資本主義的な経済合理性に支えられたものに限定されるのだと思うのです。

 そのような意味でのインセンティブは、新たな利活用方法が出現し普及することで、著作権者が本来予定していた従前の方法では投下資本を回収し難くなっていった場合に初めて削がれていくわけです。そして、そのような事態に至ったときに初めて、そのような新たな利活用方法を、投下資本の回収可能性をある程度高めるのに役立つ限度において、規制することが許されるにすぎないのではないかと思うのです。更にいえば、新たな利活用方法により情報財の効用が高まっているのであれば、これを禁止するのではなく、これによってもたらされた経済的利益の一部を著作権者に還元する方向での規制にとどめた方が、情報財という資源の最適分配には資するわけです。

 そのような観点から見ると、現行の著作権法ないしその運用は、本来の投下資本の回収方法を阻害しないような著作物等の利活用まで禁止してしまっており、いわば過剰規制により資源の最適分配が阻害されている状態にあるように感じています。

Posted by 小倉秀夫 at 11:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/30/2008

とうとう大台に

 私も今日でとうとう40歳の大台に乗ってしまいました。まあ、音楽の話では時代に取り残されていないから良いのですが(perfumeよりチャットモンチーやいきものがかりの方に魅力を感じる分、多少取り残されているのでしょうか。)、でももう今のゼミ生とは20歳近く年の差が離れているわけですから、私が知っている音楽を彼らが知らないのも宜なるかなという気がして少しブルーです(とはいえ、Biz Markieの「Alone Again」の適・違法性を課題として出したときに、元ネタたるRaymond "Gilbert" O'Sullivanの「Alone Again (Naturally)」を皆知らなかったのはどうかとは思いますが。)。

 それはともかく、知的財産権研究会の100回記念シンポジウムはいよいよ明日に迫ってきました。

 先週の著作権法学会で中山先生がフェアユースについてあれだけ力強く語って下さいましたので、明日のシンポジウムでさらに中山先生がフェアユースについてどのようなことを語って下さるのか楽しみです。

 その他、パネリストには、ネット法の提唱者の1人である相澤先生や、BSAの日本担当顧問の石原先生を擁しておりますので、かなり期待していただいて良いのではないかと思っています。

 また、知的財産権研究会での研究報告をまとめた「知的財産権研究」の第5巻も明日付でLexisNexis社発行、雄松堂発売ということで出版されます。こちらでは、私は、まねきTV事件についての評釈を書いております(この研究会では、自分が担当した事件について発表するということが普通に行われているのです。)。明日のシンポジウムに出席される方には無料頒布されますが、そうでない方は書店等でお買い求めいただければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:01 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

05/25/2008

昨日の著作権法学会

 昨日は、日本著作権法学会のシンポジウムに出てきました。

 今回のシンポジウムのテーマは「権利制限」なので、どうしてもフェアユースや、3ステップテスト等のトピックが注目されますが、島並先生が発表された「ルールとスタンダード」のお話も面白かったです。

 ところで、討論の際に私が提出した質問の趣旨は概ね下記のとおりです。

 ベルヌ条約やTRIPs協定、WCT等で定められている「3ステップテスト」というのは、著作権の制限規定を定めることができるのは、(1)著作物の通常の利用を妨げず、かつ、(2)権利者の正当な利益を不当に害しない、(3)特別な場合、に限定されるとするものですが、このうちの1つの要件を欠くとの理由で著作権を制限しない≒一定の表現行為を規制する、ということは表現の自由等の憲法的な価値との関係で問題を生ずることはないのでしょうかとのことです。そして、裁判所が現行著作権法上の著作権の制限に関する規定を3ステップテストを満たす限度で合条約的に制限解釈した場合に、あるいは、3ステップテストのうちの1つを満たさないが故に制限規定を新設しない又は改廃するという選択を立法府が行った場合に、表現の自由等との関係はどうなるのかということです。

 例えば、一般的なフェアユース規定が置かれた後に、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害することもないような態様で、他人の著作物を利用した表現行為が行われた場合に、当該表現行為については「公共政策上の明確な理由」ないし「他の例外的な状況」から積極的にこれを正当化する事情が見られないとの理由で、合条約的制限解釈により、フェアユース規定の適用を否定し、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害することもない表現行為を規制することが憲法上許されるのかということです。

Posted by 小倉秀夫 at 04:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

05/20/2008

It's too late

 角川歴彦さんが次のように述べています。

「視聴者は、テレビ局が送り出す番組表にのっとって番組を視聴することが面倒になってきている。都合のいい時間に都合のいい場所で視聴したい、という要望がYouTubeの利用へと視聴者を走らせた大きな要因であり、YouTubeが短期間で多数のユーザーを獲得できたのは、我々も含め、送りだし側がニーズをとらえきれていなかったから」と分析。「2年前に“見逃しテレビ”を立ち上げていれば、YouTubeは成功しなかったとすら思う」とした。

 「選撮見録」を無理矢理つぶしたのもテレビ局側の敗因の一つですね。「選撮見録」はCMカットには対応していなかったし,求められれば録画再生視聴率をはじき出して広告料の上昇への交渉に使っていただくこともできたし,テレビ局側に一定の「分け前」も配分する用意もあったのに(っていいますか,その種の和解を提案していたのに),テレビ局側はゼロ回答だったわけです。でも,選撮見録をつぶしたところで,「見たいテレビ番組に合わせて生活のサイクルを構築する」暮らしに普通の国民は戻れない(特に,購買力のある層ほど戻れない)のだから,「気軽にタイムシフト視聴」を行うシステムをテレビ局側がつぶしにかかれば,別の,よりアングラなシステムに飛びつくか,または,テレビ離れをするかしてしまうことは目に見えていたはずです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

05/10/2008

「アナログ放送の方が録画は便利」ではないという印象が強まりかねない社説

 読売新聞の5月10日付の社説「ダビング10 メーカーの頑固さ、なぜ?」は,不思議な社説です。

 読売新聞の論説委員は,

アナログ放送の方が録画は便利、という印象が強まりかねない。

と述べています。「〜という印象が強まりかねない」という言葉は通常,「〜」の部分が真実に反する場合に用いられます。従って,上記表現からは,読売新聞の論説委員においては,「アナログ放送の方が録画は便利」ではないと認識していることが伺われます(「アナログ放送の方が録画は便利」であることを認識しつつ,「アナログ放送の方が録画は便利、という印象が強まりかねない」という表現を用いたとすると,読売新聞の論説委員は,国民が真実を知ることに危機意識を抱いているということになりますが,それはメディアとして自殺行為というべきでしょう。)。

 しかし,質的に劣化はするものの順次複製が行えるアナログ放送と,順次複製を行うこと自体ができないデジタル放送とを比較した場合に,前者の方が「録画は便利」ということは客観的な事実といわざるを得ません。「ダビング10」にしても,最初にデジタル放送を録画した媒体から「ムーブ」を含めて10回コピーを行うことができると言うだけで,そこからの孫コピーはできないわけですから,アナログ放送と比べて「録画が不便」であることは否めません。

 といいますか,本来デジタルデータには,これを順々に複製しても情報の劣化が小さいという特性があるのですが,地上波デジタル放送については,「コピーワンス」技術により,この特性を活かさないことにしたわけですから,「録画」という側面からいえば,地上波デジタルというのは何らのメリットも利用者にもたらさないものであるということができます。

 そもそも,読売新聞社の論説委員は,

デジタル放送のテレビ番組を録画する際の消費者の不満を、軽視してはいないか。

との問いかけをメーカーに対して行っているのですが,それは矛先を間違えているのではないかという気がします。読売新聞社は,

約束を守れなくても責任はない、とメーカー側は言い切れるだろうか。
と述べているのですが,メーカー側が,ダビング10を実施してもらうことと引き替えにどのような約束をしたというのかが明らかではありません。権利者側が「権利者側は地上デジタル放送の録画ルールの緩和には補償金制度が必須だ」との前提を表明した上でダビング10の実施に同意したということは,メーカー側が補償金の存続に今後も異を唱えない約束をしたということを意味していません。したがって,守らないことで責任を問われるような「約束」自体がそもそもなかったと見るべきかと思います。

 つまり,この問題は,自分たちが勝手に期待したとおりの行動をメーカー側がとらなかったというだけで,既に決まった合意を保護にしたテレビ局側に問題があるのであり,むしろ,いわば駄々をこねる形になっているテレビ局側を責めるべきです。

 なお,

2011年の地上テレビ完全デジタル化の足かせにもなる。
といわれても,2011年までに地上波デジタル受信機への切り替えが進まなくなった場合に最も打撃を被るのは,テレビ局の側だと思うのですが,読売新聞社の論説委員には難しすぎるかもしれませんね。

Posted by 小倉秀夫 at 08:00 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (1)

05/07/2008

Yokohamaが聴ける!

 以前のエントリーでご紹介した,Boの「Yokohama」がiTSJにアップロードされています(→Bo - Koma Stadium - Yokohama)。

 是非ともお聞き下さい。

Posted by 小倉秀夫 at 01:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/06/2008

コピー制御信号を脅しに使うことについて

 朝日新聞の記事によれば,

iPodなどの携帯音楽プレーヤーと、テレビ番組を録画するハードディスク内蔵型レコーダーに「著作権料」の一種を課金する制度改正の骨子案を文化庁がまとめた。8日の文化審議会に提案する。抵抗するメーカーに対し、課金を求める著作権団体が「秘策」で揺さぶりもかける。

とのことです。その秘策とは何かといえば,

 一方、著作権団体の「秘策」は、6月2日から導入する方針の「ダビング10」の拒否だ。デジタル放送のテレビ番組を自宅のハードディスク内蔵型レコーダーなどに録画した後、DVDなどに9回複製できる新しい方式だ

とのことのようです。

 しかし,2011年までに地上波アナログを停止させるというのはテレビ局側の事情なのであって,「アナログ波受信からデジタル波受信に切り替えると却って不便になる」状態を継続することにより追い込まれるのはテレビ局側なのではないかという気がしなくもありません。更にいえば,テレビ番組(とりわけ地上波デジタル放送の番組)を録画する機能を有する機器を製造・販売しているわけではない携帯音楽プレイヤー製造会社にとっては,何でそんなもののために払わなくとも良い上納金を払うことに同意しないといけないのかというところではないかという気がします。

 それ以前に,著作権法の平成11年改正の際には,コピー制御信号に対応する機器を製造・販売する義務を負わせないことを前提としておきながら,コピー制御信号に対応させることを事実上メーカーに義務づけるために無料放送である地上波デジタルにスクランブルをかけていることだけでも本来許し難いのに,そのようにして半ば強制的に録画機器に対応させたコピー制御信号を,私的団体による徴収され分配される一種の税金の範囲を拡張することに反対させないための脅しとして用いるというのは許されることではありません。無料放送である地上波デジタルにかけられたスクランブルがこのような邪な目的に活用されるのであれば,議会は直ちに放送法を改正して,地上波デジタルについてスクランブルをかけることを禁止すべきです。スクランブルをかけた上でなければ放送をしたくない事業者は地上波の放送免許を返上していただき,衛星放送等で思う存分スクランブル付の放送をしていただいたらよいのであって,地上波デジタルの放送免許は,そのような上納金を必要としない事業者に交付したらよいことです。


 強いて妥協案を提示するとするならば,ハードディスク内蔵型ビデオレコーダーに限定して私的録音録画補償金の対象とする代わりに,地上波デジタルについてはスクランブルをかけることを禁止するといったところでしょうか。従前B-CAS社に流れていたお金の一部が著作者団体等に流れるということであれば,機器メーカーもエンドユーザーも特段の不利益を被らないので(正確に言うと,有料放送を視聴したいユーザーは多少不利益を被るのですが),それならば検討に値する話ということができます。

Posted by 小倉秀夫 at 04:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

04/29/2008

管理していない楽曲の分の使用料は受け取るべきではない。

 JASRACに公正取引委員会が立入検査に入った件についての解説は,ゲームラボの連載コラムで記載しました。ここでは,ではJASRACはどうすべきかについて思うところを書くことにします。

 話は簡単で,JASRACが管理していない分については,JASRACは放送使用料をもらうべきではないということです。もともと,放送事業収入の1.5%という放送使用料は,放送で使用される楽曲のほとんどがJASRACの管理著作物を使用していた時代に作られたものですから,JASRAC以外の管理事業者が著作権を管理する楽曲が使用される割合が増大すればするほど,「放送事業収入の1.5%」をJASRACのみが独占的できる正当性がなくなります。

 実際,特定の1週間のサンプリング調査により,または,放送局の使用実態報告書等により,一定数以上放送されたことが明らかな楽曲について,JASRACに著作権を信託譲渡をしていれば,放送事業者が支払った放送使用料の中から印税の支払いを受けることができるのに,JASRACに著作権を信託譲渡していなければ放送事業者が支払った放送使用料の中から印税の支払いを受けることができない(その分は,JASRACまたはJASRACに著作権を信託譲渡している作詞家・作曲家が余分に利益を得る)というのは,不公正ですらあります。

 この問題は,放送に関する包括利用許諾契約のみならず,JASRACが行っている包括利用許諾契約一般について言える(例えば,カラオケ歌唱等)ことなので,公正取引委員会にとやかく言われる前に,文化庁はJASRACに対し,JASRACが管理していない楽曲についての使用料に相当する金額については,包括的利用許諾契約の相手方からこれを受け取らないように行政指導をすべきだと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 02:05 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (1)

04/20/2008

Gospel With No Lord

 CamilleのGospel With No Lord(→Camille - Gospel With No Lord - Single - Gospel With No Lord) は,「さすがCamille」というAvant Gardな作品に仕上がっています。

 曲としては,Camilleの囁きから入り,囁きが繰り返されるうちに,その上にCamilleの歌声がかぶさるというものですが,この繰り返される囁きの部分が,ベースの奏でるメロディ及び指ならしとともに,快適にリズムを刻んできます。

 瑕疵は英仏混合であり,「it」を神から授かったのではなく,家族から授かったのだということをしつこいぐらい繰り返して歌います。神から授かったのでなければ何でも良いといわんばかりに,my brother,my sister,my mother and fatherはもちろん,my father in law,my brother in law,my cousin in law,my god father in law,挙げ句の果てにはhamster in lawまで持ち出してきます。歌の歌詞,それもジメジメしていない歌の歌詞にfather in lawなんて言葉が使われるというのはさすがだなあとしみじみ感じました。
Camille (French)/Gospel With No Lord

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04/11/2008

co.jpドメインを取らない外資系企業は「反日」と受け取られる?

 E社は,「.co.jp」ドメインをとれないことによって,日本国内で信用を失い,ビジネスに差し支えているという主張を繰り返しています。しかし,いわゆるドットコム企業が,日本国内向けサービスを行うに当たって,「.co.jp」ドメインではなく,「.jp」ドメインを用いていると言うだけで,「日本の風習に従う気のない,信頼の置けない企業」という捉え方をされるものだろうかという疑問があります。

 むしろ汎用ドメインとしての「.jp」ドメインが登録可能となってからは,特に一般顧客向けのサービスサイトは,「.jp」ドメインを用いるというのはかなり一般的になってきたとすら私は認識しているわけですが。

 また,「なぜ,.co.jpドメインではないかいちいち聞かれる」ということをずいぶん問題視されているわけですが「co.jpドメインは先に取られていたから」でも「.jpドメインの方が汎用的ですから」でも道都でも説明できると思うのです。「なぜ,.liドメインなのか」(そもそも.liドメインはどこのドメインなのか)聞かれる弁護士だっているくらいなので,大したことはないと思うのですが。

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04/09/2008

入手経路不明な他人のID・パスワードの新たな活用方法

 A社がBというドメイン名を管理するためにCというドメイン代行取得業者から付与されたID及びパスワードを,厦門にあるD社から購入する──これ自体NASDAQ上場企業が行うべきこととは思えません(しかも,その入手経路についてD社は回答を拒んだというのであればなおさらです。)が,入手した他人のID及びパスワードの活用方法としてE社が選択した方法は斬新です。

 E社は,このIDとパスワードを用いて,Bというドメイン名についての登録情報のうち,「経理担当者」についてのみこっそり改変しておき,A社が保有しているFというドメイン名についてのドメイン紛争において,A社とE社の代表者尋問を行う直前に,Bというドメイン名を用いたウェブページにアクセスしようとするとF社のウェブサイトにジャンプするように設定を書き換えました。その上で,「A社は,Fというドメイン名をこのように譲渡していることからも分かるとおり,他人に転売する目的でドメイン名を取得する事業者である。従って,Bというドメイン名についてもA社は不正な利益を得る目的でこれを取得したことは明らかである」と主張してきたわけです。すなわち,E社は,厦門の事業者から入手した,Bというドメイン名を管理するためのID及びパスワードを,A社が転売目的でFというドメイン名を取得したと裁判所に印象づけるために(というか,そのためだけに)活用したということになります。

 私は,厦門の事業者から入手経路が不明な他人のID及びパスワードを購入するというだけで,とても怪しいと感じてしまうのですが,この感覚を裁判所に理解していただけるのかがわかりにくいところです。


 なお,A社がBというドメイン名を取得した2日後に,E社はD社との間でBというドメイン名を取得する契約を締結し,D社はその半月後に,Bというドメイン名を管理するためのID・パスワードをE社に納入しています。

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04/04/2008

知的財産権研究会100回記念シンポジウム

 5月31日に東京国際フォーラムで開かれるシンポジウムに、パネルディスカッションに、パネリストとして出演する予定です。

 私以外のパネリストは、

  1. ご存じ、中山信弘先生

  2. 最近はワイドショーでもおなじみの相澤英孝先生

  3. TMI法律事務所の石原修先生

ということで、とても豪華な顔ぶれなので、時間と興味がおありの方々は是非ともご参加下さい。

Posted by 小倉秀夫 at 11:24 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/01/2008

「知的財産推進計画2007」の見直しにあたり盛り込むべき政策事項

「「知的財産推進計画2007」の見直しにあたり盛り込むべき政策事項」についてのパブリックコメントを下記のとおり提出しました。



1.映画の著作物の送信可能化とともに実演または音の送信可能化を行う場合には実演家またはレコード製作者の著作隣接権が及ばないようにする(報酬請求権化する。)。

 現行法では、ネット事業者が独自番組を製作して配信する場合には、放送事業者が独自番組を製作して放送する場合と異なり、既存のCD等に収録されている楽曲をBGMとして利用する場合には、レコード製作者の許諾を得ることが必要であり、実際には非現実的な利用料を請求され、その利用を断念せざるを得ないのが現実である。しかし、これでは、ネット事業者は、レコード製作者の許諾を事前に得ずにBGMをふんだんに使用できる放送事業者との競争で不利な立場に置かれることになり、結局、効果的にBGMが用いられた質の高いコンテンツの製作は、事実上、放送免許を握った一部の事業者のみが行えることとなってしまう。

 このような閉塞的な状況を打破し、映像番組の製作者の裾野を広げるためには、ネット事業者が独自番組を製作して配信する際にも、放送事業者が番組を放送する場合と同様に、著作隣接権が制限されるように放送度を整備することが求められる。


2.著作権等管理事業法23条第2項に基づき指定著作権等管理事業者に協議を求めることができる「利用者代表」について、特に、多数の個人による非営利または零細な利用が行われている利用区分においては、利用者が支払った使用料の総額に占めるその直接又は間接の構成員が支払った使用料の額の割合等をもとに「利用者代表」を決めるのではなく、当該利用区分にかかる利用者による投票等を通じて「利用者代表」を選任する手続きを新たに設ける。

 現在の著作権等管理事業法の規定では、「一億総クリエイター」といっても、その大多数を占めるアマチュアクリエイターの実情を、著作権等管理事業者の使用料規程に反映させることができず、その結果、多くのアマチュアクリエイターは、きちんと権利処理をした上で既存のコンテンツを利用して新たなコンテンツを作成することを諦めざるを得ないところに追い込まれてしまう。

 このような状況を打破するためには、アマチュアクリエイターの代表が、著作権等管理事業者に対して、その実情に合致した使用料規程を採用するように協議を申し入れる機会を設けるようにすべきである。

3.特に、相続(遺留分減殺を含む。)によって共有著作物となった場合には、過半数の共有持分権を持つ共有者の合意により当該著作物の利用(第三者への利用許諾を含む。)を行い得ることとする。

 現行著作権法では、共有著作物については、共有者全員の合意がなければこれを利用することができないため、特に相続により著作権が複数人の共有となった場合には、相続人間の感情的なしこりなどから、一部の共有者が当該著作物の利用を頑として拒む場合が少なからずあり、それは、優れたコンテンツの死蔵に繋がっていく。

 従って、少なくとも、相続等によって共有著作物となった場合については、「共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。」とする著作権法65条2項の規定は改められるべきである。


4 レコードに収録された実演の特定の利用をその実演にかかる実演家の要求にもかかわらずレコード製作者が拒んだ場合には、当該実演家と当該レコード製作者との約定の如何に関わらず、実演家は、何時にても、当該実演と同一の楽曲に関する実演を新たにレコードに収録してこれを利用することができることとする。

 実演家とレコード製作者との間に専属実演家契約が締結されている場合には、その契約中に収録された実演にかかる楽曲については、当該契約期間中はもちろん、契約期間終了後も数年間は、当該楽曲を別途レコード等に収録して利用することを禁止する約定が付されているのが通常である。このため、実演家がある楽曲にかかる実演を例えば音楽配信したくとも、当該実演にかかるレコードのレコード製作者がこれを拒んだときは、当該レコードに収録された実演を音楽配信できないことはもちろん、当該楽曲を新たに実演してこれを収録したものを音楽配信する等も禁止されてしまっている。

 これでは、レコード製作者が当該実演についての音楽配信等を拒んでいる間は、実演家が、自らの実演を広く世界に配信し、その知名度等を高めてそのライブ収入等を増大させる機会が奪われてしまうのであり、知財立国の名が廃るというものである。従って、レコードに収録された実演の特定の利用をその実演にかかる実演家の要求にもかかわらずレコード製作者が拒んだ場合には、実演家には、これに代替する行為を行う権限が法的に認められるべきである。

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03/27/2008

購買力の旺盛な層を無視したビジネス

 mohnoさんが、「コンテンツの使用許諾を取るには」というエントリーの中で、

きちんとリターンを見せることができれば、けっこういろいろなコンテンツが出てくるんじゃないかと思う(何しろコンテンツホルダーは、みな、金の亡者なんだから:-))。

と述べています。しかし、公平に利用許諾を行い、これにより正当な報酬を受けることにより得る利益よりも、偏頗に利用許諾を行いこれにより生じた独占的利益の上前をはねる方が、自分たちにはお似合いだ、とコンテンツホルダーが考えたときには、そのようにはなりません。

 mohnoさんは、

たとえば、小倉弁護士が iTunes の品ぞろえが悪くて「日本の有料音楽配信が栄えない」なんて嘆いているけれど、実はジャニーズ以外はすべて「着うたフル」にそろっていたらしい(はてブより)。最近、RIAA のデジタル音楽配信市場の数字をみて驚いたのだが(まだ2006年の数字しか出ていないが)、米国の市場規模は8.78億ドル。対する日本は(2006年で)535億円。人口比/GDP比(約2.5倍)を考えると、ものすごいドル箱(いや円箱)に成長している。だから、こぞってみんなが携帯向けに楽曲を配信したがるのだろう。

と仰っています。が、本来、着うた配信に許諾を与えることと、iTunes等のパソコン向け音楽配信に許諾を与えることとは矛盾しないはずです。といいますか、「配信業者に配信の許諾を与えてこれに対して正当な許諾料の支払いを受ける」というビジネスモデルにおいては、許諾先の配信事業者を絞る理由はあまりありません。しかし、現実にはそうなっていないわけで、それは、レコード会社と、特定の配信業者の資本関係に注目した方が合理的な説明ができるのではないかと思います。

 その結果どういうことが起こっているかというと、携帯のみユーザーよりは平均的な可処分所得の高いパソコンユーザーを、潜在的な顧客から排除することになっているわけです。ミドルクラス以上の、購買力の旺盛な層に届く商品展開をしないでおきながら、「コンテンツをネットに流しても儲からない」みたいな言い方をされても、「なんだかな」としか言いようがないわけです。もちろん、携帯ユーザーは数が多いので「広く浅く」ビジネスだけでよいのであればそれでもよいのでしょうが、そうであるならば、レコード会社として敢えて潜在的顧客としては見限ったパソコンユーザーが非正規市場から音楽データを調達することに目くじらを立てることもないように思うのです。

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堀社長の憂鬱

 ホリプロの堀義貴社長のシンポジウム「動画共有サイトに代表される新たな流通と著作権」での一連の発言は、ネットで笑いものにされているようです。

 IT革命の特徴は、潜在的な顧客層の地域的な拡大と、中間業者の排除によるコストの削減ですから、コンテンツ産業がIT革命の利点を活かさないのであれば、これによる収益の増大に繋がらないのは当然のことです。

 例えば、番組制作会社が制作したコンテンツを広告付きのメディアとして広く流通させるには、現時点において、どのような技術を用いるのがベストなのかということを考え、実践してみる。そんな当たり前のことをしてこなかったのが、これまでの日本のコンテンツ産業です。その結果、無駄なお金が地方テレビ局の経営者や従業員の給料へと消えていきます。それは、効率的なコンテンツ流通が行われていれば、クリエイティブ部門に本来回るべきお金だったのにです。

 在京キー局には、地方の系列局を中抜きするチャンスが何度もあったはずです。全国のケーブルテレビ局から在京キー局の放送の同時再送信の許諾の申請があったとき、BSデジタル放送について在京キー局の子会社に放送免許が与えられたとき、そしてブロードバンド回線が普及しIPTVが現実味を帯びてきたときです。しかし、在京キー局は、系列のローカル局に依然として「我が世の春」を味わせるために、これらのチャンスをずっと見送り続けてきました。それどころか、インターネットを利用した番組の配信が著作権法により阻害されないように著作権等を制限する規定を設けようという声が高まったときに、キー局のロビイストたちは、その放送対象地域を越える範囲への自動公衆送信については著作権等の制限を受けることを自ら拒否して見せたわけです。

 その結果、どうなったのかといえば、実際に番組を製作するキー局に集まる広告費が中途半端にしか集まらず、それ故中途半端なレベルのテレビ番組しか制作できなくなりました。では、地方テレビ局に広告費が落ちている結果地方では地域色豊かなコンテンツが制作されているのかというと、関西地区を除けば、悲惨なものです。在京キー局の同時再送信担当者としてはローカル局の数はしばしば不足していますが、その地域に関するコンテンツを競って制作する事業者としては多くの地域で明らかに多すぎます。

 堀社長には、一流のビジネスマンとして、現在のコンテンツビジネスにおいて、どこに無駄があるのかを再検討した上で、なおもテレビ局、とりわけ系列ローカル局とネット事業者をどう取り扱っていくのかを再考していただきたいものです。

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03/26/2008

WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説

 ハンガリー著作権評議会会長であり、前WIPO事務局長であるミハイル・フィチョール博士による「WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説」の日本語版が社団法人著作権情報センターで昨年3月から無償配布されていることを知ったので、早速一部をいただきました。

 フィチョール博士も謝辞で述べるとおり、必ずしもWIPOの立場を反映していない博士自身の見解が追加されているとはいえ、ベルヌ条約やローマ条約、レコード条約、WIPO著作権条約、WIPO隣接権条約の逐条解説については類書がありませんから、貴重な一冊であることは間違いありません。

 また、「著作権及び隣接権用語解説」の部分についても、

「公衆」は、家族の通常の集まり及びその最も親密な知人たち以外の相当多数の人々から成る集団である
という、日本の多数説である「特別な人的結合関係がなければ1人でも公衆」という見解とは真っ向から対立するあたりが面白かったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 05:16 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/23/2008

Culture Firstのウェブが公開

 Culture Firstのホームページが立ち上がったようです。そこでは、

私たちは、流通の拡大ばかりが優先され、作品やコンテンツなどの創作物を単なる「もの」としか見ないわが国の昨今の風潮を改めるべく、文化の担い手として社会に喜びと潤いをもたらす役割を果たしていくことをあらためて表明するとともに、次の3つの行動理念を掲げ、最先端の知財立国として、世界に冠たる「文化=Culture」が重要視される社会の実現を求めます。

との意見表明がなされています。「文化の担い手」が起草しまたは承認したものとは思えない、空虚で上滑りした文章です。

 しかも、そのための具体的な行動方針として、私的録音録画補償金制度の拡充を求めることしかしていないというあたりが何ともいえません。私的録音録画って、作品やコンテンツの「流通」自体を拡充するものではなく(例えば、私が、購入したCDを、CDコンポに挿入して聴くのではなく、iPodにリッピングして聴くことにしたとして、そのことにより「流通」は拡大していません。)、むしろ、作品等の享受形態を拡充するものです。より正確に言えば、私的録音録画は、作品等を、いつでも、どこでも享受できるという言語著作物については写本の時代から実現できていたことを、音や影像でも実現する手段としてなされているにすぎず、作品等の享受形態の拡充というより、回復といった方がよいかもしれません。

 その上で言えば、経済の発展や情報社会の拡大を目的としたどんな提案や計画も、文化の担い手を犠牲にし進められることのないよう、関係者並びに政府の理解を求めますとのことですが、私が、購入したCDから音楽をリッピングしてiPodで聴くことにより、「文化の担い手」がいかなる意味で犠牲になるというのでしょうか。理解を求めるというのであれば、その前にきちんと説明すべきです。

 また、文化の振興こそが、真の知財立国の実現につながることについて、国民の理解を求めるとともに、その役割を担っていくことを表明しますとのことですが、ハードウェアメーカーの利益の上前をはねなければ振興されない事業なんてものは、「立国」の役には立ちません。知財立国を実現する、すなわち、知的財産によって国家の存立・繁栄を図るというのであれば、私的録音録画補償金などに頼らず、海外に進出して、世界中からお金を集めるくらいのことが必要です。補償金に頼り、補償金の拡充の陳情に明け暮れる事業者の団体がどのくちで「立国」などといえるのか、大いに疑問です。

Posted by 小倉秀夫 at 03:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

03/20/2008

「ネット法」に関して質問してみました。

「ネット法」について,提唱者の真意をあれこれ詮索しても始まらないので,電子メールで質問してみることにしました。どのような回答がなされるのか楽しみです。

 デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム 御中

 私は,弁護士業を営むとともに,大学で著作権法を教えるものです。貴フォーラムが提言された「ネット法」構想に大変興味を抱きましたが,何点か分からない点がありましたので,ご質問させていただきたいと考え,電子メールを差し上げる次第です。

  1. 貴フォーラムにおいては,「ネット法」において,著作権等管理事業法第3章,とりわけ第16条のような規定を置くことを想定されているのでしょうか。
  2. そのような規定を置くことを想定されていない場合,「ネット権者」が,自己と一定の資本関係にある事業者に対してのみ許諾を行うことにより当該事業者の収益が増大した結果直接的または間接的に得た利益もまた,権利者に対する分配の対象となるのでしょうか。
    (例えば,レコード製作者Aが,自己がネット権を有する楽曲甲を,AとBが半額ずつ出資して設立した配信会社Cにのみネット配信を許諾した場合,楽曲甲にかかる作詞家,作曲家,実演家等が分配を受ける「収益」とは,CからAに支払われる許諾料のみが対象となるのでしょうか,楽曲甲を配信することによりCが受ける収益の全額または半額も「収益」に含まれるのでしょうか。)。

 ご多忙のこととは存じますが,以上の点につきましてご回答いただければ幸いです。また,「ネット法」構想につきましては同様の疑問をお持ちの方も多いと思いますので,貴フォーラムのご回答を,私のブログ

http://benli.cocolog-nifty.com/
にて公開させていただければ幸いです。
以上

Posted by 小倉秀夫 at 11:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/18/2008

ネット法?

「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」は17日,

インターネットでの流通に関する権利をネット権者に集中する。原権利者らは、インターネット上の流通については原則として権利行使できなくなるが、代わりにネット権者に対して報酬請求権を持つことになる

としつつ,

ネット権の対象となるコンテンツは当初、インターネット上での流通の要請が大きい映画、放送、音楽の3分野とし、それぞれ映画製作会社、放送事業者、レコード製作者がネット権者となる

とする政策提言をまとめたのだそうです。しかし,従前ネットでのコンテンツ流通を阻んできた事業者に許諾権を与えても,コンテンツのインターネット上での流通は盛んにはならないだろうと思ったりします。例えば,東京キー局で製作され放送されたテレビ番組のインターネット上での流通に関する許諾権をテレビ局に集中させた場合に,徳島県在住者が視聴できるような形で流通させることを許諾してくれるのだろうかというととても疑問だったりします。また,音楽のインターネット上での流通に関する許諾権をレコード製作者に一本化させた場合に,メジャーレコード会社が共同出資して設立した音楽配信会社のライバル会社に許諾してくれるのだろうかというととても疑問だったりします。

 日本におけるデジタルコンテンツの流通を促進するのが狙いなのであれば,単に許諾権を特定の事業者に一本化するだけでは足りず,許諾権を一本化された事業者が,どのネット事業者に対しても,同じ条件で許諾を行うという体制を組む必要があります。といいますか,この提言では,デジタルコンテンツの流通を促進するために,特定のコンテンツに関して他社が有する許諾権を強制的にとりあげてしまおうという話なのですから,映画製作会社、放送事業者、レコード製作者は,本来,自社の競争制限的利益を追及するためにこの許諾権を差別的に行使することは,一種の権利の濫用であって,許されるべきではないはずです。

 「有識者」が集まっていながら,そのことに触れられていないのが残念です。

Posted by 小倉秀夫 at 01:51 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/05/2008

mixi内の投稿と公表権

 mixi騒動に関して気になったことの一つに、「公表権」についての一般の誤解というのがあります。

 公表権とは、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利をいいます(著作権法第18条第1項)。つまり、著作者の同意を得て公表された著作物については、著作者は公表権を行使することはできません。

 従って、mixi内に投稿したコンテンツについて投稿者が公表権を行使しうるかは、この投稿行為が著作権法上の「公表」にあたるのかが問題となります。では、著作権法上の「公表」に関する規定を見てみましょう。

 著作権法第4条第2項は、

 著作物は、第二十三条第一項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者によつて送信可能化された場合には、公表されたものとみなす。
と定めています。そして、「送信可能化」については、著作権法第2条第1項第9号の5で
送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
と定義され、ここでいう「自動公衆送信」は、同法第2条第1項第9号の4で
自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
と定義され、さらにここでいう「公衆送信」は、
公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
と定義されています。さらに、ここでいう「公衆」は、同法第2条第3項により、特定かつ多数の者を含むものとするとされています。特定かつ多数の者を含むものとした結果著作権法上の「公衆」とは何を意味することになったのかについては、アプリオリな「公衆」とはなんぞやということとの関係で、「不特定人または多数人」とする見解と、「多数人」とする見解とに分かれます(前者の方が多数説です。)。

 従って、mixiが「閉じた空間」であろうとも、そのコンテンツにアクセスしうる人が「多数人」といえる程のものであった場合には、mixiへの投稿により送信可能化がなされ、著作権法上の「公表」がなされたということになります。なお、何人以上から「多数人」といいうるかは難しい問題ですが、選撮見録事件高裁判決では「24戸」からサーバにアクセスしうる場合にこれを「送信可能化」を認めています。

 では、マイミクが少ない人は大丈夫かというと、そこがまた難しい話です。すなわち、不特定人については少数(極端な場合1人)であっても「公衆」にあたるという見解が広く支持されており、そのような見解を支持する人々の多くは、何をもって「特定」人とするかについて家族に準ずるほどの高度の個人的結合関係を必要とするという見解である場合が少なくありません(私はそういう考え方には反対なのですが。)。このような見解に立った場合、そのコンテンツにアクセスできる人の数が少ないとしても、コンテンツ投稿者と、これにアクセスすることができる人との間に、家族に準ずるほどの個人的結合関係がない限り、投稿=送信可能化=公表ということになり、その時点で公表権を喪失するということになります。

 従って、mixi内の投稿について必ずしも著作者が公表権を行使しうるとはそもそも言えないということになります。

 その後の商売のことを考えると、その投稿者に連絡がつく限りにおいて、投稿者の許諾を改めて得ることなく、その投稿を書籍化するようなことはしないとは思いますが、法的にいうと上記のようなことになろうというお話です。

Posted by 小倉秀夫 at 07:19 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

02/25/2008

まねきTV本案訴訟が一段落

 まねきTV事件の本案訴訟の第一審の審理が一段落となり,判決ないし中間判決(損害論の審理は後回しにして,侵害論の審理しかしていないため)の言渡期日が平成20年6月20日と指定されました。

 さて,どうなることやら。

Posted by 小倉秀夫 at 04:34 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

02/20/2008

エルマークについて

 日本レコード協会が、「レコード会社との契約によって配信されているレコード(CD)音源や音楽ビデオなどに表示されるマーク」として「エルマーク」なるものを始めたのだそうです。

 とりあえず、発行先一覧のPDFを見てもApple社のiTunes Storeが入っていない時点でいかがなものかという気がします(まさか、あそこは違法サイトではないですよね。)。

 それと、(違法にアップロードされた音楽ファイルを私的使用目的でダウンロードする行為が違法化された暁には)ネット上にアップロードされているファイルをダウンロードするかどうかを考える際には、当該音楽ファイルにかかる楽曲について、誰が著作権を有し、誰が著作隣接権を有しているのか、そして、それら全ての権利者から許諾を得てアップロードされているのか否かを責任を持って表示してくれないと困るのであって、「このサイトにアップロードされているものについては、レコード協会傘下のレコード会社から許諾を得ているはずです」ということを表示してもらってもさほど意味はありません。せいぜい、日本のヒットチャートを賑わせているような国内メジャーレーベルの作品については、エルマークが付いていないサイトからのダウンロードは危ないかもしれないというくらいの話です(しかし、iTunes Storeを取り込めていない時点で、それすら怪しいですが。)。

 さらに日本レコード協会に注文を付けるとすれば、日本レコード協会傘下のレコード会社が日本国内における著作隣接権を有しているレコードについて、誰から許諾を得れば良いのか、許諾の条件はいかなるものかといった情報を提供するデータベースを作って欲しいです。そうすれば、「違法」なアップロードも若干減るのではないか、少なくとも、「禁止的でない条件で利用許諾をする」という運用がほぼ網羅的になされるのであれば、違法アップローダーに対する社会の風当たりはもう少し強くなるのではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 03:18 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

02/12/2008

進化するコンテンツビジネスモデルとその収益性・合法性

 3月17日に、虎ノ門パストラル新館で行われる

DCAJコンテンツ知的財産権セミナー

進化するコンテンツビジネスモデルとその収益性・合法性

── VOCALOID2、初音ミク、ユーザ、UGMサイト、著作権者 ──
に、パネリストとして出席することになりました。

 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の伊藤博之社長や、ヤマハ株式会社内で「VOCALOID2」の開発にあたってきた剣持秀紀さんも参加されるので、興味がおありの方は是非ともご参加下さい。

(日本自転車振興会補助事業なので、セミナーについては参加費無料です。)

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02/05/2008

NHKとB-CASと放送法9条9項

 B-CASを正しく装着しないとNHKの地上波デジタル放送を視聴することができないのだとすると、放送法第9条第9項

協会は、放送受信用機器若しくはその真空管又は部品を認定し、放送受信用機器の修理業者を指定し、その他いかなる名目であつても、無線用機器の製造業者、販売業者及び修理業者の行う業務を規律し、又はこれに干渉するような行為をしてはならない。

とどのように整合するのでしょう。さすがに事務所にも放送法の注釈書は置いていないので、機会を見つけて弁護士会の図書館に調べに行かないと分りません(調べに行っても分からないかもしれませんが。)。

 B-CASカードを正しく装着しなければNHKの放送番組を視聴すること自体ができないということになると、暗号の復号という作業を行うB-CASカードは、放送受信用機器の「部品」という位置づけになるようにも思えてきます。

 法務的にいうと、NHK等が共同出資して設立した(株)B-CASが製造・貸与するカードしか市場に流通させないという時点で、NHKは付け入る隙を与えているなあという気がしてなりません。NHK等の目的からすれば、規格だけをB-CASで定めて、あとはオープンな環境で家電メーカーにカードを作らせれば良いだけなのですから。

【追記】でも、自由にカードを作らせたら、コピー制御に反応しないカードを作るところが出てくるし、コピー制御に反応することを復号方式使用の条件にしたらそれはそれで「干渉」したといわれかねないという気もしてきました。

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02/02/2008

「版面権」の例に倣う

 著作権審議会(現文化審議会)において最終報告書に本小委員会の結論として、……を著作権法上認めて保護することが必要であるとの意見が大勢を占めた。との記載が盛り込まれたのに報告書に沿った立法がなされなかったことが、過去に存在します。平成2年6月付の「第8小委員会(出版社の保護関係)報告書」で本小委員会の結論として、出版者に固有の権利を著作権法上認めて保護することが必要であるとの意見が大勢を占めた。と報告された「版面権」がそうです。

 これについては、「経団連が反対した」すなわち「いろいろな企業とか、あるいは研究所などでもってこういう自然科学系の雑誌などを大量にコピーして使って」おり、「したがって、そういったところが多額の経費負担をしなければならないということで抵抗」したために立法化が果たせなかったとされています。なお、その際には、「その版面権を主張されると、ある会社が、どの雑誌のどの部分をどのくらいコピーしているかということを調査されることによって、その会社あるいは研究所が何を今現在開発しようとしているのかということがバレてしまう。これは企業秘密なのにバレてしまう」ので困るとして反対がなされたそうです(以上、半田正夫「著作隣接権とは」83頁(第二東京弁護士会知的財産権法研究会編『エンターテインメントと法律』(商事法務・2005)所収))。

 企業機密と個人のプライバシーと比べたときに、後者は前者より劣ってなどいません。特に、どのような作品を入手し、視聴しているのかということを探知することは、思想・良心の自由とも緊張関係が生じます。だとすれば、「企業秘密の保護」が「版面権」を創設させない理由として有効だった以上は、個人のプライバシーないし思想・良心の自由もまた、私的ダウンロード行為禁止権を創設させない理由として有効に働くはずです。版面権のときは経団連の主張を容れずに版面権の創設に反対した人が、市民の主張を容れずに私的ダウンロード行為禁止権の創設に邁進したとすれば、その人の価値観は、「経団連>著作権関連団体>一般市民」というものであろうと理解することができます(そういう議員さんは、次回の選挙で落としましょう。)。

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01/23/2008

中山先生の最終講義

 今日は、中山信弘先生の東大での最終講義を聴講してきました。

 私の「ボス弁」であった故伊東正勝弁護士が中山先生と高校・大学の同級生だった縁で、私の事務所が主催する知的財産権研究会に中山先生が中心メンバーとして参加してくださったこともあって、中山先生には、弁護士に成り立ての頃からいろいろとお世話になっておりました。ですから、中山先生の最終講義は何が何でも聴講しなければと思い、「日弁連コンピュータ委員会シンポジウム2008」よりもこちらを選びました。

 教室には、知的財産権法を得意とする研究者や実務家が大挙して入室しており、改めて中山先生の偉大さを思い知った次第です。中山先生の研究の歴史から知的財産権法学の未来に向けてのメッセージを含む集大成的な講義の中で、商業用レコードの還流防止措置の創設についての反対運動の盛り上がりを、知的財産権、とりわけ著作権について「権利を強化すればよい」という従前の流れとは異なる流れを象徴するものとして取り上げてくださったことには、この運動のために相当の時間と労力を費やし、相当の潜在的顧客を捨て去った者としては、光栄の限りといえそうです。

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01/20/2008

「Culture First」を実現するために(1)

 「Culture First」を実現するための方策を、私たちで考えて提案していくことも必要ではないかと思います。とかく消費者は、「『何でも反対』で対案がない」と批判されがちです。


 例えば、レコード会社とアーティストとの間の専属実演家契約において、公衆送信に用いるために新たに実演を行い媒体に収録させることをレコード会社の許可なく行う条項を盛り込むことを禁止してみてはいかがでしょうか。もともと、レコードに収録されていない実演の流通をコントロールすること自体はレコード製作者の著作隣接権の範囲外であって、それを「契約」で無理矢理コントロールしているに過ぎないのです。そして、この条項のお陰で、各アーティストがウェブ上で自由にプロモーションを行うことができないのですから。


 「Culture First」を呼びかけた著作権関係87団体の皆様、是非とも、レコード会社に対して、その経済至上主義を改めて、「Culture」の発展を阻害する条項を廃棄するように迫っていただければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:06 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

日米の権利者団体の活動方向、あるいは志の違い

 「創造のサイクル」を守るために、創作者の収入を増やすためにはどうしたらよいでしょうか。


 米国の脚本家組合は、テレビ局に対し分け前を増やせと要求することにより、創作者の利益を増やすことを目指しました。このために彼らは、ストも辞さない覚悟を決めました(といいますか、実際ストライキ継続中です。)。これに対し、日本の著作権関係団体は、テレビ局に対し分け前を増やせと要求するのではなく、一般市民に対し、私的録音録画補償金という名の上納金をもっとよこせと要求してきました。彼らは、テレビ局とは闘わず、役人を味方につけて、一般消費者と機器メーカーを攻撃することにしました。テレビ局様には強くもの申せない分の鬱憤を、一般消費者と機器メーカー にぶつけているような気がして、その志の低さに感心することしきりです。


 著作権等の権利者団体がまずなすべきことは、テレビ局等と対峙して、標準的な契約条件等を自分たちに有利になるように改善していくことであり、そのためには、その権利者団体の構成員の中でも今なお市場において訴求力のある「超一流」の者たちが率先して闘うことが必要となります(ストライキをにらんだ交渉なんて、超売れっ子たちがこぞって参加しないのであれば、意味をなしませんから。)。例えば、

歌舞伎役者の市川團十郎さんは「改めて、知的財産を財産として、『おたから』と感じなくてはいけない」と話した。
とのことですが、この言葉は、タイムシフトやスペースシフトの範囲内でテレビ番組を録画しているに過ぎない「消費者」に向けて更なる上納金を支払えというために発するのではなく、これを安く買いたたいて巨万の富を楽して築いているテレビ局にこそ向けるべきなのです。

Posted by 小倉秀夫 at 10:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/19/2008

新しい「Culture」を作るのは、「挑戦者の皆さん」と、テレビ等の前の「あなたたち」です。

 「Culture First」キャンペーンに関する一連の記事を読み、一つ気になったことがあります。それは、「コンテンツ」を創作することで「Culture」は完成し、大衆はそれを消費するに過ぎないとの誤解をお持ちの方が少なからずいるのではないかということです。

 いうまでもなく、新たに発見されまたは生み出された、「コンテンツ」とも呼ばれる一連の情報群は、行動様式としてあるいは鑑賞の対象としてその社会の構成員に受け入れられることにより、その社会の「Culture」に組み込まれます。すなわち、一連の情報群を「Culture」たらしめているのは、その情報群の発信者ではなく、それらを「Culture」として受け止める、「消費者」とも呼ばれる、社会の構成員たちです。その意味で、NHKの爆笑オンエアバトルで司会が〆に新しい笑いを作るのは挑戦者の皆さんと客席の皆さん、そしてテレビの前のあなたたちです。と宣言するのはかなり良いセンスをしています。そうです。新しい「Culture」を作るのは、「挑戦者の皆さん」と、テレビの前の、スクリーンの前の、モニターの前の、スピーカーの前の、あるいはiPod片手にヘッドフォンをした「あなたたち」なのです。

 従って、「Culture First」との標語を、「Culture」の担い手の一端である「発信者」が「Culture」の担い手の一端である「消費者」から更なる財貨の移転を求めるために用いれば、「消費者」の反発を買うのは当然です。何たって、「Culture」を築きあげてきた手柄を「発信者」側で独り占めしようというのですから。

Posted by 小倉秀夫 at 12:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/16/2008

Culture First

 ある情報が「文化」の一端を担うためには、その情報が広く大衆に共有されることが必要となります。狭い領域に囲い込まれた情報は、その社会を構成する人々の共通認識や共通の行動様式に組み込まれないが故に、「文化」の一端を担うことができません。したがって、情報の自由な流通を阻害するものは、その情報が私たちの精神世界を豊かにしてくれる度合いないし蓋然性が高いものであればあるほど、「文化」にとって「敵」であるということができます。

 ITmediaによれば、日本音楽著作権協会(JASRAC)や実演家著作隣接権センター(CPRA)など著作権者側の87団体は1月15日、「文化」の重要性を訴え、「Culture First」の理念とロゴを発表したとのことです。その上で、「文化が経済至上主義の犠牲になっている」とし、経済性にとらわれない文化の重要性をアピールしたとのことです。

 私も、私たちの精神世界を豊かにしてくれる情報が広く大衆に共有されることを阻害する、禁止権中心の著作権制度には問題があると常々思っていたので、「Culture First」という理念には賛同したいと思います。「知財戦略」という考え方自体、我が国の国際競争力を高めるとか、個々の企業の収益を増大させる目的のために、我々の社会が生み出した知的所産を利用しようというものであり、いわば「文化」を「経済至上主義の犠牲」にする政策ということができます。このような近視眼的な考え方が00年代も終盤にさしかかったこの時期に終焉を迎えるのであれば、それは素晴らしいことだと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 02:39 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/14/2008

<海賊版>の思想

 最近話題の山田奨治「<海賊版>の思想」を読むと、「著作権」という法技術自体が、そのそもそもの発端において、流通業者のギルド的利益の保護と、流通業者を通しての情報統制を目的として生み出されたものなのだなあということを改めて思い起こします。このころから、現実には著者の利益など二の次とされていたというあたり、現代の著作権法にも通ずるところがあって面白いです。

 著作権法は、著作権者による恣意的な運用に対抗する手段を組み込み、その手段を実際に発動させていかなければ、却って情報の流通を阻害し、文化の発展を阻害するシステムになってしまいます。18世紀のイギリスで既に知られていたこのような著作権法の宿痾を21世紀の日本で未だに克服できていないというのは、現代の法律家として、忸怩たる思いです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:58 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/06/2008

they don't own this government, we do

オバマ氏の1月3日の演説より。

you have done what the cynics said we couldn't do.
You said the time has come to tell the lobbyists who think their money and their influence speak louder than our voices that they don't own this government, we do; and we are here to take it back.

 これらの言葉を、今この時期だからこそ、la_caussetteではなく、こちらに転載しようと思いました。

Posted by 小倉秀夫 at 02:27 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

01/05/2008

「創造のサイクル」を維持するためにテレビ局にできること

広告料収入ベースのストリーム配信の場合、JASRACに支払うべき著作権料は、広告料収入の2.5%が基本です(音楽コンテンツ主体の場合3.5%、スポーツ・ニュース主体の場合1.0%という例外はあるにせよ。)。

 これに対し、地上波テレビ局がJASRACに支払うべき著作権料は、年間包括契約を結んだ場合には、放送事業収入の1.5%です(衛星放送も基本的に一緒。ただし。音楽コンテンツ主体の場合2.25%、スポーツ・ニュース主体の場合0.75%という例外があります。)。

 テレビ局が支払うべき著作権料収入を現状の1.5%から広告料収入ベースのストリーム配信と同じ2.5%に引き上げるとどうなるでしょうか。


 平成18年度の「放送」からのJASRACの著作権収入が17,010,444(千円)であり、1.5%→2.5%だと66.6...%増ということになりますから、単純計算で、17,010,444(千円)の収入増が見込まれるということになります。


 これだけで、平成12年から平成18年にかけてのレコード・CDからの著作権収入減少分13,497,673(千円)を軽く取り戻してしまいます。したがって、「創造のサイクル」を維持するために著作権者の収入を確保という目的のためには、JASRACは、一般市民に対し闇雲に訴訟を提起して違法サイトから音楽ファイル等をダウンロードしていたことを発見したらその分の著作権使用料相当金の賠償を求めるという非効率的なことをするより、テレビ局等から徴収する著作権料の料率をストリーミング配信と同レベルにする方がよいのではないかと思ったりします。


 例えば、フジテレビ単体の平成18年4月1日〜平成19年3月31日の広告料収入は2916億円であり、JASRACに支払う著作権料を1.5%から2.5%に引き上げても約29億円の負担増となるに過ぎません。同期間のフジテレビの純利益は、約239億円ですから、問題なく負担できる金額です。フジテレビの従業員数は、平成19年3月31日現在で1423名ですから、この負担増分を従業員の給与を引き下げることにより賄ったとしても1人あたりの負担は約200万円。フジテレビ社員の平均年収は1572万円ですから、約200万円ほど引き下げたところで、まだまだ平均月収100万円以上を維持できているわけです。


 テレビ局の皆様であれば、「創造のサイクル」を維持するために一定の負担増を覚悟することに賛同してくださるのではないかと思いますので、一般市民に負担増を求めるより政治的にも楽なのではないかとも思いますし。

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01/04/2008

正規レコード・CDの代替商品は何だったのか

 平成12年と平成18年のJASRACの収入を比較してみて、レコードやCDの売上減少分のうち適法な代替サービスに向かったと思われるものがどの程度あるのかを予想してみることにしました。


 平成12年のオーディオディスクからのJASRAC収入が37,749,723(千円)なのに対し、平成18年のそれは 24,252,050(千円)ですから、この間の減収分は、13,497,673(千円)ということになります。ここから、ビデオグラム増加分4,780,484(千円)、着うた分2,189,716(千円)、その他音楽配信分2,167,863(千円)を差し引く(さすがに、「着メロ」は音楽CD等の代替とはならないでしょうから計算に含めていません。)と、残りは4,359,610(千円)となります。これは、オーディオディスクからの著作権料の減収分の約32.30%に過ぎません。


 では、この残りの約32.30%は、違法ダウンロードにより生じたものなのでしょうか。ここで考えなければいけないのは、着うたにせよ、その他音楽配信にせよ、通常1曲単位で購入することが可能だという点です。レコードにせよ、音楽CDにせよ、特定のヒット曲のみを購入したと思っても、1個のパッケージに収録されている楽曲(シングルCDですら、カップリング用の楽曲に加えて、カラオケバージョンやリミックスバージョン等が含まれているのが通常です。)全てを購入しなければならなかったわけで、それら「特に欲しかったわけではない」楽曲についての著作権料も消費者は間接的に負担してきたわけです。それが、着うたにせよ、iTunesのようなその他音楽配信にせよ、欲しい楽曲のみを購入できるわけです。したがって、1曲あたりの著作権料が変わらないとした場合、消費者が楽曲データを購入する手段を音楽CDから音楽配信に代替させた場合、抱き合わせ分を買わなくともよくなった分だけ、JASRACに間接的に支払うべき著作権料が減少することになります。


 仮に、このように抱き合わせ分を購入しなくとも済むようになったことにより購入する楽曲数がマキシシングル(5曲)から1曲に減少したと仮定した場合、着うた及びその他音楽配信による著作権収入分を5倍したうえで、オーディオディスクからのJASRAC収入の減少分からビデオグラムからの著作権収入の増加分を差し引いた金額からさらにこれを差し引いた数字が、「レコード・音楽CDから他の正規商品への代替」以外の要因によりオーディオディスクからのJASRAC収入が減少した分ということになります。


 ただ、困ったことに、

13,497,673-4,780,484-2,189,716×5-2,167,863×5=-13,070,706(千円)

ということで、むしろ、正規に楽曲を購入する手段がレコード・音楽CDからビデオグラム・着うた・音楽配信へと移行するに伴って、却って消費者はまじめにお金を払うようになっているという結論すら導き出されかねない状況です(といいますか、貸しレコードからの著作権収入の減少分10,724,434(千円)を補ってなお余りがあります。


 このように考えてみると、著作権管理団体が「違法アップロード」により収入が減少したと考えている分の多くは、実は、抱き合わせ販売ができなくなったことによる収入減少に過ぎないのではないかという気がしてなりません。そして、それは、コンテンツビジネスにおいて、むしろ正常な姿に近づいているといってもよいのではないかとも思えたりしてきます。

Posted by 小倉秀夫 at 07:58 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

12/31/2007

知財分野では、訴え提起前の証拠保全は結構活用されている

 私的使用目的のダウンロード行為の違法化を推進したい人たちは、匿名での印象操作に忙しいようです。


 例えば、

しかし,そもそも,証拠保全の危険は,現在においても,現行著作権法に違反していると疑われる場合に存するのであり,他方,現在,各家庭でPC端末の中身を確認する証拠保全が行われたという例は,あまり聞かない。

 法律論として,問題のファイルが当該PC上に存するという疎明が必要であるという問題もあるし,実際上,裁判所の運用の問題も関係しよう。

との指摘があります。

 現在,各家庭でPC端末の中身を確認する証拠保全が行われたという例は,あまり聞かないのは当然です。現行法では、各家庭でのPC端末へのコンテンツのダウンロードは原則適法だからです。文化庁の狙いはこれを違法化することにありますから、これが実現した暁には、各家庭でPC端末の中身を確認する証拠保全が行われない理由はありません。


 現在、PC端末の中身を確認する証拠保全は、企業内でのライセンス本数超インストールの疑いを持たれたときにBSAの加盟企業の申立てによりなされる例が頻発しています。その際に「問題のファイルが当該PC上に存する」ということについて確度の高い疎明を要求しているのかといえば、そうでもありません。また、「プライバシーや企業秘密が侵される」などの理由で証拠保全を拒絶できているかといえば、そういうことでもありません。


 企業内でのソフトウェアのインストールの場合、どのソフトが計何本インストールされているかが分かれば、あとは企業側に正規のライセンス本数を主張・立証させることで、超過インストール本数を算定することができますから、操作ログまで取得する必要はありません。しかし、個人のPC内のmp3ファイルについていえば、違法サイトからのダウンロード以外に、正規に購入したCDからリッピングしたものや、レンタルショップや友人から借りてきたCDからリッピングしてきたもの等があり得るのであり、正規にライセンスを受けたことを複製物の保有者が主張・立証できなければそれは違法サイトからダウンロードしてきたものである蓋然性が高いとは言えそうにありません。とすれば、操作ログの取得等まで裁判所が認める可能性がないとは言い切れません。

Posted by 小倉秀夫 at 02:07 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/29/2007

権利者は「アナウンス効果」では満足しそうにない

 「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見募集の結果について」を見る限り、文化庁は、私のパブリックコメントをまとめの中に反映させるおつもりはないように思われます。


 それはともかく、このまとめを見ると、権利者団体の本音が分かります。


 例えば、日本俳優連合会は、既に違法行為助長に対する抑止力として、早急に罰則規定を法定すべきであると要請しています(同様に、罰則の適用を除外することには反対するものとして、日本国際映画著作権協会。)。


 罰則までは望まないにしても、当該利用行為が著作権法第30条の適用外となった後における違法複製を把握するための方法や、その撲滅・防止の具体的な方法については、今後の議論において十分な配慮を願う(日本音楽著作権協会)や違法な録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を30条から除外し、権利者が権利を主張できるよう法律上の措置を講ずるべき(日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会)としており、権利者たちは、「アナウンス効果」で満足するつもりはないようです。



 ところで、 当該利用行為が著作権法第30条の適用外となった後における違法複製を把握するための方法として、どのように「配慮」をして欲しいと日本音楽著作権協会は願っているのでしょうか。


Posted by 小倉秀夫 at 04:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

12/25/2007

私的ダウンロード違法化の問題点

 私的ダウンロード違法化の問題点という資料を作成してみました(作成自体はkeynoteを用いましたが、どうせMac Userにしか通用しないので、pdf化したものをアップロードしてあります。)。

Posted by 小倉秀夫 at 07:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (8) | TrackBack (3)

12/23/2007

より簡便で他害的でない方法を利用しない理由は?

 違法サイトからのダウンロード行為の違法化というのは、違法サイトの開設者への権利行使が功を奏しないという事実が大前提であり、ダウンローダーへの権利行使は功を奏するはずだという合理的予測が小前提となるはずです。


 しかしながら、著作権管理団体が違法サイトの開設者に対する権利行使をどの程度試みたのかというと、私が知る範囲内ではお寒い限りだということができます。WinMXユーザーについての発信者情報開示請求訴訟をレコード会社が提起したという報道はないわけではありませんが、この記事によれば、この記事が作成された2006年05月16日の時点で15人分しか発信者情報開示請求を受けていないわけであって、RIAAと比べて桁が2つから3つくらい違うといった感じです。


 Winnyについても、開発者についての刑事事件の地裁判決の事実認定が正しいならば調査機関の直近の転送者がアップローダーである蓋然性は非常に高いわけですし、仮に問題のファイル自体は知らないうちに「キャッシュ」されたものであったとしてもWinnyを使っている時点で過失があるわけですから、直近の転送者を相手に損害賠償請求でもかけられるはずなのに、Winnyのエンドユーザーについてレコード会社等が発信者情報開示請求を行ったというニュースに接した記憶がありません。


 アップローダーに対する権利行使は、アップローダーが不特定人に公開している情報を元に行使することが可能(ファイル共有ソフトの利用者は、匿名プロクシーを使用していないことが経験上多いので、名誉毀損系よりは発信者を簡便に突き止められる蓋然性は高いです。)ですが、ダウンローダーに対する権利行使は被疑ダウンローダーのパソコンを証拠保全等により「丸裸」にしなければ困難です。それなのに、著作権関連諸団体は、比較的簡単で、かつ、相手のプライバシーを侵害する度合いの低い前者をまともに行使してすらいないのに、比較的困難で、かつ、相手のプライバシーを完全に蹂躙する後者の権利行使をさせろと声高に主張するのはなぜなのでしょうか。


Posted by 小倉秀夫 at 03:15 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/22/2007

カナダからの知らせ

 Etan Vlessing氏のCanada delays copyright amendmentという記事によれば、カナダ政府は、2007年12月11日、消費者側の草の根反対運動に答えて、予定されていた著作権法改正案の議会への提出を延期する旨表明したそうです。


 その前の週に、何千もの手紙や電話で、全員の必要を満たすような、そして、教育や、消費者の権利、プライバシーや表現の自由を不当に害さないようなバランスのとれた著作権政策を採用するように迫ったということで、これが功を奏したということのようです。


 オタワ大学でインターネット及び電子商取引法を担当するMichael Geist教授のCopyright Delay Demonstrates the Power of Facebookによると、消費者たちがそのような反対運動を実践するにあたってはFacebookが活用されたとのことで、SNSがまさにSocialな力を持つ、2000年代型の消費者運動の幕開けを感じさせます。


 で、カナダでできたことが日本でできない道理はありませんね。

Posted by 小倉秀夫 at 06:05 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/21/2007

2割 対 10割

 今週のオリコンシングルBest10のうち、iTunes Store for Japanでダウンロードできるのは何曲あるでしょうか。


 正解は2曲(BoAの LOSE YOUR MIND feat.Yutaka Furukawa from DOPING PANDA(6位)と、 清木場俊介のSAKURA(9位))です。


 これに対し、今週のBillboardのSingle Top10のうち、iTunes Store for USAでダウンロードできるのは何曲あるでしょうか。


 正解は10曲です。


 日本の有料音楽配信が栄えない原因は、まずここにあります。

Posted by 小倉秀夫 at 02:08 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/20/2007

ロビーの準備への協力のお願い

 著作権法第30条改正問題について今後与野党に働きかけるにあたっては事前の準備が必要ですが、それを私1人でやるのは荷が重すぎます。つきましては、有志の皆様にも、いろいろと手伝っていただきたいことがあります。



  •  この改正案の問題点を視覚的に理解できるようなプレゼン資料を作成してくださる方がおられると嬉しいです。私は、言葉の世界で生きてきたこともあって、これを視覚化するという作業がとても苦手です。A4で3枚程度にコンパクトに収まるような資料をどなたか作成していただけないでしょうか。

  •  現在の日本の有料音楽配信がこのレベルに止まっている理由が「違法サイトからのダウンロード」以外にあることを示す資料の収集に協力してくださる方がおられると嬉しいです。米国のiTunes Storeと日本のiTunes Storeとのカタログの違いの解析、米国の iTunes Storeで配信されているコンテンツが日本のiTunes Storeで配信されることを拒んでいるのは誰なのかを探る関係者インタビュー、私たち消費者がコンテンツのために支払ったお金は誰がどれだけ収受することになるのかを関係者のインタビューを踏まえて利用態様(パッケージ購入、レンタル、PC配信、形態配信等)ごとに図示等々です。消費者を悪者にする分には権利者団体は纏まることができるので、どうしてもいろいろな権利者団体が集まって方向を決める文化審議会では消費者悪玉論に基づく法改正が提案されがちですが、権利者団体にとって不都合な事実を含めて現状をまず認識しなければ、「創作のサイクル」を維持・発展させていくことなど期待できません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (3)

12/19/2007

はじめの一歩

 私が個人的に面識のある民主党の川内博史議員と公明党の山口那津男議員に、それぞれの党の知財政策担当者とユーザー代表との意見交換の場を設けていただけないか要請する電子メールを出してみました。

 もしOKの返事が出ましたら、ご協力の程お願いいたします。

Posted by 小倉秀夫 at 01:33 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

川瀬室長はオープンすぎます

 ITMediaの記事によれば、文化庁の川瀬室長はこのようなことをいっているのだそうです。

また法執行の面でも、ユーザーの一方的な不利益にはなりにくいと説く。「仮に、権利者が違法サイトからダウンロードしたユーザーに対して民事訴訟をするとしても、立証責任は権利者側にある。権利者は実務上、利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ることになる。ユーザーが著しく不安定な立場に置かれる、ということはない」などとする。


 これは不思議な発言です。特定の利用者が違法サイトから音楽ファイルをダウンロードしているかどうかを知る術は著作権者側にはないはずです。これはダウンローダーの氏名・住所が分からないというレベルではなく、ダウンローダーのIPアドレス等すら分からないわけで、「権利者がまず利用者に警告する」ということ自体が不可能です。


 他方、確かに著作権侵害に基づく損害賠償請求訴訟において侵害行為を行ったか否かについての立証責任は権利者側にあるわけですが、では、利用者側は白を切り通せば賠償義務を負わされないから著しく不安定な立場に置かれることはないということを規制立法を作る側が言ってしまうのはいかがなものかと思うし、実際そんな簡単な話なのかというとそうではありません。我が国の民事訴訟法は、訴訟提起前に証拠保全手続きを行うことを認めており(実際、医療過誤訴訟等において広く活用されています。)、著作権者側から「あいつは違法ダウンロードをしているに違いがない」と目をつけられたが最後、著作権者の訴訟代理人と裁判所の職員が自宅にわっと尋ねてきて、私たちの使用しているパソコンのハードディスクに記録されているデータ(パソコンの操作ログを含む)の全てを複写していく可能性だって十分あります(それ以外に、違法ダウンロードをしたということを立証する手段はないのですから、裁判所がその種の証拠保全を認める可能性はなくはないです。。)。

 訴訟前の証拠保全として認められなかったとしても、著作権者から あいつは違法ダウンロードをしているに違いがない」と目をつけられた、とりあえず訴訟を提起された上で、著作権法114条の3第4項により準用される同第1項により、私たちが使用しているパソコンを検証物として提出するように命じられるかもしれません。

 結局のところ、JASRAC等の著作権者等に、自分のパソコンのハードディスクにどのようなデータが保存されており、また、自分がどのサイトにアクセスしているのかということをまるまる知られることになってしまいます。それでも「ユーザーが著しく不安定な立場に置かれる、ということはない」といわれてしまうと、川瀬室長はどれだけ普段オープンに生きておられるのか知りたくなってしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:26 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (1)

12/18/2007

「テレビ局のコンテンツのネット流通が増えないのは、実演家(著作隣接権者)の許諾を得られないから」なんて主張してる?

 エイベックス取締役の岸博幸さんは次のようなことを仰っています。

 例えば、「テレビ局のコンテンツのネット流通が増えないのは、実演家(著作隣接権者)の許諾を得られないから」といった主張がある。


 しかし、私は寡聞にしてそのような主張のあることを知りません。少なくとも局制作のテレビについていえば、番組を制作する段階で、制作した番組をネット流通させることを前提とした出演契約を結べば済むだけのことだからです。現在、アニメやドラマやお笑い系のバラエティなどに関して、番組を制作する段階で、制作した番組をDVD化して販売することを前提とした契約を結んでいるわけですから、別にできないわけではありません。


 むしろ、ネット流通に関してしばしば聞くのは、「商業音楽コンテンツのネット流通が増えないのは、レコード製作者(著作隣接権者)の許諾を得られないから」という主張です。少なくとも商業的な有料音楽配信サービスの大部分は「違法コピーが防止される一方で露出と収入を増大させられる」ものであるにもかかわらず、未だ有料音楽配信サービスを拒否するレコード製作者が少なくないというのが現実です。


 また、

日本ではネット上に流通させても、コンテンツを作る側が受け取る報酬は米国と比較して少ないと聞いている
とのことですが、本当でしょうか。iTunes Storeについていえば、米国の主流は1曲99セント。で、レコード会社の取り分は70セントだといわれています。これに対し、クリエイターへの「思いやり」が強制されている日本では1曲150円〜200円。70〜120円のお金はどこに消えているのでしょうか

Posted by 小倉秀夫 at 08:14 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

嗤っている暇などない

 ITmediaの「ダウンロード違法化」不可避にという記事についてのはてなブックマークコメントを見て思うのは、みなさん、結構諦めが早いなあということです。


 「著作権法は、文化庁で作っているのではない。国会で作っているのだ!」という原則論に立ち戻れば、まだまだ諦めたり嗤って自分を慰めるには早すぎることは明らかです。何たって、この間の衆議院議員選挙のお陰で、自民党か民主党のどちらか一方を味方につけることができれば、悪法の通過を阻止できるのです。

 そして、国会議員の著作権法についての意識が低かったレコード輸入権創設時と異なり、著作権関連団体の顔色ばかりを伺った法改正を推進することは多くの有権者を敵に回すことに繋がりかねないとの意識は、与野党の議員やそのスタッフの記憶にまだ残っているはずです。


 著作権関連団体と文化庁と政治家の関係を嗤うのは闘えるだけ闘って万策尽きてからでも間に合います。一有権者として政治家に要求し、団結してまた政治家に要求する。──これは、民主主義社会において自分たちの利益を法なり政策なり予算なりに反映させるための基本的作業であり、全く恥ずべき事ではありません。選挙による洗礼を受けない官僚が天下り先を用意できる著作権関連団体の顔色ばかりを伺うのであれば、私たちは、選挙による洗礼を受ける国会議員に、「こっちを向く」ように働きかけていくことが肝要です。

Posted by 小倉秀夫 at 07:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (4)

12/16/2007

ライブの復権とネットとレコード会社

 池田信夫先生のblogの「ネットはクリエイターの敵か」というエントリーのコメント欄では、レコーディングにかけるコストについての議論が行われていました。


 もちろん、技術の進展により機材等の価格が劇的に低下したとはいえ、一定以上の水準の機材を備えているスタジオを借りてレコーディングを行うには、ある程度のスタジオ使用料は支払わなければいけないわけで、そういう意味では、それなりのレコーディングコストは現在でも不可避だということはいいうるでしょう。ただし、そのようなレコーディングスタジオを借りる日数は、想定される売上げに合わせて、増減させることができます。The BeatlesのPlease Please Meがそうであったように、数時間のレコーディングで1枚のアルバムを作り上げることは可能です。


 確かに、それは今の日本では多分に非現実的です。というのも、The Beatlesの場合は、メジャーデビュー前に膨大な数のライブをこなしており、スタジオ入りしてから念入りに練習する必要もありませんでしたし、1曲演奏するのに何テークも費やす必要もありませんでしたし、パートごとに別収録する必要もありませんでした。今の日本のアーティストでそんなことができるのはごく一握りです。しかし、長時間のレコーディングと機械的な修正・編集によりレコード会社が作り上げた音源については、様々な流通経路(正規CDの新品販売だけでなく、CDレンタルや中古売買、合法・非合法の音楽配信等)が既にあり、正規CDの価格について独占的に価格を引き上げられる環境ではなくなってしまっています。また、CDの次世代を担うパッケージメディアであるDVDでは、前述のレコード会社が作り上げた音源よりは、特定のライブ会場においてアーティストが一瞬のうちに作り上げた音源が好まれます。また、アーティスト側も、レコード会社による搾取の大きいパッケージより、レコード会社の搾取の及ばないライブを収益の柱としていこうという意志が垣間見られるようになっています(Princeの1件は、その嚆矢といえましょう。)。すると、いずれにせよ長時間スタジオを借りなければレコーディングもままならないようなアーティストはいずれ淘汰されるようになるのではないかという気がします。


 そうなると、レコード会社はどのような役割を担うようになるのでしょうか。私は、特段レコード会社不要論に立つものではありませんが、とはいえ、アーティストの発掘、育成、プロモーションについでの主導権が、レコード会社からプロダクションに移行していく可能性は十分にあるとは思います。収益の核がパッケージからライブに移行すると、ライブでの収益の分配に預かることのできないレコード会社は投資のインセンティブを失っていくからです。もちろん、レコード会社が自社又は子会社を音楽出版社としてそのアーティストが実演する楽曲の著作権を管理することによりライブでの収益の分配に預かることも不可能ではないでしょうが、自作自演系のアーティストについていえば、自社系列の音楽出版社に著作権を管理させろと要求するレコード会社は回避しようということになっていくのではないかとも思います。


 あとは、メジャーレーベルが持つラベリング機能が、Web2.0時代にどの程度生き残るのかというところです。ただ、欧米の例を見ると、「目利き」的な機能こそ、ネットがレコード会社を凌駕してしまう部分なのです(Kaminiなど典型ですが。)。

Posted by 小倉秀夫 at 07:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

12/06/2007

流通であることと不要であることは結びつかない

「レコード会社が流通でしかない」とか言う話って、鏡に映った自分の顔もよく見えないぐらいぼんやりした二日酔い頭で書いたのか、レコード会社不要論のために単純化したおもしろ話か、どちらかだとしか思えない。
なんて言い方をされてしまっているようです。


 著作隣接権保護の根拠に関する一連の議論を前提知識として知っていれば「レコード会社が『流通』でしかない」という話は理解しやすいと思うのですが、なかなか難しいことでしょうか。準創作的な要素のある実演家は別として、それ以外の隣接権者については著作物を含む情報の伝達行為を、一定の独占権及び報酬請求権を付与することにより投下資本回収の機会を付与することで、奨励することにあります(実演家以外の隣接権者の行為についても準創作的な要素のあることを隣接権保護の根拠とする見解もありますが、中山信弘「著作権法」422頁が述べるとおり、「レコード製作者や放送事業者に創作的要素が皆無であるとはいえないが、この程度の創作的要素であればほとんどの企業に見られることであり、これだけでは保護の理由としては不十分」だと思います。)。そういう意味で、レコード製作者は、著作物等の情報を広く公衆に伝達する「流通」業者であって、ネット企業との間に本質的な差異はないのです。


 それにしても「レコード会社が流通でしかない」とか言う話 を「レコード会社不要論のために単純化したおもしろ話 」と思ってしまうのは、流通を低き見過ぎなのではないかという気がします。私はなにしろ、中古品を含むゲームソフト販売店の訴訟代理人をやっていましたから、流通業者の話を生で聞く機会が結構あるわけですが、流通ってプロの仕事ですよ。自分たちをクリエイティブの側に位置づけている企業の方々って、流通業者をフリーライダーだと本気で勘違いしていて、準備書面等で流通業者に対する差別心を露骨に文章化されることがままあるのですが(まあ、厳密に言えば、実際に文章化しているのは、その種の企業についた弁護士ですけど)、あれっていかがものかと思っています。

Posted by 小倉秀夫 at 02:16 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/30/2007

まさに桁が違う

 2007年10月16日から11月15日まで行われた「文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理」に関する意見募集の結果、

パブリックコメントの総数は約7500。このうちの8割が「著作権法30条の適用範囲の見直し」に関連した意見で、違法サイトやファイル交換ソフトからのダウンロードを私的複製の範囲からは除外し、違法とするとした中間整理の意見(いわゆる「ダウンロード違法化」)に反対する内容だった。ただし、ダウンロード違法化に関連した全体の8割の意見のうち、約7割が「インターネット上のテンプレートを利用したコピー」(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長の川瀬真氏)だった
そうです。


 ということは、ダウンロード違法化に反対する内容のコメントのうち、インターネット上のテンプレートを利用したコピーでないものが、

約7500×0.8×(1−約0.7)=約1800通


も寄せられたということで、それは結構凄いことなのではないかという気がします。

 だって、今年の初めの「情報通信審議会第 3 次中間答申 パブリックコメント」ですら、パブリックコメントの提出件数は81件です。「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(骨子案)」についての意見に至っては1件です。まさに桁違いです。


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11/28/2007

「思いやり」より「思い入れ」

 岸博幸エイベックス取締役は、前々回も取り上げた「著作権法改正巡る2つの対立・「思いやり」欠如が招く相互不信」という文章の中で、

もちろん、クリエーターを甘やかせと言う気はない。クリエーターの側も、環境変化に対応した新たなビジネスモデルを追求すべきである。ただ、その実現には時間がかかるのだから、それまでの間は、関係者もプロのクリエーターに思いやりを持って接するべきではないか。プロのクリエーターも賛同できる新しいアプローチを提案するなど、色々なやり方があるはずである。
とも仰っています。


 ただ、直近の話をするのであれば、プロのクリエーターに思いやりを持って接せよと関係者に要求する人よりは、プロのクリエーターに思い入れを持って「これを買って聴いてみろ」と辺り構わず勧めて回る人の方が、よほどプロのクリエーターの役に立っているのではないかと思います。私たち消費者は、抽象的な「コンテンツ」にお金を支払うのではなく、個別具体的なアーティストの、あるいは、個別具体的な作品にお金を支払うのですから。そして、不思議なことに、著作権者ないし隣接権者の権利範囲の拡大乃至その実効性の向上を声高に叫んでいる官僚や実務家、研究者からは、往々にしてプロのクリエーターに対するそのような思い入れを感ずることができないのです。


 ということで、Kwalの"Exilé "(→
Kwal - L? o? j'habite - Exilé
)は、コーラスとラップの調和がゾクゾクするくらい凄いので、是非とも聴いてみてください。

Posted by 小倉秀夫 at 02:31 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/27/2007

2つのザナドゥ

 来月分のゲームラボでの連載コラムに、「メジャーアーティストと声質等が似ているさほど売れていない歌手にそのアーティストの持ち歌を歌唱させ、これを録音して使うという手法」が実演家ないしレコード製作者の著作隣接権としての複製権(録音・録画権)を侵害するか否かという問題を取り上げることにしました。

 この問題は、あまり明示的には論じられていませんが、著作権と著作隣接権との違いを際だたせるものですから、もう少し注目されても良いのではないかと思っています。

Posted by 小倉秀夫 at 09:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

浪費癖のある女王を何とかしなければ革命の発生を抑えることは難しい

 岸博幸エイベックス取締役の「著作権法改正巡る2つの対立・「思いやり」欠如が招く相互不信」という文章が話題を集めています。


 岸さんは、

 JEITAもMIAUも、個々の論点に関する主張には理解できる部分もあるが、全体として、制度変更に対する批判ばかりで、その前提としてクリエーターに対する思いやりが足りないのではないだろうか。今回文化庁が提示した制度改正が最善の策とは思わない。しかし、現行著作権法の抜本改正がすぐにはできないなか、深刻化した違法コピーとダウンロードへの対応として、権利保護の強化は止むを得ない面を持つのではないだろうか。
とまで仰っています。その点、私はこれまでもクリエーターに対する思いやりに基づく制度変更を提案してきました。そうです。クリエーターのメディアからの保護を手厚くするというものです。


 私的録音録画補償金制度を拡充することによるクリエーターへの分配金の増加予想額や、私的録音録画を禁止することによる正規CD等の売上増大によるクリエータの印税・歌唱印税の増加予想額なんて、印税率・歌唱印税率を1%引き上げることによる印税・歌唱印税の増加予想額と比べたら微々たるものです。また、レコードに収録した楽曲と同じ楽曲を実演家が実演してネットで配信することをレコード会社が契約等で禁止することを禁止してしまえば、音楽配信に消極的なレコード会社と専属実演家契約を結んだアーティストでも、ネットを利用して収入の増大を図ることができます。


 岸さんは図らずも、

かつてハリウッドの高名な人が「コンテンツが王様で、流通は女王である」という名言を吐いたが、デジタル時代は「プロのコンテンツが王様」なのである。その王様を突き上げていれば改革が成就するなどと考えるべきではない。
と仰っています。そうです。レコード会社も放送事業者も、「流通」でしかないのです。王様を虐げて王様から富を搾り取り続けている「悪女」的な女王を改心させあるいは王家から排除していくことは、王制を前提とした改革としては基本的なものの一つです。そのような女王を改心させることも排除することもできず、恣に女王が浪費する分を大衆からさらに搾り取ることで調達しようとするならば、「改革」では収まらず、「革命」にまで至ってしまうことは歴史が示すとおりです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/14/2007

私的録音録画小委員会中間整理に関する意見 in 2007

「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見」についてのパブリックコメントも、先ほど文化庁に送信しました。


5 100頁以下、「第7章第2節 著作権法第30条の適用範囲の見直しについて」


6 まず、正規商品の流通前に音楽や映画が配信され複製される例が紹介されるなど、正規商品等の流通や適法ネット配信等を阻害している実態が報告されたとあります(101頁)。

 しかし、正規商品の流通前に音楽や映画が配信される例は大きく二つにわけて考えるべきです。

 一つは、当面正規商品が流通する見込みのない場合です。例えば、事実上CD等が廃盤になってしまった音楽や、日本でデビューする予定のない海外アーティストの作品等がこれにあたります。この場合、「海賊版」がなかったとしても、権利者は正規商品等の流通によって利益を得る可能性がなかったわけで、権利者は「海賊版」の流通により何ら経済的利益を失っていないというべきです。

 もう一つは、正規商品の流通前に、正規商品のサンプル等を有する関係者が、これを配信してしまう場合です。これは主に、レコード会社等における内部統制の問題です。


 次に、レンタル事業者が権利者に支払う貸与使用料に私的録音の対価が含まれているかという点(102頁)についてですが、


  1.  貸与を受けたレコードを用いて消費者が私的録音を行うという実態があったからこそレコードの貸与を著作権法にて禁止する立法がなされたこと、

  2.  工業製品を貸与した場合に、当該工業製品に化体されている知的財産権の権利者にライセンス料を支払わなければならないとの観念は我が国には存在していないこと、

  3.  条約上も、著作物等について権利者に貸与権を付与するのは、貸与を受けた側において容易に正規商品と同様の複製物を作成しうる物に限定されており、著作権法により制限を受ける貸与はあくまで、複製行為の準備行為としての位置づけがなされていること

等を考慮すると、レンタル事業者が権利者に支払う貸与使用料には、レンタルされたレコード等を用いて私的複製物が作成されることによる経済的損失の補塡分が含まれていると考えるのが素直です(現時点でも、エンドユーザーは著作権者等の許諾なくして私的録音をなし得るので、エンドユーザーが私的録音をすることの対価を(レンタル事業者が代わりに)支払うというのは筋が違うので、その意味においては「レンタル事業者が権利者に支払う貸与使用料に私的録音の対価が含まれている」とはいえませんが、そのことと上記点とは別問題です。)。


 次に、違法録音録画物等からの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外するとの点(104頁以下)についてですが、私はこれに反対します。理由は下記のとおりです。

  1.  著作権者等の許諾なくして自動公衆送信(送信可能化を含む。)されている著作物等には、正規商品が流通しておらず、適法ネット配信の対象となっていないものが多く含まれています。このようなものをダウンロードして私的に複製したとしても、当該著作物等の通常の流通を妨げることはありません(そもそも「通常の流通」自体がないのです。)。他方、このようなものについてのダウンロードまで禁止した場合には、日本国民は、当該著作物等の内容を知り、これを享受することにより幸福を追求する機会を奪われることになります。

  2.  ダウンロード行為を規制するためには、商業用レコードのレコード製作者又は商業用レコードに複製されている音楽著作物の著作権者若しくはそれらの著作権等を集中的に管理する団体に、証拠保全等の形で、国民が使用しているコンピュータ等を差し押さえて、同コンピュータに接続しているハードディスク等の中身及び同コンピュータの操作ログ等を精査する権限を与えることが必要となります。しかし、それは、国民のプライバシー権ないし思想・良心の自由を大いに侵害することとなります。

  3.  「中間整理」104頁では、「個々の利用者に対する権利行使は困難な場合が多いが、録音録画を違法とすることにより、違法サイトの利用が抑制されるなど、違法サイト等の対策により効果があると思われる」としていますが、その論拠は薄弱です。そのような薄弱な論拠をもとに国民の基本的人権を制約する立法を行うことが、我が国の憲法の下で許されるのか大いに疑問です。

  4.  ファイル共有ソフトを使用した違法複製物の送受信に関して言えば、プロバイダ責任制限法第4条第1項の発信者情報開示請求権を行使することによって氏名・住所等を探知することが可能な「送信者」を規制する方が圧倒的に楽です。なお、ファイル共有ソフトを通常の設定で使用する場合には、ダウンロードされた電子ファイルは「共有フォルダ」に蔵置されるので、受信者は即発信者となりますので、発信者としての側面を捉えて、損害賠償請求等を行えば済みます。


 また、違法録音録画物等からの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外した場合に、違法録音録画物等から私的録音録画を行った者が支払うべき賠償金額は如何にして算定するのか、私的録音録画をした者が負うべき賠償義務と送信者が負うべき賠償義務との関係はどうなるのか(不真正連帯債務だとした場合に、送信者が行った弁済の効果は個々の私的録音録画者にどのように帰属するか)など不明な点が多すぎるように思います。


 最後に、第30条の適用から除外する場合の条件(105頁)についてですが、正規商品が流通しておらず、適法ネット配信の対象となっていないものについては、その私的録音録画を放置しても、著作権者等の経済的な利益を害するおそれが乏しい反面、これを私的録音録画することが違法とされると、当該情報を適法に入手する方法がなくなってしまい、知る権利等の国民の基本的人権が大いに制約されることとなってしまいます。従って、当該録音録画物に関して、正規商品が適切な対価を支払うことにより容易に入手可能な状態におかれていることを「第30条の適用から除外する場合の条件」に加えるべきだと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 06:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

法制問題小委員会中間まとめに関する意見 in 2007

 「法制問題小委員会中間まとめに関する意見」を下記のように作成し、文化庁にメールで送信しました。



5−1 3頁以下 第1節「『デジタルコンテンツ流通促進法』について」


6−1 著作権や著作隣接権等の経済的な権益は、国民の「知る権利」を実質的に保障するためには、一定の制約を受けることはやむを得ません。例えば、その地域を放送対象地域とする民間テレビ放送局が1つしかない徳島県や佐賀県の住民にも、東京都在住者と同様の情報をテレビ番組を介して知る権利があり、これが著作物等に関する公衆送信権(送信可能化権を含む。)と衝突するのであれば、公衆送信権等は一定の制約を受けるべきです。

 このような観点からは、放送若しくは放送される著作物又は実演については、当該放送(当該放送の放送事業者から委託を受けてなされる再放送を含む。)を受信できない地域に所在する者に直接受信させる目的で、著作権者ないし隣接権者の許諾なくしてこれを同時再送信することができるように、権利制限規定を新設すべきであると考えます。

5−2 11頁以下 第2節「海賊版の拡大防止のための措置について」


6−2 親告罪の範囲の見直しについては反対です。

 著作権等を行使しうる範囲を広く解釈することこそが先端的な著作権法の解釈であると研究者等に意識されていた時代が長かったせいもあり、一般の国民が特に罪の意識なく行っている行為が専門家の中では著作権等の侵害と理解されていることがしばしばあります(一例をあげれば、企業や政党の職員が、虚偽内容の報道がなされていないか等をチェックするために、自社ないし自党について取り上げられている報道番組等を録画することは、「私的使用目的」の範囲外として、放送事業者の著作隣接権としての複製権を侵害するとするのが多数説です。)。

 このように、著作権侵害罪というのは、一般の国民が知らず知らずのうちに日常的に犯している可能性が高く、他方、著作権者等としても、そのような日常的な行為に伴うものに関して言えば、通常は処罰を特には望まないものです。このようなものを非親告罪化した場合に想定されるのは、著作権侵害罪が、著作権者の意向を無視する形で、別件逮捕のネタに使われることです。

5−3 45頁以下 第4節「検索エンジンの法制上の課題について」


6−3 新規立法による権利制限の範囲を、自動収集型の検索エンジンに限るのではなく、情報検索型データベース一般に拡張して頂きたいです。そして、著作権者等の保護は、出力結果として、正規商品の代替物となりうるほどの情報を出力しないこと(例えば、画像データであればサムネイル画像しか表示しない、音声データであれば30秒未満しかストリーミング再生しない等)により行うべきだと思います。

 著作物等の利用を促進し、これにより著作物等の享受を介した文化の発展を我が国として目指すためには、わずかな手がかりから、消費者が自分が欲しいと思っている著作物等を特定し、その入手方法を知ることができるデータベースが提供されていることが望ましいからです。また、自己の著作物等がそのようなデータベースに組み込まれることは著作権者等の利益を通常害しない一方、データベースの提供者が各著作物等に係る著作権者等全てから利用許諾を受けることは事務コストが膨大になってしまうからです。

5−4 71頁以下 第6節「いわゆる『間接侵害』に係る課題等について」


6−4 いわゆる「カラオケ法理」は、JASRACや地上波テレビ局等の経済的強者から訴訟等でなされた請求等を認容するために、裁判所が、アドホック的に、要件ないし判断基準を決定しているというのが実情です。また、いわゆる「カラオケ法理」は、米国法の代位責任や寄与侵害責任とは異なり、直接的な利用者の行為が適法なものであっても、これに寄与する行為を違法とするという特徴があります。さらに、「カラオケ法理」によって著作権侵害とされる行為を犯した者は、著作権侵害罪の正犯として刑事処罰をも受けるとする裁判例もあります。

 このため、既存の著作物等のプライベート・ユースに役立つ商品やサービスを提供しようという事業者にとって、「カラオケ法理」の存在が、新規商品・サービスの提供を開始する上での大きな妨げになっています。

 従って、著作物等の直接的な利用者の行為が違法である場合に、専らそのような違法行為にのみ使用される商品又はサービスを提供する行為に限り、これを著作権等の侵害行為とみなす新規立法を行うということに反対はしませんが、その場合には、そのような新規立法の対象外となる行為について著作権法の規律の観点からこれを直接侵害行為と同視することを禁止する旨の規定を同時に新規立法して頂きたいです。

Posted by 小倉秀夫 at 03:57 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/03/2007

Mary J. Blige 「Just Fine」

 Mary J. Bligeの「Just Fine」が、もう、iTunes Store for Japanでダウンロードできます(→
Mary J. Blige - Just Fine - Single - Just Fine
)。シングルの発売日が9月30日で11月初頭には既にダウンロード可というのは素晴らしいです。このスピードでオンライン配信を行っていけば、レンタルCD等目の敵にする必要はないように思ったりします。

まあ、Mary J. Bligeの場合、現在、Carole King及びFergieと日本国内ツアーを控えているのでそのプロモーションという側面もあるのでしょうが(といいますか、この組み合わせで、コンサート1週間前になって、まだSold Outになっていないというのが信じがたいですが、洋楽サイドがレンタルCDいじめをして却って若い世代を洋楽に近づけなかったツケが来ているということなのでしょうね。)、それにしても、米国のアーティストに関していえば、一部のレーベルを除き、iTSJにアップロードされる時期が早くなっているような感じがします(Colbie Caillatの「Bubbly」もダウンロードできますし(→
Colbie Caillat - Coco - Bubbly
。)。

Posted by 小倉秀夫 at 10:20 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/02/2007

YouTubeとJASRACとの契約

 日本音楽著作権協会(JASRAC)は10月30日、ニワンゴが運営する「ニコニコ動画」と、米Google傘下の「YouTube」上で使用されているJASRAC管理楽曲の利用料を、それぞれの運営企業から支払ってもらう契約締結に向けて協議に入ったことを明らかにした。年内にも暫定的な契約を結ぶ予定だ。
というニュースが話題になっています。

 ただ、これは、YouTube等にアップロードされる動画の中にJASRACの管理著作物が含まれていたとしても、JASRACは削除要求をしないという程度の話であって、プロモーションビデオについてはレコード会社がレコード製作者としての著作隣接権ないし映画製作者としての著作権に基づいて、テレビ番組についてはテレビ局が放送事業者としての著作隣接権ないし映画製作者としての著作権に基づいて、削除要求をなし得る以上、第三者の作品を勝手に転載するタイプの利用が自由になし得るようになるわけではありません。

 とはいえ、これにより、レコード会社がプロモーション活動の一環として自社のアーティストのプロモーションビデオをYouTubeにアップロードしたり、又は、(自社で積極的にアップロードするには至らなくとも)一部のファンがアップロードしたものを黙認するということはできるようになるので、全く無意味というわけでもありません。また、欧米人がYouTubeを使ってよくやっているような、既存の楽曲を勝手にカバーしてアップロードすることも、自由にできるようになります(いや、本当にこの種の動画が結構アップロードされているのです。)。

 まあ、JASRACの場合、音楽CDが売れたところでそんなにたくさんのマージンが入ってくるわけではない(オーディオ録音だと、JASRACの手元に残る手数料は6%)ので、サイト収入の2%も入ってくる(インタラクティブ配信だと手数料として15%が残る。)ので、悪い話ではないのでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 06:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

10/30/2007

「初音ミク」と著作権法

 ゲームラボでの連載原稿用に、第三者が著作権を有する「歌詞」を入力して「初音ミク」に「歌わせ」た場合、「歌詞」についての歌唱権侵害となるのか、又、このようにして合成した「初音ミク」の「歌声」は著作隣接権による保護の客体としての「実演」にあたるのかについてのエッセー(1500字前後と言うことなので、「論文」といいうるようなものは作れません。そもそも既存の文献を引用して批判するみたいなことも、媒体の特性上しにくいですし。)を作成し、編集部に送っておきました。

 「第三者が著作権を有する歌をドラえもんが歌った場合著作権法上どうなるのか」という話は学部のゼミで取り上げたことはあるのですが、こんなに早く現実の問題となるとは想像していませんでした。

Posted by 小倉秀夫 at 09:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

10/23/2007

YouTubeとニコニコ動画と受忍限度

 自分が出演したテレビ番組(って数回しか出ていませんが。)をYouTubeにアップロードされるのと、ニコニコ動画にアップロードされるのとでは、全然等価ではないように思います。


 前者の場合、その映像なり情報なりをできるだけ多くの人に知ってもらおうというある種の善意を感じますが、後者の場合、その映像なり情報なりをネタにして遊んでやろうというある種の悪意を感じるからです。著作権だ、著作隣接権だという財産権以前の問題として、自分をネタにして公然と玩ばれない権利というのが、人格権ないし幸福追求権の一内容としてあって、ニコニコ動画の場合、この種の権利を侵害しているのではないかという気がするのです。


 侵害されるのが著作権や著作隣接権なりの財産権のみであれば、プロモーション効果等を重要視して許諾システムにより事実上、または報酬請求権化により立法上、動画共有サイトを合法化していくというのはありだと思うのですが、人格権侵害が伴う場合には、プロモーション効果等を強調して受忍限度を高くすることが適切なのかという疑問が生じたりはします。

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10/16/2007

ゼミ選抜レポートの課題 in 2007

 今年も、来年度のゼミ生を選抜しなければならない季節になりました。


 ゼミ選抜用のレポートの提出期限は昨日(10月15日)でした。今年は、何人くらい希望者がいるのか楽しみです。ただ、去年よりは書きにくい課題なので、その辺がどう響いたかが問題です。なお、今年の課題は下記のとおりです。


 商業音楽の公衆への伝達手段としては、レコード・CD等のパッケージの販売又はレンタル、生演奏、放送、音楽配信等いろいろなパターンがあります。これらの伝達手段は、他の伝達手段の宣伝広告になるというプラスの面がある反面、他の伝達手段の代替手段として消費されてしまうというマイナスの面も有しています。


 音楽産業が発展するには消費者が商業音楽を享受するために支出する金員の総額を増加させることが必要となりますが、そのためには今後、上記伝達手段のうちのどれ(複数可)に力を入れるべきでしょうか。また、そのためには、国又は音楽産業はどのような施策を講ずるべきでしょうか。


Posted by 小倉秀夫 at 12:57 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/15/2007

中山信弘「著作権法」

 今日は、午前中にお仕事の用事で東京地裁に行ってきたついでに、弁護士会の地下1階の本屋さんに立ち寄って、中山信弘教授の「著作権法」(有斐閣)を購入してきました。
 これから、おいおい電車の中で読み込んでいこうと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:54 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/04/2007

J-Popのアジアでの落ち込み

 せっかくレコード輸入権を作ったのにJ-Popがアジア圏で売れていないことが話題となっています。


 しかし、ソニー・ミュージックエンタテインメントの田中章国際グループインターナショナル・マーケティング部長の、

日本の音楽コンテンツがアジアで普及するためには、「映画、テレビ、アニメと連携して展開する」「その国にはない幅広い音楽を提供する」「ライブでアーティストのパワーを直接見せる」といった方法が必要
との発言を見れば、J-Popがアジアでも売れなくなっている理由が分かります。


 そうです。ここには「インターネット」という言葉が一つも出てこないのです。


 私が洋楽ファンだから言うのですが、自国のメディアで普通に流れている楽曲以外の楽曲に出会うのはどういう機会でかといえば、圧倒的に「インターネットを介して」です。「ライブでアーティストのパワーを直接見せる」たって、何を歌うのか分からないアーティストのライブにいきなり大枚はたいていこうという人はなかなかいませんし、そもそも、日本でそれなりに売れているアーティストが、現地での人気を獲得するまで、アジアの物価水準でどっしりとツアーを重ねるというのは、あまり合理的ではありません。


 また、音源を購入する側の立場からいえば、何らかの切っ掛けで聴いた楽曲を気に入ったと思うから買ってみようというのであって、それがどこの国の楽曲かというのはそれほど重要ではありません。「自国にあるようなタイプの音楽なら自国のアーティストのものを買う」と決めている音楽ファンというのは、統計を取ったわけではありませんが、あまり多くはなさそうです。したがって、「その国にはない幅広い音楽を提供する」というのも解決策にはならなさそうです。


 結局のところ、アジアでも豊かになってきた地域では、豊かになった人々又はなりつつある人々の間では急速にインターネットが普及しており、すると、未知の音楽に出会う場としてのインターネットの役割が大きくなってきているわけで、そうなってくると、世界に先駆けて送信可能化権を創設し、しかも同時再送信型のストリーミング配信をも「放送・有線放送」ではなく「自動公衆送信」にあたるという解釈を文化庁が未だに維持している状況の中で、J-Popを含む番組をインターネット上で配信することのハードルが著しく高くなってしまっていることが、レコード会社にとって、却って徒(あだ)になっているのではないかという気がします。


 日本のレコード会社が本気でJ-Popをアジアで売りたいと思っているのであれば、一般のアジアの人々がアクセス可能な場所及びビットレートでプロモーションビデオをストリーミング配信するとともに、一般のアジアの人々に人気のあるインターネットラジオに向けて、インターネットラジオで放送可能な音源を提供するくらいのことは考えるべきではないでしょうか。さらにいえば、日本国内の音楽ファンが、非常に低廉なライセンス料で、J-Popをインターネットラジオ放送や、自作アニメのBGMとしてストリーミング配信してよいということにすれば、テレビ局等とのタイアップのために使う莫大な費用をいささか節約しつつ、音楽ファンの視点に立ったプロモーション活動をそれこそ勝手にやってくれるのではないかと思ったりします(ストリーミングに対するライセンス料をけちって、パッケージ販売やダウンロード販売の機会を減少させていくというのはあまり利口そうな話ではありません。)。


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10/01/2007

違法複製物のダウンロードを規制する法律案の効果

 現行の著作権法第30条第1項は、私的使用目的の複製であるにもかかわらず複製権侵害が成立する場合として、


  1. 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合

  2. 技術的保護手段の回避により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

の2つの場合を列挙しています。

 では、私的使用目的で「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製 」したとして損害賠償請求をされた事例があるか、あるいは、「技術的保護手段の回避により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行 」ったとして損害賠償請求をされた事例があるかというと、そのような話は未だ聞いたことがありません。「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」を拡大解釈してオンラインストレージサーバまで含めてしまうならばともかく、当初予定されていたような貸しレコード屋等に設置された高速ダビング機のようなものに関していえば、そのような機器を用いて私的使用目的の複製を行ったものを探し出して訴訟を提起することは手間と費用がかかり、予想される賠償額との関係で割に合わないからです。技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行ったものを探し出して損害賠償請求を行う場合も同様です。


 では、これらの行為を違法な複製行為としたのはなぜかというと、前者についていえば、むしろ自動複製機器を設置して利用者に私的複製物の作成を許している業者を取り締まりたかったからであり、後者についていえば、技術的保護手段回避専用装置の譲渡等を行う業者を取り締まりたかったからです。とはいえ、適法行為の幇助行為を違法行為と規定するのは法技術的には好ましくないので、これらの機器・装置を利用した私的使用目的の複製を違法とした上で、これらの機器・装置の提供者を警察権力を用いて取り締まれるように刑事罰を用意したのです。そういう意味では、これらの機器・装置を利用して私的使用目的の複製を行う個人を積極的に取り締まる意図は最初からなかったということができます。


 違法にアップロードされた著作物のダウンロードを違法化しようという文化庁の狙いがこれらとは全く異なることは明らかです。そのような法改正をしなくとも著作物の無許諾アップロードはそもそも違法なものとして規定されていますし、違法にアップロードされた著作物の ダウンロードに専ら用いられる装置・プログラムなんて取り締まろうにもそもそもそんなものは殆どありません。したがって、今回文化庁が狙っている改正についていえば、そのような私的使用目的を行っている個人をやり玉に挙げて取り締まるのでなければ、改正する意味がないということになります。そういう意味では、従前の例外規定とは異なり、「違法にアップロードされた著作物のダウンロード については、私的使用目的でなされたものであっても、刑事罰の対象とせよ」ということに遠からずなっていくのだと思います。


Posted by 小倉秀夫 at 12:45 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

09/27/2007

文科省とダウンロード規制と思想統制

 INTERNET Watchの記事によれば、

 なお、YouTubeなどの動画共有サイトを視聴する際には、動画ファイルのキャッシュがPC内のHDDに一時的に保存される。この点についてIT・ジャーナリストの津田大介氏は、「違法ダウンロードが法制化された場合は、キャッシュとして保存することも複製と見なされ、違法行為になってしまうのか」と疑問を示した。

 この質問に対して川瀬氏は、「それが複製にあたるかどうかの知識はない」と前置きした上で、2006年1月に提出された文化審議会著作権分科会報告書の内容を紹介。それによれば、文化審議会著作権分科会に設けられた「法制小委員会」において、仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではないとする見解が示され、法改正事項として挙げられていると答えた。
とのことです。


 現在著作権法の専門家の中で、ハードディスクへのキャッシュを、「一時的蓄積」に過ぎず著作権法上の「複製」にはあたらないとするものは決して多くはなく、むしろ、世渡りのうまい人たちはRAMへの一時的記憶すら著作権法上の「複製」に含めるべきであるとの強く主張しています。従って、違法にアップロードされた著作物を受信して複製する行為について著作権法30条1項から除外した場合には、YouTubeの画像を視聴したに過ぎない人々も、ハードディスクにキャッシュを保存したことにより、あるいは、RAMにデータを一時的に記憶させたことにより、複製権侵害に当たるとされる虞が十分にあります。


 文化庁の川瀬氏は「それが複製にあたるかどうかの知識はない」としていますが、文化庁の著作権課の官僚さんが一時的蓄積に関する学説の状況を知らないとはにわかに信じがたいです。その上で、「仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではない」としているのは、裁判所が少なくともディスク上へのキャッシュについては裁判所がこれを著作権法上の「複製」とする可能性がそれなりに高く、その場合にはYouTubeでの動画視聴が違法とされることになることを十分に知りつつも、その場合には、これを適法なものとするような法改正は行わず、日本ではYouTubeの視聴自体をずっと違法なものということにしておきますよという趣旨ではないかと思います。


 YouTubeの視聴自体を違法なものとしておくことに成功すれば、JARSAC等の著作権管理団体に権利行使をさせることにより、日本在住者をかなりの程度「情報鎖国」状態に置くことができます。ベルリンの壁が壊れるにあたっては、西ヨーロッパのテレビ局やラジオ局等が放送する内容を東ヨーロッパの人たちが受信し、西ヨーロッパの真の姿を知ることができたことが大きかったわけですが、今後の日本は、西側諸国のメディアで報道された内容を、YouTube等を介して知ることが許されなくなることでしょう。


 また、JARSAC等に権利行使をさせれば、普通の家庭の普通のコンピュータについて訴訟前の証拠保全を掛けて、そのハードディスクの中身を調べることも可能となるかもしれません(といいますか、それができないとすると、どうやって違法受信者を摘発するのでしょうか。)。文科省の外局である文化庁が所管する社団法人であるJASRACが、一般市民の思想調査を行うことができることになります(なお、証拠保全で入手した情報については、特段の秘密保持義務を負いませんので、JASRACが行った証拠保全の結果、日本国政府に都合の悪い海外メディアの情報を視聴していた個人の情報をJASRACが文科省に報告することはとりあえず可能です。)。文科省は、日の丸君が代問題でも知られているとおり、思想調査・思想統制が好きな官庁ですので、そういう官庁に思想調査の道具を与えても大丈夫なのかいなという危惧がないわけでもありません。


 杞憂なら良いのですが、ダウンロード者規制なんていう経済的に割の合わないものを、なぜそこまでして推進するのかということを、疑って係る必要はあるのではないかという気もしたりします。

Posted by 小倉秀夫 at 02:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (2)

09/22/2007

著作権政策形成過程の分析

阪大法学 57(2) [2007.7.31発行]の


著作権政策形成過程の分析(一)

—利益団体,審議会,官庁の行動による法改正メカニズムの説明—・・・・・京 俊介

はなんとなく面白うそうです。未入手ですが。

Posted by 小倉秀夫 at 11:31 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

09/12/2007

流しっぱなしのテレビを検証できた時代は短くて

 ジャーナリストの江川紹子さんが、「刑事弁護を考える〜光市母子殺害事件をめぐって」というエントリーで、次のように述べています。

 ……という報道を見て、インターネットで探したら、問題の番組を見ることができた。

 不二家を巡る「朝ズバ」でのみのもんたが話題になって時も、ネットでオンエアビデオを確認したが、こういう場合は画質はどうでもいいから、発言者の表情や声のトーン、スタジオの雰囲気が確認できるのは本当にありがたい。

 図書館に行けばいくらでも過去の記事を見ることができる新聞と違って、テレビは流しっぱなしで検証できない(させない)という難点があったが、インターネットのお陰で、ほんの一部は検証が可能になった。非常にいいことだと思う。

 しかし、そんな時代はもうすぐ終わるかもしれません。違法にアップロードされた著作物等をダウンロードする行為は、私的使用目的であっても、違法としようという著作権法の改正案が可決・成立すると、「ネットでオンエアビデオを確認」する行為自体が違法となるからです。この法改正がなされると、テレビ局としては、著作権法を笠に着て、流しっぱなしで検証させないことが可能となるおそれがあります。とりわけ、当該テレビ番組の放送対象地域外の者が当該テレビ番組の内容を批判的に評価した場合には、どのようにして当該テレビ番組の番組内容を知ったかを問いただした上で、仮に違法にアップロードされたものをダウンロードして視聴したことを批判者が認めた場合にはこの者を刑事告訴し、内容を又聞きしただけだとのことでしたら、又聞きのみで内容を批判する不誠実さをあげつらえばよいということになります。


 もちろん、レコード輸入権の時とは異なり、今は参議院は野党が過半数を占めているので、違法にアップロードされた著作物等をダウンロードする行為を違法化する著作権法案は与党政治家や政府等に対する批判の公開を封じるために活用され得る恐ろしい法案であることを、野党各党に示して理解を促すことが、そのような法案の可決成立を阻止する機能を有する可能性が大きくなってきています。文化審議会での議論の流れを見ただけで悲観し絶望してしまうのは、諦めが早すぎとも言えそうです。


Posted by 小倉秀夫 at 01:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (0)

09/10/2007

ゼミ合宿 in 2007

 9月8日から10日まで、札幌までゼミ合宿に行ってきました。


 学部のゼミの合宿ですから、レクリエーションの方が多いのですが、メインの行事としては、一定の立法提言について、肯定派と否定派に分かれて、競技ディベートを行ってもらいました。

 その際のテーマは、下記のとおりです。


テーマ1


映画の著作物に関する著作権を除く著作権の保護期間は、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。)五十年を経過をし、かつ、その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)を経過するまで、とする法改正を行うべきである。

テーマ2


「商業用レコードが最初に販売された日から六月を経過した場合において、第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て当該商業用レコードに録音されている実演を録音してこれを送信可能化しようとする者は、当該実演につき第九十二条第一項に規定する権利を有する者又は第九十六条の二に規定する権利を有する者に対し送信可能化(送信可能化の手段として行う公衆送信用記録媒体への録音を含む。以下同じ。)の許諾につき協議を求めたがその協議が成立せず、又はその協議をすることができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を裁定の対象である権利を有する者に支払つて、当該送信可能化をすることができる。」とする法改正を行うべきである。

テーマ3


 「著作権者による著作物の利用の許諾が公正証書その他の文書により行われたときは、著作権者の許諾に係る著作物を利用する権利は、当該許諾の後に著作権の譲渡を受けた者に対しても対抗することができる」とする法改正を行うべきである。

Posted by 小倉秀夫 at 09:54 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

08/25/2007

ケーブルテレビへの再許諾

 「soulwarden 」さんのところで私のエントリーについて言及していただいているようです。

しかしこのおっさん、おふくろさんの時もそうだったけど、基本的な事実を確認せずに書く癖あるよな。

とのことです。私は、選撮見録事件やらまねきTV事件やらでテレビ局側と裁判所で相まみえることが少なくありません。その際、やはりテレビ局側は、国際的なコンテンツホルダーとの関係を金科玉条のように掲げてきます。しかし、では契約書上どうなっているのか確かなことを知りたいので契約書を証拠として提出するように求めても、出てきた試しがありません。

 ブログでの議論ならば、そんなもののために大切な契約書を公開するわけに行かないというのはわかるので、「soulwarden」さんにはそこまで求めませんが、裁判の場で、しかも、裁判を自分たちに有利にするために自分たちの側で持ち出した主張を裏付けるために、契約書を書証として提出できない理由というのはよくわかりません。


 で、裁判の際に求釈明を行っても出てこない資料を確認してからでないとテレビ局に不利なエントリーは書くなって話でしたっけ。


 それはともかく、私の住んでいる葛飾区では、ついこの間まで第三セクターの「葛飾ケーブルネットワーク」がケーブルテレビを提供していたのですが(最近コアラテレビと合併して「株式会社JCNコアラ葛飾」となる)、そこでは東京キー局の番組の同時再送信を行ってきたわけです(合併後もやっていますが。)。

ダウト。

東京キー局は、CATVの権利処理を行っていない。


 とのことですけど、本当にCATVによる同時再送信についての再許諾権までとっていないのだとしたら、東京キー局の法務部門ってセンスがないですね。いえ、CATVの助けを借りずして放送対象地域住民にあまねくその放送を視聴できるようにできる自信がおありならよいのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 03:07 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (13) | TrackBack (0)

08/22/2007

東京キー局を同時再放送することを主たる機能とするローカル局などそもそも不要では?

 翻って考えてみると、東京キー局が放送している番組を同時再放送するテレビ放送会社って、同一地域に1つあれば事足りると言えそうです。強いて言えば、放送法を改正して、東京キー局の放送を各地域に同時再放送する義務を日本放送協会に負わせてしまえば、東京キー局の放送を同時再放送する機関としてのローカルテレビ局は不要ということができます。


 各県域ごとに、各東京キー局に対応したローカルテレビ局を置くというのは、考えてみれば、非常に効率の悪いシステムです。むしろ、衛星放送のように、東京キー局からの委託を一括して受けて放送電波の送信を行う「受託放送事業者」が各地にあれば済む話ですし、その方が、人件費や設備コストを含めても安上がりなのではないかという気がします。地域住民だって、東京キー局の放送全てを、東京の住民と同時に視聴することができるわけで、その方が望ましそうな気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 10:11 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/21/2007

大分の放送局の経営を守るために大分の住民が視聴可能な番組数を制限するのは、悪しき「規制」ではないのか

 大分県内のCATV4社が民放4社の地上デジタル放送番組を流すことに同意するよう福岡県の民放テレビ局4社に対し求める裁定を総務省が行った件は、新聞等にも取り上げられています。

 大分県の場合、地上波テレビ局は、NHKの他は、JNN系列の大分放送と、NNN・FNN系列のテレビ大分、ANN系列の大分朝日放送の3局があるに過ぎませんので、他地域の放送を同時再送信して欲しいという要請は大きかったのではないかと思います。

 毎日新聞の記事によれば、この件について、

民放側は、(1)県単位を基本に放送免許を与える地域免許制度が形骸(けいがい)化する(2)大分県の放送局の視聴率が下がり、経営への影響が大きい(3)著作権処理が不十分−−などとして反発していた
とのことですが、「県単位を基本に放送免許を与える地域免許制度」を守ることにより、却って日本全国津々浦々の住民が多様な放送番組を視聴する機会が奪われるのであれば、それは本末転倒といわざるを得ません。むしろ、地域免許制度の制度趣旨と放送技術の発展並びに地域住民のニーズを考えた場合、東京キー局の放送の同時再送信は地域のケーブルTVや衛星放送に任せた上で、地域のテレビ局は独自番組の放送を中心とする方向に構造改革をする時期に来ているように思います(どうせ、地上デジタルに切り替えるコストの負担を視聴者に強いるのですから、その費用をケーブルTVや衛星放送に切り替えるのに用いた方が、特に地域の地上波テレビ局が5局揃っていない地域では、建設的です。)。

 著作権処理に関しては、東京キー局は、地方局やケーブルテレビ局に番組を同時再送信することまでの権利処理は行っているはずですから、東京キー局の放送を直接同時再送信するようにすれば解決すると思います。

 「大分県の放送局の視聴率が下がり、経営への影響が大きい」との点ですが、東京キー局の放送を再放送することにしか価値がない放送局ならば、より利便性の高いサービスを提供する企業との競争に敗れて市場から去っていくのは仕方がないのではないでしょうか。むしろ、「ケーブルテレビ局が東京キー局の放送を同時再送信しても、大分独自のコンテンツで視聴者を引きつけてみせる」くらいの気概が欲しいものです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:25 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/12/2007

偉い人も、J-POPを先ず聴こう

 文化庁やJASRAC等のそこそこの地位の方と研究会等の後の懇親会等でお話しする機会が会った際には、「普段どういう音楽をお聴きになるのですか?」という質問をさせていただくことがありますが、クラッシック音楽と答える方の割合が世の中の標準より遙かに高いような気がします。


 個人の趣味の問題ですからもちろん文句をつけるべきものではないのでしょうが、音楽産業の発展を目指して様々な施策を練らなければいけない人たちが、音楽産業の収益の中心であるロック・ポップス系をきちんと押さえていないとすると、それはゆゆしき問題かなあという気がします。


 特に、J-POPの世界進出みたいなことまで考えるべきポジションの方には、「もちろん、チタン合金ズ(→
チタン合金ズ - ガッツ★アイドル - チタン合金ズの巻
)さ」とか「Shanadoo(→
Shanadoo - My Samurai - EP - My Samurai
)、いいよね」みたいなことを言ってもらえると良いかなと思ったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 03:08 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/09/2007

2つの「公衆」

 インターネット放送は著作権法上「有線放送」にあたるのか「自動公衆送信」にあたるのかという論点に関し、文化庁は、一貫して「自動公衆送信」にあたるとしています。

 例えば、平成18年3月30日付の「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」では、


有線電気通信設備を用いた送信が著作権法上の有線放送と解されるには、公衆送信の概念を整理した平成9年の著作権法改正時の立法趣旨や著作権法上の「有線放送」(第2条第1項第9号の2)、「自動公衆送信」(同条同項第9号の4)及び「送信可能化」(同条同項第9号の5)の条文の内容から、


  1. 有線電気通信設備により受信者に対し一斉に送信が行われること、

  2. 送信された番組を受信者が実際に視聴しているかどうかにかかわらず、受信者の受信装置まで常時、当該番組が届いていること


が必要であると考えられる。
とした上で、
電気通信役務放送利用放送事業者が行ういわゆるIPマルチキャスト放送については、その実態として、利用者の求めに応じて初めて当該利用者に送信されることから、当時の立法趣旨等に照らし、有線放送とは考えられず、いわゆる入力型の自動公衆送信と考えられる。
と結論づけています。

 ただ、有線放送に関する第2条第1項第9号の2を普通に読むと、なぜ2.の要件が出てくるのか理解ができません。「公衆=不特定人又は多数人」というドグマに従う限り、当該番組を視聴したいとして送信要求をした「不特定人又は多数人」が同一の内容を同時に受信するように情報を送信する限りにおいては、有線放送の定義に合致するはずです(「公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。」という自動公衆送信の定義(2条1項9号の4)からすると、「公衆からの求めに応じ自動的に行う有線放送」というものを著作権法は予定しており、かつ、それを自動公衆送信ではなく、有線放送にカテゴライズする旨が明確に示されています。)。

 ひょっとしたら、文化庁は、「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう」という場合の「公衆」のみ「不特定人又は多数人」というドグマを離れて「あまねく人々」という意味に解しているのかもしれません。そうだとすれば、(当該内容の視聴を希望していない人々を含めた)すべての人々にあまねく同じ電気信号を送信するもののみが「有線放送」と言いうるのであって、その内容を視聴したい人々に対してのみ同一内容の電気信号を送信するに過ぎない場合は、「公衆=あまねく人々」が同一の内容を同時に受信する ことにはならないから、「有線放送」とは評価できないということになりそうです。


 もっとも、この考え方にたった場合、何故に、公衆送信の定義における「公衆」を「不特定人又は多数人」と解しておきながら、「公衆送信」を分類するメルクマールとしての「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信される」目的における「公衆」のみを「あまねく人々」の意味に解することができるのか、説得的な理由付けが必要かと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 10:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/08/2007

入れ墨と著作権

 タイ警察が規律違反の警察官に「ハローキティ」のワッペンをつけたピンクの腕章を着用させた件が話題となりました。その応用問題として、ある種の団体が規律違反をした構成員に「ハローキティ」の入れ墨を(サンリオに無断で)彫った場合に、複製権ないし翻案権侵害となるのかどうか、仮になるとした場合に、サンリオは、著作権法112条2項により当該入れ墨の消去を請求できるのかというと、結構難しい問題です。

 というのも、入れ墨は人体をいわばキャンパスとして絵画等を描く芸術としての側面があるのですが、だからといって、著作権法との関係に限定されるとはいえ、人体を「物」として扱ってよいのかという問題があるからです(「複製」とは(著作物等を)有的に再製することをいいますし、112条2項による侵害防止措置の対象は「侵害の行為により作成された」等とされています。)。


 なお、人体をもって「複製物」と見てよいかという論点は、「コスプレと著作権」との関係でも問題となってきます(例えば、やたらスタイルがよくて八重歯が特徴的な女性が虎柄のビキニを着て髪型を金髪のツインテールにした場合に、高橋留美子は何か文句を言えるのだろうか等)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/06/2007

Never EverがITSJに!

 All Saintsについては、当初は、クリスタルガイザーのCMで流されている"Rock Steady"(→
All Saints - Rock Steady - Single - Rock Steady
)を含む復帰アルバム"Studio 1"のみがiTunes Store for Japanでダウンロード可能だったのですが、知らないうちに、"Never Ever"(→
All Saints - All Saints - Never Ever
)等の最盛期の楽曲もITSJでダウンロードできるようになっていたのですね。

 大学の教員とかをやっていて若い世代と交流していると、いにしえの名曲にもっと触れて欲しいと思う反面、そのためにあまりお金がかかるようだと大方の学生にはきついだろうなと思ったりしますので、こういう形で曲単位で過去の名曲に今の若い世代が触れる機会を持つというのはとても重要なことだと思います。

 まあ、ゼミで扱う楽曲については、むしろYouTube等を使って聴いて予習してくるのだとは思いますが(Sean Kingstoneとか、そもそもiTunes Stote for Japanではダウンロードできませんし。)。

Posted by 小倉秀夫 at 06:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/04/2007

著作権等管理事業者は内規を押しつけることが許されるのか。

 著作権等管理事業法第13条は1項で「著作権等管理事業者は、次に掲げる事項を記載した使用料規程を定め、あらかじめ、文化庁長官に届け出なければならない。」と規定した上で、同4項で「著作権等管理事業者は、第一項の規定による届出をした使用料規程に定める額を超える額を、取り扱っている著作物等の使用料として請求してはならない。」と規定し、さらに第16条で「著作権等管理事業者は、正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない。」と規定しています。

 このような法の規定ぶりからすると、著作権等管理事業者は、使用料規程に規定されている使用料の算定方法のうちどれを選択して使用料を算定するのかについての内規を、著作物等の使用者に押しつけてはいけないということになるはずです。

 今日、某著名著作権等管理事業者の某支部の窓口にお電話したら、その辺のところがわかっておらず、使用料が不当に高くなるコースを押しつけようとしてくるので、非常に不快になりました。

 本部もその方針を貫こうということなら、

第二十条 文化庁長官は、著作権等管理事業者の事業の運営に関し、委託者又は利用者の利益を害する事実があると認めるときは、委託者又は利用者の保護のため必要な限度において、当該著作権等管理事業者に対し、管理委託契約約款又は使用料規程の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
という規程がありますので、この命令の発動を促さなければいけないかもと思ってしまった今日この頃です。

Posted by 小倉秀夫 at 02:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (0)

07/26/2007

論理や実利ではなく感情ないし羨望の問題

 昨日のICPFセミナーに参加させていただきました。

 池田先生は三田さんの発言にずいぶんご立腹のようです。しかし、私が三田さんの講演内容やその後の質疑応答をお聞きして感じたのは、三田さんが著作権の保護期間の延長を実現しようとしているのは、まさに「欧米の作家たちが死後70年間著作権を保護されるのに、日本の作家たちは死後50年しか著作権を保護されない」ということが気に入らないのであって、三田さん自身、「欧米の作家たちが死後70年間著作権を保護されるのに、日本の作家たちは死後50年しか著作権を保護されない」と何が問題なのかということを必死に模索している最中なのではないかということでした。

 そういう意味では、この問題は三田さんにとっては「感情」の問題なので、これに対して、「著作権の保護期間を延長すべき理由」の変遷を追及して論理矛盾だといってみても、三田さんにとっては有効な反論になっていないとも言えそうです。

 そういう風に考えると、三田さんを説得するために最も有効なのは、その著作物の保護期間が切れた作家について、「青空文庫」という形でただ「ただで読める」場所を作るだけではなく、現代の知性及び感性を結集して最高の注釈及び解説を、出版社の軛から離れた形で実現し、「著作物が著作権から解放されると、こんなに幸せな取り扱いを受けるのだ」ということを見せつけてやることなのではないかと思ったりしました。

 そこまでして三田さんを納得させる必要があるのかという問題はありますが、そういう注釈や解説は読んでみたい気もします。

Posted by 小倉秀夫 at 01:58 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

07/20/2007

私的に録画してもらった方がテレビ局には安上がり

 江口靖二さんが次のように述べています。

 コピーが1回でも10回でも、関係者全員が納得できる公式を経済性も踏まえたうえで導き出すのはきわめて困難だ。それよりも「なぜ録画をしようとするのか」という点にもっと着目するべきだろう。

 それは「不安だから」である。何となく手に入らなくなりそうな気がするからである。だとすれば再放送、多チャンネル、VODなどで視聴機会を最大化して、録画という行為の意味をなくしていくことが権利者、放送局、メーカー、視聴者全員のメリットになるはずだ。

 規制緩和をすべき軸は接触機会の最大化に向けられるべきだ。ネットワーク上のどこかに番組が正規の手続きによって置かれていて、権利者との合意に基づいて公開非公開が決められればよいのだ。そうなれば究極の姿は「コピーネバー」、録画はできなくてもよくなるはずである。


 しかし、「採算」を考えると非現実的です。テレビ番組のタイムシフト視聴及び近時のスペースシフト視聴は、視聴者の側が自ら必要な機器を購入する等して自己負担でやってきたことです。これを放送局が全部自己負担で行おうとすると、かなりの費用負担がかかります。視聴者は、自分が見たい番組だけを録画すればいいし、見終わったらデータを消去すれば済みますが、テレビ局がこれを行うとなれば原則全部の番組を相当長期間にわたって視聴できるようにしておく必要があります。「放送終了後1週間でデータを消去する」なんてことにしたら、大変なことになりそうです。「1週間の海外旅行中に国内で放送されていた連続ドラマ」を見る機会を失ってしまいますから。また、タイムシフト視聴のために従前各家庭のビデオデッキに向かっていたアクセスが、一斉に、テレビ局の提供するVODサーバに向かうわけですから、当該サーバ及びサーバ周りの回線は、同時に数百万、数千万単位のアクセスに対応できるようにする必要があります。

 では、視聴料を別途徴収してシステムの維持費を賄うという選択ができるのかというと、一定期間内に視聴者が支払う再生視聴料が、そのような視聴をするために必要な録画機器等の購入費用を上回るようであれば、視聴者の怒りを買うだけの話です。したがって、2万円足らずでそれなりのビデオデッキが購入できる現状では、家庭内録画を禁止する代わりに提供される有償VODで許される年間視聴料はせいぜい数千円だと思います。それで上記システムにかかる費用を賄い切れるとも思いません。

 しかも、その場合、ビデオ機器メーカーからの広告料収入が途絶えるわけですし。

 したがって、テレビ局内部において経済的合理性を重んずる風潮が仮に強いのだとすれば、タイムシフト視聴については、利用者側で勝手にやってくれる現状をそのままにしておくことになろうかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 07:15 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (0)

07/19/2007

「私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」ではない

 「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」が「コピーワンスの回数制限緩和には私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」との声明を発表したとのニュースが報じられています。

 しかし、ここで問題となっているのは、録画したデータの家庭内における転送回数をどうするのかという問題であって、それが1回から10回になったからといって、テレビ局のスポンサー収入を減少させる機能を有していませんので、「コピーワンスの回数制限緩和には私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」との点は経済的観点からはミスリーディングではないかと思われます。

 純粋に経済的なことを考えるならば、機器メーカー及び消費者の協力を得て、テレビ番組の録画再生視聴率の正確な把握を行うこととし、再生視聴されることがスポンサー料に反映するような仕組み作りをする方が有益なのではないかと思います。また、録画した番組データがネットにアップロードされる問題については、受信された情報がどの機械を経由したのかがデジタルデータに埋め込まれるようにする方式をとるべきなのではないかと思います。その方が手段としてより制限的でないからです。

 もっとも、

緩和の前提に「コンテンツへの尊敬」と「対価の還元」(椎名氏)を挙げており
という記載を見る限り、権利者団体の方々は、コンテンツがユーザーに享受されることをコンテンツに対する侮辱と考えている節があるので、この問題は多分に感情的な問題なのだろうと思います。もちろん、視聴者の側からするとこれは大変な誤解であって、リアルタイムで漫然と視聴するのに比べて当該コンテンツに対する尊敬の念があるからこそ、わざわざ再生視聴をするわけです。そういう意味では、権利者の方々には、「家庭内での複製が行われるということは、それだけ自分の作品が尊敬されている証である」と胸を張っていただきたいと思うのです。


cf.

 man vs himself "The Levy"
man vs himself - man Vs Himself - The Levy

Posted by 小倉秀夫 at 08:23 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/17/2007

iTunes Storeのアフィリエイトに参加

 iTunes Storeのアフィリエイトに参加することにしました。

 まあ、気に入った楽曲のiTunes Store Japan登録率はそんなに高くないのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 05:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/14/2007

ギルドと政府がいかに癒着しようともギルド特権は自然権とはなり得ない

 すでに述べたとおり、著作権法は、著作物の流通過程に一定の競争制限を加えて超過利潤を取得する機会を著作者等に与えることにより、多くの新しい著作物が創作され人々に享受されることによる文化の発展を図ろうとした、一種のギルド保護法制です。

 公的利益を実現するにあたって、公的部門が直接費用分担をするのではなく、民間部門が公的利益の実現を果たすことを期待して、一定の競争制限を行うことによって一定の民間部門に超過利潤を取得する機会を与えるという手法自体は珍しくはないし、それは一概に否定すべきものでもありません。ただし、ギルドが大きくなり、政治部門との関係が密接になると、ギルドを保護することが自己目的化し、過剰な競争制限が法制化されたり、ギルドに徴税権等の利権がもたらされたりすることになります。

 日本映像ソフト協会の酒井さんから、

 そして、平成4年にはタイムシフトやプレースシフトを含む私的録音録画について、立法府は補償金制度導入を必要と判断しています。

 わが国の立法府は、先生のご見解とは異なる立場で著作権法を作ってきているのではないでしょうか。

とのコメントを頂きました。

 これに対しては、平成4年改正については、著作権ギルドが大きくなりまた政治部門との関係が密接になったことによって一種の徴税権を著作権ギルドに付与したものということができます。そして、政治部門が著作権ギルドに付与した特権がそのギルド保護法制の究極目的からは合理的に説明できないものであった場合に、では、著作権ギルドに付与された一連の特権が「自然権」に転化するかと言えば当然そういうことはなく、単に不適切であり、かつ違憲の疑いがある立法がなされたに過ぎないということになります。

 なお、ジェイムズ1世による専業権付与の濫発に業を煮やした英国議会が国王による専業権の付与を禁止するとともに例外的に新発明について最大14年の専業権の付与を認めた1623年の専売法(Statute of Monopolies)において、「国内においても商品の価格を引き上げたり、取引を妨げたり、あるいはその他いかなる不都合を生ぜしめるなどして、法に反したり、国家に害を与えることがあってはならない。」(翻訳は、石岡克俊先生のものを使用)とされていたのは実に示唆的です。競争制限法としての知的財産権法を、価格の不当な釣り上げや流通の妨害等の、社会に不都合を生ぜしめる方法で活用してはならないということは、英国ではすでに1623年には共通理解が得られていたということができます。2007年の日本ではいかがなものでしょうか。


PS
 Les Fatals Picards の"Bernard Lavilliers"はPVを含めてお勧めです。といいますか、この曲のさびの部分は結構耳に残ります。

 また、同じくLes Fatals Picards の"L'amour à la française"は、英仏混合の歌詞ですが、やはり聴いていて面白い曲です(こちらは公式サイトからPVがストリーミング配信を受けることができます。)

Posted by 小倉秀夫 at 07:38 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (0)

07/12/2007

私的使用目的の複製が自由に行える理由

 日本映像ソフト協会の酒井さんから、「そもそもどうして他人の著作物を自由に複製できるのか、の説明をお願いできないでしょうか。」とのご質問を頂きました。

 まず確認しておかなければならないのは、我が国は自由を原則とする国だということです。 ですから、他人の著作物を複製することがこれによって実現される個人の幸福追求権に優越する利益・価値を不当に損なうおそれがある場合に、そのような事態を回避するのに必要やむを得ない範囲内でのみ、他人の著作物を複製することを法令で禁止できるということがむしろ言えます。

 で、他人の著作物をその創作者の許諾なくして複製することを禁止する理由としては、これを自由にさせておくと、複製物の市場価格は、複製物自体の製作・流通コストぎりぎりのところで均衡してしまい、著作物自体の創作コストを複製物の価格に上乗せして投下資本の回収を行うことができなくなってしまい、結果、コストをかけて著作物を創作することができなくなってしまうが、それでは新たな著作物が創作され人々がこれを享受することによりもたらされるはずの文化の発展が阻害されてしまうので、著作物自体の創作コストを回収するためにこれを複製物の価格に上乗せできるようにするために、その複製物を製造・販売についての参入規制を行うこととしたのだというのが一般にあげられます。

 このような伝統的な「インセンティブ論」を前提とするときは、著作権法に基づく競争制限期間は一般に創作コストの回収に必要な期間で足りるといえますし、創作コストを回収するために行われる正規商品の流通を不当に阻害しない行為についてはこれを著作権法で規制することは正当化され得ないということになります(例えば、試作段階の複製・翻案は、明文の規定はありませんが、完成品を流通させる際には必要な権利処理を行うことを予定している場合には、おそらく著作権侵害とはしないのではないかと思います。)。もちろん、司法権が比較的強い米国においては、正規商品の流通を不当に阻害するか否かという判断を司法府が個別の事案に即して行う割合が高く(cf.フェアユース)、他方、立法府が比較的強う日本においては、どのような行為類型について正規商品の流通を不当に阻害するといえるのかを立法府が判断して著作権法の条文に明記する傾向が高いということができます。その一例としていえば、我が国の司法府は、複製物を正規商品の競合商品として市場に流通させることを予定しない複製(私的使用目的の複製)について、複製権の対象から明文で除外しています(30条1項)。

 従って、当初の酒井さんの質問に立ち返ると、他人の著作物を私的使用目的の複製を自由に行うことが許されるのは、それが私的領域にとどまり市場に供出されない場合には、複製物の市場価格を複製物の製作・流通コストぎりぎりまで押し下げる機能を有しないため、複製物の製作・流通コストに著作物自体の創作コストを上乗せした価格を設定することを妨げないから、そのような複製を禁止すべき理由がないからであるということになります。

 例えば、iTunes Storeでダウンロードした楽曲データをiPodに同期させる行為は、音楽CDの市場価格や音楽配信サービスの市場価格をその複製物自体の製作・流通コストぎりぎりまで押し下げる機能を有していないため、むしろ、これを法律で禁止する理由はないし、そのような同期が行われうるからといってiPodを製造・販売するApple社がJASRACやレコード会社に補償金を支払う合理的な理由はないということができます。また、タイムシフト視聴目的でテレビ番組を録画する行為もまた、当該番組に関する広告料を限界利益まで引き下げるものではありませんので、これを規制する合理的な理由はないということになります。

Posted by 小倉秀夫 at 02:05 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

07/10/2007

Preamble

 米国合衆国憲法の前文って「School House Rock」という番組の中で歌われた「Preamble」という歌の歌詞になっているのですね。

 YouTube等で検索をすると、アニメーションつきで映像を見ることができます。実は米国のiTunes Storeでは1.99米ドルを支払うことによりこの映像を購入することができるのですが、iTunes Store Japanでは購入できません。

 今は違法にアップロードされた映像データをダウンロードして個人的に視聴することは合法だから、YouTube等のおかげでこの映像を視聴することができるのですが、将来的には、「この歌を知っている人は違法にアップロードされた映像データをダウンロードしたとしか考えられない」として投獄される日が来るのかもしれません。

 そうなれば、著作権等管理団体としては、著作権や著作隣接権を通じて、日本在住者が聴いて良い音楽と聞いてはいけない音楽とをコントロールすることができるわけで、経済的な利益云々以前に、とても権力欲が満たされることでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 02:16 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (10) | TrackBack (0)

07/09/2007

私的使用目的の複製によりいかなる経済的不利益が生ずるのかの説明がそもそもないのです。

 IT企業法務研究所の 国時大和さんが、次のようなことを述べています。

 その評価に当たっては、これを肯定又は否定する双方の意見が見られるが、上述の点を踏まえて考えて見れば、次のような見解には納得し得るものがある。

 「三つの調査(総理府調査、三団体及び工業会調査)によれば、録音機器の保有率は、最低66%以上となっており、録音機器は、本来音楽の著作物等を録音・再生するためのも機器であるということを考えあわせると、この事実だけからでも著作権者等の利益が侵害されているものと判断してよいのではないか。」

また、経済的不利益の立証の問題についても、いくつかの考え方が示されているが、次の見解が妥当するように思われる。

 「まず、録音・録画機器の普及により社会全体として大量の著作物や実演等が利用され、権利者がこれによって経済的に不利益を被るであろう可能性ないし蓋然性があれば十分であること、すなわち、経済的不利益をもたらす可能性のある機器が家庭内に普及している事実、例えば、全世帯における機器の普及率が 50%以上になっている程度の立証で十分であり、この状況により権利者の利益が不当に侵害されているものと判断して差し支えない。」

 このように、30条制定当時は民生用の録音機器の普及の程度は低く、現実的に私的使用のための録音の例はそれ程多くはなかったが、その後、録音録画機器の開発が進み、小型化、低廉化した複製機器が家庭内に入り込むことによって、30条に示された要件の適用には捉われずに、「例外的」に定められている自由利用の範囲が肥大化し、その結果、著作権法の目的でもある権利者の報酬を保証するための機能が果たせなくなってきていると判断できるのである。


 しかし、この議論は、録音・録画機器の普及により家庭内での私的録音録画が行われ、それらが累積することにより社会全体として大量の著作物や実演等が複製されることによって、権利者がいかなる経済的な不利益を被る蓋然性があるのかということを、説得的に示していません。そこの説明を抜きにして、「全世帯における機器の普及率が 50%以上になっている程度の立証」をしたところで、「権利者の利益が不当に侵害されているものと判断」されたり、「著作権法の目的でもある権利者の報酬を保証するための機能が果たせなくなってきていると判断」されたりしても、消費者の納得が得られないと言うべきでしょう。

 例えば、家庭用録画機器でのテレビ番組録画の主たる目的は、家庭内でのタイムシフト視聴です。では、仕事が忙しくて月曜日の午後9時までに帰宅することができないOLが月9をビデオに撮って、深夜0時過ぎに帰宅した後にこれを視聴することにより、権利者はいかなる経済的不利益を被るのでしょうか。深夜0時過ぎにしか帰宅できないOLは、家庭用録画機器がなければ、そもそも月9を見るという選択はできなかったのであり、そうなれば、F4層に向けたCMを流すために高い広告費を支払った広告主は却ってそのメインターゲットの一部にCMを見てもらう機会を失っていたはずです。その一方で、家庭用録画機器による録画がなくなることで、その番組を視聴する人がより増えることになる理由というのはどうもなさそうです。もちろん、テレビ番組に関する著作権者にとって「番組を視聴されること=経済的な不利益」ということであれば話は変わってきますが、そうであるならば、少なくともテレビ局が著作権者でもある番組については、番組宣伝をすることをまず控えるべきでしょう。

 あるいは、国時さんがiPodの例を出しているので言及すると、iTunes StoreからPCにダウンロードした音楽データを自分の手持ちのiPodに同期させることにより、権利者はいかなる経済的不利益を新たに被るのでしょうか。経済実態としては、一人の消費者が特定の楽曲を反復して視聴するために対価を支払ってApple社を介して音楽データを入手し、これを用いて当該楽曲を反復して視聴するというだけのことであり、入手した音楽データをiPodに同期するということは、その音楽データを再生するにあたってPCのみならずiPodも使用できるようになったということを意味するに過ぎないのであって、「特定の楽曲を反復して視聴するために対価を支払った人がその楽曲を反復して再生し視聴できる」という以上のことは何も生じさせていません。「iTunes StoreからPCにダウンロードした音楽データを自分の手持ちのiPodに同期させることが禁止されていれば、その消費者は当該楽曲が収録されている音楽CDを正規に購入していたであろう」とはもちろん言えないし、普通に考えれば、「iTunes StoreからPCにダウンロードした音楽データを自分の手持ちのiPodに同期させることが禁止されていれば、多くの消費者はそもそも当該音楽データを対価を支払ってまで「iTunes StoreからPCにダウンロードしよう」とすら思わなかった蓋然性の方が高そうです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (23) | TrackBack (2)

三田さんの要求を満たす著作権法の改正案を考えてみた。

 著作権の保護期間を延長すべきという方の延長すべきとする理由のうち、「欧米に従え」という部分を除くと、著作権法51条2項を次のように改正すれば足りるのではないかという気がします。

2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。本項及び次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。但し、著作権が、著作者(第十五条の規定により著作者とされた法人等を除く。)の遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。)のみに引き続き帰属する限りにおいて、著作者の死後七十年を経過するまでの間、存続する。

 これなら、三田さんが時々取り上げる「著作者の死後50年以上生存する遺族」を悲しませる心配はありません。

 もちろん、著作権法53条は据え置きでも、「著作者の死後50年以上生存する遺族」との関係では何の問題もありませんので、構わないはずですね。

Posted by 小倉秀夫 at 01:14 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

07/03/2007

BSAによる「違法コピー率」の算定方法

 今年報告された「第4回 BSA&IDC 世界ソフトウェア 違法コピー調査」では、「違法コピー率」の算出方法について、従前の報告書よりは詳細な記述がなされています。

 これによれば、

  1. 当該年度中に使用が開始されたパッケージソフトウェア数を算出

  2. 当該年度中に販売された、ないし合法的に取得されたパッケージソフトウェア数を算出

  3. 1の数字から2の数字を引いて、違法コピーソフトウェア数を算出

 違法コピーソフトウェア数が明らかになれば、インストールされている違法コピーソフトウェアの全体に占める割合である違法コピー率を算定することができます。

とされています(同報告書12頁)。

 すなわち、BSAが考える「違法コピー」には、現在多くのパッケージソフトにおいてメーカー自身も認めている「同時に稼働させない限度での複数台コンピュータへのインストール」はもちろん、「パソコンの買い換え等における旧パソコンで使用していたソフトウェアの新パソコンへのインストール」も含まれることになります。つまり、BSAとしては、「パソコンを買ったら、使用するソフトウェアは全て新規に買い直せ。さもなくばそれは違法コピーだ」と考えていることになります。

 もっとも、ある年にある国にあるパソコンに合計何本のソフトウェアがインストールされたのかについて正確な統計を取るためには、パソコンにソフトウェアをインストールするたびにその情報がどこかの集計センター等に送信される仕組みが必要ですが、そのような仕組みを私たちパソコンユーザーに無断で埋め込むことは西側先進国では概ね許されていません。従って、「該年度中に使用が開始されたパッケージソフトウェア数」については、その数字の根拠が問われます。

 この点について今回の報告書は、

「ハードウェア台数」×「ソフトウェアロード数」=「インストールされたソフトウェア総数」
という算定方法を明示する(13頁)とともに、「ソフトウェアロード数」は、
実態調査、アナリスト予測、在庫調査、その他現地調査の結果を使用するモデルから算出されました
と記載されています。もっとも、現地調査は、全ての国について毎年行われているわけではなく、2006年については21ヶ国で行われたに過ぎないようです。しかも、これらの現地調査の結果をそのままで「ソフトウェアロード数」としているのではなく、現地調査の結果は、「人口統計、コンピュータの高度化、同等国との比較など当該国の多様な統計に基づいて対象国のソフトウェアロード数を算出する際に使用され」谷過ぎないようです(16頁)。

 「現地調査」自体が、「アナリスト予測」のような不確かなもの、「在庫調査」のような「インストールされたソフトウェア総数」との関連が薄そうなものを元に行われている上に、「コンピュータの高度化、同等国との比較」などのような「インストールされたソフトウェア総数」との関連性がよく分からないファクターでその調査結果をさらに修正してしまうのですから、素人目に見ても正確な数字が出そうにないし、この程度の正確さの統計で、違法コピー率が増えたの減ったのといってみてもほとんど意味がないように思えてなりません。


PS.

 こういうジメジメした日は、Amadou & Mariam の
Amadou & Mariam - Dimanche ? Bamako - S?n?gal fast food
"Senegal Fast Food"なんかがお勧めです。

Posted by 小倉秀夫 at 09:21 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

07/01/2007

iTSJにJames Blunt登場

 気がついたら、James Bluntの"You're beautiful"がiTunes Store for Japanでもダウンロード可能となっていました。この曲は、日本版のCDが発売される前に目をつけていたのですが、iTunes Store for Japanでのみダウンロードできないという状況が続いていたので、意地でもCDなんか買ってやるものかということで買わずにいたので、ああ待っていて良かったなあと思った次第です。この間、「ビューティフル・ソングス~ココロ デ キク ウタ~」なんていう抱き合わせ販売が成功したので、単品販売が中心のiTunes Store for Japanには来ないのではないかとも心配はしたのですが。なお、James Bluntについていえば、"No Bravery"も良い曲だと思いましたが。

 考えてみれば、このあたりに日本の音楽産業が今ひとつ波に乗れない原因があるのかなあという気がします。このコンピレーションアルバムはなんといっても上記"You're beautiful"とDaniel Powterの"Bad Day"の2曲が売りであって、あとは、「何でこの曲を、いまころ?」という曲を数埋めたという感じの構成です(悪い曲ではないんですが、現時点で顧客訴求力は高くないでしょう。)。 つまり、買う側の感覚としては、"You're beautiful"と"Bad Day"にそれぞれ1000円ずつ出しているような感覚になります(「ビューティフル・ソングス~ココロ デ キク ウタ~」の定価は2630円)。これだと、私の感覚でも「不当に高い」という感じがします。James BluntとDaniel Powterのアルバムを買うよりは安いこともあってそこそこヒットはしましたけど、特にほしくもない歌にお金を払わされれば、妥当な対価を支払ってもほしいと思った他の歌が変えなくなるのが世の習いなので、こういう「抱き合わせ販売強制」型ビジネスモデルというのは、長い目で見れば、消費者の音楽離れを促進させることになるように思います(コンピレーションアルバム自体が悪いといっているのではありません。単体での販売も行った上で、割安なセット販売をするのであれば、それは正当な商行為です。)。


 考えてみれば、商業用レコードに関して私的使用目的の複製はどのような目的で行われるのかというと、第1にメディアシフト目的であり、第2に連続して聴きたい楽曲を集約する目的です。だから、正規商品たる音楽CDを購入した利用者だって、その音楽CDを私的使用目的で複製します。これは、SonyがWalkmanを出荷して以来、「移動時間に音楽を聴く」というライフスタイルが定着したのだから仕方がないことです。

 レコード業界の戦略ミスは、このようなライフスタイルが提案されたときに、これにマッチした商品ないしサービスを提供しなかったことです。そこでは、可搬性の低い媒体を所有することのメリットが低下する一方、どの楽曲とどの楽曲をどの順番で可搬性の高いメディアに集約するのかということにつきイニシアティブを握りたいとの消費者の欲求が高まったのです。しかし、レコード会社は、ユーザーがお金を支払ってでも聴きたい曲とそうでない楽曲を1枚の媒体に収録して楽曲を抱き合わせ販売するという旧来型のビジネスモデルにこだわりすぎました。そのため、CDレンタルや音楽配信(合法、非合法とを問わない)が栄え、楽曲のMD販売等は(可搬性には優れていたのに)あまり普及しませんでした。楽曲のMD販売を行うときに、何をどの順番で収録するのかを(少なくとも特定のレーベルが原盤権を持っている楽曲の中から)顧客が自由に選べる方式が採用されていたら、状況はかなり違っていたかなと思います(同じことをするのに、CDレンタルを活用するより、安上がりとなりますから。)。

Posted by 小倉秀夫 at 12:39 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

ASP型着うたデータ変換サービスと著作権法

 前回のゼミの課題の一部です。「MYUTA」をもう少しASP的にしてみると著作権法上どうなるのかということで、興味のある方は考えてみてください。


 A社は、ユーザーが手持ちのmp3ファイルを着うたとして自分の携帯電話で使用できるようにするために、次のようなサービスを開始した。
 

ユーザーがその使用するパソコンに蔵置されたmp3ファイルをインターネット経由でA社のサーバBに送信すると、A社のサーバBは、当該mp3ファイルをRAMに一時的に蓄積した状態で、A社が開発しサーバBにインストールされたコンピュータソフトウェアCの機能により、当該mp3ファイルを3G2形式に変換し、さらに、着うたとして使用できるようにヘッダ情報を2バイトほど書き換えた上で、当該データをインターネット経由で元のパソコンに宛てて送信する。

 A社の上記サービスは、著作権法上問題があるか。

Posted by 小倉秀夫 at 01:06 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/26/2007

企業が商品を売り惜しみすれば、闇市が栄える。

 私は、「ネット上に不正にアップロードされたコンテンツをダウンロードすることを違法とする(著作権法上の私的複製の範囲を見直す)」ことには反対です。でも、エイベックスの取締役になった岸博幸さんが仰るような「そんなことをしたら、インターネットユーザーが萎縮してしまう。ネット上は極力自由にすべきであり、余計な法改正はすべきでない」という理由からではありません。

 一つは、創作者が投下資本を回収するために通常行う営利活動と競合する行為を制限するという著作権の本質とは相容れないからです。

 一つは、違法コンテンツのダウンロードを違法とする場合には、権利者が権利行使を行うためには、特定の誰かがどのようなコンテンツを入手したかを調査することが必要となりますが、それは、憲法が保障する思想・良心の自由と大きく衝突することになるからです。アップロード者を規制する場合、その者がどのような作品を保有しているのかは、少なくともアップロードされた者に関していえば、本人が自主的に公開したのですから、著作権者ないし警察がこれを探知することがアップロード者の思想・良心の自由を侵害する程度は低いですが、ダウンロード者は、自分がどのような作品を入手しているのかを自主的に公開する意図がないのが通常ですから、思想・良心の自由を侵害する程度が高いのです。

 もう一つは、海外の情報を海外で(不正に)アップロードしたもののダウンロードが禁止されることにより、情報鎖国が実現してしまうからです。つまり、国内での正規商品の流通を禁止してしまえば、その作品に含まれるメッセージを日本国内の在住者が知る機会は著しく奪われることになるからです。

 岸さんは、「音楽を巡るいまの状況は、モノの世界で例えれば「企業が商品を作って店先に並べてもどんどん盗まれて闇市で格安で売られてしまうため、売り上げが伸びない」ということと同じである。」と仰るのですが、そうではありません。「企業が商品を店先に並べてくれないから、本来は正規商品を買いたい消費者も、闇市で探さなければいけない」というのが音楽を巡る今の状況です。この場合、企業がちゃんと商品を店先に並べることを優先的に推し進めることなく、闇市で商品を購入することを先に規制すると、結局消費者が飢えて死んでしまうだけのことです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:57 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (45) | TrackBack (0)

06/24/2007

平成18年改正についての岸博幸さん危惧

 さらに、岸博幸さんネタを。

 岸さんは、著作権法の平成18年改正に関して、次のように述べています。

 第1は、IPマルチキャスト放送を行う事業者のみならず、個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す者も、地域を限定すればこの特権の対象となり得る、ということだ。

 これは、著作隣接権を有する実演家にとっては大問題である。技術に詳しい人ならばストリーミング配信を行うことは簡単なので、極端に言えば、無数の人が実演家の許諾なしに映像コンテンツを流せるようになる。実演家は、それらをいちいち突き止めて報酬を請求しないといけなくなるが、そのようなことは事実上不可能だ。

 第2は、IPマルチキャスト放送に与えられる権利処理の特権の対象が、地上デジタル放送に限定されていない、ということだ。その結果、例えばCS放送の音楽チャンネルやラジオ放送などもIPマルチキャスト放送で再送信できるようになるので、特に音楽の実演家の立場からは、自分が演奏した曲が許諾なしで無制限に流され、そのたびに報酬を請求しないといけなくなる。

 この2点はいずれも著作権法改正法案の第102条3項にからむもので、法案の文言を素直に読めばそう解釈できてしまう。


 改正著作権法102条3項で実演家の隣接権が制限されるのは、「著作隣接権の目的となっている実演であって放送されるもの」ですから、岸さんが仰るように「個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す者も、地域を限定すればこの特権の対象となり得る」とするためには、「個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す」行為が著作権法上の「放送」であることが必要です(普通に読めば、「有線放送」ではだめです。)。しかし、著作権法上の「放送」は、「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信」をいう(2条1項8号)ですから、「個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す」行為が著作権法上の「放送」となる可能性はないように思います。著作権法は経産省の所管ではないとはいえ、こんなところで条文の読み方を間違えていて大丈夫でしょうか?

 後段についていえば、次のようなことが言えます。

 IPマルチキャスト放送を行うためには、放送事業者の著作隣接権としての送信可能化権を侵害することができないので(改正102条3項但書)、IPマルチキャスト放送の主体は放送事業者かまたは放送事業者から委託を受けた者に限られます。だから、適法なIPマルチキャスト放送の主体を見つけ出すのは、少なくとも芸団協等の実演家団体に所属しているアーティストにとっては容易なことです。
 そして、放送事業者は、実演家の許諾を得てCD等に収録した実演については、実演家の事前の許諾なくして放送することができる(92条2項)わけですが、その場合には、芸団協等の実演家団体を通じて二次使用料を支払わなければなりません。ですから、その放送をIPマルチキャスト放送する放送局に対しては、2次使用料を支払うための利用実績データに基づいて、IPマルチキャスト放送にかかる補償金を支払うように要求すれば済む話です(放送番組を制作する側からいえば、放送前に事前にすべての実演家から許諾を受けよといわれるとうんざりしますが、すでに放送した番組についてどの楽曲を使用したか報告せよといわれる分にはそれほどの手間ではありません。)。もちろん、立法技術としては、IPマルチキャスト放送の対価を「2次使用料」ではなく「補償金」扱いにしたのは稚拙だとは思いますが(「2次使用料」ならば、個々の実演家からの委任等がなくとも、芸団協等の実演家団体が一括して請求し、これを個々の実演家に分配することができたのに対し、「補償金」だと建前上は各実演家が権利行使をする必要があります。)、実演家団体として放送事業者側と上記のような交渉をすることにより、権利行使費用はさほどかけないことが可能です。

Posted by 小倉秀夫 at 04:26 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/23/2007

10年の懲役を持っている犯罪で親告罪というのは

 Copy & Copyright Diaryより。

久保田裕委員の5番目の発言より。
その中で、期間の延長の問題もあるのですが、著作権の刑罰も5年の懲役から10年に上がりました。10年の懲役を持っている犯罪で親告罪というのはありません。

これは結構重大な発言だと思います。私は法律の専門家でないので、「10年の懲役を持っている犯罪で親告罪というのはありません」という久保田委員の発言が本当かどうか分かりませんが、もしそうであるなら、昨年の著作権法改正における罰則の強化はすべきでは無かったのではないのでしょうか。

 まあ、久保田さんは法律の専門家ではありませんから。

 例えば、

(強制わいせつ)

第百七十六条  十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
 

(強姦)

第百七十七条  暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
 

(準強制わいせつ及び準強姦)

第百七十八条  人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

2  女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
 

(親告罪)

第百八十条  第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

2  前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。



(営利目的等略取及び誘拐)

第二百二十五条    営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

(親告罪)

二百二十九条    第二百二十四条の罪、第二百二十五条の罪及びこれらの罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びに同条第三項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、営利又は生命若しくは身体に対する加害の目的による場合を除き、告訴がなければ公訴を提起することができない。ただし、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときは、婚姻の無効又は取消しの裁判が確定した後でなければ、告訴の効力がない。

Posted by 小倉秀夫 at 10:45 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

日本の裁判所だったら

 前回のゼミの課題の一部です。興味のある方は考えてみてはいかがでしょうか。



問1

 「Come Together」がChuck Berryの「You Can't Catch Me」に関する著作権を侵害するとしてJohn Lennonが訴えられたことは有名ですが、日本の著作権法に基づいて日本の裁判所が判断していたらどうなっていたでしょうか。

問2

 「My Sweet Lord」がChiffonsの「He's So Fine」に関する著作権を侵害するとしてGeorge Harrisonが訴えられたことは有名ですが、日本の著作権法に基づいて日本の裁判所が判断していたらどうなっていたでしょうか。

問3

 KICK THE CAN CREWが「クリスマス・イブRap」を制作するにあたって山下達郎の許諾を得ていたことは有名ですが、仮に、山下達郎に無断で「クリスマス・イブ・ラップ」を制作して発表した場合、著作権法上問題があるでしょうか。

問4

 Sean Kingstonの「Beautiful Girls」が仮にBen E. Kingから訴えられたとして、日本の著作権法に基づいて日本の裁判所が判断したらどうなるでしょうか。

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エイベックスの特別顧問は、違法配信のネタもとがレンタルだと問題視?

 岸博幸さんって、現在エイベックス・グループ・ホールディングスの特別顧問で、6月24日の定時総会で同社の非常勤取締役に就任予定の方だったのですね。それなら、少なくともエイベックスの特別顧問に就任していることくらいは略歴欄に書いておけばいいのに(特にこの話題だったら)とは思いました。ポジションによって党派性が生ずるのは仕方がないですが、それはそれで明示した方が、読者には親切です。

 それはともかく、問題の本質が「デジタルコピーして、ネット上で違法配信するのが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」ということならば、「様々な個別論のなかでは、例えば私的録音録画補償金制度よりもレンタル市場の存続の可否という問題の方がよほど重要である」という認識は改めた方がいいのではないかと思うのです。デジタルコピーの大元が「レンタル店から安価で借りて」きたCD等か、CDショップで高価で購入してきたCD等か、業界関係者に無料で配布されたCD等かなんて、「最初の1枚に関しての収益の差」(定価3000円のCDアルバムだと、実演家で30円〜100円程度の差)でしかないのですから(よもや、「高額の代金を支払って購入したCD等からリッピングしたデジタルデータを無料でP2Pネットワークに放出するお人好しなどいるわけない」と思っていないでしょうね。P2Pネットワークでの音楽データの共有の本場アメリカ合衆国において、CDレンタル業者がほぼ存在しない事実を思い起こすべきでしょう。)。

 「デジタルコピーして、ネット上で違法配信するのが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」という問題設定に対して、「CDレンタル事業を押しつぶすべき」という回答を出してくるシンクタンクなり特別顧問なりがいたら、私ならそういう人たちとは上手に縁を切るように会社にお勧めしますけど、レコード会社の上層部の人には、「CDレンタルがなくなれば、今までCDレンタルを利用してきた若者が、どこからかお金を調達してきて、その分新品CDを購入してくれるようになる」というストーリーの受けが良さそうだから、CDレンタル事業を悪者とする回答を提出した方が、出世の階段を上りやすいのだろうなということは思ったりします(そんなお金、どこから調達できるの?ってことを考えれば、非現実的な話でしかないことはすぐにわかるのですが。)。

 私ならば、「iPod等の大容量携帯型音楽再生機で音楽を楽しむことが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」という問題設定をした上で、むしろ、流通部門の中間マージンが大きく、また返品リスクの高い新品CD販売部門の縮小と、音楽配信およびレンタル部門のてこ入れを図りますが、そういうことをいっていると受けが悪いようです。消費者が音楽データを入手するのに費やす金額が一定であれば、その金額の範囲内で消費者が入手する音楽データの数が相当程度増加したって、音楽産業は全体的には損をしない(ただ、特定の作品への収益の集中が分散される)のですけれども。

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06/21/2007

新TLDを登場させる意味

 大野元久さんは、「ちょうど「もう .com ドメインでは、まともなものが取得できない」ために多くの新 TLD(.info、.biz、.name など)を登場させることにしたのに、いまだに .com ばかりが注目を集めているという状況に似たものを感じます。」と仰っています

 ただ、「×××.com」で成功した企業が現れると、「×××.co.jp」等のドメイン名を登録することがサイバースクワッティング扱いされる現状では、新TLDを登場させる意味はあまりなさそうです。

 「普通名詞+.com」と「普通名詞+co.jp」は、類似していないということにしないと、ドメイン名の枯渇の方が早そうです。後発企業がみな、無意味で覚えにくいドメイン名で我慢してくれれば、話は変わるのでしょうが。


PS.

AHORAの「 Les mains sales」、音的には格好いいですね。

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06/14/2007

選撮見録事件高裁判決

 今日は、大阪高裁で、選撮見録事件の判決言渡しがありました。

 結論からいうと、販売差止めの対象となる物件の範囲は大幅に狭まりましたが(例えば、「全局予約モード」機能がないものは差止めの対象外)、各利用者を複製等の主体とした上で、機械の販売者であるクロムサイズも規範的に利用主体と認められるとするもので、理論的にはまあ酷いものです。幇助者について112条1項を類推適用した原審の評判が非常に悪かったので、無理をしてクロムサイズを複製等の主体としたというところでしょう。

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06/06/2007

著作権意識が強いからこその貸しレコード業

 mohnoさんは、そのブログの中

日本にしかないレンタルレコード(CD)は、著作権意識が弱いからこそ認められたようなものではないのだろうか。
とおっしゃっています。しかし、それは違います。

 レコードレンタル業が開始された当時は、正規に生産された商業用レコード等を業として貸与することは日本法では禁止されていませんでしたし、これを禁止することを義務づける国際条約はなく、これを法的に禁止している国も殆どありませんでした。実際、知的財産権の正規の実施品の業としての貸与を禁止する権限を知的財産権者に付与する例は、特許等の他の知的財産権にもありませんので、これが普通の姿であるといえます。

 その後著作権関連団体のロビー活動が功を奏し一旦は貸しレコード業を抑制する方向に向かいかけましたが、貸しレコード業者が消費者を巻き込む形でロビー活動を行った結果、商業用レコードを業として貸与する権限を著作権者や著作隣接権者に一定の限度で認めつつ、著作権者は利用料の支払いを条件として原則業としての貸与を許諾するということで落ち着きました。その結果──貸しレコード業者の営業努力もあって──貸しレコードもまた商業用レコードの利用実態として無視し得ない実態を確保していきました。

 この実態こそが、その後の国際条約が商業用レコードの業としての貸与を禁止する権利をレコード製作者等に認める方向に動いたのに、日本政府は、当該条項に留保宣言をつける等として、貸しレコード業を保護しなければならなかったのであって、決して著作権意識が弱いからではありません。

 では、なぜ貸しレコード業が日本でまず普及したのかといえば、一つは、ウォークマンの普及により、移動中に音楽を聴くというライフスタイルが早期に確立したということがあるでしょう。いずれにせよ、ビニールレコードやCDからメディアシフトさせるのであれば、ビニールレコードやCDを購入して保管しておくことは無駄でしかないのです。

 また、日本国民は比較的遵法精神が高く、海賊版の流通が少ないということも、貸しレコード業が日本で普及した理由の一つでしょう。よく考えれば分かることですが、「著作権意識が弱」く、国民の多くが海賊版の売買を躊躇しない国や社会では、貸しレコード業は成り立ちません。

 さらにいえば、旧郵政省の放送事業者保護政策との関係でミニFM等の数が少なかったことから、多様な楽曲を無料又は安価で聴取する他の方法が乏しかったということも、貸しレコード業を普及させた要因の一つであるといえるでしょう。

 日本以外の諸外国では新たな音楽を聴きたかったら皆何とかお金を工面して新品のCDを購入しているかというとそういうことでもなく、多くの人々は、新品CDを購入するよりも安価な手段を用いて、多様な音楽を聴く機会を確保しています。それらの手段の中では、貸しレコード業というのは、著作権者や著作隣接権者にお金を流している部類にはいるように思います。

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06/05/2007

館内での撮影に関する欧米基準

 自民党の議員立法である「映画の盗撮の防止に関する法律案」が可決成立したようですね。

 これ自体は、アメリカの映画産業のヒステリーに付き合う人達がこんなにいたのだと感心する程度です。

 ただ、どうせ欧米の基準に合わせるのであれば、美術館等での私的使用目的の写真撮影を、少なくとも国公立の美術館等については、作品の保護の観点からどうしても問題がある場合を除き認めるようにしてほしいものです。欧米の美術館では、原則写真撮影は自由であり、世界中の人々がそこに行った記念にとばしばし写真を撮っているのです(所詮アマチュアの撮る写真ですから、写真を撮って後で何度も鑑賞するという目的にはあまり使えません。)。しかも、モネやルノアール等の著作権切れの作品のみならず、ピカソなどのように著作権がまだ切れていない画家の作品についても、来場者による写真撮影は原則禁止されてないというのが欧米基準です。

 それに引き替え、日本の場合、殆どの美術館は、著作権の保護期間を経過したか否か等とは関係なしに、一律写真撮影を禁止しています。映画の撮影について市民に一定の譲歩を強いたのですから、市民の側に欧米基準の自由を与える程度のバーターをしても罰は当たらないように思うのですが、上記議員立法を推進された議員の方々には、市民の自由に配慮するという考えはあまりなかったのかも知れません。

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06/04/2007

Winny事件についての北岡弁護士の解説

 昔一緒に大阪FLMASKリンク事件の弁護人を務めた北岡弘章弁護士が、Winny幇助事件についての解説を書いておられます。


 Winny著作権法違反幇助事件の判決(1) ソフトウエアの開発自体は罪に問われていない

 Winny著作権法違反幇助事件の判決(2) 裁判所が認定している客観的事実

 Winny著作権法違反幇助事件の判決(3)著作権法違反幇助と技術的検証は両立すると判断

 Winny著作権法違反幇助事件判決(4) あいまいさ許容せざるを得ない幇助犯の成立条件

Posted by 小倉秀夫 at 03:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法30条1項の廃止論者はまず実証実験を!

 実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏は、私的録音録画小委員会」の2007年第4回会合において、

権利者や消費者、メーカーの利害が調整されない場合には、私的複製を認める著作権法30条1項の廃止を求めるとした。
語ったとのことです。

 実演家著作隣接権センターは、国民全体に私的使用目的の著作物等の複製を行うことを要求する前に、その会員たちがまず私的使用目的の著作物等の複製を行わない生活を送ってみるとよいのではないかと思います。その結果、従前他の用途に支出してきたお金を節約してでも著作物等の利用に対する対価をより一層支払うようになるだけで済むのか実証実験をしていただけるとよいように思うのです。

 もちろん、その場合、実演家著作隣接権センターの会員は、テレビ番組を家庭用ビデオデッキで録画をするべきではないし、市販CDをパソコンにリッピングしてiPodと同期させるなどということはすべきではありません。また、ブラウザを用いてウェブにアクセスするときは、一切ディスク上にキャッシュを残さない設定にしていただきましょう(ネット上には著作者の意思に関わりなくアップロードされてしまっているコンテンツが少なからずありますから、黙示の複製許諾だけではディスクキャッシュを正当化しきれない可能性があります。)。

 また、原稿を書くにあたって資料をコピーして紙ファイルに一纏めにするなど言語道断です。参考文献はすべて丸一冊購入していただき、必要に総じてそれらすべてを持ち運んでいただくことにしましょう。あ、もちろん、1冊の本のうち必要な部分のみを切り裂いて紙ファイルに綴じる分には私的使用目的の複製をしたことにはなりませんから、許容範囲内です。

 実演家著作隣接権センターの会員の皆様が「私的使用目的の複製」を行わない生活を3年くらいして、その結果、著作物等の利用に対する対価の支払いがどの程度増えたのか、その間健康的で文化的な生活を送ることに支障が生じたか否かを報告していただければ、私的複製を認める著作権法30条1項の廃止の是非を具体的に論ずることができるようになるかと思います。


P.S. Mademoiselle Kの「Ca Me Vexe」、格好いいですね。

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06/02/2007

著作権侵害罪の非親告罪化

 著作権侵害罪の非親告罪化を推進する方々は、何を期待しているのでしょうか。

 著作権等を侵害する者に刑事的制裁を加えたいのであれば、著作権者等が刑事告訴をすればよいだけの話です。まあ、あえて、非親告罪化によって運用が変わるとすれば、次の2点くらいかなという気がします

 一つは、著作権者等自体は権利保全にさほど執着していないが、当該著作物等の活用による経済的利益の重要な一部を押さえている第三者が権利保全に執着している場合に、当該第三者が刑事告発することで侵害者の処罰につなげることができるようになるということです。もちろん、独占的利用許諾を受けていれば刑事告訴をなし得るのですが(最判平成7年4月4日刑集49巻4号563頁)、しかし、非独占的利用許諾契約を受けたに過ぎない者が刑訴法230条の「犯罪により害を被った者」といえるかは難しいところです。

 もちろん、著作権者が許諾をしてしまえばそもそも犯罪とはならないのですから、実際には、著作権者が積極的にそのような利用を許諾するつもりもないけれども、かといって積極的に取り締まる気もないという場合に、その著作物により経済的利益を受けている第三者が刑事告発をすることにより侵害者の処罰が可能となるということなんだろうと思います。

 もう一つは、著作権者等自身が刑事告訴をしてファン等を敵に回すことを恐れている場合に、これを避けつつ侵害者を処罰することができるようになるということです。

 もちろん、著作権者等からの許諾を得ていないことは検察側が立証責任を負いますし、被告人の自白のみで有罪に導くことはできませんので、非親告罪化しようとも、黙示的にも明示的にも当該著作物について当該被告人または公衆に対して利用許諾を行っていない旨の調書を警察または検察が取っておく必要がありますから、著作権者等は「当該被告人が処罰されることにつき自分は何にも関与していない」とは言い難いのですが、とはいえ作家自らファンを告訴したというのと、警察の捜査に受動的に協力したというのとでは、ファン等からの評判も変わってくるだろうということなのでしょう。

Posted by 小倉秀夫 at 01:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

格安CDとDVD

前回のゼミの課題の一部です。

興味がおありの方は考えてみてください。



問1 駅の広場等において、時折、洋楽CDが格安価格で販売されていることがあります。これが著作権法上適法となるための条件は何でしょう。

問2 大型書店等において、映画のDVDが格安価格で販売されていることがあります。これが著作権法上適法となるための条件は何でしょう。

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05/31/2007

イメージシティ事件について(続)

 イメージシティ事件の解説は、一般向けのものはゲームラボに、玄人向けのものはLexisNexis判例速報に、それぞれ掲載しようと思います(連載誌を大切にしなければ……。)。

 それはともかく、そもそも携帯電話を使わない私としては「ユーザが個人レベルで本件サービスと同様にCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することを試みる場合、(中略)本件ユーザソフトを用いなくても、フリーソフト等を使って3G2ファイル化することは可能であるが、これを再生可能な形で携帯電話に取り込むことに関しては、技術的に相当程度困難である」という点が少々解せません(Googleでちょっと検索しただけでも、パソコンから携帯電話へ音楽データ等を転送することを可能とする商品はたくさん検出されるのですが。)。

 それはともかく、「ユーザーのパソコンの記憶装置に蔵置された3G2ファイル化をインターネット経由で携帯電話に取り込むことを可能とする」だけであれば、サーバに楽曲データを保存しない方式でもよかったのではないかという気がします。登録されたパソコンと携帯電話が共にインターネットを通じてサーバコンピュータと接続しているときに初めて、パソコン側に蔵置された3G2ファイルをサーバに向けて送信し、これをサーバ側でハードディスク等に蔵置することなく、そのまま携帯電話側に転送するシステムでも足りたのではないかという気がするのです(RAMを大きめにとれば可能でしょう?)。というのも、選撮見録事件大阪地裁判決がある(「1人でも公衆」はカラオケボックスに関するビッグエコー事件地裁判決が援用される危険が高いわけですし。)以上、音楽ファイルを実際に使用する者以外が所有又は管理するサーバに音楽ファイルを蔵置した場合は、サーバの所有者が複製及び自動公衆送信(送信可能化)の主体とされる危険性があることは明らかだったからです。

 サーバ側で一切「複製」を行わない場合、争点は、データを中継するだけのサーバが「公衆用自動複製機器」に該当するのか否かということと、ユーザーが自分のパソコンから自分の携帯電話へデータを転送するための中継を行うことが自動公衆送信に該当するのか否かということが争点となるとは思いますが、これらを肯定することのハードルというのはより高かったのではないかという気がします。

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05/30/2007

テレビ局と上映権侵害

 カラオケ法理を緩やかに適用していった場合、各家庭におけるテレビモニター上でのテレビ放送にかかる著作物の上映はテレビ局の管理のもとで行われ、かつテレビ局各社は有料又は営利目的でそれを行っているのであるから、著作権法の規律の観点からは、各テレビ局は各家庭のテレビモニター上での著作物の上映の主体と同視できるのであり、しかも各家庭のモニターで上映された著作物を視聴するものはテレビ局との関係では不特定人であるというべきであるから、テレビ局が放送及び複製、頒布等につき著作権者の許諾を得ただけで上映について許諾を得ていなかった場合には、上映権侵害になるのではないかという気がしてならないのですが、いかがなものでしょうか。

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05/28/2007

イメージシティ事件

イメージシティ事件地裁判決の判決文がこちらにアップロードされています。

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05/27/2007

江差追分事件の射程範囲

 昨日は学部のゼミコンパ、今日は著作権法学会ということで、大忙しの週末でした。

 「翻案」って著作権絡みの予防法務ではカラオケ法理と並ぶ難所の一つだと私は常々思っています。私自身は、翻案というのは翻訳または編曲と並列され、かつ、変形、脚色、映画化を具体例として規定されている(27条)ものであるからして、同種の存在形式間では「翻案」というのは成立しない(翻案は翻訳等と並んで先行著作物とは必然的に異なる「表現」を具体的に用いることになるが先行著作物の著作権者に専有権を与えた方がよい、との考えが広く支持を集めたから特にそのように法定されたのであって、後行作品において先行著作物と異なる表現を用いることが必然ではない同種存在形式間では、「著作権法はアイディアを保護しない」というテーゼを貫いて、先行著作物の創作性のある部分と実質的同一性を有する表現が後行作品に存在しない場合に先行著作物の著作権者に後行作品の利用を禁止する権限を付与する意味を見いだせていません)ように思うのです。

 そういう意味で、江差追分事件最高裁判決の射程範囲についてはお聞きしたかったところです。

 それはともかく、Tokio Hotelの「Ubers Ende Der Welt」は結構格好いい仕上がりになっています。Tokio Hotelはドイツのバンドですが、フランスシングルチャートで初登場6位です。

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05/23/2007

高度の匿名性を謳った情報発信ツールを公衆に提供した者の幇助責任

 ジュリストの2007年6月1日号に、「連載・知的財産法の新潮流<IT法(3)>」として、「高度の匿名性を謳った情報発信ツールを公衆に提供した者の幇助責任」という文章を掲載して頂きました。

 ま、東大のコンピュータ法研究会でWinny幇助事件について発表したものを論文形式に取り纏めたものですが。

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今年の著作権法学会

 今週の土曜日に開かれる予定の著作権法学会のテーマは「翻案」なのですね。

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JASRACから請求が来たら

 今日は、葛飾弁護士倶楽部の研修会で、「JASRACから請求が来たら」という題で、比較的実務的な話をしてきました。

 私自身は、たとえばカラオケ等に関する使用料相当金の請求事件についても、被告としてもう少しできることがあると常々思っていたので、そういう話をちらほらとしてきました(対象はみな弁護士なので、「皆までも言わなくとも」といった感じです。)。

 従前、JASRAC案件等で、被告側代理人としてはどうすべきかという議論があまりなされてこなかったし、もちろん、被告側としてのマニュアルなりガイドラインなりというものはなかったわけですので、そういう議論というのを一度してみるというのもよいのではないかと思った次第です(請求棄却判決を狙うのだけが被告側代理人のお仕事ではなく、JASRACが訴訟外で提示する和解案よりも認容額を減額していくというのも立派なお仕事だったりしますし。)。

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05/18/2007

レコード製作者の著作隣接権の保護期間の延長問題

 Internet Watchの「著作権保護期間延長への反対意見が多く挙がる、文化審議会小委」という記事によれば、5月16日に行われた文化審議会著作権分科会において、

日本レコード協会の生野秀年氏は、楽曲の著作権保護期間は著作者の死後50年となっているのに対し、レコードの著作権保護期間は発行後50年となっており、レコードの保護期間の延長が必要だと考えると主張。世界では21カ国が50年を超える保護期間を採用しており、日本もレコード売上第2位の国として、第1位の米国(発行後95年)や映画著作物の保護期間(公表後70年)などを参考にしながら、レコードの保護期間に関する国際的潮流を主導すべき立場にあるとした。
とのことです。

 ただ、レコード製作者って現実にはほとんど法人その他の団体なんですよね(少なくとも隣接権を保護する必要があるほどの商業性のあるものについていえば)。すると、団体名義のものって、楽曲の著作権だって公表後50年しか保護されないわけだから、レコード製作者としての著作隣接権の保護期間が50年というのは、楽曲の著作権の保護期間との関係ではバランスを失してはいないといわざるを得ません。

 また、保護期間が50年の現状でも日本はレコード売上げが世界第2位なのであれば、これ以上レコード製作者の地位を保障して上げなくとも良いではないかと考えるのが普通なのではないかという気もします。著作隣接権って「正規品」を購入させる一つの有力な手段ではあるのですが、絶対的な手段ではないし(原盤を握っているレコード製作者の方が音質面では有利だし、「海賊版」業者よりも一般にブランド力はあるわけですし)、(公表後50年後も商業的価値があるレコードについていえば)公表後50年も経てば初期投資分は回収できているので、サードパーティと対等に競争させても(初期投資分を価格に反映させなければいけない分)正規品製造者が競争上不当に不利な立場に立たされるということは通常考えがたいのです。

 そう考えると、レコード製作者の著作隣接権の保護期間を延長する理由って輪をかけて乏しいような気がします。

 なお、「ORIGINAL CONFIDENCE」2007年5月21日号63頁でIFPIのジョン・ケネディ氏は「実際に今、日本より保護期間の長い国はたくさんあります」 とおっしゃっていたのですが、上記生野さんの発言によると、21カ国しかそういう国はないようですので、50年よりもレコードの保護期間を長くするというのは国際的潮流でも何でもないですね。

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05/08/2007

何が著作物か──2007

 何が著作物かというのは実に難しい問題ではありますが、そこがわからないと著作権法の議論は先に進まないので、著作権法のゼミでは最初に取り扱わなければなりません。

 以下に示すのは、今年のゼミで出した課題の一部です。興味がおありの方は考えてみては如何でしょうか?

次に掲げるものは著作物ですか?著作物でないとしたら、著作物性のどの要件を欠きますか。


  1. 尾崎放哉の「せきをしてもひとり」という句

  2. 「(⌒▽⌒)ノ_彡☆」という顔文字

  3. 日本プロ野球育成選手統一契約書

  4. Google Map

  5. Bratisla Boysの「Stach stach」の歌詞

  6. ル・コルビジェの「サヴォア邸」

  7. 「シントミゴルフ」の音ロゴ

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05/02/2007

アソシエイト弁護士による蔵書の持ち帰りと貸与権侵害

 「「Theo(テオ)」のグランドオープン」というエントリーに対し、「大手法律事務所でも、図書室の本は誰でも(共有者であるパートナーはともかく、単なるアソシエイトでも)借りることができますが、そっちの貸与権との関係はどうなっているんでしょうか。」という質問が寄せられました。

 図書室の書籍を事務所外に持ち出すことができるシステムの場合、パートナー弁護士らで構成する共有者団ないし弁護士法人がアソシエイトに対して書籍を貸与したということになるのでしょう。これが「貸与権侵害」となるかは、このことにより著作物をその複製物の貸与により公衆に提供したといえるかにまず係ってきます(著作権法26条の3)。

 パートナー弁護士らないし弁護士法人にとってアソシエイト弁護士は「特定の者」にあたると言って差し支えないでしょう。ただし、著作権法上の「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれます(2条5項)。ここで問題が起こります。もちろん、「何人から『多数の者』にあたるのか」ということも問題です。それ以上に問題なのは、「多数の者」といえるだけの人数のアソシエイト弁護士が特定の書籍を借り受けられるようになっていたが、実際にその書籍を借りてそこに収録されている著作物を知覚した場合に、その著作物は公衆(≒「多数の者」)に提供されたといえるのか、ということです。というのも、著作権法はもともと、映画の著作物以外の著作物について、複製物の貸与を禁止することを予定としていなかったため、「貸与」が絡むと条文がどうしても整合性を失う傾向があるからです(何しろ、原作品又は少部数の複製物を公衆に貸与することで著作物を流布する場合は、貸与の誘因の過程で展示する等の特段の事情がない限り、4条を文理解釈すると、著作物は「公表」の要件を満たさないわけですから。)。

 仮に、「多数の者」といえるだけの人数のアソシエイト弁護士が特定の書籍を借り受けられるようになっていたときには「著作物をその複製物の貸与により公衆に提供した」といえるとした場合、弁護士法人等は、その貸与を営利目的で行ったといえるのかが問題となります(38条4項)。プロボノではない弁護士業務をアソシエイトに手伝わせる過程で必要な文献を読了させるために特定の書籍をアソシエイト弁護士に貸与する場合、弁護士法人等の側に営利目的がないということは厳しいのではないかという気がします。

 私のところのように、弁護士9名(うち2人は法科大学院の教授と助教授で、教育活動にほぼ専念)、司法書士1名、弁理士1名の事務所では、「公衆」要件を明らかに満たさないのでよいのですが、100人を超えるような大規模事務所では、アソシエイトに蔵書を貸し出しすることも法的なリスクを伴うことになるので、大変ですね。

Posted by 小倉秀夫 at 01:44 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

04/28/2007

時事の事件と歌詞の引用

 先日、北海道新聞の記者さんから、この記事の件で、電話でインタビューを受けました。正確に伝わったかわからないので、法的な面についてメモランダム的に書いてみることにします。


 まず、「歌詞」だからといって「引用」の対象にならないわけではありません。著作権法第32条の規定は、適法な引用の客体から「歌詞」を除外していないからです。加戸守行「著作権法逐条講義(三訂新版)」234頁には「報道の材料として著作物を引っ張ってくる場合」を、その引用が「公正な慣行に合致する場合」の例として掲げていますから、「報道の材料として」歌詞の一部を引用することはおそらく適法なのでしょう(たとえば、松本零士対槇原槇原敬之との間での「盗作騒動」の関係で報道各社は槇原さんの作詞した歌詞を普通に引用していたことは、記憶に新しいかと思います。)。


 また、著作権法41条は、



写真、映画、放送その他の方法によって時事の事件を報道する場合は、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴って利用することができる。

と定めています。加戸・前掲267頁は、「その他の方法には、新聞・雑誌における文章記事報道や有線放送におけるニュース報道などがございましょう」とありますから、大元の北海道新聞の記事報道がこれに当たることは明らかですが、そのウェブ版についても

、「有線放送におけるニュース報道」と似たようなものですから、「その他の方法」に含まれるというべきでしょう。


 この記事では、報道された「時事の事件」というのは幌南小学校の(最後の)入学式であって、「Tomorrow(トゥモロー)」という曲が歌われたということもこの「事件」を構成しているということができるように思います(北海道新聞の記者さんのお話を窺っている限りにおいては、その場面でそのような歌詞を含む曲が歌われたということ自体が、記事で伝えようとしていることとの関係で重要な意味を持つとのことでしたし。)。


 まあ、JASRACがそういう理論構成を認めないのはその職責上仕方がないとして(41条にあたるかどうかは異論のあり得る話ですし。)、JASRACと法廷闘争をしてでも戦わず、あっさり歌詞の引用部分をウェブ版では削除してしまった北海道新聞は情けないなあとは思ったりします。JASRAC との法廷闘争すら尻込みをする人たちが権力と戦う云々と大きなことを言ってみてもなあとの思いは拭い去れないのです。

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04/26/2007

新たなディープリンク違法論

 外国法共同事業ジョーンズ・デイ法律事務所編「Q&AでスッキリわかるIT社会の法律相談」(清文社・2007)148頁以下で、相変わらずのフレームリンク違法論が繰り広げられています。

 浅野絵里弁護士は同書の中で、

 フレームリンクにより、フレーム内に表示された他社ホームページの文書や画像については、リンク先のURLが表示されないことになり、リンク元である自社ホームページの文書であるという誤解を生じる可能性があります。画面上、リンク先の著作権表示がなされず、リンク元のURLや著作者のみが表示される場合には、氏名表示権(著19)を侵害するものと考えられます。

と述べておられるのですが、私が知る限り、URLがコンテンツの著作者の変名として一般に認識されているということはありません。従って、フレームリンクによりリンク先のURLを表示しないこととしたからといって氏名表示権侵害になるということは到底考えられないと言うべきでしょう。

 また、浅野弁護士は、

 画面上、自社ホームページ内部に他社ホームページがその一部であるかのように表示される形態となることは、他社ホームページの内容に変更、切除その他の改変を行ったものとして、同一性保持権(著20)を侵害することになると考えられます。
とも述べていますが、「他社ホームページ」の周辺に自社ホームページのフレームが表示されるにすぎないのに、 「他社ホームページの内容に変更、切除その他の改変を行った」ことになるという結論を説明抜きで押し切ってしまうのは凄いと言わざるを得ません。

 なお、浅野弁護士の凄さは、

 営業主体の誤認に関しては、たとえば他人のホームページのトップページではなく、そのホームページ内にある次の階層にある他ページ内の文書や画像に直接リンクをはる(いわゆるディープリンク)ことにより、そのページがリンク元の自社ホームページと営業主体の誤認混同を生じさせる場合、不正競争行為として問題が生ずることになります。
といっているところにも現れています。

 2007年に発行された書籍で「ディープリンク違法論」にお目にかかれるとは思っても見ませんでしたが、それ以上に、他社のコンテンツについて自社のものであるとの誤認を生じさせることを不正競争行為に含める見解があるというのも新鮮です。通常、不正競争行為としての誤認混同行為は、自社の商品又は営業を、他社の周知商標を用いて、当該他者の商品又は営業と誤認混同させることを指すのですが、浅野弁護士は逆のベクトルの誤認混同行為も不正競争行為に取り込むようです。いったい何号の不正競争行為なのでしょう。

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04/21/2007

カラオケ業者の不当利得?

 JASRACがカラオケスナック等に使用料相当金を突然がさっと請求した事案について裁判所の判決を見ると、ふと奇妙なことに気がつきます。不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求が一部時効消滅により却下されているのに、使用料相当金を不当利得としてそのJASRACへの返還をカラオケスナック等に命じている例が散見されるのです。

 不法行為に基づく損害賠償請求権は、加害者及び損害を知ったときから3年で時効消滅します。従って、JASRACの調査員がその店にカラオケ設備が備えられておりかつこれが客の用に供されていることを把握してから3年間が経過した後は、訴え提起の日から3年以上前の分については原則として時効消滅しているということになります(但し、時効期間経過前に裁判外で催告をしていた場合は、催告の日から6ヶ月以内に訴訟を提起した場合に限り、時効消滅を免れます。逆にいえば、訴えの提起の日から半年以内に内容証明郵便等で使用料相当金の支払いを催告していた場合には、その催告日の3年前以降の分については時効消滅していないということになります。)。

 これに対し、不当利得返還請求権は、債務者に不当利得が生じたときから10年で時効消滅します。だから、いくつかの下級審裁判例がそうしているように、これらカラオケスナック等(Y)がJASRAC(X)に無断でカラオケ業を営んだ場合にYに使用料相当の不当利得が発生しているとするならば、訴え提起の日から10年前以降の分についてなおも請求できるということになります。しかし、よく考えてみると、これはおかしな話です。

 XのYに対する不当利得返還請求権の要件事実は、

  1. Yに利得が発生したこと
  2. Xに損失が生じたこと
  3. 1.と2.との間に因果関係があること
  4. 1.〜3.につき法律上の原因がないこと
の4点です。

 では、YがXの許諾を得ることなしにカラオケスナックを営みその管理の下で客にXの管理著作物を歌唱させたことにより、XはXの定める著作物使用料相当の損失を被ったのでしょうか。

 まず、著作権法114条3項は「著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。」と規定しており、ここでいう「損害」は「賠償」の対象としての「損害」をいうことは明らかです。従って、不当利得返還請求(703条等)の対象となる「損失」の額について同項を適用して「みなし」を行うことはできません(704条後段の「損害」は「賠償」の対象ですから、これを賠償する義務の本質は不法行為であり、3年で時効消滅します。)。

 従って、XがYに対し不当利得の返還請求を行うためには、Yが営利目的でその管理の下で客に管理著作物を歌唱させたことによりXに実際に生じた「損失」の価額を具体的に主張立証しなければなりません。従来の下級審裁判例は、使用料(それも包括的利用許諾契約が締結された場合の月額使用料率!)相当の損失がXに生じたと漫然と認定してきたわけですが、上記Yの行為によりXの売上げ等は減少しませんし、XはYに対して使用料相当損害金を請求しうるわけですから、使用料相当の損失がXに生じたと見るのはおかしいのではないかと思います(損害賠償義務を不法行為者が任意に履行してこないことをもって「損失」と解して不当利得返還請求権を認めてしまうと、不法行為について短期消滅時効を特別に定めた趣旨が蔑ろになってしまいます。)。

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04/12/2007

コミックレンタルについてのインタビュー

 フジテレビ系のスーパーニュースから、コミックレンタルについての取材を受けました(利益相反で問題にならないように、永野商店の了解済みです。森進一問題の時は私は部外者だったので取材はお断りしましたが、コミックレンタルについては、私自身が、貸与権の書籍・雑誌への拡張を強く反対していたものですから、無碍に断りづらかったので、こちらの取材はお受けしました)。

 使ったとしても20秒程度だといわれていますし、実際に使われるかどうかはわかりませんが(スーパーニュースが放送される時間にテレビを見ることができる環境におかれることはないので)、まあ、長野翼アナから直接インタビューを受けたし(注1)、良いことにしておきましょう。


注1 女子アナについては、大学時代のサークルの後輩である下平さやかさん(私が5年生の時の1年生なので、彼女が1年生の時から直接知っているのです。)を陰ながら応援するに留めているのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 05:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

「Theo(テオ)」のグランドオープン

 「 弁護士専用貸しオフィス「Theo(テオ)」をグランドオープン」とのことです。

 

「Theo(テオ)」は、2007年10月の、法科大学院を卒業し司法修習を終了した弁護士が大量に新規参入する時代を見据えて開始するサービスです。
とのことなのですが、家賃を払えるのでしょうか。司法修習を終了したばかりの弁護士って、中坊公平・元弁護士のように親御さんから優良な顧問先を回してもらえる等のごく恵まれた方を除くと、国選弁護とか当番弁護とかの報酬プラスα程度しか個人事件収入がないものなのですが。かといって、コクヨもトールも弁護士ではないので、事件斡旋をすると、弁護士法に違反してしまいますし。

 それはともかく、

会議室や法律書を集めた図書スペースを備えている他、来客者への対応や電話取次ぎ、ホームページ作成や事務補助など各種サービスも提供し、弁護士業務を強力にサポートします。
との点ですが、著作権侵害にあたるのではないかと人ごとながら心配してしまいます。

 図書スペースの蔵書を各弁護士の専用スペースへ一時的に持ち込むことを認めると、書籍の「貸与」とされる危険があります。この場合、「Theo」は図書スペースがあることを売りにして賃借人を集めていますので、この書籍の貸与は営利目的とされる可能性大です。

 かといって、図書スペースにコピー機を設置して入居弁護士にセルフサービスで必要部分をコピーさせるとなると、いわゆるカラオケ法理によって、コピー機の設置者であるコクヨが複製の主体とされる危険があります。この場合、複製の主体と複製物の使用の主体が異なるとして、私的使用目的の抗弁(著作権法30条1項)が成り立たない可能性があります。かといって、「Theo」は図書スペースが著作権法31条1項にいう「図書館その他の施設で政令で定めるもの」にあたらないことは明らかです。

 すると、許されていることは、この「図書スペース」内での書籍の閲覧のみを可能とすること及び入居弁護士が独自に複製機器(デジカメやハンディスキャナ等)を図書スペースに持ち込んで文献の必要部分をコピーすることくらいということになります。それはそれで結構不便そうです。

 漫画業界の主観的利益に配慮して書籍・雑誌をも貸与権の対象としてしまった著作権法の改正の弊害が、こんなところにも現れているといえそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 04:43 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (0)

04/11/2007

著作権法上の「複製」の要素としての「再製」

 昨日、東京弁護士会の東弁知的財産権法部会において、

「著作権法上の『複製』について
──夢は時間を……──
という題で講演をしてきました。せっかくなので、そのときのレジュメの一部をウェブ用にアレンジしたものをアップロードします。


  1. 「再製」とは、既存の表現等に依拠しつつ、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを作成することをいう(最判昭53.9.7民集32巻6号1145頁[ワン・レイニー・デイ・イン・トーキョー事件])。「複製」と「翻案」が峻別された現行法の下で、後段はしばしば、当該既存表現等と実質的同一性のあるものを作成することと言い換えられる。

  2. 「依拠」とは、表現等を作成するにあたって既存の表現等を利用する意思をいう。既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないとされる(前記・ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件最高裁判決)。

    •  「既存の著作物等の表現内容を認識していたこと」は「依拠」の要素に含まれるか(cf.東京高判平8.4.16判時1571号98頁〔悪妻物語事件〕)。

    •  先行作品の著作物性の有無、保護期間の経過の有無、著作権者等が誰であるのか等の認識や、後行作品の独自性の認識等(東京高判平14.9.6判タ1110号211頁〔記念樹事件〕)は、依拠性の有無には関係がない。

    •  既存の表現等の翻案物に基づいて新規の表現等を作成した場合に原作品に依拠したといえるかは問題

    •  依拠ありとするためには、意識的に既存の表現等を利用する意思があることを要するか、過去に知覚した表現等を無意識のうちに利用してしまった場合でもよいのか(cf.「My SWeet Lord」訴訟における「潜在意識の内における盗用」論)。

    •  作品を作成した後にこれと実質的に同一な表現を含む先行作品を知った場合に、さらに当該新作品を増製することは、先行作品中の表現に依拠したものといえるか。

  3.  依拠の存在は、複製権侵害の存在を主張する側に主張・立証責任があるが、直接これを立証することが困難な場合が少なくない。その場合、依拠の存在を推認させる間接事実を積み重ねることによって、依拠性の存在を立証する。

    •  既存表現等と新表現等とが偶然の一致とは思えないほどに酷似しているとの事実は、依拠の存在を推認させる間接事実となる(東京地判平4.11.25判タ832号199頁〔土産物用暖簾事件〕、東京地判平6.4.25判タ873号254頁[城と城下町事件]、東京地判平7.5.31判タ883号254頁[ぐうたら健康法事件]、前記記念樹事件高裁判決)。

    •  既存表現等にあった誤記・誤植(敢えて「罠」として埋め込まれたものを含む。)と同一の誤記・誤植が新表現等にも複数見られるという事実(東京地判平4.10.30判時1460号132号〔観光タクシータリフ事件〕、名古屋地判昭62.3,18判時1258号90頁〔用字苑事件〕)

    •  また、権利者の作品が公表された後程なくして類似した内容の作品が被疑侵害者により公表されたという例が繰り返されたという事実(東京地判平17.5.17〔通勤大学事件〕)。

    •  被疑侵害作品の作成に携わった者が既存作品に実際に触れ、または、触れる機会があったとの事実(但し、実際に触れたであろう蓋然性の肯定は、依拠を推定される力の大小に影響)。なお、「権利侵害者が『アクセス可能性の存在』を立証した場合には、被疑侵害者側が「アクセスしなかったこと」を主張立証する責任を負う」との見解は、「ウェブ上にアップロードされている全ての表現について、インターネット端末を操作しうる全ての人にアクセス可能性はあるが、ウェブ上にアップロードされている各表現について、インターネット端末を操作しうる特定の人がこれにアクセスした可能性は決して高くない」現実に適合していないのではないか。

    •  既存表現等の創作者等の署名・落款印と類似する署名・落款印が新たな表現等に用いられているという事実(大阪高判平9.5.28知裁集29巻4号481頁[エルミア・ド・ホーリィ贋作事件])。

    •  侵害被疑者が新表現等を独自に作成できるだけの能力を有していなかったとの事実。

  4. 「再製」といえるためには、既存の表現等と実質的同一性のあるものを作成すれば足り、多少の修正、増減、変更がなされてもよい(東京地判平15.2.26判タ1140号259頁[池田大作肖像ビラ事件]、大阪地判平8.1.31判タ911号207頁[エルミア・ド・ホーリィ贋作事件])。

    •  著作物については、既存の著作物に創作的要素が加えられた場合には、著作物としての実質的同一性を失うとされることが多い(橋本英史「著作物の複製と翻案について」379頁)。実演やレコードのように「翻案権」が法定されていないものについても同様に考えるべきか。

    •  プログラムの著作物の場合は、既存のプログラムの変数名だけを変更した場合のように、実質的同一性の範囲を狭く解すべきとする見解もある(藤原宏高=平出晋一「プログラマのための最新著作権法入門」109頁)。また、翻訳文については、原文に忠実な原翻訳文と、読みやすさを優先させた翻訳文との間には実質的同一性はない(東京高判平4.9.24判時1452号113頁[サンジェルマン殺人狂騒曲事件])。

    •  先行作品の一部分を複製した場合に当該作品全体について複製権侵害が成立するとするのか、当該部分の複製が行われたと解するか(二重起訴禁止の原則や既判力の範囲との関係で差異が生じうる。)。

    •  他方、既存の著作物の全体を新たな表現等の中に利用した場合であっても、一般人が通常の注意力を持って新表現等を見た場合に、既存著作物の本質的な特徴(例えば、「書」であれば、文字及び書体の選択、文字の形、太細、方向、大きさ、全体の配置と構成、墨の濃淡と潤渇(にじみ、かすれを含む。)などの表現形式を通じて、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢い等)を直接感得することが困難である場合には、新表現等において既存著作物は再製されたとはいえない(東京高判平14.2.18判時1786号136頁[照明器具用宣伝カタログ事件])。

Posted by 小倉秀夫 at 06:31 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/04/2007

焼きおにぎり茶漬けの製法

 某所から請け負った原稿の関係で、料理のレシピの特許法による保護の可能性を考えているのですが、料理については、意外なほど特許申請が多くなされているのですね。

 例えば、「焼きおにぎり茶漬けの製法」と題する特開2001−352922は、

白胡麻を磨り潰し、これに白味噌を混ぜ合わせて団子状とし、炊飯の中に前記白味噌の団子状のものを1個入れて丸いおにぎりを作り、このおにぎりの周囲をこんがり焼いて焼きおにぎりとする。別に、昆布と鰹だし、醤油、みりん及び/又は酒、食塩をまぜた汁を用意し、通常のお吸い物程度の味付けとし、前記焼きおにぎりを器に入れて、これに、汁を適量かけ、その後焼きおにぎりにみじんぎりにしたみつ葉と、しその葉とを載せ、焼きおにぎりの白味噌がとけるまで攪拌することを特徴とする焼きおにぎり茶漬けの製法
ということを請求項としています。

 この特許発明については、特許公開まではなされましたが、そこから先には進んでいないようなので、我々は当面居酒屋で焼きおにぎり茶漬けを食べることができそうです。しかし、いざ審査請求がされた場合を考えると、「2001年の段階でおにぎり茶漬けって既にお店に出ていたかなあ」とかちょっと迷ってしまいます。

 それはともかく、この種の特許発明については、特許公開まで行き着いているものは膨大にあるのですが、特許登録に至っているものがなかなか見あたらないので、どの程度のものであれば進歩性が認められるのかと言うことが今ひとつわからないのです。

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03/30/2007

槙原さん対松本さん

 ゲームラボでの連載記事では、槙原さん対松本さんの裁判をテーマに取り上げてみることにしました。

 ある意味、同一ジャンル&類似表現型の著作権侵害訴訟において検討すべき要素がここに詰まっていると思ったからです。

 まだ初稿段階ですが、近々ご覧いただけるようになるかと思いますので、興味がおありの方は、多少周りの目が気になるかも知れませんが、ゲームラボをお手にお取り頂けると幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 06:52 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/29/2007

JPRSはなぜ自社の処理方針を明らかにできないのか。

 日本知的財産権仲裁センターに「ドメイン名の登録を移転せよ」との裁定を下された方から依頼を受けて、ドメイン訴訟を提起することになりました。

 「mp3.co.jp」のときの経験を生かして、請求の趣旨は、「不正競争防止法3条1項に基づくドメイン名の差止請求権がないことの確認」で行こうと思ったのですが、登録の抹消を命ずる裁定と移転を命ずる裁定とで、これを覆すために必要な主文が異なると困るので、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)に電話をして、確認をとろうとしました。

 しかし、JPRSの担当者は、答えられないの一点張りです。私としても、「ドメイン訴訟で勝訴したのに、主文がJPRSのお眼鏡にかなわなかったために、ドメイン名の登録が移転させられてしまった」ということになると弁護過誤ともなりかねないので、「○○」という主文で判決が確定したらJPRSはドメイン名の登録移転を行わないこととしてくれるのですか?と確認しているのですが、「裁判所の判決が確定したらそれを見て判断する」の一点張りです。

 「mp3.co.jp」のときは前例がなかったから多少のことには目をつぶったのですが、現段階で、「どのような訴訟物の、あるいはどのような主文の判決が登録者側勝訴で確定したら、ドメイン登録の抹消または移転を命ずる仲裁センターの裁定を取り消すのか」についてJPRS内で基準作りをしていないとしたら、職務怠慢と言うより外にありません。裁定後のドメイン訴訟は、認容されたもの、されなかったもの含めて、何件も既に提起されているのですから、それらの訴訟物及び請求の趣旨のパターンを抽出して、それぞれについて、(登録者が勝訴したときに)仲裁センターの裁定を覆す効果をJPRSとして認めるかどうかを事前に明らかにしておけばよいだけの話です。それがJPRSにできない理由はないし、逆に、それはJPRSにしかできません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:41 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

03/27/2007

合併と著作者人格権

 先日出席した某研究会での議論によれば、企業合併にあたって、合併前に成立した法人著作物(吸収合併の場合、消滅会社の法人著作物)について、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」(著作権法60条)の差止めを求める権利を、合併後の会社は有しないということになるらしいです(同116条の反対解釈)。確かに、現行著作権法の解釈としては、それが一番素直です。

 もちろん、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」を犯した場合の刑事罰(同120条)は親告罪ではない(同123条1項参照)ので、そのような行為を行っているものについて合併後の会社が刑事告発をして処罰してもらうことはできるわけですが、民事的に何とかしようということはできないということです。

 パラメータデータの改変ツール等を著作者人格権(同一性保持権)で押さえつけてきたゲーム会社にとって、企業合併というのは痛し痒しなのだなあと思った次第です。

Posted by 小倉秀夫 at 07:10 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

03/24/2007

「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集

「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集に対して、下記のような意見を投稿してみました。



第4章 コンテンツをいかした文化創造国家づくり

I.世界トップクラスのコンテンツ大国を実現する

1.ユーザー大国を実現する


a. インターネット放送や衛星放送等の新技術を活用することで、日本中のどこにいても日本中のどこかで放送されているテレビを視聴できるようにする。


 現在の日本では、ローカルテレビ局のほとんどは、申し訳程度にしか独自番組を製作・放送しておらず、その放送するテレビ番組の大半は、東京キー局が製作したテレビ番組の再送信または再放送である。これは、テレビ局、とりわけローカルテレビ局が総務省による規制により守られているからである。しかし、この保護政策によって、国民は次のような損失を被っている。

 1つは、東京キー局が製作した特定のテレビ番組を視聴したくとも、地元のローカルテレビ局がこれを再送信してくれなければ、これを視聴することができないということである。特に、地元ローカルテレビ局が5局に満たない地域では、必然的に東京キー局が製作した特定のテレビ番組を視聴できないこととなり、東京圏の住民との間にいわゆる情報格差ないし文化格差を生ずることになる。

 2つは、ローカルテレビ局は、東京キー局が製作したテレビ番組を再送信するだけで莫大な広告収入が得られ従業員は楽して高給を得ることができること、並びに、東京キー局及び関西ローカル局以外は放送域内の人口が極めて少なく、ローカルテレビ局が独自に番組を製作して放送をしても、さほどの視聴者数を見込むことができず、それゆえ広告収入もさして期待できないことなどから、優れた独自番組を製作していこうというインセンティブが萎えているということである。


b.商業用レコードの音楽配信について強制許諾制度を設ける。


 特定の地域に住んでいて特定の端末を利用しているユーザーに向けて既に音楽配信されている楽曲は、どこに住んでいてどんな端末を利用しているユーザーもこれをダウンロードし再生して視聴できるようにすることが望ましい。そのための手段として、欧州では、iTunes Storeで配信された楽曲をiPod以外の端末でも再生できるようにするようにApple社に義務づけようとする動きがある。しかし、この政策を日本に取り入れても、効果は薄い。なぜなら、レコード会社が出資している一部の音楽配信業者に対しては配信が許可されているがiTunes Storeには配信が許可されていない楽曲が少なくないこと、iTune Storeにしても日本国内在住者に対する配信は許諾されていない楽曲が少なくないなどの事情があるからである。

 したがって、上記政策を実現するためには、特定の地域(日本国外を含む。)に住んでいて特定の端末を利用しているユーザーに向けて既に音楽配信されている楽曲については、一定のプロモーション期間(数ヶ月程度)については猶予を認めるとしても、一定のDRMを使用している配信業者からの申立てにより、既存の配信許諾契約と同様の対価での許諾を強制する制度を設けるべきである。


2.クリエーター大国を実現する

(1)クリエーターが適正なリターンを得られるようにする

①契約慣行の改善や透明化に向けた取組を奨励・支援する


a.テレビ局又はその関連会社である音楽出版社がタイアップ楽曲の音楽著作権を所有ないし共有することを、優越的な地位の濫用として禁止する。


 ドラマ等のタイアップ楽曲は相応のヒットが見込めるため、テレビ局は、タイアップ楽曲を定めるに際して、その楽曲の音楽著作権を自社の関連会社である音楽出版社に所有ないし共有させることを求めることが少なくない(これによりタイアップ楽曲がヒットした場合には、その収益の一部をテレビ局のグループ会社に帰属させるのである。)。しかし、テレビ局が有する「タイアップによる楽曲の売り上げ増大機能」は、テレビ局が免許制の下で厳しい競争を免れていることに大きく負っているのであるから、それを本業以外の収入の増大に活用することは、免許制のおかげでテレビ局が取得した優越的な地位の濫用と言うべきである。


(4)利用とのバランスに留意しつつ適正な保護を行う


①国内制度を整備する


a.パロディとしての使用等、諸外国で認められている権利制限規定を日本の著作権法にも積極的に導入する。


b.商業用レコードに収録された音楽著作物の実演の複製ないし自動公衆送信のように、複数の権利者の許諾を得ることが義務づけられている場合に、当該利用を許諾を行うことについて他の権利者から同意を求められたときには、正当な理由がない限り、これを拒むことができない旨の規定を創設する。


c.他人による著作権侵害に関与した者が民事上又は刑事上の責任を負う場合及び負わない場合を明確化する。


 Winny事件でその開発者が著作権侵害の幇助犯として有罪判決を受けたことで、ソフトウェア開発者の間には不安の声が渦巻いている。また、いわゆる「カラオケ法理」の止まることを知らない拡大解釈が裁判所により行われることにより、知的財産権に関して専門的な知識を有する弁護士もまた、IT事業者からの相談に対して、どうすれば著作権侵害を行ったとして事業の中断を迫られ又は莫大な賠償金の支払いを余儀なくされることなく新規事業を立ち上げることができるのか、確実なアドバイスをできない状況下にある。著作権法が新規ビジネスを不当に萎縮させないようにするためには、他人による著作権侵害に関与した者が民事上又は刑事上の責任を負う場合及び負わない場合を立法により明確化することが必要である。


d.一部の権利者が正当な理由なく利用許諾を拒むばかりにコンテンツの再利用が阻まれるというのは文化の発展という著作権法の究極目的に反する。従って、許諾権を有する権利者が複数いる場合に、著作権が複数人に共有されている場合に関する著作権法65条3項と同様の規定を設けるべきである。


②国際的な著作権制度の調和を推進する


a.著作権の保護期間が長すぎることにより著作物の再利用が困難となっている現状に鑑み、著作権の保護期間の最低限を短縮するように、ベルヌ条約加盟国に働きかける。


3.ビジネス大国を実現する

(2)コンテンツを輸出する

③コンテンツ関係情報提供のためのポータルサイトを創設する。


a.国内アーティストに関する商業用レコードについて作成されたプロモーションビデオを網羅的にストリーミング配信するサイトを創設する。


 プロモーションビデオというのはその楽曲のCD等の売り上げを増大させるために製作され、公開されるものである。従って、日本国外に音楽コンテンツを輸出するに際しては、日本国外の音楽ファンに、日本のアーティストの楽曲に係るプロモーションビデオを視聴させることが有益である。なお、プロモーションビデオのネット配信については、JASRAC等の音楽著作権管理団体等がこれに対してもライセンス料の徴収を行うため日本国内ではあまり普及していないが、プロモーションビデオが公開されることで音楽CD等の売り上げが増加すれば音楽著作権収入の増加を見込めるのであるから、JASRAC等は、レコード製作者から許諾を受けたプロモーションビデオのストリーミング配信に関してはライセンス料の徴収を控えるべきである。


b.日本のポピュラーミュージックを専門的に流すインターネットラジオ放送局を創設する。


 海外の音楽ファンに日本の音楽コンテンツを購入してもらうためには、プッシュ型のメディアでも日本の音楽コンテンツを流すことが有益である。インターネットラジオであれば、流している楽曲の曲名とアーティスト名が端末ソフト上に表示することが可能であるから、未知の楽曲をインターネットラジオで聞いて気に入ったら、楽曲名とアーティスト名を頼りに、インターネット通販でCDを取り寄せたり、音楽配信サービスで楽曲を購入したりすることが可能である。

Posted by 小倉秀夫 at 07:44 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

03/16/2007

著作権の保護期間延長問題は人格権とは関係ない

 著作権の保護期間の延長問題で、しばしば誤解されている点が1つあります。著作権の保護期間が経過すると著作者人格権まで消滅すると思われている節がどうもあります。

 例えば、ITmediaに掲載されていた三田さんの発言ですが、

 著作者の意志を尊重し、著作物の同一性を守るために延長が必要という意見もある。「孫子のために財産を残したい、という訳ではない。これは著作物の人格権を守るための議論だ。例えば谷崎潤一郎の保護期間がもうすぐ切れる。切れてしまえば、谷崎の作品を書き換えてネットで発表するようなファンが出てくるだろう。もっとエロくしようとか、もっと暴力的にしようとか。文学はWikipediaではない。書き換えられては困る」(三田さん)
法律的にいえば、著作物の同一性を守るためということであれば、著作権の保護期間の延長というのは全くの意味がありません。

 まず、著作者人格権は、他の人格権と同様に、一身専属権なので、相続の対象となりません。著作者の死亡と同時に消滅します。では、著作者が死亡した後であればその著作物に対して何をしても良いのかというとそうではなく、著作権法60条は、

著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
と定め、「その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合」でない限り、「もっとエロくしようとか、もっと暴力的にしようとか。」ということは、著作権の保護期間とは無関係に禁止されます(もっとも、「もっとエロくすることが谷崎の「意を害する」(「意に反する」ではありません。)といえるのかは難しいところですが。)。

 実際、著作権法116条1項は、

著作者又は実演家の死後においては、その遺族(死亡した著作者又は実演家の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者又は実演家について第60条又は第101条の3の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第百十二条の請求を、故意又は過失により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為又は第六十条若しくは第百一条の三の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。
と定めており、著作権の保護期間が経過したか否かにかかわらず、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」を差し止める権限を、その著作者の遺族(但し、孫まで)に与えています。

 また、著作権法120条は、

第60条又は第101条の3の規定に違反した者は、500万円以下の罰金に処する。
としており、著作者人格権侵害の場合の法定刑(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科)よりは軽いものの、著作権の保護期間が経過したか否かにかかわらず、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」はいつまでも刑罰の対象となり続けるのです(しかも、この場合は、親告罪ではないので、遺族等の告訴は不要です。)。

 立法提言を行うにあたっては、現行法の正しい知識が必要かと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:23 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

03/12/2007

Winny事件の判決文

 Winny事件の判決文が、判例タイムズの2007年3月15日号に掲載されています。

Posted by 小倉秀夫 at 02:09 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/11/2007

著作権法の問題でないとするとなおさら問題だ

 wikipediaの記載を前提に話を進める(だって、「演歌」って私が好んで聴くジャンルではありませんから)と、「おふくろさん」がリリースされたのは1971年とのことですから、森進一さんが「30年以上前から」例の「語り」を付けて唄っていたのだとすると、「おふくろさん」のリリースから程なくして「語り」が付けられていたということになります。で、森進一さんのナベプロからの独立が1979年ということですから、この「語り」はおそらくナベプロ在籍時代に作られたのではないかと考えられます。「1973年、最愛の母親が50代を目前にして自殺」とのことですから、事務所がその辺を配慮して「森進一の『おふくろさん』」にしてあげたのかも知れません。

 それはともかくとして、この騒動は著作権法の問題ではないのだとする方々がおられるようです。だとすると、むしろ由々しき事態です。日本は未だに、「大御所」が「あいつには俺の歌は歌わせない」と公言すると、法的な根拠もないのに、そのとおりになってしまう後進的な社会だということになってしまうからです。法的には森進一が「おふくろさん」を唄うことを禁止する権限がないのに「あいつには唄わせるな」とJASRAC等に要求するなどというのは、「一本筋の通った」方のやることではありません(これに対するJASRACの対応も筋が通っていませんが。)。テレビ局の法務スタッフの方々は、まねきTVのような現代型サービスを潰すことにエネルギーを費やすより、芸能界のこの種の前近代的風習を潰すことにエネルギーを費やす方が、その本来の任務なのではないかという気がしてなりません。。

Posted by 小倉秀夫 at 07:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (1)

03/09/2007

「語り」を加えることは悪なのか

 「おふくろさん」騒動ではどうも森進一さんが悪者にされているようですが、語りの部分は、保富庚午さんが作詞をし、「おふくろさん」の作曲者である猪俣公章さん自身が作曲しているのだから、普通に考えれば、「おふくろさん」の前に「語り」をいれるというのは事務所の意向だったのだろうなと思います。だから、森進一としては、当然法的な問題はないと思っていたのだと思います。といいますか、猪俣さんがご存命のころには、川内さんも何の抗議もしていなかったわけですから、森進一さんが「何を今更」と考えたとしても不思議はありません。

 実際、「語り」の部分を加えるなんて普通に行われている話なので、芸能マスコミのインタビューに応じて「語りを加えるのはいけないこと」である前提で語っている歌手の方々とかは自分で自分の首を絞めているのではないかという気がしてなりません。John Lennonは「Rock 'n' Roll」を収録するにあたって「Just Because」の前後に「語り」を加えたわけですが、だからといって、Lloyd Priceは「Rock 'n' Roll」の発行等の差止めなんか要求しないわけですし。といいますか、実演家って、作詞家・作曲家が作った音楽著作物を何の解釈もせず楽譜通りに唄う存在ではないわけですから、ある程度のアレンジはそもそも許されるのだと解するしかないのではないかと思ったりはします。作詞家・作曲家が楽譜を印刷して発行しただけでは大して売れそうにない大衆歌謡では、実演家の裁量の幅は相当に大きいのだといわざるを得ないのではないかと思うのです。

 「汝、現場で歌詞やメロディをアレンジしたことのない者のみが石を投げよ」といわれて石を投げられる非シンガーソングライター系歌手がどれほどいることやら。

Posted by 小倉秀夫 at 09:15 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (1)

03/05/2007

「森進一にだけ唄わせるな」というのは無理

 歌手、森進一(59)が代表作「おふくろさん」のイントロ前に無断でせりふを足していた問題で、作詞家の川内康範氏(87)が4日までに、楽曲の著作権を管理するJASRAC(日本音楽著作権協会)に、森が川内氏の作品を歌唱できなくするよう訴えていたことが分かった。
とのニュースが報じられています。

 しかし、今日JASRACは、演奏権に関していえば、奏者との間で個別の演奏ごとに許諾契約を締結するという方式ではなく、放送局や会場経営者との間で包括的利用許諾契約を締結するという方式を多用している以上、既に包括的利用許諾を締結済みのコンサートホール等に対して「森進一に『おふくろさん』を歌唱させるな」という要求は法的にはできそうにありません。

 今後のことにしても、JASRACが「場」に対する「包括的利用許諾」という枠組みを放棄しない限り、「森進一」という個人に限定して「おふくろさん」という特定の管理著作物の歌唱を許諾しないということはできそうにないのですが、如何に川内康範先生が大御所とはいえ、川内康範先生のために、JASRACが長年苦労して築きあげてきた収入安定化のための手法を放棄するとは考えにくいところです(「要求をのまなければ自分の作品を全部引き揚げるぞ」と要求されても、JASRACとしては飲めない相談ではないかという気がします。)。

 川内康範先生がどうしても「おふくろさん」を森進一に唄わせたくないのであれば、「おふくろさん」をJASRACの管理著作物から外してもらうか、川内先生自身が著作者として、「心の卑しい森進一が『おふくろさん』を唄うことは、『おふくろさん』の作詞家である自分の名誉または声望を害する方法での利用にあたる」として差止請求を起こすしかないのではないかと思うのですが、ではそうすることで川内先生の要求が法的に認められる可能性がどの程度あるのかといえば、あまり無いかなあとは思います。

Posted by 小倉秀夫 at 07:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

優先すべき統一性

 ネット上ではJASRACを「悪の魔王」かのごとくネガティブに評価する見解が一定の支持を集めているようですが、おそらくそれは的を射ていないのでしょう。管理著作物を無料で利用している人や企業を見つけてはそれらの者から使用料ないし賠償金を徴収するのは彼らの本来的業務の一つだし、そこではでくるだけ広範囲にできるだけ高額の使用料等を徴収することが求められているからです。また、既存のコンテンツをネットで利用する際にむしろ障壁となるのは、JASRACではなく、レコード会社やテレビ局などの隣接権者であるというのがネットビジネスを弁護士としてサポートしてきた私の正直な感想です。

 また、裁判に関していえば、音楽著作物の利用に間接的に関与するに過ぎない者に対して訴訟や仮処分を申し立てるJASRACが悪いというよりは、そのような訴訟等が提起された場合に、既存の法理論や裁判例を乗り越えてこれを認容してしまう裁判所に問題があるというべきでしょう。

 例えば、大阪地判平成6年4月12日判タ879号279頁は、

弁護人は、カラオケの伴奏部分は適法とされているにもかかわらず、客等の歌唱の部分のみを取り上げて演奏権を侵害するというのは、犯罪構成要件明確性の原則、類推解釈禁止の原則を唱った罪刑法定主義に違反する旨主張するが、カラオケ伴奏自体はやはり歌唱に対して付随的役割を有するにすぎないとみざるを得ず、カラオケ店における客によるカラオケを伴奏とする歌唱が、店の経営者による演奏権の侵害になるという結論自体は前記の判例等から確定的であるといってよい。然るに、民事上は演奏権の侵害とされるのは仕方がないとしても、刑事上は罪刑法定主義の観点から演奏権の侵害にはならないかの如き解釈は、演奏権の概念を徒らに混乱させるものであって、到底採り得ない。演奏権の概念自体は民事上、刑事上を問わず一義的に明確であるべきものであり、また同一内容のものとしてとらえるべきものと解する。
と判示しています。しかし、最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁[クラブキャッツアイ事件]は、
けだし、客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法二二条参照)は明らかであり、客のみが歌唱する場合でも、客は、上告人らと無関係に歌唱しているわけではなく、上告人らの従業員による歌唱の勧誘、上告人らの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、上告人らの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、上告人らの管理のもとに歌唱しているものと解され、他方、上告人らは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図つて営業上の利益を増大させることを意図したというべきであつて、前記のような客による歌唱も、著作権法上の規律の観点からは上告人らによる歌唱と同視しうるものであるからである。
と判示しているのであり、この「同視しうる」から演奏権侵害の主体とみなしてかまわないのだという民事的な論理を刑事法にそのままスライドさせて「同視しうるから著作権侵害罪の正犯とみなしてかまわない」といいうるのかというと実は疑問です。著作権法の解釈についての民事と刑事との統一性よりは、第三者による刑罰法規に違反しない行為に関与した者を正犯者として処罰しうる場合(ex.間接正犯等)に関する著作権法と他の法律との統一性を優先させるべきではなかったかと思われるからです。

Posted by 小倉秀夫 at 03:24 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/25/2007

おふくろさん騒動

 JASRACに信託譲渡された音楽著作物についていえば、特定の歌手がこれを歌唱することを拒む権利は作詞家にも作曲家にもありません。作詞家がその歌手に対してどんなに憤っていてもです。著作権等の集中管理というのはそういうものです。気に入らない歌手に歌唱されたというだけでは、「名誉又は声望を害する」とまではさすがに言えませんから、著作者人格権の問題も発生しません。

 ですから、少なくとも「語り」の部分を加えずに「おふくろさん」を森進一が唄う分には、川内康範さんはこれを止めさせることは法的にはできません(力関係を利用して森進一をパージすることはできるかも知れませんが、それはそれで法的に問題が発生しそうです。)。

 なお、「歌唱パート」の前に語りを加えることが一般的に歌詞の同一性保持権を侵害するかのような説明がなされていることもあるようですが、それはいかがなものかなあと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 12:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

More Fiction Than Fact

 カナダのオタワ大学法学部でインターネット法と電子商取引法を教えているMichael Geist教授が、その開設ブログにおいて、「Movie Piracy Claims More Fiction Than Fact」というエントリーを立ち上げています。

 要するに、the Motion Picture Association of America (MPAA) から、「カナダは、映画の海賊版DVDの世界的な供給源になっているので、法改正しなさい」と要求されたのに対し、「それは、事実というより、フィクションだ」と怒っているということです。奇遇なことに、日本もまた「illegal camcording」(映画館で上映されている映画を、小型ビデオカメラを用いて録画して、それを販売目的でDVDにコピーすること)対策のために著作権法の改正をしようとしているらしいので、この点に関するGeist教授の議論はとても参考になります。

 例えば、

In fact, AT&T Labs, which conducted the last major public study on movie piracy in 2003, concluded that 77 percent of pirated movies actually originate from industry insiders and advance screener copies provided to movie reviewers.
なんていう指摘もあるわけで、日本でもDVDリリース前の海賊版DVDの出所が本当に「illegal camcording」なのかは、独立した調査機関等に調査してもらった方がよいのではないかと思ったりします。

 それにしても、著作権の保護を強化せよと迫る団体のやることというのは、どこの国でも似ているものですね。

Posted by 小倉秀夫 at 01:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/21/2007

WinnyシンポとAntinny

 Winnyシンポに出席してもう一つ感じたことは、Antinnyウィルスによる情報流出事故に関して、金子さんは他に責任を転嫁するような発言はしない方が良いのではないかということです。

 実証実験のためとはいえ、不完全な危険なソフトウェアを広く公開してしまったことがこれらの事故に繋がっているわけですから、法的な責任の有無はともかくとして、道義的な責任の一端は感じてもらわないと、却って好感度は落ちていくのではないかと思いました(といいますか、あの部分の説明は、私は不快に感じました。)。さらに言えば、今回の判決自体Antinnyウィルスについては触れていないのですから、そもそも今回のWinnyシンポで金子さん自らAntinnyウィルスの話をする必要があったのかすら疑問に思いました。

 どうしてもAntinnyの話をしたいのであれば、公開当初そのような脆弱性には気が付かなかったこと並びに刑事裁判の関係で現時点では対策がとれないことを少なくとも道義的に謝罪した上で、Antinny対策のバグフィックスが終了するまでの間、Winnyを使用しないように呼びかけるべきだったのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 05:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/20/2007

ひょっとして、「法務」だけ浮いていますか?

 さきほどTBSのお昼の番組のスタッフの方から、森進一の件でインタビューをさせてもらいたいとの電話がありました。

 「ホームページを見て」との話だったので、「私はまだその件については何も書いていませんが?」と返答したところ、「著作権にお詳しい先生を捜していた」とのことだったので、「そこまで調べたのであれば、私がTBSと訴訟していることもご存じですよね」と言いましたら、「知りませんでした」と言っていました。

 その前は、読売テレビの方から、著作権を保護しすぎることがIT技術の発展の妨げになることにつき電話インタビューを求められましたので、「その通りである」と答えておきました。

 ところで、テレビ局では、選撮見録やまねきTVについて訴訟を提起することやその後の訴訟進行に関して、社内的なアナウンスをちゃんとしていないのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 05:16 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/19/2007

Winnyシンポ

 たまたま選撮見録事件の控訴審(高裁での口頭弁論が終結し、判決言渡しが6月14日に指定されました。)の関係等で大阪に行く機会があったので、2月17日に大阪弁護士会で行われたWinnyシンポジウムに出席してきました。

 そこには、岡村先生や奥村先生落合先生町村先生等の「いつもの顔」がありました。

 Winny事件地裁判決については、既に東大とSofticとで研究発表していることもあり、このシンポジウムには参加しないような法学研究者や法律実務家の感想というのも私は聞いていました。そういう観点から見ると、現状の方針では高裁で逆転無罪を勝ち取るには厳しいのではないかという感想を持ちました。

 まず、Winnyにおいて「キャッシュ」といわれている仕組みは何のために用意されたのかという質問を、両研究会において受けたわけですが、実際、第1放流者のIPアドレスを隠蔽する必要性というのが「Winny」における「ファイル共有」には見いだしにくいと思います。もちろん、金子さんの本には「プライバシー保護」というお題目を掲げているし、壇先生は「IPアドレスもプライバシーの対象でしょう」とはおっしゃるのですが、その漠然とした「Winnyネットワークに放流するファイルが違法性を欠くものであったとしても第1放流者がIPアドレスを知られたくない」という希望に叶えることが、第1放流者のIPアドレスを隠蔽することにより著作権侵害ファイル等の違法ファイルの放流を助長してしまうというデメリットを凌駕するほどの社会的な利益として認めてもらえるのかというと、少なくとも日本の高等裁判所、特に刑事部では難しいのではないかという気がしています。

 また、Winny2において、Winny1のそれよりは機能的に劣るものであるとはいえ、ファイル共有機能を付加した理由というのも、説得的に説明できていないなあと思いました。電子掲示板の管理に必要な「ネットワーク上から特定の情報を消去する機能」が完成したのでそれをファイル共有部分にも応用してみたというのであればそれを全面に押し出せばいいわけですが、そうでないのであれば、既にWinny1で実験を完了しているはずのファイル共有機能をWinny2に実装した動機を「実験目的」という言葉で押し切るのは難しいのではないかと思いました。

Posted by 小倉秀夫 at 12:25 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (2)

02/18/2007

貧せざるが貪す

 「仮処分の申請が認められたので本訴に移行する」ということはよくある(ex.ファイルローグ事件)のですが、「仮処分申請が最高裁でも認められなかったため本訴に移行する」ということは聞いたことがありません。もちろん、保全の必要性が認められず申立てが却下されたというのならばまだわからなくはないのですが、被保全権利がないとして申立てが却下されたにもかかわらず同一の事案に関して本案訴訟を提起する合理的理由というのは、通常ありません。

 日経新聞によれば、

フジテレビジョンなど民放キー局5社とNHKは、「まねきTV」の名称でインターネットによるテレビ番組の転送事業を手がける永野商店(東京・文京、永野周平社長)を相手取り、サービス停止を求める民事訴訟を3月にも東京地裁に起こす方針を固めた。「ソフトただ乗りを見過ごさない」(民放幹部)姿勢を明確にする狙い。最高裁への仮処分の申請が認められなかったため、本訴に移行する。
とのことです。

 もちろん、フジテレビジョンなど民放キー局5社とNHKには豊富な資金があり、たくさんの弁護士に多額の報酬を支払って訴訟遂行を委任することができます。これに対し、永野商店は、これらキー局と比べると遥かにちっぽけな会社であり、キー局との訴訟に応対するために捻出できる弁護士費用等はキー局らのそれを遥かに下回ります。すると、地裁から数えて第4審目の審理に応対するには、永野商店が無理を重ねて弁護士費用を調達するか、弁護士がただ同然で訴訟遂行を引き受けるより他ありません。まあ、この調子だと、本案訴訟において、地裁、高裁と永野商店が勝ち進んでも、キー局側は控訴、上告と繰り返すのでしょう。途中で、永野商店がその訴訟費用の負担に音を上げて商売を畳んでくれればキー局側は事実上勝利したのと同様の効果を得ることができますし、永野商店の訴訟代理人がボランティア同然での訴訟遂行に音を上げて辞任してくれれば、被告本人訴訟となりますから、逆転勝訴の可能性も見えてくる。ひょっとしたらその程度の狙いなのかも知れませんし、あるいは、両当事者の資本力の差や社会的地位の差を斟酌して結論を決めるタイプの裁判官にあたることにかけているだけなのかも知れません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/17/2007

デサフィナード事件

 大阪地裁平成19年1月30日〔デサフィナード事件〕の判例解説を書いているところなのですが、大阪地裁民事21部らしいぐだぐだぶりにクラクラ来ているところです。

 この事件、一般には「ピアノの撤去まで認められた」という点が注目されているようですが、その前段階のカラオケ法理の適用の部分からぐだぐだです。店舗側主催のライブやBGMとしてのピアノ生演奏についてまでご丁寧にカラオケ法理を適用している(これは「手足」論でいいでしょう?)上に、演奏者等の企画・主催にかかるライブについては主催者と店舗側の共同侵害行為と認定し、結婚披露宴等の貸切営業については演奏主体性を認めないという混乱ぶりです。

 ライブの場合に、JASRACの管理著作物が演奏曲目にJASRACの管理著作物が入っていないかどうか、入っている場合にその演奏者がJASRACと契約を結んでいるかを事前にチェックする義務を仮にライブ会場提供者に認めるとしても、そのチェックを怠った会場提供者はせいぜい幇助者としての共同不法行為責任を負えば足りるのであって、著作権侵害行為を主催者と共同して行っているとまで見る必要があるのかというととても疑問です。

 第1審の主文だと、演奏者側の企画・主催にかかるライブのためであっても楽器類の店舗内への搬入が禁止されるので、そこでJASRACの管理著作物が演奏されなくとも、また、演奏者側がJASRACの管理著作物を演奏する場合には利用料をきちんと支払う人々であったとしても、ライブのために楽器類を搬入した段階で間接強制金の支払い義務が生じます。

 この事件の被告が開設している電子掲示板の記載によると、

地元の社会人で構成されているアマチュアバンドの方から、
デサフィナードにライブの申し込みがありました。
演奏曲をお伺いしたところ、JASRACの管理楽曲が入っているようなので、JASRACに許諾を得るようお願いしました。
このライブはノーチャージです。
もし、営業時間中でのライブに問題があるのであればライブ当日は臨時休業をし、演奏場所を無料で提供する事も提案しました。
しかし、残念ながらJASRACから許諾は得られず、2月15日のライブは中止となりました。
とのことですが、この主文だとこういう意地悪が行えてしまうのですね(デサフィナードが場所を無料で提供しても、バンドの側がチケットを販売すれば、差止命令に違反したとして間接強制金が発生します。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

02/09/2007

法律より契約──「監督に著作権」を巡って

 「監督に著作権を 大島渚監督ら」とのことですが、著作権法は、完成した映画の著作物の著作権を完成と同時に映画製作者から映画監督に譲渡する旨の契約を、映画製作者と映画監督の間で締結することまで禁止しているわけではありません。したがって、監督が映画の著作物についての著作権を欲しいのであれば、著作権法の改正を訴えるよりは、契約ルールの変更を求める方が手っ取り早いです。

 もちろん、その場合、映画製作者としては、その映画の製作にあたって投資した費用に見合う対価を求めることになりますが、「経済的な負担は映画製作者に!経済的権益は映画監督に!」なんて虫のよい話は普通は実現しないので仕方がないといえます(仮に、著作権法を改正して映画の著作物の著作権は監督に原始的に帰属するということにしても、映画製作者がその費用を負担するというルールが変わらなければ、完成した映画の著作物の著作権を当然に映画製作者に譲渡する旨の条項が入らない限り、映画製作者は映画監督と映画製作契約を結ばなくなるだけなのではないかと思いますし。

Posted by 小倉秀夫 at 01:21 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

02/07/2007

Double Apple 訴訟に見られる抜本的和解とYouTube問題

 The Beatlesの所属レーベルとして知られるApples Corpsと、MacintoshやiPodでお馴染みのApple Inc.との間の商標を巡る紛争が和解により解決したそうです。

新しい契約ではApple Inc.がAppleという登録商標のすべての権利を所有し、Apple Corpsに対してその商標の継続的な使用をライセンス供与することになる。


 商標の主たる機能が出所表示機能であることを考えると、最初にその標章を商標として登録した人・企業にいつまでも商標権が帰属し続けるより、その標章から最もその出所が想起される人・企業に商標権が帰属する方が好ましいので、商標権移転の対価にもよるのでしょうが、基本的にはいい解決だと思います。

 また、日本の著作権系権利者団体の代表とYouTubeのCEOさんらとの間の話し合いも行われたそうです。

 「紳士的な対応をしてくれた、と認識している。YouTubeも著作権を重視しており、Googleの協力を得て著作権侵害を防止する技術を開発するなど、問題解決に向けて努力すると言っていた」——植井氏は、YouTube側の対応をこう評価する。


 著作隣接権が著作物の流布に貢献した人・企業にインセンティブを与えて著作物の流布を活性化させることで文化の発展を図るために認められていることを考えると、著作物の流布に最も貢献できる人・企業に著作隣接権が帰属することが好ましいのだから、J-Popについての実演家及びレコード製作者としての著作隣接権としての送信可能化権並びにプロモーションビデオについての著作権としての自動公衆送信権(送信可能化権を含む。)をGoogle社に買い取ってもらった上で、実演家及びレコード製作者の意向で音楽配信サービスに提供する場合はGoogle社が無償で利用許諾する方式にした方がよいのではないかという気がしなくもありません。

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02/01/2007

気分転換で「星の王子様」

 桜井哲夫「占領下パリの思想家たち──収容所と亡命の時代」156頁によると、

1942年6月、コンスエロとの関係に頭を悩ませ、ブルトンの攻撃に困惑し、肉体的にも精神的にも疲れ切っていたサン=テグジュペリに、編集者のエリザベス・レイナルが、気分転換の仕事として子供向けの本を書かないかと誘った
ところ、これに応じてサン=テグジュペリが書いたのが、かの有名な「星の王子様」であるとのことです(注1)

 優れた作家は、自分の曾孫が働かずに安穏と生活できることを保障してあげなくとも、「気分転換」で、これだけの素敵な作品を作り上げることができるようです。


注1

このころ、サン=テグジュペリはアメリカ亡命中(フランスはヴィシー政権下)。コンスエロは、サン=テグジュペリの3番目の妻。アンドレ・ブルトンは、フランスの詩人、文学者、シュルレアリスト。桜井・前掲141頁によれば、ブルトンは、コンスエロに一目惚れしたらしく、ヴィシー政府の国民議会に選出された(ただし、本人は就任しない旨を宣言)という1年前の件を蒸し返してこのころサン=テグジュペリを攻撃中。っていいますか、自国が外国(ドイツ)軍に占領されて傀儡政権を作らされ、さあこれからレジスタンスだ!というときにも、フランス人は、男女問題に手を抜かなすぎです。

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01/26/2007

レジュメ on Winny

昨日、東大のコンピュータ法研究会と、ソフトウェア情報センターの研究会とで、Winny事件地裁判決についての研究発表をしてきました。

下記は、そのときのレジュメです。







京都地裁平成16年(わ)第716号 著作権法違反幇助被告事件について




弁護士 小倉 秀夫




罪となるべき事実





被告人(X)は、送受信用プログラムの機能を有するファイル共有ソフトWinnyを制作し、その改良を重ねながら、自己の開設した「Winny
Web Site」及び「Winny2 Web Site」と称するホームページで継続して公開及び配布をしていたものであるが、

Yが、法廷の除外事由なく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、平成15年9月11日から翌12日までの間、愛知県松山市○○町○丁目○番○号の同人方において、別表記載の各著作権者が著作権を有するプログラムの著作物である「スーパーマリオアドバンス」ほか25本のゲームソフトの各情報が記録されているハードディスクと接続したパーソナルコンピュータを用いて、インターネットに接続された状態の下、下記各情報が特定のフォルダに存在しアップロード可能な状態にあるWinnyを起動させ、同コンピュータにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に上記各情報を自動公衆送信し得るようにし、上記各著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害して著作権法違反の犯行を行った際、これに先立ち、同月3日ころ、Winnyが不特定多数者によって著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害する情報の送受信に広く利用されている状況にあることを認識しながら、その状況を認容し、あえてWinnyの最新版である「Winny
2.0 β6.47」を東京都文京区△△町△丁目△番△号の被告人方から前記「Winny2 Web Site」と称するホームページ上に公開して不特定多数者が入手できる状態にした上、同日頃、上記Y方において、同人にこれをダウンロードさせて提供し、

もって、Yの前記犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである。





補足説明



1.訴因不特定

(弁護人らの主張)

 検察官がXの行為として特定したのはWinny2のβ版を公開したのみであって、幇助に該当する具体的な行為が特定されていないのであるから訴因の特定を欠き、本件は公訴棄却されるべきである。



(裁判所の判断)

 起訴状記載の公訴事実は、Xが公開した対象であるWinny2をそのバージョンを含めて特定し、Xがこれを公開した日や、X自身が開設したホームページ上に公開するという具体的な方法、態様についてまで記載されているのであって、幇助に該当する行為は具体的に特定されているというべきである。



2.著作権侵害罪と幇助

(弁護人らの主張)

 著作権法120条の2に関する法改正の経緯等からすると、著作権法は同法120条の2で処罰される場合を除いては、技術の提供による間接的な関与行為に止まる場合を処罰の対象とはしておらず、著作権法は刑法総論の幇助犯による処罰を予定していないものと解すべきである。



(裁判所の判示)

 刑法62条1項の幇助犯に関する規定は、刑法以外の法令の罪についても、その法令に特別の規定がある場合を除いて適用されるのであり(刑法8条)、かつ、著作権法には、刑法総則ないし刑法62条1項の適用を除外する旨の規定も存在しない。



3.不特定の者に対する幇助

(弁護人らの主張)

 刑法62条は、特定の相手方に対して行うことが必要であり、不特定多数の者に対する技術の提供は刑法62条の幇助犯にあたらない。



(裁判所の判示)

 刑法62条に、弁護人らが主張するような制限が一般的に存するとは解されない。



4.幇助犯に対する告訴の要否

(弁護人らの主張)

 本件は、著作権法119条1号、同法23条違反の罪にかかる事案であり、同罪は同法123条によって親告罪とされているところ、本件においてXに対する告訴の事実が認められない。著作権者は他人に対してその著作物の利用を許諾することができる(著作権法63条1項)のであるから、その処罰意思に関しても相手ごとに判断されるべきであり、本件においていわゆる告訴不可分の原則を採用することは著作権法の趣旨に反するものであって、Yに対する告訴はXに対して効力を生じない。



(裁判所の判示)

 著作権者によってなされた告訴の効力がどの人的範囲に認められるかという問題と、著作権者が誰に対して著作物の利用を許諾したかということは、明らかに場面を異にするものであって、弁護人らの主張は独自の見解といわざるを得ない。



5.Yの正犯性

(弁護人らの主張)

 Y方にあったパソコンのアップフォルダには、捜索差押えの時点で、本件ゲームデータファイルは存在しなかったこと、京都府警によるダウンロード実験でダウンロードしたファイルは、同じキャッシュを有する他のパソコンをYのパソコンが中継したに過ぎない可能性があるから、Yには著作権法違反の正犯が成立しない。



(裁判所の判示)

 Yは、本件ゲームデータファイルをアップロードしていたかどうか直接明らかにはしていないが、アップロードをしていた理由としてダウンロード効率を上げるために多くのファイルをアップロードしていたことや、ファイルをインターネット上で見つけてきてそれをアップロードし、そのファイル数が増えること自体がうれしかったなどと述べていることからすれば、Yは本件ゲームデータファイルについてもアップロード可能な状態にして、これを蓄積していたものと考えるのが自然である。

 また、Winnyにはファイル転送に関して中継機能が存するが、Winnyのファイル転送は原則として直接なされるというのであり、中継が発生するのは4%程度と例外的であること、Yは捜索差押えを受ける日の近い時期にOSを再インストールことをしたことがあることなどを合わせて考慮すれば、上記ダウンロード実験によって本件ゲームデータファイルがダウンロードされた以上、Yがその時点において本件ゲームデータファイルを故意に公衆送信可能な状態に置いておいたものと認められる。



7.Xに対する著作権法違反幇助の成否

(1) 助長行為の有無

(弁護人らの主張)

 Xの行為は、正犯の客観的な助長行為となっていない。



(裁判所の判示)

 Xが開発・公開したWinny2がYの実行行為の手段を提供して有形的に容易ならしめたほか、Winnyの機能として匿名性があることで精神的にも容易ならしめたという客観的側面は明らかに認められる。



(2) 価値中立的な技術の提供と幇助の成否

(弁護人らの主張)

 WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり、それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとして様々な分野に応用可能で有意義なものであって、Xがいかなる目的のもとに開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大は妥当でない。



(裁判所の判示)

 価値中立的な技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解すべきである。

ア.技術の社会における現実の利用状況

 ACCSにより平成16年4月になされたファイル交換ソフト利用実態調査によれば、ファイル共有ソフトにより利用されているコンテンツのうち、著作権等の対象になり、かつ、著作権者の許諾が得られていないと考えられるものは、音楽ファイルで92パーセント、映像ファイルで94パーセント、ソフトウェアで87パーセントであった。

 平成15年9月ころまでには、インターネットや雑誌等において、ファイル共有ソフトが著作物の流通に著作権者に無断で相当程度利用されている旨の情報が流れており、Winnyに関しては、逮捕されるような刑事事件となるかどうかの観点から安全である旨の情報も多数流れていた。

イ.上記利用状況に対する認識

 Xは、Winnyが一般の人に広がることを重視し、ファイル共有ソフトが、インターネット上において、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状をインターネットや雑誌等を介して十分認識しながらこれを認容していた。

 そして、Winny2がP2P型大規模BBSの実現を目的としたものであり、 Winny1との互換性がないものであるとしても、Winny2にほぼ同様のファイル共有機能が備えられていることや、上記の「Winnyの将来展望について」が平成15年10月10日付のものであることなどからすれば、本件で問題とされている同年9月ころにおいても、同様の認識をしてこれを認容し、Winny2の開発、公開を行っていたものと認められる。

ウ.提供する際の主観的態様

 Winnyによって著作権侵害がインターネット上にまん延すること自体を積極的に企図したとまでは認められないが、著作権を侵害する態様での利用が広がることで既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることも期待しつつ、Winnyを開発、公開した。

cf. 「既存のビジネスモデル」

     パッケージベースのデジタルコンテンツビジネスモデル

  「既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデル」

     コピーフリーでも成り立つコンテンツモデル



(3) 結論

 本件では、インターネット上においてWinny等のファイル共有ソフトを利用してやりとりがなされるファイルのうちかなりの部分が著作権の対象となるもので、Winnyを含むファイル共有ソフトが著作権を侵害する態様で広く利用されており、Winnyが社会においても著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、効率もよく便利な機能が備わっていたこともあって広く利用されていたという現実の利用状況の下、Xは、そのようなファイル共有ソフト、とりわけWinnyの現実の利用状況等を認識し、新しいビジネスモデルが生まれることも期待して、Winnyが上記のような態様で利用されることを認容しながら、Winny2.0β6.47を自己の開設したホームページ上に公開し、不特定多数の者が入手できるようにしたことが認められ、これによってWinny2.0β6.47を用いてYが、Winnyが匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを一つの契機としつつ、公衆送信権侵害の実行行為に及んだことが認められるのであるから、Xがそのソフトを公開して不特定多数の者が入手できるように提供した行為は、幇助犯を構成すると評価できる。



検討



1.Winnyの公開とYによる自動公衆送信との因果性

 XによるWinny2の公開は、Yによる本件ゲームデータファイルの自動公衆送信を容易ならしめたといえるか。

(1) 幇助の因果性

 正犯の実行に必要不可欠であることは要しない が、物理的にまたは心理的に正犯の犯行を促進することは必要である 。

(ア) 物理的因果性

 XによるWinny2.0β6.47の公開は、Yによる本件ゲームデータファイルの自動公衆送信を物理的に容易ならしめたといえるか。

・ 一般に、実行行為の手段を正犯に提供する行為は、幇助としての物理的因果性を持つ。

・ (適法な)代替的給付がある場合にも物理的因果性を認められるか。

  XがWinny2(ないしWinny2.0β6.47)を公開した時点では、本件ゲームデータファイルを含むデジタルデータを自動公衆送信するためのソフトウェアは他にも広く出回っていた(WinMXやWinny1、あるいはWinny2.0のβ6.47より前のバージョン等)のであり、かつ、Yはこれら同種ソフトウェアを容易に入手することが可能であった(あるいは、既に入手していた。)。したがって、XがWinny2.0β6.47を公開しなかったとしても、Winny2.0β6.47以外のソフトウェアによって、本件ゲームデータファイルを自動公衆送信していた可能性がある。その場合に、XがYに対してWinny2.0β6.47を自動公衆送信することは、Yによる本件ゲームデータファイルの自動公衆送信を物理的に容易にしたといえるのか。

  

(イ) 心理的因果性

・ 一般に、実行行為ないしその行為者の発覚を困難とする行為は、そのことを正犯が認識している場合には、正犯の犯罪意思を維持・強化・喚起することに繋がるので、幇助としての心理的因果性を持つ


・ Winnyの場合、ファイルの位置情報等が要約された「キー」が一定の割合で書き換えられ、書き換えられたキーをもとにダウンロードがなされると、もともと当該ファイルのあったパソコンとは別のパソコンにファイルが複製され、この複製されたファイルがさらにダウンロードされるという「中継機能」を有しており、これによって当該ファイル情報の一次発信者が誰であるのかが判別できなくなることから、情報発信主体についての匿名性が確保されるという仕組みが採用されていた。しかし、実際には、中継が発生するのは4%程度と例外的であり、実際Yについては、ダウンロード実験中の警察官のパソコンに対して直接ファイル転送を行ってしまったために、氏名等が明らかにされてしまった。このような場合にも、「実行行為ないしその行為者の発覚を困難」としたとして、心理的因果性を認めることができるのか。

・ インターネット上での情報送信を行うことによる犯罪について、「実行行為ないしその行為者の発覚を困難とする行為」とは、誰のいかなる行為か。送信時刻と送信時のIPアドレスが秘匿されていなくとも、利用者の「戸籍上の氏名と住民票上の住所」が登録されていなければその匿名性により既に「実行行為ないしその行為者の発覚」が困難となっている(cf.ファイルローグ事件)のだとすれば、XによるWinnyの公開はことさら「実行行為ないしその行為者の発覚を困難とする行為」とは言えないのではないか。

(ウ) インターネット関連サービスと幇助の因果性























心理的因果性あり

心理的因果性なし

物理的因果性あり

Winny、2ちゃんねる、freemail、匿名Proxyサーバ

実名強制型SNS、企業向けレンタル・サーバ

物理的因果性なし

Whois Protect Service










2.中立的行為と幇助

 Winny(ないしWinnyを含むファイル共有ソフト)により自動公衆送信され得るデータファイルは、その著作権者等の意に反して自動公衆送信されたものに理論的に限られないし、実際、著作権者等の許諾のもとに自動公衆送信されているものもそれなりに存在している。

 このように、適法行為にも違法行為にも同様に利用され得る行為(中立的行為)について、それが違法行為に利用されたときには、未必の故意が認められる限り、幇助犯としての責任を理論的には負うのか。それとも、さらに何らかの条件を満たしたときに初めて幇助犯が成立するとすべきか。



a.幇助の「故意」については、確定的故意に限定する。

b.正犯者が既に犯行を決意しているか、決意を抱く客観的な兆候が存在していたことの認識、あるいは自己の行為がそれ自体正犯者に犯行を決意させるに足りるものであることの認識がある場合に限り「故意」を認めるべきであるとする。

c.「『故意』ありといえるためには、結果発生のある程度高い可能性(=蓋然性)を認識していなければならない」とする蓋然性説、または、「結果発生の蓋然性を認識しつつ、その認識を反対動機としなかった場合には未必の故意を認めてよい」とする修正された動機説を採用して、結果発生のある程度高い可能性(=蓋然性)を認識していなかった場合には幇助の故意がないとする。

d.不特定の者に対する教唆が認められないのと同様に、不特定の者に対する幇助も認められないとする。

e.適法行為にも利用され得る行為であることを重視して(あるいは蓋然性及び結果の重大性等により利益考量した上で)、正当行為として違法性を阻却することとする(cf.ベータマックス訴訟やグロークスター訴訟も?)



本判決の位置づけ

・ 不特定多数人に物・役務を提供する場合には、個々の正犯ごとに犯罪結果を生じさせることの蓋然性の認識・認容ではなく、不特定多数人がその物等を利用して犯罪結果を生じさせる蓋然性の認識・認容で足りるとしている。

・ 「さらに提供する際の主観的態様如何による」とするが、いかなる主観的態様の場合に幇助責任を問うのか(あるいは問わないのか)は明らかではない。



3.今後の課題

 では、今後P2Pファイル共有システム・ソフトを公衆に提供しようという人・企業はどうすればいいのか。

Posted by 小倉秀夫 at 01:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

日本の著作権保護期間は欧米より20年も短いから取り合ってもらえない?

  ITmediaによると、

また、漫画家の松本零士さんの話として「欧米では漫画やアニメの海賊版が横行しており、ちゃんと取り締まれば輸出額が増えるが、日本の著作権保護期間は欧米より20年も短いから取り合ってもらえない」といった意見を紹介した。
とのことです。

 しかし、「日本の著作権保護期間は欧米より20年も短いから」という理由で日本のマンガやアニメの海賊版を取り締まることを欧米の司法当局が拒否しているのだとすれば、それぞれの国の国内法に反しているはずです(欧米で人気が高い漫画やアニメ(キャプテン翼やドラゴンボール等)は、そもそも日本の著作権法でも保護期間を満了していませんので、相互主義云々すら問題となりませんし。)。もし、松本さんの言っていることが本当だとするならば、日本の著作権保護期間を20年延長する前に、当該国で訴訟を提起した方がよいのではないかと思います。

 ただ、「欧米では漫画やアニメの海賊版が横行して」いるという事実が仮にあったとしても、その理由が「日本のエンターテインメント企業が、現地の弁護士に適切な報酬を支払って、漫画やアニメの海賊版を取締まるための適切な働きかけを行っていない」ことにあるのだとすると、日本の著作権保護期間を20年延長しても意味がないということになります。

 もっとも、この記事を見ていると、そもそもの松本さんの認識がどうなのかなという気がしないではありません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:06 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/24/2007

足りないのは手足ではなく頭である

  共同通信によれば、

政府の知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会(会長・牛尾治朗ウシオ電機会長)は22日、テレビ番組、アニメ、ゲームソフトといったコンテンツ(情報の内容)を世界に通用する産業に育てるため、映画、音楽、ゲームなど娯楽関連事業や著作権の国際ルールに詳しい弁護士の育成などを提言した。
とのことです。

 「日本には、娯楽ビジネスの専門弁護士が不足して」いることが問題視されているそうですが、これを解決するためには、「娯楽ビジネスの専門弁護士」に、米国の「娯楽ビジネスの専門弁護士」に匹敵する報酬を支払う娯楽ビジネス専門の事業者を養成することが必要です。正直、従前の顧問先が離れていくリスクを負って3年米国に留学して英語力を磨き「映画、音楽、ゲームなど娯楽関連事業や著作権の国際ルール」を身につけたとして、それがどれほどの収入増に繋がるのかが見えてこないと、知的財産戦略本部がどんなに旗を振ったって、難しいのではないかという気がします。

 もっとも、我が国の場合、娯楽ビジネスに関する国内企業同士あるいは国内企業と国内のクリエイター間の契約書が一般に杜撰であり、しかも、それは弁護士に能力がないからではなく、大手娯楽ビジネス関係事業者が国際標準の契約書を取り交わすことをよしとしないからである以上、「娯楽ビジネスの専門弁護士」として培った知識や技量が国内業務に生きてこないという点がつらいところです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:36 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/10/2007

自動公衆送信される著作物の無償かつ非営利な公への伝達

 落合先生のブログのコメント欄より。

# thin 『アナクロっていったら、学校もひどいですよ。

ちゃんとした高速LAN完備なのに、英語授業ではカセット(ビデオ・オーディオ)が未だに大活躍ですから。CDはカセットテープにコピーしなきゃ授業で使えないとか。あなおそろしやorz

 そうはいわれても、自動公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利(著作権法23条2項)については、文理解釈をすると、同法35条2項や38条3項等の制限規定が適用されないようなので、仕方がないかもしれません。生徒ごとに受信機が用意されている場合は大丈夫なのですが、一つの受信機で再生した音声・映像を「多数人」の生徒たちに視聴させるのはリーガルリスクが高そうです。一旦カセットに録音する分には、35条1項→38条1項で大丈夫なのですが。

 放送・有線放送される著作物と自動公衆送信される著作物とを区別し、後者については、無償かつ非営利の場合でも権利制限しないとした趣旨は今ひとつわからないのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 01:27 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/09/2007

図書館の民営化?

 世の中では、図書館の民営化なるものが話題になっているのだそうです(例えば、こちら)。

 しかし、そんなもの、あの著作権法改正以降、違法に決まっているじゃない!!

 レンタルコミックならともかく、図書館ともなれば、貸与権管理センターで貸与権を管理できている著作物だけを貸し出しの対象とするわけにも行かないでしょう。また、顧客からは貸出料をとらなくったって、地方公共団体から図書館業務に関してお金をもらって営業していれば、「非営利」の要件を満たさなくなるでしょうに。

 もはや、民間でできるのは、貸し出しなし、館内で閲覧するだけの図書館だけですよ。しかも、コピー機をおいたらアウトですよ。選撮見録事件の法理で行けば、コピー機の設置者が複製の主体になりますから、「私的使用目的の複製」とはなりえませんし、公益法人ならばともかく、営利法人が設置する「図書館」なんて著作権法施行令1条の3を満たしそうにありませんから、著作権法31条も使えません。

 だから、あのとき、言ったのに……。

Posted by 小倉秀夫 at 01:47 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

01/04/2007

「美しい国、日本」の知財政策

 日本経済団体連合会が発表した「希望の国、日本」の100頁には、

循環型社会の構築に向けて、経済界は『環境自主行動計画』に基づき、産業廃棄物最終処分量の削減をはじめとした3Rに取り組む。国・地方などによる取り締まり強化や電子マニフェストの普及などにより、不法投棄の撲滅をめざす。また、生産施設を活用したリサイクルや広域的な処理の推進など、環境負荷の低減に資するリサイクルを行いやすくする規制改革を推進する
との記載があります。

 「環境負荷の低減に資するリサイクルを行いやすくする規制改革」として私がご提案申し上げられるのは、「消耗部品等のリサイクル活動については、特許権、実用新案権、商標権、著作権等の知的財産権を行使できないような法改正を行う」ということです。もちろん、「自らの社会を自らの手で支えようという気概や、社会全体の福祉の増進に貢献するといった意味における公徳心」(78頁)を重視し、「自己中心的な考え」の蔓延に眉をひそめる日本経済団体連合会のことですから、会員企業は、「消耗部品に独占価格を上乗せして利潤の極大化を図る」ために消耗部材(cf.プリンターのインクカートリッジなど)のリサイクルを禁止するなどということはしないとは思いますが、日本国内の大半の企業は日本経済団体連合会の会員ではありませんから、リサイクル活動については知的財産権を行使できないような法改正を行った方がよいように思います。

 また、「環境負荷の低減に資するリサイクルを行いやすくする規制改革」としてもう一つ私がご提案申し上げられるのは、「媒体」を必要としない消費者に「媒体」抜きで「コンテンツ」を提供するサービスを促進することです。具体的には、著作権法を改正して貸与権及び公衆送信権の報酬請求権化を推し進めるとよいのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 03:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/30/2006

「三世一身法」は「墾田永年私財法」へのOne Step

 西暦723年に「三世一身法」が定められてから、同743年に「墾田永年私財法」が定められるまで、わずか20年しかありませんでした。

 著作権の保護期間延長論の基本発想は「三世一身法」のそれとよく似ているので、孫の代までの排他権の継承を認めると、次は、「限満之後、依例収穫。由是農夫怠倦、開地復荒」みたいなことをいって、結局は、保護期間を無期限とすることを狙うのだろうなあと思ってしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 12:13 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/25/2006

録画ネットとまねきTV

 まねきTV事件高裁決定に関して、「どうして録画ネット事件と異なる結論になったのかわからない」という声がネット上では聞かれます。

 ただ、当事者の代理人としては、録画ネット事件の高裁決定はおかしいと思っても、録画ネット事件との事案の違いを強調して勝てそうだと思えば、録画ネット事件の高裁決定の論理を覆すべく正面から闘うのではなく、録画ネット事件高裁判決を前提としても、録画ネット事件とは前提事実が違うから、仮処分申立は却下されるべきという方向で訴訟活動を行う方を選択せざるを得ませんし、実際にそうしています。従って、同じ三村裁判長の下で、録画ネットはOUTとなり、まねきTVはSAFEとなるのは、特に不思議なことではありません。

Posted by 小倉秀夫 at 12:06 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

12/22/2006

まねきTV抗告審決定

 まねきTV事件の抗告審に関して、本日、抗告棄却(抗告審において付加された「バラエティ生活笑百科」についての公衆送信の差止めの申立については却下)の決定を頂きました。

 これで、とりあえず安心して年末年始を迎えられそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:18 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

12/20/2006

京都地裁はさすがにそこまで大胆ではない

 千葉博弁護士は、Winny事件に関して、

今回の判決が用いている枠組みを使えば、ほとんどのソフト開発において「犯罪結果の認識認容ありとして、ほう助犯の成立が認められうる」といったことになりかねないのです。ソフトは一般的に、いったん開発されれば、極めて多くの人間に多様な使われ方をされます。ソフトが悪用される場合も出てくるでしょう。開発者は、「中にはそのような悪用をする者も出てくるであろう」ということは予見できます。そうなると、ソフト開発を行う者に「刑事事件で処罰される可能性を常に覚悟せよ」と言っているのと変わらなくなってしまいます。
仰っています

 しかし、報道向けに配布されている「判決の骨子」を読む限り、今回の判決が用いている枠組みを使えば、そのようにはなりません。価値中立的な技術を実際に外部に提供する行為自体が幇助行為として違法性を有するためには、

インターネット上においてWinny等のファイル共有ソフトを利用してやりとりがなされるファイルのうちかなりの部分が著作権の対象となるもので、Winnyを含むファイル共有ソフトが著作権を侵害する態様で広く利用されており、Winnyが社会においても著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、効率も良く便利な機能が備わっていたこともあって広く利用されていた

という社会における現実の利用状況と、この社会における現実の利用状況に対する認識が必要です。単に「中にはそのような悪用をする者も出てくるであろう」と予見していただけでは幇助犯としては処罰されない程度の縛りは、京都地裁なりにかけているのです(それが縛りとして妥当であるかはともかくとして。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:08 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/19/2006

Winnyの件でITmediaに登場

Winny事件地裁判決についての解説記事を、ITMediaに掲載して頂きました。


興味がおありの方はお目通し頂ければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 10:30 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/15/2006

判決の骨子

 壇先生は、

いろいろな人の意見をいろいろなホームページで見た。その多くは、判決の事実認定をろくに理解できていないものであった。曲解や偏見で金子氏を批判するようなことだけは止めていただきたい。
とお怒りのようです。が、そんなことを言われても、最高裁のウェブサイトを見ても判決文が未だアップされていない現状では、「判決の事実認定」を正しく理解せよといっても、それは無理というものです。

 新聞社によっては「判決の要旨」というものを載せているところもありますが、私が入手している「判決の骨子」(裁判所が報道機関向けに作成したもの)と若干ニュアンスが違うようにも感じられます(もちろん、裁判所が現実に言い渡したものの方が「本物」なので、記者が正確に言い渡し内容を記録し、要約することができていれば「判決の要旨」で書かれていることの方が「判決の骨子」で書かれていることよりも議論の対象として優先されるべきなのでしょうが(以下省略)。)。

 できるだけ正確な理解のもとでの批評が行われるようにするためには、判決書が交付されるまでの間だけでも、弁護団の側で、「判決の骨子」をネット上にアップロードした方がよいのではないかと思ったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 03:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

MIXTAPE

 今日は、映画「MIXTAPE」の監督兼プロデューサーのWalter BellさんとプロデューサーのJerry Thompsonさんに、事務所まで御来所頂き、そこでインタビューをさせて頂きました。

 Mixtapeとは、wikipedia(英語版)の定義によれば、

A mixtape is a compilation of songs and or tracks (typically copyrighted music taken from other sources) recorded in a specific order, traditionally onto a compact audio cassette. The songs can be sequential; by the 1980s, seamless mixtapes made by beatmatching the songs and creating overlaps and fades between the end of one song and the beginning of another became more popular.
とのことです。DJ等のMix Playをカセットテープ等の物に固定したものということもできますし、非公式なコンピレーションアルバムということもできます。

 Mixtapeは、基本的には違法(著作権侵害)に製作され、そして違法に販売されます。ただし、どの曲とどの曲を選択し、それをどのように配列し、そこにどのようなナレーション等を付加させるかという点に各DJのセンスが問われ、次第に、センスの良いDJのmixtapeは飛ぶように売れるようになり、そのmixtapeに収録されている楽曲(特にできるだけ最初の方に収録されている楽曲)は瞬く間に認知度を高めることになります。すると、レコード会社やアーティストは、mixtapeをプロモーションの一手段と位置づけるようになり、人気DJに発売前の楽曲の音源等をプレゼントするようになっていきます。しかし、近年、RIAAがmixtapeの取締りに積極的に乗り出すようになり、レコード会社・アーティストと、mixtape関係者との暗黙の蜜月関係に終止符が打たれつつあります。

 このmixtapeの歴史の流れとhiphop cultureにおけるmixtapeの社会的機能を追いかけたのが、この「MIXTAPE」というドキュメンタリー映画です。

 CD等の音楽商品を購入するためには楽曲自体を視聴する機会が不可欠であり、かつ、日々膨大な数の音楽が新たに生み出される現代ではそれら全ての楽曲を全ての人が試聴するわけにはいかないので、いわゆる「目利き」の人が選び抜いた楽曲のみを一旦試聴できるというのはそれはそれで有意義です。しかし、そうやって試聴した曲の中には、「視聴したからそれでいいや」というものと「視聴してみて素晴らしかったからもっと音質のよい正規品を購入しよう」という気にさせるものとに分かれざるを得ないのであって、前者にのみ関心が向かってしまうと、「違法コピーのせいで新品の売り上げが減少した」みたいな見方に繋がっていってしまいます(実際には、その違法コピーによる試聴の機会がなければ、そもそも消費者はその楽曲の内容を知ることに至らず、したがってその楽曲を購入しなかった可能性が高いにもかかわらず、です。)。

 米国のテレビ局の一部には、そのことに既に気がつき、例えばYouTubeを、どうせ完全に取り締まれないという諦観もあってか、プロモーション目的で活用する動きもある中で、レコード業界がこれと反対の方向で今更ながらに動き始めたということは、「レコード業界というのはいずこも同じなんだなあ」という感慨に私を浸らしめるのに十分です。

Posted by 小倉秀夫 at 01:39 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/13/2006

Winny事件地裁判決

 Winny事件の、マスコミ向けの判決骨子を入手しました。

 とりあえず読み終えた感想としては、弁護団は金子さんが篤実な技術者であることの立証には成功したけれども、その分、篤実な技術者であっても幇助者として処罰可能な判断枠組みを裁判所に採用させてしまったなあというところです。Anonymity Providerはかなり広範囲に刑事法上も幇助責任を問われそうな感じです。

 詳細な解説は、どこかのメディアに寄稿しようと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:38 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

準備するもの

 昨日のシンポジウム関係ですが、福井先生が、三田さんや松本さんよりも論理的かつ説得的な議論をするのは当たり前のことなので、そこで喜んでいても仕方がないです。

 主戦場は、文化庁の官僚による国会議員の先生方へのプレゼン・レクチャーにどう対抗するかということです。

 A4、3枚の資料と、数分の説明で、文化庁の官僚のプレゼン・レクチャーに対抗できるように、今から準備しておくことが必要なのです。ですから、絵のうまい人は今から絵を考えて下さい。キャッチーな言葉を生み出せる人は、今からキャッチフレーズを考えて下さい。

 そして、必要なのは「同志に良く共感される」ものではなく、「中立ないしやや向こうより」の心を動かすプレゼン・レクチャーなのです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:21 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

12/12/2006

「若くして亡くなった創作者の子や配偶者の保護」のためなら

 三田誠広さんは、昨日のシンポジウムで次のように述べたそうです。

50年あれば、平均的には十分な期間だとしても、「個人の問題を平均値で語ることはおかしい」として、若くして亡くなった創作者の子や配偶者の保護を訴えた。

 ただ、そのような目的であれば、著作権の保護期間を一律に延長する理由はないですね。

 例えば、

 著作者が死亡時にその著作物につき有していた著作権については、その著作権の保護期間が経過した後といえども、著作権が存しているとしたならばその著作権の侵害となるべき行為をした者は、その著作者の遺族(配偶者、子、父母)に対して、文化庁長官の定めるところにより使用料を支払わなければならない。

2  前項の使用料の支払いを受けることができる遺族の順位は、同項に規定する順序とする。ただし、著作者が遺言によりその順位を別に定めた場合は、その順序とする。
というような規定を置けば済んでしまいます。著作者が死亡する前に第三者に譲渡された場合や、そもそも法人が著作者となっている場合は、保護期間の延長と「創作者の子や配偶者の保護」とは何の関係もないし、著作者が十分に長生きした場合も保護期間の延長と「創作者の子や配偶者の保護」とは関係がなくなりがちなのですから。

Posted by 小倉秀夫 at 09:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

12/08/2006

せめて日本標準を

 地上波で民放5局の放送がしっかり視聴できない地域の住民は、地元の政治家を通じてでも、インターネットを介してでも良いから民放5局の放送を視聴できるようにせよと東京キー局等に要求すべきではないでしょうか。

 いわゆる先進国での国際水準的にいうと、(準)公共放送2局、民放5局でも少ないと思うのですが、日本に住んでいる以上、先進国並みのコンテンツ消費を享受しようということ自体が間違いだという意見はあり得るでしょう。しかし、例えば徳島県に住んでいるからといって、(準)公共放送2局、民放1局で我慢しなければならないというのは理屈が通りません。もちろん、徳島県民に民放5局を視聴させるためにはコストがかかりすぎるというのならばやむを得ないのかもしれませんが、インターネットを利用すればコスト的には何とかなるというのであれば、支障となっている法律を改正してでも、徳島県民でも民放5局を視聴できるようにするのが、政治家の義務でもあり、放送の公共性を謳い様々な特権を享受する放送局の努めでもあります。

 まあ、地上波デジタルに向けて安くない金銭的負担を国民に求めるくらいならば、BSデジタルで下らないオリジナル番組を放送するのをやめて(どうせ、テレビ番組に中途半端なインタラクティブ性を求めている視聴者なんか大していないのですから。)、東京キー局で放送されている放送内容をそのまま系列のBSデジタルで日本全国に向けて放送すれば、それだけで日本全国のかなりの地域をカバーできるのではないかとは思うのですけどね。

Posted by 小倉秀夫 at 02:22 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

映像作品の違法なアップロードを事前に防ぐための具体策

 YouTubeに関しては、

日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本放送協会(NHK)など映像作品に関する国内の著作権関係権利者23団体は2006年12月5日,米国の動画共有サイトを運営する「YouTube」に対し,映像作品の違法なアップロードを事前に防ぐための具体策を実施するよう要請したと発表した。

とのニュースが報じられています。

 ただ、「映像作品の違法なアップロードを事前に防ぐ」ためには、アップロードされようとしている映像作品が違法なものか否かを参照するためのデータが必要となります。例えば、「日本のテレビ番組をパソコンに取り込んだときには映像データに一定の符号が付加されるようにするから、その符号が付加された映像データについてはアップロードできないようにしてね」という話であれば、YouTube側も無碍には断りにくいでしょう。

 しかし、そういうこともせずにただ漫然と「映像作品の違法なアップロードを事前に防ぐための具体策を実施するよう要請」されたところで、日本のテレビ局が放送したテレビ番組のデジタルデータをほぼリアルタイムで入手した上で、ユーザーからアップロードされる映像作品全てについて、上記デジタルデータのいずれともマッチしないことが確認されたもののみ配信可とする等ということを、米国企業であるYouTubeが果たせるわけがありません(日本企業だって果たせませんが。)。

 「ユーザーからの映像の投稿を受けたらすぐに配信可とする」のではなく、スタッフが当該映像を実際に視聴して著作権等の侵害がないことを確認してから配信可とすればよいではないかとのご意見もあり得るのでしょう。ただ、著作権等の侵害にあたるか否かというのは、名誉毀損や侮辱にあたるか否かという問題とは異なり、当該映像のみを視聴しても全然わからないという点に特徴があります。すなわち、当該映像を視聴している人が、被侵害著作物等の内容を知らなければ、それが著作権等の侵害にあたるか否かというのは基本的にわかりません。そして、米国企業であるYouTubeにおいて、日本のテレビ番組について網羅的な知識を有している従業員を必要数集めよというのは酷というものです。

 実はこのあたりの話は、ファイルローグ事件の時に提起させていただいた問題からあまり進歩していません。日本ではそういう現実性のない要求でも何とか押し切れたからといって、米国で同じ要求をしても何とかなると思うのは大間違いなのではないかという気がしなくもありません。

Posted by 小倉秀夫 at 02:08 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/21/2006

そうだ!議論を急ごう!日本が世界で遅れないように。

 読売新聞が下記のような社説を掲載しています。

 著作物の円滑な流通が文化の発展に欠かせないことは、誰しも異論がないだろう。延長に際しては、流通を阻害しないよう、管理の仕組みを整備することが欠かせない。著作権管理の体制が整っている音楽業界は、参考になる。

 死後70年となると、著作物を利用しようにも著作者の遺族と連絡が取れず、結果的に作品が死蔵される、という懸念も出ている。著作権管理の仕組みがあればこうした損失は防げるはずだ。

 著作権法を巡っては、テレビ番組のネット配信やデジタル録音・録画制限など新たな課題が次々に浮上している。今国会にも、一部のネット放送を可能にする改正案が提出されている。

 しかしながら、管理の体制が整っているのは音楽著作権についてのみであって、実演家やレコード製作者が有している著作隣接権については管理の体制が整っていません。そのため、音楽の分野でも、「文化の発展に欠かせない」はずの著作物の円滑な流通が阻害されていることはご存じのとおりです。何しろ、権利者にお金をちゃんと支払うからといっても、商業用レコードについては、なかなかネット配信させてもらえないわけですから。その結果、「違法にアップロードされているデータをダウンロードする以外の方法で入手するのが非現実的なほどコストがかかる」作品がたくさん、というのが日本の実情です。今後、海外のアーティストが、CDではなく最初からオンラインで楽曲を販売するようになると、著作権法、とりわけ隣接権者に禁止権を付与したことにより、先進国の中で日本だけがその曲を聴くことができないという事態が多発しそうです。

 「今国会にも、一部のネット放送を可能にする改正案が提出されている」といっても、それはテレビ局がIPマルチキャスト放送を行う便宜を図ってあげただけのことで、IT企業が自社コンテンツのBGMとして商業用レコードに収録された音源を利用するとか、インターネットラジオで視聴者にお勧めしたい楽曲を放送する等の音楽著作物の利用は、今回提出されている著作権法改正案の対象外です。

 「著作権の保護・活用で世界に遅れないよう、論議を急」ぐ前に、「著作物の活用、視聴者の知る権利の保護」で世界に遅れないよう、論議を急いでもらいたいものです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:22 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

11/18/2006

youTubeにリンクできないもどかしさ

 Voxに開設したブログでは、気に入った音楽の紹介とかをしているわけですが、そういうブログを開設するとなるとどうしても、その楽曲を視聴できるところにリンクを貼りたくなります(普通にCDショップに行ってもまず購入できない楽曲が多いですし。)。

 欧州ポップスの場合、シングルカットしたような楽曲についてはPVがアップロードされている比率が比較的高いのですが、そうはいってもPV等がアップロードされていない楽曲も少なくありません。しかし、YouTubeその他の動画投稿サイトには転がっているのです、その種の楽曲のPVが。すると、この動画にリンクを貼ると、私のブログを見てこの楽曲を聴いてみたいと思った人がこの楽曲を実際に聴いてみてこのアーティストを好きになるかもしれないな、そうなるといいなとはと思うのです。そうは思いつつも、大学で著作権法のゼミを持ち、かつITmediaで違法動画に違法動画と知ってリンクを貼ることは自動公衆送信権侵害の幇助だと言ってしまった以上は、そこのところはぐっと堪えないといけないので、気分はアンビバレントです。


 YouTubeにせよ、まねきTVや録画ネットにせよ、それがなければおそらく知ることができなかったであろう情報を知ることに貢献しています(例えば、Katerineの"100% V.i.P "のPVのフルバージョンは、正直な話、YouTube無しには視聴できませんでしたし。)。そして、YouTubeやまねきTVや録画ネットがなくなれば、それを利用することによって、従来知ることができなかった情報を知ることができるようになった人たちがそれを知ることができない状態に逆戻りするだけの話です(「海賊版」の例とは異なり、これらを撲滅しても、「正規商品を購入するようになる」というベクトルは働きません。)。結局、著作権・著作隣接権の「禁止権」が、国民の「知る権利」を阻害することに活用されることになります。もっと言えば、特定の情報の伝達を受けられる範囲と受けられない範囲とを情報の提供者がコントロールするための手段として著作権・著作隣接権の禁止権が活用されることになります。

 そうだとすると、現在問われるべきは、ある情報が正規に非禁止的な価格で提供されていない場所へのその情報の伝達行為を禁止する権限を著作権者・隣接権者に付与する必要性は、国民の「知る権利」を制約することを正当化する根拠として耐えられるだけのものであるのか否かということではないかという気もしています。

Posted by 小倉秀夫 at 10:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/14/2006

芸術として長く読み継がれることを確保するため

 文芸著作権通信第7号1頁によると、

 作家の創作活動を促し、励ます要因を「インセンティブ」といいますが、多くの作家は目先の収入を求めるのではなく、芸術として長く評価されることを期待し、そのことを目標として創作活動に励みます。ですから芸術を愛し、創作に命を捧げようとする作家にとって、「インセンティブ」とは、金銭ではなく、将来の評価だということになります。
とのことです。

 そうであるならば、芸術として長く評価される前提として、芸術として長く読み継がれることを確保するためにも、大半の作品が商業的に出版されなくなるころには、その作品を芸術として高く評価しその作品を多くの人に読み継いでもらいたいと思う人がボランティアでその作品を流布することができるように、著作権の保護期間を設定することこそが、作家にとって重要なインセンティブとなりそうです。

 作品の著作権は法的には長く子孫のもとにあっても、子孫はその作品をさほど評価していないため、作品を敢えて流通させようとせず、結果としてその作品は、新しい世代の目に触れることなく朽ち果てていく──もし、未来を覗く望遠鏡があって作家が自己の作品のそのような姿を目の当たりにしたら、さすがに「インセンティブ」は落ちてしまいそうです。他方、作品の著作権は法的に長く子孫のもとにあって、そのおかげで子孫は、その作品からの著作権収入のおかげで、ろくに働きもせず、贅沢三昧の自堕落な毎日を漫然と過ごしている──もし、未来を覗く望遠鏡があって作家が自己の子孫のそのような姿を目の当たりにしたら、芸術を愛し、創作に命を捧げようとする作家の「インセンティブ」が高まるのかというと、却って落ちそうな気がします。

 「芸術として長く読み継がれることを確保するため」には、芸術作品の伝達ルートを制約する機能を有する著作権の保護期間が短い方がよいことは、自明の理ではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 09:08 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/12/2006

パクリ問題にJASRACは口出しできない

 ロックな幸せ☆さんのエントリーで、

それで、「あ」と思った。

パクリ問題では、JASRACが口出すことって聞いたことないな。

 マッキーがネット上で反論を見せた松本零士氏との問題だって、ゲド戦記だって、のまねこだって関与してないよね?たしか?

という疑問が呈ぜられていましたが、そりゃ、JASRACは「翻案権」の信託譲渡までは受けていないのだから「パクリ」問題に口を出すことは基本的にできない(「翻案」ではなく「複製」に含まれてしまうほどの同一性があればまた別ですけど。)のです(だからこそ、記念樹事件では、小林亜星に原告適格があったのですし。)。

 それ以前に、ゲド戦記やのまネコの問題は、JASRACの職務範囲外ですが。

Posted by 小倉秀夫 at 11:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

生活笑百科の著作物性

 某所で、テレビ局から著作権に基づく差止請求を(私の依頼者が)受けているのですが、その際に、NHKが差止の対象としてもってきたのが、なんと「バラエティ生活笑百科」!。あの土曜日の昼間にやっている法律バラエティの草分けです。

 しかし、です。果たして「生活笑百科」には「映画の著作物」としての著作物性があるのかというとはなはだ疑問です。

 東京高判平成9年9月25日判タ994号147頁は、「本件におけるようなテレビ放映用のスポーツイベントの競技内容の影像は、競技そのものを漫然と撮影したものではなく、スポーツ競技の影像を効果的に表現するために、カメラワークの工夫、モンタージュやカット等の手法、フィルム編集等の何らかの知的な活動が行われ、創作性がそこに加味されているということができるから(前記検甲第一号証によれば、一九八三年インディ五〇〇においても、右に述べたカメラワークの工夫等が行われていることが認められる。)、本件における国際影像は知的創作性の要件を満たすと認められ」と判示しているのですが、「生活笑百科」の場合、「漫才師による『相談』内容の提示、コメンテーターによる素人的な見解の提示、弁護士による専門的な見解の提示という構成」からなるバラエティ番組として、「カメラワークの工夫、モンタージュやカット等の手法、フィルム編集等」は極めてありふれているように思えてならないからです。

 詳述すると、「漫才師による『相談』内容の提示、コメンテーターによる素人的な見解の提示、弁護士による専門的な見解の提示という構成」自体は著作権法による保護の対象外である「アイディア」にすぎません。「相談」を持ちかける漫才師や3人のタレント回答者及び弁護士が語る言葉の一つ一つが台本に書き込まれているのであれば台本について著作物性が認められる可能性がありますが、基本的な筋立てだけが台本に書いてあってそれを具体的にどのような言葉で表現するのかが出演者に任されている場合、出演者が語る言葉自体はせいぜいその出演者の著作物となるにすぎません。テレビ局側は、その辺のところ一切証拠を出さず、「「『生活笑百科』では、事前に『漫才師による『相談』内容の提示、コメンテーターによる素人的な見解の提示、弁護士による専門的な見解の提示という構成』を考えた上で、実際にそれに従って、『演出、カメラワーク、編集等』が行われているのであるから、著作権法第2条1項が要求する創作性を満たしていることは疑いの余地がない」というだけで済ませているので、実際のところどうなのかはわからないのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 07:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/11/2006

スナックでの演奏

 JASRACの許諾を得ることなく、ビートルズの楽曲をスナックで演奏していた経営者が著作権法違反の容疑で逮捕されたという事件が、ネット上で話題になっています。

 現行法上、公衆に聴かせる目的で他人の著作物を演奏する行為は、無償かつ非営利でなされるなどの例外を除き、著作権侵害となるわけですし、バーやスナックなどで管理著作物が実演されている場合に所定のライセンス料を徴収するというのは音楽著作権管理団体の本来的な業務の一つなので、JASRACがこのスナック経営者にライセンス料の支払いを求めたこと自体は特段の問題はない(認可されたライセンス料が高すぎるとか、徴収されたライセンス料の配分が不透明であるということは、とりあえず関係ない話です。)のであり、このスナック経営者に話し合いに応ずる意思がない場合、法的な手続きを講ずることもまた特に権利の濫用だ云々と言うべき話でもないように思います。

 私は、JASRACに対しては批判的な方だとは思いますが、明らかに違法な行為をして、それが見つかったのに、なおも開き直ってしまった相手に対して、法的な措置を講ずることまで非難するというのは行き過ぎではないかと思います。民事的な解決が困難ということになれば刑事的な解決に向けて公権力が発動されてしまう、というのも仕方がないことです。料率について意見の相違があったために契約に至っていないということであればその点が解決するまで暫定合意をする等の措置を講ずべきであったとは言えると思いますが、スナック経営者の側で、JASRACとの話し合いを拒否して演奏を継続したのだとすれば、「法」というものを甘く見すぎたのではないでしょうか。

 もちろん、「逮捕」が必要だったのかという点は問題となりうるでしょう。しかし、逮捕するか否かは告訴人の意向では決められない話です。むしろ、現在の刑事手続き一般の話として、「安易に逮捕しすぎでは?」ということを問題とすべきではないかという気がします(もちろん、報道だけでは、「逃亡のおそれ」がどの程度あったかわからないのですが。)。

Posted by 小倉秀夫 at 10:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

11/05/2006

オリコンの失敗

 旧聞に属することですが、オリジナル・コンフィデンス社がPC向け音楽配信サービスを中止することとしたのだそうです。

 既に成功している商業サービスを他社が提供しているところに新たに算入するにあたっては、既存の成功しているサービスにはない、魅力的な要素を盛り込むことが必要となります(これに成功した例としては、auの携帯電話がありますね。)。PC向け音楽配信サービスについていえば、「既存の成功しているサービス」としてApple社のiTMSがあるわけですから、iTMSにはない、魅力的な要素を盛り込む必要があったわけです。

 で、オリコン社のPC向け音楽配信サービスはどうだったのでしょうか。

 2005年1月27日付のITmediaによると、オリコン社は、

 音楽配信サイトとしての最大の特徴は、「オリコンチャート」と連動した楽曲配信サービスを展開すること。また、ポータブル・デジタル・オーディオ・プレーヤーなどのハードウェアの販売も予定しており、最終的に業務委託手数料、ハードの売上、Webサイトでの広告収入が売上の3本柱になるという。
と考えていたようです。

 しかし、「『オリコンチャート』と連動した楽曲配信サービスを展開する」には、「オリコンチャートの上位楽曲のほとんどがダウンロード可能」であることが必要となりますが、例えば、 2006年11月06日付週間シングルチャートについていえば、上位10位のうち「オリコンチャート」からダウンロード可能な楽曲は絢香の「三日月」(10位)のみ、その次がKaoru Amaneの「タイヨウの歌」(22位)という状況では、「『オリコンチャート』と連動した楽曲配信サービス」など成立しそうにありません。しかもこれは構造的な問題です。レコード会社は新譜の発売当初は音楽配信させないので、ごく一部のロングヒット楽曲以外は、音楽配信が許諾された頃には「オリコンチャート」の上位にはもうないからです。

 そういう意味では、新譜の発売後せめて1〜2週間後程度には音楽配信させてくれるようにレコード会社各社を説得できなかった以上、オリコン社の音楽配信サービスは、その特徴を活かすことができず、撤退もやむを得ないといえますし、そのような説得ができる見込みもなしに始めたのだとすればそもそも失敗が予定されていたといえそうな気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 11:31 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/31/2006

日本に足りないのは

 読売オンラインに、松田 陽三さんという編集委員の方による、「知財立国への道険し」という記事が掲載されています。その中に、次のような記述があります。

 エンターテインメント業界のビジネス事情と世界各国の法律の両方に通じている弁護士が足りない。日本の芸術家や製作会社の代理人として、外国の映画、音楽会社とのタフな交渉をこなせる日本人弁護士は4人程度しかいないという。

 松田編集委員は、何を根拠にそのようなことを言っているのか疑問です。日本に足りないのは、「日本の芸術家や製作会社の代理人として、外国の映画、音楽会社とのタフな交渉をこなせる日本人弁護士」ではなく、日本の法曹事情に精通していて、正しい情報を国民に伝達できるマスコミ人なのではないかという気がしてなりません。

 さらにいうと、日本の芸術家や制作会社の代理人として日本の弁護士が乗り込んできたときに、弁護士との交渉を厭わない日本の映画、音楽会社が乏しいことをまず報ずるのが先なのではないかという気もします。米国のエンターテインメイントロイヤーというのは、まず国内業務で業務の基盤を形成できるからこそ、エンターテインメントロイヤーとして専業化できるのであり、日本のようにエンターテインメントロイヤーには国内業務の需要が乏しいところでは、エンターテインメント部門は「特筆すべき分野」の一つにカウントするのがせいぜいということになります。それに、国内業務が乏しいところでは、なかなか実務経験が付かなかったりします。

 ということで、読売新聞社として「日本の芸術家や製作会社の代理人として、外国の映画、音楽会社とのタフな交渉をこなせる日本人弁護士」が少ないことを嘆くのであれば、系列の日本テレビや日本テレビ音楽(株)等から、「日本の芸術家や製作会社の代理人として」弁護士が交渉の場に立つことを受け入れたらいいのではないかと思います。

 でも、読売系列のプロ野球球団において選手の代理人として弁護士が交渉窓口に立つことをきちんと受け入れられているのかということを考えると、読売系列には難しすぎることをいってしまったような気もします。

Posted by 小倉秀夫 at 11:17 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/27/2006

YouTubeリンクと引用

 YouTubeへの動画リンクについて、ITmediaのIT戦士こと岡田有花さんから取材を受けていたのですが、その結果岡田さんがまとめられた記事がようやくITmediaに掲載されました。

 テレビCM等の批評サイトにおいて、批評の前提として、読み手に批評の対象となる「動き」を示すためにYouTubeにキャプチャー動画をアップロードして、批評エントリーからリンクを貼るという行為が、著作権法第32条第1項の適法な引用の要件に合致するかという問題は、今年の学部のゼミでも取り扱ったのですが、「自らアップロードしてリンク」の場合と異なり、「他人による違法アップロード動画にリンク」の場合、「自動公衆送信の幇助」が著作権法第32条第1項にいう「利用」にあたるのかという問題を孕んでいて、条文解釈的には一段階複雑だったりはするのです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:31 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

10/20/2006

休眠著作物にも税金を

 現在、税務上、著作物の価額は「年平均印税収入の額×0.5×評価倍率」として算定されています(財産評価基本通達148)。これだと、著作権者がその著作物をを誰にも活用させず眠らせておいた場合には、税務上、価格0円として扱われることになります。

 ただ、この考え方というのは、著作物の財産的な価値は孫子の代まで経済的な対価を期待できる点にある(それが期待できないのであれば創作のインセンティブが湧いてこない)という考え方とはあまり整合性がとれないように思います。実際に賃料収入等を得ていなくとも不動産の価格が0査定されないのと同様に、著作物についても、実際に印税収入を得ていなくとも、積極的に活用した場合に得られるであろう印税収入等からそのあるべき取引価格を推計して財産評価を税務上すべきなのではないかという気がしなくもありません。まあ、著作物といっても範囲が広いので、商業的な「コンテンツ」に限定した話でもよいのでしょうが。

 で、著作物をパブリックドメインに出したり、CC等により不特定人に向けて無償で許諾を行ったりした場合に限り、税務上0査定とすることにすると。

 そうすることにより、著作物が著作権者のもとで活用されずに囲い込まれるという事態をだいぶ防ぐことができるのではないかと思わなくはありません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:47 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

10/19/2006

PC向け有料音楽配信サービスのあるべき価格と配分

 中央大学での来年度の著作権法ゼミのゼミ員を募集したところ、今年は募集定員を大きく超える応募がありました。この週末は、ゼミ選抜用のレポートの読み込みに充てなければならなくなりそうです。

 なお、今年のレポートの課題は、下記のとおり、至ってシンプルです。

PC向け有料音楽配信サービス(ただし、携帯型プレイヤーに音源データを転送できるもの)において1ダウンロードあたりの料金は幾らとするのが妥当か、また、その場合徴収された料金は誰に幾ら配分されるべきかを、理由を付して論じて下さい。

Posted by 小倉秀夫 at 11:10 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/16/2006

「プログラマーの常識」と「著作権法の建前」の乖離

以前、ゲームラボに載せたコラムを一部手直ししたものです。



 私が被告代理人として参加した「さきがけ」事件の地裁判決を事務所のウェブサイトにアップロードしたところ、Slashdot.jpでだいぶ話題になり、あの小飼弾さんまでそのブログで取り上げて下さったようです。


 特殊な業務に特化したデータベースソフトについていえば、どのような項目をデータ項目として組み入れまたは組み入れないか、あるいはどの項目とどの項目とに関連性をもたせるのか等の仕様確定までの道程が大変です。クライアントである事業者は従前一定の法則に従って業務を処理してきたはずで、これをクライアント側でわかりやすく図式化ないし言語化してくれればあっさり仕様確定ができるのでしょうが、実際にはそういうきっちりとしたクライアントというのはそれほど多くはなく、多くの場合、クライアントの発言の端々からクライアントの業務準則を推測し、確認しながら、SE主導で仕様を確定していかざるを得ないというのが実情でしょう。

 そして、データベースソフトとしての仕様が確定してしまえば、その仕様を満たすようなプログラムをコーディングする作業自体は、ミスの許されない骨が折れる作業であるにせよ、華麗な工夫が求められるような作業ではありません。特に、 Delphi等のような便利な開発ツールが用意されている現在、ウィザード機能を利用することによって、プログラマーとしての特別な訓練を受けていない人でも、実用に耐えうるプログラムを作成することが可能となっています(例えば、弁護士業界でも、関根稔弁護士のように業務用の小ネタアプリを開発して公開されている方がおられます。)。


 コンピュータプログラムを著作権法で保護するのか、特許法ないし特許法類似の工業所有権法で保護するのかについては昭和の御代には争いがありましたが、結局外圧に負けて著作権法で保護することになりました。著作権法で保護する以上は、「アイディアは保護しない」「アイディアの凡庸な表現は保護しない」という著作権法の基本原則は、プログラムにおいてもなお妥当するといわざるを得ません(その後、プログラム関連発明も特許として受け付けることになりましたが、特許法によりアイディアの保護を受けるためには特許申請を行い、これが特許庁により認められる必要があります。)。

 したがって、仕様確定までの段階でどんなに創意工夫が必要であったとしても、仕様自体は「アイディア」であって著作権法による保護の対象とはならないし、コーディングが如何にミスの許されない骨の折れる作業であったにせよ、創意工夫が発揮できる領域ではない以上、著作権法による保護の対象とはならないという結果が導き出されるのは仕方ないということになります。

 Slashdot.jp等での議論を拝見させて頂く限り、このあたりのことについての技術者とおぼしき方々の不満は大きいようですが、無登録主義の簡便性や保護期間の長さ等に目がくらんでプログラムを著作権法で保護することにしてしまった以上、「プログラマーの常識」と「著作権法の建前」とが乖離するのはやむを得ないことです。原告プログラムの著作物性をクリアしたところで、被告プログラムが侵害品となるためには、表現=ソースコードの同一性ないし類似性を原告が主張立証していかなければならないのであって、さらにいえば、機能(=アイディア)がどんなに似通っていたところでそのことから表現=ソースコードの同一性ないし類似性を推認することも許されない(「その機能を具備している以上その部分は同じようなソースコードになっているはずだ」という主張をしたが最後、「その部分には創作性がないということですね」と切り返されて終わってしまいます。)ので、「プログラムの著作物」については、デッドコピー以外は複製権・翻案権侵害が認定されにくく、「プログラマーの常識」ではパクリだと思われるものが侵害品とならないということになりがちなのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 09:23 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/07/2006

李下に冠、天下り

 少し古い話ですが、社団法人日本音楽著作権協会を含む著作権管理団体らは、著作権の保護期間を延長するようにとの要請を文化庁に対して行ったのだそうです。

 私は、著作権の保護期間を延長することには反対ですが、各利益団体が自分たちの利益になるような法改正を政府に要求すること自体は否定しません。様々な利益団体から寄せられる要求を調整することによって「最大多数の最大幸福」を目指す政策が実現していくというのが、民主主義社会の基本だからです。


 ただし、このような調整を行う部門は、対立する利害関係者たちとの間で中立性を保つことが必要です。利害調整部門が一部の利害関係者に偏ったポジションを取っていると、その利害関係者に有利に政策が歪められ、「最大多数の最大幸福」を実現することができなくなってしまう虞があるからです。実際にはその利害関係者に特に有利な政策を採用しなかったとしても、その利害関係者に有利となるような歪んだ政策が採用されたのではないかとの疑心暗鬼を呼ぶことになるわけですから、利害調整役が中立性を保たないことによるデメリットは結構大きいのです。


 日本音楽著作権協会の現在の理事長である吉田茂氏は、元文化庁長官です。吉田氏が日本音楽著作権協会の理事長に就任する以前から同協会は幾度も文化庁に対し自分たちの利益になるような法改正を要求してきたわけで、吉田氏としては、自分が同協会の在任中も文化庁に対し自分たちの利益になるような法改正を要求することになるであろうことは予測できていたはずです。文化庁の元長官が理事長を務める利益団体から政策要求がなされるとき、文化庁は、中立的な利害調整役としての役割を果たせなくなるであろうこと、あるいは、少なくともそのような役割を果たせるとの信頼を失うであろうことは、十分な予測ができたはずです。そうであるならば、吉田氏は、日本音楽著作権協会の理事長に就任するべきでなかったといえます(吉田氏のようなキャリア官僚には、再就職しなくとも、普通に生活する分には一生困らない程度の退職金と年金が支給されるはずです。)。

 日本音楽著作権協会は、今後も単独でまたは他の著作権管理団体と共同で、文化庁に対し一定の政策提言をするつもりがあるのであれば、文化庁のキャリア官僚を理事等に迎えるべきではないし、文化庁のキャリア官僚もそのような団体の理事等に就任すべきではありません。李下に冠を正さず──私は「エリート」に国家のために命を捧げる覚悟など求めませんが、利害調整役としての「国家」の信頼を維持するために、生きている間に使い切れないほどのお金を手にしたいという欲望を自制するくらいのことは求めていきたいと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 07:20 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/06/2006

「効率よく著作権違反サイトを見つけ出す」のに必要なこと

 国産の検索エンジンを開発する経済産業省の研究会から生まれた産学連携プロジェクト「情報大航海プロジェクト」のCEATEC内のブースで、私の母校である早稲田大学は、「Web検索を活用して著作権のあるコンテンツを探し出し、効率よく著作権違反サイトを見つけ出す技術」のデモを出展したのだそうです。

 「二次的著作物の送信可能化」にまで対象を広げなければ、「効率よく著作権違反サイトを見つけ出す」こと自体は技術的にはそう難しくはないと思うのです。特に、「デモ出展」だと保護すべき著作物の数が限定されていますから、動きもきっとサクサクでしょう(ファイルローグだって、守らないといけない著作物が10や20の単位なら、裁判所の命令に従ったフィルタリングだってできたと思いますし。)。

 ただ、この種の技術の最大の難関は、「著作権違反」か否かを審査するためには、非侵害著作物に関する情報をコンピュータに入力しなければならないというところです。具体的には、著作物たる表現と当該表現の権利者に関する情報が入力されていなければコンピュータはロボット収集してきたサイトが「著作権違反」か否かを判断することができません。「ネット外→ネット」型の著作権違反の場合は「ネット外」で公表されている著作物たる表現を「著作権違反サイトを見つけ出す」コンピュータに取り入れなければいけませんし、「ネット→ネット」の場合は、どのサイトが当該著作物の著作権者ないし著作権者から許諾を得たものによるサイトなのかという情報を入力しなければなりません。

 「著作権法第32条の要件を具備した引用か否か」云々は被疑侵害作品の文面のみから判断できますので意味解析技術の発展により何とかなるかもしれませんが、著作物たる表現と当該表現の権利者に関する情報に関しては、被疑侵害作品を如何に解析しても何の答えも出てきませんので、ここがどうしてもネックになってしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 08:57 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/05/2006

地域コードでは海賊版対策はできない。

日経の記事より

地域コードは現行DVDでも全世界を6つに区分する方式が採用され、北米と日本が別区分となっていた。BDは暗号技術を使った高度な複製防止機能が特徴。消費者の利便性などを考慮し、地域コードの全廃も検討されたが、海賊版対策などに悩むハリウッド勢などの意向が反映された。



 海賊版を作るような人たちは、海賊版を販売しようとする地域で再生できない地域コードをわざわざ埋め込むわけがないのですから、地域コード自体が海賊版対策になるわけがありません。地域コードというのは、あくまで正規商品の国際的市場分割のために埋め込まれるものです。中国・インドに低価格のDVDソフトを売り込みに行きたいが、それが日本等に並行輸入されると嫌なので、その対策として中国と日本とを地域コードで市場分割したいというのがおそらく本音でしょう(中国・インド・ロシアとそれ以外に分けるとさすがに露骨なので、日米と欧州を別コードにしただけではないかと思います。)。もちろん、中国では正規品の価格を低廉にしないと海賊版がどんどん作られるので、正規品の価格を引き下げるのだという意味では海賊版対策といえなくもないのですが、それを正直に言ってしまうと、誰も海賊版を作らないと真面目な消費者が高いものを買わされるという意味で犠牲になってしまうということに気付かれてしまうので、それも難しいのでしょう。

 「海賊版対策などに悩むハリウッド勢などの意向が反映された」結果「ブルーレイ・ディスク(BD)」陣営は地域コードを導入したのだというストーリーをどなたが考えたのかわかりませんが、仮にBD側のスポークスマンがそういっていたのだとしたら、それをそのまま記事にするのではなく、それは理に適っていないのではないですかと突っ込むのがまともなジャーナリストというものです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:46 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/03/2006

立ち読み

 10月1日付の日経新聞朝刊によると、湯川れい子さんによって、今度は書店での立ち読みがやり玉に挙げられているようです。

 自分のお小遣いで新刊が買える範囲内でしか書籍等を読まない人や、読みたい書籍等を新刊で買えるだけのお小遣いがもらえる人にとっては、「立ち読み」等という所業は信じがたいところがあるのかもしれません。ただ、一般には、読みたい書籍等の数や一冊あたりの価格が上昇したからといってそれにあわせてお小遣いが増える人というのは限定されているので、「新刊を買うことなしには書籍等を読むことはできない」というシステムのもとでは、新刊の売り上げが増大して作家たちの懐が潤うということになる可能性よりも、「読書」という娯楽が一部の富裕層に許された贅沢になっていくのだろうという気がします。特に、書籍等が子供たちの知的好奇心を満足させるに足りないものとなる(子供たちがそのお小遣いで新刊が買える範囲内でしか書籍等を読めないということになれば、書籍等という情報流通手段は、好奇心旺盛な子供たちから見放されることになります。)。

 しかも、この種の作家たちは、読者に対しては立ち読みせずに新刊を購入して読むことを要求するのに、それがつまらなかった場合にその書籍等を読者が返品することを認めません。書籍等は、実際に読んでみなければ各消費者にとっての価値がどうなのかわからない特性を持っているわけですし、IT革命以降のマスコミュニケートされる情報の単価の大幅な下落を前提とすると「一回読み捨てれば満足」できてしまう程度の情報の入手手段としては新刊書籍は高すぎるわけですから、何度も繰り返し読みたくなるような内容であることを確認してからでないと、新刊書籍の購入というのはリスクが大きすぎるということが消費者サイドからはいえます。これはバランスを大いに欠きます。

 割高かつリスクの高い商品というのは敬遠されやすくなるのであり、しかも「読書」という娯楽はこれを享受できるようになるためには一定の修練を必要とするわけですから、書店での立ち読みを禁止するなりして「新刊を買うことなしには書籍等を読むことはできない」というシステムを作り上げることは、書籍市場の需要者の裾野を狭めようとするものであって、作家たちにとってもあまり面白いことにはならなそうな気がします。

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09/20/2006

「法制問題小委員会報告書(案)に対する意見」 on Sep. 2006

 9月25日締切りの「法制問題小委員会報告書(案)に対する意見」として下記の意見を提出しました。時間がないので30分程度で作り上げてしまったので、間接侵害等適当に流されているものについてはこちらも適当に流しました。


 私的複製に関する著作権法第30条第1項但書に関しては、企業活動等の一環としてなされるものではあるが、複製物自体は少人数の閉鎖的な範囲内でのみ使用されることが予定されている場合にも適用されることを明示されることが望ましく、今後この点についても検討されたい。

 著作権法による規制の目的を著作物創作のインセンティブの保護という点に置く場合、経済合理性という観点から見たときに通常創作のインセンティブを失わせない場合についてまで人や企業の活動を著作権法により規制することは本来許されない。
 このように著作権法による規制の正当化根拠に立ち返って考えたときに、複製物が少人数の閉鎖的な範囲内で使用されるにとどまり、正規商品と市場において競合するおそれがない場合には、人や企業が著作物を複製したとしても通常の創作インセンティブを阻害するとは認められず、これを著作権法により規制するのは本来許されないということができる。
 具体的に例を挙げるならば、例えば、ある程度著名な企業等においては、テレビ局が放送するニュース番組等を録画して、自社に関する報道がなされていればその内容を報告書にまとめ、当該テレビ局への抗議を行うか否かを含めた様々な検討資料としていることが少なくない。このような企業によるニュース番組等の録画行為は、市場において正規商品による代替が期待できないものであって、テレビ局等の著作権者ないし著作隣接権者の事前の許諾を得なければこれをなしえないとすると、企業としては、同時並行的に放送される複数のテレビ局を全てリアルタイムで視聴してその要点を書き留めるという作業を行わなければならない反面、このような録画行為を禁止する権限をテレビ局等の権利者に与えなかったからといって、テレビ局等の収入が低下する事態は想定しがたいのであって、創作のインセンティブを阻害するものとはなりえない。

 また、インターネット上では、英語を含む各国語の文献が多数入手可能であるが、これらの資料を基に企業戦略を練る際に、当該仕様言語が不得手な役員または従業員のために、自動翻訳プログラムまたは翻訳担当社員等により当該資料の日本語訳を作成することは少なからずある。インターネット上でコンテンツをアップロードしたということからキャッシュへの複製や紙へのプリントアウトまでは「黙示の許諾」で正当化できるが、「他言語への翻訳」まで「黙示の許諾」で正当化できるかは議論の分かれるところである。しかし、このような内部検討の資料として翻訳されることが、著作権者の創作のインセンティブを阻害するのかというと大いに疑問である。


 また、私的複製問題については、著作権法第30条の「公衆用自動複製機器」が共用サーバコンピュータを含まないことを明示することが望ましいので、検討されたい。

 選撮見録訴訟において、マンション内の共用サーバが「公衆用自動複製機器」にあたるか否かが争われた。しかし、「公衆用自動複製機器」を用いた私的複製を著作権法第30条第1項による著作権の制限の対象から除外した理由は、貸しレコード店等における高速ダビング機を利用した私的複製を禁止するためであって、正規商品の代替品としての複製物を複製者が持ち帰るような場合を禁止の対象として想定したのである。従って、持ち帰り可能な複製物を増製しない機器を著作権法第30条にいう「公衆用自動複製機器」に含めるのは過剰な規制であるというべきである。
 今日、各個人や企業がデータを保管するための手段として、外部業者が提供するオンラインストレージサービスを利用する機会が増えている。個人や小規模企業用のオンラインストレージサービスは、コストの関係から、1台のサーバコンピュータを多数の利用者で共用する形態をとるのが通常である。すると、公衆(=多数人)が用いることが予定されている複製機器=公衆用自動機器としてオンラインストレージサーバを捉える場合、このオンラインストレージサービスを利用して電子メールのバックアップをしたり、私的にリッピングして作成したmp3ファイル等のバックアップをしたりすることが禁止されてしまうし、そのような用途にも使用されていることを知りつつオンラインストレージサービスを提供し続ける事業者は刑事罰による制裁を受けることにも論理的にはなりかねない。
 地震大国日本においては、自宅または事務所の外にデータをバックアップしておくということは本来推奨されるべきことであるのに、保存しておくべきデータの中に他人の著作物が含まれたとたんにこれが違法となるのは不合理である。

Posted by 小倉秀夫 at 07:41 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

時代に取り残された人

 オーマイニュースが報道するところによれば、依田巽元日本レコード協会会長は、9月6日に行われた知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会「企画ワーキングチーム」の第1回会合において、

「超法規的な見地でゲームソフトの中古品問題をどうするか。最高裁で結論が出たからといってこのままいつまでも放って置いていいのかと思っています」と発言し、「この論議をするときに問題なのは、利用者、法律専門家の壁がございまして、業界のエゴという形で押し込められるケースが多いということです。そして、結果的に業界がどんどん疲弊していく」と問題提起した。
とのことです。

 これに対して、同調査会会長の牛尾治朗ウシオ電機会長は

「(コンテンツの分野は)非常に特殊な分野だから、と思い過ぎては絶対いけない」「既存のものの調整に終わろうとした瞬間にこの業界は終わってしまう」などと発言し、特別扱いを求めるコンテンツ業界の姿勢に苦言を呈した。
とのことです。

 レコード輸入権騒動では私たちは苦杯を飲みましたが、あれから少しずつですが、潮目が変わってきているわけで、利用者の利益を配慮しない形でコンテンツホルダの権益拡大というのは単純に通らなくなりつつあるというのに、「利用者の壁」を乗り越える手段として「知的財産戦略本部」という官邸直属の場を利用しようというのは、時代錯誤的だなあと思わなくもありません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/19/2006

パブコメ to 知的財産戦略本部 on Sep. 2006

知的財産戦略本部 コンテンツ専門調査会 企画ワーキンググループが意見募集をしていましたので、以下のとおり、具申しました。



コンテンツの振興のための施策として、下記のようなアイディアを上申致します。

・ 国外向けの音楽配信サービスでの日本のポピュラーミュージックの配信を進める。

 これは、日本のレコード会社にやる気があれば今すぐにでも可能である。逆にいえば、この程度のこともできなくて、「海外市場への展開」など言ってみても片腹痛い。

・ 国外向け映像配信サービスでの日本のテレビ番組やVシネマ等の配信を推し進める。

・ 海外のDJ等を定期的に日本に招来し日本の音楽文化等に触れさせるとともに、海外のDJからの照会に答えて適切な楽曲を紹介するシステム及び人材を要請する。

・ J-Popの歌詞や楽曲の解説等を各国語に翻訳できる人材を養成するとともに、この者たちに翻訳を依頼する場合の翻訳報酬等に補助金を付ける。

・ 海外進出を望むJ-Popユニット(プロアマ問わず)を対象とするコンクールを年1回開き、その優勝者については、海外進出のために必要な各種費用(3〜5年の滞在費等を含む。)について補助金を付ける。

 一種の国費留学だと思えば、出せない金額ではない。

・ 特定の番組の視聴時間・視聴場所をコントロールできれば、指定した時間・場所以外では、より魅力の劣る番組を視聴者に押し付けることができるという甘えをテレビ局及びラジオ局に対して許さない。

 全ての番組が、制作局の場所や放送時間にかかわらず、横一線で競争することになれば、「その地域でその時間帯に放送している番組の中では一番ましだから仕方なく視聴する」というレベルの低い番組は淘汰されていくことが期待される。

・ 最初からオンラインでのみ配信することを予定している映像作品等についても、商用レコードに収録されている音源を適正なライセンス料で使用できるような枠組みを作る。

 新たな映像クリエイターが作品を発表する場としてインターネットを活用することを現行の著作権法及びレコード会社等の隣接権者によるその運用が阻害しているので、これを取り除く。レコード製作者の著作隣接権についての包括的な許諾システムを構築できるのであれば強制許諾制度を導入しなくともよいかもしれないが、いずれにせよ、過去に放送した作品ないし同時に放送する作品のインタラクティブ配信に限定しない許諾システムが必要である。なぜなら、新進気鋭の映像クリエイターの作品については、ネット配信される前にあるいはネット配信されると同時に、テレビ等の電波メディアで放送されるというのはハードルが高すぎるからである。

・ 既存の著作物を利用したパロディ作品については、著作権及び著作者人格権侵害とならないような制限規定を設ける。

 今や世界が日本に注目するサブカルチャー分野においては、パロディ等の手法は極めて有効であり、これを著作権法が阻害するのは、産業政策的に間違っている(パロディを自由に許したところで、パロディ作品は引用元の作品と代替性がないため、引用元の作品に関する著作権者の経済的な権益を侵すことがない。)。

・ 無償かつ非営利でなくとも、聴衆からの投げ銭等が一定水準(例えば、15万円/月程度)以下にとどまる場合は、ストリートミュージシャン等は、JASRAC等に許諾料を支払わずにJASRAC等の管理楽曲を実演することができることとする。

・ 公共の音楽ホール等で、アマチュアバンドやブレイク前のプロバンドが数組集まってライブを行う機会を増やす。その際、バンドからは料金を徴収せず、また、チケットノルマを課さない。

・ コンテンツ等に関連する各種の社団法人等は、理事や職員の報酬を引き下げ、その分をクリエイターへの分配に回す。

 コンテンツビジネスの主役はクリエイターたちであって、間接部門の人間ではない。エンドユーザーが支出した金銭をなるべく多くクリエイターたちに届けるために、間接部門の人間は欲を控えるべきである。

・ コンテンツ事業者は、政治家や財界人の子息等をコネ入社させない。政治家や財界人も自分たちの子息等をコネ入社させるのを差し控える。

 才能に乏しい者を、その強いコネ故に入社させてしまうと、その分才能の豊かな者がはじかれてしまうか、または、人件費が余計にかかる分本来製作に充てる資金が削られてしまう。コンテンツビジネスのように国が力を入れる分野には、才能の乏しい者をコネ入社させる余裕はないし、そのビジネスに国費が投入される場合、そのような者をコネ入社させることは倫理的にも許されないはずである。

・ ハードウェア産業やIT産業、流通産業の担い手を自分たちよりも一段低い者としてみる特権意識をコンテンツ事業者は捨て去る。

 これらの産業との協力関係なしにコンテンツ産業のみが栄えることはないことを、コンテンツ産業はしっかりと認識すべきである。

・ 知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会のような審議会は、既に功成り名を遂げたクリエイターたちの意見ばかりを聴かずに、これからブレイクしてやろうという若いクリエイターたちの声を直に聞き、彼らが何を望み、何に困っているのかをきちんと認識する。

 いくらパブリックコメントの機会を設けても、彼ら自身がその声をパブリックコメントとして知的財産戦略本部に届けるということは実際問題として期待薄であるが、だからといってそれを「自己責任」と切って捨てていたのでは、実際のクリエイターたちが力を発揮できる施策をはいつまでも実現せず、コンテンツ立国など夢のまた夢で終わってしまう。
 知的財産戦略本部の委員の方々は、自ら現場の若いクリエイターたちに積極的に近づき、その声を聞き出すことに力を入れるべきである。

Posted by 小倉秀夫 at 08:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

地域団体商標に関する相談に対応可能な弁護士リスト

 松本好史=伊原友己=石津剛彦「農林水産事業者のための知的財産法入門」(経済産業調査会)末尾の「地域団体商標に関する相談に対応可能な弁護士リスト」に私も載せて頂きました。

 私の場合、どうしても著作権法のイメージが強いとは思いますが、実は工業所有権法関係でもマニアックな裁判例を導き出しているなど結構色々対応していたりするのです(どうしても被告側が多いので、地裁の段階でほぼ勝ち同然になっても、リスク分散のために和解に応じたりしてしまうため、勝ち試合が判決として実を結びにくいのですが。)。

Posted by 小倉秀夫 at 06:15 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

09/18/2006

海賊党、敗れる。

 今日はスウェーデンの総選挙だったのですが、事前の世論調査での人気の高さに反して、海賊党は議席をとれなかった模様です。

 スウェーデンの英字新聞「The Local」によれば、選挙結果はこの通りとのことです。

 やはり、4%条項の壁は大きかったと言うべきなのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 11:09 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/16/2006

「ムービー」とか「テレビ番組」も日本にいる私には無用の長物

 最近、iTunesを更新しました(といいますか、気が付いたら更新されていました。)。

 新しいiTunesでは、「ムービー」とか「テレビ番組」とかというボタンが用意されているのですが、これって私には無用の長物です。そういう機能は利用したくないからということではなく、日本にいる限り、利用したくとも利用できないからです。

 もちろん、MacもiPodも基本的に世界共通企画ですし、日本の通信インフラは世界に冠たるものですから、日本では、ハードウェア的に「ムービー」とか「テレビ番組」をiTunesで提供できないというわけではありません。

 ただ単純に、日本の著作権法はコンテンツホルダーの保護に異常に手厚く、このコンテンツホルダーたちがコンテンツの有効活用を望まないからというだけの理由で、日本国民は、iTunesの新しいサービスを実質的に利用することができないのです。


 「放送と通信の融合」といってみたところで、近々行われるであろう著作権法改正は、結局、テレビ局がテレビ番組を同時にネットでIPマルチキャスト方法する場合には権利処理を簡単にしてあげるというだけの話であって、テレビ塔を建てるのが面倒くさい難視聴地域についてのみ既存の通信事業者が敷設したインターネット回線を利用したIPマルチキャスト放送を行ってあげるという程度にしかテレビ番組のインターネット送信を用いないとテレビ局が決定してしまえばそれだけの話です。何のことはない。テレビ局のためだけの改革です。日本国内に在住する一般市民にテレビ番組の新しい楽しみ方をもたらすものでもなければ、新興勢力が独自の番組を制作してインターネット経由で配信するための権利処理をテレビ局並みに簡便にするものでもありません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/31/2006

さきがけ事件・続報

 さきがけ事件については、特にSlashdot日本版でさかんに取り上げて頂きました。あの弾さんにも取り上げて頂きました。

 まあ、誤解と思われる点もありましたので、ゲームラボでの連載コラムで、この件を取り上げることにしました(編集長から突き返されない限り)。

 問題の根幹はプログラムの保護を著作権法で行うこととした点にあるのであって、現行法の枠内で問題の解決を図る法律実務家が非難されるのは筋違いだとは思います。

 もっとも、どのような要件を具備したプログラムについて、どのような内容の独占権を付与することが、コンピュータ文化の発展に最もよく繋がるのかということに関して、コンピュータ業界の方々の中でおよそのコンセンサスも得られていない状態では、「プログラマーの常識に合致したプログラム保護立法」を行おうにも行いようがないわけで、そういう意味では、法律実務家の無理解を嘆いたり蔑んだりする前に、プログラマー同士でのコンセンサスづくりが先なのではないかなあという気がしてなりません。


 なお、法学系出身者は、最新の技術を駆使した華やかなソフトの開発はともかく、枯れた技術を駆使した地道な業務用アプリの開発には向いていると思います。そういうアプリは、創作性の有無が微妙なのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 06:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/24/2006

著作権法上の「公衆」

 著作権法上の「公衆」とは「不特定の者人又は多数の者のことをいう」というのが多数説なのですが、では、誰との間にどのような関係がある場合にその者が「特定の者」といえるかについては,争いのあり得るところです。この点,加戸守行『著作権法逐条講義[第5版]』の70頁は「行為者との間に個人的な結合関係があるものを指」すとするのですが,そのように定義する根拠は記されていないし,そこでいう「個人的な結合」というのがどのような種類の,どの程度に濃密な関係を指すのかが明らかにされていません。

 そこでまず,「特定の者」という語が他の立法例においてどのような意味に用いられているのかを探求し,そこから著作権法上の「公衆」を画する基準である「特定」性を検討することとします。

  1.  個人情報保護法23条4項3号は,「個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって,その旨並びに共同して利用される個人データの項目,共同して利用する者の範囲,利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について,あらかじめ,本人に通知し,又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。」と規定しています。
      ここでの「特定の者」とは,個人データを共同して利用することにつき当該行為者と一定の協定を結んだものをいい,行為者と「特定の者」との間に,当該個人データの共同利用という行為の目的を離れた個人的な結合関係があることは必要とされていません。
  2.  入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律2条5項3号は,「入札又は契約に関する情報のうち特定の事業者又は事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる情報であって秘密として管理されているものを,特定の者に対して教示し,又は示唆すること」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とは,「入札又は契約に関する情報のうち特定の事業者又は事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる情報であって秘密として管理されているもの」を教示又は示唆する対象として行為者が意図的に選択した者を指しているのであり,行為者との間に特段の個人的な結合関係があることは必要とされていません。不正競争防止法2条1項4号に「窃取,詐欺,強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し,若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)」と規定されている場合の「特定の者」も同様です。
  3.  ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項柱書は「この法律において「つきまとい等」とは,特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,当該特定の者又はその配偶者,直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し,次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とはストーカー行為の対象として行為者が特に選択した者をいい,行為者との間に特段の個人的な結合関係があることは必要とされていません。
  4.  不正競争防止法2条1項11号は,「他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像,音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像,音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,若しくは輸入し,又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とは,コンテンツ提供事業者等「の契約者などで当該コンテンツを視聴,実効又は記録することができる権原を有しているもの」のことをいう(山本庸幸『要説不正競争防止法 第3版』204頁)をいい,行為者またはコンテンツ提供事業者等との間に特段の個人的な結合関係があることは必要とされていません。
  5.  特定電子メールの送信の適正化等に関する法律2条1号は「電子メール 特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。次条において同じ。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。)であって,総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」とは電気通信の送信先として行為者が特に選択した者をいい,行為者との間に特別な個人的な結合関係があることは必要とされていない(いわゆるスパムメールの規制を目的とする本法の性格を考えれば,特段の個人的結合関係のない相手方に向けて送信される電子メールを,規制対象である「電子メール」の定義から除外するということはあり得ない。)。
  6.  特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条1号は,「特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下この号において同じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう。」と規定しています。
      本法の起草者らは,「インターネット上のウェブページ,電子掲示板等は,電気通信の一形態ではあるが,不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(=有線,無線その他の電磁気的方法により,符号,音響又は影像を送り,伝え,又は受けること(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号))の送信であることから,このような形態で送信される電気通信を通信概念から切り出し,『特定電気通信』としたものです。電子メール等の1対1の通信は,『特定電気通信』には含まれない。なお,多数の者に宛てて同時に送信される形態での電子メールの送信も,1対1の通信が多数集合したものにすぎず,『特定電気通信』には含まれない。」(総務省電気通信利用環境整備室著=社団法人テレコムサービス協会編著「プロバイダ責任制限法──逐条解説とガイドライン──」17頁)としています。
      また,東京地裁平成16年1月14日判決(判タ1152号134頁,金商1196号39頁)は,同号の趣旨について,「電子メールが,送信側ユーザー及び受信側ユーザーとの間の人的なつながりを持つことを前提に,双方において具体的な相手方を特定できる関係にあるのに対し,「特定電気通信」の場合は,送信者側と受信者側に人的なつながりがなく,技術的にも双方とも相手方を具体的に特定できないため(匿名性),(a)誰もが容易に発信することが可能であり (発信の容易性),(b)ひとたび被害が発生すると容易に拡大し(被害の拡大性),(c)匿名で発信された場合には被害の回復が困難である(被害回復の困難性)などの特質があることによるとされている」と判示しています。このように,本条項にいう「特定の者」とは,行為者との間に「双方において具体的な相手方を特定できる」程度の人的な繋がりは要求される例があるにせよ,それ以上の,親族関係類似の濃密な個人的な結合関係は求められていない(例えば,事前に購読者登録をした人全員に同じ内容の電子メールを同封送信することが予定されているメールマガジンは特定電気通信(不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」にはあたらないものと一般に解されている。)。
  7.  保険業法2条1項は,「この法律において「保険業」とは,不特定の者を相手方として,人の生死に関し一定額の保険金を支払うことを約し保険料を収受する保険,一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し保険料を収受する保険その他の保険で,第3条第4項各号又は第5項各号に掲げるものの引受けを行う事業(他の法律に特別の規定のあるものを除く。)をいう。」と規定しています。
      ここでいう「不特定の者を相手方として」との文言について,東京海上火災保険株式会社編『損害保険実務講座[補巻]保険業法』14頁は,「これは,必ずしも現実に多数の者を相手方として引き受けが行われている必要はないということを間接的に明らかにしたものと解すれば足り,保険という要件をさらに絞り込むまでの意味はなく,この要件に格別の意味を持たせることは適当でないであろう」としています。
  8.  貨物自動車運送事業法2条3項は「この法律において『特定貨物自動車運送事業』とは,特定の者の需要に応じ,有償で,自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。」と規定しています。
      ここでいう「特定の者」(運送需用者)について,「運送需用者は,単数の者に特定され,等が運送需用者の輸送量の大部分を確保されるものであること」及び「運送需用者と直接運送契約を締結するものであり,運送の指示等において第三者が介入するものではないこと」等の具体的な要件が公示されてます(国土交通省北海道運輸局「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可基準」)が,運送事業者と「特定の者」との間に,それ以上に濃密な個人的結合関係があることは要求されていません。

 このように他の法令等において「特定の者」との語が用いられる場合,特定の行為ごとに行為者が意図的に行為の対象となる人物の範囲を絞り込めば足りるのか,それとも当該行為に先立って継続的な契約等により行為者と一定の人的な繋がりを有しておく必要があるかについては差違があるにせよ,継続的な契約関係よりもプリミティブな,濃密な個人的な結合関係(親族関係等)があることまでも必要としているものはありません。

 そして,著作権法上の「公衆」の範囲を画する概念としての「特定の者」の意義について,これらの他の立法例における意義と別異に解する特段の事情は存しませんので,継続的な契約関係よりもプリミティブな,濃密な個人的な結合関係(親族関係等)があることまでも必要としないものと解するべきです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:14 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

08/23/2006

さきがけ事件地裁判決

 最高裁のウェブサイトには載せてもらえていないのですが(同じ知財訴訟でも、福岡地裁管轄だと、全件掲載ではないようです。)、市販のコンピュータプログラムの創作性が否定されたという点で珍しい裁判例ですので、ご紹介します。

 福岡地判平成18年3月29日[「さきがけ」事件]

 なお、この事件は、控訴がなく、すでに判決が確定しています。

Posted by 小倉秀夫 at 04:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/20/2006

情報の流通や文化の伝播を「国境」で食い止めるのはもうやめよう。

 まねきTVのようなサービスを押しつぶすために、テレビ局は、「こんなサービスが容認されると、日本はオリンピックなどの映像について放送ライセンスが得られなくなる」云々と言って脅してきます。まあ、こんなニッチなサービスが容認されたからといって、日本の放送局が支払う莫大な放送権料を諦めて日本への放送ライセンスの付与を拒絶する組織があるとはにわかに信じがたいところではあります。

 百歩譲って、仮に有力なコンテンツをお持ちの組織の中にこの種のニッチなサービスが容認される国には一切放送権を付与しないという傲慢な組織があり、その組織がお持ちのコンテンツを視聴したいという国民が多い場合、その組織がお持ちのコンテンツだけはエリアシフトできないように工夫したらよいだけのことのようにも思います(テレビ局と機器メーカーとの間で「エリアシフトを不可とする番組」であることを示す信号を取り決めれば済むだけのことです。)。

 もっといってしまえば、海外スポーツの中継や映画のTV放映のような外部コンテンツ以外のコンテンツ(ニュースやドラマ、バラエティなど)は、ストリーミング型でいくかダウンロード型でいくかはともかくとして、全世界に向けてオンライン配信してしまえばよいのです(配信先の国・地域ごとにCMを入れ替えられるようにすれば、国外配信分についても広告収入が得られる可能性が高くあるわけですし。)。実際問題として、海外に滞在している際に見たくなる日本のテレビ番組としては、ニュースや日本国内制作のドラマ、日本の国内スポーツ等が上位にくるのであって、オリンピック中継だのサッカー中継だのは、無理して日本国内で放送されているものを見たいとは思わないですし、そういうものとして番組を制作すれば権利処理だってそんなに難しいものだとは思いません(いずれにせよ、YouTubeその他のサービスが存在する以上、外国人タレント等が日本のバラエティやCMで羽目を外した映像が日本国内で流れれば、その映像は米国等にも流れるわけですし。)。

 情報の流通や文化の伝播を「国境」で食い止めるという、反社会的なことのために、貴重な資本や法的なリソースを活用するという無意味なことは、そろそろやめにしてもらいたいものです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/19/2006

双方向番組も文字情報もどうでも良いから、とにかく見たい番組を見られるようにしてくれ

 まねきTVに関しては、どうしても、「海外にいながらにして日本のテレビを視聴する」目的で利用するというイメージが強いと思うのですが、実際には、「地方にいながらにして東京キー局のテレビを視聴する」目的で利用する方も結構多かったりします。私は東京の人間ですので地方出張の折りにホテルのテレビで見るときくらいしかローカル局のオリジナル番組を見る機会はないのですが、確かに、地元密着かもしれないけどそれなりにチープっぽさを感じしてしまいますし、そのようなローカル局オリジナル番組を放送するために地元では放送されていない東京キー局制作番組が全国的に評判を呼んでいる(そのことはネットを見ればわかります。)なんてことになれば、それはとても不愉快なことなのだろうと思います。

 ですから、日本全国どこにでも、東京キー局の番組を見たいという需要はあるのだろうし、ローカルテレビ局が極端に少ない地域では特にそうなのだろうということは想像に難くありません。だから、まねきTVのようなサービスを押さえつけようと思ったら、まずは、東京キー局みずから、その放送する番組を日本全国で視聴できるようにしてしまえばよいわけです。インターネットを使うもよし、BSデジタルを活用するもよし(どうせ、BSデジタルオリジナル番組なんて大したものはやっていないのですから。)。重要なのは、「いくつかの番組を視聴できる」のではなく「全ての番組を視聴できる」ようにすることです。

 もちろん、そうなると、ローカルテレビ局としては、専らオリジナル番組で勝負しなければいけなくなるので、大阪のような大都市圏を除けば、1局残るかどうかというところかもしれません(地元密着系の番組を流す放送局は1局あれば十分でしょう。)し、その1局はケーブルテレビだったりインターネット放送だったりするかもしれません。しかし、それは仕方がない話です。ローカルテレビ局を残すために、地方の人々が、東京キー局で放送されている番組を視聴できない状況を甘受しなければならないというのは、本末転倒な話です。

 「双方向番組も文字情報もどうでも良いから、とにかく見たい番組を見られるようにしてくれ」という声に応えるためのインフラ投資をテレビ局も真剣に考えればいいのになあと私などは思ってしまう今日この頃です。

Posted by 小倉秀夫 at 07:25 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

バランスを欠く著作権法のreplace

 フランス社会党は、先日改正された新著作権法が「コンテンツ・クリエイターの権利とインターネットユーザーの選択の自由とのバランスを欠く法律である」として、来年の国政選挙および大統領選挙で勝利したら、著作権法を再改正すると表明しているようです。

 以前取り上げた海賊党──既にスペインやオーストリアでも政党登録済みのようですし、活動自体は、 米国、フランス、ドイツ、ポーランド、イタリア、ベルギーでも行われているようですが──は、新興の零細政党でしかありませんが、フランス社会党といえば、ミッテラン大統領を輩出した有力政党ですし、ロワイヤル氏が大統領候補になると勝利しかねない勢いですので、こういうところが著作権法の行き過ぎを見直す方向の公約を掲げるようになってくると、世の中はまともな方向に動いていきそうな気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 11:48 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/11/2006

著作権と基本的人権

 著作権は基本的人権か否かという問題にはいろいろな解答があります。

 「著作権は一種の財産権である。財産権は基本的人権の一つである。故に著作権は基本的人権である」というのが一つの考え方です。

 「法律により内容が規定された財産権を享有するということが基本的人権の内容であって、著作権という法律により創設された個別の私権が基本的人権となるのではない」という考え方もあり得るでしょう。

 また、一定の行為を制限する根拠としての著作権に着目すれば、著作権というのは、一種の規制であるということもできるでしょう。

 基本的人権と基本的人権とが衝突する場合にその調整を図る限度で基本的人権は内在的に制約されるという考え方にたてば、ある人にとっては基本的人権を保障するための法的ルールが、別の人にとっては基本的人権を制約する規制にすぎなくなるということは良くあることなので、著作権は基本的人権の一種であるとともに、基本的人権の行使を妨げる規制の一種であるという解答も十分に成り立ち得ます。

 したがって、「著作権は基本的人権である」という議論は、「だから、著作権による保護の範囲を強化する立法・解釈が善であって、狭める立法・解釈は悪である」という結論を導きません。むしろ、著作権と衝突する利害が、経済的自由よりも優越的地位にたつ精神的自由(表現の自由等)である場合には、著作権の適用範囲は必要最小限度にすべきではないかということが立法又は解釈の現場で語られてしかるべきではないかという結論が導かれる可能性があります。

Posted by 小倉秀夫 at 02:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/08/2006

技術革新の成果を市民が享受することへの配慮について

 まねきTV事件の仮処分却下決定は、ネット上でもそこそこ話題になっているようです。

 債務者側は、技術革新の成果を市民が享受することを著作権法が阻害する近時の裁判例の流れが変わることを祈って、準備書面の一節に下記のような文章を織り込んだわけですが、これが功を奏したのであれば、これ以上の幸せはないといったところです。


第5  技術革新の成果を市民が享受することへの配慮について

1 米国の連邦最高裁判所は,技術革新により著作物の新しい利用が可能となった場合に,裁判所がこの可能性を摘み取ることには非常に慎重である。それは,いわゆるベータマックス事件最高裁判決(Sony Corp. v. Universal City Studios, 464 U.S. 417 (1984))をみても明らかであるし(この技術革新の結果、従来在宅しなかったために視聴できなかった者がベータマックスにより情報にアクセスできるようになったという点を積極的に評価している。),結果的に新しい技術の提供者に法的な責任を認めたグロックスター事件最高裁判決(MGM Studios, v. Grokster, Ltd., (04-0480) 545 U.S. ; 125 S.Ct. 2764 (2005))においても,グロックスター社がその提供するソフトウェアを用いて利用者が違法行為を行うことを積極的に誘引したという事実が認定されて初めて法的責任が認められたのであり,逆にいえば,そのような事実認定なしにはグロックスター社に法的責任を認める判決は下されなかった(高裁の判断がまさにそうである。)。

 2 他方,日本の裁判所はこれまで,技術革新の結果著作物の新しい利用が可能となった場合に,裁判所がこの可能性を摘み取る危険を十分に考慮してきたとは言い難い。その結果,一般市民が,専ら自分がいい気分に浸りたいがために酒場や小部屋で歌を歌うことすら音楽著作権管理団体にお金を支払わなければ許されず(平成18年6月3日にエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク主催で行われたシンポジウムにおける社団法人日本音楽著作権協会企画部長北田暢也氏の説明によれば,米国では,カラオケ等での客の歌唱について音楽著作権管理団体は料金を徴収していないとのことである。),テレビ番組の録画用機器を共同住宅の所有者間で共有しコストを下げることも許されないという事態になり,また,テレビ番組の受信・録画機能のあるコンピュータを用いて海外在住者が日本のテレビを視聴することも許されないという事態になりうる危険がある。

 では,技術革新の成果を市民が享受することに配慮が行われてきた米国と,市民の利益への配慮が十分でなく,技術革新の波から著作権者等の言わば既得権者を守ってきたと言える日本とを比較した場合に,米国のクリエイターたちは創作のインセンティブを失った結果,国際競争力のある良質なコンテンツを創作しなくなったかとか,他方,創作のインセンティブを裁判所から十二分に保障してもらった日本のクリエイターたちは国際競争力のある良質なコンテンツを次々と創作するようになったかというと,実際はその正反対である。著作権者等を過大に保護することは,結局,文化の発展に貢献していないと言わざるをえないのではないだろうか。

 本件においても,債権者らは,本件仮処分が認容されないと大変なことになるということを縷々主張していたが,債務者がその主張について具体的な根拠を問いただしても答えず,債務者がその主張に対して具体的に反論をしても再反論をしなかった。それは,「NHKや東京キー局等の『強者』」対「技術革新の成果を生かして消費者に利益をもたらす新たなサービスを提供し始めた『弱者』」という構造において,日本の裁判所が「強者」の保護を続けてくれると信じているからとしか考えられないところである。

 現在までの技術革新の成果を利用して訴外ソニーが実現した「ロケーションフリー」という新たなTVの視聴スタイルは,ハウジングサービスと組み合わされることによって,より多くの日本国民に「TVを通じて知る権利」の実質化に貢献することとなる。そして,そのことによって債権者らの利益が実質的に害されることはない。したがって,米国の連邦最高裁判所であれば,債務者による本件サービスを違法とする判決が下されることは考えがたい。では,日本の裁判所はどうなのだろか。米国の連邦最高裁判所と同様に,技術革新が国民の福祉にもたらす成果を正当に配慮するか否かが本件では問われていると思われる。

Posted by 小倉秀夫 at 12:01 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/05/2006

まねきTV事件地裁決定の肝

 本日の朝日新聞朝刊に掲載されたことでちょっとになっている「まねきTV事件仮処分却下決定」ですが、下記の事情に照らして、「ベースステーションにおいて放送波を受信してデジタル波を受信してデジタル化された放送データを専用モニター又はパソコンに送信するのは、ベースステーションを所有する本件サービスの所有者であり、ベースステーションからの放送データを受信する者も、当該専用モニター又はパソコンを所有する本件サービスの利用者自身であるということができる」と判示したところが肝です(いわゆる「カラオケ法理」の適否に関する応用問題なのです。)

  1.  それに使用される機器の中心をなし、そのままではインターネット回線に送信できない放送波を送信可能なデジタルデータにする役割を果たすベースステーションは、名実ともに利用者が所有するものであり、その余は汎用品であり、本件サービスに特有のものではなく、特別なソフトウェアも使用していないこと、
  2.  1台のベースステーションから送信される放送データを受信できるのはそれに対応する1台の専用モニター又はパソコンに放送データが送信されることは予定されていないこと、
  3.  特定の利用者のベースステーションと他の利用者のベースステーションとは、全く無関係に稼働し、それぞれ独立しており、債務者が保管する複数のベースステーション全体が一体のシステムとして機能しているとは言い難いものであること、
  4.  特定の利用者が所有する1台のベースステーションからは、当該利用者の選択した放送のみが、当該利用者の専用モニター又はパソコンのみに送信されるにすぎず、この点に債務者の関与はないこと、
  5.  利用者によるベースステーションへのアクセスに特別な認証手順を要求するなどして、利用者による放送の視聴を管理することはしていないこと

 ということで、
「ベースステーションによる放送データの送信は、1主体(利用者)から特定の1主体(当該利用者自身)に対してなされたものである」


「ベースステーションによる送信は、不特定又は特定多数の者に対するものとはいえず、これをもって『公衆』に対する送信ということはできない」

「本件サービスにおける個々のベースステーションは、『自動公衆送信装置』には当たらない」
ということになったのです。

 まあ、このサービスって早い話が「ベースステーションのハウジング」なので、「契約者がハウジングされているコンピュータを用いて行う行為の主体は、著作権法の規律の観点からは、ハウジング業者なのか契約者なのか」という問題に帰すると思っていたりはします(録画ネットの場合は、高裁の事実認定のもとでは、ハウジングではなく、ホスティングです。)。

【追伸】決定書がアップロードされたようです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/04/2006

午後5時の吉報

 こちらの事件につき、東京地裁民事第47部より、本日午後5時付けで却下決定を頂きました。

 まずは一安心です。

【追伸】一部メディアで紹介されたようです。

Posted by 小倉秀夫 at 07:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

むしろ、有料音楽配信の受信可能なWMPのOSX版を作らせるのが先では?

 私には、フランスの国会議員の感覚というのが理解できないことがあります。

 「iTunes Music Store」でダウンロードした楽曲はiPod以外の携帯型ハードディスクプレイヤーでは視聴できないとしても、各携帯型ハードディスクプレイヤーに対応した音楽配信サービスが存在すれば(そして、収録楽曲の殆どが共通であれば)「携帯型ハードディスクプレイヤーの機種の変更」問題以外の問題は、発生しないように思います。

 これに対し、Apple社がフランス国内での「iTunes Music Store」サービスを取りやめることとした場合、フランス国内では、WindowsOSユーザー以外はPC型の音楽配信サービスを正規に受けられなくなります。その方が消費者の選択肢は減少しそうです(有料音楽配信を受ける機能をMac版やLinux版のWindows Media Playerにも実装させるのが先なのではないかと思います。)。

 

Posted by 小倉秀夫 at 01:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/03/2006

著作物等の利活用に資する商品等の提供と著作権等の侵害

  以前お話しした「2006年度 秋期弁護士研修講座」の件ですが、以下の題で講演させて頂くことにしました。

「IT社会における著作権問題」
(副題)
 著作物等の利活用に資する商品等の提供と著作権等の侵害

Posted by 小倉秀夫 at 04:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/02/2006

プロ野球選手のパブリシティについての独占的許諾権

 プロ野球選手のパブリシティ権に関する判決が昨日東京地裁で下りたわけですが、氏名に関する権利にせよ、肖像に関する権利にせよ、人格権的な要素があるが故に法律の定めなくして排他的な権利が認められているものについて、独占的な許諾権を契約で設定できるという考え方には違和感があります。

 氏名や肖像についても商業的な使用に関する権利については、一身専属性のある人格権ではなく、譲渡その他の処分が可能な財産権と解するのだとする考え方もあり得るかもしれないのですが、これらを財産権と解するのであれば、法律による明文の定めが必要なのではないかとの疑問を捨てきることはできません(あるいは、温泉権等の「慣習法による物権」の可否の論点の類推として、氏名・肖像の商業的な利用について「慣習法による無体財産権」の可否みたいなことを考えるのかもしれないですが(判決文では、過去の運用実績を縷々認定していますし)。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:07 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/28/2006

著作権の保護期間延長の既存著作物への遡及適用における不公正性の緩和に関する一提案

 映画の著作物以外の著作物についても、著作権の保護期間を50年から70年へと延長することを求めることで、関係団体が一致したというニュースが流れています。

 著作権の保護期間の延長は、既に創作されている著作物について遡及的に適用される場合には、「既得権の擁護」以上の意味を持ちません(「新たな創作活動の障害」などのマイナスの意味ならもつのですが。)。なにしろ、創作のインセンティブは過去に遡ることはありませんから。したがって、「既得権益を打破して活力のある社会を作ろう」みたいなことを言っている新自由主義者が既存の著作物にも遡及する形での著作権の保護期間の延長論に賛意を示していたら、その人の「既得権益を打破しよう」的な態度はいわゆる「似非」だと言ってしまって差し支えないでしょう。

 また、著作権の保護期間の延長による利益が専ら現在の著作権者に帰属するというのはあまり公正ではありません。短かった保護期間を前提に著作権を譲渡しあるいは一括して許諾料をもらい受けた著作者は、保護期間が延長されたことによる著作物の経済的価値の増加分につき、現在の著作権者から更なる給付を受ける権利が認められて然るべきです。また、その著作物が第三者の著作物の二次的著作物であった場合、当該原著作物の著作権者(だった者)に対して、その原著作物についても延長された保護期間が適用されていたら保護されていたであろう期間分につき、使用料相当金を支払うのが公正なのではないかと思います。

 それらの負担を覚悟した者だけが、著作権の保護期間延長の既存著作物への遡及適用を主張できる(その意思を表明するための登録制度を用意する)ということにすれば、著作権の保護期間延長の既存著作物への遡及適用の不公正性は少しは緩和されそうな気がします。もちろん、それでも、「インセンティブ論」からの正当化の困難性という問題は残るわけですが。

Posted by 小倉秀夫 at 12:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/13/2006

2006年秋期弁護士研修講座

 東京弁護士会弁護士検収センター運営委員会が企画されている「2006年度 秋期弁護士研修講座」の一環として、9月7日に、著作権関係で、講座を1つ担当することになりました。

 具体的に何を話すのかは全く白紙状態なのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 03:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/05/2006

アクセス可能性の有無から蓋然性の高低へ

 依拠性を推認させる間接事実として、先行著作物への「アクセス可能性の存在」をあげる見解があります。中には、複製権・翻案権の侵害の存在を主張する側が、被疑侵害者の先行著作物への「アクセス可能性」があったことを主張立証した場合には、複製権・翻案権の侵害の存在を否定する側が、被疑侵害者が先行著作物に依拠しなかったことを積極的に主張・立証しない限り、依拠の存在が推認されるとする見解もあります。

 ただ、「アクセス可能性」の「有無」を問題にしてしまうと、先行著作物が広く公衆に対して提示または提供されている場合には、抽象的には被疑侵害者を含む何人にも先行著作物への「アクセス可能性」があったといえるわけで、その程度の事実が主張立証されてしまうと、被疑侵害者が先行著作物に依拠しなかったことという積極的立証が非常に困難な事実を立証しなければ依拠が推認されてしまうというのは非常に難儀なことです(例えば、ネット上にアップロードされている文章には、誰にでもアクセス可能性がありますが、だからといって「その文章にアクセスしなかったことを積極的に立証できなければ依拠があったと推認するのだといわれてしまうと、結構困ってしまいます。)。

 実際のところ、「被疑侵害者による先行著作物への依拠」という要証事実の存在の蓋然性は、先行著作物への「アクセス可能性」の有無できっぱりと左右されるというよりは、先行著作物への「アクセスの蓋然性」の高低により段階的に決まっていくのではないかと思います。そして、先行著作物へのアクセスの蓋然性があまり高くない場合は、「先行著作物と偶然に共通・類似することのあり得ない度」が相当高い等、依拠性を強く推認させる他の間接事実がある場合に限って、依拠性の存在を推認することが許されるのではないかという気がします。

 このように先行著作物への「アクセスの蓋然性」の高さと「先行著作物と偶然に共通・類似することのあり得ない度」の高さとを相関させることにより依拠性が推認できるという見解に立つと、記念樹事件において東京高裁が、あの程度の間接事実であっさり「依拠性」を推認してしまったことが何とか説明できるのではないかと思います(高裁の裁判官は、「どこまでも行こう」と「記念樹」との間の「先行著作物と偶然に共通・類似することのあり得ない度」を相当高く見積もっていたことは判決文から明らかです。)。

Posted by 小倉秀夫 at 01:58 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/24/2006

海賊党

 他人が著作権を有する作品を無断でコピーして販売する行為を「海賊」(pirate)行為ということがありますが、考えてみると不思議な命名です。illegalってだけなら「海賊」よりももっとふさわしいアナロジーがありそうなものです。山賊でも海賊でも「賊」というからには、暴力を背景にして他人の財物を奪い取るくらいの意味範囲が必要なのではないかとも思うのですが、海賊版の製作・販売にはそういう暴力的な要素は通常ありません。

 従前「海賊」行為がいかなる国の主権も及ばない公海上で行われそれゆえいかなる国もこれを取り締まれなかったように、海賊版の製作も、著作権条約非加盟国で行われ、それ故いかなる国もこれを取り締まれないということのアナロジーで「海賊」という語が用いられるようになったという見解もあるようですが、そうだとすると、日本国内で製作された違法コピーを「海賊版」というのは「海賊版」という言葉の射程範囲を広げすぎではないかという気がします。

 私たちは、「海賊」というとネガティブなイメージを強く持ちます(「小さなバイキング・ビッケ」のファンはそうでもないかもしれませんが。)から、著作権条約加盟国内で行われた無許諾コピーを「海賊」版と呼ぶのはある種のイメージ操作という側面もあるのかもしれません。

 もっとも、「海賊」という言葉がどの社会でもネガティブイメージで捉えられているのかというと必ずしもそうではないようです。たとえば、「小さなバイキング・ビッケ」の原作者であるルーネル・ヨンソンの出身国であるスウェーデンでは「海賊党」(Piratpartiet)が大まじめに作られ、しかも今年の選挙では得票率が4%を超えて議席を獲得しそうな勢いだと報じられたりしています。

 この「海賊党」の基本政策は3つです。Pro-Privacy、Anti-Copyright、Ant-Patentです。

 海賊党の提唱する著作権法に関する具体的な政策は、次の二つです。

The Pirate Party wants a right for every citizen to gather, use, derive from, and distribute any culture, knowledge and public information, as long as it is for non-commercial use.
Copyrights need to return to a fair and balanced level, so the creator can have a short but long enough time of protection - say, five years - to make money off creative works in commercial environments.

 まあ、特許制度についての基本政策
Patents are counteracting their original purpose, and need to be abolished completely.
と比べたら、商業的な環境において創作的な作品から収益を売るための保護を「5年も」認めてくれるだけましと言えなくはないのですが、かなり過激な提案です。

 wikipediaの記載によると、海賊党の勢いに押されて、スウェーデンの法務大臣であるThomas Bodström氏が、ファイル共有を違法とするために2005年に導入された法律の見直しに向けて協議を行いたい旨呼びかけたりするまでに至っているとのことであり、この「愉快な青年バイキング」*の蛮勇がスウェーデンにどのような著作権政策の変更をもたらすのか、9月の総選挙まで目が離せないところです。


*

 海賊党の党首であるRickard Falkvinge氏は1972年1月生まれの34歳とのことです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

06/23/2006

実の著作権者は宇宙界にあり

 知財高判平成18年5月11日(平成18年(ネ)第10006号)事件の控訴人の主張はすごいです。

3 当審における控訴人の主張の要点
(1) 高橋信次の著作物は,宇宙界より降ろされた法であり,信仰者に伝えられるべく残されたものであるから,親族が著作権を主張すべきではない。実の著作権者は宇宙界にあり,多くの人々に伝えてこそ法である。

 立証は大変そうです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:37 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

06/10/2006

カラオケ音源の持ち込み

 若い頃はともかく、最近はカラオケ屋さんに行くことも年に数回しかないのですが、ここへきてまた洋楽を聴く比率が高くなってしまったものですから、直近でヘビーローテーションで聴いていた曲がカラオケ屋にある確率というのがどんどん低くなってしまっています。

 そういう私の立場からすると、カラオケ音源を収録したCDないしDVDを持ち込んで歌えるようなカラオケボックスがあるといいなあとついつい思ってしまいます。マキシシングルを購入すれば通常インストルメンタル・バージョンが頼まれもしないのに入っていますから、シングルカットされた楽曲については、カラオケ音源の確保は簡単です。シングルカットされていない楽曲については、インストルメンタル・バージョンをコピーしてお茶を濁すわけにはいきませんが、最近は安い音楽ソフトで結構高機能なものがありますから、耳コピで伴奏を作ってしまえば済んでしまいます(まあ、プロの耳コピと比べると質は劣ると思いますが、所詮は素人が歌うための伴奏ですから、それでも構わないように思います。)。

 で、洋楽カラオケにおいて客によるカラオケ音源の持ち込みが一般化していった場合、それでも客による歌唱の主体はカラオケ屋の経営者ということになるのでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 02:40 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/05/2006

ELN 第3回シンポ

 6月3日、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの第三回シンポジウムが行われました。

 最初の報告でJASRACの北田暢也企画部長が「カラオケ『侵害』判例法理の解説」という題で報告をされていましたので、北田さんに、最近カラオケは諸外国でも流行っていますが、諸外国でもカラオケスナックやカラオケボックスの経営者を歌唱の主体としてライセンス料を徴収しているのですか、それともそれ以外の方法でライセンス料を徴収しているのですかというようなことをご質問させて頂きました。すると、北田さんは、アメリカは広いので、アメリカの音楽著作権管理団体は、カラオケについては未だライセンス料を徴収してはいないようだという旨のご回答をされました。

 なんだ!素人による歌唱についてライセンス料が支払われなくとも、創作のインセンティブは失われないではないか!

Posted by 小倉秀夫 at 01:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

05/28/2006

著作権法学会2006春

 久しぶりに著作権法学会に行ってきました。

 今回のテーマは著作者人格権でした。

 一応パネリストに質問をしようと思って手を挙げたのですが、時間の関係で指してはいただけませんでした。

 伺いたかったのは、職務著作に関する著作者人格権の「主体」をどう捉えるのかということについて、当該著作物に化体された社会的評価の実質的な帰属主体を実質的な著作者人格権の帰属主体とすることの可否です。

 例えば、Xという法人のAというセクションにおいて同セクションの営業活動の一環として創作された著作物甲については、Aというセクションに実質的に著作者人格権が帰属するものとして取り扱ってみるというのはどうかなあということです。「Aというセクションに実質的に著作者人格権が帰属する」ということにより、Aというセクションの営業がXからYに譲渡された場合に、著作物甲についての著作者人格権は実質的にAに留保する(形式的にはXからYに移転する)とすることが、著作者人格権の一身専属性にもかかわらず可能とならないかとか、X内のAというセクションの名義で公表されている著作物甲について、X内の別のセクションが勝手に内容を改変したり、別のセクションが担当したかのように表示したりする行為を違法視できないかということを漠然と考えていたものですから。

Posted by 小倉秀夫 at 02:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

05/24/2006

間接侵害とカラオケ法理

 財団法人ソフトウェア情報センター「ソフトウェア開発・販売と著作権の間接侵害規定に関する調査研究」に「間接侵害とカラオケ法理」という文章を寄稿しました。

 これは、いわゆる「カラオケ法理」が果たして機能を、「適法行為への関与の違法化」「プロバイダ責任制限法第3条の免責の回避」「間接行為の差し止め」「法創造」等に分解しつつその功罪を検討した上で、そのうちのどの機能をどのような形で、今後立法において新設される間接侵害規定に継承しまたは継承しないかを論じたものです(前回のパブコメの元ネタの一部でもあります。)。

 興味がありましたらお読み頂ければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:05 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/23/2006

杉本と杉村

 今日は複数のテレビ局から、杉村太蔵議員のブログの件で取材を受けましたが、マスメディアで働く人々が「春の波濤」事件最高裁判決を知らないのはまずいのではないかと思いました。

Posted by 小倉秀夫 at 03:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

特別な人々が巨額の投資をして行う事業ばかりが尊いわけではない

 森・濱田松本法律事務所の齋藤浩貴弁護士は、「通信を利用した放送と著作権法の課題」を読む限り、IPマルチキャスト放送と比べて、一般のインターネット放送を低くみておられるようです。

 例えば、著作権法第2条第1項第9号の2の定義規定を見ている限りにおいてはIPマルチキャスト放送は有線放送に該当するものと解釈することは十分可能であるとしながらそのように解釈すべきではないとする実質な理由付けとして、

IPマルチキャスト放送を有線放送と解釈する場合には、必然的に、インターネット放送も有線放送と解釈せざるを得ないことになる。そのような解釈が、実際上の不都合を生じることは明らかであろう
としています(同31頁)。また、IPマルチキャスト放送を一定の範囲で有線放送と同一の扱いにするような法改正を行う際の注意点として、
IPマルチキャスト放送を、インターネット放送を含めない形で定義しなければならない
としています(同34頁)。

 ただ、齋藤先生は、

インターネット放送は、それほどの投資もなく、誰もが行うことができる。インターネット放送で放送の再送信を非営利無料で行うことは、誰の許諾も得ることなくできるとしたり、インターネット放送による商業用レコードの配信については、実演家やレコード製作者には報酬請求権しか認められず、一時的固定も許されるとすれば、著作者等の権利が不当に害されることは明らかである
とおっしゃったり(同31頁)、
その定義を、単純に電気通信役務利用放送法の「電気通信役務利用放送事業者」の定義と同一としたのでは、その文言からして、インターネット放送を含むものととられかねず、また、公共性のないものも含まれるかのような文言になっているため、そのような考えでよいのかは慎重な検討を要するであろう
とおっしゃったり(同34頁)しています。

 しかし、「それほどの投資もなく、誰もが行うことができる」という理由で、インターネット放送を、「多額の投資が必要であり、それ故に巨大資本の助けがなければできない」IPマルチキャストと著作権法上区別して扱うことの正当性は問われるべきでしょう。放送・有線放送での商業用レコードの利用については、レコード製作者や実演家に許諾権(禁止権)を付与していない(米国では報酬請求権すら認められていない。)わけですが、その趣旨は、放送・有線放送に公共性があるからというよりは、いつ、どの楽曲を視聴できるかを視聴者がコントロールできない放送・有線放送はレコード・CD等との代替性が低く、むしろ、放送・有線放送でその楽曲を放送されることはレコード・CD等の販売促進効果があるということにあったりするわけで(実際、米国では、特定の楽曲が、ミニFMでヘビーローテーションで放送されたことがきっかけとなって大ヒットしたなんて話は幾らでも転がっています。)、別に放送・有線放送は大企業がもっぱら担うから公共性がある云々ということは全然関係のないことだったりするわけです。そしてそのこと自体は、IPマルチキャスト放送はもちろん、インタラクティブ性のないインターネット放送なんかについても同じように当てはまるわけですから、いつ、どの楽曲を視聴できるかを視聴者がコントロールできない楽曲のネット配信については、放送・有線放送と別異に取り扱うものとする合理性等ないということができます(だから、米国でネットラジオからはロイヤリティを徴収できるようにする法改正がなされた際には非難囂々だったし、ネットラジオの側とコンテンツホルダーとの間でロイヤリティについて合意が成立した後も、ネット側は、「ウェブ放送曲ばかりが多額のロイヤリティの支払いを義務付けられており、音楽を無料で放送できる地上波ラジオに対して競争上不利な状況は変わらない」と不満を述べていたりするわけです。)。

 そういう意味では、インターネット放送による商業用レコードの配信について、報酬請求権が認められていることだけでも実演家やレコード製作者はありがたいと思うべきなのであって、禁止権が認められなければ権利が不当に害されるのだと考えること自体がおこがましいというべきなのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 03:10 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/22/2006

カラオケ法理と刑事罰

 ライブハウスの経営者に有罪判決が下された事案が紹介されていますが、刑事法の分野でもカラオケ法理が適用された裁判例としては、大阪地判平成6年4月12日判タ879号279頁)があります。

 この事件でも、弁護人は、カラオケ法理を刑事法に適用するのは罪刑法定主義に反するとの批判をしていますが、これに対して裁判所は次のように判示しています。

弁護人は、カラオケの伴奏部分は適法とされているにもかかわらず、客等の歌唱の部分のみを取り上げて演奏権を侵害するというのは、犯罪構成要件明確性の原則、類推解釈禁止の原則を唱った罪刑法定主義に違反する旨主張するが、カラオケ伴奏自体はやはり歌唱に対して付随的役割を有するにすぎないとみざるを得ず、カラオケ店における客によるカラオケを伴奏とする歌唱が、店の経営者による演奏権の侵害になるという結論自体は前記の判例等から確定的であるといってよい。然るに、民事上は演奏権の侵害とされるのは仕方がないとしても、刑事上は罪刑法定主義の観点から演奏権の侵害にはならないかの如き解釈は、演奏権の概念を徒らに混乱させるものであって、到底採り得ない。演奏権の概念自体は民事上、刑事上を問わず一義的に明確であるべきものであり、また同一内容のものとしてとらえるべきものと解する。

 河上元康裁判長は、民事と刑事とでは、法解釈の限界に差違がないとの見解にお立ちなのではないかと思われます。

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05/15/2006

ネットベンチャーと共謀罪

事例1

 Aは、サイズの大きな電子ファイルを効率的に転送するシステム甲を開発した。Aは、これを公衆に提供すべく、ベンチャー企業X社を設立した。システム甲は、著作権付きの情報の転送に用いられることを防ぐ手段が備わっていなかったが、X社の経営陣および技術者たちは、ファイル転送システムにおいて著作権侵害に用いられることを完全に防ぐことは不可能だから多少のことは仕方がないとして、著作権侵害に用いられることを完全に防ぐ手段を実装しないままシステム甲を1ヶ月後に公衆に提供することを決定した。
 その後、X社は、顧問弁護士Yに、システム甲の利用規約等のチェックを依頼したところ、Yから、システム甲を公衆に提供すると、Xがシステム甲を用いた著作権侵害の主体と認定されるおそれがあるから、著作権侵害に用いられることを完全に防ぐ手段を実装するまでシステム甲の公衆への提供を控えるように忠告し、X社は、泣く泣くこの忠告に従ってシステム甲の公衆への提供を断念した。
 
問1
 共謀罪が政府案通りに可決成立した場合、Aは共謀罪に問われうるか。

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04/25/2006

ジョン氏が来たなら伝えてよ

ゲームラボに載せた原稿の原文です(実際にゲームラボに掲載された文章は、ここから編集者によるチェックが入ります。)。

 「Original Confidence」の2006年4月6日号に、国際レコード製作者連盟(IFPI)会長兼CEOのジョン・ケネディ氏のインタビュー記事が掲載されています。

 この中でケネディ氏は、「モバイル向け配信では世界でナンバーワンなのに、PC向け配信ではかなり後ろの方という極端な状況」を生み出した最も大きな要因として「レンタルCD市場が存在する」ことをあげています(55頁)。洋楽については新譜のレンタルを禁止するようになって却って日本国内の洋楽需要が一気にしぼんだという経験を踏まえないあたりは、文化の違いかもしれません。

 それはともかく、レコード業界のトップが、「レンタルCD市場が存在する」ことを日本国内でPC向け配信が成功しない最も大きな要因と捉えているようでは、先が思いやられます。

 まず言えることは、「日本国内でPC向け配信が成功しない」のを「レンタル市場」に転嫁する前に、少なくとも欧米でPC向け配信をしている楽曲については日本でもPC向け配信を行うことが先決だということです。Bob DylanもJames Bluntも日本人にはダウンロードさせないくせに、他人のせいにするなといいたいところです。商品のラインナップが貧弱なサービスが顧客から見向きもされないのは当然だといえます。

 次に言えることは、日本国内でのPC向け配信を欧米並みに成功させたいのであれば、料金を欧米並みに引き下げるべきだということです。欧米並みの料金(1曲 99セント程度)であればCDシングル(1泊2日で150円程度)と十分価格で対抗できます(カップリング曲や、リミックスバージョン、インストゥルメンタルには関心がない人が多いですから。)。割高感のあるサービスが顧客から敬遠されることもまた当然のことといえます。

 さらに言えることは、日本国内でのPC向け配信を成功させたいのであれば、PCに高級な音響機器をつなげて音楽を楽しんでいる人向けに、音質劣化のない、非圧縮型のデータ配信をも行うことが先決です。住宅環境がそれほどよくない日本では、お金が惜しくて音楽CDを買えないわけではなくて、買っても置くところがないから音楽CDを買えないという人がそれなりにいます。彼らは、通常のCDの価格と同程度の価格であれば音源データを購入することは吝かではないのですが、残念ながらPC向け配信ですら音質劣化を伴う圧縮データしか配信していないので、これを購入することに躊躇を覚えてしまうのです。iPod等の携帯型プレイヤーで音楽を聴く場合は、静謐な環境下で聴くことを必ずしも予定していないので、mp3やAACでも我慢できますが、PCで音楽を聴く場合は、静謐な環境下で聴くことを想定している場合がしばしばあるので、mp3やAAC等では我慢できない音楽ファンも少なくないのです。

 もう一つ付け加えるならば、日本国内でのPC向け配信を成功させたいのであれば、利用者側のプラットホームをWindows XP以降に限定しないことが必要です。日本でもオフィス向けを含めたPC市場ではWindowsOSのシェアが圧倒的ですが、主として音楽配信を受信し再生することが予定されている家庭用PCではMacOSのシェアはそれなりにありますし、音楽愛好家にターゲットを絞ると、そのシェアはさらに上昇します。それなのに、MacOSに対応しているPC向け配信はiTMSだけ。これではPC向け配信の普及が思うように進まないのも宜なるかなというところです。

 最後に、ジョン・ケネディ繋がりで、次のような言葉をレコード業界に送りたいと思います。
 "Ask not what your consumers can do for you - ask what you can do for your consumers."  

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04/17/2006

Where does our money go?

 知財立国、コンテンツ立国を目指して法制度等の整備を行うにあたっては、現状の把握が不可欠です。しかしながら、各コンテンツ類型ごとに、通常、エンドユーザーが正規商品を購入するために支出した金銭を、どのような人がどのような割合で収受しているのかということについての資料が不足しているのではないかという気がしてなりません。

 優れたアーティストがアルバイトをせずに創作活動だけで生活できるようになるということは目標として持っていてもよいのですが、その目標を実現する手段として、各コンテンツについてエンドユーザーが支出する金額を高める方向に向けて幾ら法整備を行っても、エンドユーザーからアーティストにお金が流れていくまでに多段階に中間搾取が行われる仕組みが改善されなければ、結局アーティストが受け取るべきお金は(さして)増えないということだって、十分考えられるのです。そういう意味では、アーティストに届くお金を増やすためには、却って著作権等による排他権、独占権を緩和して、「中間段階」における競争を促した方がよいということだってあり得るのです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:14 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/14/2006

第1回のゼミ

法学部の事務室には、大学の掲示板に貼って頂くようにお願いしたのですが、学生から問い合わせを受けたので、こちらにも掲示しておきます。


 第1回のゼミは4月18日に行います。


 第1回目は、著作権法の全体像について話を進めます。

 その際、抽象的に考えてもつまらないので、J-Fiveの「Modern Times」のプロモーション・ビデオを日本国内のウェブサーバにアップロードしてインタラクティブ配信をするためには、誰と誰からどのような権利について許諾を受けなければならないかを考えてみて下さい。

 なお、上記プロモーションビデオは、画面が小さくてもよければ、
http://www.jfivemusic.com/www/index2.phpにアクセスし、上部の「videos」と書かれたボタンをクリックすると表示されるページからアクセスすると、オンライン上で無償で視聴することが可能です。

Posted by 小倉秀夫 at 11:20 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/29/2006

投資すべき対象

 地上波デジタルへの転換のために放送局も一般の視聴者も新たな投資をしなければならないのだとすると、その投資を地上波デジタルではなく衛星放送に向けた方がよほど効率的なのではないかと思う今日この頃です。

 今後のテレビ放送のあり方というものを考えた場合に、「ローカルテレビ局が倒産せずに存続する」という要請は本来優先順位が低いものであるはずなのに、この要請の優先順位を高めてしまった(といいますか、これを至上命題にしてしまった)がために、東京キー局が制作したテレビ番組は東京キー局自身が日本全国に向けて放送するという当たり前のことを許さないのが現在の日本の放送行政です。その結果、地上波デジタルに対応するために相当の投資を行っても、東京圏外に居住している人々は、東京キー局が制作したテレビ番組を視聴できるか否かが専ら自己の居住地域をカバーしているローカルテレビ局がそのテレビ番組を再送信してくれるか否かにかかっているという不自由な状況から脱出できないのです。

 東京キー局は、東京圏内で地上波で放送している番組を衛星放送で日本全国に向けて放送するというのは今すぐにでも技術的には可能であるのに(東京キー局は、「BSデジタル」という不良資産を抱えており、おそらくこれを流用することが可能だと思います。)、ローカルテレビ局の既得権益に配慮してそれを行わず、その結果、中央と地方の情報格差を生じさせています。

 私は、地方在住者が何故もっとこのことに怒り、声を上げないのか、不思議でたまりません。

Posted by 小倉秀夫 at 08:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

パブコメ to 知的財産戦略本部 in March 2006

今回は、時間が余りなかったので、下記の内容で提出しました。


総論

 残念ながら、我が国のコンテンツホルダーは、権利保護の強化等の環境整備を行っても、これを適切に活用して「知財立国」を実現する意思も能力も乏しいことが、既に明らかとなっています。「知財立国」の推進役を、既存のコンテンツホルダーからITベンチャーや情熱的な個人へと移行させる方が効果的であるように思います。コンテンツの創作に人的又は物的な資源を投資した者に対し当該コンテンツの活用により生じた利益の一部を還元するシステムはなおも維持しつつ、ITベンチャーや情熱的な個人がコンテンツを活用することをコンテンツホルダーが妨害できない環境作りを行うことこそ、知的財産戦略本部が検討すべきことのように思います。
 また、近時、知的財産権(特に、著作権)を、コンテンツ等の流通を妨げるために活用する例が目立ちます。知的財産戦略本部におかれましては、そのようなコンテンツ等の流れを目詰まりさせるものを除去することにご尽力頂ければ幸いです。

日本の大衆音楽の世界への紹介の推進

 日本のレコード会社には日本の大衆音楽を世界に流布させる意思も能力も乏しく、その結果、レコード輸入権を創設しても、日本の大衆音楽は、そのレベルの高さにもかかわらず、世界的なヒットにならないまま空しく月日が過ぎています。日本のレコード会社は、自社が権利を保有する日本の楽曲を日本国外の人に聴いてもらう努力を十分に行っていないのだから、それは当然すぎる結果だと言えます。知財戦略本部では「世界への発信を強化する」ということを検討課題として掲げていますが、現行法の下でこれを最も簡単にできるはずのレコード会社がこれをしようとしないのですから、「世界への発信を強化する」との政策目標を実現するためには、レコード会社以外の者が日本の大衆音楽を世界に向けて発信できるような環境作りを行うことが有効です。
 そのためには、ITベンチャーや情熱的な個人が、世界中の人に聴いてもらいたいと思う日本の楽曲をインターネットラジオを通じて世界中に発信できるような環境作りを行うことが簡便です。そのためには、レコード製作者等の許諾を得なくとも行える「放送」「有線放送」の定義を条約上許されるぎりぎりの線まで拡張する等の法的整備を行うことが求められます(そしてそれは、「国際的な著作権制度の調和を推進する」「公共ネットワークを活用したコンテンツ流通を促進する」「コンテンツ流通のためのシステム整備を行う」ことに繋がります。)。さらに、インターネットラジオ放送局の支払うべき利用料が、広告・視聴料の有無・価格やアクセス数等から予想される収益から捻出できる範囲内に収まるように、著作権等の管理事業者等への働きかけを行うことが、知的財産戦略本部に求められます。
 また、日本語が得手ではない人々が世界中には多いと思われますので、日本の大衆音楽を世界中に紹介するためには、その歌詞を各国語に翻訳してオンライン上で掲載することなどが有益です。しかし、日本のレコード会社はそのような作業を自主的に行ってきませんでした。これでは、高い水準にある日本の大衆音楽に世界中の音楽愛好家が関心を持てないのは無理もありません。
 とはいえ、世界中にはたくさんの言語があるのでレコード会社で各国語の翻訳を用意するのは大変なことだと思います。だとすれば、歌詞の翻訳はレコード会社に委ねるのではなく、各国語を得意とするITベンチャーや情熱的な個人等に任せてしまうのが効率的です。
 現在、歌詞の翻訳については、日本音楽著作権協会等の管理の対象からもはずれており、個別に歌詞の著作権者を捜し出して許諾を得なければなりませんが、そのためのコストというのは全くの無駄です。各国語への翻訳を含めた利用許諾についての簡便なシステム作りを行うことが急務といえます。

「カラオケ法理」の特に「適法な利用行為への間接的寄与行為の違法化機能」の排除

 米国法でも英国法でも、第三者による著作物等の利用行為に間接的に寄与する行為が間接侵害(2次侵害)として違法とされるのは当該利用行為が違法である場合に限定されています。しかし、日本のいわゆる「カラオケ法理」は、第三者による著作物等の利用行為自体は適法な場合であってもこれに間接的に寄与する行為を違法としてしまいます。国際的な著作権制度の調和を推進するという観点からは、第三者による著作物等の適法な利用行為に寄与する行為について、間接寄与者を著作物等の利用者と擬制することによってこれを違法化することは許されないということを法文で明示することが望まれます。

日本国民を特定の情報から疎外するために施される技術的手段について

 著作権法の究極の目的は我が国の文化の発展です。したがって、著作権法が我が国の文化の発展を阻害するために活用されるとすれば、それはまさに本末転倒です。
 しかし、今日、我が国に在住する人々を欧米の文化から隔絶させ、我が国の文化の発展を阻害するために著作権法が活用されています。
 例えば、インターネットを利用した音楽配信やDVDソフトなどでは、欧米に在住していればわずかな対価と引き替えにこれを視聴することができるのに、日本に在住していたのではお金を支払っても視聴ができない場合が少なからずあります(といいますか、欧米諸国でのiTunes Music Storeでのダウンロード件数が上位にランクされている楽曲の大部分は、日本のiTunes Music Storeではダウンロードできません。)。コンテンツがアナログな媒体で流布されていた時代であれば当該媒体を並行輸入等してしまえばこのような民族差別を乗り越えて我々日本国民も先進的な情報を享受することができたのですが、コンテンツがデジタルな媒体で流布されることが広まると、コンテンツホルダーによる民族差別を乗り越えることが困難となり、我が国の国民だけが他の先進諸国の国民の間で広く享受されている情報から隔離されるという事態が現実的に発生し得ます。
 日本政府は、特定の情報を日本国民に対しては享受させないこととしている欧米のコンテンツ事業者等に対して強く働きかけてその是正を求めるとともに、是正に応じないときは、日本国民にそのコンテンツを視聴させないために施されている技術的手段を解除することを合法化するとともに、当該コンテンツについて強制許諾を行うような法律を制定すべきだと考えます。「お金をもらっても日本在住者になど自分たちが権利を保有している楽曲を聴かせたくない」等という権利者のよこしまな意図を法的に保障してあげる必要があるのか大いに疑問です。

コンテンツホルダーに長期的な視野を持たせるための教育や研修を実施する

 我が国の著作権等の保有者には、第三者に著作権等を利用させないことが著作権等を保護することだと勘違いしている人がまだまだ多く、そのために折角のIT技術の発展がコンテンツ産業の発展に繋がっていません。例えば、東京のキー局で制作されたテレビ番組が、衛星放送やインターネットを通じて、直接日本中の視聴者に届くようになれば、中央と地方との情報格差も小さくなりますし、東京キー局で制作した番組を転送するだけで距離を得ている系列ローカルテレビ局を中抜きすることができれば、優れた番組を制作したテレビ局やその番組に出演したタレント等の利益にも繋がるし、ローカルテレビ局が生き残りのために独自番組をたくさん作るようになれば、それだけアーティスト等の仕事も増えていきます。
 政府として、著作権等の保有者に対し、その著作権等を眠らしておくのではなく、活用することこそが大切なのだ、自分たちで十分な活用が果たせないのであればこれを上手に活用してくれる第三者に委ねるべきなのだということを十分に教育することが必要だと思います。

ファイル交換ソフトについて

 ファイル交換ソフト等が著作権侵害行為に用いられることを少なくするためには、ファイル交換ソフト等を頒布しまたは検索用中央サーバ等を運営しても適法となる条件を明確化することが有益である。どこまでの対策を取ったら適法となるのかが明示され、かつ、その基準が構成かつ遵守可能なものであれば、その基準を満たした商品・サービス等が開発され、その結果、ファイル交換ソフト等による著作権侵害行為が、ゼロにはならないとしても、相当程度減少することが期待できます(現状では、その基準が明らかではないので、著作権侵害等に使用される機会を減少させるために相当の投資を行うことを躊躇せざるを得ません。)。

取扱商品等の特定または広告のための利用の適法化

 オンラインを通じてコンテンツを流通させるためには、コンテンツの一部を試聴ないし試読させることが求められますが、これを実現するためには当該コンテンツの一部を送信可能化することが必要となります。また、オンラインを通じて登録商標付きのコンテンツや商品を販売するには、当該登録商標を当該コンテンツや商品の特定ないし広告のためにウェブサイト上に表示することが必要となります。このような種類のコンテンツ等の利用は当該コンテンツ等の流通を促進し、もって当該コンテンツ等の権利保有者の正当な利益を増大させることこそあれ、低下させることはありません。しかし、一部のコンテンツホルダー等は、コンテンツ等の流通を不当に自己の支配下におきたいがために、このような取扱商品等の特定または広告のために、例えば、オンライン通販事業者等が、取扱い商品等の登録商標をウェブ上に表示したりコンテンツの一部を試聴ないし試読させることの停止を求める例があると聞き及んでいます。
 著作権をはじめとする知的財産権は正規商品の市場での流通を阻害することまでも正当化するものでは本来ないので、正規商品をオンライン通販等により流通させるために必要または有益な著作物ないし商標等の利用については、権利侵害とはしない旨の立法が望まれます。

美術館等に収蔵されている美術品等の模写の機会を与える。

 芸術的な才能を磨くためには先人の作品をまねることがその近道であることは古今東西共通しています。そのため、欧州の美術館等においては、展示されている作品を入館者がその場で模写することが認められています。日本でも、クリエイターの育成のために、美術館等に収蔵されている美術品等を模写する機会を国民に保障するための施策作りが求められるように思います。
 
「著作物」の再販価格指定制度について

 「著作物」に関して例外的に再販価格を指定することが許容されている趣旨は、国民が多様な「著作物」に触れる機会を確保し、多様な「著作物」を市場に流通させることにあります。従って、「著作物」の再販価格指定制度を維持するのであれば、多様な「著作物」が市場に流通するのを阻害する目的で著作権(著作者人格権や、著作隣接権を含む。)を活用することを同時に許すことは相互矛盾であり許されるべきではありません。
 あるいは、著作物のオンライン配信についての許諾システムが整備されるのであれば、「著作物」の再販価格制度を維持せずとも、市場で流通する「著作物」の多様性を確保できるかもしれません。現在のシステムですら、発行部数の少ない学術書などを購入前に手に取ってみて確かめることができるのはある程度のレベルの大学周辺の書店や大都市に所在する大型店舗しかないのですし、ヒットチャートに上らないようなマイナーなCDについてまで視聴させてくれるレコードショップ等も滅多にないのですから、試聴・試読の機会を提供するための著作物等の利用を合法化した方が、国民が多様な「著作物」に触れる機会を確保し、多様な「著作物」が市場に流通するようにするという目的には合致しているとも言えるように思います。


中間搾取者の排除

 日本のコンテンツ産業に関していえば、クリエイターとエンドユーザーの間に様々な人々が入り込み、その結果、エンドユーザーがコンテンツの対価として支払った金額のごく一部しかクリエイターに届かないのが現状です。知的財産戦略本部におかれましては、どのような中間者が介在しているのかを分析した上で、それらの中間者の介在をなるべく少なくし、エンドユーザーが支払った対価がクリエイターに届くまでの間で失われてしまう割合をなるべく小さくするような方策を考えて頂ければ幸いです。

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03/28/2006

「知的財産推進計画2006」の策定に向けた意見募集(途中)

総論

 残念ながら、我が国のコンテンツホルダーは、権利保護の強化等の環境整備を行っても、これを適切に活用して「知財立国」を実現する意思も能力も乏しいことが、既に明らかとなっています。「知財立国」の推進役を、既存のコンテンツホルダーからITベンチャーや情熱的な個人へと移行させる方が効果的であるように思います。コンテンツの創作に人的又は物的な資源を投資した者に対し当該コンテンツの活用により生じた利益の一部を還元するシステムはなおも維持しつつ、ITベンチャーや情熱的な個人がコンテンツを活用することをコンテンツホルダーが妨害できない環境作りを行うことこそ、知的財産戦略本部が検討すべきことのように思います。

日本の大衆音楽の世界への紹介の推進

 日本のレコード会社には日本の大衆音楽を世界に流布させる意思も能力も乏しく、その結果、レコード輸入権を創設しても、日本の大衆音楽は、そのレベルの高さにもかかわらず、世界的なヒットにならないまま空しく月日が過ぎています。日本のレコード会社は、自社が権利を保有する日本の楽曲を日本国外の人に聴いてもらう努力を十分に行っていないのだから、それは当然すぎる結果だと言えます。知財戦略本部では「世界への発信を強化する」ということを検討課題として掲げていますが、現行法の下でこれを最も簡単にできるはずのレコード会社がこれをしようとしないのですから、「世界への発信を強化する」との政策目標を実現するためには、レコード会社以外の者が日本の大衆音楽を世界に向けて発信できるような環境作りを行うことが有効です。
 そのためには、ITベンチャーや情熱的な個人が、世界中の人に聴いてもらいたいと思う日本の楽曲をインターネットラジオを通じて世界中に発信できるような環境作りを行うことが簡便です。そのためには、レコード製作者等の許諾を得なくとも行える「放送」「有線放送」の定義を条約上許されるぎりぎりの線まで拡張する等の法的整備を行うことが求められます(そしてそれは、「国際的な著作権制度の調和を推進する」「公共ネットワークを活用したコンテンツ流通を促進する」「コンテンツ流通のためのシステム整備を行う」ことに繋がります。)。さらに、インターネットラジオ放送局の支払うべき利用料が、広告・視聴料の有無・価格やアクセス数等から予想される収益から捻出できる範囲内に収まるように、著作権等の管理事業者等への働きかけを行うことが、知的財産戦略本部に求められます。
 また、日本語が得手ではない人々が世界中には多いと思われますので、日本の大衆音楽を世界中に紹介するためには、その歌詞を各国語に翻訳してオンライン上で掲載することなどが有益です。しかし、日本のレコード会社はそのような作業を自主的に行ってきませんでした。これでは、高い水準にある日本の大衆音楽に世界中の音楽愛好家が関心を持てないのは無理もありません。
 とはいえ、世界中にはたくさんの言語があるのでレコード会社で各国語の翻訳を用意するのは大変なことだと思います。だとすれば、歌詞の翻訳はレコード会社に委ねるのではなく、各国語を得意とするITベンチャーや情熱的な個人等に任せてしまうのが効率的です。
 現在、歌詞の翻訳については、日本音楽著作権協会等の管理の対象からもはずれており、個別に歌詞の著作権者を捜し出して許諾を得なければなりませんが、そのためのコストというのは全くの無駄です。各国語への翻訳を含めた利用許諾についての簡便なシステム作りを行うことが急務といえます。

「カラオケ法理」の特に「適法な利用行為への間接的寄与行為の違法化機能」の排除

 米国法でも英国法でも、第三者による著作物等の利用行為に間接的に寄与する行為が間接侵害(2次侵害)として違法とされるのは当該利用行為が違法である場合に限定されています。しかし、日本のいわゆる「カラオケ法理」は、第三者による著作物等の利用行為自体は適法な場合であってもこれに間接的に寄与する行為を違法としてしまいます。国際的な著作権制度の調和を推進するという観点からは、第三者による著作物等の適法な利用行為に寄与する行為について、間接寄与者を著作物等の利用者と擬制することによってこれを違法化することは許されないということを法文で明示することが望まれます。

日本国民を特定の情報から疎外するために施される技術的手段について

 著作権法の究極の目的は我が国の文化の発展です。したがって、著作権法が我が国の文化の発展を阻害するために活用されるとすれば、それはまさに本末転倒です。
 しかし、今日、我が国に在住する人々を欧米の文化から隔絶させ、我が国の文化の発展を阻害するために著作権法が活用されています。
 例えば、インターネットを利用した音楽配信やDVDソフトなどでは、欧米に在住していればわずかな対価と引き替えにこれを視聴することができるのに、日本に在住していたのではお金を支払っても視聴ができない場合が少なからずあります(といいますか、欧米諸国でのiTunes Music Storeでのダウンロード件数が上位にランクされている楽曲の大部分は、日本のiTunes Music Storeではダウンロードできません。)。コンテンツがアナログな媒体で流布されていた時代であれば当該媒体を並行輸入等してしまえばこのような民族差別を乗り越えて我々日本国民も先進的な情報を享受することができたのですが、コンテンツがデジタルな媒体で流布されることが広まると、コンテンツホルダーによる民族差別を乗り越えることが困難となり、我が国の国民だけが他の先進諸国の国民の間で広く享受されている情報から隔離されるという事態が現実的に発生し得ます。
 日本政府は、特定の情報を日本国民に対しては享受させないこととしている欧米のコンテンツ事業者等に対して強く働きかけてその是正を求めるとともに、是正に応じないときは、日本国民にそのコンテンツを視聴させないために施されている技術的手段を解除することを合法化するとともに、当該コンテンツについて強制許諾を行うような法律を制定すべきだと考えます。「お金をもらっても日本在住者になど自分たちが権利を保有している楽曲を聴かせたくない」等という権利者のよこしまな意図を法的に保障してあげる必要があるのか大いに疑問です。

 コンテンツホルダーに長期的な視野を持たせるための教育や研修を実施する

 我が国の著作権等の保有者には、第三者に著作権等を利用させないことが著作権等を保護することだと勘違いしている人がまだまだ多く、そのために折角のIT技術の発展がコンテンツ産業の発展に繋がっていません。例えば、東京のキー局で制作されたテレビ番組が、衛星放送やインターネットを通じて、直接日本中の視聴者に届くようになれば、中央と地方との情報格差も小さくなりますし、東京キー局で制作した番組を転送するだけで距離を得ている系列ローカルテレビ局を中抜きすることができれば、優れた番組を制作したテレビ局やその番組に出演したタレント等の利益にも繋がるし、ローカルテレビ局が生き残りのために独自番組をたくさん作るようになれば、それだけアーティスト等の仕事も増えていきます。
 政府として、著作権等の保有者に対し、その著作権等を眠らしておくのではなく、活用することこそが大切なのだ、自分たちで十分な活用が果たせないのであればこれを上手に活用してくれる第三者に委ねるべきなのだということを十分に教育することが必要だと思います。

ファイル交換ソフトについて

 ファイル交換ソフト等が著作権侵害行為に用いられることを少なくするためには、ファイル交換ソフト等を頒布しまたは検索用中央サーバ等を運営しても適法となる条件を明確化することが有益である。どこまでの対策を取ったら適法となるのかが明示され、かつ、その基準が構成かつ遵守可能なものであれば、その基準を満たした商品・サービス等が開発され、その結果、ファイル交換ソフト等による著作権侵害行為が、ゼロにはならないとしても、相当程度減少することが期待できます(現状では、その基準が明らかではないので、著作権侵害等に使用される機会を減少させるために相当の投資を行うことを躊躇せざるを得ません。)。

取扱商品等の特定または広告のための利用の適法化

 オンラインを通じてコンテンツを流通させるためには、コンテンツの一部を試聴ないし試読させることが求められますが、これを実現するためには当該コンテンツの一部を送信可能化することが必要となります。また、オンラインを通じて登録商標付きのコンテンツや商品を販売するには、当該登録商標を当該コンテンツや商品の特定ないし広告のためにウェブサイト上に表示することが必要となります。このような種類のコンテンツ等の利用は当該コンテンツ等の流通を促進し、もって当該コンテンツ等の権利保有者の正当な利益を増大させることこそあれ、低下させることはありません。しかし、一部のコンテンツホルダー等は、コンテンツ等の流通を不当に自己の支配下におきたいがために、このような取扱商品等の特定または広告のために、例えば、オンライン通販事業者等が、取扱い商品等の登録商標をウェブ上に表示したりコンテンツの一部を試聴ないし試読させることの停止を求める例があると聞き及んでいます。
 著作権をはじめとする知的財産権は正規商品の市場での流通を阻害することまでも正当化するものでは本来ないので、正規商品をオンライン通販等により流通させるために必要または有益な著作物ないし商標等の利用については、権利侵害とはしない旨の立法が望まれます。

美術館等に収蔵されている美術品等の模写の機会を与える。

 芸術的な才能を磨くためには先人の作品をまねることがその近道であることは古今東西共通しています。そのため、欧州の美術館等においては、展示されている作品を入館者がその場で模写することが認められています。日本でも、クリエイターの育成のために、美術館等に収蔵されている美術品等を模写する機会を国民に保障するための施策作りが求められるように思います。

中間搾取者の排除

 日本のコンテンツ産業に関していえば、クリエイターとエンドユーザーの間に様々な人々が入り込み、その結果、エンドユーザーがコンテンツの対価として支払った金額のごく一部しかクリエイターに届かないのが現状です。知的財産戦略本部におかれましては、どのような中間者が介在しているのかを分析した上で、それらの中間者の介在をなるべく少なくし、エンドユーザーが支払った対価がクリエイターに届くまでの間で失われてしまう割合をなるべく小さくするような方策を考えて頂ければ幸いです。

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03/16/2006

台湾におけるP2P

 台湾では、ファイル共有ソフトの提供者は、無罪になったり、共同正犯として有罪になったり、不安定な立場におかれているようです。
 http://d.hatena.ne.jp/OguraHideo/20060315/p1

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03/14/2006

Lexis判例速報2006年3月号

 Lexis判例速報2006年3月号に、録画ネット事件知財高裁決定と、ドトールコーヒーパンフレット事件地裁判決についての解説を載せました。

 興味がおありの方はお読み頂ければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:02 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/10/2006

Winnyの適法な用途

 2006年3月10日付日経新聞朝刊(第14版)の43頁によれば、

愛媛県警捜査一課の警部(42)の私物パソコンから捜査資料がネットの流出した問題で、警部が「捜査関連情報を入手するなど仕事に役立つと思いウィニーを取り込んだ」と話していることが九日分かった。
とのことです。

 すなわち、県警の捜査一課の警部という要職にある方ですら、Winnyは専ら著作権侵害行為にのみ用いられるソフトではなく、捜査関連情報を入手するなどの有益な用途にも実際に用いられるものであるとの認識を有していたということのようです。これで大手をふるって「侵害専用品ではない」ということができそうです。

 ところで、私は頑固なMacユーザーなのでWinnyは使用したことがないのですが、Winnyで入手できる「捜査関連情報」ってどんなものなのでしょう?

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03/04/2006

「カラオケ法理」は必要悪だったのか

 いわゆる「カラオケ法理」の主たる機能の一つに、適法な行為に間接的に関与する行為を違法化する機能があります(特別の規定がない限り適法な行為を幇助しても適法であることとは大違いです。また、米国の寄与侵害責任、代位責任、誘因責任とも、「違法な行為」にも関与していることが責任の前提です。)。

 この適法な行為に関与する行為を違法化する機能の嚆矢は、なんといってもクラブキャッツアイ事件最高裁判決です。カラオケスナックで楽しそうにカラオケを楽しんでいる客のほとんどは、「公衆に直接聞かせる」目的もなしに、無償かつ非営利目的で歌を歌っています。従って、客による歌唱自体は著作権侵害とはなりませんから、客による歌唱を幇助したということでカラオケスナックの経営者に幇助責任を問うことはできなかったのです。だからこそ、最高裁は、JASRACの要望を聞き届けるために、カラオケスナックの経営者を歌唱の主体と認定するという荒技を用いる必要があったのです。

 しかし、翻って考えてみると、最高裁判所はそのような禁じ手のような技法を用いてまでクラブキャッツアイ事件でJASRACを勝訴させる必要があったのかというと、それは大いに疑問だったりします。

 クラブキャッツアイ事件当時、音楽著作物(特にカラオケでの歌唱の対象となるような大衆音楽)の著作権者がその音楽著作物を経済的に利用する方法としては、主として、コンサートなどでプロの歌い手に歌ってもらい、レコード等に収録して広く頒布してもらい、テレビやラジオで放送してもらう等することであって、それらを通じてその音楽のファンになった大衆がその歌を口ずさむこと自体から収入を得るということはそもそも収入源としては想定されていませんでした。そして、その楽曲のファンがカラオケスナック等でその歌を気持ちよく歌うということは上記レコード等の売り上げやコンサート収入、テレビ・ラジオ等のスポンサー料等を減少させるものではなく(注1)、従って、著作権者の著作権収入を減少させるものではありませんでした。したがって、クラブキャッツアイ事件でJASRACを敗訴させた結果カラオケスナックにおける客の歌唱に関してJASRACが著作権使用料の支払いを受けられないということになったとしても、それにより作詞家、作曲家たちの創作へのインセンティブが低下するということはなかったということができます(所詮、現状維持なのですから。)。

 もちろん、作詞家・作曲家の創作へのインセンティブをより高めるために、カラオケスナックでの客の歌唱について作詞家・作曲家等が収入を得られるようにしようという政策論議というのはあり得ると思います。しかし、そのような新たな政策を実現するのは、裁判所ではなく、議会の役割であったはずです。従って、著作権法を改正したり特別立法をしたりなどしてカラオケスナックでの客の歌唱について作詞家・作曲家等が収入を得られるようにするというのはそれはありだと思うのですが、裁判所が過度に技巧的な解釈を行うことによって議会の承認を得ずしてカラオケスナックでの客の歌唱について作詞家・作曲家等が収入を得られるようにしてしまうというのは、やはりまずかったのではないかと思います。

 今後、著作権法についても間接侵害の規定を設けることの当否が議論されることになるかとは思います。その際には、適法な行為への関与を違法化する機能は「カラオケ法理」から継承しないようにしてもらいたいと思います。

注1

 その後しばらくして、むしろ、新曲をいち早くカラオケで披露したいがために音楽CDを購入することが広く行われるようになり、それが90年代前半の音楽CDバブルを牽引したことは記憶に新しいです。

【今日聴いた曲の中でお勧めの1曲】


The World Is Mine

    by David Guetta

Posted by 小倉秀夫 at 05:45 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

02/23/2006

別館のリニューアル

以前よりはてなの方にもっていた別館を、文献情報の備忘録としてリニューアルすることにしました。

Posted by 小倉秀夫 at 07:33 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/22/2006

フランスP2P合法化動議騒動の後日談

 昨年末、フランスで、P2Pを用いたコンテンツのダウンロードを合法化する修正案を含む著作権法改正法案が国民議会で可決され、大騒ぎになりました。

 その後日談が、fenestraeさんのブログに掲載されています。

 騒動の発端は、著作権法による規制の強化を図った政府側が策を弄して著作権法改正法案を遠そうとしたところ、与党議員の反乱にあって、却って著作権法による規制を緩和する修正案が通ってしまったという「策士策に溺れる」型だったようで、著作権法による規制の強化を図る人達のやることというのは世の東西を問わないのだなあと感心してしまいました(日本の場合も、レコード輸入権の関係で最初の説明をごまかしてしまったため、レコード輸入権と書籍・雑誌貸与権の創設には成功したものの、その行使は事実上相当限定されてしまったし、それよりなにより著作権法による規制の強化を図る立法を推進することの政治的なリスクを高めてしまったわけで(実際、iPod課金は断念させられたわけですし)、やっぱり策に溺れてしまったのだなあと感じざるを得なかったりします。)。

Posted by 小倉秀夫 at 11:21 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/18/2006

Prof.Murai on Winny Trial

 慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純先生が、Winny事件で証言したのだそうです。この件は、壇先生はもちろん、落合先生も触れています。

 村井先生は「効率の良い情報共有のメカニズムが、著作権法違反行為を助長させることに結び付くということは理解できない」と主張されたとのことです。しかし、効率の良い情報共有のメカニズムが、著作権法違反行為を助長させることに結びつくということは理解すべきでしょう。問題は、だからといって、著作権保護という要請を重視して「効率の良い情報共有のメカニズム」を断念しなければならないのかということでしょう。私もファイルローグ事件の被告側代理人を務めていましたから、そういうメカニズムを実現しようとしている側は、著作権法違反行為を積極的に助長させようと思っているわけではなく、著作者の経済的権益を保護するための従前のシステムと「効率の良い情報共有のメカニズム」とが互いに相容れないのであれば従前のシステムを改良して「効率の良い情報共有のメカニズム」と両立できるようにしてほしい(「効率の良い情報共有のメカニズム」への流れが押しとどめようがないのであれば、いずれ従前のシステムは見直さざるを得ない)という程度だろうということは予想することができます(それを「著作権システムを崩壊させる」という意図と結びつけようと言うのは無責任な周囲(特にマスメディア。ファイルローグのときはTBS。)であって、本人は周囲に煽られてオーバーな表現をしてしまうことはあっても、もともとコンテンツ産業に恨みがあるわけではありませんから、「著作権システムを崩壊させる」こと自体に積極的な意義なんて見出していないものです。)。

 そして、この問題は、2つの正義が衝突し、それをどこで調整するのかという話ですので、一方当事者のみが非常なリスクを負い、他方当事者または利害関係者の声が直接反映されず、かつ判断者が当該正義について素人である刑事裁判において解決が図られるものではなく、公開討論やパブリックコメントなどを繰り返して様々な利害関係者の声を反映させた上で、立法的に解決されるべきものなのだろうと思います(もちろん、金子さんが匿名であったために、「刑事裁判」でしか議論の場を設けることができなかったという「事情」はあるわけですけど。)。

 村井先生はまた、検察側が、キャッシュやクラスタ化などのWinnyの個別の機能について、著作権法違反行為を助長させる目的を持って搭載されたものだと主張していることをどう思うかという質問に対して、これらの技術は「ネットワークの効率を上げるための洗練された技法であり、これを利用の目的と結び付けて考えるのは理解できない」と述べたとのことです。確かに、キャッシュ等の機能は、「ネットワークの効率を上げるための洗練された技法」といえそうです。ただ、金子さんのWinny開発の動機が匿名性の保障の側にある以上仕方がない面はあるにせよ、匿名性を排除しつつキャッシュ等の「ネットワークの効率を上げるための洗練された技法」を導入することも可能だったのではないかという気はします(例えば、特定のファイルをWinnyネットワークの外からWinnyネットワーク内に持ち込んだユーザーについてはそのID情報をメタデータとして暗号化の際に当該ファイルにくっつけるとか。)。

 なお、村井先生は「情報システムにおいては匿名性の確保は追及すべき重要性の高い技術だと説明。プライバシーの保護や、電子投票のシステムなどを考える上で、どのように匿名性を担保するのかといった研究は広く行なわれているとした」とされています。ただ、電子投票システムを考える上で必要となる匿名性とWinnyによってシステム的に保障される匿名性とは性質が異なるのは気になるところです。つまり、電子投票システムでは、個々の投票に関してその投票を行ったのがどこの誰であるのかを開票システム側で正確に把握する必要があります(投票権がない人による投票を排除したり、1人で複数回の投票を行うことを排除したりしなければなりません。)。電子投票システムにおいて要求される「匿名性」というのは、どこの誰がその投票を行ったのかという情報と、その投票の内容がいかなるものであったのかという情報とを切り離すという限度で認められるべきものです。proxyを多段階に経由させることによって誰がその情報のOriginであったのかをわからなくすることを志向するWiinyとはだいぶ方向性が異なるのではないかと思います。

【今日聴いた曲の中でお勧めの1曲】


Sing For Absolution

 by Muse

Posted by 小倉秀夫 at 11:18 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (0)

02/13/2006

Q&Aのレベル

 東京行政書士会の「著作権相談センター」がウェブサイトを開設していることを知りました。

 そのウェブサイトには、「著作権よくある質問」コーナーが設けられていました。行政書士さんのところに著作権関係の相談を持ちかける人ってこういうことを聞いているのかと若干の驚きを持ってみてしまいました。

 それ自体は「客層が違う」というだけの話なので大したことはないのですが、回答の方を見ると驚きは「若干」という範囲ではすまないように思いました。

 大学の教員は「教え子」のことを「生徒」とは呼ばない(普通は「学生」と呼びます。)ということは些末的だからいいとして、学生の論文を「記念論文集」として出版する際に校正を行うことの著作権法上の問題を説明するにあたって、法政大学懸賞論文事件高裁判決(東京高判平成3年12月19日)を踏まえないというのはどうかと思ってしまいます。

生徒の論文を校正する行為は、正当な範囲内で許可されます。つまり、生徒の著作物の内容を著しく改変しない誤字、脱字等の校正は認められますが、意味内容に重大な変更をきたすものは、同一性保持権を侵害するものと考えられます。
なんて説明だと、送りがなを変更したり、「等」の前の読点を削除したり、中黒を読点に変更したり、原文通りの改行を行わなかったりしても大丈夫なのだと勘違いされてしまいかねません。そもそも論でいけば、「正当な範囲内」であれば著作者の同意なくして著作物を改編すること許可されるという考え方がどこから発生してきたのかということ自体不思議でなりません(「やむを得ない」と「正当な範囲内」とはだいぶ異なる概念だと思います。)。

 大学の教員が学生の論文を出版するにあたっては、出版することについて個別に許諾をとらざるを得ないのですから、その際に教員側で適宜校正を行うことについて事前に包括的な同意を得ておくか、校正を行った後に当該学生に校正結果を見せて同意を得てから出版することとするかのいずれかを選択させるというのがこの種の「Q」に対する正解なんだと思うのですけど、行政書士さんにこのような質問をしてしまった大学教授の方は大丈夫だったのでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 12:23 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

02/10/2006

ライブハウス経営者の刑事責任

 平成18年2月7日に、ライブハウスの経営者が著作権法違反の疑いで逮捕されたそうです。

 ライブハウスにおいて公衆に直接聞かせる目的で実際に歌唱・演奏をしているのは当該ライブハウスを利用するアーティストの方々ですから、ライブハウスの経営者に著作権侵害違反の罪を問うには工夫が必要です。

 考えられる方法としては、

  1. 各アーティストを正犯とし、ライブハウスの経営者に幇助犯としての責任を問う
  2. 各アーティストをいわば道具として利用した間接正犯としての責任を問う
  3. いわゆる「カラオケ法理」を刑罰法規としての著作権法を適用する場面でも活用する
あたりが考えられます。

 報道の書き方を見ると、「カラオケ法理」をあっさり適用して普通の直接正犯として逮捕してしまったのではないかという気もするのですが、そうだとすると、「著作権法の規律の観点」という明文化されていない正当化要素によって、曖昧模糊とした処罰範囲の拡張を認めようとしているという点で、罪刑法定主義という観点からもかなりまずいのではないかという気がします。

 そういう意味では、起訴をする段階で幇助に落とせば問題はなくなるのですが、そうすると、刑事法的には正犯性がなくせいぜい幇助犯が成立するにすぎないのに、民事的には利用主体、侵害主体と認定できるのかという問題を生ずることになります。

 著作物等の利用行為に間接的に関与したに過ぎない者を直接の利用主体と無理矢理認定してきたツケが現れたといえなくもなさそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 06:02 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (3)

02/07/2006

Respect Your Music Campaign 案1

レコード会社の皆様

 あなたの音楽は、
  人に感動を与えたくて、
  人を幸せにしたくて、
   うずうずしています。

 あなたの音楽を、
  「廃盤」という檻から開放してあげてください。

   Respect Your Music.

「廃盤」になっている音楽をネットで配信してあげてください。

Posted by 小倉秀夫 at 01:55 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

02/06/2006

テレビ局がこぞってIPマルチキャスト放送の自由化に反対する理由

 ゲームラボの3月号の原稿は、South by Southwest (SXSW)の話題から入って、IPマルチキャスト放送のお話を書きました。

 系列ローカルテレビ局という「中」を抜くだけでなく、そもそもテレビ局という「中」を抜くこともあり得るのだよと言うことまで軽く触れています。

Posted by 小倉秀夫 at 11:08 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/29/2006

「Respect Your Music」キャンペーン

 「Respect Your Music」キャンペーンを開いて、廃盤レコードの音源のデジタル音楽配信を請願する運動を組織的に行うという手もあるのではないかと思ったりもします。

 知的財産戦略本部や経団連なども、あっさり協力してくれるかも知れませんし。

 このあたりの話題についてですけど。

Posted by 小倉秀夫 at 11:14 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

プログラマの倫理と引き返す仕組み

 昨日、第1回P2Pインフラ研究会に出席しました(生・金子さんと、生・壇先生を初めて拝見しました。)。

 Winnyに限らず、利用者側の「倫理」次第では、社会に多大なる害悪をもたらしてしまう可能性のあるプログラムというのはままあると思います。当該プログラムを公開する前からそのプログラムが悪用されることによってもたらす害悪が、それが善用されることによって社会にもたらす利益よりも上回ることが予想できる場合もあるし、予想に反して、その悪用がもたらす害悪が善用のもたらす利益を大幅に上回ってしまう場合もあるでしょう。

 そのような可能性を内包するプログラムを改正するにあたっては、そのプログラムが社会的に許容される限界を超えて悪用による害悪を生み出してしまうものであることが実際の運用の結果明らかとなった場合には、そのプログラムの利用をできなくし、または悪用の原因となっている機能を削除または改善することができるようにするべきなのではないでしょうか。もちろん、そのプログラムを悪用して社会に多大な害悪をもたらしている一部の利用者が任意にそのプログラムの使用をやめたり、より悪用しにくバージョンにバージョンアップするとは考えがたいので、以前Netscapeがそうしていたように、各バージョンの使用期間を短く設定し、その時点でプログラムの作者が最適だと考えるバージョンしか使えなくする等の工夫をすることが、プログラマーの倫理として必要になってくるのではないでしょうか。

 そういうことをつらつらと考えていました。

【今日聞いた中でお勧めの1曲】


J'en sais rien

by Matthieu Mendes

Posted by 小倉秀夫 at 05:23 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

01/25/2006

「真理の道」も金次第

 ローマ教皇庁が、ローマ教皇の言葉や著作について印税をかける方針を採用したとのニュースが世界中で話題になっています(産経新聞TimesOnLine)。

 そんなときこそ、「世界の宝」の抗弁の出番かもしれません。

Posted by 小倉秀夫 at 07:57 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

01/24/2006

An intellectual propertyism is a religion?

 知的財産国家戦略フォーラムが提出した「知的財産基本法の施行状況に対する意見」がアップロードされています。まあ、なんといいますか、ここまで机上の空論ぽっさがにじみ出る意見書というのも珍しいのではないかという気分でいっぱいになります。

 例えば、いわく

コンテンツビジネスについても、iPod-iTunes の音楽配信サービスが世界で19番目と遅かった。日本の著作権ビジネスは世界トップクラスであるとはいえない。これは、知的財産推進計画のさらなる実施が必要であることを意味する。
というけれども、知的財産推進計画をさらに実施していったら、著作隣接権が競争制限的に使われることを抑止してくれるようになるのですか?というよりほかいないです。

 例えば、いわく

契約において弱い立場である発明者やクリエーターと対等に契約することを確約し、実行する企業は、多くの国民に告知されるようにする。具体的には、企業名の公的機関誌などでの公表や知財重視企業に対する税制優遇措置、金利補填などである。
とのことですが、契約において弱い立場の一方当事者を保護するためには、片面的強行法規を定めるのが立法の常道です。

 例えば、いわく

知財事件は経済事件であるから、裁判期間の上限を設定し、関係者が協力す
る体制とする。裁判期間は以前よりは迅速になっているが、まだビジネスを阻害する期間になっていることが多い。特に、当事者の一方が中小企業や個人である場合、裁判時間の短縮が必要である。
とのことですが、通常の民事訴訟で裁判期間の上限を設定してうまくいった例というのは私は知らないのです。そういう仕組みになったら、主たる争点で立証責任を負わない側は時間切れを狙いますね。

 例えば、いわく

現在、最高裁では判決を公開しているが、裁判の傍聴に資するように判決言
い渡し日を知らせることが必要である。また、個人投資家が増えている現状を踏まえると、裁判の開廷日を広く公表することも必要である。
とのことですが、この意見を起草した人は日本の民事裁判を傍聴したことがあるのかはなはだ疑問です。

 例えば、いわく

知的財産による保護と文化の振興の調和を目指した政策を行う。例えば、国宝については所属を問わず、無料で商標登録を行うことによって国宝のイメージを守り、国宝の粗悪模造品の製作阻止の手段などに利用する。
とのことですが、誰を商標権者にするのでしょうか?商標権者による国宝の粗悪模造品の製作は阻止しなくともよいのでしょうか?「国宝の粗悪模造品の製作」を阻止したいのであれば、商標制度を経由せずに、端的に文化財保護法制の一貫として、国法の模造品の製造についての規制立法を行うのが常道ではないでしょうか。

 例えば、いわく

知的財産基本法の目的や理念を国民に周知するために、「知的財産週間」を制定するべきである。
世界知財憲章を制定する模倣品条約に続いて、「世界知財憲章」を日本からの発議で制定する努力を開始するべきである。
とのことですが、「は〜あ〜」と脱力してしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 02:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

01/20/2006

冒認出願の場合の立証責任

 私は、知財高裁平成17年(行ケ)第10193号審決取消請求事件【アルファグリーン審決取消請求事件】において被告側代理人を務めていたのですが、同事件について無事請求棄却判決が平成18年1月19日に下されました(原告側代理人は、ライブドアvsニッポン放送事件でライブドア側の代理人を務めていた新保克芳弁護士他というのが、なんともGood Timing! )。

 法律上の争点としては、「冒認出願を理由とする無効審判における主張立証責任の分配」をどうするのかということが大きかったのですが、この点について知財高裁は、「特許法が……『発明者主義』を採用していることに照らせば、同号注1を理由として請求された特許無効審判においても、出願人ないしその承継者である特許権者は、特許出願が当該特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継したものによりされたことについての主張立証責任を負担するものと解するのが相当である」と判示してくれました。


注1 特許法第123条第1項第6号のこと

追記


 上記判決文が最高裁のウェブにアップロードされました。

Posted by 小倉秀夫 at 02:23 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/19/2006

第1回P2Pインフラ研究会

遅ればせながら、第1回P2Pインフラ研究会に参加申込みしました。

Posted by 小倉秀夫 at 12:07 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/18/2006

世界の宝

 著作権訴訟は、未だ裁判例の蓄積が十分でないこともあって、新しい法的主張が次々と当事者またはその代理人によって考え出されます。


 ある新興宗教団体の創始者(最高裁のHPでは「B」と記されています。)の講演の録音・録画物たるCD-ROM等を被告が当該宗教団体に無断でネット上で販売する行為が著作権侵害にあたるとして複製の差止、複製物の廃棄、損害賠償等を請求した事案(東京地判平成17年12月26日)において被告から出された抗弁もまた斬新です。

Bの講演記録は,世界の宝であり,一宗教法人が独断で封印すべきものではない。

 なお、裁判所は、判決理由の中では、この抗弁の当否について、何ら判断していません。

Posted by 小倉秀夫 at 07:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/17/2006

録音禁止著作物一覧

 JASRACには、「録音禁止著作物一覧」なんてものがあるようです。

 中には、ある条件の下では録音を許さないぞということで細かい条件がコメントに記されているのもあり、何があったのだろうかとつい思いを馳せてしまいます。

 例えば、「COLONEL BOGEY AND THE RIVER KWAI MARCH」については「"COLONEL BOGEY(ボギー大佐)"と"THE RIVER KWAI MARCH(クワイ河マーチ)"を結合させたいかなる新録音も認めない。映画『戦場に架ける橋』のサウンドトラックでミッチーミラー楽団が演奏した音源のみ使用可能」とのコメントが付されていますし、PADILLA, Joseの「VALENCIA」には「左記作品における高木四郎(筆名:高木史郎)の日本語訳の利用を禁ずる」とのコメントが付されています。

 こう書かれていると、却って高木史郎さんの日本語訳が見たくなります。

Posted by 小倉秀夫 at 09:59 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/08/2006

P2Pの合法化法案

 今月のゲームラボの連載は、フランスの著作権法改正問題について書きました。

 今回のこの問題で一つ面白かったのは、今回の修正案を発案したAlain Suguenot氏はUMP(民衆運動連合)所属の議員、つまりばりばりの与党議員だということです。

 消費者に有利な裁判例(どうも、昨年、モンペリエの控訴院で、商用目的がない限りP2Pを用いてのファイル交換を合法とする判決が下されたようです。)をすぐに条項化して法律に取り込むということも見習ってほしいです。

 Suguenot議員のインタビュー記事がここに掲載されているのですが、言っていることは極めてまともです。日本の与党議員の中にも、あまりにも消費者のことを蔑ろにする著作権法改正に対して修正案を突きつけるような方が現れないものでしょうか。


【今日聴いた曲の中でお勧めの1曲】


Et dans 150 ans

   by Raphaël

Posted by 小倉秀夫 at 12:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/06/2006

住友生命の音ロゴ

 巷では、住友生命の音ロゴの著作物性等が話題になっているようです。
 ただ、私的には、小泉今日子の「なんてったってアイドル」の出だしとよく似ているように思うので、この程度で著作物性を認めてしまうと、「なんてったってアイドル」の方が後行作品だったときには「なんてったってアイドル」が発禁になってしまうのかと思うと複雑な気分です(アクセス可能性は否定できないですし。)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

パブリックコメント Jan. 2006

知的財産戦略本部へのパブリックコメントですが、今回はこの程度でお茶を濁しました。


一 日本の音楽の海外での普及活動について

1  日本のポップミュージックを海外に普及させるためには、海外に住んでいる方々に日本のポップミュージックを聴いていただかなければなりません。それには、テレビやラジオなどのようにメディアの側で適宜楽曲をピックアップして流してくれる、いわゆるプッシュ型メディアに日本のポップミュージックを流すことが必要となります。

  そのためには、海外のテレビ局やラジオ局等に日本側で積極的に働きかけて、日本のポップミュージックを流してもらうという方法がまずあります。しかし、東アジア及び東南アジア以外では、そのような方法はほぼとられていないようです。

  もう一つは、日本側で日本のポップミュージックを含む音楽番組を世界に向けて発信するという方法があります。テレビやラジオなどの電波系のメディアは受信可能な地域が限定されていますので番組を世界に向けて発信することは困難なのですが、インターネット放送であれば、番組は原則として世界に向けて発信されます(例えば、英国のBBCは、ラジオ番組の大部分をインターネット経由で配信しており、その内容は日本でも聴取することができます。)。

  しかし、日本では、レコード会社等が自社が隣接権を有する楽曲についてインターネットラジオ等で放送することに対して許諾を与えないため、日本のポップミュージックはインターネット経由で海外に発信されることがほとんどないというのが実情です。

  日本のポップミュージックが世界の人々に受け入れられるようにするために、世界中の人々にまず日本のポップミュージックに触れていただくためには、インターネットラジオ等の放送局へ、その規模又は売上げに応じた合理的なライセンス料でインターネット放送についてのライセンスを付与するように日本のレコード会社等に対して指導をするとか、インターネット放送については、放送・有線放送と同様に、正規に収録された音源を用いる分には許諾をとる必要がないこととする(報酬請求権化する)ことが望まれます。

2 また、海外の人々が日本のポップミュージックを気に入り、これを購入したいと考えても、これを購入するのは楽ではありません。

 Amazon.comで購入可能な「Japan」カテゴリーの音楽CDはわずか3590点にすぎません(2005年1月1日現在)。しかも高い(2005年のオリコン・アルバムチャート年間1位の「MusiQ」(by Orange Range)が44.49ドル、同2位の「ケツメポリス4」(by ケツメポリス)が40.49ドルです。Amazon.comでは、アルバムCDが通常10〜15ドル前後で購入できることを考えると、通常商品の約4倍です。)。

 また、iTunes Music Store等の音楽配信サービスで日本のポップミュージックを購入しようと思っても、米国在住者がiTunes Music Storeを利用しても、「Japanese Pop」カテゴリーでアップロードされているのは、「The 5.6.7.8's」、「BoA」、「Haco」、「Pizzicato Five」、「Polysics」、「Puffy AmiYumi」、「Sakamoto Hiromichi」、「Utada」の8ユニットのみ、「Japan」カテゴリーでも「Buffalo Daughter」、「Cibo Matto」、「Cornelius」、「Kahimi Karie」、「Kawabata Makoto」、「Momus」、「Pizzicato Five」、「Puffy AmiYumi」、「Yoshinori Sunahara」、「Zoobombs」の10ユニットのみ(そのうち、「Puffy AmiYumi」と「Pizzicato Five」はだぶっています。)、「J-Pop」カテゴリーでも14ユニットにすぎません。

 上述のとおり、日本のポップミュージックの音楽CDはAmazon.comのような米国内の大手インターネット通販でもあまり扱われていませんし、扱われていたとしても非常に販売価格が高く、ごく一部のマニア以外は購入する気にはなれないと思いますので、iTunes Music Store等の音楽配信サービスを介して販売することは、音楽CDの販売を妨げることによる減収を招く危険は少ないといえます。したがって、レコード会社としては、もっと積極的に自社音源をiTunes Music Store等の音楽配信サービスを利用して広く世界に向けて販売してもよさそうなものなのに、現実には、上記のとおり、日本のポップミュージックはほとんど日本国外の音楽配信サービスでは購入できないという体たらくぶりです。

 知的財産戦略本部におかれましては、日本のレコード会社に対し、国外の音楽配信サービスを利用して積極的に日本国外にて日本のポップミュージックを販売するように勧告することが肝要ではないかと思います。
二 音楽コンテンツの日本国内での利活用について

 iTunes Music Store等の音楽配信サービスを利用していると、私たちは悲しい事実に気がつきます。日本の消費者だけが購入できない商品が多すぎるのです。

 iTunes Music Storeにおいては、クレジットカードのビリングアドレスの所在国毎に市場分割がなされており、日本国内にしかクレジットカードのビリングアドレスがない普通の日本人は、日本国内向けに配信されている楽曲しか購入できません。その点に関しては、アメリカ国内にしかクレジットカードのビリングアドレスがない普通の米国人は、米国国内向けに配信されている楽曲しか購入できないし、フランス国内にしかクレジットカードのビリングアドレスがない普通のフランス人は、フランス国内向けに配信されている楽曲しか購入できないという意味では対等であるとはいえます。ただ、米国国内向けに配信されている楽曲、フランス国内向けに配信されている楽曲、ドイツ国内向けに配信されている楽曲、スイス国内向けに配信されている楽曲etc.と日本国内向けに配信されている楽曲とが全く別物となっています。そのため、ほとんど国でダウンロード件数が上位10位以内に入っている楽曲が日本ではダウンロードできないという事態が頻発しています(むしろ、英米仏独などの主要国の音楽配信サービスでダウンロード件数が上位10位以内に入っている楽曲のほとんどは、日本国内ではダウンロードできないと言った方がより正確です。)。

 最近は、音楽配信サービスでしか提供しない楽曲というのも徐々にではありますが増えてきました。そのような時代において、日本国内でのみダウンロードできない楽曲があるということは、とりもなおさず、日本国民だけが特定の音楽を聴くことができなくなるということを意味します。簡単に言ってしまえば、「日本人だけが仲間はずれにされている」というのが、音楽配信サービスの現状です。

 知的財産戦略本部が目指す社会というのは、知的財産権が日本人だけを仲間はずれにすることに積極的に活用される社会ではないはずです。従って、知的財産戦略本部におかれましては、日本政府として、世界各国のレコード会社やレコード会社等が作っている組織に働きかけて、他の先進諸国向けに音楽配信を行っている楽曲については日本国内向けにも配信するように仕向けるか、彼らがそのような要求を聞き入れないようであれば、音楽配信サービスを行う場合には隣接権者の許諾を要しないとするような法改正を行っていただきたく思います。

三 貸与権
 一昨年の著作権法改正により、書籍・雑誌等の貸与も、無償・非営利でない限り、著作権者に無断で行うと著作権侵害とされることになりました。そのときは、貸与ビジネスを潰す意思は毛頭なく、貸与に関して権利集中処理機関ができるから、適切な利用料を支払えば適法に書籍・雑誌等を貸与することは可能であるという話であったと記憶しています。
 しかしながら、書籍・雑誌の貸与に関する権利集中処理機関は未だにできていません。一部の漫画については、そういうものを作ろうという動きはあると聞いていますが、一般の書籍や雑誌等に掲載された文章や挿絵、写真等の著作権者を含めて包括的に貸与権を許諾してくれる機関がないため、公立の図書館を補完するようなサービスを民間企業が行うことすらかなわないのが実情です。これでは、「官から民へ」という現政権の主要テーマとも矛盾しています。
 つきましては、知的財産戦略本部におかれましては、出版社や著作権者団体等に対して、期限を明示して上記権利集中処理機関による包括的な利用許諾サービスを開始するように要請するとともに、期限内に、まともな利用許諾サービスが開始されない場合には、貸与については、著作権(禁止権)ではなく、報酬請求権に留めるような法改正を国会に勧告して頂ければ幸いです。
 
四 著作権者不明の場合の裁定手続
 インターネット上には、誰に著作権が帰属しているのかは不明であるが、商業的に利用する価値がある作品がたくさんあります(昨年大ヒットした「電車男」などがその例です。)。これを商業的に利用したければ、著作権法が定める裁定手続を用いればよいのですが、裁定を受けるまでには相当の時間がかかるといわれております。
 ただ、裁定を受けるまでに相当の時間がかかるのは、法律でそれだけの時間をかけることが要求されているからではなく、単なる運用の問題ですから、この運用を改善して、「権利が誰に帰属しているかはわからないが優れた作品」が適切に利活用されるようにして頂ければ幸いです。
 例えば、その1案としては、著作権者及びその帰属先が一般的な検索エンジンを用いても探知できない作品については、これを利用したい人が文化庁に裁定の申し出をすると、文化庁が開設するウェブサイトに、そのような裁定申出がなされた旨及び著作権者に関する情報を求める旨の公告を行い、一定期間(2週間程度)が経過しても有益な情報が送られてこなかったときには、使用料の決定と同時に裁定を下すこととする等というものがあり得るかと存じます。
 
五 著作権等の保護期間
 クリエイターは、自分の死後50年後、75年後のことを考えて創作活動を行うか否かを決定しているわけではないし、企業だって、そんなに長い期間その作品が商業的価値を持ち続けることを前提にクリエイターないし作品に投資するわけではないので、著作権等の保護期間を延長することは創作のインセンティブを高めることにはなりません。他方、著作権等の保護期間を延長すると、本来パブリックドメインとなって新たな創作活動に自由に利活用できるはずのものが利活用できなくなり、却ってこれからの創作活動を阻害します。したがって、著作権等の保護期間を延長することには基本的に反対です。
 仮に、著作権等の保護期間を延長する場合には、既に創作されてしまった著作物等に関する権利保護期間を延長しても創作のインセンティブが過去に遡ることはありませんから、保護期間の延長を既に創作された著作物等にまで適用するのは不合理です。したがって、著作権等の保護期間の延長は、当該改正法の施行日以降に創作された著作物等に限定して適用されるようにすべきです。
 それはともかく、これまでの著作権法改正では何度か著作権法の保護期間が延長されており、その保護期間の延長は当該改正法施行時に著作権等の保護期間内にあった著作物等についてまで適用されています。しかし、当該著作物について著作者から著作権を買い受けた者(映画の著作物のように、著作者の参加約束を受けて、著作権を自己に原始取得させた者を含む。)は、以前の保護期間を前提に著作者に対価を支払ったにすぎません。したがって、彼らが著作権等を取得した時点での当該著作物等の保護期間を超える期間の当該著作物の利用によって得た利益を彼らが独占するのは、いわば不当な利得ということができます。つきましては、この利得部分については、著作者(またはその子孫)に返還するか、または、新しい創作者の養成のために寄付させるかして、現著作権者からはき出させるべきだと存じ上げます。 

Posted by 小倉秀夫 at 12:06 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

01/02/2006

知財戦略本部へのパブコメ in 2006草稿(1)

 パブリックコメントの草稿(ただし書きかけ)です。
 匿名の陰に隠れて他人を攻撃することに対してネガティブであってはならないという方々のお相手をAnnexでしなければならなかったり、私のメールアドレスを騙って大量にメールマガジンへの参加申込みをしてしまう方々(この種の行動を「卑怯」と批判しても、この種の方々から攻撃されても自業自得とかいわれてしまいそうですね。「匿名さんの行動は批判してはならない。匿名さんの行動を批判したら匿名さんから何をされても自業自得なんだそうですから。)の後始末をしなければならなかったりして正月早々から時間がとれないので、どこまでパブリックコメントを書き上げられるか分かりませんが(そうでなくとも、49日法要の準備とかいろいろ忙しいのに!)、できる限り頑張ってみることにします。


一 日本の音楽の海外での普及活動について


1  日本のポップミュージックを海外に普及させるためには、海外に住んでいる方々に日本のポップミュージックを聴いていただかなければなりません。それには、テレビやラジオなどのようにメディアの側で適宜楽曲をピックアップして流してくれる、いわゆるプッシュ型メディアに日本のポップミュージックを流すことが必要となります。

  そのためには、海外のテレビ局やラジオ局等に日本側で積極的に働きかけて、日本のポップミュージックを流してもらうという方法がまずあります。しかし、東アジア及び東南アジア以外では、そのような方法はほぼとられていないようです。

  もう一つは、日本側で日本のポップミュージックを含む音楽番組を世界に向けて発信するという方法があります。テレビやラジオなどの電波系のメディアは受信可能な地域が限定されていますので番組を世界に向けて発信することは困難なのですが、インターネット放送であれば、番組は原則として世界に向けて発信されます(例えば、英国のBBCは、ラジオ番組の大部分をインターネット経由で配信しており、その内容は日本でも聴取することができます。)。

  しかし、日本では、レコード会社等が自社が隣接権を有する楽曲についてインターネットラジオ等で放送することに対して許諾を与えないため、日本のポップミュージックはインターネット経由で海外に発信されることがほとんどないというのが実情です。

  日本のポップミュージックが世界の人々に受け入れられるようにするために、世界中の人々にまず日本のポップミュージックに触れていただくためには、インターネットラジオ等の放送局へ、その規模又は売上げに応じた合理的なライセンス料でインターネット放送についてのライセンスを付与するように日本のレコード会社等に対して指導をするとか、インターネット放送については、放送・有線放送と同様に、正規に収録された音源を用いる分には許諾をとる必要がないこととする(報酬請求権化する)ことが望まれます。

2 また、海外の人々が日本のポップミュージックを気に入り、これを購入したいと考えても、これを購入するのは楽ではありません。

 Amazon.comで購入可能な「Japan」カテゴリーの音楽CDはわずか3590点にすぎません(2005年1月1日現在)。しかも高い(2005年のオリコン・アルバムチャート年間1位の「MusiQ」(by Orange Range)が44.49ドル、同2位の「ケツメポリス4」(by ケツメポリス)が40.49ドルです。Amazon.comでは、アルバムCDが通常10〜15ドル前後で購入できることを考えると、通常商品の約4倍です。)。

 また、iTunes Music Store等の音楽配信サービスで日本のポップミュージックを購入しようと思っても、米国在住者がiTunes Music Storeを利用しても、「Japanese Pop」カテゴリーでアップロードされているのは、「The 5.6.7.8's」、「BoA」、「Haco」、「Pizzicato Five」、「Polysics」、「Puffy AmiYumi」、「Sakamoto Hiromichi」、「Utada」の8ユニットのみ、「Japan」カテゴリーでも「Buffalo Daughter」、「Cibo Matto」、「Cornelius」、「Kahimi Karie」、「Kawabata Makoto」、「Momus」、「Pizzicato Five」、「Puffy AmiYumi」、「Yoshinori Sunahara」、「Zoobombs」の10ユニットのみ(そのうち、「Puffy AmiYumi」と「Pizzicato Five」はだぶっています。)、「J-Pop」カテゴリーでも14ユニットにすぎません。

 上述のとおり、日本のポップミュージックの音楽CDはAmazon.comのような米国内の大手インターネット通販でもあまり扱われていませんし、扱われていたとしても非常に販売価格が高く、ごく一部のマニア以外は購入する気にはなれないと思いますので、iTunes Music Store等の音楽配信サービスを介して販売することは、音楽CDの販売を妨げることによる減収を招く危険は少ないといえます。したがって、レコード会社としては、もっと積極的に自社音源をiTunes Music Store等の音楽配信サービスを利用して広く世界に向けて販売してもよさそうなものなのに、現実には、上記のとおり、日本のポップミュージックはほとんど日本国外の音楽配信サービスでは購入できないという体たらくぶりです。

 知的財産戦略本部におかれましては、日本のレコード会社に対し、国外の音楽配信サービスを利用して積極的に日本国外にて日本のポップミュージックを販売するように勧告することが肝要ではないかと思います。

二 音楽コンテンツの日本国内での利活用について


 iTunes Music Store等の音楽配信サービスを利用していると、私たちは悲しい事実に気がつきます。日本の消費者だけが購入できない商品が多すぎるのです。

 iTunes Music Storeにおいては、クレジットカードのビリングアドレスの所在国毎に市場分割がなされており、日本国内にしかクレジットカードのビリングアドレスがない普通の日本人は、日本国内向けに配信されている楽曲しか購入できません。その点に関しては、アメリカ国内にしかクレジットカードのビリングアドレスがない普通の米国人は、米国国内向けに配信されている楽曲しか購入できないし、フランス国内にしかクレジットカードのビリングアドレスがない普通のフランス人は、フランス国内向けに配信されている楽曲しか購入できないという意味では対等であるとはいえます。ただ、米国国内向けに配信されている楽曲、フランス国内向けに配信されている楽曲、ドイツ国内向けに配信されている楽曲、スイス国内向けに配信されている楽曲etc.と日本国内向けに配信されている楽曲とが全く別物となっています。そのため、ほとんど国でダウンロード件数が上位10位以内に入っている楽曲が日本ではダウンロードできないという事態が頻発しています(むしろ、英米仏独などの主要国の音楽配信サービスでダウンロード件数が上位10位以内に入っている楽曲のほとんどは、日本国内ではダウンロードできないと言った方がより正確です。)。

 最近は、音楽配信サービスでしか提供しない楽曲というのも徐々にではありますが増えてきました。そのような時代において、日本国内でのみダウンロードできない楽曲があるということは、とりもなおさず、日本国民だけが特定の音楽を聴くことができなくなるということを意味します。簡単に言ってしまえば、「日本人だけが仲間はずれにされている」というのが、音楽配信サービスの現状です。

 知的財産戦略本部が目指す社会というのは、知的財産権が日本人だけを仲間はずれにすることに積極的に活用される社会ではないはずです。従って、知的財産戦略本部におかれましては、日本政府として、世界各国のレコード会社やレコード会社等が作っている組織に働きかけて、他の先進諸国向けに音楽配信を行っている楽曲については日本国内向けにも配信するように仕向けるか、彼らがそのような要求を聞き入れないようであれば、音楽配信サービスを行う場合には隣接権者の許諾を要しないとするような法改正を行っていただきたく思います。

 

Posted by 小倉秀夫 at 07:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (2)

12/12/2005

ヨミウリ・オンライン見出し事件

 ヨリウミ・オンライン見出し事件高裁判決の簡単な解説を、Lexis判例速報2005年12月号に掲載して頂きました。

 ご興味がおありの方はお読み頂ければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 04:06 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/15/2005

デジタルコンテンツ・ワーキンググループにおける意見 in 2005

政府・知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会デジタルコンテンツワーキンググループが「デジタルコンテンツ・ワーキンググループにおける意見募集」をしていましたので、次のような意見を投稿しました。



1 禁止権から報酬請求権へ


  デジタルコンテンツの利活用を図るためには、デジタルコンテンツに特定の利害関係を有している者に与えられる権利を禁止権から報酬請求権に移行することが望まれます。なぜならば、禁止権を有する利害関係者全てから許諾を得るというのは過大なコストと時間がかかる上に、IT革命の恩恵を消費者に与えることを望まない守旧派的なコンテンツホルダーは合理的なライセンス料を提示してもそのデジタルコンテンツの利活用を許諾しない傾向が明確にあるからです。

  日本が各種国際条約に反することなく法改正により報酬請求権化できるものとしては、

  • 同一コンテンツ同時再生型のインターネットラジオ/テレビ

  • 歌詞のネット上へのアップロード

  • 歌詞の翻訳および翻訳された歌詞のネット上へのアップロード

  • 書籍等の内容を組み入れたデータベースの作成および公衆への提供

 ポッドキャスティング等のダウンロード型の音楽配信サービスについては、国際条約上報酬請求権化できないとの見解が有力です。ただし、そのような条約自体、現代のようなIT革命が進化した社会を想定したものではありませんので、ダウンロード型の音楽配信サービス等を報酬請求権化できるように国際条約の改廃を加盟国に働きかけることはとても有意義です。

(なお、情報の流通が、CD等のパッケージによる時代から、インターネットなどのオンラインによる時代へと移行した場合、特定のコンテンツについての送信可能化を報酬請求権化するか強制許諾制度を設けるかしないと、日本在住者のみ特定の情報から疎外される危険が生じます。)。

2 私的領域での利活用の保護


 IT革命の成果として、デジタル化されたコンテンツ(ユーザーがデジタル化した場合を含む。)を様々に加工しまたは転送したりしてユーザーがそのライフスタイルや美的感覚に合わせてこれを利活用することが技術的には容易になりました。しかし、そのようなエンドユーザーによるコンテンツの利活用を可能又は容易にする機器又はサービスを公衆に提供することについては、そのような機器等の提供者をコンテンツの利用主体と擬制することによりこれを違法とする裁判例が続出しています(ex.録画ネット事件、選撮見録事件)。しかし、一般のユーザーはそのような機器等を自ら開発し運営することは困難なので、そのような機器等を業者が提供できないとすると、エンドユーザーはIT革命の恩恵を享受できないことになります。

 つきましては、エンドユーザーによるコンテンツの適法な利活用を可能又は容易にする機器又はサービスの好手への提供者をコンテンツの利用主体と擬制してこれを違法とすることができないような法改正が望まれます。

 

 また、私的使用目的でのコンテンツの改変が著作物の同一性保持権侵害となるかについては学説上争いがありますが、改変されたコンテンツが改変を行った人の私的領域内にとどまる限りにおいては、当該コンテンツに係る著作者の名誉・声望等の人格的価値が害されることはないので、私的使用目的でのコンテンツの改変については同一性保持権侵害に該当しないということを明文で規定して頂ければ幸いです。

 

3 クリエイターとコンテンツホルダー等との間の契約の労働基準法的な規制


  漫画家と出版社、実演家とテレビ局・レコード会社等、クリエイターとコンテンツホルダー等との契約は、特に当該クリエイターが一定の名声を築く前に締結されたものについて言えば、しばしば衡平をあまりに失しています(そもそも、一般に出回っている雛形自体、ひどいものです。)。それは、力関係についていえば企業と労働者の関係に近いにもかかわらず、法的には雇用関係にはないがために、労働基準法等による保護を受けられないからです。

  つきましては、クリエイターにとっても過酷ではない標準契約雛形を公的に作成するとともに、クリエイターが保障されるべき最低限の権利・地位を法律(強行法規)で定めることが必要なのではないかと思います。

  

4 リージョンコード回避機器の適法化


 市販のDVDソフトなどには、いわゆるリージョンコードが付されているものが少なくありません。

 リージョンコードに反応しない機器の製造・販売は現在適法であるものの、リージョンコードに反応する機器を反応しない機器に変更することおよびそのような変更を容易に行えるようにする機器等の提供が適法であるかについては争いがあるところです。

 リージョンコードを付することにより日本国民だけが特別に高い対価を支払わなければコンテンツを享受できないというだけでも屈辱的ではありますが、コンテンツによっては、そもそもリージョンコードが日本に対応した商品が製造・販売されていないということもしばしばあり、この場合、リージョンコードに反応しない機器を使用しない限り、日本在住者は当該コンテンツを享受できないということになり、そのコンテンツにより提供される情報を知る権利すら侵害されることになります。

 現状では、リージョンコードというのは我が国にとって百害あって一理なしの存在ですので、リージョンコードに反応する機器を反応しない機器に変更することおよびそのような変更を容易に行えるようにする機器等の提供を明文で適法とするような法改正が望まれる次第です。  

Posted by 小倉秀夫 at 11:54 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

11/05/2005

ゼミ合宿 in 2005

 一昨日、昨日と、学部のゼミ合宿に行っていました。

 今回は、某芸能プロダクションのご厚意により、某アイドルユニットの練習風景も間近で見ることができたり、(深夜なので希望者だけですが)音楽プロデューサーさんや、スクールの先生や、マネージャーさんの話を聞くことができたりなんかして、結構楽しめたのではないかという気はしています。

 なお、合宿用に学生さんに出した課題は次のようなものです。



 著作権法の任意の条項について、具体的に改正の提案をしてみて下さい。

 その際、次のフォーマットに従って下さい。

1 新旧対照表をつくる


  A4横長の用紙を上下2段に分け、現行の法文を上段に、新法の法文を下段に記します。

  (上下の境界には太めの線を引くのが一般的です。)

2 A4用紙3枚程度のプレゼン資料をつくる。


  現行法のどこに問題があり、新法だとその問題がどう解決するのか、また新法に副作用がないまたは回避できるということなどをぱっと見て理解できるように、資料をつくって下さい。

3 プレゼンをする。


  プレゼン資料を駆使して、10分程度で、自分たちの提案の素晴らしさをアピールして下さい。  

4 質疑応答


  自分たちの提案について、他のグループのメンバー等からの質問に的確に答えて下さい。




【今日聴いた曲の中でお勧めの一曲】


Le Défi

   by David Hallyday

Posted by 小倉秀夫 at 12:38 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

10/31/2005

IPAのアドバイザサービス

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、その事業の一環として、アドバイザ業務というのを行っており、私は、今年からそのアドバイザチームの一員を努めさせて頂いています。
 

 優秀な技術等を開発した方々がその技術を商品化するにあたって大企業と提携したりする際の契約書のチェックなどは、法律の専門家に依頼した方がよいと思いますので、こういうサービスをもっとご利用頂けるとよいのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 11:08 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

10/29/2005

著作権者に関する情報の募集

 著作権者不明の場合の裁定手続きは時間がかかるとの批判があります。

 ただ、「かかる時間」の多くは、著作権者に関する情報を募集する期間だったりします。そして、この期間以外の時間については、文化庁にやる気があれば相当短縮が可能です(利用を可とするか否か、可とする場合に料率をどうするかという問題は、審査に時間をかけたからといってより適切な結論が生み出されるものではありません。)。また、一度第三者が著作権者に関する情報を募集したが結局判明しなかった著作物に関しては再度著作権者に関する情報の募集を行わなくともよいということにしてしまえば、「モナー」のように作者は分からないが知名度はあるというキャラクターの適法な利用はより促進されるといえるでしょう(利用しようと思っている作品にひょっとしたら著作物性があるかもしれないと思い裁定手続きの申請をしたところ、文化庁長官も、それはさすがに著作物性はないでしょうと判断した場合に裁定手続きがどうなるのかについては、この点に言及した資料は見あたらなかったのですが、裁定手続きは却下され、後に権利者が現れたとしても、刑事責任及び損害賠償責任については故意又は過失がないとされるのでしょうし、著作物性がないとして裁定手続きが却下されたことを受けて製造してしまった商品についての販売等の差止請求は権利濫用ないし信義則違反で棄却されるのではないでしょうか。)。

 裁定手続きを利用しない「粋」な方法を肯定する方々は、この「著作権者に関する情報を募集する期間」を設けずに問題を片づけてしまおうとするので、「そりゃ迅速でしょうな」とは思うのですが、さすがに潜在しているにすぎない著作権者のことを配慮しなさ過ぎかなあと思ってしまいます(さらにいうと、壇先生も仰るとおり、著作権を故意に侵害すると刑事罰を課せられることもあり得るのであり、そうであるならば、明らかに著作権者ではない人間にお金を払ってすませるというのは、二重払いでは済まないリスクを背負い込むことにすら繋がります。)。

 なお、IMPRESSの記事を見る限り、NETTS JAPANは、

 同社は巨大掲示板群「2ちゃんねる」とのコラボレーション企画として、AAのキャラクタを「墨香オンライン」に登場させることで合意したという。今回スクリーンショットに写っている「モナー」は、この企画の第1弾に選ばれたキャラクタ。クローズドβテストでの登場は未定としながらも、正式サービスではプレーヤーキャラクタとして登場させる予定だという。

 「モナー」は、2ちゃんねるで生まれたAAのキャラクタで、著作権者は不明。それをゲームに登場させることについて、ネッツジャパンはリリース中にて、「ネットワーク上で語られている『AAは誰にも縛られない』という精神を尊重し、今後も2ちゃんねると協調しつつ、AAキャラクタ達を採用していきたい」とコメントしている。
とのことであり、その他NETTS JAPAN側の公式見解を見る限り、ライセンス料相当金がひろゆきさんを介して実際のモナーの著作権者に届くようにしたいという意思を読み取ることは困難だし、この公式見解から、NETTS JAPANがライセンス料相当金をひろゆきさんに「供託」したことを知ることは不可能でしょう。結局、墨香オンラインの例では、「著作権者に関する情報」の募集は行われていないようですし、過去に「モナー」のキャラクターが商品化された際にもそのような情報の募集は行われてこなかったように思うのですが、今後も「モナー」を商品化したいという声が上がってくるのであるならば、どこかで誰かが裁定手続きをとることを前提にそのような情報の募集を行うべきなのではないかと思います。


【今日聴いた曲の中でのイチオシ】

Adieu Monsieur le Professeur

by Star Academy 4

Posted by 小倉秀夫 at 07:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (1)

10/28/2005

ゼミ選抜レポート 2005

 私が中央大学法学部で受け持っているゼミのゼミ員選抜は、この2年くらいは、レポート&面接で行っています。これから著作権法を勉強しようという方々ですから著作権法を知らないのは全然構わないのですが、著作権法という分野の特性上、「いま」に対する感度が鈍いと大変なので、そういうところを重視します(あとは、まともな日本語を書けるのかというところです。)。

 なお、ことしのレポートの課題は、下記のとおりです。

既存の作品の一部を切り取り、加工して、貼り合わせることにより新しい作品を生み出すという手法は、既存の作品についての権利保持者との間にさまざまな利害の衝突を生じさせます。そこで、これらの衝突する利害をどのように調整するのが望ましいのかを、各自の好きな芸術分野について論じて下さい。

Posted by 小倉秀夫 at 01:40 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

10/25/2005

アンシャンレジームの擁護者

 フランスでは、大革命のころに、裁判所がアンシャンレジームを擁護するために盛んに政治介入を行ったことが響いて、司法不信の風土が築きあげられたという話を昔聞いたことがあります。日本でも、JASRACやテレビ局というアンシャン・レジームを擁護するために、立法府が制定した法律の文言等を離れて、IT革命への時代の流れを押しとどめようという勢力があるようです。

 選撮見録訴訟の第1審判決が下され、さっそく最高裁のウェブサイトにアップロードされました。

 アンシャンレジームと裁判所でたたかうと、判決文において、新たなルールが裁判所から後出し的にかつ不意打ち的に持ち出されて負けてしまうということがしばしばあるのですが、今回もまたこのパターンです。

 ある研究会で知財部の判事が「著作権法の規律の観点」というのは要するに原告を勝たせたいということですと発言されていたことが最近あったわけですが、そういう裁判所の恣意的な判断に振り回されるベンチャー企業の身にもなってもらいたいというのは正直なところです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:44 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (2)

10/24/2005

パクリ問題と興奮した第三者について

 AというアーティストのBという作品が、CというアーティストのDという作品の「パクリ」ではないかということで騒ぎになることがネット上では増えたような気がします。

 ポピュラーミュージックの世界だと、むしろ、聞き手が「元ネタ」に気付いてにやっとするみたいな反応をすることが多かったので、昨今のネットで横行している「パクリに潔癖すぎる受け手」には正直違和感を感じざるを得ません。Dという作品の全部又は一部がBという作品に組み入れられているということについて、どのような権利処理が行われあるいは行われていないかなどということは、Aの側とBの側との間の問題であって、「受け手」ないし全くの第三者にとっては本来どうでもよい話です。

 CはAによるBという作品を知らないと言うことはあるかもしれませんから、Dの全部又は一部と同一又は類似する要素がBのなかにあることに気が付いた人が、その旨をCまたはCの所属プロダクション等に連絡すること自体はそれほど悪くないかもしれないし、同じ指摘がいくつもCの側に寄せられてもCの側にも迷惑がかかりますから、上記連絡を行った場合にその旨をウェブサイトやブログなどで報告するくらいなら特にどうこういうようなことではないとも思うのですが、ただ「受け手」等の領分はそのくらいまでなのではないかと思うのです。

 Cとしては、その程度の同一性・類似性ならば気にしないということもあり得ますし、Aには次から気をつけてくれれば今回は事を荒立てたくないと思うかもしれないし、自己の作品の一部をAに取り入れてもらって却って嬉しいと思うかもしれないし、あるいはAのことをけしからんと思うかもしれませんし、問題とされている部分は既に当該ジャンルにおいて「共有資産」となっているから同一又は類似でも文句はいえないと思うかもしれません。それは、周りがとやかく言うべき話ではありません。

 「パクリ問題」というのは他人を攻撃していい気持ちになるのには格好の題材なのだろうとは思うのですが、私は、著作権法というのがそのようなストレス発散の道具に用いられることを快く思いません。それは、我が国の文化の発展に何ら資することはなく、むしろ、新たな作品の創作を萎縮させることにすら繋がるのではないかという危惧すら有してしまいます(同ジャンルのクリエイターとして特に問題視しないであろう程度の同一性又は類似性しか有しない場合であっても、創作に関して門外漢である「受け手」が「パクリ潔癖性」から執拗に攻撃してくるかもしれないということが、執拗な攻撃を受けて創作意欲や創作環境を失ってしまった他のクリエーターの姿によって強く印象づけられ、本来であれば公表され文化の発展に貢献していたであろう作品について、その公表が躊躇されるという事態を招きかねないからです。)。


【今日聴いた曲のうちのイチオシ】

「Besoin de vous」

 by Indra & Frederic Lerner

Posted by 小倉秀夫 at 01:53 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (17) | TrackBack (4)

10/22/2005

「モナー」の著作物性

 そもそもアスキーアートとしての「モナー」に著作物性はあるのでしょうか。

 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(著作権法第2条第1項第1号)。したがって、特定のアイディアを凡庸に表現したものについては、著作物として著作権法による保護を受けられないことになります。

 創作性の有無を判別する基準については、一般的にはさほど高度のものを要求されるものではないといわれますが、表現手法上の制約が大きい分野では、相当高度のものを要求される傾向があります(ex.YOL記事見出し事件知財高裁判決)。

 アスキーアートの場合、ネット上で用いることを主として想定していることから、事実上、1バイト文字並びにJISの第1水準及び第2水準に規定される2バイト文字のみを用いるという厳しい制約がありますから、特に数行から十数行程度で描くアスキーアートについていえば、その表現手法上の制約は極めて大きく、したがって、著作物性が認められるための創作性は相当に行動のものであることが必要となります。

 二本足で直立するネコまたネコ類似の動物の、相当にデフォルメされた絵・図柄というのは、ハロー・キティーやミフィーやドラえもんやドラミちゃんの例を引くまでもなく、世の中にあふれかえっています。丸みを帯びた顔、頭の上に描かれた耳(ドラミちゃんや耳をかじられる前のドラえもんなど、上方向にとんがった三角形で耳が描かれることは少なくない。)、胴体の横に描かれた前足、太くまっすぐに伸びた後ろ足などの構図はまさにこれらの絵において使い古されています。したがって、このような要素をJIS第2水準までの文字を用いて普通に表現する場合著作物性は生じないというべきであり、アスキーアートとしての「モナー」を見る限り、耳を「∧」で表現したり、丸みを帯びた顔の輪郭を「(    )」を用いて表現するなど、ありふれた表現の範囲内にとどまっているように思います。

 なお、壇先生は、ご自身のブログのコメント欄において、


モナー

 ∧_∧  

(  ∀ )



ご隠居に比べて大きく口が開いているような表現が表情を豊かにしているとも考えられます。現行モナーの口は、その後のモナーのほとんどが踏襲している点からもおそらくモナーの創作性の中心と考えられる訳です。


と仰っています。

 しかし、口を逆三角形に近い形で描くのはマンガ等ではまさにありふれた表現であり、それをJIS第2水準までの文字を用いて表現しようと思えば、「▽」や「∀」を用いるというのは普通に思いつくことであり、少なくとも特定の人に独占させるべきものではないように思います。すると、「モナー」の創作性が口の部分に「∀」を用いた点に求めようとするならば、アスキーアートという極めて制限された表現手段において著作物性を付与されるほどの創作性はそこにはないというべきだろうと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 05:07 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (2)

10/21/2005

ライセンシーの立場

 いわゆるのまネコ問題に関して、今度は、タイトーが標的にされようとしているようです。

 しかし、著作権者がライセンス料を要求していない以上、ライセンス料相当金を利用者が留保するのは当然であって、「ネコババ」云々と非難される謂われはありません。

 企業間でライセンス契約が締結される場合、ライセンシーはライセンサーに対し、当該キャラクターの利用が第三者の著作権を侵害するものではないことの保証を求めるとともに、第三者からクレームを受けた場合にはライセンサーが紛争の解決に中心的に努めるとともに、その解決に要した費用はライセンサーもちとする旨の条項を契約書に入れていることが多いのですが、そうだとすれば、「モナー」の図柄の著作権者からタイトーがクレームを受けたときに初めてタイトーはAvexに対し紛争の解決を支持するということになるわけで、タイトーがそれまで静観するというのは別に不思議なことでも何でもありません。

 なんたって、この「のまネコ」騒動で騒いでいるのは、「モナー」の図柄を作り上げた人達ではなく、精々この図柄を無償で利用していたにすぎない人々なので、ライセンシーとしてはなかなか動きようがないといえます。
(ライセンス料相当額を「被災者に寄付」してしまうと、後に権利者が現れたときに二重払いさせられることになるので、普通法務は勧めない、というか、基本的にはGoサインを出さないと思います。)

Posted by 小倉秀夫 at 10:45 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

10/19/2005

共同著作物と二次的著作物

 「モナー」の図柄は2ちゃんねるコミュニティの共同著作物であるとする見解がネット上では散見されます。
 

 共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの(著作権法第2条第1項第12号)をいいます。
 

 「2人以上の者が共同して創作した」という要件は、さらに主観的な要件と客観的な要件に分けられるのが一般的です。
 

 客観的要件としては、「複数の者がいずれも創作と評価されるに足りる程度の精神活動を行うこと」が必要だと解するのが多数説です(牧野利秋・飯村敏明編「新・裁判実務体系22 著作権関係訴訟法」266頁(三村量一執筆担当)。創作的作業を担当しない者は共同著作者にはなりえません。従って、「モナー」の図柄が複数のAA職人による「共同著作物」だとしても、その形成にあたって創作的作業を担当していない圧倒的多数の「2ちゃんねらー」は「モナー」の共同著作者たりえません。
 

 また、主観的要件としては、「著作物の作成にあたり創作的行為を行った各人の間に、共同して著作物を作成しようとする共通の意思が存在すること」を必要とすると解するのが多数説です(三村・前掲267頁)。「モナー」の形成に寄与した複数のAA職人の間にそのような共通の意思があったかというと私には大層疑問です。
 

 したがって、「モナー」の図柄が、2ちゃんねるコミュニティの共同著作物であるという見解は採用され得ないように思います(なお、この図柄を誰が「モナー」と名付けたかということはその著作者が誰であるのかという議論に何らの影響をも及ぼしません。題号は、「著作物」の外部にあるものと位置づけられているからです(著作権法第20条第1項参照)。)。
 

 基本的には、Avexが参考にした「モナー」の図柄A1が、X1によって、図柄A2を参考にして作成され、図柄A2が、X2によって、図柄A3を参考にして作成され………という場合──X1、X2……の寄与が創作と評価するに足りるものであった場合には、「のまネコ」グッズの製作・販売等についてX1,X2は、原著作物の著作権者として、二次的著作物である「のまネコ」の著作権者と同様の著作権を行使しうるにすぎないと解するのが一般的だと思います(それも、図柄Aに著作物性があり、かつ、図柄Aと「のまネコ」との間に実質的な同一性ないし類似性があった場合に限っての話です。なお、私はこの「実質的同一性ないし類似性」の存在につき疑問を持っています。)。
 

Posted by 小倉秀夫 at 09:42 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (28) | TrackBack (0)

10/16/2005

著作者不明の場合の裁定制度

 著作権者が不明の場合の裁定制度については、いろいろな誤解があるようです。

 この裁定制度が実際には使われたことのない制度だと思っている方も少なくないようです。しかし、実際には、文化庁のウェブサイトに利用実績が掲載されていますが、実際には29件ほど利用されており、しかも平成11年以降は、一度に数百から数千もの著作物について一括して裁定がなされています。

 また、実際に申請してから裁定が下されるまでの期間ですが、4日から81日かかっており、平均は約30日(著作者自体が不明である場合に限定していうと約32日)です。なお、文化庁は、申請してから裁定の可否を文化庁長官が行い、補償金の額を審議会が決定するまでの手続きに必要な期間(標準処理期間)を「3か月」としています。

 また、「モナー」の図柄のように、そもそも著作者が誰なのかが分からない場合に、「相当な努力を払ってもその著作権者と連絡することができない」といえるためには、インターネット上のホームページ等を利用して、一般又は関係者への協力要請を行えば足ります(その詳細についてはこちら)。

 その他諸々で、著作権者が不明の場合の裁定制度を利用しようと決めてから最大で半年もあれば、補償金の供託までは漕ぎ着けるのではないかと思います。

 もちろん、この運用には改善の余地はあると思います。「一般又は関係者への協力要請」を行う期間は何も2ヶ月間も必要だとは思えないし(補償金の額が適切であれば理論的には著作権者に経済的な不利益は及ばないし、そもそも著作者の実名を明示しないことによって利用希望者が容易に著作者に連絡を取ることができない状態を作出したのは著作者の方なのですから、多少の不利益を負うのはやむを得ないというべきでしょう。)、標準処理期間も1月もあれば十分でしょう(毎月、補償金額を決定する審議会が開かれる前に、裁定を下す決済を文化庁長官が行うようにすればいいのですから。)。

 しかし、著作権者が不特定人に対して包括的な利用許諾を黙示的に行ったと解する自信がないのにもかかわらず当該著作物を利用したいという企業としての方針を採用した以上、その程度の手間は現状仕方がないのではないかと思ったりはします。企業としては、大騒ぎをする第三者に強い影響力を有する「とりまとめ役」にお金を渡してとりあえず騒がれないように押さえてもらうことを期待するという法的に不透明な処理は、最も避けるべきなのではないかと基本的には思います。

Posted by 小倉秀夫 at 01:50 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (0)

10/15/2005

ネットオークションと著作権

讀賣新聞の記事によれば、

 横浜市が税金滞納者から差し押さえた絵画をインターネットオークションで公売する際、画家の許諾を得ないで画像を掲載するのは著作権の侵害にあたるとして、著作権管理事業者が12日、同市を相手取り、掲載の差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に起こした
とのことです。

 これに対して、横浜市側は、

「(公売オークションでは)画像が鮮明にならないように調整しており、著作権者の許諾が必要な『複製』には当たらない。複製だとしても、今回のケースは『引用』に当たるため、やはり著作権者の許諾は必要ない」と反論している
のだそうです。

 一見この横浜市側の主張はピントがはずれているように見えますが、あるいは、東京高判平成14年2月18日判例時報1786号136頁【照明器具広告用カタログ事件】を意識しているのかもしれません。

 照明器具広告用カタログ事件においては、

書を写真により再製した場合に、その行為が美術の著作物としての書の複製に当たるといえるためには、一般人の通常の注意力を基準とした上、当該書の写真において、常軌表現形式を通じ、単に字体や書体が再現されているにとどまらず、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、黒色の冴えと変化、筆の勢いといった常軌の美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するものというべきである
と判示されています。もちろんこれは、「書」の特殊性(書は、本来的には情報伝達という実用的機能を担うものとして特定人の独占が許されない文字を素材として成り立っているという性格上、文字の基本的な形(自体、書体)による表現上の制約を伴うことは否定することができず、書として表現されているとしても、その自体や書体そのものに著作物性を見いだすことは一般的には困難である)という点から導かれている反面、写真により再生した場合にその行為が美術の著作物の複製にあたるといえるためには、その美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するということが美術の著作物一般に当てはまる余地がないわけではないようにも思われます。

 というのも、美術の著作物にとってその作品のある程度詳細な構成というのは著作物を特定するのに最も重要な情報という意味で実用的な価値を有しているのであり、そのような情報を著作権者に独占させるのはアイディアではなく表現の創作的な部分を保護することを原則に置く著作権法の建前からするとやや行き過ぎであり、従って、絵画の著作物を特定するために必要な情報を超えた、美的要素を直接感得させる程度に絵画の著作物が写真の中に再現されるような場合に初めて著作権法による規制の対象となると解することには合理性があるように思われるからです(写真における絵画の著作物の再現の程度がその作品の美的要素を直接感得させる程度に至っていない場合は、その写真は正規商品との間の代替性が低いのですから、これを規制する必要性は低くなるということができます。)。

 また、絵画等の著作物が公売に付される可能性があることは、絵画等の著作物が「紙」などの有体物に化体されている以上、避けがたいことであり、公売に付される場合には、入札する権利を有する不特定多数人に当該絵画の著作物が提示されるのは避けがたいことであります。だとすれば、絵画等について公売手続きを行う上で必要最小限の範囲内において著作物を利用することは、公売制度の公平性・公正性を維持するためには必要不可欠であり、したがって、絵画の著作物についての著作権を行使して公売の客体たる絵画作品の公衆への提示を阻害するのは権利の濫用だということも不可能ではない(オフラインのオークションだって、オークションの対象となる絵画等を不特定多数のバイヤーに向けて展示するのは展示権侵害だといえなくはないのですが、実際にはそのような主張を行って自分の作品がオークションにかけられるのを阻止しようとしたって、おそらく多くの人は「そりゃ、むちゃくちゃな」と思うでしょう?)ようにも思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (2)

10/14/2005

墨香オンラインにおける「モナー」の利用

 墨香オンラインにおける「モナー」の利用に関して、墨香オンラインの提供元のNETTS JAPANの回答(の一部)を掲載しているサイトがありました。

 これによれば、NETTS JAPAN側は、

ドワンゴCMの件などの事例を踏まえ、

キャラクターロイヤリティは幾らであるかの確認を行いました。

当然、そこにはAAの独占使用や意匠登録などを行わないという

弊社の方針は先んじて伝えてあります。

結論としては、2ちゃんねるサイドとしては著作権を所有しているものではなく

またそれによって利益を上げることが目的ではないので

一切の金銭は必要ないという返答を受けました。



しかし、弊社ではAAを使ってプロモーションを行うということもあり

ロイヤリティを2ちゃんねるに供託し、将来的に著作権者が見つかった場合はその方に、

一定期間(期間は未定です)見つからない場合は、それを管理人個人の収益にするのでなく

2ちゃんねるの環境維持(サーバー代)などに運用するという提案をしました。

その提案には2ちゃんねる管理人も同意しております。
と回答しているのだそうです。

 しかし、この提案はおかしいです。

 著作権法は第67条にて、著作権者が不明の場合にライセンス料相当金を供託して著作物を利用する方法を一定の限度において認めています。

第六十七条  公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。

2  前項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の裁定に係る複製物である旨及びその裁定のあつた年月日を表示しなければならない。

 すなわち、「モナー」の著作権者Xは不特定多数人に対し「モナー」の商用利用まで不特定人に包括的に許諾しているとは限らないという前提に立った場合、「モナー」の図柄を商用利用したいのであれば、文化庁長官の裁定を受けて文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために最寄りの供託所(供託法第1条)に供託すべきなのです。

 供託制度の趣旨からしても、「モナー」の図柄の著作権者が自己に著作権が帰属していることを立証したときに確実に供託金を受け取れないと困るので、倒産、破産、持ち出し等の危険のある私人を供託先とすることは正しくないのです(まして、ひろゆきさんは、いくつかの損害賠償請求訴訟で敗訴しているわけで、「著作権者のために」ライセンス料相当金を供託する先としては不適格だということができます。)。

 また、「モナー」の図柄の著作権者が一定期間見つからなかった場合に「供託金」を2ちゃんねるの環境維持などに運用するというのもおかしな話です。67条の裁定手続きを得ない場合、「モナー」の著作権者のNETTS JAPANに対する請求権は不法行為に基づく損害賠償請求権ですから、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないと時効によって消滅し、不法行為の時から20年を経過すると権利行使ができなくなります(民法第724条)。「被害者」が誰か分からない以上、3年の短期消滅時効が成立したと考える根拠はないので、このような場合20年間の除斥期間が経過するまでは、「供託」し続けるのが本筋です。供託者は、債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、供託金を取り戻すことができますが、その場合、最初から供託がなされなかったとみなされる(民法第496条第1項)ことになりますので、供託金を「モナー」の著作権者に引き落とさせるのではなく、2ちゃんねるの環境維持などに運用してしまった場合、NETTS JAPANは最初から「供託」を行っていないものとみなされますから、それならNETTS JAPANがこれを取り戻して一般会計に回すのが筋です(まして、時効期間経過前に「供託金」を2ちゃんねるの環境維持などに運用してしまった場合には、後に「モナー」の図柄の著作権者が現れたときには、NETTS JAPANはライセンス料相当金を2重払いさせられる危険が生じます。)。

 また、私は税の専門家ではないのですが、NETTS JAPANは本当にこのスキームを実行するつもりならば、その前に税理士に相談した方がいいのではないかという気がします。この「供託金」が経費として計上できるのか、今ひとつ疑問だったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 01:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (8) | TrackBack (4)

10/11/2005

LexisNexisJapan

http://legal.lexisnexis.jp/
にあるとおり、LexisNexisJapan社の判例データベース用に、最新裁判例についての解説を書くことになりました(私は主に、著作権法と不正競争防止法を担当することになります。)。

Posted by 小倉秀夫 at 07:55 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/08/2005

「モナーはみんなのもの」ではない。

 仮に「モナー」に著作物性があるとしてその著作権はどうなっているのでしょうか。
 
 如何なる図柄も「自然発生」はしませんから、「モナー」の図柄にも必ず「著作者」がいます(以下、「モナー」の著作者をXといいます。)。
 私は2ちゃんねるに投稿することはないので投稿時にどのような表示が掲載されるのか存じ上げないのですが、2ちゃんねるに投稿するにあたってその投稿内容の著作権をひろゆきさんに譲渡する意思(自分のブログ等を含めて他の場所に同じ内容を掲載する場合にはひろゆきさんの許諾を得なければならないという事態を甘受する意思をも含む。)があったとは通常考えにくいですから、このときのXさんの合理的な意思は、2ちゃんねるという掲示板において「モナー」を自動公衆送信(及び送信可能化)することについての非独占的な利用許諾、あるいはそれに加えて「モナー」を用いた書籍等の商品を製作し、販売することについての非独占的な利用許諾を付与する意思であったと見ることができます。
 その後、「モナー」という図柄は2ちゃんねる内外のいろいろな場所に、そのままあるいは改変されて掲載されていたわけですが、Xさんはこれに対して権利行使をしてこなかったわけですが、これは、

  1. 不特定人に対して「モナー」の利用を包括的に許諾した
  2. 何らかの理由であるいは特段の理由なくして権利行使するのを控えた
のいずれかではないかと思われます。
 前者の場合、非商用利用に関してのみ利用許諾する意思であった可能性と商用利用を含めて利用許諾する意思であった可能性とがあり得るわけで、後者であるとすれば、Avexを含む全ての人が、「モナー」の図柄をそのままあるいは改変して商品を製作し販売して利益を得て構わないし、「モナー」の図柄を改変して新たな図柄を創作した場合にはその新たな図柄について自己に著作権があることを主張して構わないわけです(「コモンズ」から入手した原材料を使用して「商品」をつくることが一般的に許されているのと同様です。)。
 
 もっとも、Xさんは利用許諾の範囲・対象について何のコメントもしていないので、商用利用を含めて包括的に利用許諾する意思であったか否かは確定的には知り得ないということができます。ただし、従前、「モナー」が商品化された際にXさんが権利行使してこなかったということは、商用利用を含めて包括的に利用許諾する意思であったのではないかと推認するための一つの間接事実にはなります。
 
 いずれにせよ、商用利用を含めて包括的に利用許諾を行う意思であったのか、あるいはそのような包括的な利用許諾を今後も継続するのかということは、専らXさんが決めることであって、ひろゆきさんや、「2ちゃんねるコミュニティ」の方々が決めることではありません。
 そういう意味では、Xさんの意向を無視して、「モナー」の図柄についての利用許諾の範囲・対象について勝手に限定を行い、大騒ぎしている人々というのは、著作権法の観点からはいかがなものかなあと思ってしまいます。「モナー」の図柄についての著作権に関していえば、「みんなのもの」でも「2ちゃんねるコミュニティ」のものでも、ましてひろゆきさんのものでもなく、Xさんのものなのです。


【追記】
 Xさんが、不特定人に対する包括的な利用許諾を黙示的に行ったと見るべきではなく、単に何らかの理由で著作権の行使を行っていないだけだとした場合、2ちゃんねるその他の掲示板における「モナー」の利用等も著作権侵害となる可能性があるということになります。Xさんが「モナー」の図柄を一度も2ちゃんねるに投稿していない場合はもちろん、投稿時に表示される内容にXさんが拘束される謂われはありません。他方、Xさんが「モナー」の図柄を2ちゃんねるに投稿したことがあったとして、投稿時に表示される内容についてこれを承諾したと言えるのかというと法的にはかなり微妙です。なお、当事者の(黙示的な)意思を合理的に解釈するという手法は、広く用いられる手法です。
 なお、Linuxの場合、GPLライセンスという特殊なライセンスのもとで自由な利用を許諾しており、GPLライセンスまたはこれと類似するライセンスを採用していない「モナー」について同列に扱うことは明らかに不当です。
 また、「米酒」の図形商標について商標登録がなされたとしても、「モナー」の図柄の従前の用法が規制されることはない(せいぜい、一升瓶のようなものを手に持って立っている「モナー」の図柄を商標的に使用する「便乗商品」が出現したときにこれを規制しうる程度のものであり、ネット上でまことしやかに流布されている「危惧」は法的にはほとんど意味のないものである。)ので、「米酒」の図形商標についての商標登録により「モナー」の図柄が使用できなくなるということを前提にする議論というのは、的はずれではないかと思います。
 
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 12:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (34) | TrackBack (10)

10/07/2005

パブコメ2005〜強制許諾

新たな強制許諾制度について次のようなコメントを提出しました。


新たな裁定制度の創設について

 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第10条が実演家に、第14条がレコード製作者に排他的権利を与えることを義務づけているのは、そのレコード(に固定された実演)について、有線又は無線の方法により、公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において利用が可能となるような状態に置くことを許諾する権利であり、それ以外の方法で「商業上の目的のために発行されたレコードを放送又は公衆への伝達のために直接又は間接に利用することについて」は、実演家及びレコード製作者に「単一の衡平な報酬を請求する権利」を享有させれば足ります(同第15条)。

 したがって、公衆のそれぞれが選択する場所及び時期において特定のレコード(に固定された実演)を利用することが可能となるような状態に置くという方法以外で、有線または無線の方法により「商業上の目的のために発行されたレコードを放送又は公衆への伝達のために直接又は間接に利用すること」を強制許諾の対象とし、または報酬請求権の対象とするに留めることは国際条約に違反しない。
 
 したがって、インターネットラジオやインターネットテレビ等においてレコードに固定された実演を公衆送信することについては、公衆の側で特定のレコードを特定の時期に視聴できるインタラクティブなタイプのもの以外については、強制許諾の対象とし、または、公衆送信権の対象から除外して報酬請求権の対象とすることは、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約等に反するものではありません(なお、インターネットラジオ等においてはこれを「放送」するにあたってはレコード(に固定された実演)を一次的に送信用サーバのハードディスクに固定する必要がありますが、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約における「放送」は、「公衆によって受信されることを目的とする無線による音の送信、影像及び音の送信又はこれらを表すものの送信」と定義されており(第2条(f))、日本法でいう「公衆送信」よりもさらに広い概念ですので、インターネットラジオは日本法上「自動公衆送信」にあたるという文化庁の見解を前提としても、インターネットラジオの放送局を「放送機関」と解することは十分に可能であり、したがって、インターネットラジオの放送局が自己の手段により自己の放送のために行う一時的固定については複製権の侵害とはならない旨規定することは、国際条約に反しないということができます。)。
 
 日本においては、インターネットラジオは有線放送ではなく自動公衆送信にあたるという見解が多数説を占めており、かつ、実演家及びレコード製作者に送信可能化権を付与している一方、インターネットラジオの放送局が包括的にまたは個別のレコード・実演について許諾を得るためのシステムが用意されておらず、または用意される見込みがないのが実情です。
 米国等では地域FMに代替する手段としてインターネットラジオが広く開設され、公衆が多様な楽曲に触れる機会を創出しているのに、日本では、著作隣接権がインターネットラジオによる著作物の伝播を妨げてしまっています。日本の楽曲が、日本のインターネットラジオ局により広く「放送」されることは、日本の楽曲に世界中の人が触れる機会を増やすことに繋がり、それは日本のコンテンツを広く世界中に「輸出」する原動力ともなります。
 
 したがって、国際条約に反しない範囲で、著作隣接権者の個別の許諾なくしてレコード(に固定された実演)をインターネットラジオで「放送」することができるように、強制許諾制度を導入するなり報酬請求権に落とすなりすることを望む次第です。

Posted by 小倉秀夫 at 12:23 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

10/05/2005

パブコメ2005〜私的録音録画補償金編

とりあえず、下記のようなパブコメをメールで提出しました。


 私的録音録画補償金について
 
 私は、私的録音録画補償金制度はそもそも廃止すべきであると考えます。
 なぜならば、私的使用目的の録音録画がデジタル形式で行われたとしても、そのことは、権利者の経済的利益を何ら害しておらず、したがって、「補償」の対照となる損失が何ら生じていないからです。
 より詳しく述べると次のようになります。
 まず、私的使用目的の録音録画は、音楽CD等の売上げを一般に減少させません。
 iPodを例にとって説明すると、iTunesというソフトウェアを用いて市販のCDからパソコンに接続されたハードディスク等に楽曲データを複製し、上記ハードディスクに蔵置されている楽曲データを同じくiTunesというソフトウェアを用いてiPod内蔵のハードディスクに複製するということで2回の私的使用目的の複製がなされることになりますが、この2回の複製がなければ当該ユーザーは同じCDをさらに2枚余分に買ったであろうかといえば、ほぼ100%そんなことはないと言い切ることができます。
 また、ハードディスクタイプの家庭用ビデオ機器においても、通常は、その番組が放送している時間帯にはその番組を視聴することができないので時間をずらしてそのテレビ番組を視聴するために番組を録画する「タイムシフト」視聴目的の録画のために用いられています。現在、見たいテレビを見逃してしまった視聴者のために、放送直後からその番組を収録したDVD等を販売するような利用方法は一般に行われていないのですから、このような「タイムシフト視聴」目的の録画が著作物等の通常の利用を妨げていないことは明らかです。 

 また、仮に私的録音録画補償金制度を維持しまたは対象を拡大する場合、音楽CD等に収録された他人の著作物等の複製に用いない対象製品について補償金相当額の返還を受けるために要する費用については、指定管理団体の側で負担すべきであると法律に明記すべきです。
 なぜならば、対象製品を私的使用目的の録音録画に用いない者はそもそも私的録音録画補償金を支払う義務を負わないところ、権利者側の事務負担を軽減させる目的で権利者側の要求に応じて対象商品の製造業者が補償金相当額を購入者に無断で製品価格に上乗せしてしまっているわけで、当該製品の購入者が補償金相当額の返還請求をせざるを得ない状態に陥ったことについて、購入者はこれに何ら寄与していない一方、権利者側は多大な寄与をしているからです。また、権利者側がそのような手続に要した費用を負担しなければならないとなれば、私的使用目的の録音録画以外の目的に用いられる蓋然性の高い製品について補償金の支払を求めることを控えたり、補償金相当金の返還を受けるための手続を簡略化したりするインセンティブが権利者側に生ずることとなり、法の趣旨に反して過剰に補償金が徴収される事態をある程度抑制することができます。

Posted by 小倉秀夫 at 07:43 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (2)

09/30/2005

PCJapan11月号

PCJapan11月号用に、「のまネコ」問題と商標法との関係についてのコラムを書きました。
(まだ、初稿を提出しただけで、ゲラもあがっていませんけど)

Posted by 小倉秀夫 at 11:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (16) | TrackBack (1)

09/23/2005

「のまネコ騒動」についての違和感

 私は、著作権法が、新たな作品の創作や作品の流通を阻害する方向で働くことを、比較的ネガティブに捉える傾向があります。だからこそ、ケンブリュー・マクロード「表現の自由(R) vs 知的財産権」なんかを「そうだ!そうだ!」と思いながら読めてしまうわけです。

 そういう観点からすると、「恋のマイワヒ」について、おそらく原盤権者の許諾なしに作成されオンラインで公開されたであろうフラッシュ映像を、著作権法を活用して押しつぶすのではなく、むしろ積極的にプロモーション用に活用したAVEXの決断は一種の「英断」として比較的高く評価していたりします。どうせなら、これをきっかけに、「洋楽の空耳フラッシュはAVEX的にはOK!。だけど優秀作品はプロモで使わせてね」という方針をAVEXが採用してくれれば、AVEXが権利を買い取った楽曲に限られるにせよ、原盤権者の著作隣接権によって阻害されることなくフラッシュ作家が創作性を発揮できるようになるわけで、今回の件は、表現の自由と知的財産権の新たな調和点を見出す一つのエポックメイキングとなる素地があったはずです。

 しかし、今回の騒動では、むしろ、ネット上の大衆の側が、コンテンツホルダー側の表現活動を阻害するために著作権法を持ち出してしまったわけで、せっかくコンテンツホルダー側が少し歩み寄ってきたのにネットワーカーたちがテーブルをひっくり返してしまったようにも見えます。今回のことで、AVEXがネットワーカーに敵意を抱き、フラッシュ作家を次々と潰していく方針に変更しないように希望する今日この頃です。

Posted by 小倉秀夫 at 12:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (23) | TrackBack (12)

09/19/2005

「恋のマイアヒ」論争

 「恋のマイアヒ」のプロモーションビデオに用いられている「のまネコ」の絵が、インターネット上の電子掲示板などでしばしば用いられている「モナー」を無断で複製ないし翻案したものなのではないかとして、AVEX等を非難する人が何十人か何百人かいるのだそうです。


 法律的には、

  1. 先行作品である「モナー」において「創作性のある部分」とはどこか。
  2. 原告(民事の場合)または告訴人(刑事の場合)は、当該「創作性のある部分」を付加して「モナー」を創作した者またはこの者から正当に権利の譲渡を受けた者なのか
  3. 上記「創作性のある部分」と同一又は類似する部分が後行作品である「のまネコ」に組み入れられているか
という点が問題となります。

 アスキーアートの場合、一般にこの「創作性のある部分」が狭いのでデッドコピーの場合を除くと著作権侵害は成立しにくい面があります。それ以上に、匿名掲示板系の流行作品の場合、そもそも「創作性のある部分」を付加して新たに作品を創作したのが誰であるのかを把握するのが困難なので、逆に言うと、そのような作品を無断で利用してもどうせ誰も訴えてこられないだろうと考えてるのはある意味合理的です(仮に実話であればかなりの確率で著作者性を証明できそうな「電車男」ですら、著作者の許可なくして出版され、映画化され、テレビドラマ化されれています。まして、著作者性の証明しようがない「モナー」ならなおさらそうです。)。

 そういう意味では、AVEXが今のところひるんでいないというのは想定の範囲内にあるといえます。

 何しろ、AVEXは、CCCD問題やレコード輸入権問題などで昨年はだいぶネットワーカーの非難を受けましたから、ある意味非難を受け慣れたという面もあるでしょうし、さらにいえば、CCCD問題のときは自分たちに強く抗議してくる人々というのはAVEXにとって「上客」がかなり含まれていることが容易に想定できるのに対し、「のまネコ」騒動で元気なネットワーカーの場合、そもそも「上客」がどの程度含まれるのかという点に疑問が持たれうるからです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (22) | TrackBack (6)

09/12/2005

総選挙結果

 川内議員・横光議員が比例で踏みとどまってくれたことは不幸中の幸いですが、衆議院文部科学委員会で音楽ファンのために頑張ってくれた若手議員の方々が、民主党上層部の戦略ミスのおかげで、次々と落選してしまったのは残念というより他にありません。

 今後4年間は、著作権法の改悪を阻止するという観点からは、非常に冬の時代を迎えそうです。

 とりあえずは、暴力・破廉恥系のコンテンツ愛好者の方が深刻だとは思いますが。

Posted by 小倉秀夫 at 09:02 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (0)

09/08/2005

はてなブックマーク

はてなブックマークを始めました。

Posted by 小倉秀夫 at 09:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

09/03/2005

Imagine there's no country.

 SMEの井出靖さんは、

 音楽配信は確かに脚光を浴びていますが、“配信ならでは”という、CDを上回る楽しさやメリットがはっきりしたときこそが、本当のブレイクタイミングだと考えています。
述べたのだそうです。

 「CDを上回る楽しさやメリット」ですが、一つは簡単です。物理的な制約があるCDと異なり、いろいろな国のいろいろな人のいろいろな楽曲をENJOYすることができる。これだけでも十分CDを上回る楽しさやメリットがあります。アメリカやイギリスやフランスやドイツやスイスなど様々な国の人々から喝采を浴びた音楽を私たち日本人も楽しみ、また私たちが「これは素晴らしい」と思った楽曲をそれらの国々の人々に聴いてもらう。それができるだけでもCD時代よりも遥かに進歩しています。

 ところが、それをさせないのがSMEをはじめとするレコード会社の方々です。欧米のiTMSのダウンロードランキングで上位に入っている楽曲の大部分が日本のiTMSではダウンロードできません。日本のユーザーは、日本だけ特別に高いお金を支払わされるのはとりあえず諦めて受け入れているわけですが、金額以前に、それらの楽曲をダウンロードすること事態許されていないわけです。

 BBS並行輸入事件高裁判決の判例評釈で論文デビューした私にとって国際的市場分割というのは昔から追いかけているテーマの一つであって、そこでは企業が利潤を極大化するために日本在住者に対してのみ特別に高い価格を押しつけるという企業の政策が法的保護に値するのかということが中心テーマになっていたわけですが、音楽配信で見せつけられた現実はそれを上回っています。いわば国際的情報分割といいますか、日本在住者がある種の情報を適法に入手する手段を排除し、日本にいてはその情報にアクセスすることができなくなるようにする手段として著作隣接権が活用されているわけです。現行の法制度のまま楽曲データの流通手段の主流がCDから音楽配信へと移行し、音楽配信でのみ楽曲データを販売するということが日常化していった場合、レコード会社は、「黄色人種がうじょうじょいる日本という国に住んでいる奴らに聞かせてやっていい楽曲と、奴らに聞かせるのはもったいない楽曲」とを峻別することが可能となります。

 例えばアメリカにおいて、黒人の割合が多い地区でダウンロードできる楽曲と白人の割合が多い地区でダウンロードできる楽曲とに顕著な差を設けたら、人種差別だということで大問題になるでしょうし、黒人の割合が多い地区でのダウンロードを許諾しなかったレコード会社はおそらくもたないでしょう。しかし、「国境」というマジックワードが挟まると、何となく納得してしまう人が多いようです。でも、よく考えてみれば、ある人種なり宗教なり民族なりが多数派を占める地域の住民をある種の情報から排除することを倫理的に正当化する要素に「国境」がなりうるかというとたぶんに疑問です。自由主義社会に属しているはずの日本において、情報が日本国内に流入することを排除する特権を特定の人々に認めてしまうなんて!!

 私は、音楽において、私有財産制度がない社会まで想像せよといっているのではありません。適切なライセンス料なら喜んで支払います。でも、音楽配信時代になったら、もう「国」という概念がないことくらいは想像し、実現してもよいのではないかって思うんですよ。「夢想家」にすぎますかね。

Posted by 小倉秀夫 at 11:02 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (0)

09/02/2005

オンラインストレージサーバと公衆用自動複製機器

 次号のPCJapanの連載コラムでは、iDisk等のオンラインストレージサーバが、著作権法第30条第1項第1号等にいう「公衆用自動複製機器」にあたるのかどうかについて論じてみました。

 解釈次第では、アップルの担当者が5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処せられる可能性があるという由々しき事態ですので、興味がある方は、次号発売におりにお読み頂ければ幸いです。

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08/30/2005

法とコンピュータNo.23

 法とコンピュータ学会の学会誌である「法とコンピュータ」の第23号が公刊されました。

 その中で私は、「P2Pに関する法律問題」という論文を掲載して頂きました。ご興味がおありの方はお読み頂ければ幸いです。

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08/29/2005

図書館において著書を蔵書とする方が著作者の利益を害するのか、蔵書としない方が害するのか?

 推理作家の三田誠広氏らを中心に繰り広げられている「公貸権」創設論というのは、その著書が図書館に蔵置されると作家が経済的な損失を被るということを前提とするものでした。しかし、その正反対のことを主張する作家たちもいます。最判平成17年7月14日判例集未登載[船橋市立図書館蔵書廃棄事件]で、原告である「新しい歴史教科書をつくる会」等は、その著書を市立図書館の蔵書でなくすることは怪しからぬことであると主張したのです。

 公立の図書館には蔵書を廃棄するにあたっての内部的なルールが定められており、各図書館に置かれた司書は、このルールに則ってどの蔵書を廃棄処分とするのかを決定します。したがって、問題の司書が、「新しい歴史教科書をつくる会」やこれに賛同する者等及びその著書に対する否定的評価と反感から、その独断で、図書館の蔵書のうち「つくる会」らの執筆又は編集に係る書籍を大量に廃棄処分としたことは、上記内部的なルールに違反した行いであることは間違いないので、当該図書館を管轄していた教育委員会が当該司書に懲戒処分を科したというのは当然のことといえます。

 また、図書館は、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」であり(図書館法2条1項)、「社会教育のための機関」であって(社会教育法9条1項)、国及び地方公共団体が国民の文化的教養を高め得るような環境を醸成するための施設として位置付けられているのであって、「図書館資料の収集、提供等につき、㈰住民の学習活動等を適切に援助するため、住民の高度化・多様化する要求に十分に配慮すること、㈪広く住民の利用に供するため、情報処理機能の向上を図り、有効かつ迅速なサービスを行うことができる体制を整えるよう努めること、㈫住民の要求に応えるため、新刊図書及び雑誌の迅速な確保並びに他の図書館との連携・協力により図書館の機能を十分発揮できる種類及び量の資料の整備に努めること」が公立図書館に求められている(「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」)ことを考えれば、司書が恣意的に蔵書を廃棄処分としたことにつき、当該図書館の利用者たる住民が国賠訴訟を提起するというのならば分からなくはありません。

 ただ、そこから「公立図書館が、上記のとおり、住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは、そこで閲覧に供された図書の著作者にとって、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる。」と言われると思わず首を傾げてしまいます。著作者の側から積極的に図書館を「その思想、意見等を公衆に伝達したいので私の著作を置いて欲しい」と申し出ているのならば、図書館が著作者にとっても思想等を伝達するための公衆の場であるというのは分からないでもないです。しかし、実際には、作家たちは、図書館に自分の著書が収蔵されると書籍の売上げが減少するから公貸権をよこせ云々といっているわけで、図書館をそのような「公的な場」として積極的に活用しようという意図はさらさらなかったのです。

 最高裁は続けて、「したがって、公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。そして、著作者の思想の自由、表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると、公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であ」ると判示するのですが、「思想の自由」も「表現の自由」も、自らの思想等の公衆への伝達へのサポートを国家に積極的に要求する社会権的な要素を含みませんので、図書館においてその著書を収蔵されたものの利益が法的保護に値する根拠として思想の自由や表現の自由を持ち出すのは筋違いではないかと思います。

 その著書が図書館において廃棄されないということが法的保護に値する著作者の利益だとすると、各地方公共団体ごとに定めた内部的なルールに従って蔵書を廃棄することだって違法行為となりかねません。各地方公共団体には著作者から「人格的利益」を奪う権限はないからです。したがって、この最高裁判例を前提とする限り、各自治体は、著作者の「人格的利益」を損なわない「蔵書廃棄ルール」を模索するか、または、内容的に好ましくない書籍は住民からのリクエストがあっても収蔵しないように、収蔵前に入念に内容を審査することが求められるのではないかと思います。

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08/25/2005

コスプレを巡る法律問題

ゲームラボでの連載用に、「コスプレを巡る法律問題」を書き上げました。

しかし、「コスプレ」を巡っては、ゲームラボでの予定文字数3000字では書ききれないほどの論点が、誰にも指摘されないまま埋まっていると思いました。

Posted by 小倉秀夫 at 07:11 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

08/24/2005

作曲家の収入

 作曲家の穂口雄右さんの「テレビが独占する音楽著作権利益の実態(1)」がネット上で話題となっています。

 特にこの部分です。

しかし実態は違います。1枚のアルバムCDから一人の作曲家に分配される印税は契約によって、良くて定価の約0.14%、多くは約0.1%、許せないのはたったの約0.05%しか支払われなケースが増えているという事実です。つまり音楽ファンが14曲入り3000円のCDを買っても、その作品を作った音楽家一人には、時にはわずか約1円60銭の収入にしかならないのです。これでは若手音楽家の生活は安定しません。

 本当なのでしょうか。

 日本レコード協会加盟のレコード会社からCDが販売される場合、JASRACに支払われるべき著作物使用料は、

(税抜定価ー税込定価×5.35%)×6%÷収録楽曲数


ですから(安藤和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス2 実践編」123頁参照)、定価3000円(税抜)で収録楽曲が14曲なら、JASRACに入ってくるのが約12.135円です。ここからJASRACの手数料6%を差し引くと、約11.407円。これを作詞家、作曲家、編曲家、訳詞家、音楽出版社等で分配するわけです。

 で、JASRACの「著作物使用料分配規程」をみると、作詞家、作曲家、編曲家、音楽出版社に分配しなければならない場合、作曲家の取り分は、最も低いときでも3/16あります(通常は1/4〜1/3だとは思いますが)。すると、約2.139円は作曲家に入ることになります。

 もちろん、著作物使用料分配規程第29条第3項は、「第1項の規定中関係権利者に音楽出版者が含まれる場合において、他の関係権利者がその取分を音楽出版者から受領することを音楽出版者との契約に同意したときは、使用料の全額を当該音楽出版者に分配する」とありますから、通常は、JASRACは1枚1曲あたり約11.407円の使用料全額を音楽出版者に支払い、音楽出版者は各作詞家、作曲家等との契約に基づいてこれを分配するわけで、契約の内容によっては、作曲家に約1.60円しか支払わないでもよいようになっているということもあり得ないわけではないです。しかし、力関係に差があるからといってあまりに不合理な条件を押しつけていると、そういう契約は公序良俗に反するとして無効となってしまいます。で、現時点では「公序良俗に反するか否か」の基準は、JASRACの「著作物使用料分配規程」に置かざるを得ないので、その最低基準と比べても低すぎる額しか配分されないということになれば、そのような契約は「公序良俗に反して無効である」とされる可能性が高まります(すると、音楽出版者は、JASRACから収受した使用料を、合理的な管理費用を差し引いた上で、不当利得として当該作曲家に返還すべきということになりそうです。)。

穂口さんはひょっとして、音楽出版者から出たお金がさらに中間搾取者に搾取された後の数字を言っているのでしょうか(参考、著作権マニアさんのブログ)。

Posted by 小倉秀夫 at 02:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

James Blunt に聞いてみる。

James Bluntの"You're Beautiful"は、多くの国のiTMSではダウンロード可能であり、実際ダウンロード回数では上位に入っているのに、iTMS for Japanではダウンロードできないので、James Bluntの公式WEBサイトに掲載されていた連絡用メールアドレスにメールをして、どうしてiTMS for Japanではダウンロードできないようにしたのかを聞いてみることにしました。

はたして回答は返ってくるでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 01:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/22/2005

「選撮見録」訴訟資料公開

いわゆる「選撮見録」訴訟について、原告と被告が提出した主張書面が公開されました

被告側としては、やれるだけのことはやったつもりですが、いかがでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 02:59 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

総務省のパブコメ

 もともと、著作隣接権者が著作権法上の保護を受けられるのは、著作隣接権者が著作物を公衆に伝達する上で大いに貢献することを期待されているからです。従って、著作物の公衆への伝達を阻害するために著作隣接権を行使するのは本末転倒であるといえます。実演家やレコード製作者が、放送や有線放送による著作物の公衆への伝達を阻害するために著作隣接権を行使することがないよう、実演・レコードが放送・有線放送されることについて隣接権者が隣接権を行使する道を事実上閉ざし、二次使用料請求権を行使することを許すにとどめる法制度を我が国の著作権法が採用しているのは筋が通っているといえます。

 その意味では、ラジオやテレビと同じように著作物を公衆へ伝達する手段としてインターネットが活用できるようになってきた現在、実演家やレコード会社が、インターネットによる著作物の公衆への伝達を阻害するために著作隣接権を行使することがないような法制度を採用するのが筋であることは疑うべくもありません。私は、日本の著作権法は、放送・有線放送か否かの区別を「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う」か否かにおいている以上、IPマルチキャストはもちろん、ユニキャストでも同じ時間には同じ内容のデータが公衆に送信されるタイプのもの(非オンデマンド型)については「有線放送」にあたると考えていますが、文化庁がそれとは異なる解釈を示している以上、政策論的には、IPマルチキャストや非オンデマンド型のユニキャストについて、有線放送と同様に、実演家やレコード製作者の許諾なくしてこれを行えるようにする(そのための一時的な複製も免責することを忘れずに)ことが望まれます。

 また、放送事業者や有線放送事業者の著作隣接権もまた、建前上は、その著作物を公衆に伝達する上で大いに貢献する機能を保護するために認められているわけですから、これが著作物の公衆への伝達を阻害するために活用されるとすれば、それもまた本末転倒であることは明らかです。したがって、インターネットを活用して放送・有線放送されたコンテンツを再送信することは放送事業者等の許諾なくして行えるようにするのが筋であるといえます(放送事業者等の経済的利益を保護するためには、広告収入・無料放送で成り立っている民間放送の場合、再送信にあたってコマーシャルフィルム部分を削除すること及び新たにコマーシャルフィルムを付加することを禁止すれば足りるはずですし、有料放送の場合、再送信の回数に応じて再送信事業者が放送事業者等に二次使用料を支払うようにすれば足りるはずです。)。そうすれば、地上波が十分に届かない地域において、テレビ番組を視聴するために必要な設備に関して、異業種間での競争が起こり、より高性能の設備がより低価格で提供されるようになる可能性があります。

 どうせならその際に、再送信の受信地域制限を設けないこととし、日本中どこにいても同じ番組を視聴できるようにしたらよいと思います。あるテレビ番組を受信していい地域と受信しては行けない地域とをテレビ局が決めるというのは、放送事業の公共性にそもそも反します。テレビ局には、「国民の知る権利」に地域格差を設ける権限などあるべきではないのです。

 せっかく総務省さんがパブリックコメントを募集しているようなので、そういう声をみんなで上げてみるのもいいのではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 01:22 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

08/14/2005

文教委員会所属の議員さんへの質問

衆議院文部科学委員会所属の議員さんたちの4分の1くらいに次のようなメールを送信しました。


衆議院議員         先生


 私は、今回の総選挙においては、著作権法の2007年改正問題についての態度を重視している者のひとりであります。つきましては、衆議院の文部科学委員会に所属されている各党の議員の方々に、下記の質問をさせていただいております。突然の解散総選挙でご多忙のこととは存じますが、ご回答いただければ幸いです(先生のご回答は、私のウェブサイト上で公開させていただくことを予定しております。)。

【ご質問】
1. 著作権の保護期間延長に反対かどうか

2. 私的録音録画補償金制度を廃止するとともに、正規商品の代替品を市場に供給しない複製を私的使用目的の複製として保護し続けるかどうか

3. コンテンツのストリーミング型配信について、少なくとも一定の禁止期間経過後は、コンテンツホルダーの権利を許諾権から二次使用料請求権へとシフトさせるかどうか

4. 原盤権者に対して、楽曲のオンライン配信について日本国内又は他のG8参加国内にある事業者の一つにライセンスを付与した場合、他の事業者に対しても、少なくともそれと同程度の条件でライセンスを付与することを義務づけるかどうか


【ご質問の趣旨】
1 IT技術の発展により私たちは消費生活における新たなる利便性を様々に獲得できるようになったはずでした。しかし、既存の著作物についてのコンテンツホルダー(著作権者、著作隣接権者等)といった既得権者が手厚く保護されすぎているため、私たちはこのIT技術の発展による恩恵を十分に受けることができません。それどころか、先端的なIT技術を中核とするベンチャー企業等が消費者に様々な利便性をもたらす新たな商品やサービスを開発し提供しようとするにあたって、専らこの商品やサービスを妨害するために、既得権者が著作権等を行使するという現象が頻発しており、私たちは、欧米諸国の市民と同レベルの消費生活を満喫することができないでいるのが実情です。
 そこで、既得権者と新しい起業家、そして私たち消費者の利益バランスをどうお取りになるのかの試金石という意味でも、著作権法改正問題についてのスタンスというのは重要だと考えております。


2 著作権の保護期間の延長を認める正当性というのは、「創作へのインセンティブを確保する」ことの1点しかありません。すると、今後創作される著作物についてはともかく、既に創作されてしまっている著作物についてまで著作権の保護期間延長の効果を及ぼすことには何ら正当性はありません。既存の著作物について著作権の保護期間を延長するというのは、既存の著作物について著作権を有しているというだけで不労所得を得、または、当該作品の利活用を阻害している人・企業の既得権を拡大するという意味しか持ちません。
 したがって、私は、今後著作権の保護期間が立法によって延長されるにせよ、その延長の効果が既存の著作物に付いてまで及ぶこととすることには反対いたしております。

3 iPod等のハードディスク型音楽再生機器を私的録音録画補償金の適用対象とするように音楽関係団体が各所に働きかけを行っていると聞き及んでいます。しかし、これらの機器への私的使用目的の複製は、CDという「通勤通学の途中で再生するのに不便なメディア」からiPod等の「通勤通学の途中で再生するのに不便なメディア」へとデータを移す「メディアシフト」のために行われているのが通常です。このような「メディアシフト」のための複製については、「それさえなければ正規商品が余分に売れていたであろう」とは一般的に言えないので、コンテンツホルダーに何ら経済的な損失を与えておりません。したがって、iPod等が私的録音録画補償金の対象となるとすれば、それは、経済的損失の裏付けがない補償金制度を創設するということになるのであって、コンテンツホルダーが国民に対して一種の間接税を徴収することを認めるということになります。
 私は、このような形で、国が既得権の不当な拡大に手を貸すことに反対しております。

4 日本は世界に先駆けて送信可能化権を、歌詞・メロディ等の著作権者及びレコード会社等の隣接権者による許諾権として法定してしまいました。そのため、同じ先進国であるアメリカやイギリス、フランス、ドイツなどで普及しているサービスを、日本の消費者が享受できないという事態が現実に発生しています。
 例えば、インターネットを介して音声等をストリーミング配信するインターネットラジオは、日本は特に立ち遅れた状態にあります。といいますのも、無線または有線によるコンテンツ配信のうちコンテンツを公衆に向けて同時に配信するもののみを放送・有線放送としてあとで二次使用料を支払えばレコード会社などの許諾を得なくともコンテンツを送信できるとしているのに対し、コンテンツが公衆に向けて同時に送信されないものについては、レコード会社等から事前に逐一許諾を得なければその配信は許されないものとされているからです。
 しかも、日本のレコード会社等は、音楽配信のためのライセンス交渉の窓口を用意しておらず、インターネットラジオ事業に参入しようとした業者が「お金なら支払うからCDに収録された楽曲をインターネットラジオで送信させてくれ」と申し込もうにも、その窓口すらない状態です。
 許諾権を適切に行使できず、文化遺産の公正な利用を阻害してしまっている権利者からは、許諾権を取り上げて、二次使用料請求権を代わりに与えるにとどめるのが、文化保護法である著作権法の努めだと私は思います。

5 現在の日本法の下では、どこの音楽配信サービス事業者に楽曲の音楽配信を行わせ、どこの事業者に行わせないかを決定する権限をレコード会社等の原盤権者が有していますが、この権限は、レコード会社等がその子会社、関連会社である音楽配信サービス事業者を、他の音楽配信サービス事業者より競争上有利におくために、子会社・関連会社たる事業者に音楽配信を認めた楽曲について、その競争相手である事業者には音楽配信を認めない等の差別的取扱のために利用されたり、アメリカ等の市民向けの音楽配信サービスでの音楽配信を認めた楽曲について日本の市民向けの音楽配信サービスでの音楽配信サービスを認めない等の民族的差別のために利用されたりしています(例えば、Sony Musicが権利を持っているPuffyの「アジアの純真」という楽曲は、アメリカのiTunes Music Storeではダウンロード販売されていますが、日本のiTunes Music Storeではダウンロード販売されていません。)。
 このように、日本国民は、消費生活のレベルにおいて明らかに差別を受けているのが実情であり、その差別を後押ししているのが、既得権者保護の色彩が強すぎる現行著作権法の諸規定です。

 私は、日本の消費者が欧米の消費者と比べて露骨に差別されている状態を黙って放置していられる政治家を──その方が他の話題でどんなに勇ましいことをいっていたとしても──「愛国者」だとは金輪際思わないものであります。 

Posted by 小倉秀夫 at 04:25 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

08/13/2005

「郵政解散」かもしれないけど、私にとっては「iPod選挙」

 郵政事業の民営化って、私にとってはどっちでも良い話題であって、そんなものを争点にされたって困ってしまうなあというのが正直な感想です。ちょっと陰謀論的にいえば、郵政事業の民営化問題なんて大抵の国民にとってはどうでも良いことなので、こういうものを争点にしてしまえば、「小泉=改革派、反小泉=守旧派」みたいな路線に国民もあっさり乗ってくれるのではないかという思惑があったのではないかという気がしなくはありません。実際には、財政投融資に問題があるというのであれば、郵政事業を民営化しなくったって、財政投融資のあり方を変更すればいいだけなのではないかという気がするので、民営化反対=守旧派ってほど単純ではないとは思うのですが。

 そんなことより、既得権者と国民とどちらの味方をするのかがはっきり分かれるのは、著作権法改正問題です。

 著作権の保護期間の延長問題は、少なくとも既に著作権が発生している作品についても保護期間を延長する限度においては、「インセンティブ論」とは全く関係がない、現在のコンテンツホルダーの既得権擁護以外の意味を持ちません。

 また、メディアシフトのための私的複製が行われているにすぎないiPod等への私的録音録画補償金課金問題もまた、経済的損失の裏付けがない補償金制度の創設の是非という問題であって、コンテンツホルダーによる国民への不当な搾取を法の力によって義務づけようとするものです。これまた、既得権の拡大という意味しか持ち得ないものです。

 また、現在の日本の著作権法は、どこの音楽配信サービス事業者に楽曲の音楽配信を行わせ、どこの事業者に行わせないかを決定する権限を原盤権者に与えており、また、日本の独占禁止法制は、原盤権者がその子会社、関連会社が音楽配信サービスを行うことを認め、さらに、原盤権者の子会社・関連会社に音楽配信を認めた楽曲について第三者に音楽配信を認めないという差別的取扱いを明らかには禁止していません。その結果、音楽配信についていえば、日本国民は、日本と同レベルの経済水準にある諸外国と同様の消費生活を享受できない環境におかれています。

 インターネットラジオについても、文化庁は非オンデマンド・ストリーミング型ですら放送・有線放送ではなく自動公衆送信だと言い張っており、かといって、レコード会社にライセンスのための条件整備を促すこともしないため、「お金を支払ってもいいから、日本の楽曲をインターネットラジオで流したい」と思っても流せないでいるのが実情です。これなど、既得権者たるレコード会社にどんな利益があるのかすら理解できないのです(自分たちが権利を握っているコンテンツが第三者の手により有効活用されてしまうこと自体が、レコード会社の「明日のインセンティブ」を奪うとでもいうのでしょうか。)。

 そこで、私は、今回の選挙の争点は、


  1. 著作権の保護期間延長に反対かどうか

  2. 私的録音録画補償金制度を廃止するとともに、正規商品の代替品を市場に供給しない複製を私的使用目的の複製として保護し続けるかどうか

  3. コンテンツのストリーミング型配信について、少なくとも一定の禁止期間経過後は、コンテンツホルダーの権利を許諾権から二次使用料請求権へとシフトさせるかどうか

  4. 原盤権者に対して、楽曲のオンライン配信について日本国内又は他のG8参加国内にある事業者の一つにライセンスを付与した場合、他の事業者に対しても、少なくともそれと同程度の条件でライセンスを付与することを義務づけるかどうか


ということにしようかと思います。まあ、衆議院の文教委員会の議員さんたちに質問状を出してみて、無視されたらそれまでですが。

Posted by 小倉秀夫 at 10:49 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (6)

08/09/2005

世界に一つだけの花

 野口聡一さんのリクエストで、SMAPの「世界に一つだけの花」のさわりの部分が世界中に放送されました。その後、野口さん自身が、キーボードで、「世界に一つだけの花」のさわりの部分を演奏している映像も流れてきました。それらの映像を見て、「世界に一つだけの花」という楽曲は日本では非常にポピュラーなのだということを知った方が、きっと世界中にいるでしょう。そういうことを知ったら、是非とも「世界に一つだけの花」を聞いてみたいという人も世界中にはたくさんいることでしょう。
 
 しかし、折角始まったiTMS日本版にSMAPの楽曲は登録されていないので、世界の人々は「世界に一つだけの花」を試聴することができません。仮にiTMS日本版にSMAPの楽曲が登録されていたとしても、iTMSはbilling adressの所在地ごとに利用者が寸断されてしまっていますから、日本国内にbilling adressがない人々は、「世界に一つだけの花」を試聴してこれを気に入ったとしても、これをダウンロード購入することができません。どうしても「世界に一つだけの花」を聞きたかったら、現実的には、WinMXやKaZaA等でダウンロードするしかないのでしょう。
 
 また、野口さんが「世界に一つだけの花」のことを平和を願う歌だといっていたのを聞いて、その歌詞に興味を持った人も世界中にはたくさんいることでしょう。日本語が使える環境にある人は、「世界に一つだけの花」&「英訳」でググると民間有志の行ったいくつかの英訳にたどり着くのですが、残念ながら、おそらくこれらのほとんどは、日本の著作権法のもとでは著作権法違反となってしまいます。歌詞をそのままネットにアップロードするのはJASRACにライセンス料を支払えば適法にこれを行うことができるのですが、歌詞の翻訳及びそのアップロードについては権利処理を行う団体等が存在していないからです。
 
 知的財産戦略本部は、日本の優れたコンテンツを世界に流通させていくために、こういうところの改善を積極的にやるべきなのではないかと思うのです。
 つまり、日本の楽曲を世界中の音楽配信サービスでダウンロードできるようにするために、世界中の音楽配信事業者と日本のコンテンツホルダーの間を取り持つとか、日本の楽曲の歌詞を自主的に翻訳してアップロードしてくれる人々が著作権侵害の汚名を浴びせられることがないように、日本のコンテンツホルダーに働きかけて、「非営利目的の歌詞の翻訳及びそのアップロード」についてはこれを自由に行えるように包括的に許諾させてしまうとか、そういう小さいことの積み重ねをきっちり行っていくことこそが、日本を「知財立国」に近づけていくと私は思うのです。
 
 著作権は全て自分たちの管理下で行使させなければ気にくわないというコンテンツホルダーも少なくないとは思います。しかし、「J-POPの歌詞を英訳して市場に流通させる」という事業は当面採算の取れる事業としては成り立ちそうにないわけですから、「非営利目的の歌詞の翻訳及びそのアップロード」を無償で許諾させたところで、著作物等の「通常の利用」を害することにはならないのであり、それどころか、その翻訳された歌詞を見た人が楽曲データを購入してくれる可能性があるという意味では「通常の利用」を促進してくれる可能性すらあるのです。そういうことを理路整然と説いて、コンテンツホルダーたちに正しい権利行使の道を歩ませることこそ、「有識者」を集めた知的財産戦略本部が本来なすべきことなのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 03:37 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

08/08/2005

衆議院解散?----では、今後の著作権法改正についての意思を確認しよう。

 郵政民営化法案が、参議院で賛成少数のため否決されたそうです。新聞報道によれば、小泉首相は従前より同法案否決のときは衆議院を解散させると表明していたそうなので、近々衆議院が解散し総選挙となる可能性が高いです。

 今度の総選挙で選ばれる国会議員は、おそらく2007年度の著作権法改正について議決権を行使できる可能性が高いので、Pro-Copyright系の方々とAnti-Pro-Copyright系の方々とどちらがどれだけ多く当選するのかということはとても重要です。

 したがって、私は、自分の選挙区の候補者が判明したら、候補者全員に、今後の著作権法のあり方について3〜5個くらいの質問をしてみたいと思います。

 良かったら皆様も、ご自分の選挙区の候補者に、質問をしてみてはいかがでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 03:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

OHM9月号

月刊誌「OHM」の9月号に、「放送と通信の融合」に関するコラムを寄稿しました。
その中で、インターネットラジオは放送・有線放送ではなく自動公衆送信であるという文化庁見解に対し、ストリーミング型かつ非オンデマンド型については違うのではないかとの反論も述べています。

Posted by 小倉秀夫 at 11:40 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/05/2005

iTMSの感想(1)……あるいはS社の人種隔離政策に対する皮肉

 早速、iTMSをいじってみました。
 
 で、感想は、「日本版とそれ以外の断絶が大きい」ということでした(もちろん、Apple社は精一杯頑張ったのだと思います。)。

 それにしても、米国や英国や独仏等にbilling adressがあれば購入できる楽曲が、日本にしかbilling adressがないために購入できないというのは、腹が立ちますね。洋楽について日本国内での販売等の権利を取得したレコード会社の皆さんは、日本の音楽ファンを屈辱的な気持ちにさせて何が嬉しいのか、私には未だ理解できないのですけど。

 「○○には提供されるサービスが自分たちには提供されない」ということから、自分たちが差別されているということに目覚める例なんて、現代史を勉強すればいくらだって出てくると思うのですが(例えば、ここ)、レコード会社の皆さんって、世界史それも近現代史って勉強されないのでしょうか。

 まあ、「日本人なんぞ、欧米人と同様の消費生活を享受させるに値しない」とばかりに、日本にしかbilling adressを持てない人間には自社コンテンツをiTMSで提供することを殊更に拒んだ某S社が、一応日系企業とされているというのはある種の皮肉ですね(黄色人種に対する差別感情以外に、欧米のiTMSでは購入できる楽曲について日本のiTMSでは購入させない合理的な理由があれば、お聞かせいただきたいものです。)。

Posted by 小倉秀夫 at 08:45 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (1)

08/03/2005

利用主体の拡張しすぎと請求の趣旨

ゲームラボの連載コラムの9月号分は、

 「ときめきメモリアル」事件のように、その利用者がそれを著作権等侵害行為に(も)活用できる機器類等を不特定人に売り渡してしまっているような場合に、当該機器類の輸入・販売業者を侵害主体として侵害行為の差止めを求める訴訟を提起するとしたら、請求の趣旨はどのようにすべきかという点をテーマにしています。

 管理支配性がないか又は非常に弱い場合にも利用主体の拡張を認めてしまう見解の弱点の一つに、実効性のある請求の趣旨を構成することが難しいということがあるからです。

Posted by 小倉秀夫 at 03:01 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/31/2005

私的録音録画補償金について質問してほしいこと

 川内議員のblogに

8月3日の文部科学委員会一般質疑において今後の方針等を、大臣答弁で確認したい、と思います。

みんなも、何か聞いて欲しいことがあったらコメントを寄せてください。

との記載がありましたので、下記コメントを投稿しました。


 iPod等のHD型音楽プレイヤーの場合、移動中にまたは異動先で音楽を聴くのにより便利なように、楽曲データが蔵置される媒体をシフトするいわゆる「メディアシフト」目的で楽曲データが私的に複製されることになります。
 この「メディアシフト」目的の複製の場合、正規商品たるCDパッケージ(正確にいうと、「メディアシフト」目的の複製の場合、シフト元の媒体は正規商品であるCDパッケージを用いることが多いので、2枚目以降のCDパッケージということになります。)は、価格競争以前に、媒体の性質故に、私的複製物に対して代替性(市場競合性)を有しないということになります。
 平たくいえば、iPod等がなかったとしたらiPodのハードディスク内に蔵置されている音楽データの代わりに正規のCDパッケージが追加的に購入されていたであろうという関係はないということです。
 そうすると、iPod等のハードディスク型音楽プレイヤーにおける「メディアシフト」目的の複製は、音楽産業に対して何らの経済的損失をも与えていないということになります。そうだとすると、iPod等の場合、私的録音録画補償金によって補償を行う前提を欠くと言えるように思います(「補償」というのは「損失」があることが前提です。)。

 川内先生にお聞きいただきたいことは、iPod等も私的録音録画補償金の対象とするといった場合の、補償の前提となる「経済的な損失」というのはいったい何なのかということです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:45 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

07/30/2005

ベルヌ条約には私的複製の制限についての記載はない

 日本音楽著作権協会ら音楽関係の7団体は、相変わらずiPod等のハードディスク型音楽再生機を私的録音録画補償金の対象とするように強く要請しているようです。

 私的録音録画補償金制度自体、利用者側が権利意識に目覚める前に作り上げてしまったものなのですから、利用者側が権利意識に目覚めてしまった昨今、私的録音録画補償金の対象を拡張したいなんて言い出せば、却って、私的録音録画補償金制度自体見直せという声が利用者から上がってくることくらいは普通に予測できたわけだし、昨年のレコード輸入権騒動以来、政治家にとってその種の利用者の声というのは必ずしも無視できないものになってきているくらいの認識はあってもよさそうなものなのですが、音楽7団体側にそのような戦略性は感じられません。

 特に、日本の音楽ファンの間では、「iTunes Music Store」による合法的な音楽配信サービスを受けられないことの不満がたまっているわけで、そのような中、「iPodを私的録音録画補償金の対象とせよ」なんて言ってしまえば、強い反発を受けることは目に見えていると思うのですが。

ITMediaの記事によると、日本音楽著作権協会の吉田茂理事長は、

私的複製の制限については、ベルヌ条約(著作権に関する国際条約)にも記載されており、日本でHDD/フラッシュメモリオーディオなどに関する補償金制度がないのは条約違反ですらある
なんて述べたそうなのですが、ベルヌ条約には私的複製の制限については何も記載されていないですし、実際、ベルヌ条約加盟国のほとんどはHDD/フラッシュメモリオーディオ等に関して補償金制度なんてないわけで、吉田理事長が本当にこんなことを言ったのだとすればお粗末としかいいようがないです。

ベルヌ条約において「複製権」について規定しているのは第9条です。第9条は次のように定められています。

(1) Authors of literary and artistic works protected by this Convention shall have the exclusive right of authorizing the reproduction of these works, in any manner or form.

(2) It shall be a matter for legislation in the countries of the Union to permit the reproduction of such works in certain special cases, provided that such reproduction does not conflict with a normal exploitation of the work and does not unreasonably prejudice the legitimate interests of the author.

(3) Any sound or visual recording shall be considered as a reproduction for the purposes of this Convention.

 第1項では、ベルヌ条約で保護される作品の作者は、その作品を複製する権限を与える排他的権利を持つべきであるということを規定しています。正確にいうとこれは条約(国と国との間の約束)ですから義務の主体は「国」ということになりますので、そのような作品の作者がそのような排他的な権利を持つように国内法を整備することを加盟国は義務づけられているということになります。

 第2項では、特定の場合にそのような作品の複製を許可するべきか否かということは、ベルヌ条約加盟国において、立法府が取り扱うべき問題である、つまり、どういう場合に(作者の許可なくして)作品の複製を行うことは、ベルヌ条約加盟国の各国内において立法府が決めればいいことであって、立法府の決定に対してはとやかく言われる筋合いはないということを定めています。

 ただし、そのような立法を行うにあたっては、二つの条件に従う必要があります。

 1つは、そのような複製が、その作品の「a normal exploitation」と「conflict」しないことです。
 もう1つは、そのような複製が、その作品の作者の「the legitimate interests」を「unreasonably」に害しないことです。

 ここで、「exploit」とは、 Merriam-Webster Online Dictionaryによれば、「to make productive use of」という意味ですから、「a normal exploitation」とは、(その作品の)通常の営利的な利用くらいの意味になります。そのような利用と「conflict」するような、すなわち、そのような利用と競合してこれを成り立たなくするような複製まで許可してしまうような立法はさすがにやめてくれと言うことをベルヌ条約はいっているわけです。
 また、ベルヌ条約が合理的な理由なくして害するなといっているのは「the legitimate interests」であって、「私が苦労して創作した作品を活用して勝手に儲けている人がいると、『明日のインセンティブ』が奪われてしまうよう!」なんていっても、そういう「明日のインセンティブ」みたいなものは「the legitimate interests」にはあたらないのです。

 では、音楽ファンが、個人的に使用する目的でiPodに(パソコンを介して)楽曲をダウンロードすることは、作詞家・作曲家、実演家、レコード会社等々による当該楽曲の「通常の営利的な利用」と競合してこれを成り立たなくするようなものなのかといえばたいそう疑問ですし、そのようなダウンロードが行われたからって作曲家等の「the legitimate interests」なんて全然害されてなんかいないでしょう。通常は、いつでもどこでもその楽曲を聴けるようにするために、携帯型メディアであるiPodにメディアシフトしているだけなのですから。

 iPod等を私的録音録画補償金の対象としないことがベルヌ条約に違反するといいたいのであれば、iPodによって通常行われる私的使用目的の複製(メディアシフトとしての複製)が作詞家・作曲家、実演家、レコード会社等々による当該楽曲のどのような営利的利用とconflictするのか、あるいは、どのような「the legitimate interests」が害されているというのかを、先ず示すべきでしょう。

 音楽関係7団体は、「音楽の創作サイクルのため、必要であると考えている」「政令指定をしないまま現状を放置することは、文化芸術の振興を妨げる」なんてことを言っていたようですが、ハードディスク型音楽再生機が私的録音録画補償金の対象となっていない国々(そもそも、私的録音録画補償金制度がない国々を含む。)にて、「音楽の創作サイクル」が崩壊し、「文化芸術の振興」が妨げられてしまっているのかというと、大いに疑問です。彼らは、まともに比較制度論ができないのでしょうか。

【追記】
Internet Watchの方の記事をみると、音楽関係7団体の声明では、

私的録音が許されるのは極めて零細な使用だからだと主張。権利者団体の調査によると、私的録音された楽曲の51%が私的録音補償金制度に含まれないデジタルオーディオプレーヤーなどの機器や記録媒体で録音され、仮にそれらの楽曲をパッケージで購入すると試算すると3,400億円に達する。こうした状況は「零細な使用とはいえない」
ということのようですね。

 しかし、著作権法第30条第1項により私的使用目的の複製が許されるのはそれが極めて零細な使用だからであるという方をする場合(それ自体、必ずしも正確ではないのですが)、「極めて零細な使用」というのは、個々人が当該著作物に関して行う複製について表現しているわけで、日本国中で行われている同種の複製をかき集めた上で相対的に見たとしてもなお「極めて零細な使用」といえるか否かなんてことはもともと考慮の対象外です。したがって、デジタルオーディオプレーヤーなどの機器や記録媒体で録音された楽曲数が日本中で何曲あるかなんてことは、デジタルオーディオプレーヤーを用いて行われる私的使用目的の複製が「極めて零細な使用」といえる限度を超えているかどうかという議論とは全く関係がありません。

 さらにいえば、「デジタルオーディオプレーヤーなどの機器や記録媒体で録音され」た「楽曲をパッケージで購入すると試算すると3,400億円に達する」なんて数字は全く意味がありません。
 私は、正規のCDをAmazonやHMV等で購入した上で、PowerBookG4→iPodという経路で私的使用目的の複製を行うことで、通勤中や出張先で音楽を聴いて楽しんでいるわけですが、ではPowerBookG4のような音楽再生が可能なパソコンや、iPodのようなデジタルオーディオプレーヤーがなかったとしたら、PowerBookG4内の私的複製物、iPod内の私的複製物の代わりに、正規のCDをさらに買い足していたであろうかと問われれば、そんな馬鹿なことはしないと答えることでしょう。正規のCDパッケージがたくさんあったって、iPodのハードディスク内の音楽ファイルの代替品などなりはしないのですから。従来は、私的複製物が正規商品と代替性を有するのか否かということが議論の対象となっていたと思うのですが、「メディアシフト」についていえば、そもそも正規商品が私的複製物と代替性を有しているのか否かということが問われているのです。そして、正規商品:同一楽曲についての2枚目以降のCD、私的複製物:メディアシフトの目的でiPodの内蔵ハードディスクに蔵置された音楽ファイルという場合についていえば、もはや正規商品は私的複製物と代替性を有していないといわざるを得ないのです。したがって、「『メディアシフトの目的でiPodの内蔵ハードディスクへの音楽データの複製』がなければ音楽著作権者らはこれだけの利益を実際よりも多く得ていたであろう」という関係を見出すことができず、私的録音録画補償金制度により補償すべき「損失」自体を観念できないのではないかと思ってしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 07:37 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (9)

選撮見録訴訟弁論終結

 今年の1月に第1回口頭弁論期日が開かれた「選撮見録」訴訟ですが、本日、弁論終結しました。判決言渡期日は、10月24日と指定されました。様々な論点が組み合わさった複雑な事件なので、弁論終結から判決言渡しまで約3ヶ月というのは、まあやむを得ないでしょうね。

 弁論終結期日当日になって、田村善之教授と茶園成樹教授の鑑定意見書がテレビ局側から提出されました。田村教授は、ファイルローグ事件のときも向こう側で鑑定意見書を提出していたので意外ではないですが、茶園教授についてはちょっと意外です。田村教授といえば、7月20日付けの朝日新聞に、

 北海道大の田村善之教授(知的財産法)はファイル交換ソフトによる複製について「技術的な環境を整える必要があるが、利用を自由にした上でその対価を集めるシステムに変えるべきだ」と指摘する。「デジタル社会の恩恵を享受することの足かせに、著作権法がなってはいけない」

なんて記載があるのですが、なんだか多くの人の目に触れるマスメディアで言っていることと、訴訟における鑑定意見書というほとんどの人の目に触れないところで言っていることと、だいぶ言っていることが違うのではないかとも思ってしまいます。

 面白いのは、テレビ局側は、著作権法の解釈について、JASRACの従業員の方の鑑定意見書も証拠として提出していた点です。JASRACの従業員って、その意見が、著作権法の特定の条文についての特定の解釈の正しさに対する信用性を高めるほどの権威をいつから持つようになったのでしょうか。っていいますか、JASRACの従業員の方の鑑定意見書を提出するということは、テレビ局側の弁護士による著作権法の解釈よりも、JASRACの従業員の方による解釈の方が、裁判所に信用される可能性が高いということを、テレビ局側が自認しているということを意味してしまうのではないかとも思うのですが、それって自虐的にすぎないかなあと私などは思ってしまいます。

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07/26/2005

PC Japan 9月号

PC Japan 9月号用の連載記事では、

「タイムシフト視聴」というのは、結局のところ、視聴者が自分の生活サイクルに合わせてテレビ番組を視聴するということであり、「タイムシフト視聴」を禁止するということは、テレビ番組の放送時間にテレビを視聴できる環境に身を置くことができるようにする、すなわちテレビ番組の放送時間に生活のサイクルを合わせるのでなければ、視聴者に視聴したい番組を視聴させないということを意味します。

といった観点から、タイムシフト視聴について書いてみました。

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07/22/2005

テレビ番組のネット最新と地方テレビ局の未来

 今日は、総務省が2006年を目途にテレビの地上デジタル放送をインターネット経由で各家庭に配信できるようにする方針を固めたとのニュースが注目を浴びました。

 技術的な話は技術者の方にお任せするとして、著作権法的には、他人の著作物や実演を放送・有線放送する場合の規定と、自動公衆送信する場合との規定を、放送・有線放送側に合わせる方向で法改正していくか、非オンデマンドタイプのストリーミング配信については放送・有線放送に該当するということで公権的な解釈を変更する(または明文の規定を置く)ということが考えられるように思います(著作権者や隣接権者に送信可能化禁止権を残した状態で、権利処理機構をつくることで対処しようというのは、実際には難しいと思います。)。

 ただ、これをやると、東京キー局が制作した番組を周辺地域向けに転送するのが主な仕事となってしまっている地方テレビ局がその社会的な役割の大半を失うことになるので、反対するのだろうなあとは予想してしまいます。

 私としても、高速インターネット回線も衛星回線もなかった時代は、全国津々浦々に動画コンテンツを送り届ける重大な社会的役割を地方テレビ局が担ってきたわけで、その歴史的な意義を軽視するわけでありません。ただ、全国津々浦々に動画コンテンツを届けるのによりコストが安く済む手段が現実に選択可能となっていったとき、地方テレビ局の「インセンティブ」を守るために、このような新たな手段を選択することを妨げる法律をそのままにしておくというのは私には本末転倒であるように思えます。特に、地上波デジタルへの切り替えによって、「動画コンテンツをテレビ放送により各家庭に届ける」という手段は、これまでとは異なり、大きな投資を必要とする手段に成り下がってしまうわけです(都市部なら、地上波デジタル対応TVに切り替えるより、それなりの処理速度のあるパソコンを購入し、光ケーブルに切り替える方が、とりあえず安上がりなのではないでしょうか。)から、「動画コンテンツを各家庭に届ける」という方式を専らテレビ放送に委ねるというのは、「できるだけ多くの国民が一定の動画コンテンツを視聴できるようにする」という観点からもどんどん下策になってしまうわけです。

 ということで、「放送と通信の融合」の先には、「オリジナルコンテンツ制作力の乏しい地方テレビ局の淘汰」が待っており、それゆえ、彼らが「放送と通信の融合」への最大の抵抗勢力になるのではないかとの予測を開陳して、本日は寝ることとします。

 

Posted by 小倉秀夫 at 02:15 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

07/17/2005

「著作権は何を守るのか」 on be

 平成17年7月16日朝日新聞朝刊に添付されていた「be on Saturday」のb3に、朝日新聞社の、というかASAHIパソコンの丹治吉順氏が「著作権は何を守るのか」という題で著作権の保護期間の延長問題について論じた文章が掲載されています。著作権の保護期間が延長された場合の負の影響につき、巨大メディアがしっかりと解説を加えたという点は評価に値するでしょう。

 もちろん、新聞の特集記事ですから、「反対側の意見」もそれなりに掲載しています。ここでは、日本文芸家協会知的所有権委員長の三田誠広氏の意見が紹介されています。

 1つは、「例えばサンテグジュペリ(1944年)は欧米では権利が続いているが、日本では勝手に翻訳が出せる。野蛮な国と見られているであろう」というものです。

 しかし、ほとんどの国や社会において著作権の保護期間を有限とする旨の規定を置いているということは、どのような作品についても、いつかは「勝手に翻訳が出せる」状態に至ることを当然に容認しているわけです。日本では著作者の死後50年が経過すると「勝手に翻訳が出せる」し、ヨーロッパの多くの国では著作者の死後70年が経過すると「勝手に翻訳が出せる」し、アメリカでは著作者の死後95年が経過すると「勝手に翻訳が出せる」という程度の問題があるにすぎません。そして、私は幸か不幸か、「勝手に翻訳が出せる」ようになるまでに著作者の死後何年の月日が経過することを要するかということによって文明化の度合いを測る人々を見たことがありません。正直言って、著作者の死後50年と1日が経過したにすぎない著作物の翻訳が勝手に出せるということをもって日本を野蛮国と罵るフランス人に会ったことはないですし、著作者の死後70年と1日が経過したにすぎない著作物の翻訳が勝手に出せるということをもってフランスを野蛮国と罵る米国人に会ったことはない、著作者の死後75年と1日が経過したにすぎない著作物の翻訳が勝手に出せたあのころの米国は野蛮国であったと過去を反省している米国人をも見たことがありません。私と三田誠広氏とでは交際範囲が違うだけかも知れませんが、私でしたら、仮にそのようなことで日本を野蛮国と見る人々が外国にいたとしたら、その批判をあっさり受け入れて自虐的になるのではなく、そのようなことをもって日本を野蛮な国と見ることが間違っているということを堂々と申し述べることを選択したいと思っています。

 もう1つは、「権利が切れると誤植の多い安易なものが公開される心配がある。私生活を暴露した作品で遺族が迷惑する例もあり、その防止のためにも作者の孫の生存期間程度は権利を継続すべきです」というものです。

 しかし、三田誠広氏のこの心配は杞憂です。著作権の保護期間を経過した作品は著作物でなくなるわけではないからです。

 著作権法は、第60条において、

著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

と規定し、また、第116条において
1 著作者の死後においては、その遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者について第六十条の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第百十二条の請求を、故意又は過失により著作者人格権を侵害する行為又は第六十条の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。
2 前項の請求をすることができる遺族の順位は、同項に規定する順序とする。ただし、著作者が遺言によりその順位を別に定めた場合は、その順序とする。

と規定していますので、著作権の保護期間が経過したことを良いことに、私信を暴露して作家の名誉を傷つける行為に対してはその遺族がその差し止めを請求したりすることができるので、そのような心配はご無用なのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

07/10/2005

Posner's middle way

Grokster最高裁判決に関連して、米国連邦高裁判事であるPosner氏は、次のように述べます。

There is a possible middle way that should be considered, and that is to provide a safe harbor to potential contributory infringers who take all reasonable (cost-justified) measures to prevent the use of their product or service by infringers. The measures might be joint with the copyright owners. For example, copyright owners who wanted to be able to sue for contributory infringement might be required, as a condition of being permitted to sue, to place a nonremovable electronic tag on their CDs that a computer would read, identifying the CD or a file downloaded from it as containing copyrighted material. Software producers would be excused from liability for contributory infringement if they designed their software to prevent the copying of a tagged file. This seems a preferable approach to using the judicial system to make a case by case assessment of whether to impose liability for contributory infringement on Grokster-like enterprises.

意訳すると、

自社の提供する商品ないしサービスが著作権侵害行為に利用されることを防ぐ(コスト面も含めて)合理的な措置をすべて講じた場合、寄与侵害にはあたらないとしてやってみてはいかがだろうか。著作権者たちと共同してそれらの措置を講じてみたらどうだろうか。例えば、寄与侵害のかどで訴訟を提起できるようになりたい著作権者は、訴訟を提起するための条件として、コンピュータによる読み取りが可能な、除去不可能な電子的なタグをCDに付け、そのCDや、そのCDから抽出したファイルが著作権法により保護されるコンテンツを含んでいることを識別できることを要求するのである。ソフトハウスは、「著作権タグ」のついたファイルが交換されたファイルの交換を阻止するように設計した場合には、寄与侵害責任を免責されるとするのである。これは、Groksterのような企業に寄与侵害責任を課すかどうかを決めるために司法制度を利用する際にはより好ましい方法のように思える。

ということになろうかと思います。



 Groksterのような企業に対し著作権侵害責任を追及する──差止請求であれ、損害賠償請求であれ──にあたっては、その商品なりサービスなりが著作権侵害に利用されるのを防ぐために必要な情報を、当該企業に対し著作権者側で予め提供しなければならないとするのは、一つのあり得る提案です。本来想定した適法な利用を阻害することなくその商品なりサービスなりが著作権侵害に利用されるのを防ぐことが経済的、技術的に容易に実現できるのに防止策をとらなかったという場合に初めて、あえて第三者による著作権侵害行為に寄与しようという意図が商品等の提供者にはあったと推認することが許されるといえるのだ(その商品なりサービスなりが著作権侵害に利用されるのを防ぐには、その商品等の提供自体を中止したり、経済的または技術的に大変な困難性を伴ってしまうという場合に、結局著作権侵害に利用されるのを防ぐための対策を講じなかったということをもって、あえて第三者による著作権侵害行為に寄与しようという意図を推認してしまうのは、経験則に違背するのだ)といえるからです。

 我が国の法解釈としても、例えば差止請求訴訟においては、著作権侵害に利用されることを防ぐための方法を、具体的に実行可能な程度に特定することを原告たる著作権者に求めつつ、「著作権タグ」を付けるなどして著作権者側で一定の共同作業を行うことによって侵害防止措置を具体的に実行可能としうることが明らかになった場合には、原告側がそのような必要な作業を行うことを条件とする差止命令を下せばよいのではないかとも思えます。裁判所としては、被告たる商品等の提供者が著作権の侵害主体であるとの心証を固めた段階で、中間判決を下すなり、その心証を開示して、審理の対象を差止命令の内容の具体化に集中させればよいのですから、それほど難しい話ではないように思います。

Posted by 小倉秀夫 at 10:05 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

07/07/2005

Live8

 先週末というか今週初めというか微妙な時期に行われたLIVE8ですが、欧米では盛況のうちに終わったようです。太っ腹なAOLとMicroSoftのおかげで、6会場で行われたライブ・パフォーマンスを、日本にいながらにして見ることができます。こういうときほど、TEPCO光にしておいて良かったとしみじみ思うことはありません。

 私のゼミの学生にも、「これは将来の語りぐさになるので、音楽業界に進みたいと考えている人はできるだけ見なさい」という趣旨のことを述べておきました。1969年のウッドストック、1971年のバングラディッシュ救済コンサート、1985年のライブエイドと、後々の語りぐさになるコンサートというのは過去にもあったわけですが、今回のライブエイトもまた、同様にロックの歴史に刻まれていくことでしょう。

 残念なのは、日本会場でのライブが・パフォーマンスがオンライン上で見られないことです。AOLもMicroSoftも日本のアーティストのライブになど魅力を感じなかったからなのか、あまりにも時差が大きかったからなのか、日本だけ特別に権利処理が難しかったからなのか分かりませんが、Rome会場やParis会場と同じような扱いを受けて、そのライブ・パフォーマンスが世界に向けて発信されたのであれば、そのパフォーマンスを見たり聞いたりすることにより、そのアーティストに興味を抱く人々が世界中に生まれたかも知れないのに、本当に残念です。特に、AOLは今回、VODコーナーにおいて、動画映像のすぐ横に、iTMSやオンラインCDショップにリンクを貼り、その楽曲を気に入ったら、それが収録されているCDを購入したり、有料音楽配信のダウンロードをしたりすることをスムーズにできるようにしていますから、本当にすごい大きなチャンスだったのですけどね。

 それ以前に、日本会場の出演者の少なさを見るに付け、こういう世界的なイベントに参加することの意義というものをそもそも関係者が理解していないのではないかという危惧がないわけではないのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 01:50 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

07/05/2005

Grokster事件最高裁判決

Grokster事件最高裁判決についての簡単な解説を、次号のゲームラボに掲載することにしました。
ご興味がおありの方は、お読み頂ければ幸いです。

追記

 Grokster事件最高裁判決に関するPosner判事のエントリーに、Freenetの開発者であるIan Clarke氏がコメントを付けているようです。

Posted by 小倉秀夫 at 10:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

06/28/2005

Grokster事件速報

Grokster事件について、連邦高裁の判決が連邦最高裁で覆された模様です。

まずは、こちらを参照のこと。

PS
 とりあえず、みんなで手分けして仮訳をつくりませんか?


追記

 シラバス部分は、井上先生が仮訳を付けてくれたようです。

追記2
 ポスナー判事ベッカー教授のブログでも、この事件について議論がなされているようです。

追記3
 井上先生が仮訳を完成させたようです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:52 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

06/27/2005

共謀罪と著作権

PCJAPANでの連載用に、今国会で提出された「共謀罪」と著作権法との関係を書いて編集部宛に提出しました。

著作権侵害(著作隣接権侵害、著作者人格権侵害を含む。)って、最近の法改正のおかげで、長期4年以上になってしまった(5年以下の懲役又は禁固若しくは罰金)ので、共謀罪の対象となるのですよ。このことがどういうことを意味するのかが今回のエッセイのテーマです。

Posted by 小倉秀夫 at 03:20 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (5)

06/19/2005

SXSW 2005

 6月17日の夕方から、SXSW2005の報告会にゼミ生有志共々出席してきました。

 「日本のアーティストを世界に売り込む」ということのために日々努める人々の姿がそこにはありました。米国人等にも受け入れられる作品をアーティストたちは既に作り上げているのに、それを世界につなげるシステムなり支援機構なりを我々は未だ作り上げていないということが問題点として浮かび上がってきました。

 例えば、外国のアーティストがインタビュー等で日本の特定のアーティストの、あるいは特定の楽曲に言及したときに、それでその楽曲に関心を持った外国の音楽ファンがその楽曲を聴いてみたいと思ったときに、これを聞くことができるシステムが現状ほぼないといって差し支えないわけです。Apple や Napster等と組んで日本のアーティストの楽曲も広く米国や欧州等で音楽配信してもらうことでその問題は解決するわけです。そしてそれは、例えば、政府が日本のレコード会社の尻を叩き、Apple等との交渉を下支えするなどすれば実現不可能な話であるとは思えません。

 知的財産戦略本部系の知財立国論は、日本のユーザーに不便を強いることによって、コンテンツホルダーを富み栄えさせようというものが主流となっています。しかし、実際に必要なのは、こういう地道な作業を国が支援していくことなのではないかと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 10:24 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

06/13/2005

フィッシングと著作権

 今日の朝日新聞の夕刊の1面トップに、フィッシングを行っていた会社員が著作権法違反の容疑で逮捕されたというニュースが掲載されていました。

 もとより、フィッシングという行為が許されるべきでない行為であり、従ってそのような行為を行った者に刑事罰が下されるようになることに私自身反対するものではありません。

 ただ、フィッシングを著作権法で規制しようという点には大いに疑問を抱かざるを得ません。

 だって、フィッシングは、著名企業のロゴの創作性のあるデザインを複製ないし翻案して公衆に提示することが問題の本質ではないはずですから。そして、問題の本質をはずしたところで行為者を逮捕・起訴してしまうと、量刑の判断などに悪影響を及ぼします(例えば、著作権法違反被告事件であれば、「フィッシングによって集めた情報を何に活用する計画であったのか」ということは本来量刑の判断要素に含まれないはずです。)。また、悪質なフィッシング犯を処罰するために、本来ならば「著作物性」が認められないはずのロゴデザイン等に裁判所が無理矢理「著作物性」を認めてしまう危険だってあります。その結果、著作物性に関する裁判例が、著作物性の範囲を、本来あるべき姿以上に拡張してしまう虞だってあるのです。

 フィッシングにより入手したID、Password等を利用して不正アクセスを行ったかどうかを確認する前に、フィッシング行為を見つけた時点で、強制捜査を行い、被害を未然に防ぐ必要性を全く否定するものではありません。また、人を欺罔させてID、Password等を入力させる行為が(2項)詐欺罪等で処罰可能化というと、確かに危うい点もあるでしょう。

 そうであるならば、フィッシングを行った者を処罰する立法を行うのが筋というものです。方法としては、


  1. ID,Password等の、財産的利益の得喪に密接に関連する情報を詐欺罪等の保護法益に加える

  2. 不正アクセス防止法において、不正アクセス行為の予備的行為としてフィッシング行為を規定して処罰規定を設ける

  3. 不正競争防止法の中に、フィッシング用の模倣サイトの開設行為を不正競争行為とする規定を設ける


等があり得るように思います。そして、フィッシング行為を刑罰をもって規制するということ自体は与野党間に異論が有るとも思えませんから、条項案が固まればさっと可決することが可能でしょうし、元々推奨されるような行為ではなかったので、施行までさほど間をおく必要もないといえるかと思います。すなわち、フィッシングが日本でも問題とされるようになってから今回の逮捕に至るまでの間に、これを処罰する旨の法改正を行う時間的余裕は十分あったはずです。

Posted by 小倉秀夫 at 10:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (4)

06/10/2005

録画ネット仮処分異議申立事件東京地裁決定について

 この事件で裁判所はまず、「海外に赴任する者が、従来の自宅にテレビアン テナが接続されたテレビパソコンを残しておき、インターネットで自己のパソコンに接続して放送を録画し、それを海外の自己のパソコンに転送する行為は、著 作権法102条1項、30条1項により適法であると解することが可能であり、日本の自宅で使用するためのテレビパソコンに各種ソフトウェアをインストール して販売する行為自体も、違法となることはないと解することができる」としています。ここがスタートラインです。

 その上で裁判所は、「このような録画についての業者の関与の程度が高 まるに連れて、私的複製の要件である公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いないこと(著作権法30条1項1号)との要件や 使用する者が複製すること(同法30条1項柱書)との要件を満たさず、海外在留邦人の複製行為自体が違法となり、業者の行為も、海外在留邦人の行為との共 同行為や教唆又は幇助と評価される場合が生じてくる」としています。

 ここがまずわからないところです。

 複製に用いる機器が「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」か否かということは、誰でも使用できるものとして当該複製機器が 設置されているのか否かということだけが問題なのであって、複製機器の管理等に業者がどれだけ関与しているのかということは関係がありません。

 また、海外在留邦人が複製の主体であると認められる場合であっても、業者の関与の程度が高まると、「使用する者が複製すること」という要件を満たさなく なるという論理もよくわかりません。業者に教唆されようと幇助されようと、録画したデータを使用して日本のテレビを見ようと思っている海外在留邦人自身が 複製行為を行っているわけですから、まさに「使用する者が複製」しているとみるのが常識的だと思います。

 もっとも、海外在留邦人と業者とが「共同して」複製行為を行っている場合には「使用する者が複製」したとは言えないという見解も条文解釈としてはあり得 ます。では、録画ネットの場合はどうでしょうか。

 裁判所はまず、「各利用者は、テレビパソコンを所有して録画予約を 行っているものであるから、自然的観察により、各利用者の行為を本件放送の複製行為と認めることに何ら困難はない」としています。

 しかしながら裁判所は、

  1.  債務者が「テレビパソコン、テレビアンテナなどの機器類 及びソフトウェアが有機的に結合した本件録画システムのうち、テレビパソコン及び内部のソフトウェアの一部以外を所有し」ていること(具体 的には、テレビアンテナ、ブースター、分配機、ルーター、ホームページサー バー(利用者はそこでアクセス認証を受ける)、監視用サーバーを 保有していること)
  2.  債務者が「本件録画システムを設置・管理し」 ていること
  3.  債務者が「本件サービスが海外に居住する利用者を対象 に、日本の放送番組をその複製物によって視聴させることを目的としたサービスであることを宣伝し」ていること
  4.  「利用者は、それに応じて本件サービスを利用し、債務者 は、毎月の保守費用の名目で利益を得ている」こと

の4点を理由として、録画ネットを利用したテレビ「放送の録画行為は、 利用者と債務者が共同して行っているものと認めるべき」と判示しています。

 しかし、これで債務者が各利用者と録画行為を共同して行っていたというのは無理があるように思います。

 上記1〜4のうち、1,3,4が、利用者による録画行為を何ら分担する行為ではないことは明らかです。で、2は、利用者が私的複製するのに用いる機器・ システムを設置・管理しているということですが、それは利用者による複製行為を「幇助」するものではありえても、複製行為を分担して行ったと評価できるも のではありません。(私的使用目的の)複製行為に用いる機器等を業者が提供していた場合「使用する者が複製」していないとして著作権法第30条第1項柱書 の適用を受けられなくなるのであれば、同項第1号のような規定は不要です。しかし、そう考えられてはいないから、貸しレコード屋の高速ダビング機を潰すた めに著作権法第30条第1項第1号を創設したし(注1)、同号の適用が附則第5条の2により留保されている文献複写機については、 これを公衆に提供する業者が堂々と営業していられるのです。
 さらにいえば、アップル社は、「.Mac」会員に対して、「iDisk」というサービスを提供しており、個々のユーザーがその使用するパソコンにインス トールされたiTunesによりリッピングされた音楽データをアップル社が設置・管理するサーバディスク上にバックアップすることを可能とするサービスを 提供しています。東京地裁の論理が正しいのであれば、iDiskサービスを提供するアップル社もこれを使用して音楽データをバックアップする利用者も皆犯 罪者ということになりそうです(注2)


 また、「本件サービスはテレビパソコンのハウジングサービスにすぎない」と債務者が主張していたのに対し、裁判所は、「本件サービスは、単にテレビパソコンを預かり、空調など環境を管理し、各機器類に 電気を供給する等の通常のハウジングサービスの範囲をはるかに超えているものと認めざるを得ない」として、この主張を退けています。

 しかし、いまどき「通常のハウジングサービス」が「単にテレビパソコンを預か り、空調など環境を管理し、各機器類に電気を供給する」程度のサービスしかしていないというのはどこから得た情報なのか気にかかるところです。技術者を常 駐させて24時間態勢でネットワーク、ハードウェア、ソフトウェア等の監視を行い、障害発生時には即座に障害を取り除くための対応をすることとしているハ ウジング業者というのはもはや珍しくないと思いますし、データセンター内のルーター等まで利用者に購入させているところは少ないと思いますし、監視用サー バもハウジング業者の側で用意しているのが普通だと思うのですが、疎明資料として提出された「普通のハウジングサービス」の仕様書、パンフレット等がどこ のものであったのか興味があります。

 オリンピックやサッカー・ワールドカップ等一部の番組について海外転送されると非常に困ったことになるというのであれば、テレビ局とエフエービジョン社 とEPG事業者とで協議して、海外転送されるととても困る番組だけ特別の信号を付し、この信号が付されたものについては海外転送できないシステムを作り上 げればよいだけなので、両当事者は早く和解してもらいたいと思います。

 さらに付け加えるとすれば、個人的なことですが、私の自宅は最近民放各局の映りが非常に悪いので、録画ネット又はこれに類似するサービスを、日本国内の 電波状態の悪い地域の住民でも使用できるようにして頂けると嬉しいです。といいますか、このようなサービスが一般化すれば、
日本全国どこにいても東京キー局で放送された全ての番組を視聴できるようになり(地方に よっては、民放が5局あるとは限らないのが実情ですね。)、もは や東京キー局で製作した番組を垂れ流すだけの地方局は不要になる(地方局は、独自の番組製作を求められることになります)など、社会に多大なるメリットを もたらすことになるのではないかと思います。



(注1)
 もちろん、東京地決昭和59年4月6日判タ525号314頁のように店頭で高速ダビング機を客に使用させることを禁止するような仮処分申立てが認容され た例がなかったわけではありませんが、この仮処分決定は、理由も付さない、適用法例も明らかにしない、いわゆる「えい、やっ」とやってしまった決定であ り、裁判所も本案での審理に委ねたいと思っていたのか自信がなかったのか、金800万円という高額の保証金を立てさせたものであり、先例としての価値はあ りません。

(注2)
 「使用する者が複製」するとの要件を満たさないとのことであれば、著作権法第119条第1号括弧書きの適用を受けられないので、単に「公衆用自動機器を 用いて私的使用目的の複製を行った場合」と異なり、利用者の刑事責任は免責されません。

特に、録画ネットの場合、ファイルローグの件とは異なり、利用者の行為はそもそも適法な行為だったわけです。それなのに、業者がその適法な行為を行うため の環境を整えたら、利用者共々違法行為を犯したとの誹りを受けるというのは不可思議というより他ありません

Posted by 小倉秀夫 at 11:39 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

06/02/2005

録画ネット事件、異議申立却下決定を受けて

録画ネットに関する仮処分命令に対する異議申立事件について、6月1日に却下決定が下されたそうなので、民主党のエンタメ議連に次のようなメールを出しました。



民主党エンタメ議連事務局御中

 テレビチューナー付きパソコンとインターネットを利用して、日本で放送されているテレビ番組を海外にいながらにして視聴することを可能とするサービス「録画ネット」について、その差止めを命ずる仮処分に対する異議申立てが昨日東京地裁で却下されました。

 私はこの事件の代理人ではないので詳細はわからないのですが、仕事の関係で海外に赴任している友人、知人からも、日本のテレビ番組を視聴したいとの声はよく聞いており、ITを活用することにより、これが果たせることになったのであればそれは素晴らしいことであるのに、著作権法がこれを阻害してしまっているとすれば、著作権法の専門家として大変忸怩たる思いに駆られてしまいます。

 このサービスの利用者の多くは、テレビ局に別途視聴料を支払うことは吝かではないことが予想されますので、このようなサービスが適法となるような新規立法の制定またはサービス提供者とテレビ局との間の仲介などをしていただけると幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 06:44 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (2)

06/01/2005

改正案コンクール

 最近、憲法改正論が盛んです。既に読売新聞社は2回にわたり改正私案を出しているし、自民党も近々試案を公表するとしています。

 しかし、今の時代に合わなくなってきているという意味では、憲法よりも著作権法の大改正の方が急務なのではないかという気がします。日本国憲法はかなりできがいいですが、日本国著作権法はかなりできが悪いですから。

 文化庁は文化庁でいろいろ考えているようですが、憲法制定意思が盛り上がっているときには民間から改正私案がわっと提出されるように、民間から改正私案をわっと提出することによって、著作権制定意思を盛り上げていく時期なのではないかなんてことも考えます。

 ということで提案ですが、

我々の側で、さまざまに「著作権法私案」をつくって公表してみませんか。

 

Posted by 小倉秀夫 at 07:04 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

05/31/2005

「P2Pを巡る法律問題」に関する論文

 昨年、「法とコンピュータ学会」で発表した「P2Pを巡る法律問題」について、これをまとめた論文の初稿を、昨日、学会事務局に提出しました(締切前日に)。本文では、現行法の解釈論をガシガシとやっているのですが、まとめの部分では、この問題の解決は本来解釈論ではなく立法論でやるべきということを軽く触れていますので、少しご紹介したいと思います。

 立法論に関する私見を学会誌で述べるか否かは、まだ考慮中です。





五 まとめ

 以上、P2Pに関する法律問題について、現行法を前提とする解釈論を縷々論じてきた。

 この問題は、公衆が公衆に向けて様々な種類の情報を発信することを可能とする技術が現れた場合に、その技術を利用して公衆に向けて情報を発信したい者、その技術を利用して公衆に向けて情報を発信するのに便利なサービスを提供しようとする者、並びに、ある種の情報が公衆に向けて発信されることを望まない者、の三者について、誰にどれだけの我慢や負担を強いるのかということに帰着するものである。このような複数当事者の利害が対立する問題について、これら対立する利害を調整し、バランスのとれたルールを制定するのは、本来裁判所の仕事ではなく[55]、議会の仕事である。しかも、議会が予めルールを明文化してくれていれば、P2Pサービスを公衆に提供しようとする事業者は、何をし、または何をしなければ、法的制裁を加えられずに済むかを前もって知ることができるため、第三者の利益を不当に侵害しないビジネスモデルを構築してそこに多額の資金を投ずることが可能となる[56]。したがって、P2Pを巡る法律問題については、特別立法を制定することにより解決することが望ましいというべきである。



[55] 関係する様々な利害関係者の生の声を吸い上げる機能に劣る裁判所が背伸びをして「社会のニーズ」を判断して「法創造」を行おうとすると、勢い、より「公(おおやけ)性」をまとった利益集団の声を「社会のニーズ」と勘違いしてしまいがちになるのではないだろうか。裁判所が「法創造」を行わざるを得ない米国においては、重要な判例形成がなされる可能性がある訴訟事件については、訴訟当事者ではない利益集団が「裁判所の友(Amicus Curiae」として意見を述べる機会が与えられており、関係する様々な利害関係者の声を吸い上げる機能を裁判所が制度的に有している。このような機能を有していない日本の裁判所が「法創造」を行う前提となる「社会のニーズ」を適切に判断しうるのかは大いに疑問である。


[56] 「法創造」的な解釈により刑罰権の対象や対世的な禁止権の対象がアドホック的に拡張される法環境のもとでは、新しいビジネスモデルを構築しそこに多額の資金を投ずることには躊躇をせざるを得ない。そこには一種の萎縮効果が発生し、本来許されるべきあるいは推奨されるべき情報通信サービスが提供されなくなる危険が生ずる。特に、「法創造」的な解釈によりアドホック的に禁止されることとなったサービスを提供した会社の代表者が個人として多額の損害賠償義務を負うような法環境のもとでは、新しいビジネスモデルを構築して公衆に提示する新興企業の経営者は、裁判所による「法創造」という事前に予期し得ない現象によって、当該企業に投下した資本の額を超えてその個人資産まで喪失するリスクを負うことになるから、経済的合理性に基づいて行動する場合、自己の経営する企業では新たなビジネスモデルは提示すべきではないという結論が導かれることになる。しかし、そのようなリスクを怖れて誰も新たなビジネスモデルを構築しなくなれば、社会の発展を停滞することは明らかである。

Posted by 小倉秀夫 at 10:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

05/20/2005

日本のルール? JASRACによる「rule」ではなくて?

「「iTMSも日本のルールで」——JASRAC、ネット配信に期待」という記事によると、iTMSについて、JASRACは、Apple社に対し、「日本のルール」に従うことを求めているようです。

そこでいう「日本のルール」というのは、記事から判断すると、

1.  1曲あたり7.7%もしくは7.7円の使用料を支払うというルール
2.  ユーザーに著しい不便を強いるDRMを採用するというルール

のようです。

 前者についてはクリアできそうな気がしますが、後者は厳しそうですね。Appleとしては、

   iTMS→Mac→iPod

という利用手順ははずせないところですし、日本の消費者だけCD-Rへの焼き付けを禁止するDRMを開発して組み込むというのも大変そうです。それに、日本でだけそんなことをしたら、それこそ世界の笑いものですね。「日本の音楽著作権者って、なんて了見が狭いんだ!!」

 それ以前に、JASRACが、何を根拠に、配信事業者がDRMを課すか否かについて口出しできるのかを理解できていないのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 03:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

05/13/2005

レコード輸入権のその後

レコード輸入権導入後の運用状況等について原稿依頼が来てはいるのですが、実際のところどうなっているでしょうか。

洋盤はいよいよAmazonでしか買わなくなったので、私自身は実感がわからなくなってしまったのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 11:09 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (6)

05/08/2005

音楽の未来

月刊誌「OHM」の2005年5月号に「音楽の未来」という題で短い原稿を寄稿しました。

ここでは、「実力派の路上ミュージシャンが、その優れた作品を広く音楽ファンに届け、これにより生計を立てていくにはどうしたらよいか」というテーマについて手短に論じています。

Posted by 小倉秀夫 at 02:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

05/05/2005

CCCDとライセンス料等

 私的録音録画補償金制度を拡充するかあるいは縮小・廃止するかということが、次期著作権法改正の重要な争点となりつつあるようです。

 この問題を考える上で重要なのは、「著作物が複製されること自体によって、著作権者はいかなる損害を現実に被るのか」という視点で物事を考えていくことです。

 著作物の複製物が公衆に頒布される場合、正規製品と市場で競合しますから、正規製品の売り上げが減少したり、正規製品の出荷価格を引き下げなければならなかったりということで、著作権者が一定の損害を被りうるということはわかります。しかし、消費者が市販の音楽CDを購入してそのCDに収録されている楽曲をiTunesを通じてiPodに転送するようないわゆる「Media Shift」の場合、正規製品とは市場で競合しません。そのような「Media Shift」としての「複製」が野放しになされると、それがなされないときと比べて、正規製品の売り上げが減少してしまうとか、正規製品の出荷価格を引き下げなければいけなくなるという関係はありません。

 もちろん、貸しCD屋さんに言って音楽CDを借りてきてその収録楽曲をBlankCDに複製するような場合は、「CDレンタル&BlankCDの販売」は「正規の音楽CDの販売」と一定の限度で市場で競合します(ただし、消費者が音楽という娯楽に支出しうる金額が無限でなく、音楽CDの貸与を受けBlankCDを購入して複製するのに要する費用と正規の音楽CDを購入するのに要する費用とが同一でない以上、「CDレンタル&BlankCDの販売」が1つ増えると「正規の音楽CDの販売」が一つ減るという1対1の関係には立ちません。)。したがって、音楽CDが1枚レンタルされこれがBlankCDに複製されることにより正規の音楽CDの売上枚数がどの程度減少するかを「法と経済学」的な手法により分析した上で、これに対応するライセンス料の減少分を「CDレンタル許諾料+私的録音録画補償金」でカバーするというのは一定の合理性がないわけではありません。

 そういう意味では、「CDレンタル&iPodへの複製」により正規の音楽CDの売上枚数の減少分に対応するライセンス料の減少分を「CDレンタル許諾料+私的録音録画補償金」でカバーするのもまた不合理ではないかも知れません。ただ、「私的録音録画補償金」は正規の音楽CDを購入して「Media Shift」をしているだけのユーザーにも負担を課している点で問題が大きいような気がします。「CDレンタル&媒体への私的複製」によるライセンス料収入の減少を補うのは、もっぱらCDレンタルについてのライセンス料によってまかなうべきではないかと思います。

 そしてその場合、消費者に私的複製をなさしめない「CCCD」については、「CDレンタル&媒体への私的複製」によるライセンス料収入の減少を補うという意味を帯びないわけですから、公衆に刹那的に音楽を享受させることしかできないという意味で共通点を有する「公への演奏」と同様に考えていいのではないかという気がします。
 すると、JASRACの使用料規程によると、定員1万人までの会場で演奏する場合、5分あたり8000円のライセンス料を支払えばいいことになっていますから、CCCDのレンタル料金は、収録時間5分あたり0.8〔円/人〕でよいように思います。これでいくと、収録時間約60分の音楽CDで、0.8×(60÷5)=9.6円程度のライセンス料を支払えばよいということになります。現在、月間1万回の貸出しを行うレンタル業者は月額40万円、レンタル1回あたり40円のライセンス料を支払うことになっていますから、CCCDのレンタルについていえば、JASRACはライセンス料を取りすぎであると言えそうです。
 

Posted by 小倉秀夫 at 05:57 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (3)

04/30/2005

音楽CDは、なぜ売れたのか

 1990年代末から2000年代初頭にかけて、なぜ音楽CDが売れなくなったのかという議論が流行しました。そこでは、携帯電話やP2P、blankCDを利用したカジュアルコピー等がやり玉に挙げられました。しかし、最近は、1980年代末から1990年代前半にかけて、なぜ音楽CDがあれほど売れたのかという議論がなされているようです。

 烏賀陽弘道「Jポップとは何か──巨大化する音楽産業──」(岩波書店)は、

この成長は、アナログからデジタルへの技術革新や消費性向の変化という土壌に、テレビ・タイアップ、通信カラオケ、ミュージック・ビデオ、マーケッティングといった「Jポップ産業複合体」から生まれてきたセールス方法や新しい音楽メディアが花開いた結果である。
と述べています(194頁)。

 他方、David Kusek=Gerd Leonhard「The Future Of Music」(Barklee Press)は、

When CDs came onto the market and everyone had to convert from vinyl to digital, it was an unprecedented boom time for the music industry.
と述べています(86頁)。

 私が大学生のころにvinyl recordsからCDsへの切り替えが進み、そのことが60年代や70年代の音楽に再注目するきっかけを与えてくれたという意味で、"media conversion"のレコード産業全体の売り上げの増加への貢献は小さくないとは思いますが、"million seller"がいくつも生まれるようになったという現象の理由に関しては、烏賀陽さん的なアプローチの方が説得的であるように思います(「The Future Of Music」は主にアメリカの音楽事情を視野に入れているので、日本の音楽事情との間に齟齬があるのは仕方がないのですが。)。

 主に音楽CDを購入する人たちの情報摂取・娯楽の手段がテレビからインターネットへと移行するようになっていけば、ドラマやCMとのタイアップとして視聴者の意思にかかわらず楽曲を浴びせかけるという90年代的なセールス方法が効力を失っていくのは、やむを得ないことのように思われます。週間視聴率ベストテンの中に「サザエさん」や「笑点」が入ってくる現状では、テレビドラマとのタイアップに成功したということが「ヒット」への近道に必ずしもならなくなっています(タイアップ先のドラマがヒットすれば、タイアップ楽曲のヒットに結びつきやすいということは、「Born to love you」や「世界に一つだけの花」等の大ヒット等を見ても、未だ言えることではあるのですが。)。

 ネット時代に対応した「視聴者の意思にかかわらず楽曲を浴びせかける」手法が開拓されれば、テレビ視聴率の低下に伴うExposure機会の減少をある程度カバーできるのかも知れません。しかし、それを阻んでいるのは、IT産業に自由な(「無償」という意味ではありません。)楽曲の利用を許さないレコード業界自身ではないかと思います。
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 12:00 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (4)

04/28/2005

赤本掲載部分を読まれただけで満足されてしまう作品なんて

 高校受験にせよ、大学受験にせよ、受験対策をする際に、志望校(志望学部)の過去の入試問題を研究するというのは王道中の王道です。そして、志望校の過去の入試問題を研究するにあたっては、当該学校(学部)の直近数年分の入試問題とその回答・解説を掲載した過去問集を購入するのが便利です。著名大学(学部)の入試過去問集としては、駿台予備校やZ会で出版しているものもありますが、やはり老舗は、世界思想社教学社が出版している、いわゆる赤本シリーズです。

 本日の新聞各紙の報道によれば、世界思想社教学社が赤本シリーズに自分の作品を無断使用したのは著作権侵害に当たるとして、なだいなださんや、平田オリザさんら十一人と、財団法人川端康成記念会が計約730万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたとのことです。

 大学等が入試問題においてなだいなださん等の作品を転載するにあたっては、なだいなださんの許諾を必要としません。著作権法第36条第1項により正当化されるからです。

 著作権法第36条第1項

公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。次項において同じ。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

他方、過去問集の場合、「入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要」だからではなく、「入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定」に備えるために必要だから、当該著作物を「当該試験又は検定の過去の問題」として複製しているにすぎません。したがって、著作権法第36条第1項の適用を受ける可能性はほぼないでしょう。

しかし、過去問集への著作物の転載に対する利用許諾を集中的に管理する組織がない現状において、「過去問集の場合、著作権法第36条第1項の適用がないから、過去問に用いられた作品の著作権者から予め許諾を得ることなくこれを出版するのは著作権侵害だ」なんてことを言い始めたら、過去問集など出版できません。新聞報道によれば、2005年度版では、なだいなださんら11人の原告の対象作品については、「編集の都合上省略」と記載の上、過去問集から削除されているそうですが、これでは過去問集として求められている機能を十分に果たすことができていません。

ここ数年、副教材や問題集等に自己の作品が転載されている作家たちが副教材や問題集等の出版元を訴えるケースが激増しています。これらの出版元が適切な抗弁事由を見いだせないでいることもあって、作家たちは勝訴しているわけですが、結局この種の訴訟って、「私の作品を勝手に利用して収益を上げるのはけしからん」という一種のエゴイズムを満足させる意味しか持っていないように思われます。所詮、入試問題で転載されるのは各作品のごく一部にすぎず、過去問集の出版元は原則として入試問題で転載された範囲を同じように転載するにすぎないので、これが元の作品の「代替物」となる可能性はほとんどなく(逆に、入試問題や過去問集で一部分が転載されているのを読んで、その作品に興味を持ち、全体を読んでみようという気になるケースは少なからずある(少なくとも私が高校生の頃はそういうきっかけで元の作品を読むようになったことは少なからずあった。)、したがって、過去問集への自分の作品の一部分の転載を禁止したところで、各作家の収入が増えるわけではなく、「創作活動へのサイクル」が強化されるわけではないからです。

私は、誰がこれら作家たちを焚きつけているのかわかりませんが、「著作権=金のなる木」とばかりに欲に目がくらんで教育的配慮を忘れてしまうこれら作家たちの本を購入して読むことは当面差し控えたいと決意しました。

Posted by 小倉秀夫 at 12:33 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (7)

04/22/2005

著作権法の勉強法----(2)

 著作権法を勉強するにあたって何度も通読すべき教科書には、分厚すぎず、とはいえ何が論点となっているのか(そして、その論点について判例はどのような見解をとっているのか)がきちんと論じられているものを選ぶべきです。そのような観点から考えると、下記のもののうちいずれかを選ぶとよいでしょう。

  1. 斉藤博「著作権法(第2版)」(有斐閣・平15)
  2. 田村善之「著作権法概説(第2版)」(有斐閣・平13)
  3. 三山裕三「著作権法詳説—判例で読む16章」(レクシスネクシス・平16)
  4. 半田正夫「著作権法概説(第12版)」(法学書院・平17)

 民法や刑法などの普通の基本書になれている学生さんには田村・概説が読みやすいのではないかと思います。他の基本書と同様に、判例・裁判例や各学説を至る所にちりばめています。判例中心に勉強を進めていきたい方々には、三山・詳説が良さそうです。斉藤・著作権法や半田・概説は、分量的にバランスがとれているといえます。

 もっとも一つの基本書だけでは理解が深められなかったり、そもそも掲載されていない論点があったりということがあるので、参考書もあると助かります。全般系参考書としては次のようなものが参照に値します。

  1. 金井重彦=小倉秀夫編「著作権法コンメンタール(上)(下)」(東京布井出版)
  2. 加戸守行「著作権法逐条講義(四訂新版)」(著作権情報センター)
  3. 作花文雄「詳解著作権法(第三版)」(ぎょうせい)

 加戸・逐条講義は、著作権法の起草を担当した文化庁の役人が連綿と執筆しているので、立法者意思を知る上で、実務上は欠かせない文献です。ただし、判例学説等がほとんど掲載されていないため、これ一冊ではどうにもならないことも確かです。
 その点、上記コンメンタール、作花・詳解は、判例・学説の網羅性という意味では甲乙付けがたいといえます。あとは、あくまで教科書スタイルがよいのか、逐条形式がよいのかという好みの問題です。

Posted by 小倉秀夫 at 06:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/17/2005

著作権法の勉強法・・・(1)

 中央大学法学部での著作権法ゼミも来週から始まるので、著作権法の勉強方法について短期集中連載することにします。

 法律の勉強ですので、


  1. 法令集

  2. 教科書・参考書

  3. 判例集


が当然必要となります。

 コンパクトな六法だと著作権法が全部収録されていない場合がありますし、模範六法でも「著作権法」は全部収録されていても、施行令や施行規則、旧著作権法、各種国際条約等までは収録されていません。そのため、著作権法を本格的に学習するためには、著作権法、あるいは知的財産権法全体に特化した法令集が必要です。
 私のお薦めは、角田 政芳「知的財産権六法(2005)」(三省堂)です。
 著作権法令研究会編「著作権関係法令集(平成17年版)」(著作権情報センター)も悪くはないですが、著作権法関係だけで2800円はつらいかも知れません。

 また、著作権法は頻繁に改正されますので、政府が提供している「法令データ提供システム」を利用して、適宜最新の条文(未施行のものを含む。)をダウンロードしておくことが求められます。

 判例集については、斉藤博=半田正夫編「著作権判例百選 (第三版)」(有斐閣)は基本文献ですので、是非手元に置いてよく読んでおいておくとよいでしょう。その他、「判例著作権法—村林隆一先生古稀記念」も比較的お勧めできるものですが、こちらは定価が11550円とかなりお高いので、学生が購入するにはつらいのではないかと思います。その他、土井輝生「知的所有権法基本判例(著作権)」(同文館)や秋吉稔弘他著 「著作権関係事件の研究」(判例時報社)などもありますが、解説が薄いので、学生がわざわざお金を払ってまで買う必要もないでしょう。逆に、岡邦俊「著作権の法廷」(ぎょうせい)シリーズは、収録裁判例数は少ないですが、解説は充実していますので、読んでおいて損はないかと思います。著作権法に的を絞ったものではありませんが、赤尾太郎=岡村久道「サイバー法判例解説」(商事法務)には、比較的新しい裁判例についての簡潔な解説が掲載されています。

 裁判例については、百選等で引用された要旨部分だけではなく、判決文全体(少なくとも、「裁判所の判断」以降)を読むことが必要です。
 大学在学中で判例検索データベースを活用できる人はそれを利用すると、判例時報や判例タイムズ等の判例雑誌の何号の何ページにその裁判例が掲載されているかのみならず、その裁判例についての判例評釈が判例雑誌や学会誌等に掲載されていれば、どの雑誌の何号の何ページにそれが掲載されるかもわかります。したがって、そういう恵まれた環境にいる間は、これを活用しない手はありません。
 判例検索データベースが活用できない環境にいる場合は、最高裁判所のウェブサイトにアクセスして、「裁判例情報」データベースを活用するとよいでしょう。また、判例検索データベースを活用できる環境にある場合でも、最高裁の「裁判例情報」データベースの方がデータの収録が早いですから、念のため最高裁の「裁判例情報」データベースを検索してみることをお勧めします。
 最高裁の「裁判例情報」データベースで気をつけなければいけないのは、たとえ知的財産権がらみの判決であっても、最高裁判例は、「知的財産権裁判例集」データベースには収録されておらず、別途、「最高裁判例集」データベースをあたらないといけないということです。また、どの判例雑誌に掲載されたのかという書誌情報が掲載されていないので、論文やレポートを書くときには、別途書誌情報を検索しないといけないといういう点も要注意です。

Posted by 小倉秀夫 at 04:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

04/16/2005

英語版の作成

今度、英語版blogも開始しました。

http://benli.typepad.com/benli/

Posted by 小倉秀夫 at 12:24 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

04/13/2005

不特定の者に対する幇助

 団藤重光編「注釈刑法 (2)−Ⅱ」781頁(有斐閣・昭和44年、福田平執筆担当)、大塚仁他編「大コンメンタール刑法 第2版 第5巻」442頁(青林書院・1999、安廣文夫執筆担当)によると、教唆犯が成立するためには、被教唆者は「特定の者」でなければならないとのことです。

 他方、従犯が成立するためには、被幇助者が「特定の者」でなければならないのか、それとも、不特定の者に対する幇助というのが従犯として成立するかについては、上記文献には載っていませんでした。


 「不特定の者に対する幇助」が従犯の一類型から除外できれば、Winny開発者事件なども、すっと解決しそうなのですが、いかがなものでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 12:54 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

04/01/2005

スクウェア・エニックスの人格権の価値

スクウェア・エニックス社対鉄人舎のドラゴンクエスト8攻略本差止等請求事件について、ASAHIパソコン2005年4月15日号にコメントを載せました。

原告と被告のぞれぞれの主張の要旨については、ライターの佐藤さんがちゃんと調べてくれたので基本的に間違っていないと思います。

それにしても、著作者人格権侵害で1億円という損害額が認められた例はないのですが、スクウェア・エニックス社は、なぜそんなにまでして印紙代を余分に支払いたかったのか、とても疑問です。

Posted by 小倉秀夫 at 02:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

03/31/2005

ファイルローグ事件控訴棄却

 ファイルローグ事件につき、先ほど東京高裁知的財産第3部で判決言渡しがあり、控訴を棄却されてしまいました。

 利用主体拡張法理の際限なき広がりを押さえることができず、新しいITビジネスについては自信を持ってゴーサインを出せない状況は今後も続きそうです。

 今後は、「IT産業擁護法案」を成立させるべくロビー活動を行った方がよいのかも知れないと思う今日この頃です。

(アメリカでは、ロビー活動も弁護士の重要な業務の一つですからね。)

Posted by 小倉秀夫 at 10:57 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

02/05/2005

差し止められるべきでないのは一太郎だけではない

 「一太郎」差止め訴訟地裁判決は、ネット上でも勿論話題となっています。
 私も、CNETJapanからコメントを求められました。
 
 同じCNETJapanでも、江島健太郎氏の方が痛切に批判していますね。
 
 とはいえ、ソフトウェア特許は、財界人の強い要請に従って政策的に認めさせられた経緯がありますから、法曹会のボンクラぶりに責任を負わされても困ってしまいます。文句があるなら、知的財産推進計画2004の見直し作業の中に、「ソフトウェア特許の制限」を入れてもらうべく、せっせとパブリックコメントを書きましょう(締め切りは2月14日です。)。
 
 もっとも、「ソフトウェア特許」が悪いのか、逆にいえば、「ソフトウェア特許」さえ改廃してしまえばこのような違和感のある判決が再び下されることはなくなるのかというと、おそらくそうではないような気がします。むしろ、このような場合にも差止請求が認容されてしまうところが問題なのではないでしょうか。
 
 つまり、特許権者ないし実施権者が製造・販売している商品と、侵害者が製造・販売している商品との間に代替性があり、侵害商品の製造・販売を差し止めれば、権利者商品の売上げが上昇する(売上個数が増えるor製品価格を上昇させられる)という関係が成り立つのであれば、侵害商品の製造・販売の差止めを認めることは合理的です。しかし、権利者商品と侵害商品との間に代替性がない場合、侵害商品の製造・販売を差し止めても、権利者の利益を増大させることに直接繋がりません。その上、消費者は、侵害商品の代替物として権利者商品を購入して済ますということができず、不便を強いられることになります。つまり、メリットが少ない上に、デメリットが大きいということになります。
 
 そして、権利者商品と代替性のない侵害商品の製造・販売等の差止めを認めることによるこの不合理性というのは、何もソフトウェア特許の場合に限りません。
 
 例えば、服部克久氏の「記念樹」と小林亜星の「どこまでも行こう」との間に代替性はありませんので、いくらメロディラインが似ているといっても、小学校の卒業式に「記念樹」を演奏したい音楽教師にとって「かわりに、オリジナルである『どこまでも行こう』でどうですか」と言われても「はい、そうします」なんて普通言わないでしょう。
 
 すると、侵害品の製造・販売等を差し止めることが権利者に経済的なメリットをあまりもたらさない場合に、差止め請求を棄却する権限を裁判官に与える方向で法改正を行うことこそが望まれるのではないかと思われます。

Posted by 小倉秀夫 at 06:58 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (3)

02/03/2005

デジタル全体主義

 Simon Frith & Lee Marshall編の「Music and Copyright Second Edition」は、大いに読むに値する書籍です(日本語訳は出ていませんが。)。
 
 同著の最後の部分で、Marshall先生は、

The Internet's threat to popular music is not digital anarchy, however, but digital totalitarianism.
と述べた上で、
Charging for every indivisual use, and allowing no unauthorised uses of music is a threat to free speech and future creativity and demonstrates a misunderstanding of the role that music plays in our lives.
と締めくくっています。
 

 日本でも、著作権者等の許諾を得ない音楽の利用を一切許さないとする方向に向かって行こうという動きが根強くあります。しかし、そういう「デジタル全体主義」が将来の創造性に対する脅威であるということ──これは私が昨年来繰り返しパブリックコメント等で述べていることです──は、海の彼方(Marshall先生は、Bristol大学の講師をされているようです。)でも、同じように認識されていることを知り、勇気づけられた気がしました。
 
 Frith先生もMarshall先生もその他の執筆者も、インセンティブを確保するために著作権法による規制を行うことを否定していません。私も否定していませんし、輸入権反対のために昨年行動をともにした方々の大部分、そして、今年以降著作権保護期間の延長等に反対するために行動を共にするであろう方々の大部分もまた、これを否定していないであろうと思います。しかし、Frith先生とMarshall先生が後書きにおいて描いている「オーウェル的な未来」には到底賛同できるものではないでしょう。著作権法による過剰な規制は、我々の創造性を却って失わせてしまうわけで、少なくとも著作権制度の(表向きの)目的をよりよく果たすためには、著作権の保護強化一辺倒ではなく、利用者や将来のクリエイターの利益と過去のクリエイターや投資家の利益との間で適切にバランスを取る必要があるということなのです。
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 02:06 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/22/2005

Google、また敗れる。

 Googleがまた敗訴したようです。
  http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20080194,00.htm

 ハイブリッド型P2Pが音楽著作権により潰されようとしているのと同様に、検索サービスは商標権により潰されてしまうのかもしれません。

Posted by 小倉秀夫 at 11:34 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

01/16/2005

青い訴発光ダイオード訴訟に関する日本のマスコミのレベル

 青色発光ダイオード訴訟に関して、案の定、テレビ局等でいろいろ取り上げられていましたが、「きちんと取材し、考察した上で報道する」ことを怠る日本の報道機関の特徴がよく現れていたようです。
 
 まず、未だに問題の発明が「100年に1度の大発明だ」というスローガンを無批判に繰り返しているところが少なくなかったですね。しかし、20世紀に行われた偉大な発明を上から並べていったときに、中村教授のこの発明が上位1~2番に入ると本気で思っているのでしょうか。
 
 しかも、青色発光ダイオードの発見→量産化の過程における「404特許」の貢献度すら疑問が呈されていることは少し調べれば分かります(例えば、「青色LED訴訟の「真実」2,3」等)。
 
 また、テリー伊藤などが音楽業界ではこんなことは考えられない等と声高に主張し、これに対し他の出演者たちは何も言いませんが、企業活動の一環として音楽を含むコンテンツを制作した場合、「職務著作」として著作権は原始的に企業に帰属し、報酬請求権は発生しないのが原則です。

Posted by 小倉秀夫 at 12:44 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

01/13/2005

ギャンブルしなかった中村さん

 青発発光ダイオード訴訟が「和解」という形で決着を迎えたこと、しかも第1審判決とは全く異なる形での決着を迎えたことから、ネットの内外で、この話題で持ちきりです。
 
 今回の和解は、本件訴訟の対象とはなっていない中村氏の日亜化学時代の発明について特許を受ける権利を日亜化学に帰属させることについての報酬を全て含めて約6億円とするものです。したがって、判決ということになると、中村氏が他の発明に付いてまで請求を拡張しない限り、6億円よりはるかに低い金額しか認容されなかった可能性が高いといえます。もちろん、他の発明については別訴を提起するという方法も理論上はあり得るのですが、時効の問題をクリアできるかという点と、他の発明についてもう一度同じような訴訟活動を行う手間暇に値するほど和解提示額より高額の報奨金が望めるのかということを考えたら、高裁の裁判官の心証に近いと思われる裁判所の和解案に応じた方がよいだろうと、中村氏側の弁護士が考えるのは自然ですね。使用者側の貢献度を95%とするのは過去に例がないわけではないですから、最高裁が高裁の判断を破棄する可能性は相当に低いように思えますし。
 
 ところで、中村氏は、有能な研究者はアメリカに来るようにと記者会見で呼びかけていたようですが、それはどうでしょうか。
 
 アメリカの連邦法には従業員発明に関する規定がありません。
 
 では、アメリカの研究者は、会社の業務の一環として行った発明について、特許権者としての地位を確立し、巨額の報酬を会社に請求できるかというと、そう簡単ではありません。勤務中に行った発明については特許を受ける権利を会社に譲渡する旨の条項が雇用契約に含まれていればこれに従うことになりますし、そうでなくとも、従業員がその能力を発揮して発明を行うことを目的として雇用されている場合には従業員は発明についての権利を会社に譲渡する義務を負います(Standard Parts Co. v Peck 連邦最高裁判決(1924))。
 そして、会社側が従業者発明についての権利の譲渡を受ける場合、従業者への補償は法律上義務づけられていません。
 
 すると、雇用契約の際に、従業者発明については従業者は特許を受ける権利を会社に譲渡する、その際、会社は報奨金として1発明あたり金2万円を支払うという旨の条項が挿入されていれば、米国では、会社は、これ以上1セントも支払う必要がありません。実際、米国では、多くの企業が、従業員が発明をしても給与以上の報酬を受け取ることができないというシステムを採用しています。
 もちろん、例外的に、報奨金制度等を採用している企業もありますが、実はそんなに高額ではありません。
 ルーセント・テクノロジー社で、特許申請時に1000ドル・特許取得時にさらに2000ドル、ヒューレット・パッカード社で新技術を開発・報告するごとに1000ドル・特許申請されるとさらに1750ドルという程度のもののようです。
 まあ、調整委員会が補償金額を提示するドイツでも、1発明1年間あたりの補償金として最も頻繁に提示されたのが6万~12万円、最高額で200万円程度、従業員が職務発明について「追加の補償」を受ける権利を有するフランスでも、調停委員会による補償金提示額は、追加の補償額で最高1080万円、裁判に訴えてでた場合でも最高7200万円程度(発明により得られた売上高約110億円、ロイヤリティ約8.3億円という事案で。)だそうなので、ドイツでもフランスでも、中村氏は6億円を超える補償金をもらうことは難しかったのではないかという気がします。
 
 もちろん、アメリカの場合、莫大な利益を生み出しそうなアイディアを思いついたら、さっさと会社を辞め、ベンチャーキャピタルから出資を募って自分で会社を興し、そこで発明を完成させようと考える人も多そうだし、すぐれた発明を行ったという実績をひっさげて他社に高給で引き抜かれるというのもありなので、優秀な研究者・技術者が金銭的に豊かになる方法はいくらでもあるからよいのだともいえそうです。
 
 逆にいうと、中村氏はそういう「ギャンブル」にでなかった(日亜化学退職後の進路も、独立するでもなく、彼の技術と実績を高く買ってくれるベンチャー企業に行くのでもなく、カルフォルニア大学教授という安定した地位を選んだ)のですから、米国の優秀な技術者と比べて収入が少なくとも仕方がないのではないかとも思えます。

Posted by 小倉秀夫 at 08:41 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (6)

01/05/2005

ガイドブックの出版差止め

 産経新聞等の報道によると、スクウェアエニックス社は、鉄人社が発行する「ドラゴンクエストVIII完全攻略データ集」の出版禁止等を求める仮処分を、昨年末に申し立てていたのだそうです。
 
 同記事によると、スクウェアエニックス社側は、「登録商標の『ドラゴンクエスト』を多用して商標権を侵害しているほか、今後出版予定の公式ガイドブックと混同され、営業上の利益が侵害される」と主張しているのだそうです。
 
 しかし、著作物の題号等においてそれが他人の登録商標を含むとしても、内容を表す題号として使用されている場合には、商標権の侵害にはあたらないとされています(大阪地判昭和62年8月26日特企239号65頁[「POS実践マニュアル」事件]、東京高決平成6年8月23日知裁集26巻2号1076頁[「三国志 武将争覇」事件])し、まして、本文中に他人の登録商標となっている文字列が多数回用いられていたとしても、それは内容を表現するために用いられているのであって、自他識別標識として用いられたのではないことは明らかですから、なおさら商標権侵害とはなりません(商標権者から使用許諾を受けなければ商標登録されている商品名を本文中に記すことができないとしたら、当該商品に批判的な内容の書籍等は出版できなくなりますが、商標法はそのような言論弾圧を目的とするものではありません。)。
 
 また、ある商品に関する解説書が複数の出版社から複数出版されることは一般によくあることですから、ある商品に関する解説書だからといって直ちにそれが当該商品の発売元自身または発売元から出版許可を得た出版社による公式ガイドブックと混同されるという実態はありません。
 したがって、産経新聞の報道を信ずるならば、スクウェアエニックス社による出版禁止仮処分の申立ては、「言いがかり」といって差し支えないものであるように思います。
 
 「言論の自由」を標榜する出版社、マスコミ、作家等の諸団体は、なぜこのような言論弾圧に対し声を上げないのか、私には不思議でなりません。

Posted by 小倉秀夫 at 03:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (4)

01/01/2005

法学新人類

 三宅伸吾「知財戦争」155頁には、「変革の時代に求められるのは、社会ニーズを政策につなげる能力に秀でた視野の広い『法学新人類』とでもいうべき法律家だ」との記載があります。同書の156頁では、「こうした法学新人類としては、阿部泰隆・神戸大学大学院法学研究科教授、安念潤司・成蹊大学法科大学院教授、神田秀樹・東大大学院法学政治学研究科教授、福井秀夫・政策研究大学院教授、玉井克哉・東大先端科学技術研究センター教授、久米良昭・那須大学都市経済学部教授などの名が挙げられるが、逆にいえば、『名指せる程度の人数しかいない』のが実態とも言える」と記載されています。
 
 しかし、私は、寡聞にして「法学新人類」なる言葉自体を知りませんでした。「知らない私が非常識」ということもあり得るので、「Google」で検索してみましたが、1件しかヒットしませんでした。「Right now」という雑誌で、「知財ジャーナリスト」という肩書きが付されている「麻生正彦」氏の「新しい権利への攻防」という連載コラムの中の「最終回 (12月号 2004年10月19日発売) 夢舞台を創ろう」の中の小見出しとして使われていたようです。 ところで、この「麻生正彦」氏ですが、「著名な知財ジャーナリスト」の割に「Amazon.co.jp」で検索しても全くヒットしません。「Google」で検索しても「Right now」での上記連載コラム関係以外はヒットしません。著名なのにネットで検索してもヒットしないだなんて不思議な人物です。こうなると、私が「法学新人類」なる言葉を知らなかったことは別に恥ずかしいことでもなんでもなかったようです。
 
 すると、次の疑問は、どこで「法学新人類」として阿部泰隆氏らの名が挙げられているのかということです。「名指せる程度の人数しかいない」という文言が鉤括弧内に記載されていますが、これが誰かの文章なり発言なりを引用したものかどうかは文章からは分かりません。単に強調のために鉤括弧でくくったのかもしれません。もし後者だとすると、阿部泰隆氏らの名を「法学新人類」として挙げたのも、逆にその程度しか名指さなかったのも三宅氏の独断と偏見ということになりそうです。
 
 では、阿部泰隆氏らを「法学新人類」すなわち「社会ニーズを政策につなげる能力に秀でた視野の広い……法律家」として挙げた根拠・基準、あるいは「社会ニーズを政策につなげる能力に秀でた視野の広い……法律家」としては彼ら程度しか名指せないすなわち彼ら以外の法律家は「社会ニーズを政策につなげる能力に秀でた視野の広い……法律家」ではないとした根拠・基準は何なのでしょうか。「知財戦争」には何も記載されていません。
 
 Googleで検索すると、福井秀夫氏を中心に一緒に活動をすることが多い人たちという印象は受けますが、日経新聞の編集委員である三宅氏が、そのような個人的に近しい人たちだけを褒め称えるようなことをするとも考えにくいです。
 
 阿部泰隆氏といえば、司法試験の論文試験から法律選択がなくなり、したがって行政法が司法試験科目でなくなったときに大騒ぎした行政法の先生という印象が強くあります。「訴訟法の一方を選択+法律選択科目」という科目設定よりも「民事訴訟法+刑事訴訟法」という科目設定の方が実務家登用試験としては合理的だし、司法修習期間が短縮された場合には、司法試験受験時に選択しなかった訴訟法を司法修習中に学習している余裕はなくなるので上記変更は必然ですらあったとは思うのですが、行政法学者としての狭い利権にこだわってこれに大声を上げて反対された方を「社会ニーズを政策につなげる能力に秀でた視野の広い……法律家」に挙げることには私は躊躇を覚えます。
 福井秀夫氏や久米良昭氏についても、特定の利益集団のニーズを政策につなげる能力に秀でているという印象はあるのですが、「社会ニーズを政策につなげる能力に秀でた視野の広い……法律家」といえるのかというと私には大いに疑問です。市場による資源の最適分配が非倫理的な結果を生み出す分野(借家や法律サービスの提供など)については市場原理の導入を声高に唱える割に、「著作物の複製物の流通」という市場による資源の最適分配が非倫理的な結果を生み出さない分野については市場原理の導入を唱えたり等しない人たちだなあという印象を私は持っています(といいますか、レコード輸入権創設に異を唱えなかった「規制改革論者」はみな「まがい物」だと私は思っていますから。)。
 
 すると、三宅氏がなぜ阿部泰隆氏らを特に「社会ニーズを政策につなげる能力に秀でた視野の広い……法律家」と名指ししたのか、私にはわかりません。

Posted by 小倉秀夫 at 06:34 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (0)

2005年

 弁護士としての仕事については、来た仕事を淡々とこなしていくしかないので、特に具体的な目標や予定を立てるというのは難しいです。
 
 執筆活動については、とりあえず単行本3冊(共著)については執筆予定が決まっています。著作権法については、学部学生用の良い教科書がないので、執筆できればいいなあと漠然と考えています。
 
 あと、今年こそ日本版電子フロンティア財団が作れればいいなあとは思うのですが、これは私の力だけではどうしようもないですね。

Posted by 小倉秀夫 at 12:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

12/29/2004

知財戦争

 三宅伸吾「知財戦争」(新潮社・平16)を読みました。著者の三宅氏は、日経新聞社の編集委員であるとのこと。
 
 内容的には薄すぎて、とても680円という定価に見合うものではないというのが私の感想です。「あとがき」で取材協力先として列挙されている面々ならびに主要参考文献を見ただけで、「一方からしか物を見ようとしない」薄っぺらい書籍であることは見当が付くのですが、予想を裏切られることはありませんでした。
 
 例えば、61~62頁にかけて

 2003年1月15日、ミッキーマウスの寿命が20年延びた。この日、米連邦最高裁判所が、アニメのキャラクターや映画、音楽などの著作権による保護期間を延ばす法律を「合憲」と判断したためだ。AOLタイムワーナー社の「風と共に去りぬ」(1936年)、カサブランカ(1942年)などの独占使用権限も延長された。
 問題となっていた法律は、1998年に成立した著作権延長法。それまで企業が保有していた著作権の起源は、作品の制作から75年間だったが、同法はこの期間を20年延長するという内容だ。
 ミッキーマウスは1928年、白黒アニメ映画「蒸気船ウィリー」で誕生した。ウォルト・ディズニーが、喜劇俳優チャールズ・チャップリンをモデルにして作ったとも言われる。著作権延長法がなければ、80歳近いミッキーマウスの権利は2003年に期限切れとなるはずだった。期限切れ後にミッキーマウスの配信で一儲けしようと計画していたネット事業者は、最高裁判決に肩を落とした。
という記載があります。
 

これでは、著作権の保護期間が延長されることの問題点は分からないし、なぜ、著作権による保護期間を延ばす法律の合憲性が裁判で争われたのか分かりません。「期限切れ後にミッキーマウスの配信で一儲けしようと計画していたネット事業者」が、予定どおりミッキーマウスの権利を2003年に期限切れとさせるために起こしたとの誤解すら生みかねません。
 もちろん、レッシグ教授の「フリーカルチャー」を読んだ人は誤解しないでしょう。しかし、あちらは大きくて厚いですから、新潮新書の「知財戦争」の読者と必ずしも重ならないことが予想されます。「知財攻防の最前線」に深い関心を有し、著書までしたためてしまう三宅氏がレッシグ教授の「フリーカルチャー」を読んでいないとは信じたくはないし、仮に読んでいなかったとしても、著作権の保護期間を延ばす法律が延期とされたとしても保護期間が経過し「パブリック・ドメイン」となるのは75年以上前に制作された映画(とりあえずは、「蒸気船ウィリー」)とそのころのミッキーマウス等のキャラクター図柄だけであって、それ以降のミッキーマウス作品が直ちに「パブリック・ドメイン」になるわけではないのだから、ネット事業者が「期限切れ後にミッキーマウスの配信で一儲けしようと計画していた」なんて話が嘘くさいことは分かりそうなものです(それに、ミッキーマウスがパブリックドメインになってしまえば、何人もそれを自由に無料で流通させることができるわけで、そのようなものの配信で一儲けを計画するネット事業者がいようとはにわかに信じがたいです。)。
 
 しかも、三宅氏は、全体で7章しかない「知財戦争」のうち2章を「司法問題」にあててしまっています。その一方で、「クリエイターにお金が流れない仕組み」については触れられていません。しかし、例えばアニメについていえば、「買い手」(テレビ局)の新規市場参入が制限されているのに対し、「売り手」(アニメ制作会社)の新規市場参入が制限されておらず実際乱立していることから、「買い叩き」が起こっており、そのため、実際の制作スタッフが低所得にあえいだり、あるいは制作作業を中国等の人件費の安いところに委託せざるを得ない状況に追い込んでいることが問題であって、「アニメ産業」を日本の重要な輸出産業として位置づけるのであれば、テレビ局がアニメ制作会社に発注する際の発注代金の下限を法定するなどの施策を講ずる必要があるのです(そして、岸本周平さんあたりからきちんと取材をしていればそのような問題があることは容易に知ることができたし、「知財」に関する最前線に関心のある三宅氏が、岸本周平氏を知らなかったとは信じがたいです。)が、そういう日本経済新聞的に不都合な話には一切触れられていません。対消費者関係で知的財産権を強化したって仕方がないし、結局力関係のアンバランスが問題なのですから、法曹人口の大幅増員で「アニメ専門弁護士」が生まれたって制作会社をテレビ局による「買い叩き」から救ってやれるわけではないので、戦略本部的な処方箋は、「アニメ産業の育成」の役に立たないわけで、そういう意味では、7章のうちの2章を「司法問題」にあててしまっている「知財戦争」のアンバランスさが目立ちます。

Posted by 小倉秀夫 at 07:32 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

12/19/2004

コンテンツ・ビジネスの未来のために

 畠山けんじ「踊るコンテンツ・ビジネスの未来」(小学館・平17)を読みました。
 資料的な価値としては悪くないので、コンテンツ・ビジネスに興味がある方々は読んでおいて損はないと思いました。
 
 私は、実は「コンテンツ・ビジネス」という言い方はそれほど好きではありません。機器・インフラ等を開発・提供する側からすると、そのような機器・インフラを利用してエンドユーザーに届けられる音楽・映像等はまさに「コンテンツ」(=包含物)ということになるのでしょうが、音楽・映像等を開発・提供する側がそれを「コンテンツ」と表現することには大層な違和感があります。音楽・映像等を開発・提供する側からみた場合、音楽と映画とアニメとゲームは一括りにできない、それぞれ全く別個の分野だし、同じ音楽でも、クラッシックと歌謡曲とポップスとでは全く別個の分野だとしかいえないのではないかという気がします。
 
 それはともかく、「知財立国」の一環として「コンテンツ・ビジネス振興」というものを捉えた場合、到達すべき目標は、「日本国内で創作された『コンテンツ』を利用してより多くの外貨を稼ぎ出す」ということになります。
 そのためには、大きく分けて、


  1.  日本国内で創作される「コンテンツ」に、品質面かつ/または価格面で比較優位性を持たせる

  2.  日本国内で創作された「コンテンツ」が国外で利用されたときに、その利益を現実に国内に還流させるシステムを構築する


という施策が必要となります。

 しかし、政府の「コンテンツ振興策」って、1.については、内高外低の内外価格差に法的強制力を与えたり、諸外国ではほとんど認められていないような権利を創設したりして、国内消費者からよりたくさんのお金を巻き上げて、それを原資ににて、国外での市場価格を引き下げられるようにすることくらいしかしていないですね。2.については、ほとんど何もしていないようなものです。日本国内での著作権者の権利をいくら強化したって、2.の役には立ちませんから。
 
 現在日本が品質面の比較優位性をもっている漫画・アニメ・ゲーム・ポップミュージック等は、もともと「学校でお勉強する」ようなものではないですから、品質面での比較優位性を維持・拡大するために政府ができる役割というのは実はあまり大きくないですね。基本的には、学ぶ機会および発表する機会の提供、ならびに、創作者の保護ということになるのでしょう。
 
 「創作者の保護」といった場合に、文化庁や戦略本部はすぐに「消費者からの保護」にばかり気をとられるのですが、実際には、「エンターテインメント産業からの保護」の方が重要です。米国ですと、クリエイターたちが強力な組合を作ってエンターテインメント産業に対して強固に権利主張したりするわけですが、日本のクリエイターたちにそのような行動を期待しても仕方ないですから、エンターテインメント産業とクリエイターとの間の契約について、労働基準法等類似の規制法規を制定する必要だってあるかもしれません。
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 12:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

12/12/2004

音楽ビジネスに関する書籍(1)

Amazon.co.jpで下記の書籍を購入しました。

 鹿毛丈司「音楽ビジネス・自由自在ーー原盤権と音楽著作権を知るためのハンドブック」(音楽之友社・平15)
 
 湯浅政義「音楽ビジネスのすべて」(オリコン・平16)
 
前者は、日本の音楽ビジネスにおいてどのような契約が交わされ、どのようにお金が動いているかを知るのに役に立ちますし、後者は、米国において音楽ビジネスがどのように行われているのかを知るのに役に立ちます。

また、後者は、9-5で、「音楽配信は何をどう変えたか、どう変えようとしているのか?」を論じており、その点も興味深いです。 

Posted by 小倉秀夫 at 04:12 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/08/2004

What is the point of JCL

大学3年生相手に著作権法の概要を3時間で講義するとした場合、何をどう語れば良いのでしょうか。

パンデクテン的に語っても単調になってしまうし、結構悩ましいところです。

Posted by 小倉秀夫 at 10:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

安倍なつみ問題

安倍なつみの盗作疑惑問題は、結構解せなかったりします。

「アーティスト」が「創作」した作品が既存の作品と類似していないかチェックしてふるいにかけるのは、基本的にはスタッフのお仕事なわけですが(特に「アーティスト」がまだ若い場合、「アーティスト」に既存の楽曲に関する知識が十分でなかったりしますから、「アーティスト」任せにするのは非常に危険ですね。)、彼女のスタッフって、安室奈美恵のヒットシングル「Body Feels EXIT」も知らない程節穴揃いだったのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 01:59 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/07/2004

ポスナーとベッカー

Richard A. PosnerGary S. Beckerとが共同でBLOGを開設されたそうです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:57 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/05/2004

出版物貸与権管理センター

 2004年の著作権法改正において、書籍・雑誌の貸与権を創設するにあたって、貸与権についての権利集中管理を行うべき組織とされていた有限責任中間法人出版物貸与権管理センターが、平成16年12月2日付で、著作権等管理事業者として正式に登録されたそうです。
 では、貸本業者の団体と出版物貸与権管理センターとの協議が進んでいるかというと、どうも暗礁に乗り上げてしまったようです。
 CDVJの赤田理事によると、「貸与権管理センターは口頭で『3週間禁止、使用料280円』提示してきました。280円の根拠をただしたら、『作家には80円、出版社、取次店、貸与権連絡センターに200円』との返事でした。」とのことです。
 
 音楽CDの場合、レコード会社にはレコード製作者としての著作隣接権としての貸与権または報酬請求権がありますから、作詞家、作曲家、実演家とは別にライセンス料を徴収するというのは分からなくはないのですが、書籍について出版社には貸与権または報酬請求はありませんから、何故、貸本業者が出版社に貸与についてのライセンス料を支払わなければならないのか理解に苦しみます。まして、取次店なんて、音楽CDの貸与についてだって何の報酬の支払いも受けていないのに、なぜ書籍については突然貸与に関する報酬を受けようなんて考えたのか、全く不可思議としかいいようがありません。
 また、貸与権管理センターの管理手数料をいくらとする予定なのか分かりませんが、権利者に支払われるべき金額と同程度またはそれ以上の管理手数料を徴収する管理事業者だなんて、有害といわざるを得ません。弁護士がこんなことやったら、それこそ懲戒を受けかねません。

Posted by 小倉秀夫 at 06:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (5)

「幇助の故意」と宗教紛争

 Winny事件の関係などで「幇助の故意」が話題になっていますが、この「幇助の故意」について注目の裁判例が下されました。東京高判平成16年11月19日判例集未登載がそうです。
 事案としては、日蓮正宗側が創価学会を批判するビラを作成する際に池田大作の写真を勝手に流用したという「犬も食わない」ようなものです。で、そのビラ配布のための保管及び作業場所として妙観講本部を使用することを了承したことが、ビラの配布(譲渡権侵害)の幇助となるのかが問題となりました(まあ、刑法上の「幇助」ではなく、不法行為法上の「幇助」が問題となったのですが。)。
 裁判所は、

1審被告Aが,1審被告Bの依頼に応じて本件写真ビラ配布のための保管及び作業場所として妙観講本部を使用することを了承し,その了承の下に,同本部が保管及び作業場所として使用されたことによって,本件写真ビラの配布(譲渡権侵害)が容易となったということができる。したがって,1審被告Aには,本件写真ビラの配布を客観的に容易にするという意味における幇助行為があったというべきである
と、まず認定しました。その上で、
1審被告Aは,1審被告Bから,「守る会」が発行するビラの配布のための保管,作業場所として妙観講本部を使いたいという要請を受けた際に,そのビラがCの発言等を引用して1審原告及び公明党を批判する内容のものであって,Cの顔写真を掲載するという程度のことは,知らされていたと推認するのが自然である。しかし,それ以後,印刷済みの本件写真ビラが妙観講本部に搬入されるまでの間に,1審被告Aが,ビラに掲載するCの写真を見せられたり,写真が具体的にどのようなものであるかの報告を受けたりして,本件写真ビラに掲載される写真の具体的内容を知っていたことを認めるに足りる証拠はない
という事実を認定しました。裁判所は、そのような場合には、
1審被告Bからの要請を受けて1審被告Aが本件写真ビラの配布のための保管場所に妙観講本部を使うことを了承した際,1審被告Aには,ビラに掲載する写真(本件ビラ写真)が,1審原告の著作権等を侵害する行為によって作成されたものであることないしその蓋然性が高いことの認識があったとは認められない
として「幇助の故意」を否定しました。
 刑法上の「幇助」と異なり、不法行為法上の「幇助」は、故意がなくとも過失があれば成立するので、裁判所は当然その点も検討しています。すなわち、
本件ビラ写真が著作権等を侵害するものであることについては,1審原告写真1と比較したときに初めて分かるという性質のものであるから,1審被告Aが本件写真ビラに本件ビラ写真が掲載されているのを見たとしても,そのことのみをもってしては,同1審被告が,本件写真ビラに掲載された本件ビラ写真が著作権等を侵害する行為によって作成されたものであることないしその蓋然性が高いことを認識しつつ,妙観講の講員による本件写真ビラの配布を容認したということはできないし,上記のような違法な結果の発生を認識し得べきであったのに認識しなかったということもできない
として過失の存在をも否定しています。
 
 ファイル共有されているmp3ファイルが日本音楽著作権協会の著作権を侵害するものであるかは、同協会が著作権を有する楽曲と比較したときに初めて分かるという性質のものなのですが・・・

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12/01/2004

弁護人はかかしではない

11/30付けの京都新聞によれば、Winny事件の正犯の方の裁判で、

楢崎裁判長は▽ウィニー開発者の金子勇被告ら第三者に捜査報告書や起訴状の写しを送ったのは捜査の秘密保持などの点から不適切▽金子被告と連絡を取っていたのに裁判所にうそを言って供述調書を証拠請求したことは、弁護士倫理の観点から許されない-とした。
 弁護人は「書面を送った相手は事件の第三者ではない。裁判所に対して金子被告と連絡が取れないとも言っていない」と話している。
とのことです。

 しかし、起訴状は公開の法廷で朗読されることが予定されているものですから、そもそも「捜査の秘密」云々の対象となるものではありませんね。また、捜査報告書の写しを金子氏らに送ったとの点ですが、捜査報告書や供述調書の写しをマスコミに送って情報料を受け取るのとは異なり、捜査報告書の記載内容に間違いや矛盾がないかを、その分野に詳しい人に確認してもらうために、その人に写しを送ることがなぜ不適切なのか大いに疑問です。検察が提出してきた捜査報告書が、その分野に詳しい人の目でチェックされるということは、本来裁判所にとっても歓迎すべきことであるはずです(刑事裁判官の仕事は、弁護人の主張をはねのけてひたすら有罪判決を下すことと勘違いしている裁判官にとっては、歓迎すべきでないことかもしれないですが。)。それとも、刑事弁護人は、あらゆる分野において、専門家の助けを受けなくとも正誤の判断が正しくできるように日々研鑽を積んでおくべきといいたかったのでしょうか。
 
 また、弁護人には、捜査段階の供述証拠を請求する権利があるのであり、正犯の弁護人が従犯と連絡を取っていたか否かによってその権利の行使の可否は左右されないはずですね。裁判所は、「正犯の弁護人が従犯と連絡を取っていたと知っていたら、捜査段階での供述証拠を弁護人が請求しても認めなかった」とでもいうのでしょうか。
 
 大阪弁護士会は、このような馬鹿げた弁護士批判を公言する裁判官にしかるべき処分が下されるよう、京都地裁に申し入れをすべきではないでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 12:52 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

11/28/2004

レコード会社による発信者情報開示請求

 エイベックス等のレコード会社が、その著作隣接権を有するレコードをリッピングして作成したmp3ファイルをWinMX等で共有している者の発信者情報の開示を求めて、ISPに対して訴訟を提起したことがニュースになっています。
 
 私からすると、ファイルローグのような中立的サービスの提供者を叩く前に、それを悪用して違法にmp3ファイルを共有していた人を叩くべきなのではないかと思っていたので、レコード会社たちは今まで何をやっていたのかという思いです。仮にレコード会社がいうとおりファイルローグで送受信されるmp3ファイルの約97%が市販のレコードの複製物であったとしても、その主たる原因は、レコード会社がそれを放置していたからではないかとすら思います。
 
 なお、プロバイダ責任制限法第4条の発信者情報開示請求権につき一部誤解があるようです。
 
 プロバイダ責任制限法4条2項は、

開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
とありますが、開示関係役務提供者が発信者の意見を聞くこと及び発信者情報を開示することについて当該発信者の同意を得ることは発信者情報開示請求権の要件となっていません。したがって、同法4条1項の要件が具備されれば、意見照会の結果発信者情報を開示することについて当該発信者が反対の意思を表明したとしても、ISP等は発信者情報の開示義務を負うことになります。
 
 そして、発信者情報の開示を命ずる判決が確定した後ISP等がこれに応じない場合は、開示請求者側の申立てにより、開示を行うまで、ISP等は開示請求者に対し、一定の金員(間接強制金)を支払い続けなければならないということになります。

Posted by 小倉秀夫 at 04:59 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/21/2004

分室開設

 著作権法関連の立法に関する議論をするための分室を作りました。

Posted by 小倉秀夫 at 12:24 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

11/18/2004

29部

東京地裁民事第29部に係属していた特許権侵害訴訟が、昨日無事和解で解決。
と思ったら、先日受任したばかりの著作権訴訟は、民事第29部係属。どうも、民事第29部から離れられないですね。

今度の新件は、コンピュータプログラムをリバースエンジニアリングすること自体が複製権または翻案権侵害だと言ってきています。

Posted by 小倉秀夫 at 08:57 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/14/2004

CMスキップ

日本民間放送連盟会長であり、フジテレビの会長でもある日枝久氏が、DVD録画再生機を使ってCMや見たくない場面を飛ばして番組を録画・再生することが「著作権法に違反する可能性もある」と述べたことが、各地で話題となっています。報道によれば、日枝久氏は、「放送は1時間すべてが著作物と考える学者もいる。」と述べたそうです。

日枝氏といえば、エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワークの理事も務められており、しかるべきアドバイザーがおられるのかもしれません。そこで、この見解の当否について検討してみましょう。

例えば、下記のような放送がなされた場合を考えてみましょう。

20:00:00  番組のタイトル表示
20:00:30  番組スポンサー名の表示及び主要スポンサー名の読み上げ
20:01:00  スポットCM
20:03:00  オープニングテーマ
20:06:00  スポットCM
20:08:00  ドラマ放送
20:25:00  スポットCM
20:27:00  ドラマ放送
20:40:00  スポットCM
20:42:00  ドラマ放送
20:53:00  エンディングロール
20:55:00  スポットCM
20:55:30  次回の予告
20:56:30  スポットCM
21:00:00  次の番組開始

 日枝氏は、上記番組を録画する場合は、20:00:00~21:00:00まで些かも欠くことなく録画しなければならないと言いたかったのかもしれません。すると、家庭用ビデオ機メーカーとしては、Gコード予約オンリーで、かつ、番組を途中から録画することも番組録画を途中で中止することもできないような商品を製造・販売する義務を負うことになるでしょう。
 
 さて、営業的な意味はともかく、法的な意味で上記のような見解を成り立たせるためには、20:00:00~21:00:00の一連の放送の流れを1個の「著作物」と見ることが必要です。
 何をもって1個の著作物と見るかは実は難問です。ただ、ドラマ部分とスポットCMとは、表現態様という点から見れば同じく「映像表現」であり、連続性もあるとはいえ、それぞれによって表現しようとする思想または感情は全く別個であり、しばしば著作者も異なることを考えるならば、別個の著作物と見るのが相当でしょう。
 
 もちろん、複数の著作物を組み合わせて1個の著作物を創作することも可能です。著作権法12条1項は「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。」と定めています。
 
 では、上記のような放送において、「素材の選択又は配列」に創作性はあるといえるかというと、通常は難しいように思います。テレビ放送中にいつ、どのCMを、どの順番で放送するかということは、スポンサーから支払いを受けるスポンサー料等に応じて決定されており、またCMを挿入するタイミングもだいたいありふれており、「素材の選択又は配列」に創作性は認めがたいからです。
 
 すると、CMをスキップして番組録画するという行為は、連続して放送する著作物の一部を取捨選択して録画(私的使用目的の複製)をするにすぎませんから、少なくとも現行著作権法には違反しないといえそうです。
 
 


Posted by 小倉秀夫 at 03:28 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (5)

11/09/2004

録画ネット

録画ネットの話題は、中央大学法学部での著作権法ゼミのゼミ合宿用の課題にしていたのでこれまで発言を控えていましたが、11月6日・7日の土日で無事にゼミ合宿を終了致しましたので、これからはこの点についても発言をすることができます。

録画ネット事件の仮処分決定で注目されるのは、裁判所は、図利性の要件の有無を吟味することなく、録画ネットの運営会社をテレビ番組の複製主体として認定している点です。利用主体拡張の法理を適用するにあたって図利性の要件は不要であるとする学説は以前よりありましたからそれ自体は不思議ではないのですが、従来の判例、裁判例とは異なる判断を示したのですから、その理由付けくらいは決定文の中で述べるべきなのではないかと思います。

日本の判決文は、法解釈部分の理由付けが一般に極めて薄いので、判決文を読んでその射程範囲を判断することが実際には極めて難しい状態となっています。

Posted by 小倉秀夫 at 11:31 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/01/2004

故山原健二郎議員を偲ぶ

 レコードの輸入禁止期間は、結局我々のパブリックコメントむなしく、政令で4年と決められてしまいました。文化庁の「足して2で割る」方式だと、権利者側は法律上の上限7年を、輸入者・消費者側は0年に近い数字を主張するわけですから、最初から3.5年に近い数字になることはわかっていたわけですね。
 あとは、民主党の若手と社民党の横光議員に期待するより他ないですね。共産党は、かつては山原健二郎氏のような骨のある議員もいたのですが、その山原氏も今年3月に逝去されてしまいました。
 以下、昭和45年4月8日の衆議院文教委員会における山原健二郎衆議院議員(当時)と安達健二文化庁次長(当時)の質疑を掲載し、日本共産党が「不正と戦う政党」に立ち戻ることを祈願することとします。
 


 

○山原委員 この経理上の不正問題というのは、私の聞くところによりますと、いまあなたの言われた裁判の記録も読ませていただいたのでありますけれども、数億に達する、あるいは三億ともいわれる、そしてまた一億数千万ともいう、いわゆる刷新委員会の経理専門員でありました深町輝明会計士補の調査によりましたら、そういう数字も出ているわけですね。そして九千二百三十七万という、そういう金額も出てくるわけで、それに対して、東京地方検察庁の調査によりますとその金額が減っておりますけれども、少なくとも三千二百五十万というものを返還しなければならないという不正部分がはっきりしてきたわけですね。この三千二百五十万は、いま次長も言われたわけですが、この金額は現在返還をされて、しかもそれがどういうふうに配分をされているかわかりますか。

○安達政府委員 旧役員から返還されました三千二百五十万円の扱いにつきましては、今後理事会その他で慎重に検討の上その措置をきめるということで、その措置がきまるまでは、定款の規定に従い、理事会の決定により定期預金にして保管いたしてございます。

○山原委員 この三千二百五十万というのは、これは非常に控え目といいますか、非常に少なくされた金額で、他は不明であるというのが、東京地方検察庁の見解なんですね。だから、非常に不明朗な内容があったということは、これはどなたがお考えになってもわかると思いますし、さらに監督官庁としての文部省の問題ですけれども、これはこの数年間にわたってなぜこのような放置がなされたか、私は非常に疑問に思うわけで、特に文部省は、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律及び同法の施行規則によりまして、監督官庁であるわけであります。しかも臨検まで行なうことのできる権限を持っておる官庁であって、この数年にわたってどうしてこういう状態に置いたのかという点で調べてみますと、文部省の役人との間に非常に金品の授受が行なわれておるということで、その金額についても、はっきりはわかりませんけれども、最初百二十万といわれておった。それが次長の前の答弁では七十万、最後には七十二万何がしという金額だと思うのですが、これはあなたの答弁によりますと、非常に儀礼的なつき合い的な金額であるというふうな答弁が前になされているわけですけれども、私の調査では、ここに資料もその後出ておりますが、この文教委員会で質疑応答が行なわれた後においても出ておりますし、また文部省が協会に提出させました菊池豊三郎氏から文部省の社会教育局長蒲生芳郎氏に出された文書を読みましても、これは七十二万になっておりますけれども、しかし儀礼的なものとは思えないのです。この点は、現在も儀礼的なものだとお考えになっておりますか。

○安達政府委員 御了承願いたいことがございます。一つは、三千二百五十万円という数字でございますが、これは裁判長が和解案として出したものでございまして、裁判長の判断において三千二百五十万円が適当である、こう判断されたものであるということを御了承いただきたいと思います。
 それから第二に、文部省の職員との間に金品の授受があったというお話でございますけれども、金品の授受というようなことは一切ございません。というよりは、実際問題といたしまして、最初出ました数字の中には、これはちょっと言いにくいのでございますけれども、文部省職員でない者が飲食したものも文部省職員が飲食したごとく帳簿につけてあったというような、要するにぬれぎぬを着たところも粗当実際問題としてはあったわけでございます。その何十万円というのが、五年間にわたりまして、たとえば新旧課長がかわったときに歓送迎会をやるとか、そういうようなものが中心でございます。しかしながら、そういう御指摘のような誤解を生ずるならば、そういうことはやはり慎むべきであるということで、その後はそういうことの一切ないようにわれわれとしては十二分に戒心をいたしておるというのが実際でございます。
 それから第三番目に、監督上の問題につきましては、実は裏経理であって、正式の帳簿に載ってなかったわけでございますから、実は私どもでは不明でわからなかった。その不明はわびなければいけないと思うわけでございますけれども、その点はわれわれとしても遺憾であったと思うわけでございます。その問題が起こりましてから、私どもといたしましては、いろいろな状況を調査し、今後の運営に遺憾のないように、経理上の処理等につきましても十分な監督を加えるというようなことをいたしてきたわけでございますが、ただ一つは、こういう団体の内紛の問題等がございましたので、こういう問題は自主的に内部的な処理をすることが第一原則でございまして、こちらが内部に入ってその渦中に投ずるというよりは、まずは協会自体の自主的解決をまちたいということで、そういう方向でこの評議員会も改革されまして、新しく組織された評議員会のもとで新しい執行部も選ばれてくる。こういう形でその著作権協会の運営は、現在においては健全に行なわれているものと確信いたしておるところでございます。

○山原委員 こまかいことを言うようですけれども、私はそう簡単には思えない点があるわけです。ここに協会から文部省に出された関係書類があるが、これは信憑性につきましては、非常に少な目に見積もったものだと思うのです。たとえば昭和三十五年には、文部大臣に対する贈答品とか、あるいは日時を言いますと、四月十九日に文部大臣その他の懇談会、あるいは五月四日の著作権課長に対する病気の見舞い代とか、あるいは文部省会合費とか、あるいはまた再び見舞い代とか、あるいは著作権課に対する贈りもの代であるとかいうのが、連日のごとくずらっと並んでいるわけですね。しかもその容体を見ますと、なまやさしいものではないわけで、われわれの感覚ではちょっと想像ができない感覚だ。これを簡単なものだと言う文部省のあなたの答弁は、私はかなり感度が鈍っておるのではないかと思うのです。接待の態様を見ましても、たとえば贈答品あるいはせんべつ、これはあなたが言われた歓送迎会というようなものになるかもしれませんが、病気見舞い、あるいは講師依頼、転任の記念品、それから接待費、折衝費、中元、おみやげ、こういう数費目にわたって支出がなされておるので、これは簡単な儀礼的なものだとは私は思えませんし、しかもほとんど料亭が使用されているわけで、たとえば赤坂、築地などの料亭、キャバレー、舞台は申し上げませんけれども、小梅とかその他の料亭がずらりと並んでいるわけです。そうすると、当時協会が求めておったのは、旧法の三十条八号、これを何とかして削除してもらいたいというので、三十・八という数字が至るところで出てくるわけです。三十条八号の削除、これを文部省へ働きかけるためのそういう折衝費にお金が使われているわけですね。これはただごとではないわけでございまして、それまでもたいしたことではないというお考えに立つことが、私は文部省の姿勢の問題として究明をしなければならぬと考えるわけですが、この点について、当時文部大臣ではなかったわけですけれども、文部大臣の所見をちょっと伺っておきたい。

○坂田国務大臣 私もただいま御指摘になって初めて知ったようなわけでございますが、そのようなことがもし行なわれておるとするならば、いやしくも文部省といたしましては、どう考えてみましても好ましいことではございません。ことに、何らかの目的をもって、それを助けるためにそのような会合を持つというようなことは、よくないというふうに思うわけでございます。今後、そういうような点につきましては、十分注意をしてまいりたいというふうに思います。また、私といたしましても、その間の事情をよく聴取をしてみたいと考えておるわけでございます。

○山原委員 一つの協会の問題ですからあまり詳しく申し上げたくないのですけれども、これはただ文部省だけでなくて、国税庁に対しても行なわれているわけです。それは、この協会に対して三百五十万の税金の徴収が行なわれましたので、これを何とかして税金を課税されない団体にするという知恵を借りるために、国税庁の係官に対しましても、東京国税局あるいは京橋税務署の係官に対しましても、昭和三十五年から三十六年に至るまでひんぱんに金品の贈与、酒食の供応ということが重ねられているわけでございまして、そういうような中で、この団体が課税対象にならない団体になっておるというその結果は、私は非難するわけではございませんけれども、こういうような中で行なわれることは決して明朗なことではございませんし、さらにバー、キャバレー等を暴力団が経営しておるところから著作権法違反の問題が起こるわけで、それに対して警察当局を導入する、これに対しましても、警察庁の保安課に対する金品の授受、昭和三十八年八月五日から九月の五日まで、たった一カ月の間に、私の計算では九万円以上の供応がなされておる、こういう状態なんです。
 これは三つの官庁にわたって申し上げたわけでありますけれども、これは綱紀の粛正の面から申しましても、私は非常に重大な問題だと考えておるわけでございまして、これはやはり官庁としてははっきりと姿勢を正すべき問題だと思うのです。こういうことが続くということになりますと、たいへんな問題でありますし、その被害は利用者にも及ぶわけでしょう。さらに著作権者にもその被害は及ぶわけで、双方に迷惑をかけてくるわけですね。そういう意味で、これは今後の問題として再びかかることが起こらない対策というのは、厳重に講ずる必要があると私は思いますので、そのことを申し上げたいと思うのです。
 さらに、それに対する対策がなされたと言われますけれども、私はそれは行なわれていないのではないかと思うのです。たとえばそういうことが起こる原因として私は数点問題を考えておるのですが、一つは、ブランケット方式というもの――これ以外には徴収方法はないように私も思います。しかし、それならブランケット方式というのは、特にバー、キャバレー等におきましては、どこでどれくらいレコードあるいは演奏がやられておるかわからないという問題もありますので、徴収する金額が非常にわからない部分があるわけです。配分についても困難な面があることは、わかるわけです。これが一つの落とし穴になるわけです。そうしますと、それを扱う協会そのものが相当厳重な監査体制をつくり、あるいは協会そのものが徹底した民主化をされないと、不正が起こる苗床というものは依然として存在をする、こういうふうに考えるわけです。その点について、どういう体制をとられておるのかということが一つです。
 もう一つは、こういう協会と文部省とのつながりですね。たとえば名前をあげて非常に恐縮ですけれども、菊池前常務理事の場合には、かつての文部次官でありますし、もちろん文部省からそのまま行ったわけではないわけですけれども、文部省とのつながりはあるわけですね。今回常務理事として行かれました北岡健二さんにいたしましても、かつて文部省の調査局長でありますから、そういうつながりというものが、監督官庁と指導を受ける機関との間に明確なものをなくしている。そこらあたりから非常に雑然とする状態が出てくるのではないか。こういう点は、明確にすべきではないかと思うのです。これについて意見をお聞きしたいのです。
 もう一つは、時間もあまりありませんから、菊池豊三郎さんのことを例に出しますと、この方は、かつては文部次官、そして次には協会の常務理事といたしまして、三十条八号の削除のために努力をされた。努力をされたけれども、その間に先ほど言いましたような不明な金が使われるという事態があるわけですね。贈収賄ということばを使うならば、いわば贈賄側の人に当たる責任者だった――本人がやったかどうか知りませんよ。しかし、そういう席にあったことは事実です。ところが、その方が依然として、そういう大問題が起こっておるさなかにもかかわらず、著作権法の審議会の委員をやっておられたわけですね。審議会の委員を確かにやっておったと思うのです。間違いであったら指摘していただきたいのですが、その審議会の委員を菊池さんがやられて、そして答申が四十一年の四月に出たわけなんですね。そうすると、悪いことばでいうならば、贈賄側の方が審議に参加して、そして答申が出てくる。事実今度の法案によりますけば、九十五条で三十条八号の趣旨が生かされてくるわけですから、それはけっこうでありますけれども、そういう関係というのは、決して正しいものではないわけでございます。しかも当時、菊池さんの場合には不起訴にはなりましたけれども、ようやく起訴猶予になったという点、しかも三千二百五十万の不正部分の一人の責任者であるという点から申しまして、こういう形で審議会が構成をされておるところに問題があるのではないかというふうに考えるわけです。この点についても、私の調査が誤りであれば指摘をしていただきたいのですが、御答弁をお願いします。

Posted by 小倉秀夫 at 07:58 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/28/2004

Open Source Way 2004

2004年12月1日に行われる「Open Source Way 2004」にて、「ソフトウェア等の提供者の法的責任 ~ファイルローグ事件とWinny事件を題材に~」という題で講演を行う予定です。

まだ具体的なレジュメ等も作成してはいないのですが、ハイブリッド型P2Pファイル共有サービスにおいて、クライアントソフトをオープンソース化したり、検索用中央サーバに接続するためのプロトコルを公開した場合に、なおも、検索用中央サーバの管理者が著作権法上の規律の観点から送信可能化の主体と見なされるのであろうかとか、少し前から考えていた問題について何らかの見解を発表できればいいなと考えています。

最近、ロースクールの学生さんにもこのblogを見て頂いているようですが、たまには、こういうカンファレンスなどを覗くのもよいのではないかと思います(「平日はロースクールの授業があるので」という方は、こちらはいかがでしょうか。)。

Posted by 小倉秀夫 at 10:48 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

10/21/2004

パブコメ提出完了

著作権法の改正に関する2004年度版のパブリックコメントを提出し終えました。

それにしても、こういう形で社会貢献しようという弁護士が他にあまりいないのは悲しいです。

それ以上に、こういう形で社会貢献を果たしても、弁護士会公認の奉仕活動(プロボノ活動)ではないので、弁護士会からは奉仕活動を行ったものとして扱ってもらえないのが悲しいです(自白事件の国選弁護よりはよほど時間を使っているのに。)。

まあ、「プロボノ活動をさぼっている弁護士」として名前が公表される程度の制裁しか受けないからいいといえばいいのですけど。

Posted by 小倉秀夫 at 07:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (2)

著作権法改正パブコメ2004_04_追加

既に送信済みの「著作権法改正要望事項について【4.関連】」に追加します。

 インターネット上で提供されている各種検索サービスが著作権法により阻害されないように必要な法整備を行ってほしいと思っています。
 
 インターネット上では、汎用的な検索エンジンを始め、各種の検索サービスが提供されています。しかし、検索サービスを有効に機能させるためには、検索対象となるデータを取り込んでインデックス化しなければなりませんし、キーワード等で検索をかけて検出した結果のうち利用者の希望に適合するものを利用者に取捨選択してもらうためには、検索対象となるデータの一部を利用者に知覚させることが必要となります。検索対象となるデータが第三者が権利を有する著作物等であった場合には、検索サービスが行っているこれらの行為は、現行著作権法のもとでは、厳密に言えば違法行為となります。もちろん、しかるべき権利者から逐一利用許諾を受ければ適法になりますが、膨大な量のデータにつきそれぞれ著作権者を捜し出して、許諾をもらいに行くというのは非現実的ですし、各著作権者にライセンス料を支払わなければならないとすると、ほとんどの検索サービスは運用を中断せざるを得ないでしょう。
 他方、自己が著作権を有するデータが検索対象となるということは、当該データにアクセスする人が増加する可能性が生ずるということに繋がりますから、著作権者の経済的利益を増進することこそあれ、不当に損なうことはありません。
 従いまして、検索サービスを公衆に提供する者が、検索対象となるデータを取り込んでインデックス化し、検索対象となるデータの一部を利用者に知覚させることは、著作権等の侵害とならないよう、著作権等の制限規定を整備して頂けたらと思います。
 
 また、ロボット型検索エンジンなどに代表される、「自動的に検索対象となるデータを収集し、インデックス化するシステム」においては、検索対象となるデータが他人の著作権等を侵害するデータであるかを判別することができません。そのため、他人の著作物を複製又は翻案して作成したデータの自動公衆送信を結果的に幇助してしまうことも不可避的に生じてしまいます。しかし、現在、Googleに代表される「自動的に検索対象となるデータを収集し、インデックス化するシステム」は、大量のデータを検索対象とする安価なデータベースとして広く活用されており、これらをフェアユース規定も、中立的行為保護のルールもない日本に在住する者だけが利用できないとしたら、我が国の文化の発展にとって大きな足かせとなります。
 つきましては、検索サービスが結果として違法な自動公衆送信を幇助してしまったとしても、著作権侵害ないしその幇助責任を負わないで済むような法整備をして頂けたら幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 06:51 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法パブコメ2004_03

(24)について

 市販の音楽CDに収録されている楽曲に関して、現行法では、音楽著作物(曲、詞)の著作権者には放送権、有線放送権が認められているのに対し、レコード製作者には報酬請求権しか認められていません。しかし、音楽著作物の著作権に関しては、権利集中管理機構が機能しており、市販の音楽CDに収録されている楽曲を放送等で利用しようとする者は、権利集中管理機構にしかるべき許諾料を支払って許諾を得れば、適法に利用できる環境にあります。しかし、レコード製作者は、排他的権利が付与されている送信可能化権についてすら、「そこに許諾料を支払って許諾を得れば適法に利用できる」という権利集中管理機構が整備されていません。このような現状のもとでレコード製作者に放送権、有線放送権を付与した場合には、しかるべき許諾料を支払うから利用許諾をして欲しいとの放送事業者等の申入れをレコード製作者が聞き入れず、結果的に、放送等において市販の音楽CDに収録されている楽曲を自由に(しかし有料で)利用することができなくなる虞があります。
 従いまして、(24)には反対します。
 
 その他、(19)(20)(21)(27)も、「そこに許諾料を支払って許諾を得れば適法に利用できる」といえるだけの権利集中処理機構がないのに禁止権を求めているものであるといえ、とうてい賛同できるものではありません。
 
(30)はデジタル放送における「スクランブル」を著作権法上の「技術的保護手段」に加えよというものですが、我が国の法体系のもとでは、この種のアクセスコントロールは不正競争防止法にて対処することとしておりますので、(30)には賛成できません。

(31)は、「アクセス権」に関するものです。著作権法を、現行法のような著作物の拡布行為禁止権中止の法体系から、知覚行為禁止権中心の法体系に転換することは、著作権法の基本的な考え方を、「競合他社規制法」から「エンドユーザー規制法」へと転換するものであります。そして、それは、「いつ誰が誰と何を鑑賞したのか」という事実を権利者が把握することを公的に許可することによって初めて成り立つところ、それは、憲法が保障する思想・良心の自由を踏みにじる事態ともなりかねません。よって、私は、(31)には反対します。

(34)については、「出版物を複製する」(送信可能化する云々も同様)がどの範囲のことを指すのかがわからないのですが、それが出版物に含まれる文章その他のコンテンツを別のレイアウトで複製、送信可能化等する行為をも禁止する趣旨を含むのであれば反対します。コンテンツの創作者としては、著作隣接権者としての出版権者が倒産し、あるいは当該コンテンツを絶版とし、あるいは何らかの理由(例えば作家と仲違いした等)で一切の利用を禁止することとした場合に、自己の創作したコンテンツを公衆に提示、提供し続けることができなくなるからです。
 また、著作隣接権者としての出版権者に貸与権を付与することにも反対です。正規に購入した商品を公衆に貸与することは自由であるべきであり、出版社が当該商品(書籍)に経済的リスクを負っているということは、他の工業製品の製造者と全く同じ立場に立たされているだけであって、上記正規に購入した商品を公衆に貸与する自由を制約する理由にはならないからです。

Posted by 小倉秀夫 at 06:20 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法改正パブコメ2004_08

(136)について
 コンピュータプログラムは、他のプログラムを開発する際に作成したモジュール等の部分を適宜組み入れることによって、効率的に行うことができます(同じ動作を行うモジュールを、その都度新たに開発するのは非効率的ですし、一人のプログラマが同じ動作を行うモジュールについて思いつくパターンには自ずと限界があります。)。したがって、ソフトハウスが発注されたプログラムを発注者に納品する際に、当該プログラムの一部を利用して新たなプログラムを創作する権利まで発注者に移転することとしてしまうのは、ソフトハウスにとっては相当の痛手となります。
 他方、発注者としては、発注したプログラムで使用されているモジュール等を利用して新たなプログラムを創作するということは希であり、実際には、ソースコードの引き渡しすら求めない例が少なくありません。すなわち、プログラムの著作物においては、発注者たるプログラムの著作物の譲受人に、当該プログラムの一部を利用して新たなプログラムを創作する権利まで移転させても、「宝の持ち腐れ」となる可能性が高いといえます。
 同じ動作を行うモジュールをその都度新たに、そして以前作成したモジュールとは似ても似つかないように創作させるという時間と才能の無駄をプログラマーに押しつけない方が、社会全体にとってもメリットが大きいと思われますので、著作権の譲渡がなされても、著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡されていないと推定する現行60条2項の規定は維持されるべきだと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 05:27 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法改正パブコメ2004_05

(106)(107)について

 著作物は、創作活動へのインセンティブを失わせない程度の期間著作者に排他的な権利を与えたら、その後はパブリック・ドメインとして、後発の創作者のための創作の「糧」になることが望ましいものであります。では、「創作活動へのインセンティブを失わせない程度の期間」とはどの程度かという問題ですが、著作権と利益状態が比較的近い商品形態模倣商品規制(不正競争防止法第2条第1項第3号)の規制期間が「商品が最初に販売された日から3年間」であることからするならば、公表後3年間でもよいといえます。また、特許権の保護期間が特許申請の日から20年間であることを考えれば、長くとも創作の日から20年間保護されれば創作活動へのインセンティブを失わせることはないといえます(一般に、著作物を創作するより、特許発明を行う方がコスト等もかかります。)。
 とはいえ、ベルヌ条約第7条に配慮する必要もありますので、著作権の保護期間については現状を維持すべきであると考えます。
 なお、著作権の保護期間が著作者の死後70年に延長された場合、既存の著作物を利用して新たな創作活動を行ったり、絶版になった書籍を復刊させようとしたりする場合、当該著作者の曾孫たちを探し出して、それらすべてから利用許諾を受けなければならないということになりますが、そのためのリーガルコストは非常に高く付きます。また、著作者の死後70年ということは、公表後100年以上が経過している場合が十分あり得るわけですが、既存の著作物の著作権が法人に帰属していた場合、その100年の間に当該法人が倒産し、権利の帰属がわからなくなっている危険も増大します。すると、既存の著作物を利用して新たな創作活動を行ったり、絶版になった書籍を復刊したりという、我が国の文化の発展にとって有益な行為が、著作権法によって阻まれる結果となってしまいます。
 他方、著作権の保護期間を延長することによって利益を受けるのは、主に、他人の創作活動の成果から収入を得て生活をしている人々です。彼らの利益をいくら手厚く保護してみても、新たな創作活動の奨励にはつながりません。また、著作者の曾孫の保護をいくら手厚くしても、新たな創作活動の奨励にはつながりません(孫の世代までしか著作権が保護されないならば一生懸命創作活動を行う気になれないが曾孫の世代まで保護されるのならば一生懸命頑張ろう等というクリエイターが実際に存在するということは、考えがたいといえます。)。
 このように著作権の保護期間を延長することは、多くのデメリットを生じさせる可能性が高いのに対し、「新たな創作活動へのインセンティブの維持」というプラスの効果を生むものではないという意味で、まさに「百害あって一利なし」ということが可能です。

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著作権法改正パブコメ2004_07

7. 紛争処理

(124)は、日本でも法定賠償制度を導入せよというものですが、私は反対です。
 「みなし」規定にせよ推定規定にせよ、一定の経験則上の蓋然性に支えられたものとなっていますが、(124)の提唱者たちが想定する法定賠償制度は、経験則上の蓋然性に何ら支えられていない金額を「法定損害額」として定めよとするものだからです(なお、送信可能化権侵害で損害賠償を命じた裁判例はありますが、もちろん著作物1個あたり100万円等というべらぼうな賠償額は認定されていません。)。そして、そのような制度が設けられた場合、コンテンツホールダーは、本来ならば得られなかったであろう利益を「賠償」してもらえる、すなわち「やられ得」という状態が発生するのですから、第三者による著作権侵害に何らかの関連を有する者に対し片っ端から訴訟を提起し、10のうち1つでも勝てればその相手方の財産を根こそぎ奪えるので、多少弁護士費用等を使ってでも片っ端から訴訟を起こすことが経済的に合理的な行動となることが予想されますが、それが社会的に望ましいとは思えません。また、このような制度のもとでは、第三者の行為が自己の著作権の侵害となる可能性があれば一攫千金のチャンスとなるわけですから、新たな情報通信サービスを始めようとする事業者が、そのサービスが著作権侵害とされるリスクを解消するために、著作権管理団体に一定の使用料を払う代わりに利用許諾をしてくれるように頼んだとしても、著作権管理団体としてはこれを拒絶し、新規事業者がグレーゾーンの行為を無許諾のまま開始してくれるのを待つのが経済的な合理的な行動となることも予想されます。しかし、それが社会的に望ましいとは思えません。不法行為制度は、損害の公平な分担を図るための制度であって、被害者が一攫千金を図るための制度ではありません。「やられ得」となる社会では、それはそれでモラルハザードが発生します。
 法定賠償制度がある米国でも、「1枚のCDをネット上にアップロードする行為は、一人の人間を医療事故で死に追いやるより悪いことなのか」と揶揄する声が上がっているが、著作権を人命より重視するのは国家として行ってはいけないことなのではないかと思います。
 また、この法定賠償制度を導入した場合には、何をもって著作物を1個、2個と数えるのかという問題を解決しなければなりませんが、できるのでしょうか。
 また、(124)を支持する見解の中には、「いつからいくつ著作物を侵害したのかを一番明確に知っているのは侵害者だ」との意見もありますが、我が国の裁判例は、現実的、物理的に侵害行為を行ったわけではない者を「著作権法の規律上の観点から」侵害主体と見なしてしまう傾向があるところ、「著作権法上の規律の観点から」侵害主体と見なされた者は、「いつからいくつ著作物を侵害したのか」など全く皆目見当が付かず、権利者から常識的に考えられないような莫大な数字を損害額として示されても反証のしようがない場合が考えられます(例えば、社団法人日本音楽著作権協会が、巨大な電子掲示板を運営するヤフー株式会社に対して、同社の運営する電子掲示板上に利用者が市販のCDに収録されている楽曲の歌詞を書き込み不特定多数人が閲覧可能な状態に置いたことについて、当該電子掲示板を介した歌詞の自動公衆送信を管理しこれにより利益を得ているヤフー株式会社こそが上記歌詞についての送信可能化の主体であるとして、損害賠償請求訴訟を提起することも理論的には考えられます。その場合に、ヤフー株式会社としては、過去ログの保管期間がすぎた時期にいくつ著作物を侵害していたのかということは、いくら著作権法上の規律の観点からはお前が送信可能化の主体だといわれても、わからないのではないかと思います。)。
 
(127)について、著作権の場合、特許権とは違い、著作物性の有無や著作権による保護の範囲、著作権の制限の範囲がわかりにくく、罰則を強化すると、後発の表現者に対し、より一層の萎縮効果を生むことになります。それは、表現の自由が保障される先進国の一員として恥ずかしいことです。また、軽微な著作権侵害行為は、多くの人々がそれとは知らずに行っていることであり(それは、著作権法による規制の範囲が国民の健全な常識に反して広いことが原因です。国民に著作権意識が足りないのではなく、著作権法が国民の意思に合致していないのです。)、そのようなことを行ったことをもって、前科前歴のない健全な市民が実刑判決を受けるというのは、非常に不健全です。したがって、私は(127)には反対します。
 むしろ、表現の自由を保護するという観点、あるいは新たな創作活動を奨励するという観点からは、少なくともいわゆる二次的著作物の創作及びその利用については、刑事罰の対象から外すことを明文で規定する必要があるのではないかと思います。原著作物の著作権者への経済的権益の確保は、損害賠償請求権等によって行うことができますので、既存の著作物を利用した創作活動自体を禁止するのは、我が国の文化の発展に繋がらないのみならず、憲法上も問題があるように思います。

(少し訂正) 

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10/20/2004

著作権法改正パブコメ2004_06

6. 侵害とみなす行為等 

(111)のような改正がなされた場合、パッケージソフトの購入者や、ソフトウェアがプレインストールされているコンピュータの購入者は、購入時に、いちいち当該ソフトウェアがその著作権者の許諾を得てパッケージに収録され、あるいは、プレインストールされたのかを確認しなければならず、その確認を怠ったならば「過失あり」と認定され、ちゃんとお金を出したはずなのに使用を禁止されるという事態を招きます。それはかえって正規のパッケージを購入しようという意欲を薄れさせることになります。また、正規に購入したプログラムが、他人が著作権を有するプログラムのコードの一部を流用していた場合に、コード流用の可能性を検証せずに当該プログラムを漫然と購入したことを「過失」といわれてしまうと、購入者としてはお手上げです。
 他方、ソフトウェアの著作権者は、著作権侵害行為を摘発する能力がありますし、侵害行為をやめさせる権限もあるのに、そのような能力も権限もないソフトウェアの利用者に負担を押しつけようというのはフェアではないように思います。したがって、私は、(111)には反対します。

(112)(114)について
 特許法上の「間接侵害」は、例えば「物」発明であれば、「特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」又は「特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」に限定されています。また、米国著作権法上の寄与侵害の規定は、権利侵害ではない用途に用いられる可能性がある場合には適用されないこととされています(ベータマックス事件連邦最高裁判決)。しかし、社団法人音楽著作権協会が引用する二つの裁判例が如実に示しているとおり、日本のコンテンツホルダーが求めてやまない「間接侵害」規制は、特許法上の間接侵害や米国著作権法上の寄与侵害とは全く異質のものです。
 すなわち、自己の提供する商品やサービスがその利用者による著作権侵害行為に用いられる可能性がある場合には、それを探し出して、著作権侵害行為に用いられないようにしなければならず、それができないのであればその商品やサービスの提供全体をやめさせるというものです。そして、それは、より経済実態に即していうならば、著作権者は侵害者を探し出して侵害行為をやめさせるために自らコストと労力をかける必要はなく、権利侵害行為にも利用されうる汎用的な道具やサービスの提供者に命じて、強制的に、無償で、権利侵害者を探し出して侵害行為をやめさせる役割を担わせるということになります。そして、それができない場合、その汎用的な道具やサービスの提供者は、まさに人々の役に大いに立つ汎用的なサービス等を提供してしまったがために、いつまでもいつまでも半永久的に著作権者に対して「間接強制金」を支払い続けなければならないということになります。
 そして、このような「現代型農奴」としてコンテンツホルダーから狙われているのが情報通信サービス業者です。検閲が禁止されている電気通信事業者はもちろん、検閲は法的には禁止されていないけれども24時間いつでも利用者が送信した情報が瞬時に他の利用者に到達するシステムを構築してしまったが故に検閲を行うことが技術的経済的に困難となっている情報通信サービス業者(電子掲示板の管理者を含む。)は、利用者が送信しようとしている情報が第三者の著作権を侵害するものであるかどうかをチェックすることなく、その送受信を媒介してしまいます。これは形式的にいえば著作権侵害の「幇助」とされる可能性はありますが、瞬時になされる情報の送受信を阻止する能力は、情報通信サービス業者にはありません。かわいそうに、間接強制金を支払うしかなくなります。
 (112)で提案されるような改正がなされた場合、市民による情報発信をサポートする業者は、市民が発した情報の内容を逐一検閲した上でなければ、これを特定人又は公衆へ伝達することができなくなります。国が民間業者に対して法律により検閲を義務づける国家に日本が成り下がるということです。(112)を支持するということは、「利用者から送信された情報を、内容を検閲することなく、受信者に届けることが許されない」ということと同義です。著作権者たちの権益は、憲法が定める表現の自由の保障、検閲禁止の原則等をも凌駕すべきといっていることと同義です。私は、言論の自由は大切だと思うし、検閲は許されないと思うし、情報通信サービス業者がコンテンツホルダーから農奴のようにただ働きさせられ、あるいは間接強制金という名の年貢を納めさせられることがフェアだとは思わないし、そのような法制度がとられている社会ではIT産業を担おうとする人材がいなくなっていくことと危惧します。
 「有益な用途に用いられる可能性があるのであれば、その新しいサービスを保護しよう」という「自由の国、未来志向の国アメリカ」に対して、「既得権者の権益を害する用途に用いられないようにできるようになるまで新しいサービスを公衆に提供することは罷り成らん」という「規制大国、既得権者のパラダイス」に成り下がっていて、日本が今後のIT革命競争でまともに戦えるようになるとは思えません。私は、音楽著作権者等のエゴを優先させたがために、日本が一人IT革命の波に乗り遅れ、10年後に、欧米諸国のみならず、近隣のアジア諸国からも嘲笑される「時代遅れの国」になることを望みません。ので、(112)には反対します。
 これに対し、(114)は、利用者の行為の責任を情報通信サービス業者に安易に押しつけがちな裁判所から情報通信サービス業者を守るという点からも有益であり、私はこれに賛成します(もちろん、情報通信サービス業者を守るという目的だけであれば、プロバイダ責任制限法の改正でもよいのですが、Winny事件で危惧されているように、プログラムを利用者が悪用したことの責任をとらされる危険からプログラムの提供者を守る必要もあるので、適用範囲を主体的に広げる(114)のような規定ぶりには賛同できます。)。

(少し訂正)

Posted by 小倉秀夫 at 09:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法改正パブコメ2004_04_05

(92)(93)(96)については、方向性は正しいと思いますが、条項案はスマートではないように思います。また、今日、多くの辞書・データベースソフトがCD-ROMやDVDなどで提供されていますが、通常のコンピュータはCD/DVDドライブが一つしかないため、複数の辞書・データベースソフトを同時起動させるには、これらの内容をパソコンのハードディスクにコピーすることが必要となりますが、著作権法第30条1項をパーソナルユースに限定する多数説の見解に従う限り、これを正当化する規定は現行法にはないということになります。また、企業においては、ソフトウェアを含めて購入代金をリース形式で調達する場合が少なからずありますが、その場合には著作権法47条の2の適用を受けられないとする見解もあり(確かに、文理解釈するとそうなります。)、実際の運用と法律が乖離してしまう危険があります。
 これらの諸点を解決するためには、著作権法第47条の2を次のように改正するとよいのではないかと思います。
 
 (プログラム等の著作物の複製物の所有者による複製等)
第四十七条の二  プログラム等の著作物の複製物の正権原のある所持人は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために有益と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。
2  前項の複製物の正権原のある所持人が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により占有しなくなった後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

(98)は、同一性保持権侵害となる著作物の改変を「著作者の名誉又は声望を害する」ものに限定しようというものです。これにより、著作物の利用者の権限が国際標準に近づくとともに、実演家人格権としての同一性保持権に関する著作権法90条の3とも平仄がとれることになります。したがって、私は(93)に賛成します。

 (99)は、改変された著作物が公衆に提示又は提供されない場合には同一性保持権侵害としないこととせよというものです。改変された著作物は、それが当該著作者のものとして公衆に提示又は提供されればこそ著作者の社会的評価に影響を及ぼすことが可能となるのであって、それが公衆に提示又は提供されない間は、著作者の人格的価値をいささかも損なっていないわけですから、この段階では未だ同一性保持権侵害とはしないというのは理にかなっています。
 加えて、エンターテインメントビジネスでの実際の流れを考えた場合には、先に他人の著作物を改変して新たな著作物を創作した後に当該著作物の著作者に同意を得るということは通常行われているところですが、改変された著作物をいまだ公表していなくとも同一性保持権侵害が成立するとなると、上記例では、当該著作物の著作者から同意を得られなかった場合には、法理論上は、当該著作者が望めば、新たな著作物の創作者は、損害金を支払わされたあげく、刑事罰に処せられることとなり得ます。それは、既存の著作物を元にして新たな著作物を創作していくという文化の継承的発展を、文化の発展に寄与することを究極的な目的としているはずの著作権法が、断ち切ることに繋がります。そのような事態が望ましくないことはいうまでもありません。
 したがって、私は(99)の、特に252頁の意見に賛成します。
 
 (101)は、要するに「楽譜」については著作権法上特別扱いせよというものです。
  しかし、一般家庭にもピアノやギターなどの楽器が普及し、これを家庭内やあるいは友達や恋人を呼んで演奏するということが一般的に行われており、それにあわせてピアノやギターなどで容易に弾き語りができるようにシンプルにアレンジされた楽譜集が市販されております。このような楽譜集を購入した者が、とりあえず練習しようとしている楽曲に関する譜面のみをコピーして用いるというのは、非常に自然な行動です(分厚い冊子のままでは、演奏中に勝手にめくれないようにするのは大変です。)。(101)は、こういう市井の音楽愛好家たちの合理的な行動を「犯罪行為」と位置づけようとするものであって、とうてい賛成することはできません。また、(101)に示された改正を行うと、学校の音楽の時間において、ある特定の楽曲を生徒たちに演奏させるためには、当該楽曲が収録されている楽譜集(著作権法上特別扱いが必要となるほどに高価なものなのであろう)を一冊丸ごと生徒たちに購入させなければならないことになりますが、そうすると教育現場においては文科省の検定を通った音楽の教科書に掲載されていない楽曲を生徒たちに演奏させることは断念せざるを得なくなることが予想されます。そのようなことが、我が国の文化の発展に寄与しないことは明らかです。
  
(104)については、このような改正を行うと、観光地に設置されている銅像などとともに撮った写真を用いて年賀状等を作成し、友人知人等に送付する行為が犯罪とされる虞がありますが、それがよいことだとは思えません。原作品が屋外に恒常的に設置されている美術の著作物については、それが公衆の目に触れることを拒むことがそもそもできないのですから、そのような規制をする必要はないように思います。 

Posted by 小倉秀夫 at 08:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

著作権法改正パブコメ2004_04_4

 (46)及び(47)は私的録音録画補償金の問題です。現在の私的録音録画補償金は、(ア)著作権の付いた音楽やテレビ番組等の録音・録画に対象機器を用いなくとも権利者団体へ間接的に上納金を納めさせられる一方、(イ)私的録音録画補償金の対象となる機器を購入して権利者団体へ間接的に上納金を納めたからといって、多数説によれば企業内コピー等が適法にならないという問題があります。(ア)の問題(すなわち、私的録音録画に用いないのに補償金を上納させられる)は、汎用機器を録音録画補償金の対象に含めることによりさらに拡大します(例えば、データ用CD-Rの主要な用途は、特にオフィシャルユースに関していえば、なおも自分たちで作成した巨大なファイルの受け渡しです。最近はフロッピードライブのないパソコンが増えたのと、セキュリティの関係で添付ファイル付きのメールをはじくところが増えてきたので、このような用途でCD-Rを使用する機会が増えています。)。また、(イ)の問題があるため、録音録画補償金の対象となる機器を企業ユースで購入した場合には、まさに「お金は上納させられるは、複製は禁止されるは」で典型的な「やらずぼったくり」状態に陥ることになります。このような「ハイコスト・ノーリターン」の強制を汎用機器にまで拡張されるのでは、権利者団体と機器購入者との間の利益バランスが権利者団体側に傾きすぎているといわざるを得ません。
 したがって、私は(46)(47)には反対です。また、仮に企業内コピーには著作権法第30条1項が適用されないとするならば、企業が私的録音録画補償金の対象となる機器を購入した場合は、補償金の上乗せ分を店頭で返還することを義務づけるべきだと思います。
 
(49)は、技術的保護手段がとられているレコード等については私的録音録画金の配分を受けられないようにするなどの抜本的な改正を求めるものです。複製を技術的に規制しておきながら私的複製に対する補償金をもらうというのはある種詐欺的であるとすら言えますから、当該機器を用いての複製が技術的に制限されているコンテンツの権利者には補償金が分配されないような制度が必要だと思います。

(50)は、スキャナ等についてもデジタル複写補償金制度を導入せよというものです。しかし、出版物のデジタル複製に用いるという用法はスキャナ等の主たる用途とは言い難いのが現状です(例えば、法律事務所であれば、相手方の準備書面をスキャンし、OCRソフトを利用してテキストデータに変換し、反論の準備書面を作成する作業を容易にするという用途が主流でしょう。)。それなのに、なぜ出版社団体がスキャナ等に関して補償金を配分せよと要求できるのか私には理解できません。したがって、(50)の意見について私は反対します。

Posted by 小倉秀夫 at 01:52 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/19/2004

著作権法改正パブコメ2004_04_03

(57)は、商業目的の「調査研究」を目的として文献の複製を求める者に対して図書館等はこれに応ずるなとするものです。
 しかし、図書館等には、もはや市場では入手困難な貴重な文献が多く収蔵されており、そのような貴重な文献は往々にして「貸出禁止」扱いにされていることが多いようです。すると、貴重な文献の必要な部分の写しを手元に置いて「調査研究」を行うことが企業等には許されないということになり、我おいて、企業が商業目的で行う「調査研究」の質は大いに低下することが予想されます。
 商業目的であれ、質の高い調査研究が行われ、これが公表されることは、我が国の文化の発展に大いに寄与するものであるところ、これを阻害するような法改正というのは、我が国の文化の発展に寄与するという著作権法の究極の目的に反するものであるといえます。したがって、私は(57)の意見には反対します。

(58)は、図書館等における複製は、複製物を図書館内の利用者に交付できる場合に限定せよとするものです。
 しかし、図書館等には、もはや市場では入手困難な貴重な文献が多く収蔵されており、そのような文献の中には、ごく少数の図書館にしか収蔵されていないものが少なからずあります。特定の研究のためには先行論文等に引用されている当該文献等を入手しなければならないことも少なからずあるわけですが、その場合に、当該文献を所蔵している図書館まで出向かなければならないとすると、研究者の時間と交通費を無駄に浪費させることとなりますし、場合によっては、予算等との関係で当該研究を断念せざるを得なくなる場合すら生じます。
 また、そのような希少本以外についても、研究者に図書館に出向く時間と費用を浪費させることだけを目的とする法改正を行うことが、我が国の文化の発展に寄与するものとは思えません。
 したがって、私は(58)の意見には反対します。

(61)は、図書館における複製に対し補償金制度を設けよというものです。
 国も地方公共団体も財政難で、図書館にかけられる予算が大幅に増加することが期待できない現在、利用者のための複製に対して補償金を支払えと言うことになれば、多くの地方公共団体で図書館を廃止するか、文献複製サービスを中断せざるを得ない事態を招きかねません。また、図書館等において利用者に対し補償金相当額を複写料として上乗せすると言うことになれば、一部の富裕層以外は、必要な文献を入手してこれを読み込んで特定の研究を行うことが困難になるとも予想されます。
 既に刊行されている書籍・論文等の著者の多くが、必要な参考文献等を図書館等で複製して使用しておきながら、未来の研究者に対しては金を支払えというのは、あたかも天につばを吐くようなものです。
 私は、(61)のような、我が国の文化の発展を阻害する方向での改革には反対します。

Posted by 小倉秀夫 at 09:42 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法改正パブコメ2004_04_02

(77)は、要するに図書館等で映画等が無償で上映されるのはけしからんから禁止しろというものです。
しかし、著作権法の究極の目的は「文化の発展に寄与すること」であって、著作者等の権利の保護を図ることはそのための手段にすぎません。そして、一部の富裕層だけが著作物を享受でき、そうでない階層に生まれた者は著作物を享受できないというのでは、新・貴族文化の発展に寄与することはできても、全国民を巻き込んだ文化の発展には寄与することができません。著作権法は、著作権法による保護の成果として多様な著作物が輩出した恩恵をあまねく国民が受けられるように、図書館等において非営利かつ無償で著作物を公衆に提示することくらいは大目に見よとすべての著作物の著作権者に求めているのであり、「映画の著作物」の著作者だけが「金を払えない貧乏人の目には自分たちの作品を触れさせたくない」と文句をたれるのは大人げないとしか言いようがありません。このような文化の担い手としての社会的責任に無自覚な映画産業のエゴが露出する(77)の意見に私は反対します。

(78)は、「営利を目的」とする場合というのを制限的に規定せよというものです。私も、当該著作物の利用行為が広告料収入や入場料収入、飲食物等の販売収入等の収入を得て利益を上げることを目的とする場合に限られるべきだと考えており、例えば、家電量販店等において商品たるテレビ受信機の性能を消費者に見せるために、店頭でテレビ番組を受信し表示した状態でテレビ受信機を陳列するような場合を違法行為とするのはおかしいと思います。したがって、私は(78)の意見に賛成します。

(80)(81)は、方向性は悪くないと思いますが、営利目的の定義を明確化、限定化することによって対処するのが筋だと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 08:59 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法改正パブコメ2004_案04_01

4. 著作権等の制限について

(39)について、方向性は悪くないと思いますが、社内コピー問題の根幹は、企業内コピーについては一律に著作権法第30条1項の適用を受けないと解する多数説及び下級審裁判例にあります。30条1項の文言自体は、企業内コピーを排除していないし、作成した複製物を営利活動に用いることをも排除していないのに、「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において」というふうに「家庭内」という文言が用いられているのを過度に重視して「だから企業内コピーには適用がないのだ」と曲解されているのが現状です。このような誤解をなくすために著作権法第30条第1項の該当部分を「限定的かつ閉鎖的は範囲内において」と変更することによって、企業内コピーであっても、一定の場合に、著作権法第30条1項が適用されるのだということを明示し、現実の社会では普通に行われていることを違法としてしまうことをさけることができます。

(40)は附則第5条の2を廃止せよというものです。その理由としては、学術著作権センターなどの集中処理機関が整備されてきたことをあげていますが、書籍や雑誌に掲載された文章の著作権については、集中処理機関の網羅性には未だ不十分なところがあり(権利集中機関を社団法人化したからといって、網羅性を達成できるわけではありません。1著作物あたりの想定許諾料収入が低いこと、集中処理する権利が限定的であること、著作権者の数が多いこと等を考えると、集中処理機関に権利を付託するメリットが書籍・雑誌等の文章については低いので、網羅性が飛躍的に向上することは見込めないと思います。)、現段階で附則第5条の2を廃止した場合、複製をしたくとも、許諾を受けるに受けられないという事態が生じてしまう虞が高いといえます。したがって、現時点で附則第5条の2を廃止するのは時期尚早です。

(41)は、著作権法第30条1項の目的を「個人的に使用すること」に限定せよというものです。しかし、子供から頼まれてビデオの録画ボタンを押してしまった母親を著作権法違反(複製権侵害)で逮捕起訴して懲役刑を科すことを法的に可能とせよというのがまともな人間の考えることとは思えません。よって、私は(41)には反対します。

(42)については、「著作権者の利益を不当に害することとなる複製」か否かというのは、著作権法を得意とする法律実務家の目から見ても非常に難しい問題です。「著作権者の利益を不当に害しない利用」一般を個別的救済規定たるフェアユース規定に用いるのはともかくとして、定型的な免責規定である著作権法30条1項にこのような抽象的な規定を設けることには反対です(そもそも、30条1項は、閉鎖的かつ限定的な人的な範囲でのみ使用されることを目的とする複製のみを対象とした規定であり、著作権者の利益を侵害する度合いが軽微なものであり、それはデジタル技術が普及しても何ら変わるところはありません。著作権法は消費者に無駄を強制することによる需要の創出を「正当な利益」に含めないのです。)。

(43)については、「知りながら」という文言が未必の故意を含んだり、大量の情報の中の一部に著作権を侵害して送信可能化されているものがあることを知っている場合を含む場合には、ウェブブラウザー等を用いたネットサーフィンなど、いつでも逮捕起訴され場合によっては懲役刑を受ける覚悟がなければできなくなります。例えば、電子掲示板等を開設していると、新聞等の記事を引用の要件の範囲を超えて複製した投稿が書き込まれることがありますから、未必の故意でも著作権侵害罪が成立するということになると、自分が開設する電子掲示板を閲覧することも危なくてできなくなります。また、未必の故意は含まないとしても、他人の電子掲示板を閲覧した際に、著作権侵害となるような投稿が書き込まれているのを発見してしまった場合、再びその掲示板を閲覧すると、著作権侵害罪に問われる可能性が出ていきます。したがって、私は、インターネット文化を破壊する効果をもつ(43)には反対します。

(44)については、著作権法第2条1項20号が「著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるもの」という要件を設けたのは、規制対象の明確化を図ったものです。技術的保護手段の回避を専らその機能とする装置等の公衆への譲渡等や、業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行う行為が刑事罰の対象とされている以上、罪刑法定主義の観点からも、規制対象たる「技術的保護手段」を明確に規定する定義することは必要です。また、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の意見をみると現行法では特定の「プログラム」に反応する信号は保護されないかのように見えますが、特定の信号に反応する「プログラム」が組み込まれたコンピュータはここでいう「機器」にあたると解されており、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の意見は前提を間違えています。また、技術的保護手段の定義を(44)の求めるように改正した場合には、「回避」等の定義も変更せざるを得ず、例えば、パソコンのOSのCDドライブを制御する部分において、エラー情報を訂正し、CD等の表面に細かい傷がついていたとしてもCDドライブが異常動作しないような機能を組み込んだ場合に、これが違法とされる虞もあります(一部のレコード会社が採用したCDS-200方式のコピー制御技術は正に、CDにエラー情報を混入してパソコンのCDドライブに異常動作を行わせることによってパソコンを使ったコピーを制御しようというものだったので、あながち杞憂ではありません。)。
 今後コピープロテクトは進化、多様化することはあろうかとは思いますが、それに対しては、ソフトメーカーと機器メーカーと消費者団体とが協議をして、法的に保護するに値するということについて意見の一致を見たコピープロテクトについて、それが「技術的保護手段」の定義に合致するようにその都度法改正をすれば足り、また、罪刑法定主義の観点からはそのような手続きを踏むことが望ましいと言えます。したがって、私は(44)の意見に反対します。
 また、社団法人日本映像ソフト協会は、DeCSSを著作権法により規制するために法改正を望んでいるようです。しかし、DeCSSは、必ずしも商業的に配布されているわけではないOS(例えば、Linux等)を用いてコンピュータを稼働させている者が、正規に購入したDVDソフトをそのコンピュータを用いて再生するために開発されたという側面もあり、これをDVDを複製するためのソフトと安易に位置づけてこれを禁止するような立法を行うことには大いに疑問があります(なお、DVDソフトには、CGMS等のコピー制御技術が用いられており、これは著作権法上の技術的保護手段にあたるので、DeCSS等を違法化しなくとも、コピー制御することに問題はないはずです。)。

Posted by 小倉秀夫 at 08:28 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

10/18/2004

著作権法改正パブコメ2004_案02

(7)は、要するに、著作物の複製物の中古品を販売した物に対して上納金を著作権者に納めさせよとするものです。工業製品には様々な知的財産が用いられていることは日本のみならず、世界各国で共通している事象であり、その物理的な寿命に比して消費者に十分な満足を与えることができる期間が短い商品については中古品市場が形成されることも、日本のみならず世界各国で共通している事象です。それなのに、なぜ、日本の、著作権者のみが、中古品の販売業者の営業努力の成果を搾取することが許されるのか、全く理解不能です。知的財産権法においては、「知的財産権が組み込まれた商品を正規に購入した者がこれを活用して利益を得たときはその利益の一部を当該知的財産権の権利者に還元しなければならない」という原則はありません。新品を購入せずに中古品やレンタルで済ます消費者が少なからず存在するという点は、特許や商標の実施品(例えば、自動車やブランド物のバッグなど)においても共通しているのに、です。著作権関係の権利者団体はスタートの時点で勘違いをしているように思います。
 したがって、(7)の意見には反対します。

(8)は、最高裁判決の趣旨を明文化せよというものですが、「条文を読めば、権利義務の範囲が明らかにわかる」という法の理想に近づけようというものですから、(8)の意見には基本的に賛成です。

(10)は、コピー問題の伴わない貸与については貸与権の対象からはずせということと、書籍・雑誌等の貸与については禁止権ではなく報酬請求権に留めよというものです。
 前段部分についていえば、借主が借りてきたオリジナル商品の私的複製物を製作して返却するという利用法が通常とられるものについては、通常の工業製品の貸与と何ら変わるところはなく、当該工業製品に自己の著作物が用いられている者にだけ、貸与権(貸与に対する報酬請求権を含む)を付与する理由はありません。ベルヌ条約は貸与権の創設をそもそも加盟国に義務づけていませんし、WIPO著作権条約も、私的複製物を製作するために貸与を受けるという利用方法が通常化していない場合にまで貸与権を創設することを義務づけていません。そして、その物理的な寿命に比して消費者に十分な満足を与えることができる期間が短い商品については、使い捨てをやめ、レンタルなどを活用するということが、環境立国日本の国是にも沿うことを考えるならば、貸与権の範囲を限定する(10)の前段の意見に賛成します。
 後段の部分については、前回の著作権法改正により書籍・雑誌の貸与に対しても著作権者に貸与禁止権を付与することとした際に、著作権者側の代表は、書籍等のレンタルを禁止するつもりはない等といって国民や国会議員を安心させておきながら、上記改正法が施行される平成17年1月1日が目前だというのに、「こことライセンス契約を結べば書籍・雑誌について合法的にレンタル業を営むことができる」という組織ができあがっていません。このまま上記改正法が施行された場合には、貸本業者はすべて廃業するか刑罰を受けることを甘受するかという選択を論理的には迫られることになります。書籍・雑誌等は、著作権者側で理想の読者として想定する高額所得者だけが享受すればよいというものではないことはいうまでもないことでありますが、このままでは、地元の公立図書館が収蔵しない類の書籍について、低所得者や子供たちはこれを閲読し、それをその精神の発展に活かすことができなくなります。もともと文化庁やコミック作家等は、レンタルコミックなどの収益の一部を漫画家に還元すべきといって国会議員を説得して法案を通したのに、改正法が「貸本業撲滅」という、国会が予定していない事態を生じさせることになってしまいます。そのような事態は可能な限り回避すべきであり、したがって、上記改正法の施行日である平成17年1月1日までに「こことライセンス契約を結べば書籍・雑誌について合法的にレンタル業を営むことができる」という組織が成立する見込みがないのであれば、書籍・雑誌の著作権者から貸与禁止権を取り上げる立法を行うことが必要となります。よって、私は(10)の後段に賛成します。
 
 (13)は、要するに漫画喫茶等でコミックを利用した場合に漫画家に上納金を支払うようにせよとするものです。しかし、工業製品には様々な知的財産が用いられていることは日本のみならず、世界各国で共通している事象であり、工業製品を購入した者がこれを活用して利益を得るということもまた、日本のみならず世界各国で共通している事象でありますが、当該工業製品を活用した利益を得たらその一部を、当該工業製品に用いられている知的財産に関する権利者に「還元」しなければならないとは一般に考えられていません。なぜ、漫画家だけは、その作品の購入者がその創意工夫と営業努力の結果生み出した利益の一部を搾取できてしかるべきだと考えられるのか、私には不思議でなりません。したがって、私は(13)の意見には反対します。
 漫画喫茶においては、正規に出版された書籍を仕入れて活用しているのであり、経済学的な意味での「フリーライド」は全くありません。漫画喫茶が不当に利益を得ているというのであれば、漫画家ないし出版社が漫画喫茶ビジネスに参入すればよいのであって、その程度のことをも行わずに、ロビー活動により漫画喫茶等が得た利益の一部をピンハネしてしまおうというのは、経済学的に見て何ら筋は通っていないのみならず、道徳的に見ても問題があるといえます。

(少し修正)

Posted by 小倉秀夫 at 12:11 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

10/17/2004

著作権法改正パブコメ2004_案01

ということで、10月21日提出期限の、著作権法改正に関するパブリックコメントの案を作成してみました。
順に掲載します。

「1.著作権の定義」について

 著作権法の究極的な目的は「文化の発展に寄与すること」であり(著作権法第1条)、それ故、著作権による保護の対象となる著作物を、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に限定しています。
 (1)は、「デザイン」を著作権法により保護せよとするものですが、そこでいう「デザイン」とは結局「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの」のことであって、公的な審査を受けたものだけが、登録料の継続的な支払いを条件として、15年間に限り保護を受けられるとされている「意匠」のことをいっているに他なりません。
 したがって、(1)の意見は、結局「意匠」について、排他的な保護を受けるための要件及び保護の範囲の変更を求めるものにすぎず、それは意匠法の改正問題として、経済産業省主管のもとで行うべきものです。「美術の範囲」にすら属さない「デザイン」を産業上の利用可能性があるからといって「著作物」に取り込むことは、「著作物」の範囲についての統一的な理解を困難にするだけではなく、意匠法との抵触問題を引き起こすことになります。したがって、(1)の意見には反対します。
 
 (3)は、工業ノウハウを著作権による保護の対象とせよとするものですが、工業ノウハウというのは著作権法が保護すべき「表現」ではなく「アイディア」にすぎません。そして、工業ノウハウの保護については、それが秘密性を有しているときは不正競争防止法で一定の要件のもと保護されています。したがって、著作権法は「アイディア」ではなく「表現」を保護するものであるという著作権法の基本的な考え方を根底から覆す(3)の意見には反対します。なお、(3)においては、中国への技術流出を引き合いに出していますが、それを防ぐためには中国において工業ノウハウを保護する法律を制定させればよく、また、中国にそのような法律を制定させなければ、日本の著作権法で工業ノウハウを保護させても意味はありません。
 
 (4)は、「教材」を、教材に含まれている著作物等の保護とは別個の著作物として保護せよという意見のようですが、「教材」の定義がこなれていないこともあって、その必要性に疑問があります。
 
 (6)は、他人の原作をもとに新たな著作物を創作する場合であっても、映画の著作物については特別扱いせよとするものですが、何故に映画の著作物だけが特別扱いを受けてしかるべきとするのか不明です。
 問題は、著作権法28条に定める原著作物の著作者の権利が、報酬請求権ではなく、利用禁止権として構成されていることにあるのですから、二次的著作物が映画の著作物である場合に限らず、二次的著作物の原著作物の著作権者の権利を、利用禁止権から、報酬請求権へ変更することこそが抜本的な解決に繋がります。

Posted by 小倉秀夫 at 04:11 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (4)

10/09/2004

著作権法施行令の改正に対する意見

標記件につき、先ほどパブリックコメントを提出しました。


意見:
 著作権法第113条新第5項にいう「七年を超えない範囲内において政令で定める期間」については、「三ヶ月」と政令で定めるべきである。その理由は以下のとおりである。
 
 邦楽CDのアジア諸国への進出が邦楽CDの日本国内での販売を妨げないようにすることが改正法の趣旨である。そして、アジア諸国への進出が期待されているのは、浜崎あゆみ等に代表される、いわゆる「J-POP」といわれるジャンルである。
 
 そして、「オリコン」等のランキングを見ると、J-POPにおいては、発売日から3ヶ月以上もの間上位100位以内にランクされることは希である(オリコン2004年10月04日号のデータ(調査対象は2004/9/20〜9/26)でいえば、シングルチャート上位100位以内にランクされているシングルCDのうち、85作品が2004年7月1日以降に発売されたものであり、アルバムチャート上位100位以内にランクされているアルバムCDのうち、93作品が2004年7月1日以降に発売されたものである。なお、シングルCDでもっとも発売日が古いのは2001年3月23日発売の夏川りみの「涙そうそう」であり、アルバムCDでもっとも発売日が古いのは2003年7月30日発売のホー・リーの「冬の恋歌 Classics」である。)。簡単に言えば、発売日から3ヶ月もすれば、邦楽CDは普通売れなくなるということである。したがって、各レコード会社においても、この最初の3ヶ月での売上げで投下資本の回収を図っていることが予想される。
 また、発売日から3ヶ月も経過すれば、国内向け音楽CDを「定価で」購入することに躊躇する消費者は、レンタルCDや中古CD等により当該楽曲を享受することも可能となることから、アジア諸国からの正規品の並行輸入を禁止したからといって、国内向け音楽CDを定価で購入しなくとも、当該音楽CDに収録されている楽曲をそれなりに享受することができる。
 したがって、J-POPに関していえば、発売日から3ヶ月間、アジア諸国向け商品の並行輸入を禁止すれば当初の目的を達することになる。
 
 そして、著作権法第113条新第5項は、並行輸入の促進による内外価格差の是正という我が国の基本的な貿易政策に対する例外規定であるから、その適用範囲はなるべく限定すべきであることはいうまでもない。したがって、アジア諸国からの正規品の並行輸入がなくとも大きな売上げを見込めない「発売日から3ヶ月後」以上も邦楽CDの並行輸入の禁止を継続することは許されるべきではない。

 なお、輸入禁止期間を4年とした場合、禁止期間経過後は、既にアジア諸国向けのCDは廃盤になっており、結果的に並行輸入できないという事態が十分に予想される。それは、同一のアーティストによる同一の作品についていろいろな国のバージョンを収集したいというマニア層には非常に気の毒な結果となることを付言する。

Posted by 小倉秀夫 at 05:34 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (4)

10/08/2004

相手の建前を利用する

レコードの輸入禁止期間に関する政令についてのパブリックコメントの提出期限が迫ってきました。この3連休が事実上最後のチャンスですね。

今度のパブリックコメントは、ある意味条件闘争にしかすぎないので、あまり愉快なものではないですね。しかし、世の中には思い通りにいかないことはよくあることで、その場合に、100%希望が叶えられないからといって投げやりになるのではなく、少しでも希望が叶えられるようにねばり強く行動するということが結構重要だったりします。

その際によく行われるのは、相手の「建前」を利用して、それに沿った条件を提示するというテクニックです。相手の「建前」を大合唱して、相手の「本音」を実現させないということもまた、次善の策として模索されるべきなのです。

Posted by 小倉秀夫 at 12:43 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (1)

10/01/2004

輸入禁止期間に関するパブリックコメント

文化庁が輸入禁止期間についてパブリックコメントを求めているようですので、この点について考えてみましょう。

レコード輸入権の趣旨は、アジア諸国から低価格の正規CDが日本国内に並行輸入されてしまうと、特別に高い価格で提供されている国内盤が売れなくなってしまうが、それは日本のレコード会社がアジア諸国にて積極的に事業展開する上で支障が生ずるので、一定期間日本のレコード会社がアジア諸国で販売している正規CDの並行輸入を禁止しようというものでした。

したがって、輸入禁止期間を考える際には、


  1. アジア盤が並行輸入されなければ国内盤が大いに売れていたであろうという期間だけアジア盤の並行輸入を禁止すればよい

  2. 邦楽CDがアジア諸国で積極展開できるようにすることが大切なのであって、諸外国のレコードの売上げを保護してあげる必要はない

  3. 著作権者(著作隣接権者を含む)の権利は強化すればするほどよいという時代は終わっている

という視点が大切ですね。

では、具体的なデータを参照しながら考えてみましょう。

オリコン2004年10月04日号のデータ(調査対象は2004/9/20~9/26)を使用します。

シングルチャート上位100に入る楽曲を、発売日ごとに集計すると次のようになります(100位で週間売り上げ枚数が1237枚です。)。

04.9.1以降のもの 53
04.8.1~04.8.31のもの 18
04.7.1~04.7.31のもの 14
04.6.1~04.6.30のもの 02
04.5.1~04.5.31のもの 02
04.4.1~04.4.30のもの 05
04.3.1~04.3.31のもの 00
04.2.1~04.2.29のもの 01
04.1.1~04.1.31のもの 00

03.1.1~03.12.31のもの 04
02.1.1~02.12.31のもの 00
01.1.1~01.12.32のもの 01

アルバムチャート上位100に入る楽曲を、発売日ごとに集計すると次のようになります(100位で週間売り上げ枚数が3019枚です。)。

04.9.1以降のもの 68
04.8.1~04.8.31のもの 18
04.7.1~04.7.31のもの 07
04.6.1~04.6.30のもの 00
04.5.1~04.5.31のもの 01
04.4.1~04.4.30のもの 00
04.3.1~04.3.31のもの 01
04.2.1~04.2.29のもの 01
04.1.1~04.1.31のもの 00

03.1.1~03.12.31のもの 04
02.1.1~02.12.31のもの 00
01.1.1~01.12.32のもの 00

つまり、シングルもアルバムも、94%は過去6ヶ月以内に発売されたものであり、シングルについては2001人3月に新発売されたものがもっとも古く、アルバムについては2003年7月に新発売されたものがもっとも古いということがいえます。

では、2003年以前に新発売されたものを具体的に見ていきましょう。

シングルについては以下のとおりです。

タイトル          アーティスト  発売日
モーメント/最初から今まで リュウ     2003.12.10
しあわせになろうよ     長渕剛     2003.05.01
さくらんぼ         大塚愛     2003.12.17
涙そうそう         夏川りみ    2001.03.23
世界に一つだけの花     SMAP    2003.03.05

アルバムについては以下のとおりです。
タイトル          アーティスト  発売日
Beautiful days       ZERO/イ・ジョン  2003.10.29
  ~美しき日々~      ・ヒョン/リュ・シウォン 
ケツノポリス3       ケツメイシ   2003.10.01
君繋ファイブエム      ASIAN KUN-FU 2003.11.19
               GENERATION
冬の恋歌 Classics     ホー・リー   2003.07.30

これらについて2004/9/20~26の売上げの全体の売上げに対する割合を見てみましょう。
モーメント/最初から今まで    4.297%
しあわせになろうよ        0.523%
さくらんぼ            0.580%
涙そうそう            0.311%
世界に一つだけの花        0.067%

Beautiful days~美しき日々~   3.961%
ケツノポリス3          0.717%
君繋ファイブエム         1.574%
冬の恋歌 Classics        1.636%

このようにみると、「売れ時」が未だ続いているのは、シングルの「モーメント/最初から今まで」とアルバムの「Beautiful days~美しき日々~」だけといえます。

そして、「モーメント/最初から今まで」は韓国ドラマ「冬の恋歌」の挿入歌、「Beautiful days~美しき日々~」は同名の韓国ドラマのサントラ盤であり、日本の消費者に犠牲を強いてまで保護しなければならないものではないですね。

このように見ていくと、文化庁が提案した「4年」という数字が言語道断であることはもちろん、「1年」ですら長いですね。長くとも「6ヶ月」、本当のことをいえば「3ヶ月」程度でもよいくらいです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (4)

09/30/2004

排除する論理としての党派性と発言の持つ意味を明示するための党派性

Winnyの開発者を有罪にしたい人たちは、表向きは党派性に関係なく議論しましょうなんていってみても、結局自らの意見に反する人の意見は排除したいようですね。彼らが「党派性」という概念を目の敵にしたのは、それを明示することにより、その発言が「割り引いて」受け取られることを恐れたからなのでしょうね。結局、「割り引いて」見られてしまう立場の人たちが匿名で金子氏有罪論をネットでぶちまけていたということなのでしょう。

まあ、Winnyの話題は、ITの領域にもIPの領域にも属するものなので、複数の媒体で意見を発表できるので私はかまわないのですが。ただ、匿名での情報発信をしやすくしたことが問題とされているWinnyの開発者を有罪にしようという人たちが、固定ハンドルと使い捨てハンドルとを使い分けで自作自演したり、複数の固定ハンドルを使い分けて自作自演したりするなど匿名性を最大限に利用しようとするとかそういうのって、彼らの意識の中ではどう整理がついているのであろうかということには興味がありますね。

Posted by 小倉秀夫 at 03:46 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (1)

09/29/2004

真紀奈さんとの対論

「INTERNET magazine」の2004年11月号から、「インターネットの気になる法律相談」という名称で、バーチャル法律娘真紀奈さんとの対談が掲載されることになりました。

第1回目は、私と奥村弁護士しか注目していないある裁判例を題材にしています。よかったら見てみてください。

話は変わりますが、昨日、ファイルローグ事件の控訴審の第1回口頭弁論期日が行われました。なぜ今ころ第1回なのかというと、これまで印紙代をどうするかという前提問題ですったもんだしていたからです。

私自身は、勝つ気満々なのですが、あとは高裁の裁判官がJASRAC症候群にかかっていないことを願うばかりです。

Posted by 小倉秀夫 at 07:01 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

私立大学は来年1月からみんな犯罪者(これも吉川さんのおかげ)

吉川著作権課長の講演録が、最新の「コピライト」に掲載されています。
国会での慣習故に、法案に反対だった民主、社民の衆議院議員さんたちも、採決時に退席した川内議員らを除き、賛成に回ったという経緯は皆が知るところとなっているのに、全国会議員が最終的に賛成したんだということを金科玉条のように掲げるのはいかがなものでしょうかね。慣習を悪用する人間がひとたび現れると、折角の慣習が途絶えてしまって、後任が困ることになると思うんだけどなあ。

それはともかく、吉川課長は著作権法38条4項の解釈まで示してしまっているのですが、裁判所の解釈と真っ向から食い違う法律解釈を、裁判所の解釈とは真っ向から食い違うことを示すことなく、行政庁が示してしまって大丈夫なのでしょうか。人ごとながら心配です。
それとも、文化庁では、38条1項にいう「営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合」と、38条4項でいう「営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合」とは、全く異なる解釈をすべきということなのでしょうか。

http://www.asahi.com/national/update/0928/036.html

を読む限り、授業料や施設費等を図書館維持のための原資としている私立大学においては営利性ないし対価性が認められてしまうので、学生に書籍を貸与した場合であっても、38条4項の免責を受けられなくなると思うのですが。
まあ、図書館が充実していることを売りにして志願者の増加をはかった場合でも、ファイルローグ事件中間判決に従えば、利益を図る意図を認定されてしまうのですけど。

Posted by 小倉秀夫 at 01:50 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

09/23/2004

中立的道具2

 Winnyの開発者をどうしても有罪にした人たちは、「中立的道具」云々という話が嫌いなようですね。日常的な経済活動を行っている者を、いつでも恣意的に逮捕、起訴して有罪に持ち込める社会──逮捕、起訴され、有罪に持ち込まれることを回避するためには、適宜、捜査当局に「天下り」を含めた便宜供与をしておかなければならない社会──を望む人が複数人いたって不思議とは思いませんけどね。まあ、匿名の発言者は、自分はそのような党派性を有していないと抗弁してみたって信頼されないリスクを負っているわけです。

 それはともかく、「中立的な道具ないし行為」という視点がなぜ重視されなければならないのかといえば、「中立的な道具ないし行為」を不特定多数人に提供する行為について、「正犯による犯罪行為を容易にした」という客観的な事実+概括的、未必的故意という主観にて幇助責任を問いうるとした場合には、「犯罪行為に利用されることを完全に除去できるようになるまでは道具なりサービスなりを公衆に提供すべきではない」──犯罪行為に利用されることを完全に除去できていないことを知りながら当該道具なりサービスなりを公衆に提供し、果たして当該道具なりサービスなりが犯罪行為に利用された場合には、事実上結果責任的に、当該正犯による犯罪行為に関して幇助責任を負うことを甘受せよということになってしまうからであり、それは明らかに技術の発展を阻害し、産業の停滞をもたらすからです。

 もちろん、それが「中立的な道具」だといってみたからといって直ちに刑事的に免責するような理論は少なくとも我が国では判例理論として採用されていない(だから、Winnyの開発者の行為が「中立的な道具ないし行為」は不特定多数人に提供する行為に他ならないのだと弁護団が立証できたからって、開発者が無罪となる保証は全くない。)わけですが、そのことは、「中立的な道具ないし行為」を不特定多数人に提供する行為を刑法上の「幇助」行為と捉えることの一般的な問題点を摘示するとともに、そのような行為を処罰対象から外すための理論を模索し、裁判所に採用させようとすることの価値を何ら減ずるものではないのです。

Posted by 小倉秀夫 at 05:56 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

09/20/2004

中立性

約10日ほど、遅い夏休みをとっていました。
今年は、ルーアンを起点に、ノルマンディ地方をゆっくりまわりました。
印象派好きには非常に満足の行く旅行になりました。

その間、日本ではいろいろなことがあったようですね。折角の休暇中に、些事に時間をとられるのも何なので、放置の姿勢を貫きましたが。

ところで、Winnyの開発者を有罪にしたいということでネット上で論陣を張っている方々がほぼことごとく匿名(固定ハンドルを含む。)というのは面白い現象ですね。特に実名を明らかにすると弾圧を受けかねないというような発言は見たところなさそうなのですが。まあ、中には、警察、検察の関係者もおられるのかも知れませんね。

それはともかく、中立的道具ないし中立的行為と幇助の関係についていろいろな議論がネット上でなされているようですが、みなさん、難しく考えすぎではないでしょうかね。

大多数の犯罪行為というのは、不特定多数人に対してその使用目的を問うことなく同じように提供されている「物」または「サービス」を利用することによって、実行されます。この場合、当該物等の提供者が当該犯罪実行者に当該物等を提供した行為と、当該犯罪実行者が当該物等を利用して行った犯罪行為との間には、少なくとも条件関係があります。

そして、その場合、当該物等の提供者は特定の被提供者が当該物等を利用して当該犯罪行為を行うだろうということまでは認識・認容していないが、当該物等の提供を受けた不特定多数人の中には当該物等を利用して犯罪行為を行う者もでてくるかもしれないということを認識しつつ、それでも構わないとして当該物等を不特定多数人に提供しているというのはよくある話です。ここでは、物等の提供者は、個々の被提供者の利用目的に対し中立的に当該物等を提供しているわけで、この場合に、幇助責任を負わせるのが妥当かどうかということが問題となるわけです。

この問題は、Winnyに限った問題ではないし、著作権侵害罪に限った問題でもありません。自己が不特定多数人に提供している物等が犯罪行為にも利用され得るものであるという事実を認識したからといって、悪用を防ぐ方法を開発するまで当該物等の提供を中断するというわけにはいかないので、この問題は非常に適用範囲の広い問題となるのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:35 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

09/04/2004

著作権思想

 ACCSは「著作権思想を含む情報モラルの普及・啓発活動」に最も力を入れているのだそうです
 ところで、「著作権思想」ってなんなのでしょう。
 著作権というのは、「文化の発展に寄与する」という目的を果たすということを大義名分として設けられた法制度に過ぎません。ここにおいて「思想」といえるようなものは「『文化の発展に寄与する』という目的」しかありません。
 すると、「特定の種類の投資家の利益等を保護するために、皆さまは『文化の発展』の成果の享受を諦めましょう」というのは、このような「思想」とは無縁といえます。「過去の投資」ないし「過去への投資」を重視するがあまり「将来への投資」をないがしろにするのは、むしろこの「思想」に反するといえます。
 そういう意味では、著作権等の保護期間の延長を求める人々、広範な「二次的著作物」に禁止権を与えることを是認する人々、著作権等を盾にとって新技術の開発・提供を阻害するような人々──こういう人たちこそ、「著作権思想」を理解していないのだといえます。また、特別お金持ちの家庭に生まれなかった子供たちでも優れた作品にたくさん触れることができる仕組みを潰し、「創造のサイクル」を断ち切ろうとしている人々もまた、「著作権思想」を理解していないのだといえます。
 「著作権思想を含む情報モラルの普及・啓発活動」に力を入れているACCS等には、著作権を過剰に確保、行使して「文化の発展」を却って阻害してしまっている人や企業に対して、正しい「著作権思想」を普及させていってもらいたいものです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:15 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

08/31/2004

Grokster

井上雅夫さんがグロークスター事件の第9サーキット判決の日本語をアップしてくれています。

http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/cr_040819Grokster.html

Posted by 小倉秀夫 at 09:00 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/23/2004

潮時

みなさん、そろそろHakkaAmeP氏の正体探しはやめにしませんか?

ある時点でのハッカ飴氏がかりに大橋検事だったとしても、その後のHakkaAmeP氏が大橋検事である保障はないわけですし(HNで表わされるネット上の人格って、簡単に憑依することが可能ですから。)。

実際のところ、私にせよ、大橋検事にせよ、基本的な情報は公開されているから、憑依しやすいことは間違いないですし、他方、公開されていない情報に関する部分については間違いが多すぎますし。

(例えば、私は、情報ネットワーク法学会の第1回シンポの時に大橋検事にお会いしてお話をしていますし、白髪の高裁判事云々の話は全く身に覚えがありませんし(退廷命令が出る程白熱した議論を裁判官とやり合うのは弁護士にとってはある種誇らしいことですので、身に覚えがあれば敢えて否定する理由もないのですが。)、私は修習生時代ぎりぎりまで任官も意識していたので大人しくしていましたし。)。

それに、近時「HakkaAmeP」のHNでコメントを付けていた人物と、別の固定ハンドル名でコメントを付けていた人物とは同一人物ではないかという気がするのですよ。HakkaAmeP氏のBLOG及びその人物のBLOG及びかれらのHNで各種のBLOGに書き込まれたコメントの内容及び時間を見ていると。

で、間違った情報が流布することにより大橋検事が退官を余儀なくされたりしたら気の毒ではないですか。

Posted by 小倉秀夫 at 10:13 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (7) | TrackBack (1)

08/21/2004

Grokster Wins,and Will Winny Win?

Grokster事件の控訴審判決を読み終えました。それほど英語が得意ではない私でも普通に読める程度の平易な文章で書かれており、その点にまず感心します。それでいて、日本の判決文とは異なり、何故その結論に至ったのか、きちんとわかるように書いてあります。

判例法の国である米国では、ナップスター事件で悪しき判例が形成されてしまっているため、ハイブリッド型のP2Pファイル共有サービスには厳しいですが、その分、ソニーベータマックス事件最高裁判決があるおかげで、ピュア型には比較的優しいですね(実質的な非侵害的用途の「可能性」があればいいわけですから、Winnyだってここは満たしますしね。)。

最も、そのおかげで、権利者側がまともに協力する気があれば権利侵害情報の流通をある程度減少させる可能性(注1)があるハイブリッド型P2Pファイル共有サービスが撤退し、権利侵害情報の流通には全く手が付けられないピュア型が生き残るというのは、何とも皮肉なものですね。

(注1)
 要は、検索用サーバの管理者との間で、送受信を阻止すべき電子ファイルの特定方法を協議し、コンピュータが容易に識別できる一定の方法で特定された電子ファイルだけでも送受信がブロックされるようなシステムを、一定の猶予期間内に開発するように求めればよいだけなんですけどね。そして、それは、プロバイダ責任制限法3条1項の趣旨にも合致するのですけどね。

Posted by 小倉秀夫 at 08:11 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

卑怯者になる自由

一匹狼tedie氏によれば、「HakkaAmeP氏の知人が誹謗中傷の被害者である場合ですね。電子掲示板に、HakkaAmeP氏の知人を実名で誹謗中傷する発言が書き込まれ、それを苦にしてHakkaAmeP氏の知人が自殺してしまったという場合」であっても、「弔いといっても、その意味はいろいろあるのであり、実名を曝されないことを堅持しようという態度によってもなりたちうる。」とのことなのですが、本当にそうでしょうか?

電子掲示板で、匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている例というのは結構たくさんあるわけですが、この場合、「ネット上で匿名で発言している人に対してはその実名はもちろん、その所属等を追及したり、明らかにしてはいけない」というルールを広めても、「匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている人」は一切救われないし、むしろ、より安心して誹謗中傷できるということで、誹謗中傷が激化し、「匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている人」がより追いつめられ、更なる犠牲者が発生してしまうかもしれないわけです。

したがって、「匿名の発言者により実名で誹謗中傷されている人」が自殺に追い込まれてしまうという自体の再発を防ぐためには、むしろ、「他人を誹謗中傷する匿名の発言者についてはその実名が暴かれる」システムこそが必要であるということができます。そして、「他人を誹謗中傷する匿名の発言者についてはその実名が暴かれる」システムを作るために、誰がどこまでの情報をどの程度の期間保有し、それをどういう手続きで誰に開示するのかということを様々な方面から一般市民による情報発信を支えている関係当事者が集まって話し合い、一定の結論が出てきたら、これを受けて議会がこれを明文化することは十分行われるべきです。

Winny事件の問題点のひとつは、匿名性に関するルールが(プロバイダ責任制限法4条の「あるものを開示すればよい」というもの以外には)定まっていないのに、匿名性を保障したことが悪いことであるかのように言われているところです。FileRogue事件に至っては、利用者に戸籍上の氏名及び住民票上の住所を登録させなかったことが責められています。

事前に、議会が制定した法律によって、「不特定人に情報発信することを可能とするサービスを提供する事業者は、ユーザーのIPアドレスを開示するだけでは足りず、各事業者ごとに、各ユーザーの戸籍上の氏名及び住民票上の住所を確認すべき」というルールが制定されたのであれば、施行期間までに、このルールを遵守するシステムが構築可能かを検討した上で、新たなシステムのもとサービスを継続するか、新たなルールは遵守できそうもないのでサービスの継続を諦めるかを検討しようがあります(その場合、全国各地に代理店等をおいて、免許証の提示を受け、戸籍上の氏名及び住民票上の住所を確認できたもののみを入会させるシステムを構築できる大企業しか、その種のサービスは営めなくなるとは思いますが。)。しかし、裁判所が裁判のたびごとにアドホックに新たなルールを作り出され、そのたびごとにイノベーターが刑罰を科されたり高い賠償義務を負わされたりという不利益を課せられるのではたまったものではないということが問題なのです。

ところで、匿名で他人を誹謗中傷する発言を行っていたところ実名を晒されてしまい、その結果追いつめられて自殺してしまった知人を弔うために、ネット上で匿名で発言をしている発言者について「実名を曝されないことを堅持しよう」としている人がいたとした場合に、一匹狼tedie氏はそれに賛意を示すのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 01:39 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/20/2004

弔い

HakkaAmeP氏のBLOGでの以下の発言は重要なので、少しコメントしてみましょう。

私はパソ通時代から,この手の問題に慣れていますが,実名掲載の誹謗中傷を掲示板に晒されて結婚式10日前に自殺した知人の弔いでやってます。その意に反する実名掲載は,場合によっては人の命すら奪う危険があるということです。m(_ _)m 合掌 

パソコン通信での掲示板にせよインターネット上での電子掲示板にせよ、「実名掲載の誹謗中傷を掲示板に晒されて結婚式10日前に自殺した」という事件があれば、当時、ネット上ではもちろん、紙媒体でも、当時かなりの報道があったと思うのですが、私は気が付きませんでした。まだ情報収集能力が不足しているようです。

それはともかくとして、この記述は曖昧なので大きく分けて2通りに読めます。

一つは、HakkaAmeP氏の知人が誹謗中傷の被害者である場合ですね。電子掲示板に、HakkaAmeP氏の知人を実名で誹謗中傷する発言が書き込まれ、それを苦にしてHakkaAmeP氏の知人が自殺してしまったという場合です。

この場合、その知人を弔うのであれば、むしろ「他人を批判(誹謗中傷)する際に自らは匿名を維持できるシステムないし文化」をこそ変えていく方向に行くべきでしょう。弔い合戦の相手は、むしろ、ハンドル名を使って自分は安全地帯に身を置いたまま他人を攻撃している人たちであるべきですね。ただこの場合、「(1) 自然かつ合理的な理由無くして実名表記を求めたり,(2) 2chで個人活動の実名を晒したり,(3) 公私混同されてオマエは当然だとするカキコをしたり」ということを「理不尽」とするHakkaAmeP氏の主張とは繋がりません。

もう一つは、HakkaAmeP氏の知人がどこかで他人を誹謗中傷していたところ、それがHakkaAmeP氏の知人の実名入りでどこかの掲示板に転載されてしまったという場合です。これを弔う意味であれば、「(1) 自然かつ合理的な理由無くして実名表記を求めたり,(2) 2chで個人活動の実名を晒したり,(3) 公私混同されてオマエは当然だとするカキコをしたり」ということを「理不尽」とするのは合理的といえます。

ただ、それは一方で「他人を誹謗中傷する個人の匿名性を保障せよ」という主張とも聞こえるので、正直それはどうかなあと思うのです。私は、他人の権利侵害にも利用することができるインフラを守れとは言っていますが、そういうインフラを使って他人の権利侵害を行うやつを守れとは全然思わないですし。

Posted by 小倉秀夫 at 09:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (2)

08/19/2004

ちょいと修正

 以前私が提案した著作権法改正案のうち、112条2項について、落合弁護士から「ただ、「特定の」、「ことさら」というところに、どうしても評価の要素が入りますから、拡大解釈による処罰強化の恐れは払拭できないような気がします。」とのご指摘を受けました。裁判所は、プロバイダ責任制限法3条の免責規定すら一種の詭弁で突破してしまうくらいですから、この程度の「縛り」では簡単に突破される危険があるとは確かに言えるわけで、もう少し条項案を精査する必要を感じました。
 ただ、落合案ですと、刑事責任しか免責できないわけですが、「コンテンツホルダーの利益を過剰に保護するためにイノベーションを阻害しない」というレッシグ教授のような問題意識で考えると、民事責任も免責してあげないといけないので、そういうことを考えて次のような修正案を作ってみました。
(文言は、著作権法のみなし侵害の規定及びプロバイダ責任制限法3条から拝借してみました。) 



(中立的行為の保護)

第百十二条 著作権、著作者人格権又は著作隣接権(以下この条において「著作権等」という。)を侵害する行為以外の行為に用いられ又は用いられる可能性がある物(プログラムを含む。)又は役務を開発し、生産し、譲渡し、貸与し、又は提供する行為は、当該物又は役務が著作権等を侵害する行為に用いられ又は用いられる可能性があることを知りたる場合と雖も、著作権等を侵害し若しくは著作権等の侵害を教唆又は幇助しないものとみなす。

2 前項の規定は、当該物又は役務を用いて著作権等の侵害を行う意図を有する者に対し、情を知つて、当該物又は役務を譲渡し、貸与し、又は提供した場合であつて、著作権等を侵害する行為への利用のみを防止する措置を講ずることが技術的に可能なときには適用しない。

Posted by 小倉秀夫 at 11:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

核心の議論

それにしても、Winnyの話題となると、一気にアクセス数が上がりますね。昨日だけでも、通常の3倍のアクセスがありました。レコード輸入権問題の最盛期よりアクセス数が多いというのはいやはやなんともといった感じです。

アクセス数は多いのですが、結局のところ、私に対する個人攻撃は多いのだけれども、核心の部分については納得のいく反論がいまだなされないのが現状です。

すなわち、一般市民が検閲されることなく不特定人に対し情報を発信できるシステムの提供者は、そのシステムに

どのような特性を付与することにより幇助犯となるのか

ということや、一般市民が検閲されることなく不特定人に他人の権利を侵害する情報を発信することができるシステムの提供者は、そのシステムに

どのような特性を付与することにより幇助犯としての責任を免れるのか

ということについて、特にWinnyの開発者は有罪であるとする論者からは、説得力のある見解が出てきません。

いわゆるベータマックス訴訟米国連邦最高裁判決は、──直接的には複製機器の販売に関する判例ですが──寄与損害を構成しないとするためには、

Indeed, it need merely be capable of substantial noninfringing uses.

と判示しているわけで、Winnyだって、そのような可能性は持っているのではないかと思うのですけどね。匿名性を維持したまま不特定人に情報を発信したいという要請は、──とても上品とは言えないが違法とまでは言えない単なる人格攻撃のレベルですら──実際あるわけじゃないですか。

私は、一般市民が不特定人に対し情報発信を行う際に一定のトレーサビリティを確保することは、権力機構によりこそこそと、あるいは恣意的にトレースがなされないことが制度的に保障されるのであれば、必ずしも反対しませんが、でもそれは、立法過程を通じて国民的合意を形成した上での話です。プロバイダ責任制限法が制定されるときに、特定電気通信役務提供者にトレーサビリティを確保する技術的手段を講ずる義務を課さなかった以上、トレーサビリティを放棄した通信システムを構築したが故に厳しい責任を負わされるというのは、おかしいわけです。


Posted by 小倉秀夫 at 01:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

08/18/2004

本当に検事さんかなあ

http://d.hatena.ne.jp/sarasa/20040814のコメント欄でのHakkaAmeP氏のコメントを見る限り、「 警察や検察の裁量次第で、普通に社会生活を営んでいる人々、普通に経済活動を行っている企業の責任者が逮捕され、起訴される社会というのは、警察や検察関係者以外には、住みやすい社会ではないですね(そういう社会では、企業は、警察OBを総務部長などとして高給で迎え入れたり、検察OBを高い顧問料を支払って顧問弁護士として迎え入れたりすることが、リスク回避のための合理的な行動としてとられやすくなりますから、警察や検察関係者にとっては住みやすい社会ということになるかもしれません。)。」という私の発言を、彼は、「警察検察を皮肉る嫌味」と受け取ったのかもしれないですね。

私は、HakkaAmeP氏が本当に検察官なのかどうかも知りませんので(ネット上では、いろいろな意味で「なりすまし」が多いですから、現実社会での人格との同一性が、既に現実社会での人格との同一性が確認されている者により確認されていない以上、あまり確かな話にはなりえませんし。)、あの場所で「警察検察を皮肉る嫌み」を述べる必要は私にはなく、もちろんそのようなつもりはなかったのですが。

そういうことではなくて、ある行為を処罰するために処罰範囲が広範囲となり普通の社会生活上の活動や普通の経済活動までが当罰性を帯びてしまうような法解釈には問題があるという実質的な理由を述べただけなのですけどね。実際、権力機構にとっては、法の適用範囲が曖昧であれば曖昧である程、裁量の範囲が大きければ大きい程都合がいいわけですし、民間部門にとっては、法の適用範囲が曖昧であれば曖昧である程、権力機構の裁量の範囲が大きければ大きい程、予測可能性を欠き、処罰されることを事前に回避するためのコストが増大してしまうわけですから。

さらにいうならば、法解釈によって具体的に設定される「基準」を、当事者の属性等によってころころ変えるのは望ましくないことは普通にわかることだと思いますし、そうだとすればAという事案に関してαという法律を解釈してaという基準を打ち立てることの是非が問題となるときに、Aという事案にaという基準を当てはめて導き出した結論の妥当性の度合いと、Bという事案にaという基準を当てはめて導き出した結論の妥当性の度合いとを比較考量するというのは当然のことであって、このようなことは法律の解釈に関する論争では昔から行われてきたことです。

更に付け加えるとすれば、HakkaAmeP氏の私に対する批判の方が、抽象的でわかりにくいと思うんですけどね(議論の内容を具体的に批判しているというより、人格攻撃に近いし。)。

Posted by 小倉秀夫 at 04:56 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (1)

08/17/2004

プライバシー情報放流装置

 実は、「プライバシー情報の放流」という点に関していえば、そもそも発信者のIPアドレスを隠す必然性は余りありません。プライバシー権侵害は刑罰の対象ではないので、それだけだと警察が介入できないからです。したがって、IPアドレスと送信日時がわかっても、発信者を知るためには、プロバイダ責任制限法4条に基づく発信者情報開示請求を行わなければいけません。しかも、プロバイダの中には、そのようなプライバシー情報の発信者を庇い立てして、「開示して欲しければ裁判を起こせ」「和解になど応ずる気はない」などと被害者側の要求を可能な限り突っぱねるところも少なからずあります。ですから、被害者の側がお金を用意して弁護士に依頼する覚悟を決めない限り、発信者は匿名のままでいられます。

 匿名性こそが問題だという論者は、Winnyが云々以前に、ISPの態度の方を問題としないといけないのではないかと思うのです。
 現状では、ISPにアクセスログの保管義務がないので、アクセスログを保管していないISPからアクセスした場合には、発信者のIPアドレスがわかっても、発信者が誰かをトレースすることは確実にはできません(この点については、警察が介入できる著作権侵害や名誉毀損の場合でも一緒です。)。そうだとすると、そもそもアクセスログの保管義務をISPに負わせるところから始めないと、Winnyのような技術を禁圧してみたところで、「匿名の発信者による権利侵害情報の放流」を防止することなどできやしないということが言えます。
 さらに、民事訴訟を提起するのに必要な資料が調った場合には、わざわざ発信者情報開示請求訴訟など起こさなくとも、ISPから発信者情報の開示を受けられる法制度づくりも必要です。

Posted by 小倉秀夫 at 09:35 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (9) | TrackBack (4)

放流者の猿知恵

高木氏からコメントを頂きましたので、取り急ぎそのことに触れることとします。

内部から見た場合についてまで言及されているのか、わからないが、一応検討してみると、内部から見た場合を心配するというのは、捜査員にパソコンを押収されたときのことであろう。Upフォルダにファイルが入っているなら、それは暗号化の有無に関係なく、そこにファイルが入っているのはあきらかである。 それを防ぐためにUpフォルダを廃止するという設計もあり得る。この場合、直接キャッシュに原本ファイルを投げ込むことになる*2が、このとき、キャッシュファイルを暗号化しておくなら、暗号化して投入することになるし、暗号化しないでおくなら、そのまま投入することになるだけであり、暗号化の有無が設計に影響を及ぼさない。

よって、暗号化の有無は「区別が付かない方が都合がよい」ということに関係しない。

悪意の放流者がまず考えるのは、捜査員にパソコンを押収されたときのことでしょう。現在のWinnyの仕様だと、放流者のパソコンにはUpフォルダに暗号化されていないファイルが蔵置されているのに対し、単に自己のパソコンをキャッシュとして使用することを許可していたに過ぎない者のパソコンには暗号化されたファイルが蔵置されるに過ぎないわけですから、誰が放流者かはっきりわかってしまうわけで、悪意の放流者には都合が悪いシステムです。これに対し、Upフォルダにキャッシュも生成されるようにし、かつ、キャッシュとして生成されるファイルには一切の暗号化をしないこととすれば、捜査員にパソコンを押収されたときに、「それは、私が積極的にUpフォルダに蔵置したものではありません。おそらくキャッシュとして生成されたものだと思います。こまめにキャッシュの内容を確認しておかなかったことは申し訳ございません」という申し開きは一応できそうです(まあ、実際には、捜査機関側に不利な嘘を貫き通すのは並大抵のことではなく、逆に捜査機関側に有利な嘘は撤回が効かなかったりするわけですが。)。厳密にいえば、その線で貫き通したとしても送信可能化権侵害の未必の故意があるとされる可能性はありますが、概括的かつ未必の故意でも著作権侵害罪で起訴されるとなると、電子掲示板やコメント欄付のblogすら開設できなくなるので、痛し痒しです。それに、概括的未必の故意でもよいとなると、キャッシュファイルが暗号化されていて中身が見えなくとも、中継コンピュータの使用者が著作権侵害罪を侵したことになる可能性だって十分あるわけで、この種の分散型システム自体使用できる人を大いに限定しなければならなくなりそうです。

いずれにせよ、自分の関心がない電子ファイルが第三者の著作権を侵害するものか否かなどということは、そのファイルの中身を見ることができる状態にあったとしてもわざわざ調べようとなんて気になれない代物だったりするわけで(たまたま自分が知っている作品の複製物なら中身を見れば(聴けば)わかりますが、自分が知っている作品の複製物ではないとなった場合には、それが誰の何という作品であって云々と言うことを調べるのは結構な手間がかかります。)、そうなったら普通の人はいちいちチェックなどせずに放置するか、自分のところにきたキャッシュファイルは中身を見ずに即刻キャッシュ用のフォルダからは削除するのではないかと推測します。)。そういう意味では、キャッシュファイルが暗号化されるというWinnyの仕様は、開発者の刑事責任を重たくする方向には「本来」働かないのではないかというふうに思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 08:49 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/16/2004

キャッシュと暗号と幇助

昨日の私のこのblogでの発言に、高木浩光氏が反応をしてくれました。

詳細はリンク先の議論を読んで頂くとして、要点は、
「キャッシュファイルを暗号化して、ファイル名もハッシュ値にしているため、違法ファイルを自分がキャッシュしていないか確認しようにも、(ダブル)『クリックしても開きませんでしたので、普通の状態では見ることも動かすもできない』ということになる」という性質
をWinny等の特殊性を示す技術要素の最有力候補として考えてみてはどうかということです。

同一ネットワーク内にある他のコンピュータに接続された記憶装置内に、送信要求のあった電子ファイルを蔵置させてしまうというシステム自体は、「負荷を分散する」というP2Pの目的に沿うものと言えるでしょうし、その際、当該中継コンピュータに接続された記憶装置内に既に蔵置されている他の電子ファイルとのファイル名の競合を避けるためにファイル名をハッシュ値にするという仕様も理解可能です(キャッシュファイルのハッシュ値を「ファイル名+ハッシュ値」としたって構わないわけですが、こういう仕様にするのは、むしろ積極的にキャッシュファイルの内容を中継コンピュータの使用者に知らせることとしようという意図が開発者にある場合でしょうね。そういう意図を積極的にもたないのであれば、キャッシュファイルのファイル名を「ファイル名+ハッシュ値」とするより単に「ハッシュ値」とする方が自然に思いつくのではないかという気がします。いずれにせよ、「削除を呼びかける」のなら、削除を求める電子ファイルをファイル名で特定するより、ハッシュ値で特定した方が、間違いも少ないのではないかとも思います。

すると、問題は、キャッシュファイルを暗号化して、中継コンピュータの使用者がキャッシュファイルの内容を確認できない仕様になっているということが、Winnyの開発者をして、(他の情報通信システムの開発・提供者とは異なり)その開発したシステムを使用してなされる違法行為の幇助者として刑事責任を負わされてしかるべきとする理由となるのかということになります。

その理由としては、中継コンピュータの使用者は、キャッシュファイルが暗号化されていてその内容を確認できないが故に、安心して自己の使用するコンピュータの記憶装置内にキャッシュファイルを作ることを許可できるということはあるのではないかと思うのです。知らないうちにキャッシュファイルとして生成されるファイルの内容をいちいち確認して、それが何らかの法に反するものかどうかを判断して、法に反するものだと判断した場合には削除するという作業を要求されてまで、中継コンピュータとして使用されたくはないというのは、自然な考えです。「違法な電子ファイしか送信されない」とまでは思わなくとも、「違法な電子ファイルの送信にも利用されうる」程度の認識は利用者側にも普通あるわけですから。)わけで、キャッシュファイルを暗号化する仕様になっていないと、危なくて、「負荷の分散」という公共的な目的のためであるとはいえ、自己のコンピュータを中継コンピュータとして使用させることはできないということになります。すると、違法な電子ファイル(及び、違法とまでは言えないが、道徳的に見て好ましくはない電子ファイル)の送信を補助する気がない善良なユーザー程、Winnyのもとでネットワークを形成することを回避するようになることが予想されるわけで、それは新時代の情報送信システムとして(違法な電子ファイルに限らず)汎用的な電子ファイルの送信に用いられるべきシステムとしてWinnyを位置付けていたとすれば、作者としては面白くはない事態でしょうね。

逆に、Winnyを違法ファイルを「放流」するためのシステムとして位置付けたときは、却って、キャッシュファイルを暗号化しないような仕様にするのではないかという気がします。このような仕様であれば、アップロード用のフォルダに暗号化されていない違法ファイルが蔵置されていた場合に、そのコンピュータの使用者が積極的にその電子ファイルを送信するためにアップロード用のフォルダに蔵置したのか、キャッシュファイルとして知らない間に自動的に生成されてしまったものか区別が付かない方が都合がよいからです。

そう考えると、「キャッシュファイルを暗号化して中継コンピュータの使用者には内容がわからないようにする」というWinnyの仕様は、違法ファイルの送信に利用することに特に向けられたものであるとまでは言えないのではないかいうこともできそうです。むしろ、同一ネットワークに接続している他のコンピュータに「キャッシュファイル」を作ることで負荷を分散するというシステムを、真っ当な内容の電子ファイルの送受信にしか興味がない人々にも使用してもらおうと考えたら、「キャッシュファイルの内容には一切関知できない」しようにするということは、まず最初に考えることなのではないかと思うのです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:20 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (4)

08/14/2004

議論の仕方

 警察や検察の裁量次第で、普通に社会生活を営んでいる人々、普通に経済活動を行っている企業の責任者が逮捕され、起訴される社会というのは、警察や検察関係者以外には、住みやすい社会ではないですね(そういう社会では、企業は、警察OBを総務部長などとして高給で迎え入れたり、検察OBを高い顧問料を支払って顧問弁護士として迎え入れたりすることが、リスク回避のための合理的な行動としてとられやすくなりますから、警察や検察関係者にとっては住みやすい社会ということになるかもしれません。)。
 
 したがって、普通に行われる社会活動ないし経済活動が可罰性を帯びるような法解釈は基本的に間違っているし、そのような解釈しか取り得ないのだとしたら、その法律は改廃されるべきです(そのように解釈され得るというだけでも十分改廃に値します。)。
 
 ですから、「Aという行為は、aという要素がある故に、可罰性がある」という見解(甲)に対し、「同じくaという要素を有しているBという行為は、罰せられるべきでない。従って、見解(甲)は間違っている」という批判(乙)は正しい批判です。
 
 これに対しては、「Bという行為も罰せられるべきである」という再反論(丙)や「Bという行為は、aという要素と同時にbという要素もあるから、罰せられるべきではないのだ」という再反論(丁)、「Aという行為は、aという要素の他に、a’という要素があるから罰せられるべきであるが、Bという行為にはaという要素はあるものの、a’という要素はないから罰せられるべきではない」という再反論(戊)は正しい再反論です。
 
 しかし、「見解(甲)ではBという行為の可罰性は論点としていないのに、反論のためにBという行為の可罰性を持ち出すのは論点ずらしである」という再反論は正しくない再反論です。
 
 この程度の話は、法学部で普通に法学教育を受けていれば普通に身に付くはずのものですが、ネット上では、法学部出身者以外の方も法律論議を行うようになりましたから、そのような方が上記のような道理を身につけていないということはある種やむを得ないことです。ただ、匿名の鎧を身にまとってはいるものの法学教育を相当受けてきたことが見え隠れする人々が、上記のような正しくない再反論を行うのはいかがなものかという気はします。
 
 例えば、普通の市民が検閲されることなく情報を送信することを可能とするサービスの特徴としては、例外はありますが、
 
(1) 当該サービスが違法な情報の送信に利用されることがある程度のこと知りつつもそれを未然に防ぐための措置を講じていないし、違法利用を完全に防止することが技術的に可能となるまでサービスの提供を一旦中止しようなどという意思は全くない。
(2) そもそもサービスの提供者は、当該サービスがどのような内容の情報の送信に利用されているか把握していない。
(3) 当該サービスを利用した情報の送信の何パーセントを違法な情報の送信とするかをコントロールする能力は当該サービスの提供者にはなく、従って当該サービスを利用した情報送信の何パーセントが違法な情報の送信であったとしても、それは、当該サービス提供者の意図した結果ではない。
(4) サービス提供者は、送信者の戸籍上の氏名と住民票上の住所を確認することなく特定の情報の送信を媒介するなどのサービスを提供している。
(5) サービスの提供者は、特定の情報の送信者について把握している情報ですら、法令による根拠なしには、当該送信者の意に反して受信者や被害者を含む第三者にこれを教えたりしない。

などがあります。また、情報には、

(6)一旦公表してしまうと、公表者すらその流れを阻止することはできない

という特徴があります。

 「Winny」の開発者が著作権法違反の幇助の容疑で起訴されている件で、「Winny」の開発者は処罰されるべきとする論者が、処罰されるべきとする根拠に上記特徴の一つをあげた場合、同じ特徴を有する他の情報サービスをも処罰することの当否が議論の対象となることは当然です。でも、そういうことには耐えられない論者も少なからずおられるようですね。

Posted by 小倉秀夫 at 03:13 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (4)

08/12/2004

改正案の趣旨

では、昨日blogに掲載した著作権法改正案の趣旨を簡単に説明しましょう。

 「中立的行為の保護」の部分は、米国のベータマックス事件最高裁判決の趣旨を日本法にも取り込もうというものです。これにより、著作権法が、新たな技術革新の芽を摘んでしまうことを防ぐことができます。日本がIT立国、知財立国であるためには不可欠な規定です(家庭用ビデオ録画機などあのとき全面的に禁止されていた方がよかったなんて今時言う人はいないですよね。)。
 「グローバルスタンダード」という点からは当然のことなのですが、日本の裁判所は、間接侵害や寄与侵害等に関する規定が日本法にはないのに、それよりも広範囲に著作権侵害を認めてしまっています。そのため、新しい情報通信技術を開発し公衆に提供するIT企業としては、そのことによって莫大な損害賠償を課せられたり、刑事罰に処せられたりする危険性を払拭できない状態に現在あります。このようなことを続けていくと、日本だけIT革命の波から取り残されてしまうおそれがあります。したがって、このような規定をあえておく必要があるということになります。

 同一性保持権の部分については、従前から違法か否かが争いとなっていた「閉鎖領域内での改変」を適法とすることを明文で明らかにしようというものです。
 既存の作品に自分の感性にあった改変を加えたりしてみる行為は、それ自体その行為者を幸福にする行為ですし、それは、クリエーターとしての才能を開花させるために非常に有益な行為でもあります。そして、改変された作品が不特定多数人の目の届かぬ所にとどまっている限り、元の作品の著作者に何の実質的な損害をも与えません。そのような行為を法的に規制するのは、表現の自由ないし幸福追求権を侵害するものであるとともに、未来のクリエーターの才能を開花させることを障碍するという意味で知財立国の国是にも反します。
 なお、ベルヌ条約では、「自己の名誉又は声望を害するおそれのあるもの」だけが同一性保持権侵害の対象となりますので、改変された著作物が閉鎖領域内にとどまる場合は同一性保持権を侵害しないものとすることが許されています。
 
 貸与権については、書籍又は雑誌に関する部分以外は、グローバルスタンダードにあわせようというものです。すなわち、WIPO著作権条約で貸与権を付与することが義務づけられている範囲内で貸与権を認めれば良いではないかということです。
 貸しレコード店対策として貸与権が創設されたとき、規制の対象は、「借りて、ダビングして、返す」という利用方法でした。これは、ユーザーの手許に新しいコピーが作成されてしまうという点で、通常の物の貸与とは異なるといえ、そこに、複製権を有することによる利益を実質的に侵害するという要素を見出したわけです。コンピュータソフトやビデオテープなどについても同じような「借りて、ダビングして、返す」という利用方法は十分に考えられました。
 しかし、それ以外の場合は「借りて、ダビングして、返す」という利用方法は通常とられていないので、通常の物の貸与と異なる点を見出すことができず、通常の物の開発者等よりも著作権者を優遇しなければいけない理由というのは見出しにくいです。
 特に、「映画の著作物」の複製物として市場に流通しているゲームカートリッジやDVDソフト等についていえば、「借りて、ダビングして、返す」という利用方法を防ぐための様々な措置が講じられているわけですから、これらを貸し借りすること自体を禁止する権利を著作権者に付与する必要はないということになります。「借りて、ダビングして、返す」という利用方法が通常とられていないDVDのレンタルについて、「借りて、ダビングして、返す」という利用方法がとられることを前提に支払われてきたライセンス料の支払いを継続させるのは、著作権者に過剰な利得を与えるものとすらいえます。そこで、WIPO著作権条約7条2項2号にあわせて、「商業的貸与が当該著作物に関する排他的複製権を著しく侵害するような広範な複製をもたらさない場合」には貸与権侵害にあたらないとすべきだと考えた次第です。
 また、プログラムの著作物については、今日多くの工業製品に組み込まれているわけですが、だからといって、ある工業製品に組み込まれているプログラムの著作権者が、当該工業製品の貸与を禁止できるというのは如何にも不都合です。プログラムの著作物を組み込んでしまえば、ごく短期間しか使用しない製品についても、レンタルを禁止することができ、これを必要とする消費者に対して、ごく短期間で使い捨てすることを余儀なくさせることができるということでは、環境立国の名が廃ります。WIPO著作権条約だって、 コンピュータ・プログラムについては、当該コンピュータ・プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合は貸与禁止権は及ぼさなくともよいとしています。そこで、そのような場合を貸与権の対象から明確に除外しようと考えた次第です。
 書籍・雑誌については、権利者の大半をまとめる管理団体がない状態で、貸与禁止権が著作権者に付与されてしまっているという最悪の状態にあります。書籍・雑誌に掲載されている著作物というのは、漫画と推理小説だけではないので、漫画家と推理小説作家の大半をまとめきったとしても、そのようなものはさしたる意味はありません。
 したがって、書籍・雑誌に掲載された著作物の著作権者については、貸与禁止権を付与されるに値する実態がないわけですから、貸与禁止権を剥奪するとともに、書籍・雑誌に掲載された著作物の著作権者でも、利用者に大きな迷惑をかけることなく運用可能な、「報酬請求権制度」に切り替えるように提案するものです。
 
 最後に、「映画の著作物」の頒布権についてですが、中古ゲームソフト事件最高裁判決が示したとおりの、後段頒布についてのみ消尽しない頒布権が認められるということを明文化したものです。前段頒布については、他の著作物類型と同様に、公衆への譲渡に関しては譲渡権、公衆への貸与については貸与権として構成するように提案するものです。
 
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 02:15 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

08/11/2004

著作権法改正2005

仄聞するところによると、文化庁から各種関係団体に著作権法改正要望について照会が来ているそうなので、緊急に改正する必要があるものについて、とりあえず改正案を作成してみました。
文化庁から照会を受けている団体の皆様、自由にお使い下さい。


(同一性保持権)

第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。

一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの

二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変

三 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変

四 改変された著作物を公衆に提示又は提供しない改変(原作品の改変を除く。)

 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

(頒布権)

第二十六条 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。

2 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。

3 前二項の規定は、当該複製物により当該著作物が公に上映されることを目的とせずになされる頒布には適用しない。

(譲渡権)

第二十六条の二 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りではない。

2 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。

一 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物

二 第六十七条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項
の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物

三 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物

四 この法律の施行地外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

(貸与権)

第二十六条の三 著作者は、その著作物(次の各号のいずれかに該当するものに限る。映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。ただし、第二十六条の規定の適用がある場合は、この限りではない。

一 プログラムの著作物(ただし、当該プログラム自体が貸与の本質的な対象でない場合を除く。)

二 映画の著作物

三 レコードに固定された著作物

2 前項第二号の規定は、複製行為を防止または抑止する手段が講じられる等当該複製物の貸与が当該著作物について複製権を著しく侵害するような広範な複製をもたらさない場合には適用しない。

3 書籍又は雑誌の公衆への貸与を営業として行う者(以下「貸本業者」という。)は、書籍又は雑誌の貸与により著作物(ただし、本条第一項の規定の適用がある場合を除く。)を公衆に提供した場合には、当該著作物(著作権の存続期間内のものに限る。)の著作者に相当な額の報酬を支払わなければならない。

4 第三項の報酬を受ける権利は、国内において書籍又は雑誌へその著作物を複製することを許諾することにより反復して対価を得ている者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文化庁長官が指定するものがあるときは、当該団体によつてのみ行使することができる。

5 文化庁長官は、次に掲げる要件を備える団体でなければ、前項の指定をしてはならない。

一 営利を目的としないこと。

二 その構成員が任意に加入し、又は脱退することができること。

三 その構成員の議決権及び選挙権が平等であること。

四 第三項の報酬を受ける権利を有する者(以下この条において「権利者」という。)のためにその権利を行使する業務をみずから的確に遂行するに足りる能力を有すること。

6 第四項の団体は、権利者から申込みがあつたときは、その者のためにその権利を行使することを拒んではならない。

7 第四項の団体は、前項の申込みがあつたときは、権利者のために自己の名をもつてその権利に関する裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する。

8 文化庁長官は、第四項の団体に対し、政令で定めるところにより、第三項の報酬に係る業務に関して報告をさせ、若しくは帳簿、書類その他の資料の提出を求め、又はその業務の執行方法の改善のため必要な勧告をすることができる。

9 第四項の団体が同項の規定により権利者のために請求することができる報酬の額は、毎年、当該団体と貸本業者又はその団体との間において協議して定めるものとする。

10 前項の協議が成立しないときは、その当事者は、政令で定めるところにより、同項の報酬の額について文化庁長官の裁定を求めることができる。

11 第七十条第三項、第六項及び第七項並びに第七十一条から第七十四条までの規定は、前項の裁定及び報酬について準用する。

12 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、第十項の協議による定め及びこれに基づいてする行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合及び関連事業者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

13 第四項から前項までに定めるもののほか、第一項の報酬の支払及び第五項の団体に関し必要な事項は、政令で定める。


(中立的行為の保護)

第百十二条 著作権、著作者人格権又は著作隣接権(以下この条において「著作権等」という。)を侵害する行為以外の行為に用いられ又は用いられる可能性がある物(プログラムを含む。)又は役務を開発し、生産し、譲渡し、貸与し、又は提供する行為は、当該物又は役務が著作権等を侵害する行為に用いられ又は用いられる可能性があることを知りたる場合と雖も、著作権等を侵害し若しくは著作権等の侵害を教唆又は幇助しないものとみなす。

2 前項の規定は、特定の著作権等侵害行為をことさらに教唆又は幇助する場合には適用しない。


(差止請求権)

第百十二条の二 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。


Posted by 小倉秀夫 at 04:59 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (6)

Inducing Innovation Act

Induce Act 法案に対抗して、こういう法案を提示してくるあたりは、アメリカ社会にはまだまともな勢力が生き残っている証拠といえるのでしょうか?

http://www.lessig.org/blog/archives/Innovation%20Act.PDF

このInducing Innovation Act の日本版を作ってみるのも面白いかもしれません。

Posted by 小倉秀夫 at 08:41 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/10/2004

WinnyとInduce Act

壇先生のblogでは、Winnyの位置づけについての議論が行われているようです。

さて、著作権侵害にも用いられ得る機器やソフトウェアを提供することを法的に禁止することの是非については、アメリカでは、「Induce Act」法案への賛否という形で議論が行われています。ここで行われている議論というのは、Winny等のP2Pソフトの存在を許すべきか否かという「価値判断」に関する議論を行う上で大いに参考になることでしょう。

英語が苦手ではない方々は、夏休みを利用して、是非ともぐぐって見て下さい。

PS
私の環境だと、壇先生のblogに、Netscape以外のブラウザでアクセスしようとするとアクセス制限に引っかかってしまうのですが、これは私の環境が特殊だからなのでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 06:38 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (1)

08/07/2004

住基ネットカードを差し込まないと投函できない郵便ポスト

FileRogueにせよWinnyにせよ、違法情報を排除しないという点と発信者の匿名性を保障しているという点が問題とされます。

ただ、これって、P2Pファイル共有サービスの特徴ではないですよね。

日本郵政公社は、ポストに投函された郵便物を、差出人欄の記載がなくても届けてくれますし、著作権等を侵害する内容が含まれているか否かを問いません。

東西NTTは、公衆電話を設置して、利用者の住所氏名を確認することなく、また、著作権等を侵害する内容が含まれているか否かを問わず、大衆による情報通信をサポートします。

では、日本郵政公社や東西NTTは、著作権等の侵害する行為を助長する目的で、利用者の匿名性を保障しつつ、違法コンテンツを排除しない通信サービスを提供しているのでしょうか。

通信事業者が、発信者の個人識別情報をどの程度収集・保管し、どのような場合に誰にこれを開示すべきかというのは、国民のコンセンサスを得た上で、立法で解決すべき問題です。そして、立法により個人識別情報の収集・保管義務が定められていない事業者が、発信者の個人識別情報を収集・保管してないということは当然なのですから、そのことをもって事業者の「邪悪な意思」を推認するのは邪推としか言えないと思います。

Posted by 小倉秀夫 at 12:29 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

08/06/2004

P2Pファイル共有の効用

FilerogueでもWinMXでもWinnyでもKaZaAでもGnutellaでもよいのですが、

「著作権法秩序と対立しない」用法として、皆様はどのような利用方法を想定されているのでしょうか。

私は単純に、旅行先においてデジタルカメラで撮った画像をウェブサイトで公開するように、旅行
先においてデジタルビデオで撮った動画を公開するのに使えればいいのになあとか思うくらいなの
ですが。

(ウェブの方でファイル名やらハッシュ値やらを公開しておいて「見てね」といえばいいだけの話だし。)。

Posted by 小倉秀夫 at 06:48 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (4)

08/05/2004

社団法人日本映像ソフト協会への回答

前回のblog記事に対し、社団法人日本映像ソフト協会の管理部管理課課長 酒井信義氏から質問状が電子メールで寄せられましたので、下記のとおり回答いたしました。


社団法人日本映像ソフト協会
管理部管理課課長 酒井信義様

 私のblogを御覧いただきありがとうございます。電子メールで幾つかご指摘、ご質問をいただきましたので、簡単にではありますが、下記のとおりご回答いたします。

 CSSはコピーコントロールと見るべきではないかとの点ですが、現行法を前提とする限り、意味がない議論です。
 現行著作権法は、保護の対象である「技術的保護手段」(俗に言う「コピーコントロール」)を、「『電磁的方法』により、『著作権等』を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。)をする手段であつて、『著作物等』の利用に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるもの」と定義しています(2条1項20号)。他方、現行不正競争防止法は、保護の対象である「技術的制限手段」(俗に言う「アクセスコントロール」)を、「『電磁的方法』により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、『視聴等機器』が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるもの」と定義しています(2条5項)。すなわち、「視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式」は、不正競争防止法上の保護の対象である「技術的制限手段」となることはあっても、著作権法上の保護の対象である「技術的保護手段」となることはあり得ません。
 ご存じのとおり、CSS(Content Scrambling System)は、視聴等に用いられる機器が特定の反応をする信号を影像等とともに記録媒体に記録または送信するものではなく、視聴等に用いられる機器が特定の変換を必要とするよう影像等を変換して記録媒体に記録するものです。したがって、CSSは、技術的制限手段となることはあっても、技術的保護手段となることはありません。
 したがって、現行法の解釈としては、CSSを回避して行う私的複製について、著作権法30条1項2号を適用してこれを違法とする見解は明らかに誤っているといえます。
 
 リッピングソフト等の問題についていえば、それが技術的保護手段(繰り返しますが、CSSは含みません。)の回避(技術的保護手段に用いられている信号を除去又は改変することをいいます。)を行うことを専らその機能とするものであるならば、これを収録した雑誌等を販売することは刑事罰の対象となります。また、営業上用いられている技術的制限手段により制限されている影像の視聴を、当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有するものであるならば、プログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体を譲渡することは刑事罰の対象となります。どちらも「専ら」要件がついているので、当該ソフトの機能を見ないと何ともいえないということになります(ただし、DVDソフトの製造者は、ユーザーによるDVDソフトの視聴を制限するためにCSSを用いているわけではないのではないかとも思うのですが。)。
 
 最後に、私的録画制度の制度設計についての私の意見をお聞きになりたいとのことですので、簡単に述べます。
 
 近時、ユーザーによる利用を法的にまたは技術的に制約したいという要求がコンテンツホルダーの間に熱病のように広がっています。しかし、ユーザーによる利用を制約すること自体はコンテンツホルダーに必ずしも経済的利益をもたらすものではありません。このことは、CCCDを強引に導入したり、欧米と同条件での音楽配信サービスを排除したが一向に音楽CDの売上げ増大を実現できていない音楽産業の体たらくを見れば明らかです。ユーザーは、自由な利用を妨害されたときに、不自由な利用に甘んずるという選択肢の他に、利用しないという選択が可能である以上、ユーザーの許容範囲を超えた制約をコンテンツホルダーがユーザーに課した場合、ユーザーは、利用しないという選択を往々にしてとるからです。
 
 現在のところ、商用コンテンツの私的録画の大部分は、「テレビで放映された作品を、家庭用ビデオデッキで録画する」という態様で行われています。そして、これについては、私的録音録が補償金制度による補償の対象となっています。他方、「レンタルショップで借り受けたビデオカセットまたはDVDを私的使用目的でダビングする」という態様はあまり多くありません(だから、そもそも補償金をうける基礎を欠きます。)。「有体物としてのDVDが摩耗するまで当該コンテンツを繰り返し視聴したい」ユーザーは商用DVDソフトを購入し、1回または少数回視聴すれば足りるユーザーは、レンタルしたDVDを視聴してすぐに返却したり、米国で既に行われているように、数日程度コンテンツが閲覧できなくなるDVDを低価格で購入して視聴すれば足ります。だから、技術的保護手段の有無以前に、DVDソフトをダビングするメリットがあまりないので、ダビングをしないのです。そして、ユーザーのニーズに合わせた複数の商品体系が用意されていれば、ユーザーの財布の紐は緩みます。実際、商用DVDソフトの売上げは近時年々伸びています。
 
 商用DVDについていえば、現在は、ユーザー側の利益とコンテンツホルダーの利益とが比較的バランスがとれています。いま、このバランスを崩すことを提唱するメリットは、貴協会傘下のコンテンツホルダーにはないのではないかと思います。ユーザーの犯罪者視してユーザーの怒りを買い結果的にユーザーから見捨てられ売上げを減少させる愚は犯さないことが肝要だと思っております。
 
 もちろん、パソコンのHDDの記憶容量の増大に伴って、複数のDVDソフトをHDDにリッピングして視聴するという利用は今後も増えていくことでしょう(iTunes,iPodの隆盛を見れば明らかですが、メディアをいちいち入れ替えるという作業をユーザーは嫌っているのです。)。ビジネス系DVDソフトでは既にそのような利用は一般的であり、コンテンツホルダーも明示的にまたは黙示的に認めています。禁止したって、DVDソフトの売上げが増大するわけではありませんから。エンターテイメント系DVDソフトのコンテンツホルダーとしては、ユーザーの利便性を犠牲にしなければならない程、このような利用を容認することによってDVDソフトの売上げが落ちるのか(そのような利用を禁止するとDVDソフトの売上げが増大するのか)を冷静に分析した上で、ロビー活動を行うかを決めるのが肝要だと思います。
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 08:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

08/02/2004

コンピュータによる私的複製

「社団法人日本映像ソフト協会」なる公益法人の「著作権部会幹事会」なるところが、「DVDコピーソフトに関する法律的検討について」なる意見書を平成16年7月28日付で公表したようです。この「著作権部会幹事会」なるものに弁護士を初めとする法律専門家がいるかどうかは分からないのですが、いたとしたら非常に恥ずかしいものといわざるを得ないでしょう。

例えば、

著作権法30 条は、ベルヌ条約9条2項、TRIPS 協定13 条及びWIPO 著作権条約10 条2項に適合的に解釈されるべきところ、ビデオソフトを著作権者の意思に反してコピーするツールを提供することは、著作権者の利益を不当に害する結果を引き起こすから、複製権の侵害であると解すべきである。

等という記載があります。しかし、この「合条約的限定解釈」論は、スターデジオ事件地裁判決(東京地判平成12年5月16日判タ1057号221頁)ではっきりと否定されているわけです。具体的には、

 まず、ベルヌ条約九条(2)の規定と著作権法三〇条一項との関係をみると、同法三〇条一項は、同条約九条(2)本文が特別の場合に著作者等の複製権を制限することを同盟国の立法に留保していることを受け、右複製権の制限が認められる一態様を規定したものということができるから、同条約九条(2)との関係においては、同法三〇条一項が同条約九条(2)ただし書の条件を満たすものであることが必要である。しかしながら、具体的にどのような態様が右条件を満たすものといえるかについては、同条約がこれを明示するものではないから、結局のところ、各同盟国の立法に委ねられた問題であるといわざるを得ない。そして、右のような同条約九条(2)を具体化するものとして規定されている同法三〇条一項は、それが同条約九条(2)ただし書の条件に沿うものであるとの前提の下で、前記(一)のような要件の下における複製を複製権に対する制限として認めることを規定しているというべきである。したがって、著作権法によって認められる私的使用のための複製であるか否かを論じるに当たっては、同法三〇条一項の規定に当たるか否かを問題とすれば足りるものであって、同条項の背景となるベルヌ条約の規定を持ち出して、その規定に当たるか否かを直接問題とするまでもないというべきである。したがって、原告らの前記主張は、その立論の前提において誤りがあるといわざるを得ない

と判示されているのです。それなのに、スターデジオ事件地裁判決に触れてすらいない。はっきり言って無茶苦茶です。そもそもベルヌ条約もWIPO著作権条約も自動執行条約ではないわけですし、コンテンツホルダーの利益を擁護するためであれば罪刑法定主義や(準)物権法定主義などの近代市民法原理の中核的概念をないがしろにしても構わないということは常識的には考えられないわけです。

また、この意見書には、

私的複製が無制限に認められるかは、著作権審議会第10 小委員会においてすでに決着済みの問題である。すなわち、何らの代償措置のない私的複製はベルヌ条約9条2項但書に反するが、制度の円滑な導入のためにデジタル複製についてのみ代償措置を設けるということである。そして、著作権法施行令1条2項は「主として録画の用に供するもの」を代償措置の対象機器とし、コンピュータを対象から除外している。  したがって、コンピュータによるデジタル方式の私的複製は適法とはいえない。

なる記載があります。しかし、著作権審議会第10小委員会には、そのような問題を決着させる権限はそもそもありません。更にいうならば、平成3年12月付けで公表された「著作権審議会第10小委員会(私的録音・録画関係)報告書」をどう読んだら、「何らの代償措置のない私的複製はベルヌ条約9条2項但書に反するが、制度の円滑な導入のためにデジタル複製についてのみ代償措置を設けるということである」ということが著作権審議会第10 小委員会においてすでに決着済みとなったと結論付けられるのか不思議でなりません。同報告書は、



その後の実態の推移によって、現在では、私的録音・録画は著作物等の有力な利用形態として、広範に、かつ、大量に行われており、さらに、今後のデジタル技術の発達普及によって質的にも市販のCDやビデオと同等の高品質の複製物が作成されうる状況となりつつある。これらの実態を踏まえれば、私的録音・録画は、総体として、その量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時予定していたような実態を超えて著作者等の利益を害している状態に至っているということができ、さらに今後のデジタル化の進展によっては、著作物等の「通常の利用」にも影響を与えうるような状況も予想されうるところである

としているのであって、少なくとも平成3年の時点では未だ「著作物等の『通常の利用』にも影響を与えうるような状況」に至っているとは考えられていません。その上で、同報告書は、


私的録音・録画は、従来どおり権利者の許諾を得ることなく、自由(すなわち現行第30条の規定は維持)としつつも、私的録音・録画を自由とする代償、つまり一種の補償措置として報酬請求権制度を導入する

と結論付けています。そして、

私的録音・録画行為は、権利制限の範囲から除外し、複製権、すなわち、許諾権が及びうる状態に戻すこととし(すなわち現行第30条の規定の適用範囲から私的録音・録画を除外)、個別の権利処理が必要な状態とするものの、従来どおり私的録音・録画は自由であるという状態を確保するため、一種の法定許諾制度(権利者の個別の許諾を得なくとも、法律上著作物等の利用ができることとし、一定の対価の支払を義務付ける制度)として報酬請求権制度を位置付けるという考え方

は大勢を占めるに至らなかったとはっきり報告されています。すなわち、代償措置の伴わない私的複製を─それがデジタル技術を用いたものであろうとなかろうと───適法な複製としないという結論を第10小委員会は下していないということがいえます。したがって、コンピュータによるデジタル方式の複製は著作権法30条1項により正当化されることはないという見解は明らかに間違っているといえます。

公益社団法人がこういう間違った見解をさも自明の理のように述べるというのはいかがなものなのでしょうか。


Posted by 小倉秀夫 at 01:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (3)

07/26/2004

日本差別禁止法

 iPod miniが日本でも発売されましたね。
 私は、New York出張の際に、New Jerseyのアウトレットモールに入っていたアップルストアでiPod miniをみて、今ひとつ購入意欲がわきませんでした。
 
 それはともかく、iPod miniの日本国内販売開始を機に、携帯型HDD音楽プレイヤーや音楽配信サービスに焦点を当てた報道が、ニュース番組やワイドショー等でも行われたようです。その際には、AppleのiTunes Music Storeは日本ではサービスを開始していないこと、日本ではMora等の独自の音楽配信サービスが存在していること、日本では音楽配信サービスはいまだ定着しているとはいえないこと等が報じられました。が、一歩踏み込んで、AppleのiTunes Music Storeは日本ではサービスを開始させてもらえず、日本ではMora等の独自の音楽配信サービスしか存在していないために、日本では音楽配信サービスはいまだ定着していないときちんと報じているところは、私が知る範囲内ではなかったような気がします。また、Sony Music等が欧米で提供している「correct」と日本で提供している「Mora」とのサービス内容・価格の違いなどを説明し、日本在住者がどれだけ軽んじられているのかを報じているところは全然見あたらないですね。この種の話は、広告主の意向を気にしなくとも済むコンピュータ雑誌やインターネット上でしか見出すことができないのですね。
 
 送信可能化についての強制許諾制度を組み立てようとすると、先進国では日本と米国しか批准しておらず、米国はこれに沿った立法を日米構造協議の中で何度日本側から求められようとも拒否し続けているWIPO隣接権条約がどうも足かせになってしまうのですが、日本在住者ばかりが世界中の著作隣接権者から差別的待遇を受けている実情を考えると、日本在住者を不当に差別する権利行使は許さないという法改正は可能なのではないかなあということを漠然と考えています。それは著作権法の改正で行くべきなのか、独禁法の改正(ないしその特別法の制定)で行くべきなのかということすら具体的に検討していないですが、著作隣接権者が、日本と同程度またそれ以上の経済力を有する国において利用許諾を行ったサービスと同内容のサービスを日本国内で行う者に対して、当該国におけるサービスに対する同程度の条件にてこれを許諾しなければならないというような、いわば「日本差別禁止法」を制定することってできるような気がするんですよね。
 
 これに反対する人たちは、「著作隣接権者には、日本人リスナーを差別的に取り扱う権利が与えられてしかるべきだ」と考えているということになるわけですし、そういう方々は、自分たちのことを二度と「愛国者」と名乗る権利はないということができそうですし。
 
(王政復古を望む歌を式典等で歌うように子供たちに押しつけるよりも、こういうところで「国は我々国民を大切に扱ってくれているのだ」と実感させる方が、よくよく「国を愛する心」が芽生えてくるのではないかと思うんですけどね>文部科学省の方) 
 

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07/21/2004

科学ジャーナリスト

理系大学を出て、新聞記者をやっただけで法律の勉強をしていない自称「科学ジャーナリスト」(まあ、こういう肩書きは普通は「自称」でしょうが。)が法律の話に口をつっこむと、往々にして痛々しいものになるようです。いやまあ、法律論も科学論もどちらも中途半端な意見を自信を持って述べている痛々しさ。見事です。

馬場錬成氏は、第42回「『Winny』開発者逮捕が問うネット社会のルール作り」の中で、

 大学院助手なら立派な研究者だ。ネット上に違法コピーができるソフトを公開するのではなく、ソフト開発者からみた法制度の抜け穴や著作権法の不十分さ、企業の対応などに警告を発するメッセージや論文を学会や各種のメディアを通じて堂々と主張するのが筋である。違法コピーの手助けなどという破廉恥な容疑を持たれること自体、研究者として失格である。

といっているようです。まあ、何と的はずれな!

金子さんは優秀なプログラマーであり、その腕を買われて東大助手の地位を得ていたわけわけで、もともと論文を発表して云々ということ自体的が外れています。しかも、彼がその腕を存分にふるう上で障害となるのは、法制度に抜け穴があることや、著作権法が不十分であることではないし、企業の対応が不十分なことでもありません。著作権法による表現の自由等の制約が厳しすぎて、効率的な情報通信技術を開発すると、それは違法な情報の流通にも利用されうるというだけの理由で、「違法コピーの手助けをした」(あるいは、自ら主体的に違法コピーをした」等として、不可解な容疑をかけられてしまうことこそが問題なのです。で、そういうことが問題であるということは、我々法律の専門家が各種のメディアを通じて堂々と主張してきたわけです。でも、そういう声に耳を傾けることなく、ひたすら規制の強化を主張し続けたのは一体どこの誰なんでしょう!!

しかも、馬場氏は続けて、

 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)などによると、ファイル共有ソフトの利用者は、推定で200万人いるとも言われている。ウィニーの登場によって、レコード会社の総生産額は毎年減り続けていると推測されており、2003年は1998年の約3分の2の4,000億円にまで落ち込んでいる。

と述べていますが、馬場氏はウィニーがいつ登場したと認識しているのでしょう。
 日本レコード協会ですら、レコード会社の総生産額が2003年は1998年の約3分の2の4,000億円にまで落ち込んだのが「ウィニーの登場によ」るだなんて推測していないでしょう。まあ、「ファイル共有ソフトの利用者は、推定で200万人いる」というACCSの推計自体統計学的にどうかと思うものだったりするわけですが(「科学ジャーナリスト」はこういう数字の検証こそすべきだと思うのですけどね。)、仮にその数字が正しいとしても、200万人の人が、1998年にはそれなりにレコードを買っていたがファイル共有ソフトを利用するようになって全く買わなくなった、その結果、2003年のレコード売上げは1998年の約3分の2の4,000億円にまで落ち込んだとすると、1998年と比べて2003年のレコード売上げは2000億円減少したことになります。これを200万人で割ると、「ファイル共有ソフトを利用することになった結果レコードを買わなくなった人が1998年にレコードの購入に充てていた金額」を導くことができるわけですね。
 
 2000億円÷200万=10万円!!
 
ヘビーなファンたちばかりが逃げ出したってことなんですかねえ。 

Posted by 小倉秀夫 at 02:16 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (6)

07/20/2004

CCCDをコピーすること等

月刊「COMPUTERWORLD」の2004年9月号中の「CCCDをコピーすることは違法なのか!?」という記事の中に、私のコメントが掲載されています。

また、私が編集代表の1人として名を連ねている「不正競争防止法コンメンタール」が、発行・レクシスネクシス・ジャパン、発売・雄松堂出版という形で発売されました。

興味がおありの方はお読み頂ければ幸いです。

Posted by 小倉秀夫 at 11:41 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

07/18/2004

セシール

 
 フランスでも、フランスの法律にあわせたオープンソフトウェアライセンス「CeCILL」が公表されましたね。著作権法による表現の自由の制約が広範囲に過ぎる社会では、「みんなで知恵を出し合ってより優れた作品を作り上げる」という方法で文化の発展を目指すのは楽ではありません。GPLによる「ソフトウェアの解放」では不十分なのです。フランス以上に著作権法による表現の自由の制約が広範囲にわたる我が国では、GPLに代わる仕組みの必要性はより大きいのです。
 
 現行法の下では、GPLに代わる新たなオープンソースソフトウェアライセンスを作成し、これを普及させることによってしか、法的にはこの問題を解決する手段はありません。とはいえ、特にLinuxベースでは、既にGPLのもとで公開されているソフトウェアが普及していますから、その場合には日本独自のライセンスを用いるといっても容易ではないですね。
 
 オープンソースソフトウェア運動やクリエイティブコモンズ等のような「情報の共有化による文化の発展」を目指す運動を国が阻害しないためには、結局のところ、著作権法による表現の自由の制約の範囲を他の先進国並みに制限するところからはじめないといけないわけです。次の選挙までは大分ありますから、それまでに、クリエイターの前に立ちはだかる規定の改廃を求めることは、金の力で権利を収集しただけの資本家たちに配慮するあまり、日本だけが文化の進展から取り残されないようにするためにも、非常に重要なことであるといえます。

Posted by 小倉秀夫 at 05:43 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/11/2004

共産党からの電話

今日の選挙の結果は、明日の朝にはわかるのでしょうね。まあ、天王山は3年後の衆参同日選(まあ、憲法改正日程が早まると、発議の議決をとる前に解散するかもしれませんが。)。

それはともかく、今日のお昼ころ、共産党公認の今村順一郎氏の選挙事務所から電話がかかってきたので、ゲームソフトの中古販売規制に反対しない人には入れる気はない旨伝えたところ、そういうことは自分は知らないといって、消費税云々という話をし始めました。私は、その点を今回の争点にする気はなかったので、レコード輸入権の時の共産党の行動について苦言を述べ、なぜ共産党は資本家の味方をするのかと異議を申し立てたところ、なぜか、言いがかりだ云々と逆ギレされてしまいました。

弁護士という職業柄、共産党系の友人・知人も少なくはないわけですが、正直、日本共産党は歴史的使命を終えたのではないかと思いました。市民のささやかな願いにすら耳を傾けることができない左翼政党なんて何の意味があるのか、著しく疑問だったりします。

Posted by 小倉秀夫 at 10:41 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (4)

07/10/2004

BSAへの質問

おかしな統計数値を放置しておくと、役人に悪用され、おかしな法律が制定される原因になるということを、前回の著作権法改正で改めて思い知らされました。やはり、おかしい数値は気が付いたときに根拠を尋ね、間違っていれば訂正を求めていくべきですね。

ということで、ビジネスソフトウェア アライアンス(BSA)が公表している「第1回 世界ソフトウェア違法コピー調査」について下記のような質問状を出してみました。

前略 貴団体が公表されている「第1回 世界ソフトウェア違法コピー調査」について、貴団体にご質問させて頂きたいことがあり、ご連絡させて頂くことといたしました。貴団体によれば、日本における2003年の違法コピー率は29%であり、同損害額は16.3億米ドル(約1,800億円)と世界ワースト5位という結果になったと発表されております。しかし、貴団体のウェブサイトにアップロードされております報告書を拝見させて頂きましたが、上記数値の根拠が明らかになっておりません。仮に、国際的に権威があるとされている貴団体が、十分な根拠もなしに、日本の市民・企業が、違法コピーによりソフトウェア企業等に約1,800億円の損害を与えているかのごとく世界中に宣伝しているとすれば、それは由々しき事態であります。つきましては、ご多忙のこととは存じますが、下記質問にお答え頂ければ幸いです。なお、日本の市民・企業が故なき非難を受けているのではないかと危惧している市民は私以外にも少なからず存在していると認識しておりますので、貴団体からのご回答は原則としてWeb上で公開させて頂く予定ですので、予めご了承下さい。

1 「PCにインストールされたソフトウェア」の本数はどのようにして調査されているのでしょうか。

 貴団体の報告書では、「インストールされたソフトウェアは、IDCの追跡活動の一環として収集されます」とありますが、IDCがどのような調査手法により、各PCにいつ、どのソフトウェアがインストールされたのかを調査されているのかについての説明が一切ありません。2003年1~12月にPCにインストールされたソフトウェアの本数というのは「違法コピー率」や「損害額」を算出する上で最も重要な数値ですから、この数値が統計的な根拠を欠くものであるとするならば、貴団体の報告は意味をなさなくなります。それなのに、この基本的数値に関する調査方法についての説明がないというのは不思議でなりません。
 また、IDCにおいて、何らかの手法によって、市民や企業が使用しているPCのハードディスクの中を、その使用者に無断で盗み見ているのだとすれば、それはそれで由々しき事態です。

2 「違法コピー」をどのように定義されているのでしょうか。

 「違法コピー率」や「違法コピーによる損害額」を算出するに当たっては、まず、ここでいう「違法コピー」とは何を指すのかを定義しなければなりません。しかし、貴団体の報告書では、この点に関する定義がなされておりません。
 あるいは、「違法コピーソフトウェア」について「購入された、つまり正規ライセンスのパッケージソフトウェア数と、合計ソフトウェア基数との差です」との説明がありますので、これが貴団体がいうところの「違法コピーソフトウェア」の定義なのかもしれません。そうだとすると、貴団体がいうところの「違法コピーソフトウェア」というのは、法的性質又は実態から定義される概念ではなく、単なる計算上の概念ということになりますが、そのような理解でよろしいのでしょうか。
 しかしながら、仮にそうだとすると、それは非常にアンフェアな表現だといわざるを得ません。
 我が国の著作権法は、ソフトウェアのパッケージの購入者が、例えば職場のPCと自宅のPC等、複数のPCにソフトウェアをインストールすることは法的に認められております(47条の2)。また、少なくない数のソフトウェア企業は、例えば複数のPCで同時に起動させないことなどを条件として、1つのパッケージから複数のPCにインストールしてもそれは違法ではない旨を、「使用許諾契約書」等と題する書面等で公言しております。「インストールされたソフトウェア数」と「正規ライセンスのパッケージソフトウェア数」との差を「違法コピーソフトウェア」の数としてしまうと、このように適法にインストールされたソフトウェアについても「違法コピーソフトウェア」に参入されてしまうことになります。その結果、我が国は、実態よりも多くの違法コピーを行っているかのように世界中に言いふらされ、必要以上に貶められることになってしまいます。
 
 以上、大変不躾な質問ではございますが、ご回答の程よろしくお願いいたします。
草々

Posted by 小倉秀夫 at 06:50 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

07/08/2004

Parasol Recordsからの回答(2)

Parasol Recordsから、また回答が来ました。

おおざっぱに言うと、

 Parasol Recordsは、Velvet Crushに対し、公式発売日である8月10日より前に"Stereo Blues"を、"Parasol Mail Order"で発売させてくれないと頼んだところ、Velvet CrushはSonyに打診してくれたんだ。そうしたら、Sonyは、それは別に構わないけど、あくまで日本へは8月10日まで売らないことが条件だといってきたんだ。だから、Velvet Crushとの約束を守るため、8月10日までは"Stereo Blues"を日本に輸出できないんだ。
 
 ということでした。8月11日以降どうなるか注目ですね。

 
 最初に回答をくれた人とは別の人が回答をくれたのですが、どういうセクションに回ったのか興味があります。英文用のフッタには、私が弁護士である旨の記載はないので、過剰に身構えられることはないと思うのですが。

Posted by 小倉秀夫 at 02:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (6)

07/04/2004

付帯決議を守るということ

 津田さんのところや、笹山さんのところでも、Velvet Crush問題についての言及がなされていますね。
ただ、温度差は若干違うようです。

 以前から「NOT EXPORTABLE TO JAPAN」という表示がなされることはあった、だから今回のレコード輸入権の問題とは関係がないというような感じが特に笹山さんのところにはあるような気がするのですが、それまで「NOT EXPORTABLE TO JAPAN」という表示をしていなかったところが、法案可決成立後「NOT EXPORTABLE TO JAPAN」という表示を始めたということは、その間に、SMEとParasol Recordsとの間に、何らかの動きがあったのだろうと考えるのは自然な話だと思ったりなんかします(職業病かなあ。)。

 それはともかく、今回の著作権法改正により、同改正法の施行後は、「NOT EXPORTABLE TO JAPAN」という表示がなされている音楽CDについては、差止めないし損害賠償を命ぜられあるいは刑事罰を科せられるリスクを背負い込むことになります。それ故、衆議院での付帯決議やRIAJの声明をRIAJ傘下のレコード会社が遵守する気があるのであれば、洋楽CDに関しては、日本国内盤に関するライセンス契約を締結する際に、米国盤等の日本国内への流入を禁止するような条項を盛り込んだり、日本国内への輸出を禁止する意思を表示させるような条項を盛り込んだりすることを、RIAJ傘下のレコード会社は回避すべきということになります。もっと簡単に言ってしまえば、RIAJ傘下のレコード会社は、ライセンサーたる国外のレコード会社がこのような表示をさせるような契約を結んではいけないということなのです。

 我々にはSMEとParasol Recordsとの契約内容はわからないのですが、仮に、日本国内盤につきライセンス契約を結ぶにあたって、米国盤の日本国内へ輸出してはいけない旨の条項が盛り込まれていたのであれば、それは衆議院での付帯決議やRIAJの声明には反しているということになります(もともと、何の法的効力もないので、反していたからといって法的にはどうということもないのですが。)。

Posted by 小倉秀夫 at 11:22 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (4)

07/03/2004

PARASOLへの返答

PARASOL Record社に対して、下記のとおり返答いたしました。

Thank you for your response.

But I cannot believe it.

The Record Industry Association Japan(RIAJ) have declared that any member of them will not stop import of CDs from US. The President of RIAJ have promised that in the Congress of Japan.
Of course, Sony Music Entertainment Inc. are a member of the RIAJ.

Anyway, Many Japanese Music Fan (including me) WILL NEVER BUY the Sony Japan version, for the price is too expensive (ex."Stereo Blues" is to be sold at about US$ 23) and playability is not guaranteed in many cases.

So, I am very sad that Velvet Crush go so far for Japanese Fan because of prohibition of the import.

Hideo Ogura
Tokyo, Japan

Posted by 小倉秀夫 at 10:04 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (6)

Parasol Recordからの回答

Parasol Recordから、早速回答が来ました。

このレスポンスの早さ、いいですね。

で、内容としては、

 このレコードはお前の国ではSony Recordから発売されることになっており、我々がこのレコードを日本国内へ販売することは契約上禁止されているから、日本へは輸出できないんだ

ということが書いてありました。


 確か、日本のソニーレコードって、日本レコード協会傘下ではなかったでしたっけ!?

 

Posted by 小倉秀夫 at 12:37 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (11)

07/02/2004

Velvet Crush

レコード輸入権が創設されるや、舌の根も乾かないうちに、国際市場分割を図るレコード会社が現れましたので、つたない英語力を駆使して、下記のとおり、抗議のメールを送りました。

Dir sir

I'm very sad at the news that WE JAPANESE CANNOT BUY ANY CDs titled "Stereo Blues" by Velvet Crush.
I cannot imagine that members of Velvet Crush are racist who hate JAP and wish to discriminate Japanese fan.
So I want to know the reason why "Stereo Blues" is "NOT EXPORTABLE TO JAPAN".

Hideo Ogura
Tokyo,Japan.


また、洋楽CDについて輸入権が行使されることはないといっていた政党には、下記のような抗議のメールを送っておきました。

 貴党がレコード輸入権創設に反対しなかったおかげで、実際に洋楽CDの並行輸入が禁止される事態になりそうです。

 http://www.parasol.com/catalog/newcart.asp?zoomtitle=68601

 によれば、Velvet Crushの「Stereo Blues」というCDについては、「NOT EXPORTABLE TO JAPAN」という表示がなされています。
 今回の輸入権は、日本国内頒布禁止の意思を日本語で表示することは要件とされていなかったので、これでも「情を知って」の要件を満たすことになるわけですね。

 しかも、このCDは、米国盤が12ドルなのに対し、ソニーミュージックエンターテインメント社から発売される予定の日本盤は2520円の定価が設定されています。
 http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/TheVelvetCrash/

 これだけ価格差があると、著作権者等の利益を害するおそれありと認定される危険が高いですね。

 こういう事態を目の当たりにしても、○○党は、レコード輸入権に関する規定を墨守しようということでしょうか?
 日本人がアメリカ人と同じ音楽を聴くためにアメリカ人の2倍のお金を支払わなければいけないということを当然だと考える、反日的な政党であると、○○党のことを理解してよろしいのでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 08:32 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (15)

06/28/2004

アンケートの回答(その1)

著作権法改正についてのアンケートについて、幾つかの議員から回答が来ました。公職選挙法の関係もあるので、コメント抜きでご報告いたします。


今村順一郎氏(共産党)

http://blog.livedoor.jp/non386/archives/3407316.html

と同文。

中川直人氏(社民党)

質問1__1、質問2__1、質問3__1

それ以外の候補からは、現時点で回答はありません。

Posted by 小倉秀夫 at 10:59 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (7)

選挙の争点

年金問題や、イラク問題や、北朝鮮問題、はたまた憲法改正問題など、今回の参議院選挙で争点となる事項はたくさんありますね。そんななか、著作権法改正問題に対する態度をみて誰に投票するかを決めるのはいかがなものかと迷っている方もおられるでしょう。

しかし、著作権法改正問題というのは、一部の業界団体やこれと結びついた一部の官僚の意向と、我々名もなき大衆の利益とのバランスをどうとるのかという、各国会議員なり政党なりのスタンスが如実に現れる問題です。しかも、各政党のもつイデオロギーとは直接関係がない問題であり、大衆の意向をはねのける必要がない問題です。そういう意味では、各議員の大衆の利益を思う気持ちと、官僚の嘘を見抜く能力とが如実に現れる問題です。何しろ、イデオロギー的な言説で目くらましをかけることができません。そして、著作権法改正問題で大衆の声、大衆の利益に十分に配慮できない議員が、年金問題や安全保障問題で大衆の声、大衆の利益に配慮した政策を実現できるわけがありません(軍需産業から人気歌手のVIP席のチケットをプレゼントされて、徴兵制導入に賛同してしまうような議員では困ります。)ないですし、著作権法程度の立案、検討をする能力のない国会議員に、新憲法の立案、検討を行う資格などあろうはずがありません(「凶悪犯罪を犯していない人に対しては行使しないから」という答弁を信じて、警察官に「切り捨て御免」の権利を与えるような憲法改正を行ってもらっては困ります。)。

そういう意味では、我々は胸を張って、著作権法改正問題に対する各立候補者の態度を見て、誰に投票するかを決めればよいのです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

06/26/2004

吉川さんは、これから試される

著作権情報センター主催で行われた吉川著作権課長の講演録がアップロードされ、波紋を呼んでいるようです。

まあ、これは、いずれにせよ「コピライト」という著作権法専門誌に掲載されますから、ネットサーフィンを
しない知財法専門家の目に触れることになります。

それ以外にも、文化庁の官僚さんたちは、著作権法の改正を行うと、「ジュリスト」や「NBL」や「自由と正義」等の法律専門雑誌に解説を書くことになっていますし、ある程度大きな改正だと、有斐閣あたりから改正法に関する逐条解説(改正に至る経緯や審議会での審議結果なども踏まえたもの)を出版するのが通例です。

今回の著作権法改正は、知財法の専門家たちからは結構嘲笑されていたのですが、これからは、吉川さんたちが提唱する「法解釈」が、一般の法律家の目に触れることになります。

試されるといえば、輸入禁止期間をどう政令で定めるかということでも、吉川さんたち文化庁のお役人は試されるわけですね。

輸入禁止期間算定の基準をどこに置くかで、文化庁がどこまでレコード業界と「ずぶずぶ」の関係にあるのかがわかります。輸入規制という「原則に対する例外」はなるべくその範囲を限定するというのは、大原則です。

ところで、「邦楽CDが廃盤となるまでの期間」を基準とする考え方と、「レコード会社が小売価格に対するコントロールを失うまでの期間」を基準とする考え方、「結果的にリクープする邦楽CDがリクープするまでにかかる期間」を基準とする考え方とがあります。邦楽CDのアジア諸国向けの正規ライセンス盤が日本国内に並行輸入されることによって邦楽CDについて投下資本が回収できなくなることを防ぐということが今回の著作権法改正の趣旨であるとするならば、「結果的にリクープする邦楽CDがリクープするまでにかかる期間」を基準に輸入禁止期間を定めるのが筋であり、日本国内盤発売とほぼ同時にアジア盤が出荷されるような邦楽CDに関していえば、日本国内盤の発売日から1~2ヶ月でいいのではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 07:02 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (6)

06/24/2004

アンサーチェック

さて、いよいよ参議院議員選挙が公示日を迎えます。

これから、知人や、一方的に知人だと思いこまれている人々から、特定の候補者への投票をお願いされる機会も増えることでしょう。また、全く知らない運動員から電話等で投票を依頼されることもあるでしょう。

そのときには、

 洋楽CDの並行輸入が実際に阻害されることがわかったら、輸入権に関する規定を廃止するのか
 
 ゲームソフトや音楽CDに対する中古売買規制には反対するのか

を確認し、この点につき消費者の側に立った態度表明をきちんと行わない候補者には投票しないということを告知する

ということはやってもいいのではないかという気がします。

Posted by 小倉秀夫 at 11:43 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

06/22/2004

コンテンツの価値

 コンテンツ系商品における中古売買規制の導入を推進する側の論理には、「コンテンツ系商品においては、消費者は専らコンテンツに着目して商品を購入する」ということを当然の前提としているようにも思えます。その前提の下で、「同一のコンテンツを享受できる以上、新品と中古品との間には商品としての差異はなく、従って、中古品売買が野放しにされると新品が売れなくなる」と心配しているようにも見えます。

 しかし、果たしてそうなのでしょうか。

 私は、中古ゲーム訴訟のころから、コンテンツ系商品においては、「コンテンツ」の価値に負けず劣らず、「物」自体の価値が大きいと考え、そのように主張しています。新品のゲームソフトと中古のゲームソフトは、ゲーム機にかけると同じ画面が出てきて同じ反応をするでしょうが、消費者が適正と考える価格は自ずと違っています。これは、音楽CDについても、書籍についても同じことがいえます。書籍なんかは、同一のコンテンツについて、媒体の「質」に応じて、複数の価格帯の商品が同時並行的に生産・販売されることは少なくないわけですから、この点は顕著です。特に嗜好品の価値は、多分に記号論的に決まっていくのであり、「コンテンツ」のみが記号論的な商品価値を高めるものでもなければ、「コンテンツ」こそが記号論的な商品価値を高めるものでもありません。「コンテンツ」は、記号論的な商品価値を高めうる「One of Them」に過ぎません。
 
 でも、「コンテンツ」が記号論的な商品価値を高めうる程度は、他の商品において「創作性」が記号論的な商品価値を高めうる程度よりも一般的に大きいではないかとの反論もあり得るとは思いますが、本当にそうなのかは実はよくわからないところです。書籍の価格を決める大きな要因は、「コンテンツ」の善し悪しではなく、媒体の品質、ページ数、発行部数など、「物」に関する部分です。音楽CDについても、「コンテンツ」の善し悪しによらず、収録されているCDの枚数と流通経路が価格を決める大きな要因となっています。実は音楽CDなんかでも「コンテンツ」自体の価値というのはそれほど大きくなくて、レンタルCDのレンタル料程度なのかもしれません。まあ、レンタルCDをダビングして得られる音質というのはCD−RレベルないしMDレベルですから、それよりも音質が良ければ、そういう音質を含めた「コンテンツ」の価値は高まるでしょうし、それより音質が低ければ価値も低下することでしょう。

 もちろん、その商品の市場における価値を無視した価格設定をすることは供給者の自由ではあるわけですが、大量生産品の場合、適正な価格を設定して売上高を増やした方が、供給者側により多くの利益をもたらす可能性が高いともいえます。
 
 ついでにいうと、日本の音楽配信サービスが「いけていない」理由の一つは、「コンテンツ」の価値を過信しすぎていることにあるのではないかと思います。iPodに収録できるコンテンツと、MDにしか収録できないコンテンツとは等価値ではないし、ましてダウンロードしたパソコンでしか聞けないとか、高くて持ち運べない専用家電機器を用いなければ聞けないコンテンツとは全く商品価値が異なります。iTunes Music Storeは、iTunes、そして、iPodと結びつくことによって、1曲99セントという価格に見合うだけの価値を消費者に与えているのです。あれは、「ユビキタス」込みの価格です。それなのに、それを無視した商品設計、価格設定をしている日本の音楽配信サービス。同じ「コンテンツ」を配信するにしても、これでは流行るわけがないと私は考えてしまいます。

Posted by 小倉秀夫 at 11:16 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

06/19/2004

Induce Act

参議院選挙候補者へのアンケート事項は、中古問題を含めた3点とすることにしました。
東京以外で同様のアンケートをしたいという方は、自由にテンプレートをお使い下さい。

ところで、米国では、Induce Act法案が話題になっているようです。

アメリカの場合、ベータマックス訴訟最高裁判決があるおかげで、議会を通さないと、著作権者が「表現の自由を殺」したり、「技術を狙い撃ち」にしたりすることはできないわけですが、日本では、どこまで責任範囲が拡大するのかわからない「幇助」の規定と、明文の定めがなくどこまで責任が拡張されるか事前には全く分からない「利用主体拡張の法理」のおかげで、「Induce Act」以上に「表現の自由を殺す」権原を著作権者に与えてしまっているのですね。

Posted by 小倉秀夫 at 11:54 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (7)

06/18/2004

アンケート2004

私は、東京都民ですので、来る参議院選挙にて、東京選挙区の立候補予定者に対し、下記アンケートを実施する予定です。皆様は如何されますか?

(○○)様へ

 私は、来る参議院議員選挙において誰に投票すべきかを考慮する際の参考とするために、候補予定者に対してアンケート調査を行っているものです。同選挙の選挙期間を目前としてご多忙の折とは存じますが、下記質問にお答え頂ければ幸いです(なお、アンケート結果は、インターネット上で公表することを予定しています。)。
 
質問1

 新設著作権法113条5項を創設する著作権法改正法は平成17年1月1日に施行されます。同法は、海外のレコード会社が洋楽CD(邦楽CDのアジア諸国ライセンス盤を除く音楽CDのことをいいます。)の並行輸入を阻害するために活用しないことを前提として可決・成立しましたが、その担保はありません。
 そこで、海外のレコード会社が洋楽CDの並行輸入を阻害する動きを行ったことが明らかになったときは、新設著作権法113条5項を廃止して頂けますでしょうか。
 
 1 そのような著作権法改正案を超党派で提出して廃止を目指す。
 2 他の議員がそのような著作権法改正案を提出した場合には賛成する。
 3 そのような著作権法改正案には反対する。
 
質問2

 著作権法附則4条の2を廃止する著作権法改正法は平成17年1月1日に施行されます。この法案は、施行日までに、「貸与権管理センター」のような著作権集中処理機関が書籍・雑誌等に関する著作権者から貸与権の処理の委託を受けることにより、スムーズに権利処理を行い、ライセンス料さえ払えば書籍等の貸与事業自体は禁止しないことが前提となっています。
 そこで、同施行日までに、「貸与権管理センター」が、あらゆるジャンルの書籍・雑誌等について網羅的に貸与権の処理の委託を受けることに成功しなかったときは、書籍・雑誌に関する貸与についても、著作権法第97条の3第2項以下のような規定を設けて、報酬請求権を設ける代わりに、貸与禁止権の適用除外とする法改正を行って頂けますでしょうか。
 
 1 そのような著作権法改正案を超党派で提出して廃止を目指す。
 2 他の議員がそのような著作権法改正案を提出した場合には賛成する。
 3 そのような著作権法改正案には反対する。

Posted by 小倉秀夫 at 11:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (6)

06/10/2004

建築業界が文化庁にロビー活動を行うと

(以下はフィクションです。)

構造不況に悩む建設業界は、「知財立国」の名の下に我が世の春を謳歌するコンテンツ業界を見て、ある日ふと不況脱出策を思いついた。

 「俺たちが建てた家に、俺たちに一銭も支払うことなく使用している連中が山程いるぜ」
 「そうだそうだ。俺たちが苦労して立てた住宅が中古で売買されても、俺たちに一銭も入ってこないだなんて、世の中間違っている。」
 「世の中から中古住宅なんてなくなってしまえば、親元から独立したり転勤するなりして新たに住居を構える人は皆、我々に住宅を新築してくれと頼まざるを得なくなるんだ。そうなれば、我々建設業界は、構造不況脱出間違いないね」
 「でも、そうしたら、皆賃貸で我慢してしまうのではないか」
 「それなら、賃貸も禁止してしまおう。」
 「そうだな。俺たちが建てた家を俺たちに無断で貸して儲けているやつがいるだなんて許せないよ。そのおかげで、新築住宅が売れなくなってしまっているんだ」
 「そうだそうだ。住宅の賃貸が禁止されれば、今までは住宅を借りて済ませていた人も、新築住宅を購入せざるを得なくなるはずだ」
 「これで、我々はさらに儲かりますね」
 「でも、中古禁止、賃貸禁止なんてどうやったら実現できるのですか」
 「なんでも、『建築の著作物』という概念があって、建築物についても『著作権』の保護を受けられるらしいぞ」
 「それなら、文化庁にロビー活動をすれば、著作権保護のために、中古販売の禁止や営利目的の貸与などを禁止する法律を作ってくれそうですね。」
 
 はたして、文化庁は、著作権法46条2号と3号の間に新設3号として「三 建築の著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する行為」という条項を挿入するとともに、著作権法26条の2第2項の規定を削除する法改正を実現した。
 
 この結果、親族・友人間以外の住宅等の譲渡や貸与は、当該住宅が「建築の著作物」にあたるときは下手をすると懲役刑まで科される犯罪行為となってしまうため、不動産業者は、新築専門の所以外は廃業を余儀なくされることとなった。その結果、転居するたびごとに新築住宅を購入することができる一部の富裕層以外は、何が何でも転居しなくとも済むように画策するか、それが果たせないときはホームレスとして生きていくよりなくなることになった。
 
 「知財立国」というマジックワードでロビー活動を行うとどんな規制でもたちどころに創設できてしまう社会にしてしまうと、活力ある社会が実現するという思考実験でした。

Posted by 小倉秀夫 at 01:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (7)

06/09/2004

J-WAVE

今日(というか、昨日というべきでしょうか)、J−WAVEで、Winnyの問題について話をいたしました。

私は、ファイルローグの日本国内における運営主体である日本MMOの訴訟代理人であるとともに、WinMXにてプライバシー情報を送受信していた者についての発信者情報開示を最初に認めさせたパワードットコム事件の原告ら訴訟代理人という、P2Pに関しては微妙なポジションにいる者なのですが、そういう私から見ると、権利者団体はこせこせとP2Pサービス提供者を叩くのではなく、P2Pサービスを悪用して自分たちの権利を侵害している人々を堂々と叩けといいたいわけです。

著作権管理団体が、P2Pサービス叩きに没頭する間に、悪用者叩きに没頭していたら、匿名の陰に隠れて権利侵害情報を送受信を繰り返している人の氏名・住所等を、裁判によらずして開示するための手順が、テレサ協との間にとっくにできていたかもしれず、そうすれば、名誉やプライバシーを毀損された被害者も反撃の機会を簡単に得られたかもしれないというのに、全く役に立たない人たちです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:33 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/08/2004

今必要なもの

性懲りもせず、「知的財産推進計画2004(案)」なるものが作られたようです。

このような「計画」を立案してしまう人たちって、エンターテインメント産業の主要な消費者である若者たちが、エンターテインメントのためにどの程度の支出することが可能だと思っているのでしょうか。ゲーム産業衰退の最大の原因は、消費者側の可処分所得を無視して、開発コストを闇雲に上昇させていったことにあるのだということにいつになったら気が付くのでしょうか。中古ゲームを立法によって撲滅したら、若者たちはどこからかお金を調達して、莫大な開発費を賄って利益が出る程の売上げをソフトハウスにもたらしてくれるとでも思っているのでしょうか。そういう世の中をお望みなら、著作権法改正の前に児童ポルノ法を改正して、少年・少女売買春を合法化すべきでしょう。

それはともかくとして、こういう計画を策定してしまう役人、賛同してしまう政治家、有識者の間には、「法と経済学」的な素養を持つ者はいないのでしょうか。何人かはいても、彼らが発する冷静で合理的なメッセージなどどこかに引っ込んでしまう程、不合理でエゴ丸出しの議論がまかり通っているのでしょうか。

知的財産戦略会議の中で、中川経済産業大臣から、「国際的な知財専門弁護士というものを短期間で大量に人材育成をしていかないと、世界の知財戦争の中でかなり不利になっていくということも大事なポイントではないかと思っております。 」なんてことをいわれてしまっているわけですが、それ以前に、知的財産権制度を「法と経済学」的に正しく理解し、それを立法に反映できる国会議員を短期間に大量に養成することの方が先決ではないかという気がします。立法府におかしな法律を作られると、国際的知財弁護士が如何に大量に要請されようとも、いかんともしがたいのですから。

Posted by 小倉秀夫 at 01:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

06/05/2004

踏み絵

 Sonyという会社は、よくよく日本国民が嫌いなんですね。
 
 米国では1曲99セントで音楽配信サービスを提供して商売になるのであれば、日本でもほぼ同様の価格で提供できるはずですが、そうしようなんて意欲は全くなさそうですね。
 
 東京の中心で「愛国心」を叫ぶ人たちは、こういう日本人を馬鹿にした日系企業について、日本人軽視ないし蔑視の行動パターンを改めさせるのが先なのではないかとも思うのですが、どうも自称「愛国者」の行動パターンというのは論理的ではないようです。

 で、私は、レコード会社が自主的に改心するのを待っていては、細石が巌となって苔が蒸してしまいそうなので、商業用レコードに収録された「音」については、自動公衆送信(送信可能化を含む。)について強制許諾制度を創設することを提唱するとともに、これに賛同しない候補者には来る参議院選挙で決して投票しないことにする予定です。

 他にも賛同者がいらっしゃれば、各自の選挙区の候補予定者に、強制許諾制度の創設に賛同するかどうかを尋ねてみてはいかがでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 02:21 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

06/03/2004

VIP

浜崎あゆみVIPチケット問題について、もう少し掘り下げて取材するジャーナリストがいると面白いですね。取材の進展具合によっては、贈収賄の容疑等で刑事告発できるかもしれないわけですし。

Posted by 小倉秀夫 at 11:07 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (2)

着メロなど

今回の著作権法改正に抗議して、CDの購入を差し控えると意思表明する方々が散見されます。しかし、レコード輸入業者やレコード販売店には、私たちと一緒になって著作権法改正に反対してくれた方々が多くいたのです。恩を仇で返すようなことをするのは、あまり褒められた生き方ではありません。そもそも、全国のレコード店の中でレコード輸入権創設に積極的に賛成したのは、レコード商業組合傘下のレコード店だけなのですから、それ以外のレコード店には罪がありません。


そのこととは直接関係がないのですが、みなさん、着メロ、着うたってやめませんか?

ポケベル時代後期は、バイブレーション機能により着信を知らせることとし、着信音を鳴らさないことが「マナー」とされつつありました。「周囲の人に音を押しつけるのは迷惑だ」というのはメディアがポケベルであろうと携帯であろうと共通しているはずなのに、携帯時代に入っていったら、やれ着メロだ、着うただと、やかましいことこの上ないです。

社会に迷惑をかけてまで、また、JASRACやレコード会社を儲けさせてまで、着信時にメロディや歌を鳴らさないといけない必然性って、何かあるのですか!?

と私は問いたいわけです。

どうせ音楽配信がなされるのであれば、着メロ、着うたのようなただはた迷惑な方法によるのではなく、iTMSのような正しい方法によってもらいたいわけです。

Posted by 小倉秀夫 at 01:24 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (6) | TrackBack (4)

06/02/2004

6月、これからスタートだ。

 先週は、仕事の関係で1週間ニューヨークに行っており、日曜日に帰ってきました。
 5番街のHMVでの商品の安さと商品構成の巧みさを見るにつけ、日本の音楽ファンが如何に虐げられているのかを改めて実感することができました。

 今回、我々は、国会議員の方々や官僚の方々にお金も女も提供することはしなかった(できなかった)わけですが、一部の国会議員は我々の要請に誠実に耳を傾けてくれることがわかりました。他方、現実の国会議員の多くは法案を作成する能力がないのみならず、法案を解析する能力すら乏しく、官僚の嘘をろくに検証もせず信じ込んでしまうのだということがわかりました。

 よく考えてみれば、我々も主権者なのですから、薄汚い業界団体からの法改正圧力に抗うだけでなく、我々の側から、我々の利益を守るための積極的な法改正を求めてもよいはずです。著名な法人・団体の意見は聞けるが、名もなき大衆の意見等聞く耳を持たない等という国会議員は、主権者である我々が選挙で排除してしまえばよいのです。

 ということで、私は、当面、

 1 商業レコードに収録された実演に関して、公衆送信(送信可能化を含み、放送及び有線放送を含まない。)についての強制許諾制度を創設する旨の著作権法改正

 2 国家公務員が国会議員に対し虚偽内容の法案説明等を行った場合に懲役刑を科す旨の国家公務員法改正

を求めていこうと考えています。

なお、私がゴールデンウィーク中に送ったパブリックコメントの完成版を末尾に付けることとします。

一 全体について
 既に一定の商業的価値を有している知的財産の保護と将来的な知的財産の創造の促進とは、しばしば相矛盾し衝突する。日本が今後知的財産立国として栄えることを目指す場合、既に一定の商業的価値を有している知的財産の保護については、将来的な知的財産の創造の促進の妨げとなるものについては、せいぜい諸外国と同程度かできればそれ以下に抑えることこそが賢明である。現在の政治的な「声の大きさ」に目を奪われて既に一定の商業的価値を有している知的財産の保護を過度に強化することは、将来的な知的財産の創造の促進の妨げになり、未来に禍根を残すことになる。
 従来「知的財産創造のサイクル」という言葉は、「投資家がエンターテインメント産業に投下した資本を回収し、また投資する」というサイクルを指すものとしてのみ用いられてきた。そこでは、「エンターテインメント産業にまつわるお金の流れ」にのみスポットがあてられてきた感が強い。短期的には、投資家は、今既に存在するクリエーターを使えばコンテンツの作成を行うことができるので、専ら投資家のインセンティブに焦点を当てて制度設計を行うという考え方もあり得なくはない(但し、消費者側の満足度を過度に軽視した制度設計を行った場合に、短期的な「知的財産創造のサイクル」すら崩壊しかねないことは忘れてはならない。)。
 しかし、中・長期的に見た場合、今既に存在するクリエーターは、じきに引退し又は陳腐化していくことから、「知的財産創造のサイクル」を維持するためには、新しい世代のクリエーターが次々と現れてくる環境を整えることが不可欠である。そして、投資家のインセンティブを高めただけでは、良質のクリエーターを生み出すことはできないのである。

二 クリエーターの育成
1 日本国民、特に若い世代が将来優れたクリエーターになる為には、よい作品にたくさん触れることが必要である。従って、図書館、レンタル業者、中古品販売店等、国民が無料であるいは安価に作品に触れる機会を提供する事業者等を積極的に保護することが知的財産の創造基盤の整備には不可欠である。なお、これらの事業者を撲滅して国民が1つの作品に触れるために支払わなければならないコストを上昇させても、国民が芸術・娯楽作品に触れるために費やすことができる金額の総額が大幅に増えることが期待できない以上、現在のクリエーターの収入を大幅に増大させることには繋がらない。国民が触れることができる作品の数を大幅に減少させるだけである。したがって、推進計画に掲げられている、国民が1つの作品に触れるために支払わなければならないコストを上昇させるための諸政策(書籍・雑誌に関する貸与権の創設、レコード輸入権の創設、中古品売買の規制等)は、中長期的な「知的財産創造のサイクル」を崩壊させる、極めて愚劣な政策であるといえる。貸与規制に関してはWIPO著作権条約等で最低限義務づけられた範囲にとどめるべきであるし、消尽しない輸入権や消尽しない譲渡権など条約等で義務づけられていない規制は、米国政府等から求められようとも、一切拒否すべきである。
 他方、無償又は低コストで作品に接する機会を公的部門が阻害せず、むしろ促進することは、次世代のクリエーターの育成に有益である。例えば、音楽配信サービスについては、日本のレコード会社はサードパーティーにライセンスを与えないため、レコード会社が自ら出資した、高くて使い勝手のよくないサービスしか提供されていないのが現状であるが、iTune Music StoreやNapstar等のサードパーティーによる音楽配信サービスについては、文化庁への申請により、国際標準価格での強制許諾を受けられるようにするような法改正を行うことは極めて有益である(日本の音楽業界が1曲享受するのに要する価格を高止まりさせることに躍起になっている間に、英米では、安価で音楽を享受するための様々なサービスが開始され、かの国民は若いうちから多様な楽曲に親しむことができるようになっている。このようなことでは、音楽産業については英米に水を空けられた状態が今後も続いていくことは避けられない。せいぜいアジアの中で君臨する程度のことしか目標を設定できない志の低い既得権者にあわせて制度設計を行っておきながら「知財立国」を標榜するのは羊頭狗肉であるから直ちに改めるべきであろう。)。
 また、今日市販のDVD等においては「リージョンコード」が組み込まれており、米国等で正規に流通している商品を購入しても、これを再生できないようになっている。このリージョンコードを回避することは現在の技術水準化では比較的容易であり、リージョンコードを回避することを可能とする機器は市場に流通している。米国等で流通している映像作品の全てが日本国内向けに商品化されるわけではない現状の下では、米国等で流通しているDVD等の作品を国内で鑑賞するためにリージョンコードを回避するということは、日本在住者が多様な作品に接することによってクリエイティビティを醸成する上で極めて有益であることから、リージョンコードを回避するために用いられる機器の生産・販売等を国が規制することは妥当ではなく、それらの行為が不正競争防止法等に違反しないことが明らかとなるような法改正を行うことが望ましい。

2 優れたクリエーターになるためには、既存の作品から多くを学ばなければならない。既存の作品を模倣したり、自分なりにアレンジしたりして、自分なりの作風を確立する──ほとんどのクリエーターにとってそのような時期が不可欠である。
 このような観点からは、芸術家の育成に熱心なフランスなどで既に行われているように、国や地方自治体が所蔵している絵画等の芸術作品を若きクリエーターが自由に模写、模倣することができるようにすべきである。
 また、「同人誌」で既存の作品をパロディ等として取り入れた作品を発表していくうちに漫画家としての技量を身につけ、ついには人気漫画家として育っていくという例が後を絶たないことからも明らかなとおり、既存の作品の改変を自由に行えるようにすることもまた、次世代のクリエーターの育成には有益である。ところが、現行法では、私的使用目的の改変であっても同一性保持権侵害にあたるという見解が根強い。したがって、次世代のクリエーターを育成するためには、既存の作品を改変して制作した作品を既存の作品そのものと誤解するような態様で公表した場合以外は同一性保持権侵害にはあたらないことが明らかになるように著作権法の改正を行うことが必要である。
3 優れたクリエーターといえども、全くの「無」から優れた作品を作り出すことは困難である。多かれ少なかれ、意識的であれ無意識的であれ、過去に他人が創作したものを取り入れつつ作品を作り上げているのが実情である。もし、新たな作品を創作するにあたって、過去に他人が創作したものを一切取り入れてはならないとしたら、ほとんどのクリエーターは新たな作品をほとんど創作することができなくなることだろう。この傾向は、著作権の保護期間が長くなり、かつ、インターネットの発展により誰もが膨大な数の著作物にアクセスする可能性を有するに至った現代において特に顕著である。
 このような弊害を除去し、優れたクリエーターが新たな作品を安心して創作できるようにするためには、過去に他人が創作したものを取り入れつつ新たな作品を作り上げる行為は原則として著作権(翻案権)侵害にはあたらないこととし、取り入れられた過去の作品の著作権者にはせいぜい報酬請求権を付与するという方向で法改正を行うべきである。特に「パロディ」や「オマージュ」表現の自由化は、サブカルチャー部門の発展のためには必要不可欠である。
4 日本では、エンターテインメント企業は膨大な作品を著作権・著作隣接権によって囲い込むことには熱心だが、それを活用し続けることには熱心ではない。今日多くの作品がエンターテインメント企業のために死蔵されてしまっている。知的財産は、クリエイティブな人々の目に触れるなどして享受されることにより、新たな知的財産を生み出すことに繋がっていくことを考慮すれば、この「死蔵」問題を克服することは、将来的な知的財産の創造の促進する上で重要な問題である。
 この問題を克服するためには、少なくとも商業的に頒布された著作物に関しては、権利者又は権利者から許諾を受けた者により発行されなくなったときは、自由に複製、公衆送信(送信可能化)できるように法改正すべきである。
5 「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」においても、人材育成のための施策はいくつか提示されている。しかし、それらは、大衆音楽、映画、漫画、アニメ等のサブカルチャー分野の人材の育成方法としてはいずれも的はずれなものである。若い世代から多様な作品に接する機会を奪いまたは著しく制約しても、旧世代のクリエーターに若い世代を指導させておけば、優れた人材を育成できるはずだという前提の下で戦略本部は制度設計を行っていると見受けられるが、その前提が間違っている。

三 環境の整備
1 日本では、ミュージシャンはライブ活動では生活できないとの声を聞く。そうだとすると、ミュージシャンは定期的に新作を発表し、音楽CD等を製作しなければならなくなる。新作のCD等がヒットしなければ、旧作が好きだというファンが幾らいても、廃業に追い込まれることになる。レコード会社等としては次々と新しいミュージシャンを開拓しては古いミュージシャンを切り捨てればいいだけの話であるからさしたる問題とはならないが、ミュージシャンとしては死活問題である。
 このような問題を克服するためには、日本においても、ライブ活動でアーティストの生活費等を稼ぎ出せるようにすることが必要である。しかし、そのために壁として立ちはだかっているのは、日本国内における会場使用料の高さである。だとすれば、国や地方公共団体が運営している質の高い音楽ホール等を、大衆音楽等におけるライブ活動にも活用させるとともに、その使用料を、他の先進諸国における会場使用料と同程度か又はそれ以下に抑えることが有益である。
2 また、アニメ分野に関していえば、テレビ局がアニメ製作会社に支払う報酬の下限を法律で決めることによって、アニメが安く買い叩かれている現状を改善するのが先決である。その上で、アニメ製作を実際に支えるスタッフたちが健康で文化的な生活を送ることができるように、労働者保護ないし下請け保護法制を整備し、厳格に適用していくことが必要である。テレビ放送事業は免許事業であり数が限られているのに対し、アニメ製作事業は自由な参入が許されているために、アニメ製作の受注という場面においては価格形成の力関係にゆがみが生じているのであるから、法律でこれに介入してこの力関係のゆがみをある程度是正することは十分許される範囲内というべきである。
  
四 国民の知的財産意識を向上させる
1 国民の知的財産意識を向上させるためには、知的財産権諸法によって規制される範囲を国民の常識に合致させることが肝要である。エンターテインメント業界の声にのみ耳を傾け消費者の意向を無視して新たな知的財産権を創設した場合、これを守らなければならないという意識が国民に根付かないのは当然である。「中古品の販売は犯罪である」「正規品の並行輸入は犯罪である」「図書館がベストセラーを貸すのは問題だ」などという常識とかけ離れたことを幾ら教育により植え付けようとしても、それが根付かないのは当然なのである。
2 国民が日常的に行っている行為でも厳密にいえば著作権侵害とされている場合が少なくない。このようなことを国民が知れば、国民は知的財産権諸法など守ろうという意識が薄れていくのは当然である。そのような事態を回避するためには、「フェアユース」規定を創設し、国民の知的財産権意識に法律を近づけることが肝要である。

Posted by 小倉秀夫 at 02:54 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (13)

05/27/2004

誰もが洋楽CDを買いに渡米できるわけではない

河野太郎衆議院議員が余りにいい加減なことを言い続けるので、以下のようなメールを送りました。

庶民の生活水準を知らないおぼっちゃまには困ったものです。


河野太郎先生へ

 特定の業界団体が待ち望む特定の法案を可決成立させるために、国民に嘘を付く政治家に存在意義はあるのでしょうか。

>Q:改正115条5項では、輸入時及び頒布目的での所持中に、当
>該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目的のものであるという事情
>を知っていれば足ります。そのような事情を知るに至った過程を一
>切問いません。したがって、「日本国内頒布禁止」等の表示がなく
>とも、それ以外の方法で当該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目
>的のものであるという事情を知ってしまえば、この要件を満たすこ
>とになりませんか。
>A:今、手に取っているCDそのものがこの法の適用を受けるかど
>うか判断できるということが「情を知って」ということですので、
>日本販売禁止という表示が必要です。テレビコマーシャルでこのC
>Dは日本の販売禁止だと流したり、内容証明郵便で業者に通知した
>だけでは、要件を満たしません。

とのことですが、例えば「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CDは全て、専ら日本国外で頒布されることを目的とするものであるから、日本国内での販売目的で輸入・所持することは禁止されている」との事情を内容証明郵便による通知書その他で知らされていた場合には、手に取った音楽CDが「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CD」であることを知れば、すなわち、当該音楽CDそのものがこの法の適用を受ける「国外頒布目的商業用レコード」に該当することがわかるわけです。「日本販売禁止」なんて表示は必要ありません(法律の読み方を知らない素人はごまかせても、玄人はごまかせません。)。

しかも、政府はご丁寧に、情を知って輸入する行為だけでなく、情を知って販売目的で所持する行為をも著作権等侵害行為とみなすように法案を作成しています。「所持」というのは継続的行為ですから、「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CD」を大量に入荷した後に、「米国国内向けに出荷されたEMI傘下レーベルの音楽CDは全て、専ら日本国外で頒布されることを目的とするものであるから、日本国内での販売目的で輸入・所持することは禁止されている」との通知を受ければ、それ以後の所持は、情を知って販売目的で国外頒布目的商業用レコードを所持する行為、すなわち、著作権等侵害行為とみなされる行為となってしまいます。

「日本国内頒布禁止」との表示がなされている音楽CDに限って適用されることを明文化することを自民党が拒絶するのは、「日本国内頒布禁止」との表示がなされていない音楽CDを輸入または販売目的で所持している場合であっても、著作権等侵害とみなされるのだと示すことによって、より広範囲に音楽CDの並行輸入を阻止することにあるからでしょう。本気で「『日本国内頒布禁止』との表示がなされている音楽CDに限って適用される」こととするつもりならば、その旨を条文上に明記することは、立法技術的に容易なのですから(法律の読み方を知らない素人はごまかせても、玄人はごまかせません。)。

そして、

>Q:輸入業者が国内盤の出ていないCDを輸入↓
>しばらくたってから国内盤のリリースが決定↓
>以降は「国内盤リリース」の「情を知っている」ことになるから
>、在庫も販売も禁止??
>A:輸入する時にこの法が適用されていないCDに関しては、そ
>の後の在庫も販売も自由です。

とのことですが、法案では、「輸入する時にこの法が適用されていないCDに関しては、その後の在庫も販売も自由です」とのんきなことを言える文言になっていません。「輸入」行為とは別に、「頒布目的の所持」が独自に著作権等侵害行為とみなされる行為になっています。すなわち、「輸入」行為については改正113条5項の要件を満たさず税関をパスしたとしても、頒布目的で所持している過程で改正113条5項の要件を全て満たすに至れば、「頒布目的の所持」を継続することは、著作権等侵害行為とみなされることになるのです。法律の読み方を知らない素人はごまかせても、玄人はごまかせません。

また、河野先生は、個人が輸入するCDについてはこの法は適用されないということを盛んに強調されますが、個人がCDを輸入することに関し業者が関与した場合にこの法律が適用されかねない十分な危険があることを、国民に対して黙っておられるのはフェアではありません。

ご存じのとおり、我が国では、
1 自己の管理の下に、ユーザーに、著作権等の利用行為を行わせ、
2 かつ、そのことによって利益を図る意思がある場合には、
著作権法の規律の観点から当該業者を著作権等の利用主体とみなす、利用主体拡張法理が判例法理として定着しています(例えば、個人が1人で練習のためにJASRACの管理楽曲を歌唱すること自体は著作権(演奏権)の侵害とはされていませんが、カラオケボックスに1人で入って個室でJASRAC管理楽曲を歌唱した場合、著作権法の規律の観点から、カラオケボックスの経営者が歌唱(演奏)の主体とみなされ、当該カラオケボックス経営者と特段の人的な繋がりのない当該顧客すなわち公衆に直接聞かせる目的でJASRAC管理楽曲を歌唱したとして、著作権(演奏権)侵害と認定された裁判例(ビッグエコー事件地裁判決)は実在します。)。

このような判例法理を有する我が国においては、例えば、米国で流通している洋楽CDを、日本国内に在住する洋楽ファンの注文に応じて当該ファンの下に発送するサービスというのは、自己の管理の下にユーザーに米国盤洋楽CDの輸入行為を行わせ、これによって対価を得ているとして、著作権の規律の観点から、当該サービスの経営者こそが輸入行為の主体であるとみなされる可能性が大きいです。この場合、当該経営者と個々の顧客との間には特段の人的繋がりがないのが通常ですから、公衆に頒布する目的で輸入行為を行ったとして、輸入権侵害とされる可能性が大きいです。すなわち、Amazon.comのようなサービスは、日本向けに米国盤CDを出荷するサービスを停止しなければならなくなる可能性が大きいと言えます。

すると、個人として輸入する行為は大丈夫だといっても、再生非保証ディスク(CCCD)ではない洋楽CDを購入するためには、その都度米国に渡航して、現地のCDショップ等で音楽CDを購入しなければならないということになります。我々洋楽ファンは、「個人がアメリカに行って再生非保証ディスク(CCCD)ではない洋楽CDを購入する行為までは処罰しないから、安心しなさい」といわれて、素直に安堵できると本気で思っているのですか。

Posted by 小倉秀夫 at 02:52 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (2)

05/26/2004

衆議院議員はみな、今、試されている。

既に参議院で全会一致で可決されている著作権法改正案に関し衆議院で提出されていた質問趣意書への回答が公表されました。

このような回答書で「これで洋楽の並行輸入は大丈夫」だなんていって著作権法改正案に賛成する衆議院議員については、官僚の誤魔化しを見抜く能力がないか、官僚と一緒になって国民を騙そうとしているかどちらかであるから、いずれにせよ、国会議員たるべき資質を有しないと評価可能です。そういう議員の選挙区にいる人は、その議員を落選させるべく次の選挙で投票行動を起こしましょう。そういう議員(候補)しかいない選挙区にいる人は、棄権するのではなく、積極的に白票を投じましょう。

さて、具体的に見ていきましょう。

今回の回答書を貫く思想は、「法律の解釈については、適当なことを言って誤魔化します。しかし、輸入業者も販売店も、回答書で示された解釈を金科玉条として洋楽CDの並行輸入を強行した場合には、検察は「適切に」対処するし、経営者の逮捕、起訴、刑事罰、在庫品の廃棄、国内盤との差額の賠償等により生じた損害は自己責任で負担してもらうから、わかっているだろうな。」というものですね。

まず、

「US Only」との文言は、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく、その文言の印刷があることをもって、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、「US Only」とあれば、専ら米国国内において頒布することを目的としているということを意味しているわけですから、常識的に考えて、「専ら(日本)国外において頒布することを目的」としていることは明らかです。文部科学省では、米国国内であって、かつ、日本国外ではない地域というのが存在するということなのでしょうか。私は、「米国国内」というのは「日本国外」の部分集合だと思っているのですが。

また、

当該内容証明郵便(「当社が並行輸入を禁止している音楽CD一覧」が記載されており、その中に当該作品を含んでいるもの)では、並行輸入を禁止する理由が明らかではなく、当社が並行輸入を禁止している音楽CD一覧」に記載されている音楽CD(以下「一覧CD」という。)が専ら国外において頒布することを目的とするものであることを明確にする記載があり、当該音楽CDが当該一覧CDに含まれていることを識別することが可能な表示が当該音楽CDに記載されていない限り、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、今回の著作権法改正案では、いつから、「並行輸入を禁止する理由が明らか」とすることが必要になったのでしょうか。著作隣接権者である欧米のレコード会社から日本国内への並行輸入を禁止する意思を明確に表示されている音楽CDであって、かつ、専ら国外において頒布することを目的とするものではない場合としてはどのようなケースを想定しているのでしょうか。少なくとも米国盤を著作隣接権者である欧米のレコード会社自体が発行しているものに関していえば、そういうケースは想定しがたいわけですが。


また、特定の「事情」が特定の複製物に記載されていない限り、当該事情を知っていたことにはならないという解釈はどこから出てきたのでしょうか。「情を知って」との文言は、著作権法113条1項2号や同条2項等で用いられているわけですが、いずれも、「著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物」であるとの事情や、「プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物」であるとの事情は当該複製物には記載されていないのが通常ですが、そのような場合にも適用されると一般に解されています。また、113条2項は敢えて「これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り」との限定を付していますが、それはこれらの複製物を使用している途中で情を知るに至る場合が想定されていることが前提となっています(当該複製物に「これはプログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物です」との表示がなければ「情を知って」いたことにはならないとするならば、当該複製物を使用している途中で「情を知」るに至る即ち当該複製物に「これはプログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物です」との表示がなされることというのは通常想定しがたいですね。)。


また、

当該新聞記事を輸入業者が必ずしも知り得るとは限らないので、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、すると、当該新聞記事を輸入業者が知っていたと言うことを別途立証してしまえば良いということですね。企業体としての知・不知が問題となるのであれば、そのハードルは低いですね。


また、

米国盤と価格の全く異なる日本盤が税関に提出されたとしても、価格が全く異なることが、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであることを必ずしも意味するものではなく、米国盤と価格の全く異なる日本盤が税関に提出されたことをもって、当該音楽CDが専ら国外において頒布することを目的とするものであるとの情を必ずしも知り得るということにはならないと思料され

との点ですが、同一の内容のアルバムについて、欧米のレコード会社からライセンスを受けた日本のレコード会社から日本盤が発行され、かつ、上記レコード会社経由で米国盤が直輸入されているときに、なお、米国国内で市場で流通している音楽CDは日本国内で頒布されることをも目的としているものであると考えることには無理がありますね。価格に大きな差異があるのであればなおさらです。


また、

一般論として申し上げれば、個別の事案について著作権法違反による告訴がなされた場合、検察当局において、適切に対処するものと考える

との点ですが、結局、検察としては、欧米からの洋楽CDの並行輸入には適用しないとの大臣答弁がなされたところで、欧米のレコード会社等から告訴等がなされれば、法律の規定通りに、「適切に対処する」すなわちアジア諸国からの邦楽CDの並行輸入を行ったものと同様の扱いをするということですね。


また、

一般論として申し上げれば、例えば、平成十六年四月二十日の参議院文教科学委員会において文化庁は、欧米の主要なレコード会社五社が、欧米諸国において発行した商業用レコードについて、法案第百十三条五項の規定に基づいて我が国への輸入を差し止める考えがない旨を述べているが、このように国会に提出している法律案について、当該法律案の所管省庁が了知している事実を説明する行為が、直ちに国家賠償法上の責任を負うべき行為と判断されることはないものと考える

とのことですが、「欧米の主要なレコード会社五社が、欧米諸国において発行した商業用レコードについて、法案第百十三条五項の規定に基づいて我が国への輸入を差し止める考えがない旨を述べている」から今回の著作権法改正法案が可決施行されたとしても洋楽CDの並行輸入が止まることはない云々という発言に関しては、文化庁は一切の責任を持たないということですね。法案さえ通ってしまえば、国会等で言ったことなど、後は野となれ山となれ、リスクを背負いたくなかったら、洋楽CDの並行輸入もやめてしまえという文化庁の役人たちの強固な意思の表れですね。


最後に、

法案第百十三条五項は、お尋ねのように特定の類型に属する者が権利行使を控えることを前提に起草したものではない

とのことですが、これは、文化庁が、5メジャーが権利行使することをも想定した上で、改正著作権法113条5項を起草したということを明らかに表明した発言として、注目すべきでしょうね。河村文科大臣も河野太郎議員も、付帯決議でお茶を濁した参議院議員の皆様も、はしごを外されてしまいましたね。衆議院では「5メジャーは権利行使しないといっているから大丈夫だ」なんて話は、もうこれでできなくなったはずです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:27 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (7)

05/22/2004

J'en suis resté baba

 河野太郎衆議院議員のメルマガが更新されたようです。
 「大臣答弁」云々の部分を除けば、文化庁の見解を繰り返しているだけのようです。ということは、河野議員は、今回の著作権法改正問題について、文化庁の役人に尋ねるだけで、他の情報源を持っていないのではないかとの推測も成り立ちます。
 そうだとすれば、著作権法改正問題を離れても由々しき問題です。中央官庁の役人が国会議員にわざと間違った説明をして回れば、国会でのコンセンサスが得られないような内容の法律改正も簡単に行えることになるからです。「役人の説明」に対するチェック機能を持たないのでは、国会議員の方々が主観的にどう思おうとも、「役人天国」を脱却することはできないからです。こういう議員たちは、幾ら抽象論で立派なことを言っていても何の役にも立たないことでしょう。
 
 とはいえ、そのようなことを嘆いていても仕方がないので、河野議員に次のようなメールを出しておきました。
 
前略 河野先生のウェブサイトで「ごまめの歯ぎしり メールマガジン版」が更新されているのを拝見いたしました。河野先生が我々市民の疑問の声を文化庁の官僚にぶつけ、さらにその結果を市民に報告されていることには頭が下がる思いです。さらに官僚から得た回答をチェックするブレーンをお持ちになると、先生が政治家としてより飛躍することに繋がるのではないかと思料いたします。

さて、河野先生がメルマガでお書きになったことのうち、明らかな誤りについて幾つか指摘をさせて頂きます。

「改正115条5項に「『情を知って』当該国外頒布目的で商業目的用レコードを国内において頒布する目的を持って輸入する行為..」という部分がありますが、その『情を知って』というところを客観的に判断するために、当該レコードに表示がしてあることという要件が必要になります。」

との点ですが、これは明らかに誤りです。

改正115条5項では、輸入時及び頒布目的での所持中に、当該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目的のものであるという事情を知っていれば足ります。そのような事情を知るに至った過程を一切問いません。したがって、「日本国内頒布禁止」等の表示がなくとも、それ以外の方法で当該音楽CDが専ら日本国外で頒布する目的のものであるという事情を知ってしまえば、この要件を満たすことになります。しかも、当該音楽CDを仕入れた後頒布目的で所持している最中に知らされた場合、知らされた以降なおも頒布目的で所持し続ければ、改正115条5項が適用されることになります。

また、

「表示ということをストレートに法案に書くと、表示が剥がれた時はとか、権利を持っていない者が表示をした時はなどについて法案のなかで手当をしなければならなくなり、法案が非常に複雑になってしまうのを避けたためです。」

との点ですが、これも明確に誤りです。

 まず、そもそも「専ら国外で頒布することを目的」としていない音楽CDについては、権利を持っていない者が表示をしたとしても、法的には、その音楽CDを輸入し、販売目的で所持することは、改正115条5項には抵触しませんし、表示ということをストレートに法案に書いた場合についても同様です。ただ、事実上、著作隣接権者等の真意を知らない輸入業者・販売店としては萎縮的に対処しなければならなくなるということです。
 「専ら国外で頒布することを目的」としている音楽CDについて権利を持っていない者が表示をした場合、法的には、その音楽CDを輸入し、販売目的で所持することは、改正115条5項に抵触することになります。表示ということをストレートに法案に書いた場合についても同様です(尤も、解釈の余地はあります。)。唯一の例外は、表示を付する者を権利者に限定するように法案に書き込んだ場合だけです。
 
 「専ら国外で頒布することを目的」としている音楽CDについて表示が剥がれた場合、それでもその他の資料等から国外頒布目的音楽CDであることがわかる場合には、改正115条5項が適用されることになります。これに対し、行為時に表示が付されていることを要件とした場合には、その他の資料等により国外頒布目的音楽CDであることがわかる場合であっても、改正115条5項は適用されないことになります。しかし、権利者が表示を付したこと(及び行為者がその事情を知っていること)を要件とした場合、積極的に表示を剥がしたり、大量に入荷した音楽CDの一部について輸入の際に表示が剥がれてしまったときなどについては改正115条5項が適用されることになります。
 
 いずれにせよ、法文は、それほど複雑にはなりません。
 
 表示ということをストレートに法案に書くことを文化庁が拒む理由は別のところにあると推察されます。
 
 「日本国内頒布禁止」という表示がなくとも後に知らされればそれ以降は頒布目的で所持することが違法となる(通知を受け取ったら直ちに当該CDを店頭から撤去してこれを廃棄しなければならない)ということにしておけば、輸入業者・販売業者の方で、米国盤CDの輸入・仕入れ等を広範に自粛することになるだろうということを狙ってのことでしょう。これなら、日本国民が、再生保証CDを入手する機会を失うこととなっても、「輸入・販売業者が勝手に自粛しているだけであって、欧米のレコード会社は全然悪くない」と欧米のレコード会社を擁護することができます。
 
 また、
 「改正案が取り上げているのは、小売価格の問題ではありません。著作権者、著作隣接権者のライセンス料の問題です。ですから、小売価格がいくらだったかということは問題ではありません。」
とのことですが、1枚12ドル程度の小売価格が設定されている米国国内盤の生産・販売によって著作権者、著作隣接権者の得られるライセンス料はいずれも、1枚2500円程度の定価が設定されている日本盤の生産・販売によって著作権者・著作隣接権者が得られるライセンス料と同等かそれ以上であるとのデータはあるのでしょうか。
 また、並行輸入を禁止できれば並行輸入品との競争のために邦楽CDよりは引き下げられている洋楽日本盤の価格が邦楽CDと同水準(1枚3000円程度)まで引き上げられる可能性が十分にあります。その場合になお、米国国内盤の生産・販売によって著作権者、著作隣接権者の得られるライセンス料はいずれも日本盤の生産・販売によって著作権者・著作隣接権者が得られるライセンス料と同等かそれ以上である状態を維持できるのでしょうか。
 
 また、「国会での大臣の答弁というのは非常に重いものです」、「実際に輸入が規制されるためには、輸入を規制している法律の要件に該当するかどうかが問題になります。その実務について大臣が国会で明確にすれば、法の運用はそれに従います」とのことですが、これも全くの誤りです。
 
 私はまさに法の運用に携わることを生業としているものですが、大臣答弁と全く異なる運用がなされている法律など枚挙にいとまがありません。例えば、プロバイダ責任制限法上の「特定電気通信」については大臣答弁である「1対1通信」説は、多くの裁判例において採用されていません。具体的な条文の文言解釈として無理があるからです。
 
 そもそも、法文上で特定の国を除外することが問題とされる場合に、運用面で特定の国を除外することが問題とならないというのは、不思議な発想です。法律の文言にかかわらず、大臣が答弁を行えば、恣意的に運用することが許されるのだという発想を政権政党である自由民主党の国会議員が公言しているということ自体、日本は法治国家ではない、近代国家ではないとして、日本の国際的評価を貶めることに繋がります。
 
 自由民主党にとって、音楽業界というのは、我が国の評価を貶めてまで守らなければならない存在なのでしょうか。
                                     草々

Posted by 小倉秀夫 at 12:17 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (3)

05/20/2004

河野議員へ

河野太郎衆議院議員へ下記のようなメールを出しました。


河野太郎先生へ

 前略 私は、著作権法に関するいくつもの訴訟事件等を担当する弁護士であるとともに、著作権法の注釈書の編集代表を務め、かつ、中央大学法学部において兼任講師として著作権法の法学演習を担当するものであります。先生が開設されているWebサイト中の、「ごまめの歯ぎしり メールマガジン版」という連載記事における2004年5月16日(日)分の記事、すなわち、「著作権法の改正」と題する記事を拝読いたしました。その結果、今回の著作権法改正案について先生に誤解があることがわかりましたので、不躾ながら、ご連絡させて頂く次第です。
 
  先生は上記記事の中で、
  
  今回の著作権法の改正は、こうしたことを防ぐための改正です。
一、日本国内で販売されているCDと同じモノが
二、先進国以外で製造販売されている場合(海賊版はどんなケースでもアウトですから除きます)
三、そして、発展途上国で生産されているCDに「日本での流通販売を禁止する」という表示がしてある場合、
この一、二、三を満たした商品を日本に輸入することをできなくするものです。

と述べられています。しかし、それは、今回内閣が提出した著作権法改正案の具体的な条項(新設予定の著作権法113条5項)の解説としては、正しくありません。

 まず、新設予定の著作権法113条5項は、先進国で製造販売されているCDと先進国以外で製造販売されているCDとを分けておりません。したがって、「先進国で製造販売されているCD」だからといって輸入禁止の対象外であるとすることはできません。
 また、価格面についても、中国本土を除くアジア諸国(今日、いわゆる邦楽CDの逆輸入版の発行元の多くは、香港又は台湾です。)における音楽CDの小売価格と米国における小売価格はだいたい同程度(アルバムCDで12ドル前後)であり、日本における音楽CDの小売価格の約半額程度であり、これが日本に並行輸入(「逆輸入」は並行輸入の一種です。)されると2000円前後の小売価格が設定されるというのが実情です。吉川著作権課長が読売新聞のインタビューで答えていた「価格差2割」という基準で言うと、洋楽CDの並行輸入品に関しては、そのほとんどがこの基準をクリアし、著作権者等の利益を損なうことになってしまうのが実情です。
 
 また、新設予定の著作権法113条5項は、CDに「日本での流通販売を禁止する」という表示がしてある場合に限定されません。外国で生産された特定の音楽CDについて、専ら日本国外で販売することを目的として生産されたものであるという事情を知った後に当該音楽CDを輸入しまたは販売目的で所持する行為を著作権侵害行為とみなすという規定です。どのような方法でそのような事情を知るに至ったかは全く問われません(参議院の文教委員会で共産党の小林議員が、国内販売禁止との表示がなされていることを輸入禁止の要件とすることを条文で明示した方がよいのではないかと質問したのに対し、文化庁次長はこれを拒絶したことからも、文化庁の意思は明らかです。)。
 したがって、新設予定の著作権法113条5項の施行日以降は、欧米のレコード会社から「私たちが米国国内で流通させている音楽CDは全て米国国内で頒布されることを目的として生産・出荷されたものです。従いまして、これら米国国内向けCD輸入し、日本国内で販売することは法律で禁止されています」との通知を受け取ったのちは、輸入盤の販売店としては、今後新たに米国国内盤を輸入できないのみならず、既に仕入れてしまっている米国国内盤につき即座に店頭から撤収し、廃棄等の措置を講じなければならないことになります。これに違反すると、日本のレコード会社がライセンス生産した音楽CDとの価格を賠償しなければならないのみならず、3年以下の懲役刑に処せられることになります。
 このように新設予定の著作権法113条5項では、仕入れのときに「日本国内での頒布が禁止されている」との事情を知らなくとも、そのような事情を知らされた後なおも頒布目的で米国盤を所持することを処罰する規定となっています(現行著作権法113条2項では「これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り」という文言を用いているのに、新設予定の著作権法113条5項ではそのような文言を用いていないことに注意して下さい。)。
 このため、仕入れを行った後に欧米のレコード会社から廃棄命令が出た場合の損失(「5メジャーは輸入権を行使するはずがない」などといっている著作権課の官僚や日本レコード協会の人間は一切補填してくれないでしょう。)を考慮したら、「日本国内頒布禁止」の表示がなくとも、合理的なレコード輸入業者や販売店は、洋楽CDの並行輸入品を仕入れることを差し控えざるを得ないということになります。かくして、日本の消費者は、洋楽CDの並行輸入品を入手する機会を失います。
 
 さらに、「日本国内で販売されているCDと同じモノ」云々という点も不正確です。
 欧米のレコード会社からライセンスを受けた日本のレコード会社により再生無保証ディスクにプレスされて出荷された実演については、国外で生産された正常なCDやアナログレコードは全て「日本国内で販売されているものと同じもの」として輸入禁止の対象となります。流通やエンドユーザーには全く別物として捉えられているこれらのものが法律上は同じものとして扱われるのです。
 
 以上に述べたところからも明らかなとおり、今回の著作権法改正案が原案通り可決・成立した場合、日本国内在住者は、通常のオーディオ機器での再生すら保証されていない欠陥商品を、世界一高い価格で購入する以外には選択肢が与えられないということになります。
 
 私は、河野先生がそのような世の中を望んでいるとは思いません。国会議員の方々が、具体的な法律案の条項を吟味し、シミュレートすることは滅多にないことを知っている官僚たちが、具体的な条文とはかけ離れた内容を国会議員の先生方に説明して、あたかも問題の少ない法改正であるかのように誤魔化しているだけなのだと思います。つきましては、先生には、今回の著作権法改正案について正しい理解をして頂いた上で、善良な洋楽愛好家を悲しませることになる法改正に与しないようにして頂ければ幸いです。
                            草々
 
 
 

Posted by 小倉秀夫 at 02:03 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

05/11/2004

Winny作者の逮捕に関して

昨日は、ネット業界はWinnyの作者の逮捕の話で持ちきりでしたね。私も、数件のマスメディアから取材を受けました。

どの社に対しても、Winnyの頒布という価値中立的な行為が著作権侵害という犯罪行為を助長した場合に幇助罪に問われるべきかという問題は、「中立的行為による幇助」という少し昔からある論点をどう解釈し適用するかという問題であって、議論が分かれるところであると答えておきました。その上で、犯罪行為によって利用されるかもしれないけどそれでもかまわないという未必の行為がある場合に中立的な行為であっても幇助責任を認めた場合、犯罪行為に利用される可能性を除去しない限り新たな商品・サービスを提供することができなくなり、科学技術の発展は阻害されるおそれがあるとの話も、幾つかのメディアにはいたしました。

なお、「中立的行為による幇助」という論点に関しては、九州大学の松生光正教授が姫路獨協大学時代に論文を書いておられるので、ドイツでの議論の紹介を含め、日本語で読むことができます。

また、安達光治「客観的帰属論の展開とその課題 」の注42は、この問題に関する概略を説明するとともに、熊本地判平成元年3月15日判例時報1514号169頁を「日常取引(中性的態度)による幇助は処罰すべきではないというテーゼを正面から認めたと評価できる判例として注目に値する」としています。

Posted by 小倉秀夫 at 02:13 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (3) | TrackBack (6)

05/09/2004

恩を仇で返す

国会議員のほとんどが、邦楽CDの国内還流防止措置という考え方に賛同してしまっているので、そのためのシステムが洋楽CDの並行輸入防止措置とならないように修正案を提示するなどしているわけですが、本当のところは、邦楽CDの国内還流防止措置という考え方自体がおかしいことはいうまでもないことです。

この考え方は、結局のところ、

 中国等の人民は、平気で海賊版を製作し、購入する
          ↓
 中国等の人民に対しては低価格で真正品を提供する
 
 日本国民は、ほとんど海賊版を製作もしないし、購入もしない
          ↓
 日本国民に対しては安心して高価格で新製品を提供する

という、いわばレコード会社たちの「恩を仇で返す」ような所業を法律で保護してやろうという不道徳な考え方だからです。

 そして、このような所業が是認される場合、「違法コピーが広く行われると、結局善良な消費者が損害を被ることになる」ということが全く真実味を持たなくなります。むしろ、「誰かが違法コピーを広く行ってくれないと、結局善良な消費者が損害を被ることになる」ということになってしまいます。

 同じことは、音楽配信サービスについても言えます。
 米国においては違法な音楽配信が広く行われているため、これに対抗するため、レコード会社等は、安価で使い勝手のよい音楽配信サービス(例えば、iTune Music Store等)にて自社が権利を有する楽曲を配信することを許可する。他方、日本においては違法な音楽配信サービスはそれほど普及していないため、レコード会社はこれに対抗する必要性を強く感ずることがなく、そのため、安価で使い勝手のよい音楽配信サービスにて自社が権利を有する楽曲を配信することを許可せず、レコード会社らが自ら出資した会社に高くて使い勝手の悪い音楽配信サービス(例えば、レーベルゲートやMora等)を提供するにとどめる。
 これでは、日本の消費者は、P2Pファイル交換ソフトなどを活用して大量に音楽ファイルの交換を行ったりしなかったことによって、却って自分たちの首を絞めたということができてしまいます。
 
 でも、それって、音楽業界にとって、全然望ましくないことなのではないでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 02:17 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (4)

It Ain't You, Babe.

 社団法人日本レコード協会、ユニバーサル ミュージック株式会社、東芝EMI株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、株式会社ワーナーミュージック・ジャパン、株式会社BMGファンハウス
、日本レコード商業組合は、平成16年5月7日付で、「日本の洋楽ファンの皆様へ」と題する声明を、日本レコード協会のウェブサイト以上で公開しています。そこでは、

私たちは、欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達に何ら不利益、不自由を与えることなく、今後ともこのような状況を維持し、さらに多くの洋楽レコードを提供してまいりますので、ご安心いただきますようお願い申し上げます

との記載があります。

 しかし、文化庁が「欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達」に「不利益、不自由を与える」権限を与えようとしているのは、欧米諸国のレコード会社であり、実演家であり、作詞家、作曲家たちであって、日本のレコード会社たちや、日本のレコード会社たちの業界団体である日本レコード協会、そして中小のレコード販売店の業界団体である日本レコード商業組合は、いずれにせよ「欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達に何ら不利益、不自由を与える」権限はないわけですから、そりゃ、「何ら不利益、不自由を与えること」はないわけです。そりゃもう、魚屋さんや八百屋さんが「私たちは、欧米諸国で製作され、日本に輸入された音楽レコードを楽しんでいただいている日本の音楽愛好家の方達に何ら不利益、不自由を与えること」はしませんからご安心下さいというのと同じように、全く無意味な宣言です。
 
 また、「私たちは、……今後ともこのような状況を維持し、さらに多くの洋楽レコードを提供してまいりますので、ご安心いただきますようお願い申し上げます」と宣言されても、今問題となっているのは、文化庁が企む今回の著作権法改正によって、日本レコード協会傘下のレコード会社が国内でライセンス生産した音楽CDや、日本レコード協会傘下のレコード会社が輸入し、日本レコード商業組合傘下のレコード店等に卸した音楽CDとは別ルートで行う洋楽CDの輸入・販売が禁止されるのではないかということなのですから、日本レコード協会傘下のレコード会社が国内でライセンス生産した音楽CDや、日本レコード協会傘下のレコード会社が輸入ないし国内生産した洋楽レコードを日本レコード商業組合傘下のレコード店がさらに提供していきますといわれても、全然安心などできないわけです。ブランド品の輸入代理店が「これからも海外生産品をどんどん輸入して国内で販売しますから、並行輸入を禁止する法律が成立することになったとしても、安心して下さい」というのと同じくらい意味がないわけです。
 
 消費者を安心させたければ、少なくとも洋楽CDの並行輸入を阻止するために欧米のレコード会社が活用することができないような条項に修正するように、日本レコード協会や日本レコード商業組合も洋楽ファンと一緒になって文化庁や衆議院議員の諸先生方に働きかけることをまずすべきです。
 もしくは、輸入禁止権を行使できることになる欧米のレコード会社等に対して、「日本の音楽ファンに対して直接『著作権法改正案が可決施行されても、我が社が権利を保有している音楽CDについては、何人も自由に並行輸入してくれて構わない』との声明を出してもらえないか」と働きかけるべきでしょう。
 
 今回の声明からは、むしろ、日本レコード協会傘下のレコード会社が国内でライセンス生産し又は欧米から「直輸入」した音楽CD以外の洋楽CDは全て国外頒布目的商業用レコードであるということを、知られた輸入業者及びレコード販売店に通知することによって、「日本レコード協会傘下のレコード会社を経由せずに国内に輸入される洋楽CD」(いわゆる「並行輸入」品)を禁止してしまおうという気なのではないかという疑念すら生まれてきます。

Posted by 小倉秀夫 at 01:29 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1)

05/04/2004

知的財産推進計画の見直しに関する意見募集

「知的財産推進計画の見直しに関する意見」が募集されていたので、仮案を作成してみました。

一 全体について
  既に一定の商業的価値を有している知的財産の保護と将来的な知的財産の創造の促進とは、しばしば相矛盾し衝突する。日本が今後知的財産立国として栄えることを目指す場合、既に一定の商業的価値を有している知的財産の保護については、将来的な知的財産の創造の促進の妨げとなるものについては、せいぜい諸外国と同程度かできればそれ以下に抑えることこそが賢明である。現在の政治的な「声の大きさ」に目を奪われて既に一定の商業的価値を有している知的財産の保護を過度に強化することは、将来的な知的財産の創造の促進の妨げになり、未来に禍根を残すことになる。戦略本部において「知的創造サイクル」との言葉が語られるとき、資本的な側面のみがクローズアップされるが、若い世代が「クリエイター」としての技量を獲得しなければ、如何に資本的な側面を保護しようとも、知的創造は促進されないのである。

二 クリエーターの育成
1 日本国民、特に若い世代が将来優れたクリエーターになる為には、よい作品にたくさん触れることが必要である。従って、図書館、レンタル業者、中古品販売店等、国民が無料であるいは安価に作品に触れる機会を提供する事業者等を積極的に保護することが知的財産の創造基盤の整備には不可欠である。なお、これらの事業者を撲滅して国民が1つの作品に触れるために支払わなければならないコストを上昇させても、国民が芸術・娯楽作品に触れるために費やすことができる金額の総額が大幅に増えることが期待できない以上、現在のクリエーターの収入を大幅に増大させることには繋がらない。国民が触れることができる作品の数を大幅に減少させるだけである。
2 優れたクリエーターになるためには、既存の作品から多くを学ばなければならない。既存の作品を模倣したり、自分なりにアレンジしたりして、自分なりの作風を確立する──ほとんどのクリエーターにとってそのような時期が不可欠である。ところが、現行法では、私的使用目的の改変であっても同一性保持権侵害にあたるという見解が根強い。したがって、私的使用目的の改変は同一性保持権侵害に当たらないことを著作権法上に明記することが、優れたクリエーターの育成のためには不可欠である。
 また、同様の理由で、国や地方自治体が所蔵している絵画等の芸術作品を若きクリエーターが模写、模倣する機会を設けるべきである(クリエーターの育成に熱心なフランス等では既に当たり前になっていることである。)。
3 優れたクリエーターといえども、全くの「無」から優れた作品を作り出すことは困難である。多かれ少なかれ、意識的であれ無意識的であれ、過去に他人が創作したものを取り入れつつ作品を作り上げているのが実情である。もし、新たな作品を創作するにあたって、過去に他人が創作したものを一切取り入れてはならないとしたら、ほとんどのクリエーターは新たな作品をほとんど創作することができなくなることだろう。この傾向は、著作権の保護期間が長くなり、かつ、インターネットの発展により誰もが膨大な数の著作物にアクセスする可能性を有するに至った現代において特に顕著である。
  このような弊害を除去し、優れたクリエーターが新たな作品を安心して創作できるようにするためには、過去に他人が創作したものを取り入れつつ新たな作品を作り上げる行為は原則として著作権(翻案権)侵害にはあたらないこととし、取り入れられた過去の作品の著作権者にはせいぜい報酬請求権を付与するという方向で法改正を行うべきである。特に「パロディ」や「オマージュ」表現の自由化は、サブカルチャー部門の発展のためには必要不可欠である。
4 日本では、エンターテインメント企業は膨大な作品を著作権・著作隣接権によって囲い込むことには熱心だが、それを活用し続けることには熱心ではない。今日多くの作品がエンターテインメント企業のために死蔵されてしまっている。知的財産は、クリエイティブな人々の目に触れるなどして享受されることにより、新たな知的財産を生み出すことに繋がっていくことを考慮すれば、この「死蔵」問題を克服することは、将来的な知的財産の創造の促進する上で重要な問題である。
  この問題を克服するためには、権利者又は権利者から許諾を受けた者により発行されなくなったときは、自由に複製、公衆送信(送信可能化)できるように法改正すべきである。
5 「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」においても、人材育成のための施策はいくつか提示されている。しかし、それらは、大衆音楽、映画、漫画、アニメ等のサブカルチャー分野の人材の育成方法としてはいずれも的はずれなものである。    

三 環境の整備
1 日本では、ミュージシャンはライブ活動では生活できないとの声を聞く。そうだとすると、ミュージシャンは定期的に新作を発表し、音楽CD等を製作しなければならなくなる。新作のCD等がヒットしなければ、旧作が好きだというファンが幾らいても、廃業に追い込まれることになる。レコード会社等としては次々と新しいミュージシャンを開拓しては古いミュージシャンを切り捨てればいいだけの話であるからさしたる問題とはならないが、ミュージシャンとしては死活問題である。
  このような問題を克服するためには、日本においても、ライブ活動でアーティストの生活費等を稼ぎ出せるようにすることが必要である。しかし、そのために壁として立ちはだかっているのは、日本国内における会場使用料の高さである。だとすれば、国や地方公共団体が運営している質の高い音楽ホール等を、大衆音楽等におけるライブ活動にも活用させるとともに、その使用料を、他の先進諸国における会場使用料と同程度か又はそれ以下に抑えることが有益である。
  
四 国民の知的財産意識を向上させる
1 国民の知的財産意識を向上させるためには、知的財産権諸法によって規制される範囲を国民の常識に合致させることが肝要である。エンターテインメント業界の声にのみ耳を傾け消費者の意向を無視して新たな知的財産権を創設した場合、これを守らなければならないという意識が国民に根付かないのは当然である。「中古品の販売は犯罪である」「正規品の並行輸入は犯罪である」「図書館がベストセラーを貸すのは問題だ」などという常識とかけ離れたことを幾ら教育により植え付けようとしても、それが根付かないのは当然なのである。
2 国民が日常的に行っている行為でも厳密にいえば著作権侵害とされている場合が少なくない。このようなことを国民が知れば、国民は知的財産権諸法など守ろうという意識が薄れていくのは当然である。そのような事態を回避するためには、「フェアユース」規定を創設し、国民の知的財産権意識に法律を近づけることが肝要である。

Posted by 小倉秀夫 at 02:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

05/02/2004

国民の声

レコード輸入権の創設と書籍・雑誌への貸与権の付与については、私が知る限りにおいては、世論調査は行われていませんね。マスメディアの中で、次のような質問項目で世論調査を行ってくれるところはないでしょうか。

問1 あなたは並行輸入についてどう思いますか。
 a) およそ全ての工業製品について並行輸入を禁止すべき
 b) 音楽CDについては全面的に並行輸入を禁止すべき
 c) 邦楽のアジアでのライセンス生産品の並行輸入に限定して禁止すべき
 d) 一切並行輸入は禁止すべきではない

問2 あなたは工業製品を貸し借りするということについてどう思いますか。
 a) 貸与というのはその製品の製作に関与した人に利益を還元しないから、全ての工業製品について、使用したければお金を出して購入すべきであって、業者や公共機関から借りてすますというのは間違っている。
 b) 作家や漫画家というのは、発明家やデザイナーや工場労働者とは違って尊い存在であるから、書籍や雑誌については、読みたければお金を出して購入すべきであって、図書館や貸本業者から借りてすますというのは間違っている。
 c) 書籍・雑誌を含めた工業製品一般について、一時的にしか使用しないものを借りて済ますことが間違っているとは思わない。

Posted by 小倉秀夫 at 03:20 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

04/30/2004

質問して欲しいこと(追加)

先日の参議院での質疑を見て、質問して欲しいことが増えました。

 文化庁の素川氏に聞いてもらいたいこと
 
 小林紀子参議院議員の質問に対し、「表示ということを法律上の規定に要件として書くということについては、その表示、具体的にはシールとか印刷でございますけれども、それは、権利者以外の者が途中で張ったり若しくは張ったものがどこかの段階で誰かに消されてしまったりということになった場合に、そこの還流防止措置の法的安定性というものについて問題が生ずるというふうな結論をしたわけでございます」と答弁しているが、
  「表示ということを法律上の規定に要件として書く」か否かで次の場合に具体的にどのような差異が生ずるのか。
  1) 権利者以外の者が途中で「日本国内頒布禁止」のシールを貼った場合
  2) 権利者が貼った「日本国内頒布禁止」のシールを権利者以外の者が途中で剥がした場合
  
 経済産業大臣に聞いてもらいたいこと
 
 邦楽CDのアジアにおけるライセンス生産品の並行輸入品の流通量は2002年度で邦楽CD全体の0.3%、2007年度の予測についても1%前後であるが、今後他の業界から、「アジアから安い商品が既に0.3%も入ってきているし、3年後には輸入量が全体の1%にもなってしまう。このままでは我々の経済的利益に大きな損害が生じてしまうから何とかして欲しい」と泣きつかれたら、同じように法改正を行って並行輸入を禁止する予定なのか。

 そのような予定がないとした場合、音楽CDについてのみ特別扱いする理由は何か。


なお、
1)については、「表示ということを法律上の規定に要件として書く」か否かにかかわらず、税関はとりあえず当該音楽CDを国内頒布目的商業用レコードとして取り扱う(但し、実際に水際で差止められるのは、権利者から、その利益を不当に害することを疎明する資料とともに輸入差止めの申立てがなされていた場合に限定される。)ことになる。

2)についていえば、
  自らシールを剥がした者が行った輸入・所持については
    表示を法律上の要件とした場合・・・両説あり得る
    表示を法律上の要件としない場合・・輸入・所持は違法

  シールが剥がれた音楽CDを輸入・所持した者については
    表示を法律上の要件とした場合・・・輸入・所持は適法
    表示を法律上の要件としない場合・・シールが剥がされたものであるとの警告を受けた後に輸入・所持を継続すれば違法

という差異が生じうるとは思います。
で、どちらが法的安定性という意味で問題があるかというと、「表示ということを法律上の規定に要件として書」かない場合ですね。「表示ということを法律上の規定に要件として書」いておけば輸入業者も販売店も、仕入れ先と契約する段階で表示の有無を確認すれば、後になって、「御社が××から仕入れた音楽CDには日本国内頒布禁止のシールが貼ってあったのに××がこれを剥がしていたものである。したがって、在庫品を直ちに廃棄されたい」なんて警告状が来ても、廃棄しないで済むわけですから。文化庁案ですと、シールが貼っていないことを確認して仕入れを行っても、「シールが剥がされていた」ことを後に知らされると、それ以降頒布目的でその音楽CDを所持していること自体が犯罪とされてしまいますから、輸入業者も販売店も何を信頼して仕入れを行えばよいのか訳がわからなくなりますね。
 それに、途中で剥がされるのが嫌なのであれば、剥がされないようにプラスチックケースに「日本国内頒布禁止」のマークをプレスしてしまえばよいわけですし、表示を消去することを違法とする条文を創設することだって簡単ですからね。

まあ、文化庁の著作権課の方々は、そういうふうに輸入業者や販売店が、萎縮して自主的に洋楽CDの米国からの並行輸入品を取り扱わないようになっていくことを期待しているのでしょうけどね。
 

Posted by 小倉秀夫 at 12:30 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/27/2004

テレビ取材

著作権法改正騒動の関係で、某民放の取材を受けました。

私はテレビカメラの前では上がってしまう程度の純情さをまだ失っていないので、ぎこちないしゃべり方になってしまっているのはちょっとなんだかなあという感じです。

でも、ここへ来て、今回の著作権法改正案の「本丸」が洋楽CDの並行輸入にあることに気が付いて、これは危ないぞと感じ取ってくれる人が増えてきたのには、多少とも希望が持てます。

あとは、この声が国会議員の皆様にどこまで届くのかといったところです。


Posted by 小倉秀夫 at 05:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (2)

04/24/2004

CD購入枚数


シングル売上枚数
アルバムCD売上枚数
オーディオレコード売上げ総額($)
音楽ビデオ売上額($)
GDP($)
レコード・ビデオ売上げ/GDP
日本
0.61
1.80
36.1
3.2
31,267
0.13%
アメリカ
0.03
2.81
43.1
1.0
36,652
0.12%
イギリス
0.88
4.80
48.0
1.3
26,279
0.19%
フランス
0.68
2.19
33.5
1.4
24,073
0.14%
ドイツ
0.48
2.17
24.2
0.8
29,422
0.09%
オーストラリア
0.62
2.59
25.9
1.7
18,801
0.15%
台湾
0.03
0.74
6.4
0.8
12,564
0.06%
香港
0.03
1.49
13.3
1.4
24,020
0.06%

日本レコード協会が、「日本のレコード産業 2004」を公表しています。
その中で、2002年度のレコード売上げに関する国際比較がなされていましたので、主要国についてデータを抜き出した上、人口当たりの売上げ枚数等と、GDPに占める売上げ総額等を表にまとめてみました。


これを見ると、日本人は、欧米諸国と比べて、音楽CD等にお金は注ぎ込んでいるのに、購入枚数は少なくなってしまっているということがわかりますね。
また、イギリス並みに値段を下げると、イギリス並みに1人あたりの購入金額が増えるかもしれないですね。

と同時に、もともとこの程度の枚数しか売れていないのでは、輸入権問題が盛り上がらないのも宜なるかなという絶望感も漂ってきます。

Posted by 小倉秀夫 at 06:44 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

04/23/2004

海外のDVDを見ると

レコード輸入権の話題ばかり語っていると殺伐としてしまうのでたまには違う話もしましょう。

一番町綜合法律事務所監修「PC&ネットの違法合法ジャッジ!」という本が宝島社から出ています。

これは凄いです。我々IT系の弁護士には思いつかないような「ジャッジ!」が盛り込まれています。

例えば、猪狩俊郎弁護士は、

「DVDソフトの購入に際して、購入者は、使用許諾契約によって、DVDソフトの使用をその国内及び地域に限定すること、もしくはDVDソフトを国外及び地域外で使用しないことに同意しているものと思われます」「従って、海外で購入したDVDソフトを国内で鑑賞することは、使用許諾契約違反として著作者から損害賠償(民法415条)を請求されるおそれがあります」

なんてことを書いています(158頁)。

しかし、使用にあたって「複製」を伴うパッケージソフトですらシュリンクラップによる使用許諾契約の成立には争いがある(おそらく成立を否定するのが多数説)というのに、どうしてたかだかDVDソフトを買う際に、消費者は「DVDソフトを国外及び地域外で使用しないことに同意している」なんて思われてしまうんだか、意味不明ですね。

っていうか、

「DVDソフトは『著作物』であり、購入者はDVDソフトを購入したとしても、著作権を侵害しない範囲、または使用許諾契約があればその範囲を侵害しない範囲での使用許諾権を得た(同法63条1項、2項)に過ぎないと考えられています」

って書いてあるのですが、映画の著作物の複製物の所有者が、公の上映にはあたらない態様で上映する行為はそもそも著作権を侵害しようがないのですから、63条の許諾の有無や条件など問題になりようがないんですけどね。この弁護士さんは、著作権者が一方的に宣言をすれば、使用許諾契約なるものがユーザーとの間で結ばれ、著作権法上著作権者が専有していない行為すらユーザーが自由に行うことは法的に許されなくなるって本気で考えているのでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 02:18 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

04/22/2004

付帯決議

著作権法改正案につき、参議院で付帯決議が行われたことを評価している見解がどうもあるようです。

ただ、付帯決議の法的拘束力については、

東京地判昭和54年3月29日訟月25巻7号1809頁が

法案審査の際、国会の両議院の各地方行政委員会が行つた付帯決議について、当該各決議は各委員会の一般的希望ないし意見の表明にすぎず、関係行政庁に対する法律上の拘束力を有しない
としていますし、

最判平成14年1月31日民集56巻1号246頁における町田裁判官の「反対意見」のなかにも、

法が世帯の生計維持者としての父のいない児童すべてを支給対象児童とするものではないことは,その文言上からも明らかであり,また,このことを前提に,法の議決に当たり衆議院の社会労働委員会が,政府は父と生計を同じくしていないすべての児童を対象として児童扶養手当を支給するよう措置することを求めていること(付帯決議が法的効力を持つものでないことは,いうまでもない。)によっても裏付けることができる。

なんてフレーズがあったりしますし、やはり法的拘束力がないことはいうまでもないようですね。

Posted by 小倉秀夫 at 06:41 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

RIAAのパブコメ

昨年末の著作権法改正に関するパブリックコメント(あの、文化庁が、賛成者の数と反対者の数を集計して公表しただけでお茶を濁した、あれです。)に関して、RIAA(全米レコード協会)が寄せたコメントがネット上で流通しているようです。

そこには、

We thus strongly caution against the adoption of discriminatory legislation, and call upon the Government to provide rights to control importation with regard to all repertoire.

なんて記述もあったりして、RIAAは洋楽についても輸入コントロール権を設定せよと要求しているようです。洋楽CDの並行輸入に対して輸入権を行使する気がアメリカのレコード会社にないのであれば、わざわざ日本政府にパブコメを送る必要などないように思えるのですが、どうしたものでしょうか?

まあ、吉川著作権課長は、RIAAがこういうコメントを寄せてきたことが国民にばれたら「5メジャーは輸入権を行使しないといっている」等という前提が崩れる(参議員議員は簡単に騙されてしまったようですが、相変わらず、5メジャーは何も言っていないのが真相ですからね。)から、「パブコメの具体的な内容は公表しない」という異例の措置に出たのでしょうか?


Posted by 小倉秀夫 at 08:56 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (12)

04/20/2004

国会での質疑

著作権法改正案についての参議院文教委員会での質疑が本日ありました。

 しかし、おしなべて質疑が下手ですね。

 今回は、洋楽CDの並行輸入が阻害されるのではないかということが最大の論点なのですから、輸入業者が米国等で日本で売れそうな音楽CDを見つけてきてから、海外の業者と契約し、日本に輸入し、レコード販売店に卸し、レコード販売店がこれを店頭に置いて消費者に販売するまでの過程で、それぞれの関係者が判断を迫られる場合に、条文に即してどのような判断を行うことが合理的であろうかということをシミュレートできれば、どのような質問をすべきであったかは自ずと明らかだったと思います。

(今回の国会での質疑を見ても、輸入・販売業者としては、どのような音楽CDについては輸入・販売を控えなければいけないのか全く分からないと思います。輸入・販売業者から事前に相談されても、まともな弁護士は答えようがないでしょうし。)

今回の質疑ではっきりしたのは、音楽CD上にシールを貼らなければならない云々というのは、「そうしなければ基本的に『情を知って』いたことにつき著作権者等が立証責任を果たせないから」というのが唯一の根拠だということですね。でも「情を知って」いたことを立証するのであれば、権利者から輸入・販売業者に内容証明郵便で警告状を送りつければ済んでしまう話ですね。「情を知って」という文言は、みなし侵害規定の領域ではよく使われる文言ですが、それらの場合いずれもシールなんか貼りませんし(だいたい、「違法複製物です」なんてシール貼るわけないし。)。

あと、文化庁の役人は、日本国内での頒布が禁止されている旨を表示したものに限り輸入禁止の対象とするように条項を修正してはどうかとの質問に対し、それでは法的安定性を害する云々という答弁をしていましたが、これは全く詭弁ですね。

権利者以外の者がシールを貼るなどした場合は、実際には輸入・所持等は禁止されない(禁止されているのではないかとの誤解は生んだとしても)という点は、表示を明示的な要件としようとしまいと何ら変わりはないです。

また、権利者以外の者がシール等を剥がしてしまった場合には、私の修正案のように「表示したこと」まで「情を知って」の対象に含めてしまえば、禁止の対象とはならないわけですから、法的安定性には何の問題もありません(それがいやなら、シールなんかで対応せずに、CD本体に印刷してしまえばいいわけですし。)。

役人がこういう詭弁を弄して条文を曖昧にしたがるときって、なんか裏があると疑うのが通常ですね。

また、文化庁の役人は、輸入のときに情を知っていたか否かが問題となるようなことを言っていましたが、それも客観的な条文の文言と食い違っています。そういうふうに規定したいのであれば、113条2項のように「これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、」と規定すればよいのです。

Posted by 小倉秀夫 at 09:47 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (2) | TrackBack (3)

04/18/2004

質問して欲しいこと

 著作権法改正案の審議が始まるわけですが、下記事項を質問してくれる議員さんはおられないものでしょうか?
 
 財務省に質問して欲しいこと
 
 下記の各場合、米国のレコード会社から特定の音楽CDの輸入差止め申請がなされたとき、税関当局としては、当該音楽CDが国外頒布目的商業用レコードであるとの情を輸入業者が知っているものとして取り扱うのか。
 
 1) 当該音楽CDのジャケットに「US Version」と印刷されている場合
 2) 当該音楽CDのジャケットに「US Only」と印刷されている場合
 3) 当該レコード会社が当該輸入業者に送達した内容証明郵便(「当社が並行輸入を禁止している音楽CD一覧」が記載されており、その中に当該作品を含んでいるもの)
 4) 当該レコード会社が当該輸入業者に対して送達した内容証明郵便(「当社が米国内で頒布している音楽CDは専ら米国内で頒布されることを予定しており、日本国内に輸入することは禁止されております」旨の記載のあるもの)の写しが提出された場合
 5) 当該レコード会社の代表者が「当社が米国内で頒布している音楽CDは専ら米国内で頒布されることを予定しており、日本国内に輸入することは禁止されております」旨答えているインタビュー記事が掲載されている日本経済新聞の写しが提出された場合
 6) 米国盤とは全く異なる価格で頒布されている日本盤が提出されたとき
 
 米国のレコード会社から特定の音楽CDの輸入差止め申請がなされた場合、「当該国外頒布目的商業用レコードが国内で頒布されることにより当該国内頒布目的商業用レコードの発行により当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる」として輸入を差止めるか否かをどのような基準に基づいて判断するのか。また、その判断のために、差止め申立者に対し、どのような資料の提出を求めるのか。
 
 法務省刑事局に聞いてもらいたいこと
 
 ジャケット等に「日本国内頒布禁止」との表示のない音楽CDの並行輸入品を販売している大手レコードショップが、当該音楽CDは国外頒布目的商業用レコードであるから直ちに廃棄するように当該音楽CDを発行している米国のレコード会社から要求されたにもかかわらず、在庫品を店頭から撤去することなく販売し続けた。すると、当該米国レコード会社が当該大手レコードショップを著作権法違反の容疑で刑事告訴した。
 
 上記事例において、検察としては、不起訴(嫌疑なし)として取り扱うのか。
 
 
 法務省民事局に聞いてもらいたいこと
 
 文化庁著作権課の吉川課長は、今回の著作権法改正がなされても洋楽CDの並行輸入を阻止するのに輸入権が活用されることはない旨再三述べている。
 大手レコードショップが、吉川課長の発言を信じて洋楽CDの並行輸入品を大量に仕入れて店頭に置いていたところ、米国のレコード会社から並行輸入品を直ちに廃棄するようにとの警告を受け、廃棄を余儀なくされた。この場合、当該レコードショップは仕入れに要した費用や廃棄に要した費用等の損害を被ることになるが、この損害については国家賠償の対象となるのか。
 
 内閣法制局に聞いてもらいたいこと
 
 今回の著作権法改正は、これにより創設される輸入権の権利者のうちの特定の類型に属する者(この場合、洋楽CDの著作権者等)が権利行使を控えることを前提に、法案が起草されている。このような前例はあるのか。

Posted by 小倉秀夫 at 02:10 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (3)

04/12/2004

修正案再び

文化庁の吉川著作権課長よりは国会議員の方々の方が道理がわかる可能性はあるのではないかと思い、法案修正に関する意見書案を作成してみました。近いうちにFAXで議員の方々に送ろうかとも思うのですが、間違っている部分とかあったらご指摘頂ければ幸いです。

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著作権改正法案の修正のお願い

 文化庁が今国会において既に提出済の著作権法改正案が修正されることなくそのまま可決されると、邦楽CDの日本国内還流が阻害されるだけでなく、洋楽CDの並行輸入も阻害されてしまいます。つきましては、上記法案を洋楽CDの並行輸入の阻害には繋がらないような条項に修正して頂きたく、我々の代表者である貴職に対しご要請申し上げる次第です。

 これまで文化庁は、国会議員の方々に対しても、今回の著作権法改正は邦楽CDの日本国内への還流を防止するためのものであるかのごとき説明を行ってきたと聞き及んでおります。しかし、文化庁が実際に起草した改正案は、英米のメジャーレーベルに対し、米国国内向けに生産された音楽CDの日本国内への並行輸入を禁止する権限を与えたものとなっています(内閣衆質一五九第三三号)。その他、文化庁が国民に説明していることと、実際の改正案との間には大きな隔たりがあります。

 しかし、私たちがこれらの点を幾ら指摘しようとも、あるいは対案を提示しようとも、文化庁は、洋楽CDの並行輸入の阻害に繋がらないようにするための一切の修正に応ずることを拒絶しています。このようなことから、文化庁の真意が、本当に邦楽CDの日本国内への還流を防止することにあるのか、邦楽CDの日本国内への還流防止にかこつけて洋楽CDの並行輸入の阻害にあるのか、わからなくなっています。そのため、国会議員の皆様に直接、法案の修正をお願いする次第であります。

 洋楽CDの並行輸入との関係でいえば、この改正法案の問題点は下記のとおりです。

1.この法案では、「国外頒布目的商業用レコード」を、「当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの」と定義しています。したがって、音楽CDのジャケット等に「日本国内頒布禁止」等の文字が印刷されていなくとも、発行者が「当該音楽CDは専ら国外において頒布することを目的」として当該音楽CDを発行していれば、それは「国外頒布目的商業用レコード」となります。そして、発行者の意図を何らかの形で輸入業者または販売業者に知らしめることができれば、当該輸入業者または販売店は、「情を知っ」たとして、爾後当該音楽CDを輸入しまたは販売目的で所持することが禁止されます。具体的には、米国にて新作CDを発行するたびごとに、主要な音楽CD輸入業者及びCD販売店に対し、米国国内向け商品は専ら日本国外において頒布することを目的としている旨通知すれば、通知を受けた輸入業者または販売店は、「情を知って」いることになります。それどころか、同一内容の音源について米国国内向けと日本国内向けとが別の仕様、価格で出荷されている場合には、米国国内向けCDは「当該音楽CDは専ら国外において頒布することを目的」とするものであると認定される余地は十分にあります(この場合、輸入業者ないし販売店は当然にその「情を知って」いたと認定されると予想されます。)。

 この点について、「当該音楽CDは専ら国外において頒布することを目的」としている旨が音楽CDのジャケット等に印刷されているされているものに限定して欲しいとの要請が文化庁著作権課には寄せられています。しかし、文化庁著作権課の吉川課長は、民主党の川内議員の目の前で、この提案を拒絶しています。法技術的に困難であるというのが表向きの理由のようです。しかし、「当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするものであることが政令で定める方法により表示されているもの」と法案を修正した上で、著作権法施行令において、ケース等の外側から見えるところに、例えば6ポイント以上の大きさで、「日本国内頒布禁止」との文言を日本語で印刷することにすることが法技術的に困難であるとはにわかに信じがたいです。

2.また、この法案では、「当該国外頒布目的商業用レコードが国内で頒布されることにより当該国内頒布目的商業用レコードの発行により当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限り」、国外頒布目的商業用レコードの輸入または販売目的所持が違法とされることになっています。しかし、どのような場合に「当該国内頒布目的商業用レコードの発行により当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害される」ことになるのか非常に不明確です。新設113条5項により著作権侵害ないし著作隣接権侵害行為を行ったとみなされる場合には、損害賠償義務を負うばかりでなく刑事罰を科せられることになりますから、輸入業者または販売店としては、国外頒布目的商業用レコードと認定される可能性のある商品についてはその輸入または販売を控えざるを得ないということになります。

 この点につき、文化庁は、「当該国内頒布目的商業用レコードの発行により当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる」国外頒布目的商業用レコードであるか否かは税関がこれを判断して輸入を阻止するから、「不当に害される」か否かの判断を間違えたが為に輸入業者や販売店が処罰されるという事態が生ずるわけがないと答えています。
 しかし、著作権者等としては、税関に輸入差止申請を行って申請を却下されるリスクを背負うより、輸入差止めを行うことなく主要な輸入業者及び販売店に輸入・販売の即時停止を通告することが予想されます。この方が、輸入業者等が萎縮的に行動する分、輸入・販売が中止される範囲が広がるからです。

 また、著作権者等が税関に洋楽CDの輸入差止めを税関に申請した場合に、税関としては、当該音楽CDが国外頒布目的商業用レコードであって、かつ、当該洋楽CDが「国内で頒布されることにより当該国内頒布目的商業用レコードの発行により当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる」かどうかを判断しなければならないということになります。しかし、税関当局が何をもって「当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる」か否かを判断するのか全くもって不明です。この点、吉川著作権課長は、税関には国外頒布目的商業用レコードの輸入を広めに差し押さえてもらうように調整し、輸入業者の側で不満があったら裁判で争ってもらえばよいと川内衆議院議員の前で答えていました。しかし、裁判には時間も費用もかかります。特に流行歌の場合、輸入禁止処分の取消を求める訴訟で勝訴判決を得るまでの間に商品価値が大いに損なわれてしまいます。したがって、税関から輸入差止め処分を受ける虞があるものについては、輸入業者は最初から輸入を差し控えることになることが予想されます。

 なお、文化庁によるミスリーディングな説明を受けたために、物価の安いアジア諸国からの邦楽CDの逆輸入についてはレコード会社等の「利益が不当に害されることとなる」が、米国等からの洋楽CDの並行輸入についてはレコード会社等の「利益が不当に害されることとな」らないと誤解されている先生方もおられると思います。しかし、例えば2004年4月17日付「Billboard」紙アルバムTop20にランクされている洋楽CDのうち14作品については日本のレコード会社が日本国内向け商品をライセンス生産しており、その小売価格は米国での小売価格の1.47~2.21倍(平均約1.8倍)もしています。そのため、米国国内向け洋楽CDの並行輸入品は日本国内向けCDの25~53%(平均約39%)オフで販売されているというのが実情です。したがって、国外頒布目的商業用レコードと国内頒布目的商業用レコードの価格差が不当加害性の重要な考慮要素となる場合には、米国からの洋楽CDの並行輸入によりレコード会社等の「利益が不当に害されることとなる」とされる危険性が十分にあります。

 文化庁原案には上記のような問題点があるため、国内で頒布されると国内頒布目的商業用レコードの発行により著作隣接権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されるとして輸入または所持が禁止される国外頒布目的商業用レコードを著作隣接権者等の申請により文化庁長官が指定する方向での修正案が提案されました。法技術的には、例えば、「……当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの(以下この項において「国外頒布目的商業用レコード」という。)を国外において自ら発行し、又は他の者に発行させている場合において、当該国外頒布目的商業用レコードが国内で頒布されることにより当該国内頒布目的商業用レコードの発行により著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されると文化庁長官が指定したときは、当該国外頒布目的商業用レコードを、情を知つて、国内において頒布する目的をもつて輸入する行為又は当該国外頒布目的商業用レコードを国内において頒布し、若しくは国内において頒布する目的をもつて所持する行為は、それらの著作隣接権を侵害する行為とみなす。」と新設113条5項本文の文言を修正した上で、著作権法施行令にて、指定または指定解除の申請方法、指定基準、告示方法等を定めれば足ります。
 文化庁の吉川著作権課長は、文化庁の権限を増大させるような改正に賛同が得られるはずがないという理由で、この提案を一蹴しました。しかし、英米のメジャーレーベルの経営者は日本の消費者の利益を損なうことは決して行わない善人ばかりであるが、日本の国会議員は国民の利益をそっちのけで権限論争に明け暮れる悪人ばかりであるという吉川著作権課長の現状認識に私たちは賛同することはできません。

3. 今度の著作権法改正によって規制しようとしているのは、日本のレコード会社がレコード製作者としての著作隣接権を有しているレコードについて日本国外で適法にライセンス生産されたCDが日本国内を頒布目的で輸入しまたは頒布することです。それ以上の行為を規制することは、今回の著作権法改正の趣旨に賛同されている国会議員の諸先生方の間でもコンセンサスが得られていないことと存じます。すなわち、著作隣接権者が自ら国内頒布目的商業用レコードを発行し、かつ、著作隣接権者が他の者に国外頒布目的商業用レコードを発行させた場合についてのみ、国外頒布目的商業用レコードの輸入等を禁止できることとすれば、立法目的を果たすことができます。新設113条5項本文は、「国内において頒布することを目的とする商業用レコード(以下この項において「国内頒布目的商業用レコード」という。)を自ら発行している著作隣接権者(但し、法第97の2第1項の権利を有する者に限る。)が、当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの(以下この項において「国外頒布目的商業用レコード」という。)を国外において他の者に発行させている場合において……」と規定すれば、上記立法目的を果たすことができ、かつ、過剰な規制となることを防ぐことができます。この条項であれば、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第4条1項並びに世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書1-C知的所有権の貿易関連の側面に関する協定第3条、第14条が規定する内国民待遇の原則に反しません。
これに対して、吉川著作権課長は、レコード輸入権をレコード製作者にのみ付与し、実演家や著作権者(作詞家、作曲家等)に付与しないこととした場合、実演家や著作権者が黙っているわけがないとして、これを一蹴しました。しかし、著作権者や実演家がレコード製作者とは独立してレコード輸入権を行使するという事態はそもそも想定外だったはずです。それに、レコード製作者の意思にかかわらず、著作権者が実演家が輸入権を行使して洋楽CDの並行輸入を禁止できるということであれば、日本レコード協会が傘下のレコード会社をして関連のメジャーレーベルに輸入権を行使させないことを約束しても、英米の作詞家、作曲家、実演家が並行輸入を阻止するために輸入権を行使すれば、洋楽CDの並行輸入は許されないこととなります。これでは、文化庁が「レコード輸入権を創設しても洋楽CDの並行輸入には何らの影響もない」とする数少ないよりどころである日本レコード協会の「念書」はその意味を失うことになります。

 この問題は、我々洋楽の愛好者にとって大変重大な問題となっています。業界団体と官僚の言い分を丸飲みし、何ら修正を加えることなくこの改正案に賛成して法案を可決させた議員のことは、我々はいつまでも語り継ぎ、国政選挙の際に重要な判断要素とすることでしょう。米国国内向けに生産・出荷された音楽CDを購入できるシステムというのは、多くの洋楽ファンにとって、なくてはならないものとなっているからです。その理由は大きく2つに分けることができます。

 1つは、日本のレコード会社がライセンス生産している日本国内向け商品と、米国国内向け商品の並行輸入品との間に圧倒的な価格差があるからです。日本と韓国・台湾・香港・シンガポールとの間の邦楽CDの価格差と同程度の価格差が、日本と米国との間の洋楽CDについてあります。したがって、日本のレコード会社が邦楽CDの正規ライセンス品の日本国内頒布を阻止したいと考えるのと同様の理由で、英米のレコード会社も米国向けの正規品の日本国内頒布を阻止したいと考えるであろうと私たちは予測しています。そうなれば、私たちは、価格が圧倒的に高い日本国内向け商品を購入するか、または洋楽CDの購入自体を断念するかの選択を迫られることになります。洋楽CDの並行輸入阻止にも活用できるような内容の輸入権が創設された場合には、並行輸入品と価格やサービスで競争する必要が全くなくなりますから、国内向け商品に付されていたボーナストラックがなくなったり、国内向け商品の価格が邦楽CDの水準まで上昇したりすることすら、十分に予測されます。

 もう1つは、米国国内向け商品と日本国内向け商品との間の絶対的な品質差です。米国国内向けの音楽CDは、標準規格に沿ったCDプレイヤーを用いれば確実に再生できます。しかし、同じ作品についてのディスクであるにもかかわらず、日本国内向け商品の多くは、「コピー・コントロールCD(CCCD)」という、標準規格に沿ったCDプレイヤーで用いたからといって音を正常に再生できることが保証されていない規格が採用されています。私たちは、高いお金を支払ってディスクを購入しても再生できるかどうかわからないというのでは納得できませんし、CCCDの再生を試みた後、オーディオ機器が正常に動作しなくなったとの報告も少なからずなされていますので、多くの音楽ファンはCCCD規格が採用されている商品の購入を回避しています。そのため、米国からの並行輸入が途絶えてしまうと、新たな洋楽を視聴する機会すら奪われることになります。洋楽CDの並行輸入阻止にも活用できるような内容の輸入権が創設され、果たして洋楽CDの並行輸入がストップしてしまった場合には、我々は、店頭で洋楽CDを購入する機会を失ってしまいます。

 邦楽CDの逆輸入品など、少なくとも現時点では、プレスの品質もよくありませんし、また、アジア諸国の言語で記述された解説文を読める日本国民は少ないこともあって、まともなレコードショップ等では取り扱っていませんし、邦楽CDの国内売上げ全体に占める逆輸入CDの割合など微々たるものです。これに対し、洋楽CDの場合、米国からの並行輸入品の方が質が高く、かつ、値段も圧倒的に安いのです。したがって、前者を規制するために後者をも規制できる法改正を行うことは、法改正により得られる利益よりも失う損失の方が大きいということになります。国会議員の皆様におかれましては、国内に多数おります洋楽ファンにもご配慮頂きたく、お願いする次第であります。
以上

資料1

日米英間の音楽CDの価格差

Posted by 小倉秀夫 at 12:32 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (4) | TrackBack (7)

03/18/2004

川端議員へのメール

川端達夫議員に下記のようなメールを送信しました。

川端達夫先生へ

先生が会長を務める「民主党知的財産制度改革推進議員連盟」総会が開催され、音楽CD輸入権、書籍・雑誌貸与権の立法化に向けた活動を行うことが決議されたとのニュースを聞きました。

レコード輸入権を創設する著作権法改正案の条項が既にいろいろなところで流布されています。

その条項案を見る限り、例えばビートルズの「Let It Be Naked」のように英米のメジャーレーベルが日本のレコード会社に日本国内向け商品をライセンス生産しているような場合、英米国内向けの音楽CDを並行輸入することは著作隣接権侵害行為として差止められる他、巨額の損害賠償を支払わされたり、懲役刑に処せられることになりそうです。

しかも、販売目的で輸入すると犯罪とされてしまう「国外頒布目的商業用レコード」は単に、「専ら国外において頒布することを目的とするもの」であって、国外において著作隣接権者自ら発行し、又は他の者に発行させていれば足り、「専ら国外において頒布することを目的とするもの」であることをレコード盤その他に表示することすら要しないので、前掲「Let It Be Naked」のように市場ごとにプレスする工場を峻別している場合には、米国向け商品としてプレスされたものは「専ら国外において頒布することを目的とするもの」とされることになろうかと思います。

 何を以て「不当に害される」と見るのかという点についても、この法改正の趣旨が、「日本国内の音楽CDの小売価格を外国のそれよりも顕著に高い価格に維持することによりレコード会社に超過利潤を保障する」ことにあるわけですから、「国外頒布目的商業用レコード」が国際標準価格で頒布されることにより、それが国際標準価格よりも顕著に高い価格にて販売されている「国内頒布目的商業用レコード」の代替となっている場合には「当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害され」ているとみるのでしょう。そうすると、「Let It Be Naked」の米国盤の並行輸入品なんて、まさに日本盤をかなり代替していたわけで、まさに「利益が不当に害され」る場合にあたると認定されそうです。
 
 このように、レコード輸入権が創設された場合、レコードショップとしては、投獄される覚悟がなければ、洋楽CDの並行輸入は行えないということになります。すなわち、日本の消費者は、アメリカの消費者の2倍以上のお金をだしても、手持ちのCDプレイヤーで再生できるかどうかやってみなければわからないCCCD規格の商品しか購入できないということになります。日本の国会議員も官僚も、そんなに日本の消費者が憎いのか、どこまで日本の消費者を馬鹿にしたら気が済むのかと、音楽愛好者たちはほとんど呆れ気味の状況です。「政官業の癒着と腐敗、政治家の倫理観の低下」、「中央官庁による民への規制と押しつけ」により民の利益を大いに害される構図、「そして多くの政治家達がそれを後押しし、利権に群がっ」ているという構図、すなわち、先生が問題としている現代日本政治の問題点をまさにリアルタイムで見る思いで、このレコード輸入権創設への動きを我々音楽ファンは見ています。
 
 民主党は、一部の音楽業界の方々にいい顔をするために、全国の洋楽ファンを悲しませるような悪法をあっさり通すおつもりなのでしょうか。特定の業界に2番目に頼られる政党より、広く国民、消費者から1番信頼される政党を目指す気力、意欲というものは、民主党にはないのでしょうか。
 
 なお、私は、このレコード輸入権の問題は、各国会議員、各政党が、強力なロビー活動を行える業界団体と、一般国民ないし消費者と、どちらの利益をより重視しているのかを図るリトマス試験紙になると認識しています。民主党が、民主党に対する市民の期待を裏切らないことを切に願う次第です。

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02/29/2004

簗瀬議員へのメール

今日は、民主党の簗瀬議員に下記のようなメールを送信しました。

簗瀬先生へ

簗瀬先生がレコード輸入権創設に積極的に賛成されていると知り、メールを差し上げるに至った次第です。

文化庁は「邦楽CDの国内還流防止措置」等と説明しているようですが、簗瀬先生のところに届いている法律案は正しく「邦楽CDの国内還流」のみを防止するものとなっているでしょうか?
英米のメジャーレーベルが米国または英国向けに出荷するCDのジャケット等に「For US Consumers Only」とか「国外輸出禁止」等というマークを印刷するようにしてしまえば、米国ないし英国向けの商品の並行輸入を禁止することもできるような条文になっていないでしょうか。

知的財産権を行使して並行輸入を禁止しようとする裁判は今まで数多く行われてきましたが、裁判の対象となった商品のほとんどが、東南アジア等の発展途上国向けに出荷された廉価品ではなく、世界的著名企業が欧米諸国において出荷した商品であったことは、簗瀬先生もご存じのとおりです。欧米の著名企業やそのライセンシーである日本企業は、欧米諸国におけるよりも顕著に高い価格を日本国内で付けており、そのような欧米諸国との内外価格差を守るために輸入禁止権を行使しようとしてきたことは、知的財産権法等に造詣の深い法律専門家の中では常識といえます。

今日、英米系のメジャーレーベルが制作する音楽CDについていえば

1 日本国内向けの商品は、英米系のメジャーレーベルと結びつきの強い日本のレコード会社がライセンス生産しており、米国向けまたは英国向けの商品の日本国内への輸出ができなくとも、その分、日本向け商品が売れればメジャーレーベルは損をしないし、商品単価が顕著に高ければ却って得をすること
3 日米間の価格差は2倍又はそれ以上あること
4 米国向けの商品と日本向けの商品とでは品質においても大いに差があること(日本向け商品の多くは、正規のCD規格を遵守しておらず、レコード会社もオーディオメーカーも再生保証していない(実際、再生できなかったとか音がぶつぶつと切れるとか音がこもっている等の問題点が消費者により指摘されており、または、再生後オーディオ機器が故障したとの例もいくつも報告されている類のものである。)
5 それ故、歌詞カードや日本語による解説を必要としない洋楽ファンは、HMV等で米国向け商品の並行輸入品を購入したり、Amazon.com等のネット通販業者を利用して米国向け商品を直接購入するケースが増えている(ビートルズの「Let It Be Naked」のときなどはその典型である。)

等の事情があるので、洋楽CDの並行輸入を禁止するためにも活用できる法制度が制定され、施行された暁には、日本の消費者は、安くて質の良い商品を購入する術を奪われる高度の危険性を負うことになります。

私は、簗瀬先生がそんなことは十分承知した上で、法案が通るまではとりあえず「邦楽CDの逆輸入」のみを対象としているかのように国民や同僚議員を誤魔化してしまえと考えておられるのか、文化庁や日本レコード協会の説明を鵜呑みにして信じてしまっているのか、判断する術がありません。後者であるならば、文化庁の役人に対し、英米のメジャーレーベルや彼らから「レコード輸入権」の譲渡を受けた日本のレコード会社が、洋楽CDの並行輸入の差止めを求めて訴訟を提起しまたは税関に申し立ててもこれが認容されることがないような条文になるように強く求めて下さい。実際に、洋楽CDの並行輸入がストップした後に彼らから「遺憾の意」を表明されても何の意味もありません。

稚拙な法改正によって生ずることが容易に予想される問題点を指摘し、修正または法案自体の撤回を要求するというのは、野党側の国会議員が行うべき最低限の責務の一つです。私は、民主党が、そのような責務を果たせる健全な野党であることを願ってやまない次第です。

Posted by 小倉秀夫 at 03:53 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/28/2004

普通、2番じゃなくて1番でしょ?

 「民主党知的財産制度改革推進議員連盟」の名をかたった「決議(案)」と題する電子ファイルが送られてきました。これによると、同連盟は、
 
 この観点にたって、今国会における
(1) 海外でライセンス生産された音楽CDが我が国に逆輸入されることを防止する措置の導入
(2) 書籍・雑誌が著作者に無断で貸与されない権利(=貸与権)の付与
についての立法化を行うよう決議する。

ことを画策しているようです。おそらく怪文書の類だとは思うのですが、民主党の議員で本気でこんな決議を行おうという人がいるとしたら、私はその方の政治的センスを疑います。

 なぜなら、こんな決議を行って著作権関連団体におもねってみたところで、著作権関連団体に「2番目に好かれる」政党にしかなり得ないからです。民主党が本気で政権を取る気があるのならば、著作権関連団体を除く国民に「1番目に信頼される」政党を目指すはずだからです。
 著作権関連団体を除く国民は、「日本在住者は、音楽CDを購入するためには、アメリカ在住者の2倍以上の代金を支払うのが当然である」とは考えていないわけだし、「日本国内では、公立図書館以外には図書館を設立・運営させてはいけないのだ」とは考えていないわけです。もし、自民党が、文化庁と著作権関連団体のいうがままに、レコード輸入権創設、書籍・雑誌の民間業者による貸与の禁止を消費者無視で実現しようとするならば、それは、その非を国会やマスメディアを通じて明らかにして、「一部の業界の利益よりも、一般の国民の利益を重視するのが民主党である」とアピールするチャンスになるのです。それなのに、自民党と一緒になって、著作権関連団体にすり寄って行こうだなんて本気で考えているとしたら・・・ほんと、政治的センス、なさ過ぎですね。

Posted by 小倉秀夫 at 02:41 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

02/25/2004

自民党に物申す

今日、自民党のwebサイトにアクセスして、次のような投稿をしました。


商業用レコードの日本国内への輸入を禁止する権利をレコード製作者に付与する著作権改正法案を自民党の部会が承認したとの報道がなされています。

英米のメジャーレーベルからライセンスを受けて日本のレコード会社が生産し販売するディスクの大部分が、同じ先進国であるアメリカやイギリスの市場価格よりも遥かに高い「定価」が付けられており、しかも、規格に従ったCDプレイヤーによる再生すら保証されていない(レコード会社もオーディオメーカーも再生を保証してくれません)コピーコントロールディスク(CCCD)規格が用いられているため、多くの洋楽愛好家は、英米で正規に流通している音楽CDの並行輸入品をHMV等の大手量販店で購入するか、Amazon.com等のネット通販で取り寄せるかすることにより、何とか、安心して再生できる新譜を入手しているというのが実情です。

しかし、レコード製作者に音楽CDの輸入禁止権が与えられてしまうと、我々洋楽愛好家の一縷の望みすら絶たれてしまう虞が大いにあります。文化庁や日本レコード協会は、レコード輸入権が創設されても英米のメジャーレーベルが洋楽CDの並行輸入を禁止するためにこれを行使することは考えられないと説明しているようですが、国際的市場分割に活用できる法制度を日本が創設してくれたというのに、英米のメジャーレーベルがこれを活用しないと考えるのは余りに楽観的です(私が彼らの顧問弁護士ならば、当然これを活用して、日本の消費者には高い価格を押しつけ、利潤を極大化するように進言することでしょう。世界的映画産業が、DVDについて、「リージョンコード」を用いて国際的市場分割を行っているのと同じように、世界的音楽産業が、輸入権を行使して、国際的市場分割を図ろうとすることは考えられない、となぜ考えられるのか、私には不思議でなりません。)。

 もし、自民党が、文化庁の著作権法改正案を了承し、法案として成立させるつもりであるのならば、せめて、それが洋楽CDの並行輸入を英米のメジャーレーベルが禁止するのに用いることができないような文言に改めるべきです。

 それもしたくないというのであれば、せめて、今回の著作権法改正の目的は、「邦楽CDの日本国内環流の防止」ではなく、邦楽・洋楽を問わず、海外で流通している商業用レコードの日本国内流入防止であるという正しい説明を国民に対し行うべきです。

 政権政党としてもっとも許されないことは、特定の業界と癒着して、当該業界のために、国民を騙して、他の国民の犠牲の下に特定の業界の利益を保護する新たな規制を作り上げてしまうことです。

 私は、自民党本部の裏で執務する者として、自民党がそのような愚を犯さないことを願ってやみません。

Posted by 小倉秀夫 at 10:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (2)

02/23/2004

見ざる、言わざる、聞かざる

 新聞社などを被告として名誉棄損訴訟などを提起したりすると、彼らは大抵「社会の木鐸」を自認し、「国民の知る権利に奉仕している」かのように主張するのですけど、音楽CDに関する昨今の騒動を見る限り、「そういう悪い冗談はやめてもらいたい」という気分にさせられます。
 
 新譜をコピーコントロールCDで発売する予定との情報が流されたアーティストの掲示板に、ファンたちの悲痛な叫びが書き込まれるという現象が近年頻発しています。ファンの声が届き、コピーコントロールCDでの発売が回避されたり、次作からはコピーコントロールCD規格は使用しない旨の表明が制作サイドから出されたりという現象も生まれています。基本的に大人しい日本の若者が声を上げて理不尽に対し抗議し、行動している姿は、立派にニュースバリューがあります。
 でも、新聞も、テレビも、それどころか日頃大新聞に対し対抗意識を燃やし「大新聞が絶対書けない」などと称して「タブーねた」を掲載する週刊誌や夕刊紙も、この問題には触れません。
 
 レコード輸入権の問題にしても、2月17日付の読売新聞等を読んでも、法改正によって原盤権者による差止めが可能になるのは、邦楽CDに限られない、洋楽CDもそうなのだということはわかりません。まして、つい最近まで正規の音楽CDについても輸入禁止権が認められていたオーストラリアにおいてはメジャーレーベルの音楽CDを流通業者が並行輸入することができず、オーストラリアの消費者は「少ない品数、顕著な高価格」を余儀なくされたということや、正規品の並行輸入を合法化する法改正を与党連合が提案したときにアメリカ大使館が反対に回ったことや、長らく並行輸入を禁止してきたことはオーストラリア国内の音楽産業の活性化には繋がらず、オーストラリアは音楽に関しては輸入大国であり続けたこと等は全く報告されません。
 
 それよりなにより、政官財が癒着して消費者の利益を損なう規制が作られていく場面が、今まさに、ある意味公然と行われているのに、「規制緩和」とか「構造改革」とかそういうことを普段声高に叫ぶ人たちが、「見ざる、聞かざる、言わざる」を決め込んでしまっているということに違和感を感じざるを得ません。

Posted by 小倉秀夫 at 01:02 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

02/19/2004

音楽産業はいずこも傲慢?

 TIMES ONLINEの2004年1月22日の記事によれば、The British Phonographic Industry (BPI) と、CD Wow!という、香港で売られている音楽CDをイギリスの消費者に安価で販売する香港の会社との間で、低価格市場から仕入れた音楽CDをイギリスの消費者には販売しないということで和解したそうです。同記事によれば、BPIは、ジャージー島にある「Play.com」というCD及びDVDのネット通販業者に対しても別途訴訟を提起しており、さらにAmazon.comのような著名なネット通販業者が並行輸入をするのではないかと監視を続けるつもりだといっているのだそうです。
 この例を見ると、「レコード輸入権が創設されても、Amazon.comを利用すればよいから自分には関係がない」と思っている洋楽ファンは、もう少し危機意識を持った方が良さそうです。個人輸入代行業者を利用すれば大丈夫だと考えている人も「甘い!」ということがいえそうです。レコード団体からの要求が不当なものであっても、CD Wow!がそうであったように、訴訟を続けることは時間的にも金銭的にも高くつきすぎるということで和解に応じざるを得なくなってしまうのです。

 日本で同じような悲劇が行われないようにするために、今何ができるでしょうか。
 誰にでも簡単にできるのは、地元選出の国会議員に、レコード輸入権が創設されると、洋楽CDの並行輸入も止まってしまうし、Amazon.com等でUS版、UK版の音楽CDをネット通販することもできなくなってしまうので反対して欲しいと陳情すること、及び、口コミで陳情する仲間を増やしていくことではないでしょうか。そして、地元選出の国会議員が、今回の法改正は「邦楽CDの逆輸入を禁止する」だけのものだと勘違いしているようだったら、それは違うということを伝えることが大切です。
 きちんとした身なりで、きちんとした態度で、きちんと実名を明示して陳情をすれば、地元選挙民からの陳情を門前払いできる国会議員は滅多にいないはずです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:04 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (5)

02/17/2004

異例ずくめのレコード輸入権騒動

 私は、一応法律の専門家ですから、法律に関する諸々の事象について基礎知識はあるつもりなのですが、今回のレコード輸入権騒動は非常に異例です。
 
 まず、法律の概要として公表されていることと法律案の文言との間に瑣末的でない齟齬があるという点があります。文化庁は、「海外生産の邦楽CDの日本国内への還流」を禁止できるようにする法改正を行うかのような説明をしているようですが、提出される法律案は、「海外生産の音楽CDの販売目的での日本国内への輸入」一般を禁止することができるようにするものであるようです。「海外生産の洋楽CDの日本国内への輸入」は禁止されないというのは、せいぜい文化庁関係者の希望的観測でしかないわけです。このような官僚の希望的観測に過ぎないものをあたかも改正法案の内容に組み込まれているかのように説明している例を私は知りません。
 
 また、中央官庁が法案提出前にパブリックコメントを求めるようになって以降、パブリックコメントとして寄せられた意見の概要をまとめたものを公表するというのが慣例でした。多岐に渡る論点についてパブリックコメントを求めておきながら、その中の2つの論点について、賛成意見の数と反対意見の数だけを公表するにとどめ、改正案をそのまま法案として提出してしまおうとした例を私は知りません。しかし、昨年の12月24日締切りのパブリックコメントについては、レコード輸入権の創設と書籍貸与権の創設に関する賛成意見と反対意見の数しか公表されていません。
 文化庁としては賛成意見の数と反対意見の数を知りたいだけだったのならば、そのように言ってくれれば、「まとまった意見を書くのは出来ないけれども、賛否は表明したい」という人々がそれぞれの法改正に対する賛否を表明したのではないかとも思います。しかし、少なくともレコード輸入権の創設に反対するような人々には、文化庁のそのような意図は伝えられなかったようです。
 
 また、国の基本政策に真っ向から反対するような法改正が、特定の業界からの要請で、あっさりなされてしまうというのも異例です。規制緩和を行い、競争を促進して、小売価格を引き下げ、内外価格差を是正して、国民経済に利益をもたらすということが10年来の日本政府の基本政策となっています。しかし、レコード輸入権の創設というのは、内外価格差を法律の力で維持することが唯一の目的です。アメリカの約2倍という価格差を全ての国民に押しつけることこそが制度の目的です。他の「規制」と異なり、小売価格の高値維持による特定業者の保護以外に何の目的もありません。
 規制緩和を求めて様々な提言を行ってきた経団連も、会員企業が内外価格差を維持するための規制創設を求めたら、押し黙ってしまいました。情けないの一言です。
 
 また、明らかにわかる嘘を誰も指摘しようとしないというのも異例です。2月16日付朝日新聞朝刊によれば、「レコード協会は『全世界を市場とする欧米会社が、販売地域を限定したCDを発売することは考えにくく、実質的に還流禁止の対象にならない』としている」とのことです。しかし、全世界を市場とするからこそ市場を分割しようとする、というのが世界の常識です。だから、レコード輸入権が創設されたら、全世界を市場とする欧米会社が販売地域を限定したCDを発売することは容易に考えられます。日本における並行輸入に関する訴訟が「全世界を市場とする欧米会社」の商品について行われてきたこと、DVDにおいて「リージョンコード」が設けられたのは「全世界を市場とする欧米会社」の意向に基づいていることなどを考えても、「全世界を市場とする欧米会社が、販売地域を限定したCDを発売することは考えにくく、実質的に還流禁止の対象にならない」なんていえないことは、簡単にわかることです。

Posted by 小倉秀夫 at 02:12 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (19)

02/13/2004

世界に目を向けよう

 前回に続いて、iTunesの1曲99セントという価格が「音楽生産のサイクル」を破壊するほど安いかどうかを見てみましょう。

 Amazon.comでPops部門TopのNorah Jonesの「Feels Like Home」ですが、13曲収録されていて、Amazon.comでのセールス価格が13.49ドルです。つまり、1曲あたり約1.03ドルです。CDの場合、様々な製作コストや流通コストがかかることを考えると、アメリカでは、音楽CDがレコード会社にもたらす1曲あたりの収益はそれほど多くありません。それでも、アメリカでは、良質の音楽が日々生産されています。
 そして、Amazon.comをブラウジングしていると明らかですが、Norah Jonesのアルバムが特別安いわけではありません。当然ですね。Norah Jonesほどたくさん売れる見込みがないからといって、Norah Jonesのアルバムより遥かに高い価格設定をしたら、余計に売れなくなってしまいます。
 したがって、アメリカでは、全世界で何百万枚も売れることが見込めるアーチストの作品にしても、数万枚程度しか売上げが見込めないアーティストの作品にしても、売上げベースで1枚1曲あたり1ドルちょっと、粗利ベースで30セント前後しか得られない前提で、レコードの制作にあたることになります。
 
 したがって、アメリカでは、1曲99セントのiTunes価格で「音楽生産のサイクル」が壊れることはなさそうです。音楽配信サービスを提供する企業のマージンを下げれば、さらに価格を低下させることもできそうです。
 
 特段の事情がない限り、アメリカでできていることが日本ではできないわけはありません。「特段の事情」としてアメリカの音楽産業の市場の広さをあげる人もいるかもしれませんが、アメリカで制作されるCDがみな世界市場で何百万枚も売れるわけではありません。したがって、このような見解は説得力がないですね。
 
 なお、前回の私のblogに対して、
 
 仮にbenli氏の見積もりが正しい場合を考えても86円から70円は、約20%の付加価値の低下である。この変化は、企業を取り巻く経営環境としては大きいものがある。音楽生産サイクルの破壊までには至らなくとも、変化を与えることは間違いない大きさだろう。
 
との懸念を有しているがおられます。
 音楽配信サービスが、音楽CDの代替品にしかならず、新たな需要を喚起しないとすれば、そういう懸念もあり得るかもしれません。しかし、嗜好品の需要は一般に価格弾力性が高いことを考えると、その前提には大いに疑問があります。CMで流れたり、有線やラジオで流れてきたりした曲を「ちょっといいな」と思い、「もう少し聞きたいな」と考えたときに、1000円出して12インチのCDシングルを買わなければならないといわれたら「それならいいや」と気持ちを切り替えてしまうけれども、100円でダウンロードできるならば購入するということが、あり得ないか又はあり得たとしても非常にレアケースといえるのかというと大いに疑問があります。
 また、日本の場合、アメリカよりもポータブル機器のニーズが高いという特徴があります。電車・バスなどの公共交通機関で通勤・通学する人の割合が高く、彼らは電車等で移動中音楽を聞きたいという強いニーズをもっているからです。そういう意味では、iPodというのはまさに日本向きの商品なのですが、そこに立ちはだかるのが「CCCD」規格です。まあ、SACDやDVDオーディオでも一緒なのですが、パソコンにリッピングできない規格では、「正規のパッケージを購入して自分のパソコンにリッピングしてiPodにインストールして通勤・通学中に楽しむ」ということが阻害されます。すなわち、iPodで移動中に音楽を楽しみたいというユーザーにとっては、CCCDもSACDもDVDオーディオも、「購入するに値しない」商品ということになります。しかし、楽曲データがiTunesで提供されれば、そのようなユーザーは有料で楽曲をダウンロードしてそれをiPodにインストールして楽しむことができます。ここにおいて、新たな需要が喚起されることになります。

 そうなると、CDはコレクターズアイテムになってしまうとも懸念されているようですが、パッケージメディアがコレクターズアイテム化するというのはむしろ正常な姿ではないかと思います。「フルコーラス聞いてみたい」とか「カラオケ用に覚えたい」等の薄弱な動機で高額なパッケージメディアを購入するというのは、90年代中盤はよく見られましたが、むしろ歴史的にみても世界的に見ても異常だったというべきでしょう。
 
 さらに、音楽データがインターネットを介して配信されるということは、配信業者に配信先の国ごとに市場分割することを要求しない限り、全世界のリスナーを対象に楽曲を販売することができます。日本の音楽業界は、「海外進出」というと、すぐに「アメリカ」か「東・東南アジア」を想定する悪い癖がありますが、ヨーロッパ市場進出だって夢ではありません。一昨年、ブリュッセルのホテルで何気なくテレビを見ていたら、現地のバンドが「アジアの純真」を日本語でカバーした楽曲が流れていたくらいですから、日本のポップミュージックがヨーロッパで受け入れられる素地は十分にあります。音楽配信サービスは、ローリスクでの海外市場へ進出することを挑戦するのに非常に便利です。
 
 日本の音楽業界は、「どうやったら利益を増やせるのか」という観点を離れて、「どうやったら他人が自分たちの音楽を自分たちに無断で利用することを阻止できるのか」ということに注目しがちです。その結果、「着うた」等というアーティストにとって屈辱的な利用方法に支えられる恥ずかしい姿になってしまいました。悲しい話です。
 

Posted by 小倉秀夫 at 02:19 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

02/11/2004

iTunes日本参入で「音楽生産サイクル」は壊れるのか。

 音楽配信サービスは、基本的に「濫聴派」向けのサービスです。あるいは「行動派」向けのサービスです。特定のアーティストのCDまたはCCCDを何回も繰り返し聞いていたいという人とは所詮求めるサービスの質が違います。SACDやDVDオーディオが普及しても、それはそれで音楽配信サービスの需要は残るのです。
 
 音楽配信サービスが普及すると、アーティストは音楽だけで生活できなくなるでしょうか。そういう心配をするもいるようなので、少し考えてみましょう。

 15曲入り3000円(税抜き、ケース代抜き)のアルバムの場合、JASRACに支払う著作権料が180円、参加アーティストに支払われるアーティスト印税の総額が、個別契約によるので差はあるにせよ、だいたい30円程度ですから、1曲あたりに直すと、著作権料が12円、アーティスト印税が2円程度ですね。なお、小売価格の半分程度は流通経費等で消えますから、レコード会社はおおざっぱに言って1曲あたり86円前後の収入を得ることになります。
 iTunesのダウンロード料金を1ダウンロード100円(税別)とした場合、JASRACへ支払うライセンス料は7円70銭ですね。アーティスト印税を同様に売上げの1%だとすると1ダウンロード当り10円ということになります。また、iPodというハードウェアメーカーであるアップル社は、アメリカのiTunesにおいては1ダウンロードあたり10数セントしか取っていないといわれています。同じ条件で日本版iTunesが運用されるならば、レコード会社は1ダウンロードあたり70円前後の収入を得ることになります。
 すると、「CCCDでは買わなかったであろうリスナーがiTunesなら購入してくれる」可能性を考えたら、アーティストやレコード会社にとって、言われるほど悪い数字ではありません。だから、アメリカでは、メジャーレーベルがGOサインを出したのでしょう。
 
 日本の場合、メジャーレーベルが自前で(高くて使い勝手が悪い(しかもMacユーザーをのけ者にしている))音楽配信システムを既に構築してしまっていること、メジャーレーベルの多くが資本関係やCMタイアップなどでオーディオ機器メーカーと結びついてしまっていることが、レコード会社関係者によるiTunesに対する謂われのない批判に結びついているのではないかという気がします(CCCDの普及は、オーディオ機器の買い換えを促進しますし。)。

Posted by 小倉秀夫 at 05:03 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (5) | TrackBack (3)

02/09/2004

我々は猿よりは賢い。────果たして政治家はどうか?

産経新聞の報道によると、日本レコード協会や日本音楽著作権協会など音楽関係8団体が、アジア地域で廉価販売された日本の音楽CDの逆輸入を防ぐ措置が法制化されれば、国内販売のCD価格の値下げに業界として取り組む考えを表明したとのことです。

音楽関係8団体って、おそらく、社団法人日本音楽著作権協会 社団法人日本芸能実演家団体協議会 社団法人日本レコード協会 社団法人日本音楽事業者協会 社団法人音楽出版社協会 社団法人音楽制作者連盟 日本レコード商業組合 全国レコード卸同業界のことなのでしょうが、彼らはいかなる権限で「国内販売のCD価格の値下げに業界として取り組む」のでしょうか。

国内のレコード会社が正規にプレスして全国レコード卸同業界加盟の問屋を介して日本レコード商業組合加盟のレコード店が販売する音楽CDに関していえば、再販価格の指定がなされているので、「国内販売のCD価格」は各CDを製造しているレコード会社が決定することになっているはずですし、日本レコード協会に加盟しているレコード会社間で国内販売のCD価格について協議を行うのは独占禁止法上違法となる疑いが高いように玄人判断では思えてなりません(国内販売価格の決定は「著作権の行使」にはあたりませんし。)。

 一つの考え方としては、再販価格の指定をやめてしまうということは論理的にはありえる(別に、独占禁止法上は、レコード会社がレコード・CDの再販価格を指定しても独占禁止法違反には問わないとしているだけで、再販価格を指定する義務をレコード会社に課しているわけではないですから)のですが、その場合、負け組は、日本レコード商業組合に加盟している中小のレコード店ということになりそう(小売店で再販価格(小売価格)を自由に設定していいということになると、中小のレコード店はHMVやタワーなどの大型レコード店に比べて、品揃えだけでなく、特に売れ筋商品について価格でも不利益な状況に立たされてしまう。)なので、音楽関係団体のうち残り7団体はそこのところを説得し切れたのだろうかという点に疑問の余地がないわけではありません。もっとも、レコード輸入権が創設され、HMV等が洋楽の並行輸入を扱えないようになれば、洋楽について現存している救いようないほどの品揃え及び価格の格差が、HMV等のサービス水準を無理矢理引き下げる方向で解消されるわけで、そうなると、再販制度を廃止して邦楽レコードで「規模の利益」から来る価格格差を甘受するか、HMV等だけが海外の安い洋楽CDを並行輸入してくることから来る価格格差を甘受するかという選択である可能性もあり、日本レコード商業組合加盟の中小のレコード店が前者を選択するということもあり得なくはありません。とはいえ、そのつもりがあるならば、政治的には、レコード・CDに関しては再販価格の指定はもうしないからその分輸入権を認めてくれと表明した方が、与党や公取の覚えもめでたくなり、レコード輸入権の創設を悲願とする音楽関係団体の皆様にはお得な状況がやってくることは明らかなのにそうしないということは、再販価格の指定をやめるなんてことはする気がないんだろうなと想像するのがよさそうな感じですね。
 
 もちろん、日本芸能実演家団体協議会の会員である実演家が歌唱印税の引き下げに応じたり、日本音楽著作権協会(JASRAC)が商業用レコードに関する使用料を引き下げたりすれば、CDの国内販売価格は若干下がるのかもしれないですが、JASRACが徴収する使用料自体CD価格の6%程度ですし、歌唱印税も普通はCD価格の1%前後ですから、アーティストたちを全員ただ働きさせたところで、アメリカどころか、フランスとの価格差すら埋まらないんですよね(例えば、Amazon.frによると、今週第3位のKyoの「Le Chemin」が16.45ユーロ(約2200円)で売られています。)。「市場規模」を考えたら、邦楽CDの方が、仏楽CDより有利な状況にあるのですけど。

Posted by 小倉秀夫 at 01:57 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/28/2004

「知財」狂想曲

 昨年、裁判官が技術に疎いために訴訟の進行が遅延したという事例を探しているけどなんかありませんかという照会がありました。でも、そういう事件って実際にはほとんどないんですよね。だから、知財訴訟を多く扱っている弁護士にしても、そういう実例を挙げられた人はほとんどいなかったのではないかと思うんですよね。っていうか、知財訴訟の場合、科学的・技術的な見地から真偽が争われるということはほとんどないから、そういう意味では科学論争・技術論争にはなりにくいんですよね。少なくとも、医療過誤訴訟に代表される不法行為訴訟と比べたら、全然科学論争なんかやらないですね。
 知財訴訟の場合、侵害の有無を争う場合はもちろん、登録の成否を争う場合にしても、事実を認定して、それを法規範に当てはめる、その際、法規範自体が不確定な領域が多いので法規範自体を筋道立てて定立する、そういう作業が多いので、どちらかっていうと、法規範を定立したり、事実を法規範に当てはめたりするのがだめな人にあたってしまうとどうしようもなかったりします。つまり、法律家としての資質に欠ける裁判官が知財訴訟を担当するのはいい迷惑というのが実際です。
 
 とはいえ、物を深く考えたり、事実をしっかり観察したりする習慣がない人々は、「知財」→特許やプログラム等の著作権→技術に詳しい理系出身者ならたちどころに解決!!なんて幻想を抱いてしまったりするのかもしれません。
 知財高裁構想や、技術判事構想って、思慮の浅い人々の思いつきをそのまま政策として実現してしまうという最近日本で流行の政策立案スタイルの一環なので、驚きはしないのですが、知財訴訟の一翼を担う立場からいわせて頂くと、堪忍してもらいたいなというのが正直な話です。

Posted by 小倉秀夫 at 01:26 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

01/13/2004

PCJapan

今月から、三才ブックス社の「ゲームラボ」の他に、ソフトバンク・パブリッシング社の「PC Japan」にも連載をもつことになりました。

なお、今月号には誤りがありますので注意してください。

複製権は、「自己の所有する本や音楽CDなどの著作物をコピー機で複写したり、手で書き写したり、MDなどにダビングする権利」ではありません。他人に複製行為をさせない権利です。

私の名誉のためにいいますと、この部分は、編集サイドが挿入したものであり、訂正を申し出たときには時既に遅しということで、印刷機が回ってしまった後だったということです。


Posted by 小倉秀夫 at 04:05 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/11/2004

Above us, only Majors?

 ベルギーには以前旅行で行ったことがあるのですが、料理はおいしいですし、美術館にはルーベンス等の大作がごろごろ転がっているし、趣のある建築物もここかしこにあるし、とてもすてきなところです。
 さて、イギリスBBCのWebサイトに一つのニュースが飛び込んできました。「Consumers sue over anti-copy CDs 」という記事がそれです。ベルギーの消費者団体である「Test-Achats」がEMI、ユニバーサル、ソニー及びBMGに対し、コピープロテクトCDの販売を中止するとともに、ファンたちに補償金を支払うように求める訴訟を提起したとのことです。
 BBCの記事によると、「Test-Achats」側は、一部のCDプレーヤーでディスクを再生できなかったという怒りのクレームが200通も届いたということを問題としているのに対し、国際蓄音機産業連合(IFPI)は、ヨーロッパ法では技術的な手段によって作品を守る権利がレコード会社にあることは明らかだとコメントしており、議論がかみ合っていないようです。もっとも、「Test-Achats」のプレスリリース を見る限り、レコード会社が施した技術的手段は、著作権に関連する1994年6月30日の法律の22条1項及び5項により明白に認められた、オリジナルのCDに関して適法に入手し料金を支払った消費者が私的複製を行うことができる権利を阻害するものであり、違法であると述べているようですが(「Test-Achats」は中見出しで、「Les "majors" ne sont pas au-dessus des lois」、すなわち、「『メジャー』は法律の上にいるわけではない」と言っていますね。)。
再びBBCの記事に戻ると、「Test-Achats」のスポークスマンは、他の消費者団体も自分たちの後に続いてくれると期待しているとのことです。
日本の消費者団体は、どう動くのでしょうか?

Posted by 小倉秀夫 at 12:21 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

I have a dream and a naightmare

 折角のお正月ですから、音楽産業の未来について私の予測を述べることとしましょう。とはいえ、音楽産業の出方次第でよい方向にも悪い方向にも進みうるので、2つのシナリオを用意してみました。


 Dream Version
 
 音楽の供給方法については、インターネットを介した音楽配信とパッケージメディアの頒布とが併存する。
 
 お金はあまりないが音楽に飢えている若者たちは、インターネットを介して音楽データをダウンロードする。レコード協会は、レコード不況を打開するために、96kbps程度の低音質なmp3をネット上で自由に送受信することを認め、その分テレビCM等の広告費を削減することとし、これによりリクープするための売上げラインが大幅に引き下げられる。この大胆な試みは、さびのメロディーだけキャッチーにつくっておいてさびの部分のみをヘビーローテーションでCMで流す、という手法が通用しなくなるという副次的な効果を生み、レコード会社やアーティストに対する消費者の不信を大幅に軽減することになる。また、その楽曲を気に入ったファンがその楽曲のmp3ファイルを知人に送信して布教に努めるという現象が広く起こり、大きな芸能プロダクション等にアーティストが所属していなくとも、よい楽曲を作れば、大ヒットすることが一般化する。さらに、パッケージメディアを重視しないアーティストは、レコーディング環境さえ確保できればよくなっていき、レコード会社離れが進んでいく。これらのことは、消費者が支出した金員がアーティストに届くまでに中間搾取されてしまう機会を減少させる機能を果たすから、アーティストの収入の増大をもたらす。
 有料の音楽配信サービスを利用すると、従来のCD並の音質の音楽データが、1曲100円程度でダウンロードできる(音楽等の嗜好品、特に購買力の乏しい若者向けの商品は価格弾力性が大きいから、価格の低下は売上本数の増大を呼び、結局売上げ全体を増大させる。)。消費者は、ネット上で無償で流通しているmp3をダウンロードして視聴して気に入った楽曲を、高音質で聞きたいと思ったら、有料の音楽配信サービスを利用することになる。これにより、従来CDレンタルで済ましていた消費者が、有料の音楽配信サービスを利用するようになり、アーティストの収入が増加する。また、消費者は、ダウンロードした音楽データを、パソコンや携帯用再生機器に大量に収録することができ、これによりいちいちパッケージメディアを入れ替える煩雑さから解放される。また、自宅や職場の周辺に大型のCDショップがない過疎地等の住民でも、大都市住民と同じように多様な楽曲を選択して購入することができる。それどころか、合法的に流通しているmp3ファイルをダウンロードしてその楽曲を気に入ったアジア諸国やヨーロッパ諸国の消費者が有料の音楽配信サービスを利用してその楽曲データを次々と購入する。パッケージメディアにこだわっていた時代には考えられなかった現象だ。
 また、有料の音楽配信サービスであれば、CD等とは違って小売店から返品されるという自体を招かないから、「廃盤」する必要がなくなる。これにより、著作隣接権者であるレコード会社により作品が死蔵されてしまうというパラドックスからも解放される。
 
 そして、沢山の、多様な楽曲を青少年期に浴びるように聞くことが可能となった日本の若者たちは、その体験を糧として、次々に優れたアーティストとして活躍していく。どの分野でも、優れたクリエーターになるためには、先達の優れた作品に沢山触れることが早道なのだ。
 
 このように音楽配信サービスが盛んになっても、パッケージメディアは自信を失う必要はない。「楽曲データのみ」しか提供されない音楽配信サービスとは異なる付加価値を付ければよいのだ。歌詞カードの存在、ファンを喜ばせるカバー写真、優秀な音楽評論家によるライナーノーツ。コアなファンがパッケージメディアを見捨てるはずがない。CD程度の音質ならば、シングルで300円、アルバムで1200円程度という国際標準価格で提供できれば、並行輸入も逆輸入も恐れるに足りない。もちろん、CCCD等という消費者の不信を買うような規格を採用しないことが前提であるが。
 
 可処分所得が大きい大人たちは、より質の高い商品をより高い価格で購入することをも望んでいる(質の低い商品を高い価格で購入することは、望んでいない。)。実力派アーティストの楽曲などは、DVD-audioやSACD等の高音質のパッケージメディアを購入して、高価な音響機器で再生して、楽しむ(CCCD全盛期と異なり、高価な音響機器が破壊される心配をしなくともよいのだ)。また、アイドルの楽曲であれば、プロモーションビデオの影像を収録したDVDを購入して、影像付きでその楽曲を楽しむ(アイドル歌唱なんて、歌声だけ聞いてたって満足できないのが普通なのだ。)。
 
 Nightmare Virsion
 
 レコード輸入権が創設され、再販制度も維持され、邦楽も洋楽も、日本だけ、シングルで1枚1000円、アルバムで3000円出さなければ購入できなくなった。コンテンツ産業はそれだけでは満足できず、ロビー活動の結果、著作隣接権としての譲渡権については、国内消尽の規定すら撤廃させることに成功し、CD等の中古販売店を廃業に追い込んだ。
 
 DVD-audio等の新規格は独禁法上の再販価格指定規制の例外たり得ないといわれ、パッケージメディアの主流はCDのままだ。いや、正確には、CDではなくCCCDばかりとなっていく。米国・英国において国内版として流通している洋楽CD(CCCDではないもの)は、日本国内での製造・販売ライセンスを取得したレコード会社が、ライセンス契約に基づき、ライセンサーたる米国・英国のレコード会社にレコード輸入権を行使させ、安い正規のCDの国内流入を水際で阻止してしまう。そして、CCCDを再生して再生できなかったりプレイヤーが壊れたりした悲劇を味わった消費者から、CCCDのマークが付いているディスクの購入を回避するようになる。このようにして、パッケージメディアの売上げはじわりじわりと減少していくことになる。しかし、レコード会社は、新しい通信技術等に責任をなすりつけるだけで、消費者がなぜパッケージを購入しないかを謙虚に分析しないから、売上げの減少は止まらない。
 
 また、アメリカやヨーロッパでは1曲100円程度の音楽配信サービスが普及しても、日本では、レコード会社の首脳たちが「著作権保護システムが十分ではない」として、使い勝手のよい音楽配信サービスの日本国内展開を拒絶し続ける。日本国内で利用可能な音楽配信サービスといえば、レコード会社主導の、CD買うより高い、その上、携帯用大容量再生機器にインストールできない、使い勝手の悪いものしか存在しない。だから、日本では、音楽配信サービスは消費者に見捨てられたままだ。
 
 これでは、可処分所得の乏しい中高生には多様な楽曲を沢山享受することは、ごく一部の恵まれた階層に生まれた者以外には不可能となり、クリエーターになるための素養が身に付かない。彼らが大人になったころには、子供のころに多様な音楽を大量に聞いて育った国外のアーティストに全く歯が立たなくなり、日本は、国外のアーティストが創作した楽曲について、世界のどこよりも低い品質のメディアを世界のどこよりも高い価格で購入する国になっていく。
 

Posted by 小倉秀夫 at 02:22 AM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (0) | TrackBack (6)

01/06/2004

お代官様、あんまりだ。

Title: お代官様、あんまりだ。

Body: 「腐敗した政府」といわれたら、どういう政府を思い浮かべるでしょうか。

トップがごく一握りの側近や業者の要求を「よきに計らえ」とばかり聞き入れ、これに反対する箴言には耳を貸さない。側近は側近で、箴言を厭わない忠臣をトップから遠ざけ、一握りの業者側の意見だけをトップの耳に入れようとする。そして、忠臣がいよいよ直訴に及んでも、側近の顔色を見て忠臣を遠ざける。そして、ごく一部の側近や業者の利益ばかりに配慮した政策が行われ、庶民からは怨嗟の声が上がっていく。

 時代劇ではよく見る光景ですね。歴史的には、国力を衰退させた政権にはありがちなパターンです。

ところで、第6回知的財産戦略本部議事録 を読んで異常に気が付かれたでしょうか?

 東大で知的財産権法を受け持つ中山信弘教授といえば、知的財産権法の分野では押しも押されぬ第一人者ですし、その温厚なお人柄は、誰からも尊敬を集めるお方です。そこら中に敵を作りまくる私とは対極にいるお方です。

 その中山教授が、大学・研究機関における知的財産を巡る動きについて意見を求められたのに、小泉首相、福田官房長官らのいる前で、事務局の在り方について、余りにも独善的であるとして、異議を述べています。中山教授ほどの方が、「事務局はあくまでも本部の事務局でありまして、事務局自体が特定の見解、特定の案に固執するとか、特定の本部員を排除して、政治家や財界のトップと話しをつけて決着をするというたぐいのものではない」ということを、「重大な決意」をもって述べなければならない。そういう状態に、今の知的財産戦略本部はあるようです。

 そして、この異例の事態を目の当たりにしていながら、このことを報じようともしないマスメディア。

 衰亡していく国というのはこういうものなのでしょうか。

Posted by 小倉秀夫 at 11:37 PM dans au sujet de la propriété intellectuelle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)