12/15/2009

著作権法判例百選[第4版]

 有斐閣から、著作権法判例百選[第4版]を送っていただきました。というのも、私も執筆者の一人だからです。

 私は、東京地判平成10年11月20日[ベジャール事件]の解説を担当させていただいています。第3版では田村善之先生が担当されていた裁判例なので、田村先生とは異なる視点で解説させていただくことにしました。

 なお、「事案の概要」部分においては、原告と被告以外の関係者をそのイニシャルで標記しています。ゲラ稿段階までは、ロシア人である某について「Я」というイニシャルを使っていたのですが、それはなじみがなさすぎるということで「J」を用いることになってしまいました。「Я」の方が人目を引くかと思ったのですが、そこは有斐閣です。ゲームラボほど自由にはいきません。

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12/13/2009

パブリシティ権って?(続)

 「パブリシティ権」を人格権の一種とする見解もあります。

 東京高判平成14年9月12日判タ1114号187頁[ダービースタリオン事件事件]がその典型です。

自然人は、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有すると解すべきであるから(商標法四条一項八号参照)、著名人も、もともとその人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利を有するということができる。もっとも、著名人の氏名、肖像を商品の宣伝・広告に使用したり、商品そのものに付したりすることに、当該商品の宣伝・販売促進上の効果があることは、一般によく知られているところである。このような著名人の氏名、肖像は、当該著名人を象徴する個人識別情報として、それ自体が顧客吸引力を備えるものであり、一個の独立した経済的利益ないし価値を有するものである点において、一般人と異なるものである。自然人は、一般人であっても、上記のとおり、もともと、その人格権に基づき、正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に利用されない権利を有しているというべきなのであるから、一般人と異なり、その氏名、肖像から顧客吸引力が生じる著名人が、この氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利を有するのは、ある意味では、当然である。著名人のこの権利をとらえて、パブリシティ権」と呼ぶことは可能であるものの、この権利は、もともと人格権に根ざすものというべきである。

 著名人も一般人も、上記のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者に使用されない権利を有する点において差異はないものの、著名人の場合は、社会的に著名な存在であるがゆえに、第三者がその氏名・肖像等を使用することができる正当な理由の内容及び範囲が一般人と異なってくるのは、当然である。すなわち、著名人の場合は、正当な報道目的等のために、その氏名、肖像を利用されることが通常人より広い範囲で許容されることになるのは、この一例である。しかし、著名人であっても、上述のとおり、正当な理由なく、その氏名・肖像を第三者により使用されない権利を有するのであり、第三者が、単に経済的利益等を得るために、顧客吸引力を有する著名人の氏名・肖像を無断で使用する行為については、これを正当理由に含める必要はないことが明らかであるから、このような行為は、前述のような、著名人が排他的に支配している、その氏名権・肖像権あるいはそこから生じる経済的利益ないし価値をいたずらに損なう行為として、この行為の中止を求めたり、あるいは、この行為によって被った損害について賠償を求めたりすることができるものと解すべきである。

 ただ、従前の議論からすれば、立法によらずして私法上の権利として認められる人格権は、個人尊厳の原理と密接に結びつき人格的生存に不可欠と考えられる利益であることを要するわけですから、人格権としての氏名権・肖像権って、「正当な理由なく、その氏名、肖像を第三者に使用されない権利」というほど広範囲なものとしては認められてこなかったわけです(だから、桜井さんはディカプリオの名前を歌詞の中に盛り込むことができたし、野球中継で客席を映すことができるわけです。)。上記高裁は、商標法4条1項8号を参照しているのですが、同号は、他人の氏名をその同意なくして商標登録してもこれを無効とするという規定であって、他人の氏名をその同意なくして商標として使用することを禁止する規定ではありません。

 また、人格権としての氏名権・肖像権という枠組みを維持する限り、その使用が許されるか否かを判断する基準として、顧客吸引力を侵害するか否かを持ち出すというのはおかしいと思うのです。なぜなら、その氏名・肖像の持つ顧客吸引力自体は、「個人尊厳の原理と密接に結びつき人格的生存に不可欠と考えられる利益」ではないからです。むしろ、その肖像等の使用が個人の尊厳を冒すものであるのか否か、こそが判断基準となるべきです。

 さらにいえば、人格権としての氏名権・肖像権の一種としてパブリシティ権を構成するのであれば、その侵害にかかる損害は精神的な損害にのみ限定されるべきであって、その氏名・肖像が商用利用される場合の許諾料相当金をもって損害額と構成するのは、「人格権としての氏名権・肖像権」という判断枠組みとは矛盾しているように思われるのです。

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12/12/2009

パブリシティ権って?

 「パブリシティ権」って、いったい何なのでしょうか。

 東京高判平成3年9月26日判タ772号246頁[おニャン子クラブ事件]は、次のように判示しています。

固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがあることは、公知のところである。そして、芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価格として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。したがって、右権利に基づきその侵害行為に対しては差止め及び侵害の防止を実効あらしめるために侵害物件の廃棄を求めることができるものと解するのが相当てある。

 「固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した芸能人の氏名・肖像を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に効果をもたらすことがある」という点は認められると思うのです。しかし、そこから、「芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力」が「当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のこと」と言ってしまうのは、明らかに論理の飛躍だと思うのです。

 というのも、自由主義経済を原則とする我が国においては、商品の販売促進に効果のある情報を自社の商品に付することは原則なのであって、そのような情報は本来公有(パブリック・ドメイン)となるべきだからです(実際、競走馬の氏名等が持つ顧客吸引力は二つの最高裁判決によってパブリックドメインとして扱われています。)。それを、芸能人の氏名・肖像の持つ顧客吸引力に限って、立法によらずして、裁判所が恣意的に「当該芸能人に固有のものとして帰属する」と認定するのは、許されるべきではないように思われるのです。

 では、パブリシティ権を保護する新規立法をすればいいのかというと、そんなに簡単な話なのだろうかと思ったりもします。というのも、パブリシティ権のような財産権を新設するということは、権利者以外の人の営業活動の自由や表現の自由を制限することになりますので、それ相応の社会経済的な合理的な理由が必要となります。例えば、特許法であれば、発明を奨励するとともにこれを公開させて産業を発展させるために公開後一定期間その利用を独占させるという合理的な理由があります。

 しかし、パブリシティ権を芸能人に独占させると何かが奨励されるようになるのか、というとそこが疑問なのです。筆箱やクリアファイルに自分の氏名・肖像を掲載させて対価を得るというのは芸能人の本来的な投下資本回収手段ではないわけで、そのような非本質的な投下回収手段についてある程度自由競争に晒されたところで、芸能人になろう、自分の芸能に磨きをかけようというインセンティブが損なわれるということは通常ないように思われるからです。

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11/29/2009

「NHKオンデマンド」の利用は思ったより増えず

  

NHKのテレビ番組をインターネットで有料配信する「NHKオンデマンド」が始まって12月で1年。予想したほどには利用は増えず、今年度の料金収入は当初見込んだ23億円の半分にも届かない見通しだ。

とのことです。

 エンドユーザー向けのサービスでMacを対象から除外するのだから,普及しないのは当然のことです。

 さらにいえば,デジタルデータをiPhone等の携帯型再生機に組み入れて視聴することを認めないのだから,普及しないのは当然のことです(NHK教育の番組など,むしろiTunes Store等で配信するのに向いています。)。

 NHKがこの種のサービスの開拓に民放よりも積極的なのは評価しますが,ユーザー目線に立ってサービスを組み立ててみると良いのではないかと思ったりします。

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11/28/2009

由是著作者怠倦?

 少し日本史の復習をしてみましょう。

 朝廷は,西暦723年に三世一身法を制定し,灌漑施設を新設して墾田を行った場合には三世までの私有を許し,季節の灌漑施設を利用して墾田を行った場合は開墾者本人のみの土地私有を認めることとしました。ところが,朝廷は,西暦743年には墾田永世私有法を制定し,墾田の永世私有を認めることとしました。その理由は,

墾田拠養老七年格。限満之後、依例収穫。由是農夫怠倦、開地復荒。自今以後、任為私財無論三世一身。悉咸永年莫取。

というものでした。三世一身法の制定から20年では墾田の返納期限には未だ到達していないと思われますので,「限満之後、依例収穫。由是農夫怠倦、開地復荒」という実態があったのかは多分に疑問ですが,大和朝廷ですら,現状では「由是農夫怠倦、開地復荒」ことを,独占期間の延長をするための立法事実として提示していたわけです。

 他方,オリコンは,「『著作権保護期間の延長』はなぜ必要か」という文章を発表しています。しかし,「限満之後、依例収穫。由是農夫怠倦、開地復荒」に相当するような立法事実は提示されていません。著作権の保護期間が著作者の死後50年しかないが故に,アーティストがやる気を失って怠けているだとか,出版社が作品の継続的な出版を怠っているだとかという立法事実はいまだ提示されていないのです。

 オリコンは,

クリエーターの権利が保護され、それを基盤として創作活動が活性化されることが、ひいては国民の生活を豊かにする知的財産を生み出していくという考え方が是とされたわけだ。

と述べてはいるのですが,ベルヌ条約で定められた通りに「著作者の死後50年」の保護期間では創作活動が活性化されず,そのために現在国民の生活を豊かにする知的財産が生み出されていないという実情が存在することは何ら示されていないのです。そして,より開発にコストがかかる傾向が高い「発明」という知的財産についていえば,より短い保護期間しか保障されていなくとも次々と新たな創作がなされているのに,開発コストがより小さい「著作物」という知的財産については「著作者の死後50年」程度の保護期間では創作活動が活性化されない(しかし,著作者の死後70年著作権を保護すれば創作活動が活性化される)ということについて説得的な説明は未だなされていないのです。

 墾田永世私有法が認められると,貴族や寺院等の大土地所有者は不輸不入の権を認めさせるにいたり,朝廷を弱体化させることになりました。著作権についても,保護期間が延長,延長され,事実上永久に保護されることになると,例えば音楽についていえば,膨大な数のメロディラインについて独占的な権利を握っている大企業の傘下に入らなければ人の耳に心地の良い作品を発表することができないという事態に至り,むしろ,国民生活は貧しくなるかもしれません。あるいは,貴族たちが不輸不入の権を認めさせその荘園に「公」が介入することを拒んだように,次は著作権の制限規定の廃止を狙いに来るかもしれません。歴史の教訓としていえば,3世程度の独占期間では足りないという人々には,「公」を尊重するという意識はなく,欲望だけはとどまるところを知らないのですから。

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11/20/2009

闇米

 石坂会長はまた、道義的・倫理的な側面でも啓発の必要性を訴えた。「CDという固形物を万引きすることは、おそらく多くの若者にとって悪いことだという認識が徹底しているのに対して、音楽ダウンロードは無形のものであるため、いともたやすく法律に違反したり、道義に反する行為に出る。CDは盗まないが、デジタル音楽はタダでもらっちゃう」と指摘。「これほど国民性が乱れるのを容認するのは、大げさに言えば歴史上初めて」と憂慮した。

とのことです

 でも,道義的・倫理的な側面からいうと,不労所得を得んがために情報の流通をブロックする行為と,ひとたびブロックされたが誰かがブロックを壊して再び流通させた情報を入手する行為とを比べたときに,後者の方が道義的・倫理的に悖るとは必ずしも言えないのではないかと思ったりはします。著作権侵害罪って,今はやりのインセンティブ論から言えば,法定犯であって,自然犯ではないですし。

 歴史的に言えば,特定の流通経路以外から商品等を入手することが法律上禁止されていたが多くの人がそれを守っておらず,守らないことが道義的・倫理的に問題があるとさほど考えられていなかった例としては,例えば,戦後の「闇米」などがあります。

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11/19/2009

民主党への手紙

 民主党はそのウェブサイトで国民からの意見を募集しているようなので,次のような意見をお送りいたしました。


報道によれば,鳩山 由紀夫首相は18日に開かれた「JASRAC創立70周年記念祝賀会」において、著作権の保護期間を現在の「著作者の死後50年」から、欧米などと同等の「著作者の死後70年」に延長するために最大限努力するとの考えを示したとのことです。これが本当だとすれば,心底失望いたしました。

高速道路の無償化が骨抜きになったとしても民主党を責める気はありませんでした。自民党が最後に焦土作戦をとった後です。予算措置を必要とする政策が思うに任せないのはやむを得ないことです。

米軍基地の沖縄県外移転が果たせなかったとしても民主党を責める気がありませんでした。外交問題は相手があることです。相手国の同意を得なければ進まない政策が思うに任せないのはやむを得ないことです。

しかし,著作権の保護期間問題は違います。これを延長しないことについて予算措置も不要ですし,第三国の同意も不要です。50年以上前に発掘された文章について,メロディについて,絵画について,その発掘者又はその承継人の既得権をさらに保護することで,政治献金等の形でおこぼれに預かろうという意思以外に,著作権の保護期間の延長を志向する要因はありません。そして,その結果,歴史の陰に埋もれてしまった多くの作品がボランティアの手により再び日の目を見ることが阻害され,著作権により囲われてしまった「表現」を若い芸術家たちが新たな表現のために再利用する道が閉ざされます。

民主党が,我が国の文芸的な歴史を知り,享受し,発展させようという市民の希望を踏みにじって,一部の既得権者に尻尾を振って著作権の保護期間を延長しようというのであれば,そのような政党はその他の分野でも必要以上に市民の希望を踏みにじって一部の既得権者に尻尾を振るのだろうと予測できます。そのような政党は我々には不要です。

「過ちを改むるに憚ることなかれ」といいます。民主党が市民から失望されないためにも,民主党としては著作権の保護期間を延長することは考えていないということを,党として表明していただければ幸いです。

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11/07/2009

著作権関連六法

 iPhone用の模範六法にも著作権法は収録されているのでしょうが,たぶん,著作権法施行令や施行規則,旧著作権法,ベルヌ条約やWIPO著作権条約等は収録されていないのでしょう。でも,これらって,まともに著作権法を学習しようと思うと避けて通れないのです。

 さらにいえば,著作権法って,頻繁に改正されている法律なので,改正履歴がすぱっと調べられると嬉しいです。

 ということで,iPhone用の著作権関連六法ってつくってみたいと思うのですが(iPhone用に設定されたWebを作るっていうのでもいいようにも見えますが,会議とかってSoftBankが届かないところで行われることも少なくないのです。),一人でそれをこなすのは大変です。プログラミングが得意な人を含めてプロジェクトチームが作れると嬉しいなあと思う今日この頃です。

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11/05/2009

私的録音録画補償金訴訟のリスク

 私的録音録画補償金に関してSARVHが東芝に訴訟を起こしたとして,訴訟自体の勝ち負けはおそらくどちらにとってもたいしたリスクではないのだと思います。

 しかし,SARVHにとっては,理由中の判断又は傍論として,補償金相当額を出荷価格に上乗せした上で補償金をSARVHに支払うという方法以外の協力義務の履行方法が認められた場合には,SARVHにとっては,大きな打撃となります。ことは,地デジ専用DVDレコーダーにとどまらなくなるからです。

 AV機器メーカーとしては,製品の入った段ボールにホチキス等で留められた,保証書等が梱包されているビニール袋の中に,SARVH作成の請求書を入れておけば,これまでSARVHに納めてきた補償金を納めなくとも済むということになれば,それはそれで幸せなことです。ユーザーとしては,私的録音録画補償金を支払わなくとも,その機器によって行われる私的使用目的の録音録画が違法となるわけではないので,仮にSAVRAから訴訟を提起されて敗訴しても,最大で1台あたり1000円を支払えば済むことです。

 そうなったら法改正によって製造業者等を支払義務者にすれば足りると考えているのかもしれませんが,利用者による私的録音録画により著作権者等が被った損失の一部補填をAV機器の製造業者に義務づける合理的な理由がありません。にもかかわらず,AV製造業者に対する一種の徴税権を指定管理団体に与えることは憲法上大変な疑義が生ずることになります。しかも,自民党は下野してしまいました。そう簡単にはいかないと思います。

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11/03/2009

先輩を思いやる気持ち

 私的録音録画補償金制度を巡る混乱は,文化庁の役人の天下り先を思いやる気持ちにその発端があるというべきでしょう。

 平成20年6月付けで文部科学省と経済産業省との間で取り交わされた「ダビング10の早期実施に向けた環境整備について」と題する文書においては,

現在のブルーレイディスクレコーダーがアナログチューナーを搭載しておりアナログ放送のデジタル録画が可能であることも踏まえ、暫定的な措置として、ブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体を政令に追加する。

とあります。現在のブルーレイディスクレコーダーがアナログ入力ポートを備えていることを踏まえてブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体に追加したのではありません。

 このように,ブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体を特定機器に加える際には,著作権法施行令第1項第2項の「アナログデジタル変換が行われた影像を……連続して固定する機能」とはアナログチューナーを搭載することによりアナログ放送のデジタル録画を行う機能のことをいうとの理解に文部科学省も立っていたわけです。だからこそ,4号を付加する際に,なおも「アナログデジタル変換が行われた影像」という要件を付したわけです。

 従って,文化庁の課長が,その傘下の財団法人であり渡り先(田原昭之理事は元文化庁)でもある私的録画補償金管理協会からの照会を受けて,何らの根拠も示さずに,独断で,上記前提と異なる回答をするというのは,およそ役人としての分限を超えてしまっているわけです。結局,文化庁課長の軽はずみな発言が,実務に混乱をもたらしてしまったわけです。

 前にも述べましたとおり,製造業者は,指定管理団体が指定機器等の購入者に対して補償金の支払いを請求しこれを受領することに協力する義務を負っているに過ぎず,補償金を自らの名において購入者に請求し(支払いを拒む購入者から強制的に)徴収する権限を有していませんし,義務も負っていません(この点,条文を読まずに製造業者の義務の内容を誤解されている方が多いようです。)。である以上,「アナログチューナーを搭載することによりアナログ放送のデジタル録画を行う機能」を有しないデジタル放送専用機においても補償金を支払ってもらおうと思ったら,私的録画補償金管理協会が,デジタル放送専用機の購入者にそのことを納得してもらう必要があります。そのためには,デジタル放送専用機が指定機器に含まれることの説得的な理由付けを私的録画補償金管理協会自身が示す必要があります。しかし,私的録画補償金管理協会のウェブサイトを見てもいまだにその説明は掲載されていません。また,主婦連やMIAU等の消費者団体にもその説明はなされていないようです。支払い義務者である機器購入者の理解も得ずに無理矢補償金を徴収する義務を製造業者を負わせておいて,自分たちは涼しい顔でその補償金にしゃぶりつこうというのは,虫が良すぎる話のように思われてなりません。

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11/02/2009

主役が怠けているのに,脇役が協力しないのが怪しからんといわれても。

 私的録音録画補償金請求権の行使方法について,著作権法の規定を整理してみましょう。

 まず,著作権法第30条第2項は,

私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

と定めています。ここでは,補償金の支払義務者は製造業者ではなく「録音又は録画を行う者」であるということに注目をしましょう。

 これを受けて,著作権法第104条の4第1項は次のように定めます。

第三十条第二項の政令で定める機器(以下この章において「特定機器」という。)又は記録媒体(以下この章において「特定記録媒体」という。)を購入する者(当該特定機器又は特定記録媒体が小売に供された後最初に購入するものに限る。)は、その購入に当たり、指定管理団体から、当該特定機器又は特定記録媒体を用いて行う私的録音又は私的録画に係る私的録音録画補償金の一括の支払として、第百四条の六第一項の規定により当該特定機器又は特定記録媒体について定められた額の私的録音録画補償金の支払の請求があつた場合には、当該私的録音録画補償金を支払わなければならない。

 ここでは,特定機器又は特定記録媒体の購入者に対し指定管理団体から補償金の支払い請求があった場合に初めて,購入者は録音録画補償金を一括払いする義務を負うということに注目をしましょう。

 さらに,著作権法104条の5に注目してみましょう。

前条第一項の規定により指定管理団体が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者(次条第三項において「製造業者等」という。)は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない。

 このように,法律の文言上は,特定機器の製造業者が負っているのは,「当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力」する義務であって,その出荷した特定機器に応じた補償金相当額を支払う義務を指定管理団体に対し直接負っているわけではありません。といいますか,製造業者は,特定機器の購入者に対し自己の名で補償金の支払いを請求する権利自体がありません(あくまで「協力」義務を負っているに過ぎませんから)ので,本来であれば,指定管理団体から渡された私的録音録画補償金の請求書を特定機器を混入した段ボール箱の表面に貼って「支払いの請求」に協力したり,また,直営店や提携小売店で特定機器を購入する消費者から任意に補償金相当金を預かって一括して指定管理団体に送金するということで補償金の受領に協力したりしても良いはずです。むしろ,当該製品が特定機器にあたること,それ故製品価格とは別に私的録音録画補償金の支払いを指定管理団体が要求していることを消費者が特定機器を購入するに際して具体的に示すことなく,補償金相当額を製品価格に上乗せすることによって,補償金を支払わされているのだと言うことを消費者に意識させることなく補償金を支払わせるという現在の運用の方がまずいといわざるを得ません。

 以上を前提とするとき,その製品が特定機器に当たりその購入者には私的録音録画補償金が生ずるということについての購入者を納得させるような合理的な説明がなされていない段階で,補償金相当額を出荷価格に上乗せすることなくこれを出荷した製造業者に対し,上記協力義務の不履行に基づく損害賠償請求権として,補償金相当額の賠償を指定管理事業者が製造業者に請求しうるのか疑問の余地無しとはしません。なんといっても,製造業者は,特定機器の購入者から強制的に私的録音録画補償金を徴収する権限が与えられおらず,かつ,補償金の支払いを拒む者に特定機器の販売を回避する義務を負っていないのです。

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10/30/2009

アナログデジタル変換を行うのはどこで?

 著作権法施行令第1条第2項の「アナログデジタル変換が行われた影像」について,録画機器において「アナログデジタル変換」が行われた影像に限定されていないではないかとの見解もあるようです。

 ただ,岸本織江「著作権法施行令の一部改正について」コピライト1997年7月号37頁によれば,

「特定機器・特定記録媒体の政令指定にあたっては,機器等の有する機能に着目し,①記録方法,②標本化周波数(アナログ信号をデジタル信号に変換する1秒あたりの回数),③記録媒体,の3つを規定することにより,対象機器等を特定してきている。

とされています(実際,例えば同条第1号では,「その輝度については十三・五メガヘルツの標本化周波数で、その色相及び彩度については三・三七五メガヘルツの標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像」と細かい指定をしています。)。従って,当該機器の外で(端的に言えば放送事業者の側で)アナログデジタル変換した影像をここでいう「アナログデジタル変換が行われた影像」に含めて上記規定を読むのは,標本化周波数で対象機器等を特定するという立法趣旨をないがしろにすることになります。よって,録画機器自体において「アナログデジタル変換」を行う機能を有しない録画機器は「特定機器」に含めないと解釈するのが素直な解釈だということになります。

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10/28/2009

島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門」

島並良=上野達弘=横山久芳「著作権法入門」(有斐閣)の献本を上野先生よりいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

 著作権法の分野ではこの種の入門書が久しく出版されていなかった(Q&A集や本格的な基本書は結構あるのですが)ので、来年入ゼミ予定の現2年生に読ませるには良さそうです。

 一通り読み終えたら、また感想を述べるかも知れません。

Posted by H_Ogura at 11:17 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/26/2009

政令の内容を課長の回答で変更すること

 エイベックス取締役の岸博幸さんが次のように述べています。

 また、東芝が補償金を徴収していない今回の機器は、以前から補償金制度の対象となっているDVD録画機であり、政令上は「アナログチューナー非搭載機を除く」といった留保条件が付いていない。家電メーカーやその背後にいる経産省の主張どおりに補償金が払われないとすれば、政令の中身が、政令よりも下位に位置する通達で変更されることになる。これほど法律の世界の秩序を無視した主張はないのではないだろうか。

 著作権課長は、アナログチューナー非搭載のDVD録画機器は、著作権法施行令第1条第2項第3号の特定機器に該当すると解してよいか。とのSARVHの照会に対し、・・・貴見のとおりで差し支えありません。と回答したとのことです。

 そこで、同施行令第1条第2項第3号を見ると、その文言は以下のとおりとなっています。

三  光学的方法により、特定の標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像又はいずれの標本化周波数によるものであるかを問わずアナログデジタル変換が行われた影像を、直径が百二十ミリメートルの光ディスク(レーザー光が照射される面から記録層までの距離が〇・六ミリメートルのものに限る。)であつて次のいずれか一に該当するものに連続して固定する機能を有する機器
イ 記録層の渦巻状の溝がうねつておらず、かつ、連続していないもの
ロ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続しているもの
ハ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続していないもの

 この規定を素直に読めば、「光学的方法により、……アナログデジタル変換が行われた影像を、……光ディスク……に連続して固定する機能を有する機器」となっていますから、「アナログデジタル変換」を行う機能を有しない「アナログチューナー非搭載機」は補償金制度の対象外となっているように見えます。つまり、同施行令第1条第2項第3号の「特定機器」が連続して固定するべき「影像」を「アナログデジタル変換が行われた影像」に限定することによって、「アナログチューナー非搭載機を除く」といった留保条件を付したものと解するのが常識的な法文の読み方ではないかと思われます。

 「政令の中身が、政令よりも下位に位置する『著作権課長による回答』で変更されることになる」ということの方が、法律の世界の秩序を無視したものであるように思われます。

 岸さんは、続けて、

 デジタルとネットは社会の便益向上のために不可欠であり、その普及を止めるべきではない。ただ、その普及は違法コピーや違法ダウンロードの激増、コンテンツ供給量の増大などをもたらし、ユーザーは多くのコンテンツをタダで容易に入手できるようになった。ユーザーにとってのコンテンツの価値は限りなくゼロに近づいてしまったのである。
 一方で、コンテンツは文化という社会の重要な価値観、インフラの一部であり、社会にとっての価値は不変である。その結果、コンテンツのユーザーにとっての価値と社会的な価値の間に大きな乖離が生じてしまった。それが社会的なコストに他ならない。

と述べた上で、

補償金はこの社会的コストを埋める役割をある程度果たしていたと評価できる

と結論づけるのですが、「アナログチューナー非搭載機のDVDレコーダー」って、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」とは何の関係もないように思われてなりません。その本来の放送時間にゆっくりテレビ番組を視聴していられない人が、その番組をあとでYouTubeで見るのではなく、「アナログチューナー非搭載機のDVDレコーダー」を用いて自分で録画した上でこれを見ようという人に、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」によって生じた「社会的コスト」を負担させようとすれば、反発を招くのは必至です。

 「違法コピーや違法ダウンロードの激増」により生じた「社会的コスト」を誰かに負担させたいのであれば、「違法コピーや違法ダウンロードの激増」により利益を得ている事業者に負担させる方がまだ筋が通ります。具体的には、無許諾に投稿されたコンテンツについてそのダウンロード回数に応じて一定の「補償金」の支払義務をYouTube等の動画投稿サイトの運営者に課す等の方法が考えられます(「補償金」を支払えば削除義務を免れるというのであれば、YouTube等の動画投稿サイトの運営者はむしろ歓迎することでしょう。彼らはただで他人のコンテンツを利用したいのではないですから。)。

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10/19/2009

マジコン問題は違法複製問題ではない

 mohnoさんが次のようなはてなブックマークコメントをしています。

匿名さんが責任を取らないから、西村氏の責任を追及したわけだよね? マジコンの違法複製問題も、違法複製当事者が責任を取ってくれれば、製造元の責任は問われないと思うよ。

 まあ、根拠のない話です。

 任天堂を中心とするギルドがマジコン訴訟でつぶそうとしたのは、彼らが製作したソフトウェアの違法複製物の流通ではなく、無償又は安価で提供される自主製作ソフトの流通です。違法複製物の流通を阻止するのであればもう少しマシな技術的手段が使えたと思いますが、実際には、任天堂に高額の上納金を支払うことを約束した企業が製作したソフトウェアしかDS上で稼働しないような技術的手段を敢えて講じたのです。

 例のマジコン訴訟の時は、任天堂らに対し、これまで違法複製物のアップローダーに対しどのような措置を講じてきたのかについての釈明を求めるとともに、アップロードサイトのドメイン保有者≒開設者の住所・氏名がwhoisデータベースにより入手できることを示し、違法複製物の流通を問題とするのであればマジコン自体を規制する必要はないことを示してきましたが、任天堂側はそのようなことには一切関心を持たず、一切の釈明に応じないという路線を貫いたのです。

 考えてみれば当然の話で、中国語で書かれた違法複製物のアップロードサイトをつぶしたところで、国内向けに流通させているソフトウェアの売上げに大した影響を与えそうにないのに対し、自主製作ソフトが広く製作され、流通されるようになった場合に、面白いソフト、役に立つソフトが、無償又は極めて安価に流通することとなることにより、商用ソフトが値崩れすることの方が、任天堂側に与えるダメージは大きいわけです(自主製作ソフトからは上納金が取れませんし。)

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10/14/2009

Copyright and You

 コピライト2009年10月号が翻訳しながら引用するWIPR誌8月号によれば、カナダ政府は、2009年7月20日から9月13日までの間、著作権法改正への意見として、下記の事項につき、広く意見を求めたのだそうです(コピライトの訳文はこなれすぎているので、原文から翻訳し直してみました。)。

  1.  How do Canada’s copyright laws affect you? How should existing laws be modernized?(著作権法は、あなたにどのような影響を与えていますか。現行法はどのように近代化されるべきでしょうか。)
  2.  Based on Canadian values and interests, how should copyright changes be made in order to withstand the test of time?(カナダの価値および利害に基づいたとき、時の試練に耐える著作権の改革はいかにあるべきでしょうか。)
  3.  What sorts of copyright changes do you believe would best foster competition and investment in Canada?(どのような種類の著作権改革がカナダにおける競争と投資をもっとも促進するとあなたは考えますか。)
  4.  What sorts of copyright changes do you believe would best foster innovation and creativity in Canada?(どのような種類の著作権改革がカナダにおける技術革新と創造性をもっとも促進するとあなたは考えますか。)
  5.  What kinds of changes would best position Canada as a leader in the global, digital economy?(どのような種類の改革が、もっともカナダを世界的なデジタル経済におけるリーダーに立たせるでしょうか)。

 その結果寄せられたコメントを、こちらから閲覧することができます。しかも、寄せられたコメントに対して更にコメントを投稿できるようになっています。

 そして、カナダ政府は、FAQの冒頭に

Why is the government consulting on copyright? Why now?

という質問を用意し、

The current copyright legislation was enacted in 2001. It is important that any new legislation that is tabled not only reflect the current technological reality, but is also forward-looking and can withstand the test of time. The government is taking this opportunity to listen to Canadians about what is important to them on copyright.

と自答しています。

 日本政府も、折角政権交代したのですから、著作権に関して何が重要なのかということの意見募集を、一般の日本国民対象にしてくれないかなあと思います。

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10/13/2009

中央大学法学部著作権法ゼミの2010年用入ゼミ選抜レポート

 中央大学法学部で担当している著作権法ゼミの、今回の選抜用レポートの課題は、下記のとおりとしました。

下記のテーマのうち一つを選んで下さい。

【テーマ1】 音楽産業がどのような措置を講じたら、音楽コンテンツに関して1年間にあなた自身が支出する金額を増大させることになると思いますか。

【テーマ2】 「Web3.0」と呼ぶに値するのはどのようなコンセプトでしょうか。

 この10年くらいコンテンツ産業側のいろいろな試みは拝見しているのですが、その試みによってコンテンツへの支出を増やす主体として自分を除外する議論には正直辟易していたので、【テーマ1】を出題してみました。

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10/08/2009

Winny事件第2審判決について

 Winny幇助犯事件に関して大阪高裁は、被告人を無罪とする逆転判決を下したそうです。

 「雨にも負けず風にも負けず」に大阪まで傍聴に行った落合先生のメモによると、

winny自体は価値中立的な、有用なソフトであるところ、このようなソフトの提供者に幇助犯が成立するかどうかについては、新しい問題であり、慎重な検討が必要である。当審(大阪高裁)における証拠調べの結果も踏まえると、winnyによる著作権侵害コンテンツの流通状況は調査、統計結果により差異があり明確ではないなどの事情が認められる。
被告人の行為は、価値中立的なソフトを提供した価値中立的な行為であり、提供されたソフトをいかなる目的でいかに利用するかは個々の利用者の問題であって被告人には予想できなかった。罪刑法定主義の観点からも、このような行為につき幇助犯が成立するためには、原審(京都地裁)が示したような、違法行為に利用されることを認識、認容していたという程度では足りず、提供された不特定多数が違法な用途のみに、あるいは主要な用途として違法に利用することを勧めている場合にのみ、幇助犯が成立すると解するべきである。
被告人は、違法な利用があり得ることの蓋然性を認識、認容してはいたが、違法な利用をしないよう注意するなどしており、不特定多数が違法な用途のみに、あるいは主要な用途として違法に利用することを勧めて提供していたものではなく、幇助犯は成立しない。
したがって、被告人は無罪である。

とのことです。これを見る限り、幇助犯の成否の判断基準は、Grokster事件米国連邦最高裁判所判決に近いように思います(Grokster事件米国連邦最高裁判所判決では、ベータマックス事件米連邦最高裁判決以来の「実質的な非侵害用途があるか否か」という基準に、「違法な利用を誘引していたか否か」という基準を加えて判断しています。)。

 この判決が仮に上告されることなく確定したとして、問題は、この判決は、中立的な行為による幇助における「幇助の故意」を厳格に解釈したものなのか、中立的な行為による幇助における「因果の相当性」を厳格に解釈したものなのかということになろうかという気もします。単に幇助の故意が否定されただけですと、その公衆に提供した「中立的道具」により、過失犯も処罰される法益侵害行為がなされた場合には、過失による幇助として処罰されうるのではないか、あるいは、「被害者」から損害賠償請求がなされた場合にこれが認容されるのではないかという問題が生じうるからです(後者については、下級審の、しかも刑事部における「幇助」の要件についての判示に、地裁知財部ないし知財高裁が拘束されるわけないではないかという批判は大いにあり得るところですが。)。

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10/01/2009

The Beatlesのリマスターとレコード輸入権

 リマスター版の「Abbey Road」のメーカー希望小売価格が2600円、Amazon.comでの販売価格が$11.99(約1080円)。価格差約2.5倍。あまり物価水準に差がないと文科省の役人が数年前に言っていた、日米間で、同じCDの価格差が約2.5倍。

 Amazon.comで、「Abbey Road」を並行輸入しようとしたときに、レコード輸入権侵害として、後で損害賠償請求されるのではないか、あるいは税関に輸入差し止めを食らうのではないか、とても心配です。

 あとは、リマスター版についても、独自に「国内において最初に発行された日」というのが設定されるのか、元のレコードの「国内において最初に発行された日」が援用されるのかによってくるのですが。

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09/26/2009

「こち亀」の終わり

 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」実写版は,案の定だめだったようです。葛飾区民としては残念な限りです。

 主役の両津勘吉を香取慎吾氏に配した時点でだめだめなことはわかっていたわけですが,残念です。亀有→香取神社→香取慎吾という安易な発想では,もうだめなのです。

 なぜ,香取慎吾ではだめなのか,といえば,一つには,容姿端麗でないことが前提となっているキャラクターに容姿端麗であることが前提のアイドルタレントをあてているということがあります。もちろん,ロケ現場を見学に行こうという地元民のお目当てが香取慎吾ではなく速水もこみちに移っているので,もはや香取慎吾は「二枚目キャラ」ではないではないかとの反論があるのかもしれません。また,香取慎吾は,スマスマや「慎吾ママ」などで「三枚目」を演じてきたではないかという反論があるかもしれません。でも,三枚目キャラが演じられるということと,醜男キャラが演じられるということとは,明らかに違うのです。

 また,香取慎吾がジャニーズ事務所に所属しているという点も,香取慎吾ではだめな理由の一つです。なぜだめなのかというと,ジャニーズ事務所の頑ななネット拒否戦略のため,ネットを宣伝媒体として十分に活用できないからです。

 例えば,TBSのウェブサイトを見ると,第1話放送直前スペシャル企画として,「出演者の皆様の"生の声"を動画で紹介」するコーナーを設けていますが,肝心の,主役である香取慎吾の「生の声」は紹介されていません。さすがに「人物相関図」で香取慎吾のみを似顔絵にする愚こそ避けていますが,関係者のインタビューコーナーに主役である香取慎吾の単独インタビューは掲載されていない,準主役の速水もこみち,香里奈を交えての三者対談でも主役である香取慎吾だけ画像が掲載されていない,云々と,まあひどいものです。ひどいといえば,ゲスト紹介コーナーで,ジャニーズ事務所所属のタレントのみ画像が掲載されていないというあたりも,ひどいものです。いまどき,主役とメーンゲストがここまで露骨にネットを蔑んでいたら,視聴者にそっぽを向かれても仕方がないというべきでしょう。

 これらの点は,ジャニーズ事務所所属の芸能人を使わないおかげでネットとのコラボレーションが自由に行えている「天地人」と比べれば明らかです。NHKは,公式サイトに掲載する最初のインタビュー記事として,主役を演じる妻夫木聡の単独インタビューを掲載し,そこに何枚もの主役の画像を掲載するという,いわば番組宣伝の王道をネット上でも展開できています。「天地人」公式サイトのQ&Aコーナーによれば,

連続テレビ小説、大河ドラマの番組ホームページの作成にあたっては、「番組宣伝の目的で開設し、番組終了後は速やかに閉鎖する」というお約束で、出演者・関係者の皆様から開設・公開についての了承をいただいております。
とのことです。逆に言うと,この程度の肖像の利用すら了承できないタレントを使うのは,もうやめた方がいいのではないかという気がします。

 まあ,すでに「大企業病」が蔓延している民放キー局においては,「ジャニーズタレントを主役級に抜擢しておけば,キャスティングミスで責任をとらされることがない」くらいの感覚なのかもしれませんが。

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09/21/2009

日本企業は今後常に米国の後塵を拝していれば良い?

 日経BPの記事によれば,日経連は,

この著作権法改正を受け、「現状、ビジネスの観点からは、権利制限に関する一般規定を置く具体的必要性は、基本的に無くなった」とし、「今後、何らかの具体的必要性が生じた場合には、その時点で検討すれば足る」との見解を示している。

とのことです。なるほど,大企業の経営者たちが集まる団体がこの体たらくでは,日本がこの20年間経済成長から取り残されるのも宜なるかなといったところです。

 日経連としては,起業家たるものは,著作物を公正に利用するビジネス手法を思いついたとしても,それが形式的に現行著作権法に抵触する場合には,文化庁の役人または政権与党にロビー活動を行いそのようなビジネスの具体的必要性を納得させてそのビジネスが明確に射程範囲に含まれる権利制限規定を創設させてから,そのビジネスを実行すれば足りるのだとお考えのようです。

 そこでは,素晴らしいアイディアと実装能力のある若者たちが著作物を公正に利用する新たなビジネス手法を思いついたとしても,文化庁の役人または政権与党にロビー活動を行う資金力と人脈がない限り,そのアイディアを実装したビジネスを行うことは許されないということになります。そして,おそらくは,文化庁の役人や政権与党にそのビジネスを適法化する個別の権利制限規定を創設する「具体的必要性」が生じたと納得していただくためには,米国等で既にそのビジネスが行われて世界的なシェアを獲得する企業が現れた後になるのではないかと思われます(実際,立法府が検索エンジンの具体的必要性を認めて,これを適法化する個別の権利制限規定を創設するのに,10年以上の月日がかかったのです。)。すなわち,日経連としては,著作物を公正に利用するビジネス手法に関していえば,日本企業は今後常に米国の後塵を拝していれば良いということを言っているのだということになります。

 あるいは,ベンチャー企業が素晴らしいアイディアを思いつき,ベンチャーキャピタルなどから資金を集めてそのアイディアを実装すべく準備している段階で,そのアイディアの実行を適法とする個別の権利制限規定を創設する必要性を立法府が汲み取って早急にそのような規定を創設してくれるというのであれば,「何らかの具体的必要性が生じた場合には,その時点で検討すれば足りる」かもしれません。が,いくら政権が変わったからといって,立法府がそんなに機動的に動けるとまで信頼するのって無理があると思えてなりません。

Posted by H_Ogura at 02:40 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

09/19/2009

日本版フェアユースに関する議論の出発点

 日本版フェアユースに関するシンポジウムが盛んに行われているようです。ただ,tsudaられたものを見ている限り,議論の出発点が違うような気がします。

 そもそも,著作物の「公正な利用」までも禁止する権限を著作権者に付与することは,そもそも憲法上許されるのだろうか。
仮に許されるとして,著作権法の根本目的との関係で合理的なのか。

 議論の出発点はそこにあります。著作物の「公正な利用」までも禁止する権限を著作権者に付与することは憲法上許されない又は著作権法の根本目的との関係で合理的ではないということが承認されれば,次は,著作権者に禁止権を付与すべきでない「公正な利用」を全て適法とすべく権利制限規定を適切に立法する能力が立法府にあるのかということが議論の対象となります。すなわち,立法府にそのような能力があるということであれば抽象的・包括的な権利制限規定たる日本版フェアユースは不要だということになりますし,立法府にはそのような能力はないということになれば,日本版フェアユースは必要だということになります。

 そういう意味では,日本版フェアユースの要否というのは,制定法を違憲無効とする制度,とりわけ適用違憲とする制度の要否と似ています。常に適切に例外規定を設けて過剰規制を回避する能力が立法府にあるのであれば適用違憲などという「予測可能性が乏しい」制度は不要ですが,実際にはそうではないので,適用違憲という仕組みが認められています。現在のところ,予測可能性が乏しいから,あるいは,弁護士に多額を報酬を支払わないと権利主張を行うことができないから,という理由で適用違憲という仕組みを認めることは許されないと主張している法律専門家はほとんどいないようです。

 さらにいえば,その著作物の利用が「公正利用」にあたると裁判で主張するには時間と費用がかかるといってみたところで,その利用を適用対象とする権利制限規定を創設してもらうべくロビー活動を行うのに要する時間と費用と比べたら,よくよく安上がりです(おそらく,桁が一つから二つ違います。)。従って,「裁判闘争には時間と費用がかかる」ということは,日本版フェアユースを創設しない理由とはなりません。それは,「裁判闘争には時間と費用がかかる」ということが,裁判所による違憲立法審査を認めない理由とならないのと同様です。

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08/18/2009

ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会

 久保田裕さんがまた「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会」なる団体を立ち上げたようです。

 でも、こういう団体を立ち上げるのであれば、MIAU等の利用者団体にも声を掛けるべきだったのではないかなあと思います。特に、WinMXのディープユーザーへのインタビュー経験豊富な津田さんを中に入れないだなんて、もったいないなあと思います。更にいえば、私ならば、Winnyの金子さんにも声を掛けるけどなあと思います。この発表されているメンバーだけだと、ファイル共有ソフトの利用者の実像を過度に醜悪なものとする認識を共有してしまうがために、彼らの心理にあった有効な対策を打ち出せないような気がします。

 さらにいえば、このメンバーの中に法律屋さんが含まれていないことも問題でしょう。

Posted by H_Ogura at 05:31 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

新設著作権法第30条第1項第3号の解説

 新設著作権法第30条第1項第3号の解説を、SOFTIC LAW NEWSに寄稿しました。

Posted by H_Ogura at 05:06 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

ダウンロード違法化の具体的な問題点

 高木浩光さんとMIAUとの関係が少々険悪になっているようで、心配です。

 MIAUについてはいろいろな批判があるのは分からないでもないし、私はMIAUが有害コンテンツ関係や児童ポルノ関係に手を出すのは戦略的に拙いなあと思いはしますが、自分が会員にすらなっていない団体がどの領域に主たる関心を示し、どの領域に関心を示さないかについてとやかく言ってみても始まらないので、その点は基本的に静観しています。

 Googleとプライバシー権の関係一つとっても、高木さんはストビューの問題に関心を持っているのに対して、私は、グーグル検索(ウェブ検索のみならず画像検索を含む)によるプライバシー情報の拡布の問題に関心を持っているというように、関心のあることがそれぞれ異なるのだから、その問題に強い関心を持っている人がその問題に関して動いていくしかないように思ったりしているからです。

 もちろん、MIAUは、入会資格をオープンにしているという程度しかインターネットユーザーを代表する資格の担保をしていないわけですが、インターネット利用者の匿名性が強く保証されている現状でそれ以上の代表資格の担保を求めると、結局、どこもインターネット利用者の代表者たる資格はないという話にしかならないような気がします。そして、それは結局、インターネット利用者の声など、審議会等で聞く必要はない(いや、聞いた方がよいと思うのだが、聞く手段がない)という話になっていきそうです。

 その上で、ダウンロード違法化との関係について若干言及すると、高木さんは、

Winny等はその仕組み上、ダウンロードすると同時にアップロードする(送信可能な状態におかれる)ようになっており、そのことをよく知らない大量のネット中級者が無差別にファイルを溜め込んで送信可能な状態においていることが、違法コンテンツ流通蔓延の原因になっている。ネット上級者であるMIAUの人達ならよく知っていることだろう。
アップロードを自覚しないWinny利用者らは摘発できない(故意が認められない)のだから、津田代表理事が言うように「アップロードの摘発をもっと効率的に行うべき」であるなら、Winny等の利用者に向けて、「あなたがやっていることはアップロードですよ」という注意喚起をしたらいいのに、MIAUはそういうことをやらないのだろうか。MIAUは、インターネットリテラシ読本作成のプロジェクトも活動の柱の一つとしているのだから、そうした啓発活動をするのも本来、自然なはずではないか。

仰るのですが、民事的に、不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求をする分には、Winny利用者に故意がなくったって大丈夫なのですから(過失なしとはいえないでしょう。)、権利者側に「摘発」する気があれば摘発できます。民事上の発信者情報開示請求手続が正常に機能しているのであれば、権利者が、その手続を利用して発信者を突き止めて損害賠償請求権を行使するというのが本筋だと思うのです。いきなり警察がやってきて一罰百戒とばかりに逮捕→起訴→失業→執行猶予という制裁を、アップローダーのごくごく一部に加えるよりはよほどましかなあと。

 そういう意味では、権利者側が「発信者情報開示請求→アップローダーに対する損害賠償請求」に踏み切らない理由が発信者情報開示請求制度の中にあるのであればそこを改善すれば良いではないかというのは、分かりやすい話ではないかと思うのです。そして、「Winny等はその仕組み上、ダウンロードすると同時にアップロードする(送信可能な状態におかれる)ようになって」いることすら理解していないライト感覚のInfringerは、IPアドレス偽装とかそういうことにも頭を使っていなさそうなので、権利者側からすれば簡単に「摘発」できるはずなのになあと思ったりします(真実性の抗弁が成立しないことの立証まで求められる名誉毀損事例と比べると、遥かに簡単だと思ったりします。)。

 で、アップローダー規制だと、アップローダーの共有フォルダに蔵置されているファイルに蔵置されている著作物等のみが被侵害著作物となるので、アップローダーの共有フォルダは通常公開されている以上、アップロードに用いられているコンピュータのハードディスク自体を検証する必要がないのに対し、ダウンローダー規制の場合、アップローダーではない純粋ダウンローダーに対して権利行使をする場合は、被侵害著作物の全容を明らかにするためにはダウンロードに用いられているコンピュータのハードディスク自体を検証しなければならず、その過程でダウンローダーのコンピュータ・プライバシーは全て権利者側に筒抜けとなるのです。そして、権利者の一極は、テレビ局という報道機関であり、そのような報道機関に自分のプライバシー情報が丸裸にされるわけです(しかも、それらの情報の目的外使用を禁止する条項はありません。)。

 だから、ダウンローダー規制の旗を振ってきた松田政行弁護士だって、ダウンローダー規制を新規立法しても大した弊害がないということを説明するためには、そのような法規制ができても権利者は権利行使しないから大丈夫だという話をするしかなかったわけです。で、新規立法によって可能となった権利が権利者によって行使された場合に、メディア企業によるプライバシー侵害等の弊害を何ら抑止できない、そういう立法について「具体的な問題がない」といってしまうのは、私は抵抗を感じます。

Posted by H_Ogura at 12:33 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/06/2009

対案や妥協策の提示がなかった理由

 高木浩光さんがMIAUの中川さんをはてブコメントで非難する過程で,

これはMIAUの活動の話かな?ダウンロード違法化反対運動と児童ポルノ単純所持処罰化反対運動はまさに「考えられる危険性をリスト」しまくったあげく対案や妥協策の提示がなかった。そもそも何のための反対なのか。

と述べています。

 JASRACやテレビ局に個々人の使用しているパソコンのハードディスクの内容を検証する権限を付与する「究極のプライバシー侵害」法である「ダウンロード違法化」について,どんな対案や妥協策を提示すべきだったというのか,はなはだ疑問です。改正法案を作る前から,改正法が成立しても,改正法により行使可能となった権利を行使しないと,ロビー活動を行った側の弁護士が表明(あくまで弁護士しか表明していないことに注意。レコード輸入権のときは業界団体の長が不行使宣言をしたことと対比すべき。)せざるを得ないほど,この改正法により可能となるプライバシー侵害の度合いは大きいのです。それに,「考えられる危険性をリスト」しまくったといわれても,権利者側に証拠がない場合に証拠保全等による公的な証拠収集手続がとられる可能性があると考えるのは,法律実務家からすると当たり前の感覚であって,「証明が大変だから,権利行使は実際にはなされないので,安心せよ」みたいな言い方に疑問を提示するのは「考えられる危険性をリスト」しまくったといわれるほどのことなのか,大いに疑問です。

 もちろん,実際の条文案が公開されてからは,想像以上にずさんな条文を改善する方向で提案をすることは可能だったかもしれないですが,ただ,レコード輸入権のときとは異なり,改正法の目的自体が私たちのコンピュータ・プライバシーとは相容れないので,いくら条文案を手直ししても,さしたる意味はありません(解釈上不明確な点を明確化できる程度のお話です。)。

Posted by H_Ogura at 02:30 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/01/2009

違法コピー現象の立役者

 NBLの2009年7月15日号では,ACCSの久保田裕さんの巻頭コラムも掲載されています。

 もっとも,日本におけるソフトウェアの違法コピー率の低下をさもACCSの手柄のようにいうのは正確さを欠くかなあという気がします。

 日本において,ソフトウェア,とりわけビジネスソフトの違法コピー率が低下した最大の要因は,違法コピーをする必要がなくなったということにあります。

 私のゼミ生などはほぼその時代のことを知らないわけですが,昔は,たかだかワープロソフト1本で定価9万8000円など当たり前という時代があったわけで,そういう時代においては,比較的金銭的なゆとりのある企業においても,社内のパソコン1台につき1パッケージを購入するように社内的に申請を出すことはかなり抵抗感を感じざるを得なかったわけです。ところが,最近は,オフィススイートが非常に安くなりましたし,さらにパソコンにプリインストールされて提供されることが増えてきました。こうなってくると,例えば,Win系のパソコンを導入する場合に,MS OFFICEのプレインストールされているものを導入するように社内申請を行うことに,従業員はさほど抵抗を感じずに済みます。すると,わざわざ,「違法コピー」する必要がなくなるわけです(だから,今でも十分高いアドビ系のソフトは,今でも違法コピーの対象となりやすかったりします。)。

 また,ビジネスで通常利用するソフトウェアが固定化してきたために,アーリーアダプターな同僚が使用しているソフトを──どうも便利そうなので──試しにインストールしてもらうみたいなこともかなり少なくなってきているのではないかと思います。もちろん,「痒いところに手が届く」ようなニッチなソフトは今でも栄枯盛衰は激しいのですが,そういうのって,フリーウェアかシェアウェアだったりするではないですか。

 そういう意味では,ソフトウェアの違法コピーを減少させる最大の方策は,正規商品市場を成熟化させることにあったということになるのだろうなと思ったりします。

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07/31/2009

ヴェルヌ?

 NBLという企業法務系の法律雑誌は、巻末に「惜字炉」というコラムを掲載しています。2009年7月15日号の「惜字炉」は、「憂国の啓明子」という方による「グーグルのライブラリプロジェクト和解案が投じた、一つの法的争点」と題するコラムです。

 そのコラムを読んでいて、一つどうしても気になってしまうことがあります。ベルヌ条約を、わざわざ、

ヴェルヌ条約
と記載しているのです。それも、一度ならず二度もです。

 「ベルヌ条約」は、英文表記では「Berne convention」ですから、「ヴ」という表記を認める見解に立ったとしても、「ヴェルヌ」とは書きません。「海底二万里」の作者「Jule Verne」であれば「ヴェルヌ」というカタカタ表記でも良いのですが、「Berne」を「ヴェルヌ」とカタカナ表記するのは明らかに間違っています。

 「Berne」の語源がドイツ語で「熊」を意味する「Bär」に由来しているということを思い出せば、「V」ではなく「B」から始まるのだと見当がついたと思うのですが、社会人になると、学生時代に勉強したことは忘れてしまうものですね。

Posted by H_Ogura at 04:11 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

07/21/2009

「情を知って」から「事実を知りながら」への変更

 いろいろなところで、改正著作権法の解説を!という要請があって色々頑張っているところです。

 ところで、ダウンロード違法化を導入するにあたって「情を知って」という条件が付されるから大丈夫だみたいな言い回しが随分広く行われていたような気がするのですが、実際の改正案では「情を知って」ではなく「事実を知りながら」という文言が用いられています。

 「事実を知りながら」という文言は、第30条第1項第2号でも用いられていますが、あちらでは、その行う複製が、技術的保護手段の回避を行うことにより可能となり又はその結果に障害が生じないようになったものであるということを知っているか否かが問題となるので、「事実を知りながら」でもよいと思うのですが、第3号の場合、その受信する自動公衆送信が著作権を侵害するものか否かということが問題となるので、その送信行為を違法な自動公衆送信であると裁判所が相当の確度で判断するであろうというところまで知っていたかを問題としないとまずいのであって、そうだとすれば第113条第1項第2号のような「情を知って」の方がよかったのではないかという気がします。例えば、「MYUTA」事件の場合、その受信する音声データの送信元が何をやっていたのかということをその受信者は知っていたかも知れないけれども、それが著作権を侵害する自動公衆送信にあたるという法的評価はおそらく知らなかったのであって、そのような場合、「事実を知」らなかったとしてもらえなかったら、利用者保護に全然ならないよなあという気がどうしてもしてしまいます。

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06/29/2009

ウェブ魚拓

 私のブログのエントリーについて大量にウェブ魚拓している人がいるようなので、「ウェブ魚拓の考え方」と題するページを見ていたのですが、複製権侵害または公衆送信権(送信可能化権を含む)侵害を主体的に行いまたは幇助しているのではないかという疑問に対して答えていないという時点で、予防法務的には絶望的だなあと思ったりします。

 サービスの特性上、その著作権者から削除要求がなされたときに削除するというふうにはしがたいのかも知れませんが、それをしないと、プロバイダ責任制限法第3条第1項の免責は受けられませんし、「丸ごとコピー&主たる著作物なし」では著作権法第32条により適法とされることもまずあり得なさそうです。

 サービスの特性上、その著作権者を攻撃する目的で活用されることが予定されているのに、その著作権者からの「著作権侵害だ!」という攻撃に対し無防備でいるというのは、如何なものかなあと思ったりします。

 このサービスを続けるのであれば、怒りの矛先が魚拓者に向かうように、魚拓者のIPアドレスを標準で表示するようにしておくところからはじめないと厳しいかなあと思ったりします。

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06/26/2009

翻案権侵害の例

 中央大学での著作権法のゼミで、

問6 下記文章のA~Fに適切な語を入れて下さい。

「AのBという楽曲のうちCと歌っている部分は、DのEという楽曲のうちのFという歌っている部分の歌詞/曲の『表現上の本質的な特徴の同一性を維持』 しており、その『表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる』ので、翻案権侵害に当る。」

という課題を出したのですが、どのような答えが返ってくるのか楽しみです。

 もちろん、

問5 「料理の鉄人」と同様の料理バトル番組を、「料理の達人」というタイトル名で制作し、放送することは許されるか。どのような点につき「料理の鉄人」を真似たら、フジテレビの著作権を侵害することとなるでしょうか。
等普通の課題も出してはいます。

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06/22/2009

国立メディア芸術総合センター(仮称)

 里中満智子さんが次のように述べています。

マンガは“原画の収集・保管”が難しい。既に本として見られない物もあるし、失くしたくない、文化遺産としてのマンガ原稿がたくさんありますが、作者が亡くなった後、散逸してしまう事もあります。散逸の危機にあるマンガの原稿を保存する、劣化したマンガの原画を修復するなど、公的な施設でしか出来ない事をやるべきです。
関連してその原画の作品がどういう作品なのかという事をアーカイブで見せるという事が有効です。国立メディア芸術総合センター(仮称)がその窓口機能を担って、既存の施設とうまく連携して行ければといいと思います。

 この種の資料館作りをする上での最大の関門は如何に遺族(の一部)の反対に遭わないようにするかということなのですが(遺族全員の承諾がなければ,散逸の危機にあるマンガの原稿を保存する、劣化したマンガの原画を修復する,デジタルアーカイブを作成するということはできないのですから。),国立メディア芸術総合センター(仮称)構想の中に,そのような遺族の権利を制約していこうという発想まで含まれているのかというと大いに疑問です。そこをクリアしないと,箱物はできたけど,箱物の中身はがらんどうということだって十分あり得るのです。

 もちろん,生前に預けたっていいのですが,国立メディア芸術総合センター(仮称)が完成したら,自分が保管している原稿を無償で寄贈し,その修復やデジタルアーカイブ化を無条件で許可・同意するという漫画家がどれだけいるのかというと,結構疑問だったりします。しかも,権利自体は漫画家個人ではなくて,法人が有している場合が少なくなく,その場合,その種の法人は漫画家が死んだ後もスタッフで続編作って喰っていこうとする傾向があるので,そうなると,原稿だってなかなか手放さないのだろうなと危惧したりします。

 国立メディア芸術総合センター(仮称)の箱物を設計する前に,その辺の覚悟の程を,漫画家たちが示すのが先ではないかと思ったりします。

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06/21/2009

JASRAC寄付講座

 昨日は,早稲田大学法科大学院で行われている著作権法の特別講義にゲストスピーカーとして呼ばれ,上野達弘先生と一緒に,間接侵害についてお話ししてきました。いや,JASRACの寄付講座で私をゲストスピーカーに呼び,しかも間接侵害について語らせてしまう上野先生の剛毅さというのが光っています。

 そのあとは,学生の有志とともに,西北の風(大隈記念タワー15階)で軽く雑談をしてきました。

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06/20/2009

芸術・技術分野の知識

 6月22日締め切りの判例解説の初稿を完成させて,今日,編集者に送信しました。

 前回のゼミの課題として,プロデューサー,監督,撮影監督,美術監督がその実体験について書いた書籍を読んで,プロデューサー,監督,撮影監督,美術監督というのは,どのようにして映画の著作物の全体的形成に寄与するのかをレポートしなさいという課題を出したわけですが,著作権法の難しさの一つは,法律の条文や判例や学説をいくら勉強しても,その対象となる芸術・技術分野についてもそれなりに勉強していかないと,何が何だかよくわからないというところです。もちろん,新司法試験にパスするだけなら,基本書に書いてあることをきちんと身につければ何とかなると思いますが,実務的にはそこで止まってしまう人は厳しいわけです。

 「舞踊の著作物」について創作的な部分が共通しているといえるか否かという問題についていえば,例えば,長い歴史を持つクラッシックバレエや花柳流舞踊等において,「振付け」のレベルで創作性が加わるとはどういうことなのかということを議論しなければならず,それは,バレエ等の舞踊を実演することや鑑賞することを趣味とはしない私には非常に難しい問題です。一応,舞踊等に関する文献等を読みはするものの,果たして,それほど外すことなく理解できたといいうるか,その道に通暁した読者の評価を仰ぐより他ありません。

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06/10/2009

海賊党,躍進

 以前ご紹介した海賊党ですが,とうとう欧州議会で議席を獲得したとのことです。

 スウェーデン票の7.1%を獲得とのこと,立派なものです。7%といえば,前回の日本の参議院選挙でいえば,共産党とどっこいどっこい,社民党の倍近い得票率です。少なくともスウェーデンでは,著作権法はそこまで嫌われているということです。

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06/08/2009

Twitter Squatting

 ABA Journalによれば、セントルイス・カージナルスのTony La Russa監督が、自分の名前を騙ったTwitterページが作成されているので削除せよと要求したのに拒否されたとして、Twitterを訴えたようです。

 同ジャーナルによれば、請求の原因として、" trademark infringement, cybersquatting and misappropriation of likeness and name"といったものをあげているようですが、日本法の感覚だとどれも厳しそうな気がします。Twitterの場合、「商標的使用」からは遠そうですし(具体的な商品やサービスと結びついていれば別ですけど。)。

 偽Tony La Russaがつぶやいた言葉次第によっては、名誉毀損が成立するかなあとは思います(実在の女性の名前を騙って、卑猥な内容を掲示板等に投稿したりするのと、同レベルの話として。)。

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06/03/2009

Farewell to "Pretty Woman"?

 衆議院を通過し、参議院にかかっている著作権法改正案が可決成立したら、FairUseにあたるとしてそのアップロードが適法となっている楽曲(例えば、2 Live Crewの「Pretty Woman」)をiTunes Store等でダウンロードする行為も違法になってしまうのでしょう。

 少なくとも、この種の利用まで「公正利用」に含めるフェアユース規定が日本の著作権法に導入されるまでは、です。

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05/31/2009

他人に迷惑をかけなくてもアンフェア?

 昨日のエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークのシンポジウムは盛況でした。

 当日の私の質問は,結局,(著作権者の許諾を得ない)著作物の利用が「フェア」であるか否かの判断基準に関するものでした。その利用が,著作権者による著作物を通じた投下資本の回収可能性を阻害しないような利用(三田先生の挙げた例に則していえば,問題集を発行する出版社が,どの問題を問題集に掲載するかを検討する資料として,入試問題を社内サーバに蓄積する行為)って,アンフェアなのでしょうか,ということでした。

 私たちは,他人に迷惑をかけずに,別の他人の利益になることを行っている場合にも,それは「フェアではない」として制裁を受けなければならないのか。それは,公共の福祉に反しない限り自由な行動が許されるとする日本国憲法下のルールとして適切なのかという問題でもあります。「あちら側」の人の意識というのは,よくて「著作権法」によっていくらでも国民の自由を制約することができるという明治憲法的意識にとどまっているのではないかと思うことがあります。

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05/28/2009

「Tsudaる」問題

 ゲームラボの7月号のコラムで、「Tsudaる」問題を取り上げてみることにしました。

 さっき初稿を送信したばかりなのでどうなるか分かりませんが、端的に言うと、「営利目的バリバリのシンポなどについては、やり方次第で結構グレイ」といったところでしょうか。

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05/18/2009

「フェアユースは本当にフェアか!? 」シンポジウム

 私も所属しているエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークで、「フェアユースは本当にフェアか!? −フェアユースが著作権にもたらす論点分析—」というお題でシンポジウムを5月30日に開催するとのことです。

 基調報告が、モリソン・フォースター(伊藤見富)の古島ひろみ弁護士と、文化庁の川瀬真さん、パネリストが、上野達弘・立教大学准教授、 菅原瑞夫・社団法人日本音楽著作権協会常務理事、田村善之・北海道大学教授、丸橋透・ニフティ株式会社法務部長、三田誠広・社団法人日本文藝協会副理事長、ということで、「こちら側」がいないことを除けば、豪勢な布陣ではあります。

 これだけの陣営を揃え、かつ、シンポジウム終了後懇親会まで開くのに、何と参加費が無料です(同じ日に行われる「アゴラ」のシンポとは、大違いです。)。

 伝統的に、知財系は、懇親会等では「あちら側」も「こちら側」も紳士的に交流するのが常ですので、フェアユース問題に関心のある方は参加してみては如何でしょうか。

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05/16/2009

著作権法学会(周辺領域)

 先ほど,著作権法学会から帰ってきました。

 こういう学会は,研究大会に出席し,さらに懇親会に出席してこそ意味があります。

 ということで,いろいろなアイディアを頂きました。

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05/13/2009

サーブがまずすべきこと

 地上デジタル放送専用のDVDレコーダーについて,東芝及びパナソニックが私的録音録画補償金を上乗せして消費者から徴収しないこととしたとのニュースが話題になっています。

 私的録音録画補償金については,法の建前上は支払義務者は機器等の購入者であるのに,権利者団体は機器等の購入者である消費者からなる団体と協議して,私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の範囲について合意を形成する努力を怠ってきたわけですから,いずれこういう動きにはならざるを得なかったのだろうと思います。私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等に該当しないものについて,該当すると誤信して私的録音録画補償金相当金を上乗せして消費者から徴収してサーラやサーブに支払ってしまい,後にその機器が私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等に該当しないことが明らかになった場合,ややこしい問題となりうるからです(各製造業者がサーラやサーブから支払い済みの補償金の返還を受けて,これを消費者に返却することになるのでしょうか。その場合,返還に伴う事務経費を専ら負担するのはメーカーっぽいです。)。

 そして,私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の範囲を定める著作権法施行令第1条では,媒体に固定される音・影像が,特定の標本化周波数で「アナログデジタル変換」されたものであることが私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の要件となっているところ,最初からデジタル方式で受信してそのままデジタル方式で影像を録画する地上デジタル放送専用のDVDレコーダーに関して,それが特定の標本化周波数で「アナログデジタル変換」された影像を録画するものである(それゆえ,私的録音録画補償金の支払い義務が購入者に生ずる)ということを,サーラもサーブも,購入者が納得できる形で説明できていないわけです。といいますか,自説の結論だけをそのウェブサイトに記載しているだけで,著作権法施行令第1条との関係でそれらの機器がどうして私的録音録画補償金の対象となるのか,筋道を立てて説明を行っていません。購入者から説明を求められたときの理屈の組み立てまで丸投げされたのでは,メーカーが匙を投げるのも宜なるかなと言ったところです。

 そういう意味では,サーブがまずやるべきことは,MIAUや主婦連等の消費者団体にコンタクトをとって,私的録音録画補償金の支払い義務を生ずる機器等の範囲について,コンセンサスを得ることではないかと思います。

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05/02/2009

何も畏れることはない

 朝日新聞によれば,

インターネット検索最大手の米グーグルが進める書籍検索サービスについて、詩人の谷川俊太郎さん、作家の三木卓さんらが30日、東京都内で記者会見し、著作権侵害の恐れがあると危機感を訴えた。

とのことです。

Google Inc.も,著作権者が検索サービスに組み入れるなと明示的に意思表示をしているものについてそれでも組み入れてやると言っているわけではないのですから,和解した上で,検索データベースからの作品の削除を申し出ればいいだけであって,何も危機感を覚える必要はないのではないかという気がします。むしろ,和解から離脱することにより,終局判決において,書籍データベースでの書籍データの利用はフェアユースにあたるという判断が下される可能性だってあるわけですから,検索されたくないのだったら,和解に乗った方がいいのではないかという気がしなくはありません。弁護士からどういうレクチャーを受けているのかわからないのですが,書籍データベースへの組み込みのために複製・翻案って,検索結果の出力さえ工夫しておけば,正規商品たる書籍と代替性のないものとすることが可能ですので,フェアユースにはなりやすいように思ったりはします。

 CNet Japanによれば,社団法人日本ビジュアル著作権協会は,

弁護人を立て、米国の出版ルールに即した今回の和解案ではなく、ネットでの利用方法や利用料の分配について、日本の慣行に即したルールづくりを目指し、独自にGoogle側と交渉を進めていく意向を明かしている。

とのことです。

 「日本の慣行に即したルールづくり」って,同種のサービスが日本で行われていない以上どこにいったら「日本の慣行」とはなんぞやがわかるというのか,訳がわかりません。書籍の貸与権のときに現れた,「著作権者でも,著作隣接権者でもない,著作権法上は何らの排他的権利をも有しない出版社に相当の分け前を与える」っていう,根拠不明のルールに従えということではないことを望むばかりです。それって,出版社としての優越な地位を悪用した,(法律の原因に基づかない)単なる搾取なのではないかと思えてなりませんし。

Posted by H_Ogura at 02:35 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

04/29/2009

disrespect

 現代の日本には,弁護士が代理人として内容証明を出すまでアーティスト等に約定の印税を支払わないレコード会社や音楽出版社が多すぎるような気がすると,そのような代理人の一人である私は思ったりします。

 権利者団体の人たちは,自分たちの構成員こそがアーティスト等をdisrespectしていないか,きちんとチェックした方がよいのではないかという気がしたりします。

Posted by H_Ogura at 12:09 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

04/25/2009

出版権の内容

 mohnoさんがそのブログで次のように述べています。

福井氏の話で注目したのは、「日本の著作権はあいまいなので、出版社も著者も明確な対応ができずにいる」「現状は、とりあえず和解に残留した上で、数年をかけて明確化していくべき。」「今回のは第1ラウンドで、この先の第二ラウンドに期待している」といったところ。だが、後述のとおり「あいまい」ですませていることが問題を引き起こす可能性もあると思う。
さて、これが、どういう流れだったかというと、まず福井氏が「出版社には契約によって出版権があるけれど、インターネットで配信する場合の権利はあいまい。電子出版が明記されている例は、少ない。そういうあいまいさが、対応を難しくしている」という話をされていた。私はインターネット配信も「出版権」の一部だろうと考えていたから、「出版権とインターネット配信が別個のものとして考えうるというのは意外だった」というところで、「別個とは言っていない。そういう理解になるのかわからない」という話になってしまったわけだ。

 著作権法上の「出版権」についていえば,設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(著作権法80条1項)と定義されているので,インターネットで配信する場合を含まないことははっきりしています(著作権法上の「頒布」は複製物を公衆に譲渡又は貸与することを言いますから。)。

 もちろん,出版契約に付随して,「出版権」の枠外の利用行為について許諾を受けることは可能であり,契約において明記されていれば,インターネット配信に関しても,排他的又は非排他的な利用許諾を受けることは可能でしょう。明記されていないときはどうかといえば,利用方法を特段限定しない利用許諾契約ならばともかく,出版権設定契約においてインターネット配信に関する利用許諾が契約書上に明記されていなかったら,別途明示的な意思表示がない限り,インターネット配信については許諾を受けていないと見るより他ないでしょう。

 実務的にも,少なくとも私が著者として関与している出版社に関しては,インターネット配信をするにあたっては私の許諾を別途取りに来ています。

 もっとも,Google Book Searchの例のクラスアクション和解への日本文芸家協会の対応で理解しがたいことは,何で協会で弁護士を雇ってGoogleへの回答書のひな形を作らせて会員に頒布する程度のことをしないのかということです。回答のパターンはそんなにたくさんないのだから,費用もそんなにかからないと思います。

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Pirates Bay訴訟はやり直し?

 Pirates Bayの創業者たちがスウェーデンの裁判所で実刑判決を受けたというニュースは日本でも注目されましたが,この記事によれば,その裁判はやり直しになるかもしれないとのことです。

 というのも,この裁判に関与した裁判官の一人であるTomas Norstroem判事が,映画会社やレコード会社もメンバーとなっている著作権保護協会のいくつかに所属していることがラジオ局にすっぱ抜かれたからです。Norstroem判事自身は,自分はそのことによって偏ったことはないと言ってはいるようですが,個人的な利害と対立する可能性がある事件については,「公正な裁判」に対する信頼を守るという意味からも,自ら「回避」すべきではあったといえるでしょう。

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04/22/2009

「代表なくして課金無し」

 今年度の文化審議会著作権分科会の基本問題小委員会は,エンドユーザーの意見など斟酌しない方向で委員の人選を行ったようです。

 「代表なくして課税無し」という標語に象徴されるように,ある種の集団に不利益を課す制度変更を行うに際して,その決定過程からその集団の代表を排除しようということは,民主主義社会においてはそれ自体が悪徳です。だから,私たちは,まず私たちの代表を「著作権法」というアンシャンレジームにより人民から搾り取ったお金で不労所得をむさぼる「著作権貴族」たちとほぼ同数の代表を受け入れるように要求していくところから始めていくのが筋ではないでしょうか。そういう意味では,JEITAもMIAUも,自分たちの代表を受け入れよと文化庁に要求すべきだと思います。そして,彼らがその受け入れを拒むときは,「貴族部会」が「著作権貴族」の利益にのみ腐心した議論を行うのと並行して,私たち「第三身分」で著作権法に関する「国民議会」を立ち上げていくことすら必要になっていくのではないかという気がします。

 昔の国王にあたる立法府が,「貴族部会」の結論と「国民議会」の結論のどちらを尊重するのか,予断を許しませんが。ただ,「国民議会」を,そして「第三身分」をリスペクトしなかった某国王がどういう運命をたどったのかは,歴女でなくとも常識に属する範囲の事柄です。もちろん,今日物理的に「ギロチン刑」にかけるということはないのでしょうが,既に「第三身分」は,選挙権という細分化された,社会的な「ギロチン」をもっているのです。

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04/15/2009

一太郎の終わりの始まり

 「一太郎」で知られるジャストシステムがキーエンスの傘下に入ったというニュースは、今や昔といったところでしょうか。

 先日の知的財産研究会で、「一太郎」特許事件においてジャストシステム側の代理人を務めた弁護士さんがレポーターとして研究発表をされていたのですが、官公庁を大口の顧客とする製品に関して、なぜしなくともよい冒険に敢えて踏み切ったのか(この事件で問題とされたところって、パッチを当ててプログラム本体から削除しても、特段の問題もなくプログラムを使える程度の些末的なところだったわけではないですか。)、「予防法務」という観点からは不思議でたまりません。このような技術が特許として認められていることが許せないというのであれば、特許無効審判を申し立てた上で、それが認められた段階で、次期バージョンからその技術を利用すればよかったはずであり、当時の一太郎のシェアからいえば、それで何の問題もなかったはずです。

 結果的に、第2審で逆転勝訴しそれが確定はしたものの、第1審で敗訴したときの印象が強い為に、あのころから保守的なところから「一太郎」回避に向かっていったのではないかという気がします(実証データはかき集めていませんし、今後も集める気はありませんが。)。そういう意味では、あの事件は、結果的にジャストシステムが勝訴したものの、「一太郎の終わりの始まり」だったような気もします。

 もっとも、一太郎文書については、一太郎ユーザー以外でも内容を閲覧できるビューワーないしコンバーターを積極的に頒布しなかったということ自体が、プリントアウトした書類をやりとりするのではなく、データファイル自体を添付形式でやりとりする時代には合わなくなってきているように思うので、あの事件がなくても、圧倒的なシェアを保っていた時代の感覚を抜け出せていないジャストシステムが衰退していくのは歴史の必然だったような気もしなくはありません。一太郎のシェアが圧倒的なままであれば、ビューワー等を敢えて用意しないことにより、「一太郎文書が読みたければ、一太郎を買え。今の機種では一太郎が動かないのであれば動く機種を買え」と殿様気分で言えたのでしょうが、MS WORDというライバルがいる現状でそれをやってしまえば、「一太郎文書だと、Winユーザー以外には迷惑がかかるから、MS WORDにしておこう。我が社は、Macユーザーを切り捨てるわけにも行かないし」ということになってしまうのは、仕方のない話です。

 といいますか、「一太郎」に関して言及されているブログのエントリーをチェックしていれば、「一太郎文書が読めなくて困っている」というMacユーザーの怨嗟の声がいくらでも目に入ってくるはずであって、そのような声をフィードバックして、Mac用のビューワーやコンバーターを開発して無償配布しようという声が、少なくとも会社としての正式決定に至る程度に上がってこないという点で、組織として硬直化してしまっているのではないかという気がします。

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04/04/2009

放送時間の多くをテレビ・ショッピングに割けるはずもない?

 岸博幸・エイベックス取締役が次のように述べています。

 もちろん、楽天はネット上の商店街ですから、テレビ・ショッピングとの連動というのは十分にあり得たのかもしれません。しかし、放送時間の多くをテレビ・ショッピングに割けるはずもないので、TBSからすれば、収益へのインパクトという点で、楽天との経営統合にあまりメリットを見いだせなかったのではないでしょうか。

 TBS系のBSデジタル放送であるBS-TBS(旧BS-i)の番組表を見てみましょう。

 例えば,3月30日(月曜日)をみてみると,テレビショッピング以外の番組は,

  • 05:00〜05:30 お目覚めハイビジョン・夢の彼方に「ヨーロッパ編」
  • 07:00〜07:54 恋人「クリスマスイブ」(字幕)
  • 08:00〜08:54 恋人「真実」(字幕)
  • 11:00〜12:54 ミステリー・セレクション・カードGメン・小早川茜5「黒いデータ」
  • 14:00〜15:54 ミステリー・セレクション・税務調査官・窓際太郎の事件簿15
  • 19:00〜19:54 韓国ドラマ・フルハウス「再会は突然に」(二カ国)
  • 20:00〜20:54 韓国ドラマ・フルハウス「君さえいれば」(二カ国)
  • 21:00〜22:54 天使たちの真実〜元従軍看護婦の証言〜
  • 23:00〜23:30 美の京都遺産
  • 23:30〜24:00 天使たちの真実〜元従軍看護婦の証言〜
といったところです。合計648分。一日の45%をテレビ・ショッピング以外の番組に割いているということになります。「放送時間の多くをテレビ・ショッピングに割け」ているではないですか!

 東京キー局は関連会社を含めてチャンネルを持ちすぎており,それらのほとんどにテレビ・ショッピングではないオリジナル番組をあてられるほどの番組制作力を持ち合わせていないので,放送と通信の融合は不可能だと放送側が主張し続けるのであれば,キー局は,まともに活用できていないチャンネルを返上すべきではないかという気がします。

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03/22/2009

学生のうちに経験を積め

 高橋直樹さんが次のように述べています。

俺は音楽は知らんのだけど、例えば物書きなら、何かの小説やラノベや脚本の新人賞にでも送って、佳作でもなんでも取ればいい。新人賞は未経験者お断りなんて言わないぜ?
そういうのが直接そっちの世界の仕事につながるかもしれんし、たとえ繋がらなくてもゲーム屋に送る履歴書には書ける。選考の際有利にはなるだろうよ。少なくともエロゲ業界ではかなり箔がつくと思うけどな。
俺よか教養があるっぽいし、心身ともにとりあえず健康なのだったら、時間を作ってコツコツとやってみればいいのに。誰だって最初はキャリア無しなんだから、積むところからはじめなきゃいけないんだ。

 クリエイティブな職業に就きたかったら,がんがん作品を作ってみて,しかるべきところに送ってみれば良いではないかという点については,基本的に賛成です。これは,ゼミ生(「著作権法ゼミ」という特殊性もあって,クリエイティブな職業に就きたい学生の割合は他のゼミより高いと思います。)にもたまに話すことがあるのですが,まず作品を作り発表するところから始めないと,無名の新人のクリエイティブな才能なんて拾い上げようがないのです。

 過去の記録がコンピュータ上に蓄積されて後に検索されるWeb時代において未熟な作品を発表することの危険性を気にする人もいるようですが,そりゃ他人を冷笑することで何とかアイデンティティ・クライシスを回避している「一部の人」たちは過去の失敗や未熟さをあげつらうことはあるかも知れないけど,クリエイティブな才能を探している連中は,クリエイティブな才能の未熟時代のダメダメぶりなんて気にしたりしないので,そんなことを気にしてみても始まりません。

 もちろん,ジャンルによってはコミケに作品を発表してもよいし,Webで作品を公開したってかまいません。DS用のソフトウェアについては任天堂がライセンス契約を結んでくれるようなソフト会社に就職してからでないと作品を作って発表することができないけれども,それ以外のジャンルについては,まず作品を作って発表し,その才能の一端を見せつけることが可能なのです。

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汎国家的配信の義務づけ

 ITmediaに次のような記事が掲載されていました。

 米音楽売り上げのうち、デジタルダウンロード販売が占める割合が3分の1に達した。米調査会社NPD Groupが3月17日に報告した。

 「コンテンツ」が電子機器により再生されることが一般化すると,コンテンツを一旦物理媒体に固定した上でその物理媒体を物流網に載せる必然性が低下します。すると,物流コストが低いコンテンツのネット配信が主流を占めていくことは容易に想像が付きます。日本では,「コンテンツホルダー」側の不可解な抵抗によって,この動きがコンピュータプログラムと商用音楽程度にしか普及していませんが,AppleTVやKindle等が利用できる米国では,映画や書籍などもネット配信が徐々に物理媒体による頒布を凌駕していく可能性があります。

 現状では,そうはいっても電子端末の普及率がそれほどでもないので,多くの場合,「物理媒体でも頒布するコンテンツをオンラインでも配信していく」という程度にとどまっていますが,将来電子端末の普及率が高まると,コンテンツをオンラインでのみ配布するということが一般化していくと予想されます(既に,プログラムではそのような営業政策が採用されている場合が普通に存在します。)。物理媒体での頒布の場合売上げの見通しを間違えると在庫を抱えることになってしまうというリスクがありますし,(大抵の場合寡占状態にある)流通業者にその流通網に載せてもらうのが個人または弱小コンテンツホルダーとしては結構しんどいということもあるからです。

 その際に問題となるのは,そのコンテンツの配信を受けられる人的範囲がその居住する地域により限定されていると,その地域外に居住する人々は,誰かによる違法行為を経ない限り,そのコンテンツを享受することができなくなる可能性が高いということです。コンテンツが物理媒体により頒布されていた時代は,それが日本国内向けには頒布されていなかったとしても,一度日本国外で頒布された物理媒体を「輸入」することにより,日本国内に居住する人々がこれを享受することができます(いわゆる「101匹わんちゃん」事件の担当裁判官はそれを許すまじと思ったようですが,まあ,中古ゲーム訴訟最高裁判決でその考え方は覆されたと考えるのが一般的です。)。しかし,日本国外向けのオンライン配信でのみ配布されているコンテンツを日本国外で受信して物理媒体に固定して日本国内に輸入して販売することは概ね違法となってしまいます。それは,例えばある重要な論文がKindle用コンテンツとして米国国内向けに公表された場合,日本の研究者はその論文に記載されている内容を読むことすら許されないということに繋がっていきます。それは,技術と著作権法(あるいは不正競争防止法も)が,コンテンツを通じた文化の発展が日本国内にもたらされることを阻害することを意味することになります。

 そのような事態を避けるためには,コンテンツがオンラインでのみ配信されるという時代を本格的に迎える前に,政府(文化庁なのか,知的財産戦略本部なのか,所管が難しいところではあります。)が,AppleやGoogle等のコンテンツ配信事業や国外のコンテンツ企業を回ってそれらがオンラインでのみ公開するコンテンツについては日本国内に向けても公開するように働きかけ,または,他の先進諸国とも協議して少なくともオンラインのみ配信するコンテンツについては汎国家的配信を義務づける等のルール作りをするなどの対策を講ずる必要があるように思われます。

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03/18/2009

2009年度の著作権法ゼミの受講生の皆様へ

 2009年度の著作権法ゼミの受講生の皆様へ

 基本書は特に指定しませんが,なにがしかは入手して,できるだけ早めに一回通読して下さい。

 現状ですと,とりあえずお勧めできるのは,

  1. 中山信弘「著作権法」
  2. 田村善之「著作権法概説(第2版)」
  3. 三山裕三「著作権法詳説(第7版)」
といったところです。加戸守之「著作権法逐条講義」や作花文雄「詳解著作権法」は,何かを発表するに際しては参照すべき文献だと思いますが,通読するにはきついと思います。半田正夫「著作権法概説 」や千野直邦=尾中普子「著作権法の解説」,斉藤博「著作権法」は,その薄さに惹かれるところだとは思いますが,現代型の論点を考える手がかりとして使うにはいまや少し厳しいような気がします。

 言わなくても買わないとは思いますが,半田正夫=松田政行編「著作権法コンメンタール」は買う必要ありません。その価格に情報量が見合っていないように思います。注釈書が欲しければ,後数ヶ月待って下さい。

 判例集はもっておいた方がよいです。現行の著作権法判例百選を買うのなら今のうちです。著作権法分野は21世紀に入ってからも重要判例が目白押しという珍しい法領域なので,きっと次期バージョンとは収録判例ががらっと変わると思います。本橋 光一郎=本橋 美智子「要約 著作権判例212」でもよいです。岡邦俊「著作権の事件簿—最新判例62を読む」もいい本ですが,学生にはつらい値段だと思います。また,ユニ著作権センター駒沢公園行政書士事務所日記等で最新の判例をチェックしておくのも良いことだと思います。

 特に音楽著作権に興味がある人は,安藤和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス—基礎編 3rd Edition」,「よくわかる音楽著作権ビジネス—実践編 3rd Edition」を読んでおくと良いと思います。その他のエンターテインメント系の著作権問題やIT関係の著作権問題については,たくさんの書籍は出ていますが,「これはお勧め」というものはなかなかありません。学生のうちは時間が余っているので,片っ端から大学の図書館に買わせて読みまくるというのも一つの手だとは思いますが,ただ,中途半端なQ&A集を読んでいるより,それぞれの業界のありかたを説明している文献(例えば,映画だったら,兼山錦二「映画界に進路を取れ (エンタテインメントビジネス叢書) 」等)を読んだ方がよいような気がします。

 六法については,著作権法が全文掲載されているものを使用することは大前提です(小型の六法だと,抄録扱いになっている場合があります。)が,できるだけ,著作権法施行令,同施行規則,旧著作権法,ベルヌ条約,WIPO著作権条約等が掲載されているものを選んで下さい。角田政芳「知的財産権六法」あたりで良いと思います。まあ,今は法令等はオンラインで入手できるので,A4のバインダー用紙等に必要な法律をプリントアウトしてオリジナルの「知財六法」を作ってしまうというのも一つの手ではあります。

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03/14/2009

ユーザーはレコーディングされた音楽に対してそれを気に入ればお金を払う習慣を失っていない

 岸博幸エイベックス取締役は,

 そうした中で音楽産業は、ユーザがなかなかお金を払わないという現実に苦しんでいます。面白い数字を紹介しましょう。米国のインターネット上は日々無数の音楽ファイルが流通していますが、その中で正規(=有料)ダウンロードの割合は、平均すると20曲中1曲だけです。米国の音楽配信サイトの一つであるLalaはユーザに対して、(1)1曲99セント払えば自分のパソコンにダウンロードできる、(2)1曲10セント払えばLalaのサーバからいつでもその曲を聴ける、(3)お金を払わなくても1回は曲を試聴できる、という3つの選択肢を用意していますが、この会社のサーバに蓄積された曲へのアクセス状況をみると、1000曲中99セント払ったのは72曲、10セント払ったのは108曲、無料での試聴が820曲です。

との事実から,

 そうです。違法ダウンロードが当たり前になる中で、ユーザはレコーディングされた音楽にはお金を払わない習慣を身につけてしまったのです。

との結論を導いています

 しかし,無料で試聴された楽曲の約8.7%が正規に購入され,その他約13.2%が有料で継続的視聴オプションが選択されたということであれば,プロモーションとしては成功しているのであり,むしろ,未だユーザーはレコーディングされた音楽に対してそれを気に入ればお金を払う習慣を失っていないと分析する方が適切であるように思います。

 プロモーションをテレビやラジオなどの放送メディアに頼っていた時代,無料で視聴された楽曲の8.7%も正規商品を購入するなどと言う現象はなかった(音楽自体を聞くことを目的とした番組で視聴した楽曲に限定しても,そこで聴いた楽曲の8.7%も正規商品を購入するなどということは一般的な慣習にはなっていなかったはずです。)わけです。結局のところ,岸取締役の不満は,レコード会社に都合の良い期待をネットユーザーにかけた上で,これを達成しないユーザーに裏切られたということにすぎないように思います。

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03/11/2009

キャッシュの運命は如何に。

 私的使用目的のダウンロード行為の違法化については,YouTube等のストリーミング配信を受信するときに生成されるキャッシュはどうなるのだという批判がありました。今回閣議決定された改正案では,

(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)
第四十七条の八 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

という規定を新設することにより,この批判に答えようとはしているようです。ただ,「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る」という括弧書きと,新設第30条第1項第3号において「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」を複製権侵害としたこととの関係をどう捉えるのかは問題となってきそうです(といいますか,「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害」する場合にはその著作権侵害を問題視すればよいだけの話なので,この括弧書き自体不要だと思いますが。)。

 また,改正案では,著作権法第49条第1項に,

七 第四十七条の八の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を、当該著作物の同条に規定する複製物の使用に代えて使用し、又は当該著作物に係る同条に規定する送信の受信(当該送信が受信者からの求めに応じ自動的に行われるものである場合にあつては、当該送信の受信又はこれに準ずるものとして政令で定める行為)をしないで使用して、当該著作物を利用した者

という規定を付加することにより,これらの者が「第二十一条の複製を行つたものとみなす」こととしているわけですが,キャッシュというのは,キャッシュ元のデータに逐一アクセスするよりもキャッシュされたデータにアクセスした方がデータの読み込み時間が短くなるということで情報処理を効率化させるものなので,本体のデータに替えてキャッシュデータにアクセスしたら複製を行ったものとみなされるのでは,キャッシュとしてのデータ複製を合法化した意味がないような気がしなくもありません(「複製」とみなすだけで「録音」「録画」を行ったものとはみなさないから,新設第30条第1項第3号の適用はない,というのでしょうか。それもアクロバティックに過ぎるような気はしますが。)。

 改正案の第30条第1項第3号では,わざわざ括弧書きで,「国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの」を私的目的でのダウンロードが禁止される複製物に含めている点も問題となるでしょう。自動公衆送信が著作財産権に含まれていない国でアップロードされたもの(当然,著作権者の意図にかかわらず,許諾はなされていない。)や,日本にはない権利制限規定(例えば,米国法のフェアユース等)により合法的にアップロードされているものをダウンロードする行為が違法となってしまいます。それはそれで価値判断的に如何なものかなあという気がしてしまいます。

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03/10/2009

著作権法改正案2009

 著作権法の改正案が閣議決定されたようです。

 一時は違法アップロードサイトからのダウンロードの違法化だけでお茶を濁すのではないかと思われていたのですが,ふたを開けてみたら結構広範囲の改正を目指すようです。

 違法アップロードサイトからのダウンロードの違法化については,第30条1項に3号として,

三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

という条文を付け加えることで実現しようという算段のようです。

 その他,国会図書館におけるバックアップのための複製や視覚障害者・聴覚障害者のための自動公衆送信の合法化,インターネット通販のための美術・写真の著作物の複製・公衆送信の合法化,電気通信事業者のキャッシュ・バックアップのための複製の合法化,検索エンジンのための複製等の合法化,情報解析のための複製等の合法化,インターネット等でのデータを受信した際に受信側で行われるキャッシュとしての複製の合法化,裁定手続の整備,著作権原簿の電子化等をまとめて改正案としてあげてきたようです。

Posted by H_Ogura at 03:39 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

プログラム開発の自由を阻害する動きに対する寛大さ

 昨日のエントリーに対しては,オーストラリアでのマジコン訴訟で敗訴したマイクロソフト社の大野さんその他から反発を受けてしまったようです。

 ただ,「検知→可能方式」型の技術的手段が「早熟の天才」の出現を阻害しないかについては,「検知→可能方式」型の技術的手段が採用されていない環境で「早熟の天才」の出現してきた例を引いて反論した気になってみても始まらないのではないかと思ったりはします。

 もちろん,NintendoDSのような「検知→可能方式」型の技術的手段を講じても,市井で行われるソフトウェアの開発に何ら差し支えないというのであれば,是非ともWindows7の正規バージョンで採用したら良いのだと思うのです。例えば,Windows7がインストールされたPC上では,MS社とライセンス契約を結んで提供を受けた特別な信号が組み込まれたCDまたはDVDからでなければソフトウェアのインストール作業等が行えず,「正規」のインストール作業の際にソフトウェアごとにMS社から割り当てられた特別な信号がPC上の特別な領域に書き込まれなければそのソフトウェアをPC上で稼働できないようにすれば良いのではないでしょうか。その結果,アマチュアまたはセミプロのプログラマーが,その作成したプログラムを,無料または安価で,オンライン上で公開するということが事実上できなくなり(公開しても構いませんが,誰もそれを実行できないので,公開する意味はなくなります。),自主製作ソフトを作成するということがほとんど無意味な行為となるとしても,「早熟の天才」たちはせっせとWindows7用のソフトウェアの開発に明け暮れるようになるとMS社として考えているのであれば,さっさとそうしたらよいのではないかと思うのです。

 それにしても,いつからコンピュータ業界は,プログラム開発の自由を阻害する動きに対してこんなにも寛大になっていったのでしょう。

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03/09/2009

早熟の天才は不要

 マジコン訴訟に関していえば、真の争点は、

  • 不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は「検知→制限方式」に限られるのか、自主制作ソフト等の実行を制限する「検知→可能方式」を含むのか
  •  いわゆる無反応機及び偶然「妨げる機能」を有している装置だけが、不正競争防止法2条1項10号の「機能のみ」の要件を満たさないと解されるのか、技術的制限手段が付されていない自主制作ソフト等の実行を可能とする機能をも有している場合にも「機能のみ」の要件を満たさないものと解されるのか
の2点です。

 何せ、自主制作ソフトのタイトル数及びダウンロード数は決して無視できる数ではない(1ダウンロードサイトごとの1タイトルの平均ダウンロード数は、自主制作ソフトと違法複製ソフトとでほぼ拮抗していた。)ので、自主制作ソフトを使うためにマジコンを使うということはWinnyのポエム流通よりははるかに現実味のある話だったわけですし、任天堂側は、違法複製ソフトのアップロードサイトに対し何らのアクションをも起こしていない(whoisを用いれば当該ソフトの開設者の氏名・住所等が容易に知りうるというのにです。まあ、違法複製ソフトのアップロードを禁止するためにどのような対策を講じてきたのかという求釈明に対して、任天堂側は一切の回答を拒否しています。)わけです。

 結局、紛争の実態は、ゲーム機器メーカーが「検知→可能方式」の技術的手段を採用することにより、当該機器メーカー及びそれと「ライセンス契約」を結んだソフトハウスにより形成される「ギルド集団」を守ることまで不正競争防止法の守備範囲に属するのかということであり、市川正巳裁判長は、平成11年改正の審議の際に規制すべきものとして「MODチップ」が含まれていたとの一点から、条文の具体的な文言との整合性を軽視して、これを肯定したのです。

 「ゲームソフトなんて、専門学校かなんかを卒業してそこそこのソフトハウスに入社してから開発を勉強すれば十分だよね。学生時代から自主的にソフトを開発してしまうような天才はわが国のゲーム業界には不要だよね」ってお話なのだと思います。私の小学校の友達には、中学生時代からゲームソフトを開発しては賞金稼ぎをしていたような人もいるのですが、任天堂はそういう人材は不要ということのようです(彼は、大学卒業後任天堂に入社したはずですが。)。まあ、早熟の天才は、iPhone用のゲームを開発していろということのようです。

【追記】

 「拮抗」とまでいってしまうのは言い過ぎかも知れません。ただ、ダウンロード数がカウンター表示されているサイトに関していえば、違法複製物アップロードサイトにおける1サイト1タイトルあたりの平均ダウンロード数が約8885回であったのに対し、自主製作ソフトアップロードサイトにおけるそれは約6124回でありましたので、「遜色ない」とは言いうるように思います。

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03/08/2009

southwestern大学でのシンポ

Southwestern

 昨日は,シンポジウムが終わって,夕食を食べて,ホテルに戻ったら,どっと疲れが出て,あっさり寝てしまいました。

 詳しい内容については報告書の提出が決まっているのでそちらに譲るとして,報告書には書けない感想をいくつか。

 アメリカのコメディ番組とか見ていると,時折女性の甲高い笑い声が入って来るではないですか。常々あれはさすがに不自然だろうと思っていたのですが,昨日で考えを改めました。著作権法を見直そうというシンポジウムで,出席者のインテリ度も相当高いというのに,いくら発言者が冗句を交えて話をしているからといって,あの笑い声が何度も何度も,ライブで聞こえてきました。それがアメリカなのですね。

 あとは,各パネリストが最初のショートスピーチをしている最中に,それが終わるのを待ちきれずに,聴衆(といっても,相当社会的ポジションの高い人たちなのですが)が反論してしまうその姿が印象的でした(いくら西海岸とはいえ,フランクに過ぎます。)。

 まあ,アメリカでも,「あちら側」と「こちら側」の対立は根深くて,「Revision」なんて言っても,制定法での「Revision」は難しそうだなあとは思いました(パネリストの一人は5年以内に何とかなると言っていましたが。)。

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03/04/2009

出版差止め請求における被告適格

 弁護士会の図書館で、半田正夫=松田政行編「著作権法コンメンタール」をパラパラと見てきました。3分冊だし、1冊1万円弱だし、執筆者は大御所が多いし、ということで青林書院の注解特許法のような網羅的なものを想像していたのですが、実際には判例や学説の紹介、論点の提示などが万事控えめで、我妻=有泉編民法コンメンタールのようだなあという感想を持ちました。

 で、仕方がないので、著作権等の侵害を理由とする出版等差止請求事件について、当該書籍の著者を、出版社とともに、または単独で被告とする請求が認容された例をまとめてみました。著者自体は、印刷機を動かすわけでもないし、在庫を抱えているわけでもないので、出版差止め請求に関しては、その被告適格が一応問題となりうるわけです。

 著者のみを相手方とする複製及び配布の差止め請求が認容されたものとして、最判平成13年10月25日判タ1077号174頁があります。

 著者と出版社に対する印刷及び頒布の差止めを命じたものとしては、東京地判平成14年4月15日判タ1098号213頁,東京地判平成16年5月31日判タ1175号265頁があります。その亜種として、雑誌の発行人と出版社に対する複製・頒布等の差止めを命じたものとしては、東京地判平成10年10月29日判タ988頁271号があります。

 出版社に対しては発行の差止めを命じ,著者に対しては出版の許諾及び自らによる出版の差止めを命じたものとしては、東京地判平成10年11月27日判タ992号232頁があります。

 このように、裁判所は、概ね被疑侵害著作物の著者を被告とする出版差止請求を認めています。依拠の有無を含め、著者を当事者とした方が審理は充実することが予想されますし、著者との間でその書籍が著作権侵害物だということが確定すれば、出版社が更にこれを増刷し又は在庫品を頒布する事態は通常想定しがたいので、出版社を被告とする必要は必ずしもないということなのでしょう。

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03/03/2009

NBL900号

 昨年の11月28日に行われた「特定領域研究『日本法の透明化』プロジェクト主催シンポジウム『ここがヘンだよ日本法』」の結果報告が,NBL900号に掲載されています。

 私は,その第1セッションの「著作権法における『間接侵害』と権利制限」にゲストコメンテーターとして参加しており,そこでの私の発言を要約したものも,NBLに掲載されています。

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02/27/2009

条文の文言など気にしない裁判官

 裁判官が普通に条文解釈をしてくれればこちらが勝訴できる案件で,よりによって普通に条文解釈をする気のない裁判官にあたるというのは,実に不運というより他ありません(「へえ,どこに係属になっているの?ああ,○○さんのところですか。○○裁判官ではなあ」と研究者たちに同情されるというのも,何だかなあという感じです。)。

 巨大企業や組織の利益なんて,裁判所が条文の文言を無視した解釈をしてまで救済しなくとも,必要とあれば立法府が何とかしてくれます。裁判所まで,お金のある側にすり寄っていったら,お金のない側は何に頼ればいいのでしょう。

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02/26/2009

Best Lawyers

 米国のBest Lawyers社から,日本のIntellectual Property部門のBest Lawyers58人のうちの一人に加えていただいたようです。

 知財弁護士を「あちら側」と「こちら側」に分けたときの「こちら側」でこういうものに選んでいただくのは大変そうな気もするので,とりあえず自信を持っていこうと思います。

Posted by H_Ogura at 02:29 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

02/08/2009

英語と著作権法を勉強したいあなたのために

 きっと大学生は、学部試験が終わって暇な時期に入っていると思います。就職活動で忙しいという人もいるかもしれませんが、就職活動は、移動時間と待ち時間に時間をとられるだけで、正味とられる時間はそれほどでもありません。そのような時期だからこそ、今のうちに、著作権法や英語の勉強をしておきたいという人も多いと思います。

 そんなあなたに朗報です。こちらのサイトに行くと、Kenneth Crews先生による米国著作権法の概略の講義をただで聴くことができます。mp3形式でデータを提供してくれるので、どの音楽プレイヤーでもOKです(DSiはともかく)。

 また、こちらにアクセスすると、Lessig先生の講演やら、You TubeのZahavah LevineさんやCBSのAlison Waukさん等のパネルディスカッションやらをただで聞くことができます。

 私が学生だったときには考えられなかったような、勉強したい人には天国のような時代ですね。

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02/01/2009

Avec Tout Mon Amour

 Melissa Mのアルバム「Avec Tout Mon Amour」がiTunes Storeに上がっていた(→Melissa M - Avec tout mon amour)ので、アルバムごとダウンロードしました。

 「Cette Fois」等のダンサブルなナンバーも良いですし、

 「Benthi」のようなアラブっぽいナンバーも素敵です(彼女自身、アルジェリア系フランス人なので。)Benthi

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01/30/2009

網羅的な関係者名簿への条理上の掲載義務

 「○○名鑑」とか「○○関係者名簿」等という名称で、ある職業なり地位なりに就いている人について網羅的に、その氏名、連絡先、経歴等を掲載している書籍って結構ありますね。弁護士だと、法律新聞社が発行している「全国弁護士大観」がこれにあたります。

 ところで、ある程度定評のあるこの種の名鑑において、特定の人物に関する情報を恣意的に掲載しなかった場合、それは不法行為にあたるのでしょうか。

 現実問題としていえば、その種の名鑑に載っていないと、その道のプロだと名乗ってもモグリだと思われる危険もありますし、また、その人の過去の実績からその人に仕事を依頼しようと思って名鑑を見たらその人に関する情報が載っていなかったということになると、てっきり引退ないし廃業したものと思いこんでしまう可能性も十分にあります。ミシュランのレストランガイドのように掲載するかしないかは編集者側が恣意的に決定することを最初から謳ってあるものならば単に編集者のお眼鏡に適わなかったのだろうで済みますが、一定の条件に見合う人々を網羅的に取り上げているかの如き外観のある「名鑑」ものの場合、そこにその情報が掲載されていないということ自体が、社会的に相当な意味を持つことになります。

 そういう意味では、網羅性のある名鑑を発行する出版社は、そのような名鑑を発行するという先行行為に基づき、一定の条件に合致するプロフェッションについての所定の情報を当該名鑑に掲載させる条理上の義務を有しているのではないかと思ったりします。

 小林伸一郎さんの写真を雑誌の巻頭カラーにもってくるなど小林さんとのつながりの深い日本カメラ社が発行する「写真年鑑」の「写真関係者名簿」に関して、2008年度版から、丸田祥三さんに関する情報が掲載されていなかったりするのですが、2009年度版からはそういうことがなくなると良いなあ、と思う今日この頃です。

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01/29/2009

ロクラクⅡ事件

 ロクラクⅡ事件で、テレビ局が知財高裁で逆転敗訴したそうです。

 この判決の解説は時間があるときにおいおいやりたいと思いますが、属人的な話をすると、いわゆる選撮見録事件でクロムサイズ側代理人として苦汁を飲んだ弁護士のうち、私が「まねきTV」事件で、岡邦俊弁護士らが「ロクラクⅡ」事件で、テレビ局に一矢報いたということになるのですね。

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01/26/2009

Winny事件第1審判決についての評釈

Winny事件について控訴審がようやく動き出したようですので,第1審判決に関して,ジュリストに掲載していただいた文章の,校正前原稿をアップロードいたします。


 匿名性が高度に保障されることがその特徴の一つとされていたP2Pファイル共有ソフトの公開と著作権侵害罪の幇助犯の成否

一 初めに

 近時飛躍的な発達を見せている情報通信技術の多くは、これを利用して送受信される情報の内容及び適法性の有無にかかわらず、所定の効果を発揮する。そして、多くの場合、一旦その技術を公開した後は、これが違法な情報流通にしばしば利用されるようになったとしても、当該技術の開発者ないし公開者には、違法な利用を事前に阻止する現実的な手だてはない。

 このような情報通信技術の特徴は、刑罰法規を適用することによって違法ではない情報流通のために利用され得る技術の公開を阻碍するべきではないという考えとも結びつく反面、一度公開されると取り返しのつかない危険な技術の公開を刑罰法規によって事前に規制すべきだという考え方とも結びつくものである。

 「Winny」という情報発信者の匿名性が高度に保障されることをその特徴の一つとするP2Pファイル共有ソフトの開発・公開者が、著作権侵害罪の幇助犯として逮捕され、起訴された事件(以下、「Winny事件」という。)は、法曹関係者のみならず、ソフトウェア技術者等の間でも大きな反響を呼んだ1が、まさに、上記相反する考え方をどのように調整するのかが問われた事件であるということである。

 本稿では、上記事件に関する京都地裁判決2を題材として、上記点について検討を加えることとする。

二 Winny事件の概要

 WinMX3というP2Pファイル共有ソフトを利用してパッケージソフトをアップロードしていた大学生等が京都府警に逮捕された直後、Xは、「2ちゃんねる」という匿名電子掲示板4の「ダウンロード板」に、「暇なんでfreenet5みたいだけど2chネラー向きのファイル共有ソフトつーのを作ってみるわ。もちろんWindowsネイティブな。少しまちなー」とのコメントを匿名で投稿し、程なくして、「Winny」という名称6の新たなP2Pファイル共有ソフトを開発し、自己の開設した匿名ウェブサイト「Winny Web Site」にて公開した7

 「Winny」のP2Pファイル共有機能には、特定の電子ファイルを意図的に「Winny」ネットワークに置いた者のIPアドレスを隠蔽する「キャッシュ」8機能が組み込まれていたことから、誰が特定の電子ファイルをアップロードしたのかを隠蔽してくれるP2Pファイル共有ソフトとして、日本国内のP2Pファイル共有ソフトの利用者の間で瞬く間に普及していった。「Winny」自体は、電子ファイルの形式、性質、違法性の有無等を問わず中立的にP2P間でファイルを送受信する機能を有していたが、実際に「Winny」を利用してアップロードされている電子ファイルの大部分は、著作権者の許諾なくしてアップロードされていると思しきものであった9

 Xは、その後も「Winny」の改良を重ね、そのたびごとに、改良版を「Winny Web  Site」にて公開した。その後、Xは、P2Pファイル共有機能を主たる機能としたバージョン(以下「Winny1」という。)はほぼ完成したとしてその開発を一旦終了し、大規模匿名電子掲示板機能を主たる機能とするソフトウェア(これを「Winny2」という。)の開発に移行し(但し、「Winny2」にも、「Winny1」と互換性はないが、ほぼ同様の特徴を有するP2Pファイル共有機能が組み込まれていた。)、これをXが開設する匿名ウェブサイト「Winny2 Web Site」にて公開した。Xは、「Winny2」についても頻繁に改良を重ね、そのたびごとに改良版を「Winny2 Web Site」にて公開したが、著作権侵害目的で用いられることを抑制するような改良は行わなかった。

 その後、「Winny2 Web Site」からWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」をダウンロードして、自己の使用するパーソナルコンピュータにインストールし、「スーパーマリオアドバンス」ほか25本のゲームソフトの各情報が記録されているハードディスクと接続したパーソナルコンピュータを用いて、インターネットに接続された状態の下、下記各情報が特定のフォルダに存在しアップロード可能な状態にあるWinnyを起動させ、同コンピュータにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に上記各情報を自動公衆送信し得るようにし、上記各著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害したY等が著作権法違反の疑いで逮捕・起訴され、有罪となった10。さらに、「Winny」を開発しその匿名ウェブサイトにて公開したXもまた、上記著作権法違反の幇助犯として逮捕され、起訴されるに至った。

 これについて、京都地裁は、Yが著作物の公衆送信権を侵害して著作権法違反の犯行を行った際、「これに先立ち、Winnyが不特定多数者によって著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害する情報の送受信に広く利用されている状況にあることを認識しながら、その状況を認容し、あえてWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」を被告人方から前記「Winny2 Web  Site」と称するホームページ上に公開して不特定多数者が入手できる状態にした上、Y方において、同人にこれをダウンロードさせて提供し、もって、Yの前記犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである。」として、Xを罰金150万円の刑に処した。

三 幇助の行為

 刑法第62条1項の従犯(幇助犯)とは、「それ自体犯罪の実行でない行為によって、正犯の行為を助けその実現を容易ならしめたもの」11をいう。幇助犯が成立するためには、幇助の意思と幇助の行為が必要とされる。

 幇助行為は、実行行為に用いる道具等の提供等の有形的・物質的なものと、激励・助言を与える等の無形的・精神的なものとに大別される。後者はさらに「技術的な助言」と「意思決定の強化(心理的幇助)」に分けられる12。一般に、実行行為ないしその行為者の発覚を困難とする行為は、そのことを正犯が認識している場合には、正犯の犯罪意思を維持・強化・喚起することに繋がるので、心理的幇助にあたると解されている13  。

 情報通信技術は、違法な情報の送受信を物理的に容易にするのが通常であるが、情報発信者の匿名性を高めることにより心理的に幇助するものも少なくない。本判決においても、「Xが開発、公開したWinny2がYの実行行為における手段を提供して有形的に有形的に容易ならしめたほか、Winnyの機能として匿名性があることで精神的にも容易ならしめた」として、物理的幇助と心理的幇助の2つの側面から幇助行為を認めている。

 もっとも、本判決における補足説明によれば、「Winny」において実際に「中継」が発生するのは4%程度と例外的であり、警察官がダウンロードした際の電子ファイルの送信元のIPアドレスの割当てを受けていたYが著作権法違反の罪(公衆送信権侵害)の正犯として認定されている14のであって、「Winny」の利用者が期待しているほどの「匿名性」は得られていない15。このような場合にも、「実行行為ないしその行為者の発覚を困難」としたとして、心理的幇助を認めることができるのかということは問題となり得る。客観的にはどうであれ、正犯はその匿名性保障機能を信じて「Winny」を利用することでその犯罪意思が実際に強化された場合には心理的幇助の成立を認めることができようが、「Winny」の匿名性保障機能を正しく理解しつつ「Winny」ネットワークのもつ高い国内シェアに着目して16正犯が「Winny」を用いていた場合には心理的幇助まで認めるのは理論的には困難ではなかろうか17

 Xは不特定の者に対して「Winny」をダウンロードさせていたことから、「Winny」をダウンロードさせたことが幇助行為であるならば、それは「不特定人に対する幇助」ということになる。通説が被教唆者は特定の者でなければならないと解している18こととの関係で、このような「不特定人に対する幇助」が可罰性を有するのかという点も問題となる。① 教唆犯の場合「人を教唆して犯罪を実行させた者」(刑法61条1項)という文言になっているのに対し幇助犯の場合「正犯を幇助した者」(同62条1項)という文言になっていること、② 不特定人に対する教唆の場合「扇動」ないし「あおり」としてこれを処罰する場合が特別法により制限列挙されているのに対し不特定人に対する幇助についてはそのような規定は特にないこと、③教唆者を教唆する行為は教唆犯として処罰される(刑61条2項)が従犯の幇助を従犯(幇助犯)として処罰する旨の規定はないため間接従犯を処罰するためには不特定人に対する幇助も幇助犯として処罰するという構成を取らざるを得ないことなどから、不特定人に対する幇助も刑法62条1項を適用する見解が有力である19

 正犯が犯罪行為を実行し犯罪結果を実現するにあたっては、日常的な行為によって提供されている様々な物やサービスがこれに寄与するのが通常である。このような物やサービスを提供した者は、故意・過失等の主観的要件を具備する限り、その提供する物やサービスにより促進された犯罪について幇助犯としての刑事責任を常に負うとするのは、処罰範囲が広すぎるとして、その可罰性を疑問視する見解がある20

四 幇助の意思

 幇助犯が成立するためには、幇助行為が、「幇助の意思」に基づいてなされなければならない。しかし、正犯と意思を通じ合っている必要はない2122

 通常、「幇助の意思」は「幇助の故意」と同視されるが、軽油引取税を納入する意思がない販売業者から経由を購入した客について、「軽油販売の相手方になることによって、(正犯らの)犯行を実現せしめる役割を果たしたわけであるが、それはあくまで、被告人が自己の利益を追求する目的にもとに取引活動をしたことの結果に過ぎないと見るべきである」として、正犯らの犯行を幇助する意思を認めなかった裁判例もある23

 「幇助の故意」をどう捉えるかは、「故意あり」といえるためにどのような心理状態を要求するのかという論点と、「幇助の故意」の対象をどこに置くのかという論点の組合せで決まる。前者については、歴史的には、大きく分けて、① 結果の発生を意欲している場合のほか、結果が発生しても「かまわない」という消極的認容があれば「故意」を認めてよいとする認容説と、② 結果発生のある程度高い可能性(蓋然性)を認識しているか否かで「故意」の有無を判別する蓋然性説とが対立している。後者については「故意」の対象を、ⓐ 正犯の実行行為の遂行を促進することについてまであれば足りるとする見解、ⓑ さらに構成要件的結果が発生することについてまで必要とする見解が従前より対立していたが、最近はⓒ さらに自己の行為が構成要件的結果の発生に対し幇助犯としての因果的寄与をすることについてまで要するとする見解も有力である24

 また、どこかに構成要件的結果が発生するであろうことは認識等していたが、どこにどれだけ発生するかまでは具体的に認識等していなかった場合(概括的故意)については故意責任を認めるのが通説であるが、誰かが正犯として実行行為を行うであろうことは認識等していたが、誰と誰がどの程度実行行為を行うかまでは認識等していなかった場合に、上記古典的な概括的故意論とパラレルに考えて、幇助の故意を認めてもよいのかという問題もあり得る。

 本判決は、「Winnyが不特定多数者によって著作権者が有する著作物の公衆送信権を侵害する情報の送受信に広く利用されている状況にあることを認識しながら、その状況を認容し」たことをもって「幇助の故意」ありとしている。後述するように、本判決は、「Winnyそれ自体は価値中立的な技術である」との前提に立って、「価値中立的な技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解すべきである。」と判示していることから、「幇助の故意」一般について、構成要件的結果発生の蓋然性の認識まで要求しているかは明らかではないが、どの正犯者による実行行為を幇助するのかについての具体的な認識までは要求していないことは明らかである。

五 価値中立性と幇助

 既に述べたとおり、情報通信技術の多くは、これを利用して送受信される情報の内容及び適法性の有無にかかわらず、所定の効果を発揮する。「Winny」というP2Pファイル共有ソフトもまた、それ自体は、電子ファイルの形式、性質、内容等を特に問題にすることなく、利用者からの指示に応じてこれをP2P間で送受信する機能を有しており、その意味では価値中立的である。また、実際になされる電子ファイルの送受信の内容次第では、有意義なものともなりうる。このような価値中立的なソフトウェアが、犯罪実行行為の手段として利用された場合に、その提供者が幇助犯としての刑事責任を負うのかということがここでは問題となる。本判決においても、「もっとも、WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり……それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとして様々な分野に応用可能で有意義なものであって、被告人がいかなる目的の下に開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でないことは弁護人らの主張するとおりである」と判示されている。

 「中立的行為による幇助」の問題は、従前ドイツを中心に議論がなされ、我が国でも近時これを受けた議論がなされている25

 「法益侵害を惹起する行為であっても、行為それ自体が社会的相当性の範囲内にある場合には、構成要件該当性または違法性を欠き、不可罰である」とする社会的相当性説を幇助の処罰範囲の議論に組み入れる考え方がある。関与行為が日常的行為である場合には不可罰とすべきとする見解や、プログラムの開発・頒布行為の有用性を強調してこれを幇助行為として処罰すべきではないとする見解26も、この社会的相当性論の一バリエーションであるように思われる。これに対しては、「社会的相当性という標語の下に、厳密な理論的説明がなされずに、恣意的に結論が導かれるおそれがある」27等の批判がなされている。

 また、利益考量型の「許された危険」論を幇助の処罰範囲の議論に組み入れる考え方がある。例えば、「問題となっている犯罪行為の重大性と、潜在的共犯者の行動の自由の強度の両方を媒介変数として考慮すべき」28とする考え方等がこれにあたる。これに対してもまた、「こうした一般論は不明確であり、そこから自分の好きな結論を恣意的に導くことができてしまう」29等の批判がなされている。

 これに対し、因果的共犯論の立場から、関与行為が正犯行為の等が具体的結果発生の危険を高めていた場合に処罰範囲を限定する考え方がある。但し、この見解も、関与行為がなかった場合にその行為と同様の効果のある行為(代替的行為)を第三者又は正犯自身が行っていた可能性をどの程度斟酌するかによって恣意的に結論を導きうるようにも思われる。例えば、島田・前掲88頁は、高度の蓋然性が見込まれ、かつ正犯者又は第三者による代替的行為それ自体が犯罪でない場合に限り、その代替的行為によって、危険性の観点から見て同様の効果が生じていたかどうかを検討することを提唱する。しかし、例えばこれを本件に即して考えたときに、XがYに対して「Winny2 Web Site」からWinnyの最新版である「Winny 2.0 β6.47」のダウンロードをさせなかったとしても、Yは、① WinMX 等の他のP2Pファイル共有ソフトを用いて公衆送信権侵害行為を行ったであろう可能性30、② 「Winny」の従来バージョンを用いて31公衆送信権侵害行為を行ったであろう可能性、③ 「Winny」の従来バージョンや「WinMX」等のネットワークを利用して「Winny 2.0 β6.47」を入手した上でこれを用いて公衆送信権侵害行為を行った可能性がある32が、では、これらの代替的行為の蓋然性をどのように見積もるか、そしてそれを「高度」と評価するかどうかは、一意的に決まるものではない。

 本判決は、「WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり、それ自体はセンターサーバを必要としないP2P技術の一つとして様々な分野に応用可能で有意義なものであって、Xがいかなる目的のもとに開発したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さらに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大は妥当でない」として中立的行為による幇助については幇助犯の成立範囲を限定しなければならないとする弁護側の問題提起を容れた上で、「価値中立的な技術を実際に外部へ提供する場合、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、さらに提供する際の主観的態様如何によると解すべき」と判示している。その上で裁判所は、XがWinnyを提供する際の主観的態様として、Winnyによって著作権侵害がインターネット上にまん延すること自体を積極的に企図したとまでは認められないが、著作権を侵害する態様での利用が広がることで既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることも期待していた旨を認定した33

 本判決は、幇助の因果性を重視して幇助の成立範囲を制限する近時有力説に立たないことは明らかであるが、では、いかなる理論的な枠組みで上記3要件を導いたのかは全く明らかではない。但し、「現実の利用状況」や「提供する際の主観的態様」を重視している点や違法性の問題としている点からすると、価値中立的な技術の公衆への提供行為に関しては、当該技術を公衆に提供する際の意図等を含めた利益考量論をベースとした「許された危険」論を採用していると見る余地はある。

 当該技術の社会における現実の利用状況がどのようなものであった場合にその技術を提供し続ける行為が幇助としての違法性を有することになるのか34が具体的に明らかにされていれば、新規技術の開発・提供者が不意に刑事罰を科される危険を回避することは可能とはなろうが、本判決は、「提供する際の主観的態様」がいかなるものである場合に提供行為が幇助としての違法性を帯びまたはこれを欠くことになるのかという点を含めて何ら具体的に明らかにされていないため35、新規技術の開発・提供行為に対する萎縮効果を一定程度生じさせてしまっていることは否定できないように思われる36

>六 最後に

 情報通信技術において違法な情報の送受信行為を物理的に幇助してしまうことを回避するのは容易ではなく、結果的に違法な情報の送受信行為に利用されたらその技術の提供を中止しなければならないとするのは、確かに新たな情報通信技術の開発・公開に対する萎縮効果が大きい。しかし、違法な情報の送受信を防止ないし遮断する機能がない情報通信技術において、さらに発信者の匿名性を高度に保障するとなると、違法行為の蔓延を抑止する手段を国家・社会から奪うことになりかねないことから、特段の必要性が認められない限り、そのような技術の開発・公開を刑罰をもって抑止することがあながち不当とも言い難いように思われる。Winny事件についていえば、ファイルをWinnyネットワークに流した人のIPアドレスを隠蔽しようとした目的37並びに大規模BBSを目指したWinny2にファイル共有機能を残した目的等を弁護人らが説得的に主張・立証できていなかったことから、「Winny」の提供行為を刑事的に処罰すべきではないとの価値判断を裁判官になさしめるに至らなかったように思われる。

 Winny事件は、弁護側、検察側双方から控訴がなされたとのことであり、控訴審では、新技術の開発・提供者の指針となるような判決が下されることを希望する次第である。

 

  1   ソフトウェア技術者を中心に「金子勇氏を支援する会」が結成され、平成14年5月28日の段階で約1500万円の支援金が集まった。  

 

  2   京都地判平成18年12月13日判タ1229号105頁。なお、以下、「本判決」ということがある。  

 

  3 Frontcode   Technologies社が開発した、Napster互換のプロトコルを利用した中央サーバ型のファイル交換機能と、独自プロトコルを利用したサーバに頼らないピュアP2P型ネットワーク機能の両方を併せ持つP2Pファイル共有ソフトであり(Wikipedia   日本版による)、2バイト文字が使用可能であったことから、日本のネットワーカーの間で広く利用されていた。  

 

  4   http://www.2ch.net  

 

  5   Freenetとは、Ian Clarke の論文 "A Distributed Decentralised Information Storage   and Retrieval System" (分散自立型情報の保管と検索システム)に基づき、"The Free Network   Project"で開発しているソフトウェアであり、完全な分散処理と暗号化により、誰が誰に対しどんな内容の情報を送受信しているのかを外部の者(警察との捜査機関を含む。)が傍受できないようにすることを最大の目的とするものである(http://freenetproject.org/whatis.htmlを参照。)。  

 

  6   「Winny」との名称は、「WinMX」の「MX」の部分を、アルファベット一文字分ずつずらした(M→n、X→y)ものといわれている。  

 

  7    Xは、趣味で開発したソフトウェアを公開するための実名を用いたウェブサイトを開設していた(「Kaneko's Software   Page」<http://homepage1.nifty.com/ kaneko/>)が、そこには「Winny」をアップロードしなかった。  

 

  8   「Winny」の場合、ファイルの位置情報等が要約された「キー」が一定の割合で書き換えられ、書き換えられたキーをもとにダウンロードがなされると、もともと当該ファイルのあったパソコンとは別のパソコンにファイルが複製され、この複製されたファイルがさらにダウンロードされるという「中継機能」を有している。従って、「Winny」ネットワーク上で共有されている著作物等の著作権者や捜査機関等がおとり捜査的に当該著作物等の複製物である電子ファイルの送信を受けてその送信者のコンピュータに割り当てられたIPアドレスを知得したとしても、当該コンピュータは単に当該電子ファイルを「中継」しただけかも知れず、誰が当該電子ファイルを「Winny」ネットワーク上に置いたのかは定かにはわからない。このようにして情報発信主体の匿名性を確保しようとするのが「Winny」の特徴の一つである。Xはこの中継機能を「キャッシュ」機能と呼ぶが(金子勇「Winnyの技術」43頁)、本来の「キャッシュ」とは性質・用法が異なることから、これを「キャッシュ」と呼ぶことに批判的な見解もある。  

 

  9    京都地裁が引用しているACCS   社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会による「2005年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要」<http://www2.accsjp.or.jp/   news/pdf/p2psurvey2005.pdf>のほか、田中辰雄「著作権の最適保護水準を求めてⅡ:ファイル交換の全数調査 ──違法にも合法にも使える機器・サービスの是非──」<http://www.moba-ken.jp/kennkyuu/2005/final/final_tanaka.pdf>。なお、後者は、一部で誤った理解をされているが、「市販製品をそのままコピーした代替品の割合はほぼ4割であり、6割は市販製品のごく一部か出所不明の画像など代替品にはなりにくいものであった。ファイ交換で交換されるファイルの9割が著作権法的に違法であるというのは正しいが、被害の程度まで見ると実質的被害を与えうるのは4割にとどまる。」としているのであって、ファイル交換で交換されるファイルの約半数が適法なものであるといっているわけではない。  

 

  10   京都地判平成16年11月30日  

 

  11   福田平「注釈刑法(2)-Ⅱ」802頁  

 

  12   堀内=安廣「大コンメンタール刑法[第2版]第5巻」549頁  

 

  13 大阪地判平成12年6月30日判タ1098号228頁  

 

  14   日本の刑事裁判では「99%間違いない」というほどの心証は要求されておらず、「96%」の確率があるのであれば通常有罪認定される。  

 

  15   確率4%の「転送」がなされた場合には「転送」先に罪をなすりつけることができるものの、「転送」がなされなかった場合には、「WinMX」等の既存のP2Pファイル共有ソフトを利用した場合と同様に、そのIPアドレスを動的に割り当てたアクセスプロバイダが捜査事項照会や捜索差押令状等に応じてしまえば、その匿名性は破られることになる。  

 

  16   P2Pファイル共有の場合、ネットワーク参加者が多ければ多いほどファイル転送が効率的となる。  

 

  17   尤も、情報発信者の戸籍上の氏名及び住民票上の住所を登録することなくWinnyネットワークを利用できるという点をもって「匿名性が十分に保障されている」と解するのであれば、この限りではない。  

 

  18   福田・前掲781頁。但し、佐久間「Winny事件にみる著作権侵害と幇助罪」ビジネス法務2004年9月号68頁は「教唆犯においても、電子掲示板で何者かに犯罪の実行を呼びかける場合など、匿名の相手方に向けた犯罪の『そそのかし』が、単なる扇動の程度を越えたときには、教唆犯も成立しうると考える」とする。  

 

  19   民法上の不法行為に関してであるが、最判平成13年2月13日民集55巻1号87頁。なお、本判決は、「刑法62条は、特定の相手方に対して行うことが必要であり、不特定多数の者に対する技術の提供は刑法62条の幇助犯にあたら」ないという弁護人の主張について、「刑法62条に、弁護人らが主張するような制限が一般的に存するとは解されない」と判示している。  

 

  20   堀内=安廣・前掲554頁。但し、その理論構成までは明らかにされていない。  

 

  21   例えば、共同意思主体説を採った場合は、正犯と従犯とで意思を通じ合っていることが必要となろう。但し、共同意思主体説自体は広い支持を得られてはいない。  

 

  22   大審判大正14年1月22日刑集3輯21頁  

 

  23   熊本地判平成6年3月15日判タ963号281頁  

 

  24   例えば、西田典之「刑法総論」322頁  

 

  25   松本光正「中立的行為による幇助」姫路法学27巻27=28号204頁以下、同31=32号238頁以下、島田聡一郎「広義の共犯の一般的成立要件──いわゆる『中立的幇助』に関する近時の議論を手がかりとして──」立教法学57号76頁以下、山中敬一「中立的行為による幇助の可罰性」關西大學法學論集56巻1号34頁以下  

 

  26   結論を留保しているが、小川憲久「技術的中立性とP2Pソフト製作者の責任」L&T25号146頁  

 

  27   島田・前掲62頁  

 

  28   島田・前掲70頁が紹介するヘーフェンダールの見解。  

 

  29   島田・前掲71頁  

 

  30   もっとも、Winnyの匿名化機能の心理的因果性に着目する場合は、WinMX等Winny以前のP2Pファイル共有ソフトの提供に、Winnyの提供と同様の効果を認めることができるかは疑問である。  

 

  31   プログラムの通常のバージョン番号の付け方からすると、0.01の位は些末的なバグ等の修正がなされた場合にカウントを進めることとされているから、「Winny  2.0 β6.47」と「Winny 2.0 β6.4x」との間に機能的な差異は殆どなかったと予想される。  

 

  32   ピュア型P2Pファイル共有ソフトの先駆けである「Gnutella」がその開発元である「Nullsoft」のウェブサイトにアップロードされていたのはわずか一日であるが、「Gnutella」はそのときにこれをダウンロードできた人々を起点として転々流通し広く流布されるに至った。また、「Winny」にしても、Xによるウェブサイト閉鎖後もユーザー間で転々と流通している。  

 

  33   ここでいう、既存のビジネスモデルとはパッケージベースのコンテンツビジネスモデル、すなわち、大量の複製物を製造・販売することで投下資本を回収するビジネスモデルをいい、これとは異なるビジネスモデルとは、コピーフリーでも成り立つビジネスモデルをいう。  

 

  34   例えば、違法行為に利用される割合がどの程度以上となったら違法性を有するのか(いわゆるベータマックス事件の米国連邦最高裁判決のように「実質的な非侵害用途」があれば適法となるのか、過半数が非侵害用途であっても違法性を有するとされる例があり得るのか等。  

 

  35   3要件の理論的な位置づけが明らかにされていないため、実務サイドとしては予測のしようもない。  

 

  36   提供開始時の予想とは異なり実際にはそのほとんどが違法行為に活用された場合にその技術の継続的提供を中止しなければ幇助犯としての違法性を帯びるということになれば投下資本回収のめどがつかなくなるという意味で萎縮効果が残るとする見解もあり得るところではあるが、但し、新規技術を公衆に提供した後にその多くが違法行為に活用されていることを知った場合にはその技術の継続提供を中止したり違法行為に活用されにくくするような改善措置を講ずるなどの条理上の作為義務が生ずるのであって、これに違反して漫然と当該技術を継続的に提供し続けた場合には、不作為による幇助が成立すると解される余地もあるので、その意味での萎縮効果は避けがたいであろう。  

 

  37   これに対し、情報発信者の匿名性の保障を重視した「Freenet」の開発者であるIan Clarke氏は、政治的な表現の自由が十分に保障されていない国での政治的表現の自由を守るという目的を高らかに謳い上げる。  


Posted by H_Ogura at 12:23 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/22/2009

指導者不足

今年のオリコンのシングル年間トップ10のうち8曲について,テレビ局の子会社が単独又は共同で音楽出版社となっています。テレビ番組の主題歌等として用いることによってCD・音楽配信等の売上げが伸びた分の分け前を要求して当然だとテレビ局が考えていて,それ故にタイアップの条件としてタイアップ楽曲に係る音楽出版権の全部又は一部の譲渡を求めてくるので,そういう現象が発生します。

 ただ,テレビ放送,とりわけ地上波テレビ放送を流せる地位というのは国の免許制度により特別に認められたものですから,国によって特別に認められた地位による優越性を利用して,そのような本来的でない収入を得ようとするのは,いい加減にやめるべきではないかという気がします。

 作詞家や作曲家の協会だって,私的録音録画補償金の対象拡大なんてけちなことに血道を上げている暇があったら,テレビ局又はその子会社,関連会社が,その放送する番組で使用する楽曲の音楽出版権を単独又は共同して保有することを禁止する旨の放送法改正に向けてロビー活動を行ったり,タイアップに際して音楽出版権の全部又は一部の譲渡を求めてくることが優越的地位の濫用にあたるとして公正取引委員会に申し立てるなりした方がよいのではないかと思ったりします。デジタル媒体への私的複製がなされることによる正規商品の販売機会の喪失割合より,音楽出版権の一部をテレビ局に召し上げられることによる印税の喪失割合の方が遥かに大きいのではないかと思いますし。

 作詞家・作曲家にしても,レコード会社にしても,業界団体を作っているわけですが,業界団体を作って行動する最大のメリットは,そのバーゲイニングパワーを用いて不当な契約条件を押しつけてくる「社会的強者」に共同してあたれることにあるのであって,「RESPECT OUR MUSIC」とか言ってエンドユーザー等に居丈高に譲歩を迫ることにあるわけではないのです。そういう意味では,作詞家・作曲家の団体にせよ,レコード会社の団体にせよ,有能な指導者を欠いているような気がします。

Posted by H_Ogura at 06:19 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (4) | TrackBack (0)

01/11/2009

不正競争防止法が保護するアクセス制御と、保護しないアクセス制御

 不正競争防止法第2条第1項第10号ないし11号の保護を受ける「技術的制限手段」は、同条5項により、「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるもの」と定義されています。

 この条項を素直に解釈すると、「技術的制限手段」は、信号方式のものについていえば、

  1. 影像等の視聴等を制限する手段であること
  2. 並びに、
  3.  視聴等が制限される影像等と、視聴等機器に特定の反応をさせて当該影像等の視聴等を制限手段とが、同一の記録媒体に記録され又は同梱されて送信されること
が要求されているように読めます。実際、不正競争防止法の平成11年改正の目的はコンテンツの保護であって、その記録媒体に制御信号を敢えて組み込まなかったコンテンツについてのアクセス制御まで法的に保護する必要はありませんし、不正競争防止法の平成11年改正の目的はプラットフォーマーの保護ではありませんから、制御信号の使用をプラットフォーマーから許可されなかったコンテンツの当該プラットフォーム上でのアクセス制御を法的に保護することは、多様なコンテンツの流通を促進しようという、平成11年改正の根本趣旨に却って反するといえます。

 すると、「正規商品のROMに記録されている特定のデータが視聴等機器に接続された記録媒体に記録されていない場合には、当該記録媒体に記録された影像等の視聴等ができないこととする」という類のアクセス制御は、不正競争防止法による保護を受ける「技術的制限手段」にはあたらないということになろうかと思います。

 したがって、例えば、株式会社セガ・エンタープライゼスの出願に係る特開平9-50373の請求項4を特定の機種のゲーム機に関して満たす記録媒体以外の記録媒体が当該機種のゲーム機にセットされても当該記録媒体に記録されたゲームソフト(自主制作ソフトを含む)が当該ゲーム機上で実行できないようにするタイプのアクセス制御方式は、不正競争防止法上の「技術的制限手段」にあたらないので、このアクセス制御方式を回避して当該機機上で「正規商品」以外の記録媒体に記録されているソフトウェアを実行できるような装置等を製造し又は販売等したとしても、不正競争防止法違反とはならないと考えるのが、法律の文言から見ても、平成11年改正の趣旨から見ても、素直だと思います。

【追記】

 某社からクレームが来たので,最終段落を一部書き換えました。

 なお,「株式会社セガ・エンタープライゼスの出願に係る特開平9-50373の請求項4を満たす記録媒体」とは,「CPUを含む装置に装着して使用する情報記憶媒体であって、前記情報記憶媒体は、アプリケーションプログラム及びセキュリティコードを前記装置により読み出し可能に記録しており、前記装置は、比較基準となるセキュリティコードをメモリに予め記録しており、前記情報記憶媒体から読み出したセキュリティコードと前記メモリに記録されたセキュリティコードとを比較してセキュリティチェックを行うように構成されており、前記セキュリティコードとして所定の表示を行うためのプログラムを含むことを特徴とする情報記憶媒体」であって,前記セキュリティコードとして、所定の表示を行うための表示用データおよび前記表示用データを用いて所定の表示を行うプログラムを含むことを特徴とするもののうち,前記表示用データには、所定のロゴを表示するデータ、真正制作者により制作されたものであることを表示するデータあるいは真正権原者からライセンスされたものであることを表示するデータを含むもの」を言います。

Posted by H_Ogura at 11:29 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

01/09/2009

「廃墟写真」というジャンルにおける「表現」の構成要素

 私は、知財関係ですと被告側代理人を務めることが多いのですが(ドメイン関係で債務不存在確認請求訴訟を提起する場合はともかくとして)、本日は、原告側代理人として訴状を提出してきました。

 その事案は、いわゆる「廃墟写真」というジャンルのさきがけである丸田祥三さんが個展で展示し又は写真集に収録した写真と同じ被写体、類似する構図の写真を、小林伸一郎さんという職業写真家がその写真集に収録して出版したというものです。

 写真の著作物の場合、「何を、どのような構図で撮るか」ということに写真家の個性並びに商品価値が決定的にあらわれるので、「何を、どのような構図で撮るのか」ということが、単なる「アイディア」を超えて、「表現」の一内容を構成するのではないか、ということが、根本の問題としてあります。これを積極的に認めたものとして、いわゆる「みずみずしい西瓜」事件高裁判決があるわけですが、風景写真の中でも、その光景に「美」を見出すこと自体が個人の(類い希な)美的センスの発露である「廃墟写真」というジャンルにおいては、「何を、どのような構図で撮るのか」ということを「表現」を構成する要素として捉えても良いのではないかと考えたのです。また、例えば、先行する廃墟写真集と同じ被写体、同様の構図の廃墟写真を別の写真家に撮らせて新たな廃墟写真集を製作して販売する場合、被写体たる廃墟を探すまでに費やした時間とコストを節約できる分後行作品の方が安く上がる可能性が高いわけですが、それって著作権法により制限しようとする「フリーライド」に他ならないわけで、フリーライドにより資本投下を節約した後行作品の市場への進出を抑制することにより投下資本を回収する機会を表現創作者に付与するものとしての著作権法が存在する以上、今回問題視している小林さんの行為を制約するために著作権法が活用されるというのは、方向としてはあっているのではないでしょうか。

 まあ、もちろん、この種の案件では近時は訴訟物を著作権一本の絞らずに、一般不法行為も予備的ないし選択的に付けておくのが流行なわけで、この案件でも、職業的写真家が多大な時間とコストを費やして探し当てた廃墟写真の被写体と被写体とする写真を、これと市場にて競合する関係に立つ職業的写真家が撮影して、あたかも自分が独自にその被写体を探し当てたかのような文章等とともにこれを写真集に収録して販売していた場合には、一般不法行為にあたるのではないかとか、そういうことを含めて諸々の主張をしていたりします。

 ということで、タイマーが発動してこのエントリーが自動的にアップロードされる頃に、記者クラブでこの件に関する記者会見を行う予定です。

Posted by H_Ogura at 01:30 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/25/2008

アジア海賊版文化

 土佐昌樹「アジア海賊版文化──『辺境』から見るアメリカ化の現実」の第2章,第3章は面白かったです。

 軍事独裁が続くビルマ(ミャンマー)では,外国放送局による衛星放送の域外受信と,外国映画の海賊版VCDおよびDVDこそが,市民にグローバルな文化を届ける数少ない手段となっている事実。イギリス植民地時代に作られたイギリス著作権法とほぼ同様のビルマ著作権を可能な限り完全実行せよと西側先進国がビルマ政府に迫ることは,軍事独裁政権による情報統制をさらに強めることになるという現実。このような極端な実例こそが,著作権法が情報統制の為のツールという側面を本来的に有することを私たちに改めて思い起こさせます。

 もちろん,理論的にはビルマ国民が正規商品を購入すれば政府から著作権法違反を理由とする統制を受けずに済むといえなくもありません。しかし,DVD等の正規商品は,その国の,一般大衆の購買力に応じた値付けがなされていないので,そもそもこの国の一般大衆が西側先進国で作られた映画等の正規DVD等を購入するというのは無理がありますし,また,軍事独裁政権なので正規商品を輸入しようとすると厳しい検閲に晒されます。従って,国民がグローバルな情報を知るためには,域外放送の受信と海賊版VCDおよびDVDが事実上不可欠となっているのです。


 日本を含む西側先進国では,さすがに政府が外国からの情報を逐一検閲して排除するということは──わいせつ系をのぞくと──ほぼなくなってはいます。しかし,「コンテンツホールダー」といわれる人々が正規商品による情報の流通を地理的に統制しようとする動きは日に日に強まっています。地上波放送のデジタル化により域外放送の受信が困難となれば,佐賀,徳島は,たちまち「情報鎖国」に陥ります。また,「オンライン配信のみ」のコンテンツが増えると,受信者の滞在国ないしビリングアドレス所在国によりその正規サービスによる受信が拒まれるシステムの下では,「日本在住者は正規には知り得ない情報」がどんどんと増えていくことになります。それは音楽・映像作品にとどまりません。Kindleの普及により,堅い内容の書籍もオンラインで配信される例が実際に米国で増加しています。今後は,そのような形式で配布される論文等については,日本在住者のみ蚊帳の外に置かれるという事態も増えてきそうです。

 「軍事独裁政権による情報統制は悪い情報統制だが,コンテンツホルダーによる情報統制は良い情報統制」と考える人たちは,ダウンロード行為の違法化に賛成するのでしょう。実際,ある研究会で,コンテンツホルダー側の代理人をされる弁護士さんは,どの情報を日本国民に視聴させ,どの情報を視聴させないかを含めて,コンテンツホルダーが決定をするということで何が悪いのだと言っていましたし。しかし,民間企業に情報コントロール権を認めてしまって,本当によいのでしょうか。

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12/17/2008

テレビ局等のロビー活動の費用の回収方法は?

 ITProの報道によれば,

ネット上に無許諾でアップロードされたコンテンツをユーザーがダウンロードする行為については、違法とする方針を明記。上位組織である著作権分科会の承認を経て、早ければ2009年の通常国会に提出される。

とのことです。

 違法サイトからのダウンロード行為を違法化しても,権利者は実際には権利行使しないから大丈夫だ──これは,ダウンロード行為の違法化が認められた場合権利行使の過程で私たちのパソコンのハードディスク等の中身が一部の著作権者たちに丸ごと把握されてしまうという批判をした場合に,違法化推進論者からなされるほとんど唯一の反論です。パブコメにあたって,違法サイトからのダウンロード行為を違法化した場合権利行使の過程で国民のプライバシーが大きく侵害されることのあることを指摘したわけですが,結局,この点については,一切答えないまま,ダウンロード行為を違法とすることを文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会は決めたわけです。

 しかし,「新たな権利を創設しても権利者はその権利を行使しないはずだからその権利が行使された場合のデメリット等考慮する必要がない」なんて議論がまかり通るのは,著作権法以外の分野ではなかなか見出すことができるものではありません。それに,行使するはずのない権利を創設するために,手間暇かけて金かけてロビー活動を行うって,普通に考えてあり得ないでしょう。

 さらにいえば,テレビ局が証拠保全の申立を行って私たちのパソコンのハードディスクの中身を洗いざらい持って行って,何か面白そうなデータがあったら,適当に報道部門で使わないとの保証は一切ありません。私のような職業であれば,依頼者との守秘義務を果たすためには,弁護士としての仕事の一環として文書を作成するのに用いるパソコンではインターネットに接続できないようにすることが必要になるかもしれません。だって,インターネットに接続しているパソコンは,常に違法サイトからのダウンロード行為に用いられる可能性を否定しがたいので,テレビ局による証拠保全の対象となりうるからです。

 証拠保全の結果,そのテレビ局が権利を有する著作物の複製物が見つからなかったり,見つかっても「情を知って」の要件を満たすとの立証ができなくて,結果,複製権侵害の存在を立証できなかったとしても,マスメディアとしては,特定の人物が使用しているパソコンのハードディスクの中身を丸ごと検証できるというのはとてもおいしい話ということになります。実際,私がテレビ局の人間であれば,スキャンダル等の焦点となっている人物について,「自分たちの放送を違法サイトからダウンロードしている虞がある」として証拠保全の申立をして,その使用しているパソコンに蔵置されているデータを丸ごとコピーして解析し,スキャンダルに結びつくデータが見つかったらこれを報道(ワイドショーを含む)に流すことの魅力に抗しうるだろうかと考えると自信がありません。ダウンローダーから数十万円程度の損害賠償金を受領するより,証拠保全の過程でつかんだスキャンダルネタで報道番組の視聴率を1%上げた方がよくよくテレビ局の利益になるわけですし。

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12/15/2008

まねきTV事件高裁判決(速報)

 まねきTV事件について,本日,知財高裁にて,控訴を棄却する旨の判決が下されました。

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12/11/2008

12月9日のJASRACシンポ

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が12月9日に開いたシンポジウムの様子がITmediaで取り上げられるや,ネット上では様々な批判を声が上げられているようです。パネリストは個々的には正しいことをいっているようなのですが,それを間違った文脈に結びつけてしまうので,全体としておかしな議論になってしまっているようです。

 まず,モデレータの安念潤司教授の

厳しい状況にあると、人は起死回生の魔法を求めたがる

とのご発言は,正規商品をCCCD形式にしたり,違法にアップロードされた音楽等ファイルの私的使用目的の複製を違法とするようロビー活動したりしている人に向けられた言葉であるならば,まさにその通りといわざるを得ません。

 砂川浩慶准教授の

テレビ番組制作会社では離職率の高さが問題になっているという。仕事を任せられる5年目くらいの中堅社員が少なく、「新しいものを作りだそうという土壌が生み出せていない」

という発言と,菅原常務理事の

タダと言っているコンテンツは実はタダではない。ユーザーは通信料は払っている。従来からものには流通コストが含まれていた。流通コストとコンテンツにかかるコストを整理して認識する必要がある

という発言とを組み合わせれば,コンテンツを作成しているテレビ番組制作会社と,これを放送波等を用いて流通させている放送事業者との利益バランスを見直すことが肝要だという結論を導くことができるのではないかという気がします。「あるある大辞典」のときでも分かったことですが,「テレビ番組制作会社では離職率の高さ」の主たる原因の一つと思われる「テレビ番組制作会社の給与水準の低さ」は,YouTube等の動画投稿サイトやP2P File Sharing等による視聴率の低下云々ということではなく,テレビ番組制作会社が制作したテレビ番組についてスポンサーが支払ったスポンサー料がテレビ局その他に次々とかすめ取られて実際に番組を製作している現場に殆ど降りてこないことに起因しているわけです。

 堀義貴社長の

過去の番組のネット配信には賛成だが「お金を払いたくないと言っている人がいるようであれば産業にならない」と指摘し、過去に作ったコンテンツにも対価が支払われ、十分に仕事が成り立つと分かれば、制作者は将来に向けて作品を作る意欲がわくだろう

についても,だから,テレビ制作会社等が制作したテレビ番組を死蔵させることは許されない,その番組を制作した会社がiTunes Store等でそれをオンライン販売することにより幾ばくかの利益を得たいと希望するのであれば,テレビ局はこれを拒むべきではないという結論に至るのであれば誠にその通りです。

 この点,岸博幸教授は,個々的に見ても正しくないことをいうので,期待を裏切りません。

「ネット法で著作権者の権利制限をするならば、権利制限せざるを得ない公益性がなければならないはず。立法論から言っておかしい

とのことですが,著作物等の文化の所産を全国の津々浦々に流通させてわが国の文化の発展に寄与させるということが著作権法の究極目的である以上,著作権法が却って著作物等の流通を阻害する場合に一定の権利制限を設けてその流通を促進することは,まさに公益性があるというより他ありません。

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12/02/2008

「海賊」という言葉

 著作物の複製物を違法に作成して市場に流通させる行為を「海賊」行為と表現するのは,やはり違和感はあります。「海賊」という言葉に含まれる,武器等を用いた有形力の行使又はその威嚇という要素が,違法複製物流通行為にはないからです。

 もちろん,「倭寇」に代表される歴史上の「海賊」は,必ずしも武力で他人の商品を奪ってばかりいたわけではなく,「御朱印船」に代表される,商品流通の独占又は寡占を保護する法制度に反して,商品の流通を担っていたのであって,それは,消費者のみならず,生産者の利益にもなっていたという深遠なニュアンスを含めて「海賊」という表現を用いているのだという反論はあり得るのかもしれません。しかし,それはそれで一般の人にはわかりにくすぎます。

 「海賊」というと,「直ちに取り締まらなければならないもの」というイメージが持たれがちですが,「海賊」の職務のうち「私貿易」に関していえば,現代ではむしろ,取り締まられるどころか大いに奨励されるべきものとされています。「マスメディア」という交易ルートが一部の事業者に押さえられ,著作隣接権や,著作権のテレビ局等の流通業者による囲い込み等のもとで著作物たる商品の正規ルートでの流通が阻害されている現状においては,現在の「海賊」たちもまた,「私貿易」の担い手という側面がないわけではありません。

 著作権法の黎明期にロビー活動力が強かったという理由で著作隣接権を確保しているレコード製作者や放送事業者の著作隣接権が将来の条約・法令の改正等により消滅した暁には,現在「海賊」行為と呼ばれている著作物等の私的流通行為のいくつかは,取り締まられるべきどころか,むしろ大いに奨励されるべき行為として位置づけられるかもしれません。

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11/28/2008

日本法透明化プロジェクトのシンポジウムでの発言の趣旨

 今日のシンポジウムで言いたかったことの前半は概ねこんな感じの内容です(まあ,シンポジウムですから,予定通りに全て語れるわけでもないのですが。)。


 著作権法には表現活動に対する規制立法という側面があります。新たなコンテンツを創作して発表するというのももちろん表現活動ですが,他人が創作したコンテンツを配布するのも表現活動ですし(政治的なビラ配りを考えていただければわかりやすいと思います。),また,表現の自由の1カテゴリーとして「知る権利」を認める通説的な考え方に従えば,他人が創作したコンテンツを「知る」こともまた「表現活動」として憲法第21条による保護の対象となります。それ故,著作権法という表現活動規制立法が表現の自由を不当に制限する違憲なものとならないようにするために,著作権等に一定の制限を加えることは,憲法上の要請であり,国際人権規約B規約上の要請でもあるといえます。

 このことから,立法府においては,表現の自由に対する不当な制限とならないように適切な著作権等の制限規定を設けておくことが求められるとともに,司法府においては,著作権法の諸規定を合憲的に解釈したり,一般条項を活用したりするなどして,表現の自由を不当に制限しないような著作権法の解釈・運用をしていくことが求められます。この,著作権法が表現の自由を不当に制約することを回避するための一般法理を「フェアユース」と呼ぶのであれば,それは現行法の下で特別な立法を要せずして裁判所が援用することは可能な(といいますか,むしろ望ましい)のでしょうし,それを「一般条項」という形で明文化することはさらに望ましいと言うことになろうかと思います。

 さて,著作権法による表現規制は,概ね,表現内容に対する規制と,表現の方法に対する規制とに分かれると思います。多くの場合,既存の著作物等と同じ表現を用いなければ想定した内容を表現できないということではないので,「表現の方法に対する規制」ということになると思いますが,翻案とか,引用とかという領域では,特定の既存著作物に用いられた特定の表現を組み入れること自体が「表現内容」の中核をなす場合がありますので,この場合は,さらに「表現内容に対する規制」という側面が強くなっていくこともあろうかと思います。

 表現方法に関する規制については,憲法学説的には,「立法目的は正当であっても,規制手段について,立法目的を達成するために『より制限的でない他の選びうる手段』を利用することが可能であると判断される場合には,当該規制立法を違憲とする,いわゆるLRAの原則が広く支持されていますが,最高裁判所は,いわゆる猿払事件の大法廷判決以来,「合理的関連性」基準を用いているとされています。

 これによれば,表現行為の時・場所・方法の規制は,① 禁止の目的、② この目的と禁止される表現行為との関連性、③ 表現行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討して,当該表現行為を規制することが「合理的で必要やむをえない限度にとどまる」と認められるときには,憲法上許容されるということになります。では,これを著作権法による表現行為の規制に当てはめてみるとどうなるでしょうか。

 まず,著作権法による表現規制の目的をどう捉えるかですが,古典的なインセンティブ論を言い換えるとすると,著作権法による表現規制の目的は,「著作物の創作・流通に資本を投下しない競業者を排除することによって投下資本回収可能性の維持し,もって資本投下を奨励する」ことにあるということになろうかと思います。以下は,ある特定の行為を禁止することとこの目的との関連性があるのか,あるとすればどの程度の関連性があるのか,そして,その行為を当該行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡が取れているのかということを勘案して,著作権法により当該表現行為を禁止することが「合理的で必要やむをえない限度にとどまる」と認めらるかを検討していくことになります。

 例えば, ある企業の総務部において,テレビのニュース番組等で自社がどのように取り上げられているのかをチェックするために,全てのニュース番組を会社が購入し本社の総務部内に設置されている家庭用ビデオ機器で録画する行為を考えてみましょう。これは,企業内での複製は企業内の少人数かつ閉鎖的領域内で使用する目的でなされたとしても著作権法30条1項の適用を受けないとする多数説に従った場合には,複製権侵害行為ということになります。しかし,このような企業内録画というのは,テレビ局等が提供している正規商品では代替できず,従ってテレビ局等の商品・サービスとは競合関係に立ちません。従って,著作権法によってこのような録画行為を規制することは,規制目的との間に合理的な関係がないので許されないということになろうかと思います。その結論を導く論理としては,著作権法30条1項を,企業内複製であっても権利者の提供する正規商品等と競合しない複製については適用されるように合憲的な解釈を行うか,または,そのような複製は著作物の公正な利用にあたるから複製権侵害とはならないとするか,表現の自由を不当に制限する態様での複製権の行使は権利の濫用に当たると解釈するかは,理論的な枠組みの問題ということになります。

 また,東京キー局の放送を受信してインターネットを介して同時再送信する場合を考えてみましょう。これが,関東広域圏内に限り同時再送信する場合,本来その放送が届くべき人にその放送を届けているだけですから,テレビ局の投下資本回収可能性を何ら損なっていないのであり,仮に再送信事業者に営利目的が認められるなどの理由でこれを規制することがあれば,憲法適合性が問題となっていきます。他方,関東広域圏外へも同時再送信する場合には,① これを禁止することとテレビ局の投下資本回収可能性の維持との間に関連性がどのくらいあるのか,そして,② これを禁止することにより得られる利益(正直よく分からないのですが)と,禁止することにより失われる利益(東京キー局の放送を関東広域圏内居住者と同時に視聴できるということは,情報の地域格差を解消するという利益があります。)との均衡等を勘案して,その憲法適合性を判断するということになります。

 今日の小島先生のレポートでは,「著作権の制限規定は厳格に解釈しなければならない」とのテーゼ自体の妥当性が問われました。しかし,著作権の制限規定を拡張的に解釈することにより著作権法が表現行為を不当に規制することを解釈できるのであれば,それを「権利」の方から見て「合憲的限定解釈」と表現するか否かはともかくとして,むしろ好ましいことであって,何ら憚る必要はないということになりそうな気がします。

 なお,表現の方法に対する制限についてLRAの基準を適用できるとすれば,当該行為を差し止めなくとも行為者に権利者への金銭給付を義務づければ投下資本の回収可能性を維持できると裁判所が判断した場合には,差止請求を棄却して,損害賠償義務のみを課したり(宇奈月温泉事件等を考慮すると現行法下でもできる可能性はありますが。),判決をもって強制許諾を命じてしまうということも出来るのかもしれません。まあ,LRAの基準は我が国の最高裁は採用しないのですから仕方がありません。

Posted by H_Ogura at 09:52 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

11/19/2008

レコード業界は鎖国を目指すのか

 相変わらず,エイベックスの岸取締役がおかしなことを言っています。

そのとき、日本はどのような戦略でどの部分を強化していくのか。少なくとも現状の政府のバラバラな取り組みのままでは、惨敗は必至である。個人的には、日本としての新たな戦略が必要であり、その遂行の過程では、プラットフォーム・レイヤーも含めた全く新しい形での“ネット鎖国”的な取り組みも必要ではないかと思っている。今のままでは、ネットは米国の価値観を具現化する場にしかならず、独自のクリエイティビティーを強化して付加価値に昇華させることもできないであろう。

 コンテンツ立国を目指し,むしろコンテンツを我が国の「輸出品」にしようというのであれば,そのコンテンツは世界標準のプラットフォームで流通させざるを得ないのであって,そのときに日本国内だけ独自のプラットフォームを構築してしまえば,日本のコンテンツ企業は,複数のプラットフォームに対応させるために余分なコストを支払わされることになります。それって,日本のコンテンツ企業の国際企業を低下させる方向にむしろ繋がるはずです。欧米人が好みそうな「Japan Cool」的なアーティストを抱えていないエイベックスはそれでよいかもしれませんが,それって国是に反するよねって感じはどうしても否めません。

 っていうか,エイベックス傘下のアーティストって,Myspaceさえろくに開設していないではないですか。私がよく聞くヨーロッパ系のアーティストは普通にMyspaceを設けてそこでシングルカットされた曲やアルバム収録等をフル視聴させたり,YouTube等にPVを流してそれをMySpaceからリンク貼ったりして,世界規模で自分たちのコンテンツを売り出そうとしているわけですけど,日本のアーティストでそういうことやろうとしているのって,くるりとかCorneliusとか未だごく少数です。そんなことでどうやって,「独自のクリエイティビティーを強化して付加価値に昇華させる」ことができるのでしょう。外国の優れた作品を日本人が聴けないようにすることで,音楽を聴きたい人は日本人アーティストの作品しか聴けないようにすれば,当面,日本国内の需要だけで食べていけるという算段でしょうか。そのためには,正規には日本国内での流通を許されていない海外アーティストの作品をネットを介して視聴する行為を禁止する必要があり,そのために「ダウンロード違法化」を推し進めようと言うことでしょうか。

 そりゃ,じり貧必至ではないでしょうか。「県境」に守られているローカルテレビ局がいつまで経ってもキー局と互角に戦えるコンテンツを生み出せないでいるのと同様に。

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11/17/2008

デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会報告書案に関する意見

「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会報告書案に関する意見募集」について,下記のとおり意見を提出しました。


レコード,放送番組に関する権利の集中は,コンテンツのインターネット上での再利用を促進する上では不十分である。


 「レコードについては、実演家等の権利を集中化させるための特別の法律上の措置はないが、原則として製作段階からその後の利用も含めた契約が行われているため、実演家の権利はレコード製作者に集中されている。また、作詞家、作曲家等の音楽の著作権は、一任型の集中管理が進んでおり、管理事業者を通じた権利処理が可能である。このため、ネット配信に伴う権利処理については大きな問題がない。」(4頁)とあるが,これは事実誤認である。

 レコードについては,大手レコード会社の共同出資に掛かる音楽配信事業者があることもあり,当該事業者と競合関係にある事業者がスムーズに許諾を受けられない傾向が強い(なお,実演家が自らの実演をインターネット上で広く利用してほしいのに,レコード会社がこれを拒んでいることから,実演家とレコード会社との間で訴訟に至った例がある。)。また,日本以外の先進諸国では,商業レコードに収録された楽曲をインターネットラジオ等に用いることが広く行われているが,日本ではそうなっていないが,その最大の要因は,送信楽曲数や広告等収入に応じた使用料でレコード音源のインターネットラジオ上での利用を包括的に許諾する仕組みが日本にはなく,かつ,ほとんどのレコード会社は個別に許諾を取りに行ってもこれに応じないからである。

 このように,レコードについては,インターネット上での二次利用に関しては,レコード会社が障害になっている


 また,「放送番組については、ビデオ化が予定されるドラマなど一部のものを除き、製作段階においてその後の利用も含めた契約はほとんど行われてきていない。また、最近は番組ごとの権利情報の整備が進められているが、過去のものについては、権利情報が整備されていない場合も多い。」(5頁)とあるが,放送番組については,東京キー局の製作した番組を再送信するくらいしか能のない地方地上波放送局を救済するために,インターネットを用いて情報を送信するのに,受信者の範囲を「放送対象地域」に限定しなければならないという本末転倒な状況下に置かれている(例 NTTぷららの行う地上波デジタル放送再送信サービス)。

 すなわち,著作物等が広く享受されることによる文化の発展を目指して著作物等を日本中の隅々に行き渡させる役目を担う放送事業者に一定の特権を付与したのに,放送事業者を守るために,著作物等の流通が県境で阻害されてしまっているのが実情であって,これは放送事業者に著作隣接権を付与した趣旨からすれば,本末転倒である。

 

 音楽著作物に関しJASRACが集中管理する体制がそれなりにうまくいっているのはJASRACが自らまたはその出資する会社を介して著作物等を利用して利益を得る事業を行っていないが故に,予め定められた料金を支払うことに合意した上で著作物を利用したいと申し込んできた者に対し中立的にこれを承諾してきたからである。このように権利集中管理システムが功を奏するためには,権利を集中的に管理する者が著作物等の利用を希望する者に対し中立的に許諾を行っていく体制があることが不可欠である。現時点では,レコードにしても,放送番組にしても,自ら又はその出資する会社を介して著作物等を利用して利益を得る事業を行っている者(レコード会社,テレビ局等)が許諾権を集中的に管理しており,それゆえ,適正な利用料を支払って正規に著作物等を二次利用したい者が正規に二次利用できない状況下にある。


 よって,著作物等の(インターネット上での)二次利用等を推し進めるためには,レコード会社やテレビ局が握っている許諾権を中立的な権利集中管理事業者に管理させるか(従わないテレビ局については,「電波の私物化が著しい」として放送免許を取り上げるなどの方法により),条約の許す範囲内で強制許諾制度を導入するなどするべきである。

技術的回避手段が邪な目的で用いられている場合があり,その保護を安易に強化すると,却ってコンテンツの開発の阻害や機器メーカー等による不正な利益の取得に繋がりうる。


 「一方、権利者からは、ネットを通じて大量の違法コピーが行われていること、「マジコン」等の回避装置が若年層を含め一般的に広まっていることなどを背景に、現行制度の対象機器の範囲を見直すべきではないか、また、回避装置の提供行為を刑事罰の対象とすべきではないかなどの意見があった。」(17頁)との記載がある。しかし,「マジコン」等は,ゲーム機器メーカーと「ライセンス契約」を締結していない中小企業や個人が開発したゲームソフト等をゲーム機で実行するためにも広く使われている。「マジコン」等の製造・販売等が禁止された場合には,ゲーム機メーカーがそのゲーム機で使用できるソフトウェアの内容やその開発者の企業規模等をコントロールできることになり,却ってコンテンツやその開発者の多様性を損なうことになり,さらには学生を含むアマチュアが作品を発表する機会を押しつぶすことにより,次世代のクリエイターが育つ土壌を失わせることになる。

 従って,アクセスコントロールの回避装置についての規制を強化する場合には,それが機器メーカー等によるコンテンツの支配を強化することにならないような慎重な配慮が必要であり,コンテンツ提供者が機器メーカー等の審査にパスしなければ,あるいは高額のライセンス料を支払わなければ,その提供するコンテンツが当該機器で使用できないとされるようなアクセスコントロールについてはこれを回避する装置の製造・販売等を禁止すべきではない。

 また,地上デジタル放送については,NHK等が出資するB−CAS社のみが提供するB−CASカードを購入させるために放送波にアクセスコントロールが掛けられるという事態が生じているが,アクセスコントロールの回避装置についての規制を強化する場合には,アクセスコントロールの解除に関する機器や特許等で一儲けを企む事業者(団体)が生まれる危険がある。これは,著作権法によっても不正競争防止法によっても本来正当化されるべきでないものである。従って,アクセスコントロールを適切に回避するための機器等に関しては,機器等の代金・使用料もしくはそこに用いられている特許料等の名目で金銭請求を行い,または,本来義務のないことを行うことを条件とすることを,きっちり禁止することなどが必要である。

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11/12/2008

L.H.O.O.Q

 前回の中央大学でのゼミの課題として,次のような設問を出しました。

Marcel Duchampが『L.H.O.O.Q.』を製作し,また,『髭を剃られたL.H.O.O.Q.』を公表する行為は,現在の日本で行われたとしたら,犯罪となるでしょうか。

 著作権法第60条は,

著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

と規定し,これを受けて著作権法第120条は,

第六十条又は第百一条の三の規定に違反した者は、五百万円以下の罰金に処する。

と規定しており,このため,著作権の保護期間をどうするかに関わりなく,著作者の人格的利益は半永久的に保護されるとされています。では,有史以来人類が創作した作品全てについて,現代においても,著作者の人格的利益は保護されているのだろうかということがここでは問題となります。

 加戸・逐条講義等ですと,上記の点を肯定しつつ,起訴便宜主義があるから大丈夫だという話をするのですが,遠い昔に創作された作品についてはこれを改変等しても刑事罰を科せられないような解釈論が何かないだろうかということが問題となります。

 この点についての私の試案は,旧著作権法第47条が本法施行前に著作権の消滅せざる著作物は本法施行の日より本法の保護を享有すと規定しているのを反対解釈して,旧著作権法施行前に著作権が消滅した著作物についてはその時点で著作者人格権を含めて権利が消滅したと解した上で,現行著作権法附則第2条1項を類推適用して,「現行法施行日以前に消滅している権利については,現行法の施行により復活しない」という部分を著作者人格権についても拡張して,旧著作権法施行時に既に著作権が消滅している著作物については,現行著作権法60条及び120条が適用されない,とするものですが,技巧的にすぎるような気はしなくもありません。

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「著作物の利用についてのアンケート調査」に協力してみる。

 文化庁から「著作物の利用についてのアンケート調査 ~ ご協力のお願い ~」というのが来ていましたので,早速回答しておきました。

 これは,「文化審議会著作権分科会「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理」に関する意見募集の実施に際し、意見を送った個人に対しなされるもので,太田勝造東京大学法学部教授が調査責任者となっているものとのことです。

 個人の著作物についての著作権の保護期間を自由に決められるとしたら,というアンケートについては最短で死後0年という選択肢までしか認めてもらえなかったのは残念でした。もちろん,ベルヌ条約等を改正するか同条約等から脱退する必要があるので現実的ではないのですが,自然人,法人とを問わず,公表後2〜30年くらい保護すれば十分ではないかという気がするものですから(投下資本の回収可能性という点では,それくらいの期間独占権を認めれば十分ですし,人口に膾炙したものについていえば公表後30年も経つと半ばインフラ化してしまうと思いますので。)。

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11/10/2008

「研究開発における情報利用の円滑化について」についての意見

 「第4節 研究開発における情報利用の円滑化について」についても下記のとおりパブリックコメントを提出しました。


 営利目的の有無にかかわらず,研究開発等(商品開発を含む。)の過程における著作物等の利用については,権利制限規定を設けるべきであるし,その過程でなされる改変については,それが公表されるまでは同一性保持権侵害とならないこととすべきである。その理由は下記のとおりである。

 既存の著作物等を利用した作品ないし商品を開発するにあたっては,誰のどの作品のどの部分をどのように利用したら最も効果的かについて試行錯誤がなされるのが通常である。開発部門としては,試作品等を作成する前の段階でその著作権者等に許諾を求めるのは手続が煩雑である。

 他方,当該著作物等の著作権者においては,第三者の研究開発部門等が当該著作物等の全部または一部をそのまま又は改変して試作品等を作成していたとしても,それが公表され市場に供給されるまでは,当該著作物等に係る正規商品の流通を阻害することはない。従って,このような開発段階での著作物等の利用がなされても,当該著作物の著作権者等の経済的権益を害しないので,当該著作権者等にそのような利用を禁止する権利を認める必要はなく,又は,当該権利者等に補償すべき損失も生じない。同様に,試作品等が公表されない限り,当該著作物等により形成される著作者等の社会的評価に変動が生ずることもないので,著作者等に,試作品等の作成過程でなされる著作物等を改変を禁止する権利を認める必要もない。

 実際問題としても,試行錯誤の結果,既存の著作物等のどの部分をどのような形で利用してどのような作品又は商品に仕立て上げたのかが概ね決まってからでなければ,そこでなされる著作物等の改変についての同意を求めにくいし,同意する方もしにくい。

 よって,上記のような法整備が求められる。

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「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて」についての意見

 「文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会平成20年度・中間まとめ」について,特に「第2節 私的使用目的の複製の見直しについて」について,下記のとおり意見を提出しました。


 私的使用目的で違法複製物等から著作物を複製する行為を違法化する法改正は不要であるのみならず,有害である。その理由は下記のとおりである。

 諸外国でも,著作権者等による権利行使の対象となっているのは,P2Pファイル共有システムを用いて違法複製物等をダウンロードした者であって,ダウンロードしたデータファイルを共有フォルダに蔵置していたものである。そして,世界に先駆けて著作物等について送信可能化権を設けている日本法においては,このような者に対しては送信可能化権を行使することが可能である。

 そうではなくて,ダウンロードしたデータファイルを共有フォルダに蔵置していない場合についても著作権者等による権利行使を行いたいとのことであれば,それは世界でもほとんど前例のないことであり,それが認められた場合の弊害はとても大きい。すなわち,その場合,著作権者等の側で被疑侵害者の使用しているコンピュータ内のハードディスク等の中に自分が著作権等を有する楽曲等の複製物が蔵置されていることを証明しなければならないが,そのためには,著作権者等は,第三者が使用しているコンピュータにどのようなデータが蔵置されているのかを検証することが必要となる。そして,それを可能とするためには,自分が著作権等を有する楽曲等が多数違法にアップロードされていることを疎明すれば,任意の第三者を債務者として証拠保全の申立てを行い,その使用しているコンピュータ内のハードディスクの100%物理コピーを入手することがほぼ必須である。従って,上記のような法改正がなされた場合,裁判所は,その立法趣旨に鑑み,現行の民事訴訟法の規定に従い,上記証拠保全手続としてのハードディスクの100%物理コピーを許可する可能性が十分にある(なお,当該第三者が違法にアップロードされた著作物等をダウンロードしていることの疎明は,技術的に困難であるし,それはまさに保全された証拠によって立証しようとする事項であるが故に,要求されないと予想される。)。この場合,当該ハードディスクにて保管しておいたプライバシー情報等は全て著作権者等に知られるところとなり,別の用途に悪用される危険がある(なお,証拠保全で収集した証拠により得た個人情報を他の用途に利活用することを刑事罰をもって禁止する法律は現在存在しないので,民事で慰謝料等を支払っても採算がとれるとなれば,別の用途に悪用される可能性は十分にある。)。

 なお,上記のような法改正が希望される表向きの理由としては,「ファイル交換ソフトによる違法配信からの録音録画については、違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するのが困難な場合があり、送信可能化権や公衆送信権では充分対応できない」ということがあげられている。しかし,上記のような「当てずっぽうで対象を選んでの証拠保全」を行わないとすると,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するよりも,それらの者からデータの送信を受けた者を特定する方が技術的に困難である(今回の資料の中でも,「仮にそのような法改正がなされた場合に,誰が何をダウンロードしたのかをどのように特定することが予定されているのか」について具体的に示されていないのは残念である。)。

 また,電子掲示板等に投稿する際にだけインターネットにアクセスすれば足り,公衆にIPアドレスを晒す必要がない名誉毀損等のケースと異なり,ファイル交換ソフトによる著作物等の違法配信の場合,継続的に自己のIPアドレスを公衆に晒す必要があるから,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するのは,技術的・法的には比較的容易である(日本の著作権等管理団体は,米国やドイツ等の著作権等管理団体と異なり,弁護士費用を惜しんで,違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定して権利行使することを怠ってきただけのことである。)。

 また,上記法改正がなされてしまう場合には,いわゆる動画投稿サイトにて,日本では公開されていない海外の作品を視聴したり,民法テレビ局の少ない地域の住民が地元に系列局のないキー局の番組を視聴すること自体が違法とされてしまう等,著作権者等から地理的にブロックされている情報を知ること自体が不法行為とされてしまうのであり,それは国民の知る権利を大いに害することになる。

 なお,「ストリーミングに伴うキャッシュについては、著作権分科会報告書(平成18 年1 月)における一時的固定に関する議論の内容等を踏まえた上で、必要に応じ法改正すれば問題がないと考えられる」との議論があるが,「RAMへの一時的蓄積は著作権法上の複製にあたるか」という点についてはあたらないとするのが多数説並びに下級審判例ではあったものの,ハードディスクに固定されるキャッシュについては,コンピュータの電源を一度落としても繰り返し利用することが技術的に可能であるが故に「複製」と認定される可能性が高く,上記のような法改正がなされた場合には,著作権者等による情報の地理的分割に活用される危険が十分にあり,そのように活用された場合に,上記情報の地理的分割によって利益を得るのがテレビ局やレコード会社等文化庁と繋がりの深い事業者であるが故に,「複製」の定義に関する法整備が速やかに行われる可能性は低いと思われる。  

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11/04/2008

小室哲哉さん逮捕との報道にあたって

 小室哲哉さんが逮捕されたとのニュースがマスコミ各社で報道されています。

 このクラスの商業音楽に関する歌詞・メロディ等の著作権は,作詞家・作曲家→音楽出版社→JASRACというふうに転々譲渡されているのが通常なので,売買の対象とするのであれば,著作権それ自体ではなく,「音楽出版社から著作物使用料の支払いを受ける権利」ではなかったかと思ったりします(小室さんが作詞・作曲したヒット曲約800曲についての著作物使用料の支払いを(未来永劫)受ける権利が10億円ならば,そんなに不思議な買い物ではなかったと思いますし。)。

 もっとも,作詞家・作曲家→音楽出版社への著作権譲渡に関して著作権原簿への登録がなされていない場合には,作詞家・作曲家→投資家への著作権譲渡は有効であり,後に著作権譲渡を受けた投資家は,先に著作権原簿への登録を受ければ背信的悪意が認定されない限り音楽出版社に対抗できるので,後から著作権譲渡を受けた投資家の方に譲渡登録を行ってしまえば,とりあえず詐欺罪は成立しなかったのではないかという気がしたりもします。不動産の二重譲渡であれば先行譲受者との関係で横領罪が成立するところですが,譲渡の客体が著作物だと「財物」性に問題がありそうです(詐欺や恐喝と違って,「利益横領」みたいな規定はありません。)し,かといって,二重抵当と同様に背任に持って行けるのかというとそこも何だか辛そうな気がします(まだちゃんと検討していませんが。)。まあ,刑事罰が科されるか否かが微妙だというだけで,先行譲受人に対する損害賠償義務が認められることは確実なので,おすすめできる話ではありませんが。

Posted by H_Ogura at 11:59 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

11/03/2008

理論的には違うかもしれないけど

 mohnoさんは,次のように述べています。

「新たなサービスが違法行為に使われる可能性がある」のと「新たなサービスが違法行為を前提にしている」は全く違う。

 しかし,違法な著作権・著作隣接権侵害行為に用いられる可能性があることを知りつつ,これを未然に防止する方法を見いだせないまま,新たなサービスを開始した場合には,「新たなサービスが違法行為を前提にしている」どころか,「新たなサービスは,違法行為に使用されることを目的としている」と認定される十分な虞があります(cf.ファイルローグ事件)。

Posted by H_Ogura at 05:53 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

10/26/2008

昔見た覚えのある光景

 「違法にアップロードされた著作物等のダウンロードを今度違法化しようと思うけど,ストリーミング配信は対象とならないから大丈夫」という言い回しって,「レコード輸入権を創設しても,洋楽CDの並行輸入には適用されないから大丈夫」という言い回しを思い起こさせます。

 で,レコード輸入権の時と大きく異なるのは,レコード輸入権の時は反対運動が盛り上がったこともあって日本レコード協会の依田会長(当時)等が洋楽CDの並行輸入の阻止に活用しないことを表明していたし,国会での付帯決議も入ったりしたおかげで,現在でも,洋楽CDの並行輸入を差し止めるためにレコード輸入権が活用されることは概ねないままここまできているわけですが,YouTube等の視聴者に対し権利行使しないということの表明は,権利者サイドの責任ある立場の人たちからは特段表明されていないし,反対運動が盛り上がらないと,「ストリーミング配信については,権利行使しない」ことを要望する旨の国会での付帯決議は入らないだろうということです。

 川瀬室長がいくらストリーミング配信を受信する際に行われるキャッシュの生成は違法化する対象から外すといってみても,JASRACやレコード会社,テレビ局等がこれを無視して,YouTube利用者を相手取って訴訟を提起したとしても,そのこと自体を法的にはもちろん,倫理的にも大して非難することはできません。そして,ハードディスクへのキャッシュ(RAMへの読み込みと異なり,コンピュータの電源を切っても情報は消失にない。)まで「一時的蓄積」にすぎず複製に当たらないとする見解は必ずしも支配的ではありませんから,請求が認容される可能性があります。そのときに,川瀬室長が責任を取って,川瀬室長のご見解を信じて安心してYouTubeを視聴していた人々がJASRAC等に支払わされた賠償金分を保証してくれるとは思われません。

Posted by H_Ogura at 06:55 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

純粋ダウンローダーに権利行使した例が見あたらない

 mohnoさんが「ダウンロード違法化を無力化するには 」というエントリーの中で,

ちなみに「日本は終わりだ。外国に引っ越そう」みたいな話をしている人は、文化審議会の資料を読んでないのかな。違法著作物からの複製について、ドイツでは2003年に違法化されたみたいだし、フランスは(悪名高き?)スリー・ステップ・テストがあるし、そもそもイギリスでは娯楽目的で録画録音を認容する規定がないというし、アメリカのフェアユースにも該当しないだろうし、スペインでも私的複製から除外されているらしいし、カナダもアウトのようだ。違法とされていないのはオランダとオーストリアくらい。

と述べています。

 ただ,かなりの点で外しているように思えてなりません。「スリー・ステップ・テストが導入されている→違法にアップロードされているサイトからのダウンロードは違法」とは必ずしもいえないし(例えば,事実上廃盤になってしまった楽曲や日本国内盤がない楽曲など,正規商品を入手することが困難なデータについては,(海外のサイトなどに)無許諾でアップロードされているデータを日本のユーザーが指摘しよう目的でダウンロードしたところで,「著作物の通常の利用を妨げず,その著作者の正当な利益を不当に害しない」と言えなくもないように思ったりします。),イギリスの場合判例法国なので,「娯楽目的で録画録音を認容する規定がない→娯楽目的の録音録画は著作権侵害」ということにはなりませんし(米国でも,フェアユースは,もともとエクイティ(衡平法)の一カテゴリーとして,判例法として発展してきた(後に,判例法をまとめる形で条文化)したわけですし,実際,英国でも,正規商品たる商用音楽CDを正規ルートで購入して,PC経由で,自分のiPodにリッピングすることは,禁止されていないようです。)。

 また,違法サイトからのダウンロードがフェアユースに当たらないとした連邦高裁の判例として文化庁が紹介する事案というのは,ファイル共有に関する事案であって,我が国の法体系でいえば,法改正などしなくとも,送信可能化権侵害ということで,法的措置を講じうるケースだということです(ファイル共有者約3万人に対し訴訟を提起してきたRIAAですら,ファイル共有を伴わない純粋ダウンローダーをターゲットとした訴訟は提起していません。)。

 しかし,日本の著作権等の権利者団体は,送信可能化も行うダウンローダーを摘発するだけでは不十分だということで,純粋なダウンローダーに対しても権利行使を行いたいとして,違法にアップロードされたファイルを私的使用目的でダウンロードする行為を違法化するように要求しているわけですから,米国よりも,かなり個人のプライバシーに踏み込んだ運用を想定していることは間違いありません。同時にアップローダーでもあるファイル共有者の摘発では飽きたらず,純粋なダウンローダーを探し出して権利行使するとなれば,純粋なダウンローダーのIPアドレスを,データの送受信の一方当事者ではない著作権者等が知る機会はありませんから,違法ファイルのダウンロード行為を行っている蓋然性が高いことを示す特段の資料なしに,任意の個人のパソコンの中身をまるごと押さえて精査するよりありません

 いまのところ,このように個人のプライバシーを大いに侵害することなしには権利行使することができない,純粋ダウンローダーの摘発に踏み切った国があることを私は知りません。文化審議会の思惑通りに法改正がなされれば,純粋ダウンローダーを取り締まるために,一般市民のプライバシー等JASRACとテレビ局にくれてやる,世界で最初の国に日本がなるということです。




mohnoさんは「ダウンロード違法化が実現しても、一般市民の情報プライバシー保護には厳重な配慮が必要だ」と言ってはいかんのか?と仰いますが,この法改正自体一般市民をターゲットとしたものですし,一般市民のハードディスクの中にJASRACやテレビ局が著作権等を有する作品の複製物のどれとどれが蔵置されているかを精査するに当たっては,そのハードディスクを丸ごと精査するしかありません。つまり,この改正法により創設された権利を行使する限り,一般市民の情報プライバシー保護に配慮した運用というのはありえません。

Posted by H_Ogura at 03:26 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (1)

10/21/2008

何が選挙の争点なのかを決めるのは,私たち主権者たる国民である。

 選挙の争点なんて,政治家が決めるものでも,マスコミが決めるものでも,ましてや田原総一郎が決めるものでもありません。我々有権者が決めるものです。だから,私たち一人一人が地元の候補者に連絡を取り,あるいは各政党にメールを送り,自分たちは,私的ダウンロードの違法化に反対であるとの意思を伝えるとともに,各候補者は,各政党はこの問題にどう対処するのか,確認を取ることは有効です。そのような個々人の行動が積み重なっていくと,この問題は,選挙の争点化していく可能性が出てきます。

 基本的には,私的ダウンロード違法化というのは,立法論としては筋が悪いのです。というのも,違法にアップロードされたデータをダウンロードした者に対しJASRAC又はテレビ局等の権利者が権利行使を認めるためには,JASRACやテレビ局等に,我々市民のパソコンの中身を精査する権限を付与しなければならないからです。すなわち,私的ダウンロード違法化というのは,我々市民の私的領域内で行われている行為を,一部の企業や団体の監視下に置くことで初めて実効性を有するに至るのであり,個々人のプライバシー権を包括的に犠牲にすることなしには成り立たない制度だからです。

 ですから,地元の候補者に対しては,文化庁は,私的使用目的のデータのダウンロード行為を著作権侵害とすることによって,私たちのパソコンの中身をいつでも精査できる権利を,テレビ局と文科省傘下の特殊法人に付与しようとしています。先生は,テレビ局や文科省の役人から私たちのプライバシーを守ってくれるのですか,それともテレビ局等に私たちのプライバシーをくれてやるのですか,とお聞きすればよいのです。

 候補者が地元でタウンミーティング等をやっているようであれば,そこに出席をしてこの点を聞いてみるものよいでしょう。「この法律が成立してしまうと,私が,違法サイトからのダウンロードをしていないとテレビ局にわかってもらうためには,恋人と撮ったムービーなんかを含めて自分のパソコン内の全ての動画ファイルを,テレビ局の人に取り上げられて,精査されないといけないんですよね。しかも,テレビ局等は,そうやって入手した個人情報を,スキャンダル報道等に活用することが自由にできるのですよね。先生は,そんな社会を作ることに賛成なのですか」と聞いてみたらよいのではないかと思うのです。この立法案の問題点の一つは,自分は違法にアップロードされたデータをダウンロードしていなくとも,潔白を証明するためには,自分の保有するパソコン内に蔵置された情報を丸ごとテレビ局に差し出さなければならないのであり,しかも,特定の(隠しておきたい)情報だけは見せないということができないと言うことになります。すなわち,このような立法がなされた暁には,裁判所とテレビ局とが「証拠保全」という形で結びつくことにより,一種のAntinyの機能を果たすことになるのです。

Posted by H_Ogura at 01:34 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/20/2008

私的ダウンロード行為の違法化について

 津田さんが,

【速報】私的録音録画小委員会にてダウンロード違法化が決定。iPod課金は見送り。
つぶやいておられたので,自民党,公明党,民主党,社民党の方に,概ね下記のようなメールを送っておきました。共産党は,知り合いが思い浮かばなかったので,共産党のウェブサイトに掲載されているメールアドレスに宛てて,ほぼ同じ内容のメールを送っておきました。

////////////////////////////////////////////////////

 文化審議会の私的録音録画小委員会において,違法にアップロードされた音声または映像をダウンロードする行為を著作権侵害とする旨の法改正を行うことを決定したとの速報が流れてきました。

 そのような法改正がなされた場合,一般市民は,JASRACまたはテレビ局からの証拠保全又は検証物提出命令等により,個人的に使用しているパソコンのハードディスクの中身及び操作ログをがっさりもっていかれた上で,どのような情報をどこから入手したのかを,丸裸にされることになります(「違法にアップロードされているデータ等をダウンロードした疑いがあるとして集められたデータを,JASRACが文科省に引き渡したとしても,JASRACに何ら制裁は加わりません。)。すなわち,政治家やジャーナリストを含めた個人の情報プライバシーは,文科省傘下であるJASRAC及び総務省傘下であるテレビ局の前には,なきに等しいという状況に陥る危険が十分にあります。

 また,そもそも,情報を入手する行為自体を著作権侵害とすることは,国民が知る権利を行使すること自体を違法とするものであって,著作権法がその究極目的とする「文化の発展」の妨げとなるものです(この法案が可決した場合,「著作権」を媒介とした,地域による情報分割が可能となります。)。

 つきましては,総選挙を前にご多忙のこととは存じますが,○○党として,この問題についてどのような方針をとられるご予定なのか,お聞かせいただければ幸いです。

Posted by H_Ogura at 04:50 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/18/2008

ゼミ面接 in 2008

 昨日は,2009年度のゼミへの入ゼミ希望者の面接を行ってきました。

 今年は,レポートを提出した入ゼミ希望者が34人ということで,概ね競争倍率は1.6倍ということになりました。

 著作権法ゼミという関係上,毎年いろいろ一芸に秀でた人が応募してくれるのですが,今年も様々な能力を持った人が応募してくれたので,選ぶ側(面接に関しては,現3年生のゼミ員の意見をとても重視します。)としても選び甲斐があったというものです。

Posted by H_Ogura at 05:25 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/15/2008

2009年度著作権法ゼミの選抜レポート

 昨日は,中央大学法学部での著作権法ゼミのゼミ員選抜用のレポートの提出期限でした。

 著作権法ゼミですと,例年,IT系に興味がある学生と,エンターテインメント系に興味がある学生とが併存することになりますので,今年は,選抜用レポートの課題を選択制にしました。

 ちなみに,今年の課題は下記のとおりです。

次の2つのテーマのいずれかを選択して下さい。
  1. 仮に、あなたが音楽プロデューサーとして日本のアーティストを海外に売り込むことを命じられた場合、どのアーティストを、どの国や地域で、どのようにしてプロモートしますか。その場合、どのような国その他の諸団体等からどのような支援を受けることが必要または有益ですか。理由も付して具体的に論じて下さい。
  2. なぜ日本ではクリエイティブ・コモンズが普及しないのか、具体的に論じて下さい。

 憲法,民法,刑法のような基本科目については,ゼミの議論の前提となる法律知識・法律理解の高低をためすようなレポート課題を出すことが可能ですが,著作権法の場合,2年生の段階で著作権法の知識があることを前提とするわけに行かないので,著作権法が問題となる領域についての知識やセンスを問うようなレポート課題にせざるを得ないなあ,と思っています。

Posted by H_Ogura at 11:01 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/14/2008

海賊版の図書館への収蔵

 産経新聞によれば,萩原遼さんの著書の海賊版を納入し、貸し出しているのは著作権侵害にあたるとして、東大など8大学と外務省所管の財団法人日韓文化交流基金を相手取り、近く損害賠償を求める訴えを起こすことが判ったとのニュースが話題になっています。

 「公衆送信」云々という部分は萩原さんか産経新聞が勘違いしているだけでしょうからひとまず措くとして,プログラムの著作物以外の著作物については,海賊版の所持者がこれを不特定人に対し展示する行為は特段著作権侵害とならないので,これらの図書館等としては,当該海賊版について館外貸出しの対象としていなければ,損害賠償をしなければならない理由はありません。

 また,仮に館外貸出しの対象としていたとしても,頒布目的の所持が著作権侵害等とみなされるのは,その物が著作権等を侵害する行為により作成された者であるとの「情を知つて」行ったものに限られます。「情を知つて」の意義については,東京地判平成7年10月30日判タ908号69頁は,

著作権侵害を争っている者が、著作権法一一三条一項二号所定の「著作権・・・・・を侵害する行為によって作成された物」であるとの「情を知」るとは、その物を作成した行為が著作権侵害である旨判断した判決が確定したことを知る必要があるものではなく、仮処分決定、未確定の第一審判決等、中間的判断であっても、公権的判断で、その物が著作権を侵害する行為によって作成されたものである旨の判断、あるいは、その物が著作権を侵害する行為によって作成された物であることに直結する判断が示されたことを知れば足りるものと解するのか相当である

と判示しており,問題の「北韓解放直後極秘資料」が萩原さんの「北朝鮮の極秘文書」の複製物or二次的著作物か否かについて争いがある本件においては,この基準が変らない限り,訴訟や保全処分等を行って暫定的な結論を得ることすらしていない段階で「情を知つて」の要件を満たすことは容易ではありません。

 もちろん,上記裁判例は一般的な譲渡権が制定される前のものであり,一般的な譲渡権が制定された現在では,海賊版について譲渡権が消尽していないことを過失により知らずにこれを公衆に譲渡してしまった場合には,不法行為が成立する可能性があります(逆に,複製物の譲渡を受けたときに譲渡権が未だ消尽していないことを過失なくして知らなかった場合には,その後「情を知つて」これを公衆に譲渡したとしても譲渡権侵害とはならないわけですが(著作権法113条の2))。

 しかし,館外貸出しの場合は,譲渡権ではなく,貸与権が問題となりますから,権利の消尽云々は問題とならない反面,無償かつ非営利で行う分には,著作権者の許諾がそもそも不要ですので,過失云々が問題になることはありません。従って,実際上の争点は,館外貸出しを行った図書館等に営利性等を認めることができるのかという点に絞られることになりそうです。

Posted by H_Ogura at 02:55 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

シンポジウム「ここがヘンだよ日本法」

 特定領域研究プロジェクト「日本法の透明化」の一環として,「ここがヘンだよ日本法」というシンポジウムが,11月28日,29日に開催されます。

 私は,28日の午前10時から行われる「著作権法における『間接侵害』と権利制限規定」というセッションでパネリストを務める予定です。

Posted by H_Ogura at 11:39 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/06/2008

著作権法第2条第1項第7号の2の括弧書きの立法趣旨

 著作権法第2条第1項第7号の2の括弧書きの趣旨について,例えば加戸・逐条講義31ページは,

もともとはコンサートなどで歌手が歌をマイクを通して歌った場合に,前にいる人はその歌手の歌唱(これは第16号の箇所で述べますとおり,「演奏」に該当します。)を聞いていますけれども,後ろにいる人はスピーカーという受信装置を通じて公衆送信を聞いていると言うことになりかねませんが,この場合に公衆送信という概念で押さえるのはおかしかろうということで,少なくとも同一構内で行われている限りは公衆送信という概念をとらないで,演奏という概念で押さえようという観点から,こういう書き方をしたわけでございます。
との記載があります。しかし,現行著作権法が制定される際の国会の議事録はもちろん,現行著作権法の起草に先立つ著作権審議会の分科会の中間報告や最終答申などにも,同一構内か否かで,「演奏」か「公衆送信」かを分けるのだという趣旨の発言はありません。

 現行著作権法制定前において,例えば「有線放送業務の運用の規正に関する法律」が第2条において,

 (定義)
第二条 この法律において「有線放送」とは、左の各号の一に該当するものをいう。
 一 一区域内において公衆によつて直接聴取されることを目的として、放送を受信しこれを有線電気通信設備によつて再送信すること。
 二 一区域内において公衆によつて直接聴取されることを目的として、音声その他の音響を有線電気通信設備によつて送信すること。
 三 道路、広場、公園等公衆の通行し、又は集合する場所において公衆によつて直接聴取されることを目的として、音声その他の音響を有線電気通信設備によつて送信し、又は放送を受信しこれを有線電気通信設備によつて再送信すること。
としつつ,第10条において,
 (適用除外)
第十条 この法律の規定は、左の各号に掲げる有線放送の業務については適用しない。
 一 臨時且つ一時の目的のために行われる有線放送の業務
 二 一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる有線放送(第二条第三号に該当するものを除く。)の業務
(以下,略)
と規定されていることに代表されるように,「一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる有線放送」については「有線放送」としての規制の対象外とされていたことを踏襲したものと見る方が素直ではないかと思います。その際,同「一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合においては、同一の者の占有に属する区域)において行われる」有線放送については,「公衆送信」には該当するが公衆送信ないし有線放送としての保護・規制を受けないという規定ぶりにするより,そもそも「公衆送信」(及びその一カテゴリーである有線放送)の定義から除外するとした方が,法律の規定の仕方としてわかりやすいので,著作権法第2条において,「公衆送信」の定義規定において,上記括弧書きを付けることにしたと考える方が素直ではないかという気がします。

 ときおり,7号の2の括弧書きの趣旨は,「演奏」等に該当する場合を「公衆送信」から除き重畳適用を避けることにあったのだから,「演奏」等に該当しない場合は括弧書きを適用せず「公衆送信」に該当するものと解すべきだ,みたいな主張がなされることがあるのですが,もし立法者の意思がそのようなものだとするならば,「演奏」等の定義を先に決めた上で,「公衆送信」の定義規定において,「演奏」等に該当するものを除く旨の括弧書きを挿入したのではないかと思います。

 町村先生も,世間では、立法担当者の主観的認識といわゆる立法者意思とを混同している向きが多く、立法担当官が書いた逐条解説を金科玉条のごとく思いこむ人が多い。仰っていましたが,著作権法の分野では,何が立法者意思なのかを加戸知事の逐条解説に頼るのは結構危険だなあと言えそうです。

Posted by H_Ogura at 08:26 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

私たちは,「加勢大周」の名を忘れることなどできない。

 テレビ局等々は「加勢大周」の痕跡を消し何事もなかったかのように振る舞えるかも知れませんが,知財関係者にとっては,「加勢大周」の名は忘れることができません。

 数年後の学生には,「加勢大周」事件の話をする際に,「加勢大周」の説明からしなければならないかも知れませんね。

Posted by H_Ogura at 03:03 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/02/2008

プログラム関連について30条の適用除外とすべきという意見に対して

「海賊版DSソフトのダウンロード違法化求める声も〜著作権分科会 」という記事がInternet Watchにアップロードされています。その中に,
 プログラム関連の取り扱いについて弁護士の松田政行氏は、早急に30条の適用除外とすべきと主張した。松田氏は、「ニンテンドーDSのソフトは、これまで推計185万本の違法複製が行われ、被害額は60億円に達したと聞いている」として、経済的損失が大きいことを指摘。こうしたプログラムをアップロードした人だけでなく、ダウンロードなどの複製行為自体も違法とすべきと訴えた。
との記載があります。しかし,「ニンテンドーDSのソフトは、これまで推計185万本の違法複製が行われ、被害額は60億円に達した」と述べている人がいるということから,「プログラム関連の取り扱いについて……、早急に30条の適用除外とすべき」との結論を導くのは困難です。むしろ,「ニンテンドーDS用のソフトがネット上に大量にアップロードされているという状況を何とかしたいと任天堂が考えているのであれば,新人弁護士が大量に余っているので,任天堂は,企業内弁護士を大量雇用するなどして,ニンテンドーDS用のソフトを違法にアップロードしている人々に対し適切に権利行使すべき」というのが筋ではないかと思います。いや,何度も言っていることですけど,ダウンロード行為を違法としたって,ダウンロードした人を摘発して権利行使するのって,アップローダーを摘発して権利行使するより遥かにハードルが高いので,早急な対策としては意味がないと思います。

 もっとも,30条の例外とすべきとする複製行為について「ダウンロードなど」としている点は不気味です。外出先に何枚ものカードを持ち歩くのが面倒くさいとして,マジコンを使って,複数のDS用ソフトを1枚のカードにコピーする行為まで禁止しようということなのでしょうか。その場合は,30条ではなく,47条の2で権利制限されるから大丈夫ということなのでしょうか。

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09/14/2008

ゼミ合宿 in 2008

 この12日〜14日と,神戸までゼミ合宿に行ってきました。朝方雨が降ったりということはあったものの,基本的には汗ばむほどのよい天気でした。

 昨年ゼミ員の評判がよかったので,今年も競技ディベートをしてもらいました。ただし,去年と違って男女比が1対1ではないので(11対9),男女混交でチーム分けをしてもらいました。

 ちなみに今年のテーマは以下の3つとしました。

テーマ1

著作権法第65条第4項として

4 第二項の場合において、過半数の持分を有する共有者が、共有者の一人又は数人が正当な理由なくして第二項の合意の成立を妨げたと認めるときは、当該合意の成立を妨げたことにつき正当の理由があることが裁判で確定するまでは、相当と認める額の使用の対価を当該共有者に支払って、共有著作権を行使することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、当該共有著作権の行使により当該共有者の受けた損害の額が当該共有者に支払った使用の対価を上回るときは、その差額に年1割の割合による支払後の利息を付してこれを支払わなければならない。相当 と認めて支払った使用の対価に不足があるときも、同様とする。
という条項を挿入し、現在の第4項を、第5項とすることの可否。
テーマ2

著作権法第103条の2として、

(裁定による実演等の利用)
第103条の2 第91条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得て商業用レコードに複製された実演を送信可能化しようとする送信可能化事業者(業として送信可能化を行う者をいう。)は、第95条第5項の団体又は第97条第3項の団体に対しその構成員(当該団体が団体の連合体である場合、当該連合体を構成する団体の構成員を含む。以下、本条において同じ。)が著作隣接権を有する実演又はレコードの送信可能化の許諾につき協議を求めたがその協議が成立せず、又はその協議をすることができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を当該団体に支払って、当該団体の構成員が著作隣接権を有する実演又はレコードを送信可能化(公衆送信用記録媒体への複製を含む。以下同じ。)することができる。
という条文を挿入することの可否
テーマ3

著作権法第50条及び第102条の2を削除することの可否

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09/11/2008

midomi

 iPhone用のアプリケーションですが,「midomi」は面白いです。


 midomiを起動させて,「sing」ボタンを押し,その後で「Tap and Sing or Hum」という部分をタップし,iPhoneに向かって昔聴いたフレーズを口ずさむと,それが誰のどの曲を口ずさんだものか検索してくれます。これを使うと,子供のころテレビかなんかで聴いてメロディは覚えているのだけど,誰の何という曲か思い出せないと言うときに便利です。しかも,検索結果から,iTunes StoreやYouTubeに直接リンクされているので,すぐに視聴したり,購入したりすることが出来ます(日本在住者はできませんが)。

 さっそく,何となくサビの部分だけ覚えているのだけど曲名がわからなかった歌を「midomi」で調べてみたところ,Dennis De Young の「Desert Moon」だとわかって嬉しくなりました(iTunes Store for Japanでも購入できていたら即ダウンロードしていたと思うのですが,それは反実仮想なので,150円使わずに済みました。)。

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09/09/2008

デジタル・コンテンツ利用促進協議会

 今日は,「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」の設立総会&記念パーティに出席してきました。設立総会から会費5000円で帝国ホテルだよ,ということで,MIAUとの資金力の差は歴然としていました。

 「利用促進協議会」といいつつ,壇上に上がって挨拶を述べるお偉いさんは,中山先生を除けば,川上のコンテンツホルダ側のお方ばかりで,川下のエンドユーザーや川中の流通業者の代表が誰も壇上に登っていないという時点で,「コンテンツ利用促進」という協議会の本旨はどこかに行ってしまうのではないかという危機感をたっぷり抱いてしまいました(民主党の来賓の方も,この数年の民主党の知財関係での活動をネガティブに評価されている方のようで,川内議員らの活躍が如何に多くの市民の支持を得たのかを十分理解されていないようでした。まあ,あの政党は寄り合い所帯で,政策の幅が広いから仕方ないですけど。)。

 自民党の世耕議員と名刺の交換をしながらお話をする機会がありましたので,「東京キー局の放送を日本全国で見ることができないのはおかしいので,私はこれを何とかしようと活動しています」と自己紹介をしたところ,世耕議員もこれに同感の意を示してくれました。東京キー局に対して,まねきTV事件の控訴を取り下げるように働きかけてくれると良いなあ,と思いました。

 あと,会場には,池田先生と,津田さんと,小寺さんが出席されていました(まあ,皆さん,呼ばれて当然の方々なのですが。)。多少お話はされていたようなので,必要なときに共闘できる関係に戻ると良いなあと思いました。

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09/01/2008

グーグルのブック検索

 先週,グーグルのブック検索を巡る中村彰彦氏とグーグルとの間の紛争について,週刊文春の記者より電話インタビューを受けました。その結果を,週刊文春の9月4日号に掲載していただきました。

 出版社に著作権が譲渡されることが多い米国と異なり,日本においては,書籍・雑誌に関しては,個々の著者に著作権が留保されるのが通常であり,かつ,出版権が設定されることすら希なので,この種のサービスを開始するにあたっては,出版社を相手に権利処理をしてことたれるとするのではなく,作家らが所属している各種団体を通じて作家らを相手に直接権利処理をしないと,なかなかうまくいかないように思います。

 サービス内容自体は,作家たちにとっても悪いものではないので,ちゃんと法務コストを支払って権利処理をすればよいだけの話なのに,何か勿体ない感じはします。

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08/13/2008

「私的録音録画」なんぞにこだわらなくても

 楠さんが、「払いたい奴だけが追加で私的録音録画補償金を払うってどう?」というエントリーで、

まず従来通り機器に対する上乗せで補償金がある。で、そのままだと機器の振る舞いとしては現行のダビング10と同じ。それからHDレコーダはネットに繋がっている前提で、クレジットカード番号とか入れて毎月いくらかの私的録音録画補償金を支払うことに合意すると、EPNモードに切り替わり、何世代でも自由に複製できるようになって、コンテンツの複製や再生の履歴を記録、ネット経由で送信される。各個人から毎月支払われた補償金は、この複製・再生履歴に基づいて、従前よりも正確に補償金を分配される、みたいな感じ。

と述べています。


 権利者サイドが私的録音録画補償金の延長線のような収入を望んでいるのであれば、私的録音録画の補償なんてみみっちい枠組みではなく、積極的に包括的な録音録画のライセンス料を徴収するという形にすればいいのにと思ったりします。


 もちろん、家庭内でのタイムシフト目的の録音・録画についていえば、そもそも著作権者等の許諾無くしてできるのですから、利用者としてはライセンス料を上乗せされるいわれはありません。しかし、企業内でのタイムシフト目的の録音・録画については、多数説は30条1項の適用を受けないと解していますので、これを録音・録画するには著作権者等の許諾が必要です。しかし、企業活動を行う上でニュース番組その他テレビ番組を録画してタイムシフト視聴するニーズはあるのに、その番組に関し権利を有する全ての著作権者等から個別に事前に複製許諾を受けることは不可能ですし、事後的に許諾を受けることも困難です。


 また、私的使用目的でMDやCD−Rに複製した楽曲を公衆に直接見せまたは聞かせることは、無償かつ非営利であっても、著作権等の侵害となってしまいます。それに、公衆に直接見せまたは聞かせる目的で楽曲をMDやCD−Rに複製する行為はそもそも私的使用目的の複製に当たらないとおそらく判断されます。従って、いろいろなアルバムに収録されている楽曲を1枚のMDやCD−Rにまとめて、ストリートでパフォーマンスをするためのBGMに活用する行為は著作権法上は違法です。企業の運動会や町内会の盆踊り等でも、市販のCDを、1曲1曲CDを入れ替えるなどして、そのまま再生するならともかく、BGMを1枚のCD−R等にまとめた上で再生する行為は、著作権者等の事前の許諾がなければ、無償かつ非営利であっても著作権法上違法です。しかし、事前に複製の許諾を受けると言っても、JASRACの許諾は受けやすいですが、レコード会社や実演家の許諾を受けるのは結構至難の業です。


 そう考えてみると、「このマークのある録画機器を用いれば、オフィスユースであっても、タイムシフト視聴目的のテレビ番組の録画はOK」とか「このマークのあるメディアを用いれば、商業用レコードを複製して公衆の面前で再生することはOK」みたいな形でライセンス料込みの価格で売り出すことには一定の需要があるように思います。といいますか、(多数説によれば)私的使用目的の複製の範疇から外れるものの、個別的に事前に許諾を得ることが不可能または困難であり、かつ、権利者側もこれを探知して取り締まることが困難または費用倒れという類型の複製について、著作権関係権利者諸団体が集まって「物」ごとに事前的包括的許諾をして幾分かの収益に変えてしまおうという発想がなぜ出てこないのか不思議です。


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08/12/2008

「デジタル・コンテンツの流通の促進」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に対する意見

 総務省が,「デジタル・コンテンツの流通の促進」及び「コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方」に対する意見募集をしていましたので,下記のとおり意見を出してみました。


7頁

意見等

 

私的使用目的の孫コピーを制限するような制御手段は,直ちに廃止すべきである。

理由

 「コピーワンス」であろうが「ダビング10」であろうが,孫コピーを一切許さない現行方式では,携帯型プレイヤー等を介して「ユビキタス」にコンテンツを視聴できる社会は実現しない。

 テレビにおいて放送される番組は,その多くが後にパッケージ化されて販売されることなく終わるのが実情であり,私的使用目的の録画を禁止したからといって,テレビ局や番組出演者等の収入が顕著に増大することは考えがたい(劇場用映画にしても,CMでぶつ切りにされる上に,多くの場合放送時間に合わせて適宜カット等がなされているため,テレビで放送された劇場用映画が録画されたとしても,上記のような不都合がなく,かつ,特典映像等もついているDVD等の市場を脅かすものではない。)。従って,テレビ放送に関してコピー制御を行うことの必要性自体がそもそもない。

 「クリエイターに対する適正な対価の還元」という点についていえば,インターネット等を介して日本中でその番組が視聴されうること,タイムシフト視聴によりいわゆる視聴率により換算される視聴者数(いわゆるリアルタイム視聴している人の統計上の数)よりも多くの人がその番組を視聴していることを前提に,テレビ局がスポンサーから受ける広告料の引き上げ及びクリエイター等への出演料等の引き上げを図ることにより実現すべきである。その際,転送再生視聴率や,録画再生視聴率が計測できるよう,IT企業の協力を仰ぐべきである。

38頁

意見

いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限するべきではなく,仮にするとしても,コピー制御等に対応する技術については,何人も,無償かつ無条件ででこれを利用できるようにすべきである。

理由

 いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限した場合,コピー制御等に対応する技術のライセンスを恣意的に行うことにより,録画機器等の市場が不当に歪められる危険がある。また,上記技術のライセンスを受けるにあたり,制御されている行為とは直接関係のない行為を強要される危険もある(視聴規制に過ぎないB-CASについて,これと直接関係を有しない「コピー制御に反応させる」ということを飲むことを解除技術のライセンス付与の条件とするがごときである。)。もちろん,それは独占禁止法上問題があるが,ライセンスの付与が恣意的に行われることが立証されて公正取引委員会が排除勧告を行うまでには相当の時間を要するため,これを嫌って,海外のメーカーや国内の新規メーカーが国内市場への参入を躊躇する事態が懸念される。

 また,いわゆる「無反応機」の製造・販売を法的に制限した場合,コピー制御等に対応する技術のライセンスのライセンス料を極めて高額に設定することが考えられる(理論的には,特許権等の保有者の言い値を飲まない限り,録画機器等の製造販売を行い得ないことになる。)。本来クリエイターの権利を保護するために加えられたコピー制御について,上記ライセンス料の製品価格への反映という形で消費者が費用負担をさせられるのは不正義である。

85頁

意見

 放送コンテンツをインターネット上で広く二次利用できるようにするためには,実演家の権利との関係でいえば,著作権法93条及び94条頼みの現状のライセンス実務をまず改めるべきであり,レコード製作者との関係では,レコードの送信可能化等についても強制許諾制度を導入するなどにより「放送」とされた場合の二次使用料と「送信可能化」とされた場合の許諾料がアンバランスを解消し,又は,放送局からなる団体とレコード会社からなる団体とで協議をして「放送」の場合の二次使用料を引き上げる代わりにテレビ放送を「送信可能化」する場合には合理的な価格でレコード音源の使用を許諾するシステムを構築する(放送局の範囲を限定せず,新規の放送局をその取り決めから排除しないことを条件に独占禁止法の適用除外とする等の支援を国はするに留める)べきである。ただし,放送コンテンツのインターネット上での二次利用は,放送事業者又はその関連会社に限定されるべきではなく,放送事業者が恣意的にライセンスをする場合には,強制許諾制度の導入等も視野に入れるべきである。

理由

 著作権法第92条の2第2項は,実演家としての録音・録画権を有する者の許諾を得て録画された実演については,送信可能化権の対象外とするものと規定されている。従って,放送局は,その番組を製作するにあたって,そのコンテンツを二次使用することを前提に,出演者からその実演についてこれを放送することの許諾のみでなく,複製及び送信可能化することについての許諾も受け,その分のライセンス料を実演家に支払っていれば,そのコンテンツをインターネット上で二次利用することが可能である。すなわち,実演家の権利との関係でいえば,著作権法93条及び94条頼みの現状のライセンス実務をまず改めるべきである。

 テレビ番組でのレコードの使用についても,「放送」とされた場合の二次使用料と「送信可能化」とされた場合の許諾料がアンバランスであることが,放送番組での過剰なレコード音源の使用と,これを送信可能化する場合の権利処理コストの過剰性を呼び込んでいる。レコードの送信可能化等についても強制許諾制度を導入するなどにより上記アンバランスを解消するか,放送局からなる団体とレコード会社からなる団体とで協議をして「放送」の場合の二次使用料を引き上げる代わりにテレビ放送を「送信可能化」する場合には合理的な価格でレコード音源の使用を許諾するシステムを構築する等の施策が必要である。

 録画ネット事件からまねきTV事件に至るまでの近時の訴訟を見る限り,テレビ局は,東京キー局の番組を関東広域圏外の住民が視聴することを忌み嫌っており,放送コンテンツのインターネット上での二次使用を放送事業者又はその関連会社に限定した場合,東京キー局の番組をインターネット上で視聴できるのは関東広域圏内の住民に限定されるようないびつな仕組みができかねない。そのような地方住民の知る権利並びに文化的な発展を阻害するようなシステムを21世紀に導入すべきではない。

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08/07/2008

TVブレイクとJASRACの進歩

 JASRACがTVブレイクの運営会社であるジャストオンラインを訴えた件がネット上で話題となっています。

 ITMediaの記事によれば、JASRACは、JASRACの管理楽曲リスト(一般的なリストで、TVブレイク上の侵害動画を指定したものではない)をCD-ROMで送り、ついで、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策を要請したとのことです。この辺を見ていると、JASRACは、ファイルローグ事件のときから進歩していないような気がします(包括的許諾契約を結びお金を払うという選択肢がある分、ファイルローグのころよりは少しましではありますが。)。

 JASRACの管理楽曲リストを渡されて、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策をとれと要求されたって、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲がJASRACの管理楽曲リストにある楽曲かどうかなんてわからないのだと言うことを何度言ったらわかるのでしょうか。機械的に処理するにせよ、人海戦術を行使するにせよ、JASRACの管理楽曲リストに掲載されている楽曲の歌詞やメロディ等の内容に関する情報がなければ、システム管理者側は、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲がJASRACの管理楽曲リストにある楽曲かを知り得ないわけです。

 ファイルローグ事件で裁判所がJASRACを甘やかしてしまったのがよくないのですが、人海戦術では処理できる量が限られている(JASRACの管理楽曲リストに掲載されている楽曲の歌詞やメロディと、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲とを比較参照しなければならない分、並びに、その動画共有サイトにアップロードされている楽曲の方はある程度の長さそれを聞かないと、そのメロディも歌詞も把握できない分、誹謗中傷発言の削除よりは手間暇が掛かります。)のは明らかなのですから、管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策をとらせたいのであれば、インターネット上で流通している音声データのうち管理楽曲の権利を侵害したものである可能性が高いものを機械的にピックアップするシステムをJASRACの側で開発し、広くネット企業にタダで使用させればよいだけの話です。そのように「管理楽曲の権利を侵害した動画全般について、削除や未然の投稿防止を含む対策」を容易かつ安価に講じうる体制を整えた後に、なおもそのような対策を講じようとしない企業に対して訴訟を起こすというのであればまだ筋は通りますし、YouTube(Google)のようにそのようなシステムを構築する技術力と資金力を有する企業に対して訴訟を提起するというのであればまだ筋は通りますが、ジャストオンラインのような小さな企業に無理を強いる要求を掲げて訴訟を提起するというのは、弱いものいじめとの感が否めません。

 なお、訴訟の帰趨に関しては、権利侵害コンテンツの割合がどの程度あるのか、当該サイトが投稿者や閲覧者を絞り込む工夫をしていたか、運営会社の経営者が余計なことを口走っていないか、運営会社が具体的な削除要請や発信者情報の開示要請等に誠実に応じてきたかにもよりますし、すでに具体的な削除要請を行っていた部分が却ってJASRACに不利に働く場合もあり得るのですが(ファイルローグ事件の時は、管理会社側が用意したノーティス・アンド・テイクダウン手続を無視しきったことにより、この手続は実効性がないと判断してもらえました。)、まあ、どうなることでしょうか。

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ソフトウェア紛争解決センターがADR法に基づく認証を取得

 そういえば,財団法人ソフトウェア情報センターの主宰する「ソフトウェア紛争解決センター」が,7月28日に,裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)に基づく認証を取得していたのですね。

 私も,若輩者ながら,仲裁人・あっせん人候補の一角に加えていただいています。

 よろしければ,お気軽にご利用下さい。

Posted by H_Ogura at 08:34 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/28/2008

「ネット権」者が許諾義務を負う対象

「ネット法」の政策提言に関する補足説明」には、

ネット権者は、権利を保有すると同時に、収益の公正な配分を著作者などの権利者に対して行う「法的な」義務を負う。また、インターネット上でのデジタル・コンテンツの流通のための利用は、ネット権者が独占するものではない。ネット権者以外の者も、ネット権者から「許諾」を得て利用でき、その際、ネット権者による恣意的な許諾拒否等は許されず、一定の場合には許諾する義務を負うものとする。
とあります。

 ただ、「許諾義務」を負う対象が、インターネット上での一定のデジタル・コンテンツの流通に関してネット法により新たに付与された利用権及び許諾権に限定されるのか、当該コンテンツに関してネット法によらずにネット権者に帰属する利用権および許諾権を含むのかによって、その想定される運用って全然違ってくる(放送コンテンツについて、そこに含まれている音楽著作物や実演等についてインターネット上での流通を許諾する義務を負わされても、テレビ局が有する当該放送コンテンツについての「映画の著作物」の著作者として有する公衆送信権や放送事業者として有する複製権、送信可能化権等に付き許諾を恣意的に拒絶できるとすれば、その放送コンテンツをネット上で流通させられるのは事実上その放送事業者とその関連会社に限定されるように思います。)ので、その話をゲームラボの連載コラムに書こうかなと思っています。

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07/09/2008

B-CAS社の計算書類

 B-CAS社のウェブサイトで、同社の計算書類が公開されています。

 これによれば、2008年3月期のカード発行数1668万3000枚に対し、同期の売上高が98億6900万円。つまり、同社に他に収入減がなかったとして、カード1枚あたりの売上高は約592円。で、売上原価率が約91%。これが本当だとすると、B-CASカードを交換する際に徴収される2000〜3000円の交換料っていったい何なのでしょうっていう気になりますね。メーカーには大量供給に代わりに相応の割引をしているであろうとは理解するとしてもですね。

 2006年3月期はカード1枚あたりの売上高が約768円、2007年3月期は約680円ですから年々下がってはいますね。発行カードにおける3波共同カードの割合は、80%→76%→75%ということで、それほど変動していないのですが。

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06/30/2008

CDもSOLDES

 約1週間ほどフランスに行っていました。

 もともと、この本の関係の企画にあわせて日程を組んだのですが、ちょうどEURO2008の準決勝やSOLDESのシーズンとぶつかったので、普段とは異なる雰囲気が楽しめておもしろかったです。

 ということで、最後にParisのVirgin Mega StoreやFNACに寄ったら、そこでもSOLDESをやっていました。Virginにいたっては、日本のVirginで売れ残った乏しき日本語の帯がついたCDまでJunk品として売っていました。

 そんな中今回私が購入してきたのは、

Mademoiselle K jamais la paix 12.99€
Alizeé Psychédélices 21.00€
magalie vaé magalie vaé 23.30€
Christophe Willem Tout En Acoustic 25.20€
Fatal Bazooka T'as Vu 6.99€
BBBrunes Blonde Comme Moi 10€
Plactiscines LP1 7€
です。

 何で購入価格まで掲載したのかというと、アーティストの格・人気や発売時期との関係で、このくらい価格差があるのが正常な姿なのだろうなあと思ったからです。

 それにしても、Fatal BazookaのMichaël Younって、"Stach Stach"でお馴染みのthe Bratisla Boysをやっていた人なんですね。

Posted by H_Ogura at 01:37 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/20/2008

本案でも勝ち

 私は、区民法律相談のために区役所に行っていたので判決言渡期日に出頭していなかったのですが、まねきTV事件は、本案訴訟でも勝訴したようです。

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06/13/2008

mobile.me

 Apple社は,近々,mobilemeというサービスを始めるのだそうです。しかし,その発表は,少々早すぎたのではないかという気がします。

 といいますのも,モンテネグロの独立に伴って新設された「.me」ドメインのランドラッシュの受付期間が2008年6月9日から同26日までに設定されているからです。

 「mobile.me」ドメインのオークションは凄く盛り上がりそうな気がします。

Posted by H_Ogura at 07:32 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/11/2008

地上デジタルチューナーの国費による配布を行う前に

 朝日新聞の報道によれば、総務省は、11年7月24日までにすべてデジタル化される地上波テレビ放送を視聴するための専用チューナーなどの受信機器を、経済的に購入が厳しい生活保護世帯に現物支給する方針を固めたのだそうです。

 ただ、専用チューナーに必要不可欠なB-CASカードの販売をNHKら放送事業者らが出資するB-CAS社が独占販売している現状で、家電メーカーの尻だけを叩いて「安価」な専用チューナーを納品させても、それは、国費を投入して、B-CAS社を通じてNHK等を焼けぶとらせる結果になるのではないかという気がします。

 そうならないためには、B-CAS方式のスクランブルを少なくとも地上デジタル放送では行わないように放送局に行政指導を行うか、B-CAS方式の受信カードの製造に必要な技術を解放させてそこに市場競争原理を導入させていくことが先なのではないでしょうか。

Posted by H_Ogura at 10:24 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

06/08/2008

Googleですら行う妥協をはてなが行わない理由って?

 はてなブックマークの場合、特定のサイト、特定のエントリーについて利用者がブックマークをすると、ブックマークされたエントリー等の一部が切り取られてブックマークページに表示される仕組みになっています。つまり、はてなブックマークは通常ブックマーク元のエントリー等の一部を複製および送信可能化という形で利用しているということができます。

 既存のウェブサイトやエントリーの一部を切り取って送信可能化するという行為自体はGoogle等の検索エンジンでもやっているわけですが、Google等は、ロボットよけのタグを埋め込むことで特定のウェブサイトをその検索サービスの対象外とする余地を各サイトオーナーに与えています。そのことにより、「黙示の許諾」等の主張をしやすい形にしているわけです。

 そういう意味では、はてなブックマークに取り込まれたくないサイトオーナーのためのオプションを用意しないというのは、いかがなものかなあという気がします。もちろん、多くのサイトオーナーは自分のサイトがソーシャルブックマークされることを拒絶したりはしないということで黙示の許諾の存在を推定するのはぎりぎり許されなくはないとは思うのですが、個々のサイトオーナーから、はてなブックマークの対象から外してくれとの明示的な意思を告げられた場合には、黙示の許諾の推定というテクニックは使えないように思います。かといって、「引用」一本でいくのはそれなりに苦しいように思います。

 といいますか、Googleですら行う妥協をはてなが行わない理由って、何かあるのでしょうか。

【追記】

 SiroKuroさんからコメント欄でご指摘をいただきました。

 ただ、標準的なタグの用法を使用しているGoogleですら、「ヘルプセンター」→「ウェブマスター/サイト所有者」→「Google の検索結果にコンテンツが表示されないようにする方法」で必要な情報があることがわかるのに、はてなの場合、「ヘルプ」→「注意事項:はてなブックマークご利用上の注意事項について。ご利用の際は必ずご一読ください。」の中に置いていますから、わかりにくいですね。

 また、noarchieveタグでテキストを表示しないというのはわからなくはないですが、noindexタグははてなブックマーク自体をしてもらいたくない人のために用いるべきタグではないかという気がします。

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06/04/2008

知的財産権研究会を振り返って

 今日私が知財分野を得意とする弁護士と自称してもとりあえず石を投げられないポジションにいられるのも、一つには、先日100回記念シンポジウムを行うことができた知的財産権研究会のお陰といえます。

 弁護士に成り立ての頃から中山先生を中心として、田村先生や、熊谷先生等の一流の研究者や、石原先生や出井先生などの第一線の議論を聞き、ときに参加することができたわけですし、事務局側のイソ弁として長らく受付をやったお陰で、名前を覚えていただき、関先生経由でCIPICの研究会に参加させていただいたり、関先生や杉政先生に知財訴訟に誘っていただいたりしたわけですし、最初に論文らしきものを公表させていただいたのも「知的財産権研究」でしたし(最初はBBS特許並行輸入事件の評釈。)。また、中大の講師にと私を誘って下さった佐藤恵太先生ともこの研究会で知り合ったわけですし、著作権法コンメンタールの企画は、この研究会関係のパーティの際にその場の雰囲気で金井先生と企画して東京布井出版の上野社長の了承を得てしまったわけですし。

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05/31/2008

必要悪な規制としての著作権における過剰規制

 本日の知的財産権研究会のシンポジウムは、相澤先生の見事な司会ぶりもあり、無事盛況のうちに終わることができました。

 シンポジウムの議事録はいずれレクシスネクシスのサイトにアップロードされると思うのですが、最初の自己紹介のときのために用意しておいた原稿をとりあえずアップロードしておこうと思います(必ずしも、この通りしゃべっているわけではありませんが。)。


 私は、いわゆる中古ゲーム訴訟で販売店側の代理人となったり、ファイルローグ事件でハイブリッド型P2Pサービスにおける中央サーバ管理人の代理人となったり、選撮見録訴訟では集合住宅向けのTVチューナーカード付きのサーバシステムの開発・販売者の代理人となったり、あるいは、まねきTV事件においてベースステーションを預かるハウジング事業者の代理人となったりしてきました。また、既存のコンテンツを使った、あるいは、既存のコンテンツをユーザーが使用する可能性のある新たな商品やサービスを開発した事業者から、このサービスを市場に投入して大丈夫だろうかというご相談をいただくこともしばしばあります。また、著作権法等の改正に関するパブリックコメント等が募集されたときには、一市民として、これに応募することを最近は自分の責務として課しています。更にいえば、レコード輸入権が創設された際には、1洋楽ファンとしてこれに対する反対運動をかなり精力的に行いました。

 そのような立場から見たときに、著作権法というのは、市民による文化の享受をより豊かに、より便利にするために新たな情報技術を活用しようとする際に、その前に立ちはだかる「壁」ないし「規制」として写るということになります。もちろん、「排他性に乏しい情報財の流通を単純に市場に委ねたときには失敗が生ずるから一種の「必要悪」として国が一定の規制をかけるのだ」という話は理解するのですが、そのことは、投下資本の回収手段の柱となっている正規商品の流通を阻害しない方法での情報財の利用まで国が規制してもよいということまで意味していないように思うのです。

 つまり、「著作物」が、「著作権者」の許諾なくして、あるいは「著作権者」の意図しない方法によって利活用されたというだけでは、著作物を創作しよう、あるいは著作物の創作に対して投資を行おうというインセンティブは本来削がれないはずです。権利者側のご意見を伺っていると、自分たちが権利を有している情報財を用いて利益を得ている人や企業があること自体が創作へのインセンティブを失わせるのだとするものが少なからずあるのですが、経済法である著作権法により保護すべき「インセンティブ」というのは妬み等の感情的なものによって左右される純主観的なものではなく、資本主義的な経済合理性に支えられたものに限定されるのだと思うのです。

 そのような意味でのインセンティブは、新たな利活用方法が出現し普及することで、著作権者が本来予定していた従前の方法では投下資本を回収し難くなっていった場合に初めて削がれていくわけです。そして、そのような事態に至ったときに初めて、そのような新たな利活用方法を、投下資本の回収可能性をある程度高めるのに役立つ限度において、規制することが許されるにすぎないのではないかと思うのです。更にいえば、新たな利活用方法により情報財の効用が高まっているのであれば、これを禁止するのではなく、これによってもたらされた経済的利益の一部を著作権者に還元する方向での規制にとどめた方が、情報財という資源の最適分配には資するわけです。

 そのような観点から見ると、現行の著作権法ないしその運用は、本来の投下資本の回収方法を阻害しないような著作物等の利活用まで禁止してしまっており、いわば過剰規制により資源の最適分配が阻害されている状態にあるように感じています。

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05/30/2008

とうとう大台に

 私も今日でとうとう40歳の大台に乗ってしまいました。まあ、音楽の話では時代に取り残されていないから良いのですが(perfumeよりチャットモンチーやいきものがかりの方に魅力を感じる分、多少取り残されているのでしょうか。)、でももう今のゼミ生とは20歳近く年の差が離れているわけですから、私が知っている音楽を彼らが知らないのも宜なるかなという気がして少しブルーです(とはいえ、Biz Markieの「Alone Again」の適・違法性を課題として出したときに、元ネタたるRaymond "Gilbert" O'Sullivanの「Alone Again (Naturally)」を皆知らなかったのはどうかとは思いますが。)。

 それはともかく、知的財産権研究会の100回記念シンポジウムはいよいよ明日に迫ってきました。

 先週の著作権法学会で中山先生がフェアユースについてあれだけ力強く語って下さいましたので、明日のシンポジウムでさらに中山先生がフェアユースについてどのようなことを語って下さるのか楽しみです。

 その他、パネリストには、ネット法の提唱者の1人である相澤先生や、BSAの日本担当顧問の石原先生を擁しておりますので、かなり期待していただいて良いのではないかと思っています。

 また、知的財産権研究会での研究報告をまとめた「知的財産権研究」の第5巻も明日付でLexisNexis社発行、雄松堂発売ということで出版されます。こちらでは、私は、まねきTV事件についての評釈を書いております(この研究会では、自分が担当した事件について発表するということが普通に行われているのです。)。明日のシンポジウムに出席される方には無料頒布されますが、そうでない方は書店等でお買い求めいただければ幸いです。

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05/25/2008

昨日の著作権法学会

 昨日は、日本著作権法学会のシンポジウムに出てきました。

 今回のシンポジウムのテーマは「権利制限」なので、どうしてもフェアユースや、3ステップテスト等のトピックが注目されますが、島並先生が発表された「ルールとスタンダード」のお話も面白かったです。

 ところで、討論の際に私が提出した質問の趣旨は概ね下記のとおりです。

 ベルヌ条約やTRIPs協定、WCT等で定められている「3ステップテスト」というのは、著作権の制限規定を定めることができるのは、(1)著作物の通常の利用を妨げず、かつ、(2)権利者の正当な利益を不当に害しない、(3)特別な場合、に限定されるとするものですが、このうちの1つの要件を欠くとの理由で著作権を制限しない≒一定の表現行為を規制する、ということは表現の自由等の憲法的な価値との関係で問題を生ずることはないのでしょうかとのことです。そして、裁判所が現行著作権法上の著作権の制限に関する規定を3ステップテストを満たす限度で合条約的に制限解釈した場合に、あるいは、3ステップテストのうちの1つを満たさないが故に制限規定を新設しない又は改廃するという選択を立法府が行った場合に、表現の自由等との関係はどうなるのかということです。

 例えば、一般的なフェアユース規定が置かれた後に、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害することもないような態様で、他人の著作物を利用した表現行為が行われた場合に、当該表現行為については「公共政策上の明確な理由」ないし「他の例外的な状況」から積極的にこれを正当化する事情が見られないとの理由で、合条約的制限解釈により、フェアユース規定の適用を否定し、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害することもない表現行為を規制することが憲法上許されるのかということです。

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05/20/2008

It's too late

 角川歴彦さんが次のように述べています。

「視聴者は、テレビ局が送り出す番組表にのっとって番組を視聴することが面倒になってきている。都合のいい時間に都合のいい場所で視聴したい、という要望がYouTubeの利用へと視聴者を走らせた大きな要因であり、YouTubeが短期間で多数のユーザーを獲得できたのは、我々も含め、送りだし側がニーズをとらえきれていなかったから」と分析。「2年前に“見逃しテレビ”を立ち上げていれば、YouTubeは成功しなかったとすら思う」とした。

 「選撮見録」を無理矢理つぶしたのもテレビ局側の敗因の一つですね。「選撮見録」はCMカットには対応していなかったし,求められれば録画再生視聴率をはじき出して広告料の上昇への交渉に使っていただくこともできたし,テレビ局側に一定の「分け前」も配分する用意もあったのに(っていいますか,その種の和解を提案していたのに),テレビ局側はゼロ回答だったわけです。でも,選撮見録をつぶしたところで,「見たいテレビ番組に合わせて生活のサイクルを構築する」暮らしに普通の国民は戻れない(特に,購買力のある層ほど戻れない)のだから,「気軽にタイムシフト視聴」を行うシステムをテレビ局側がつぶしにかかれば,別の,よりアングラなシステムに飛びつくか,または,テレビ離れをするかしてしまうことは目に見えていたはずです。

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05/10/2008

「アナログ放送の方が録画は便利」ではないという印象が強まりかねない社説

 読売新聞の5月10日付の社説「ダビング10 メーカーの頑固さ、なぜ?」は,不思議な社説です。

 読売新聞の論説委員は,

アナログ放送の方が録画は便利、という印象が強まりかねない。

と述べています。「〜という印象が強まりかねない」という言葉は通常,「〜」の部分が真実に反する場合に用いられます。従って,上記表現からは,読売新聞の論説委員においては,「アナログ放送の方が録画は便利」ではないと認識していることが伺われます(「アナログ放送の方が録画は便利」であることを認識しつつ,「アナログ放送の方が録画は便利、という印象が強まりかねない」という表現を用いたとすると,読売新聞の論説委員は,国民が真実を知ることに危機意識を抱いているということになりますが,それはメディアとして自殺行為というべきでしょう。)。

 しかし,質的に劣化はするものの順次複製が行えるアナログ放送と,順次複製を行うこと自体ができないデジタル放送とを比較した場合に,前者の方が「録画は便利」ということは客観的な事実といわざるを得ません。「ダビング10」にしても,最初にデジタル放送を録画した媒体から「ムーブ」を含めて10回コピーを行うことができると言うだけで,そこからの孫コピーはできないわけですから,アナログ放送と比べて「録画が不便」であることは否めません。

 といいますか,本来デジタルデータには,これを順々に複製しても情報の劣化が小さいという特性があるのですが,地上波デジタル放送については,「コピーワンス」技術により,この特性を活かさないことにしたわけですから,「録画」という側面からいえば,地上波デジタルというのは何らのメリットも利用者にもたらさないものであるということができます。

 そもそも,読売新聞社の論説委員は,

デジタル放送のテレビ番組を録画する際の消費者の不満を、軽視してはいないか。

との問いかけをメーカーに対して行っているのですが,それは矛先を間違えているのではないかという気がします。読売新聞社は,

約束を守れなくても責任はない、とメーカー側は言い切れるだろうか。
と述べているのですが,メーカー側が,ダビング10を実施してもらうことと引き替えにどのような約束をしたというのかが明らかではありません。権利者側が「権利者側は地上デジタル放送の録画ルールの緩和には補償金制度が必須だ」との前提を表明した上でダビング10の実施に同意したということは,メーカー側が補償金の存続に今後も異を唱えない約束をしたということを意味していません。したがって,守らないことで責任を問われるような「約束」自体がそもそもなかったと見るべきかと思います。

 つまり,この問題は,自分たちが勝手に期待したとおりの行動をメーカー側がとらなかったというだけで,既に決まった合意を保護にしたテレビ局側に問題があるのであり,むしろ,いわば駄々をこねる形になっているテレビ局側を責めるべきです。

 なお,

2011年の地上テレビ完全デジタル化の足かせにもなる。
といわれても,2011年までに地上波デジタル受信機への切り替えが進まなくなった場合に最も打撃を被るのは,テレビ局の側だと思うのですが,読売新聞社の論説委員には難しすぎるかもしれませんね。

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05/07/2008

Yokohamaが聴ける!

 以前のエントリーでご紹介した,Boの「Yokohama」がiTSJにアップロードされています(→Bo - Koma Stadium - Yokohama)。

 是非ともお聞き下さい。

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05/06/2008

コピー制御信号を脅しに使うことについて

 朝日新聞の記事によれば,

iPodなどの携帯音楽プレーヤーと、テレビ番組を録画するハードディスク内蔵型レコーダーに「著作権料」の一種を課金する制度改正の骨子案を文化庁がまとめた。8日の文化審議会に提案する。抵抗するメーカーに対し、課金を求める著作権団体が「秘策」で揺さぶりもかける。

とのことです。その秘策とは何かといえば,

 一方、著作権団体の「秘策」は、6月2日から導入する方針の「ダビング10」の拒否だ。デジタル放送のテレビ番組を自宅のハードディスク内蔵型レコーダーなどに録画した後、DVDなどに9回複製できる新しい方式だ

とのことのようです。

 しかし,2011年までに地上波アナログを停止させるというのはテレビ局側の事情なのであって,「アナログ波受信からデジタル波受信に切り替えると却って不便になる」状態を継続することにより追い込まれるのはテレビ局側なのではないかという気がしなくもありません。更にいえば,テレビ番組(とりわけ地上波デジタル放送の番組)を録画する機能を有する機器を製造・販売しているわけではない携帯音楽プレイヤー製造会社にとっては,何でそんなもののために払わなくとも良い上納金を払うことに同意しないといけないのかというところではないかという気がします。

 それ以前に,著作権法の平成11年改正の際には,コピー制御信号に対応する機器を製造・販売する義務を負わせないことを前提としておきながら,コピー制御信号に対応させることを事実上メーカーに義務づけるために無料放送である地上波デジタルにスクランブルをかけていることだけでも本来許し難いのに,そのようにして半ば強制的に録画機器に対応させたコピー制御信号を,私的団体による徴収され分配される一種の税金の範囲を拡張することに反対させないための脅しとして用いるというのは許されることではありません。無料放送である地上波デジタルにかけられたスクランブルがこのような邪な目的に活用されるのであれば,議会は直ちに放送法を改正して,地上波デジタルについてスクランブルをかけることを禁止すべきです。スクランブルをかけた上でなければ放送をしたくない事業者は地上波の放送免許を返上していただき,衛星放送等で思う存分スクランブル付の放送をしていただいたらよいのであって,地上波デジタルの放送免許は,そのような上納金を必要としない事業者に交付したらよいことです。

 強いて妥協案を提示するとするならば,ハードディスク内蔵型ビデオレコーダーに限定して私的録音録画補償金の対象とする代わりに,地上波デジタルについてはスクランブルをかけることを禁止するといったところでしょうか。従前B-CAS社に流れていたお金の一部が著作者団体等に流れるということであれば,機器メーカーもエンドユーザーも特段の不利益を被らないので(正確に言うと,有料放送を視聴したいユーザーは多少不利益を被るのですが),それならば検討に値する話ということができます。

Posted by H_Ogura at 04:04 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

04/29/2008

管理していない楽曲の分の使用料は受け取るべきではない。

 JASRACに公正取引委員会が立入検査に入った件についての解説は,ゲームラボの連載コラムで記載しました。ここでは,ではJASRACはどうすべきかについて思うところを書くことにします。

 話は簡単で,JASRACが管理していない分については,JASRACは放送使用料をもらうべきではないということです。もともと,放送事業収入の1.5%という放送使用料は,放送で使用される楽曲のほとんどがJASRACの管理著作物を使用していた時代に作られたものですから,JASRAC以外の管理事業者が著作権を管理する楽曲が使用される割合が増大すればするほど,「放送事業収入の1.5%」をJASRACのみが独占的できる正当性がなくなります。

 実際,特定の1週間のサンプリング調査により,または,放送局の使用実態報告書等により,一定数以上放送されたことが明らかな楽曲について,JASRACに著作権を信託譲渡をしていれば,放送事業者が支払った放送使用料の中から印税の支払いを受けることができるのに,JASRACに著作権を信託譲渡していなければ放送事業者が支払った放送使用料の中から印税の支払いを受けることができない(その分は,JASRACまたはJASRACに著作権を信託譲渡している作詞家・作曲家が余分に利益を得る)というのは,不公正ですらあります。

 この問題は,放送に関する包括利用許諾契約のみならず,JASRACが行っている包括利用許諾契約一般について言える(例えば,カラオケ歌唱等)ことなので,公正取引委員会にとやかく言われる前に,文化庁はJASRACに対し,JASRACが管理していない楽曲についての使用料に相当する金額については,包括的利用許諾契約の相手方からこれを受け取らないように行政指導をすべきだと思います。

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04/20/2008

Gospel With No Lord

 CamilleのGospel With No Lord(→Camille - Gospel With No Lord - Single - Gospel With No Lord) は,「さすがCamille」というAvant Gardな作品に仕上がっています。

 曲としては,Camilleの囁きから入り,囁きが繰り返されるうちに,その上にCamilleの歌声がかぶさるというものですが,この繰り返される囁きの部分が,ベースの奏でるメロディ及び指ならしとともに,快適にリズムを刻んできます。

 瑕疵は英仏混合であり,「it」を神から授かったのではなく,家族から授かったのだということをしつこいぐらい繰り返して歌います。神から授かったのでなければ何でも良いといわんばかりに,my brother,my sister,my mother and fatherはもちろん,my father in law,my brother in law,my cousin in law,my god father in law,挙げ句の果てにはhamster in lawまで持ち出してきます。歌の歌詞,それもジメジメしていない歌の歌詞にfather in lawなんて言葉が使われるというのはさすがだなあとしみじみ感じました。 Camille (French)/Gospel With No Lord

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04/11/2008

co.jpドメインを取らない外資系企業は「反日」と受け取られる?

 E社は,「.co.jp」ドメインをとれないことによって,日本国内で信用を失い,ビジネスに差し支えているという主張を繰り返しています。しかし,いわゆるドットコム企業が,日本国内向けサービスを行うに当たって,「.co.jp」ドメインではなく,「.jp」ドメインを用いていると言うだけで,「日本の風習に従う気のない,信頼の置けない企業」という捉え方をされるものだろうかという疑問があります。

 むしろ汎用ドメインとしての「.jp」ドメインが登録可能となってからは,特に一般顧客向けのサービスサイトは,「.jp」ドメインを用いるというのはかなり一般的になってきたとすら私は認識しているわけですが。

 また,「なぜ,.co.jpドメインではないかいちいち聞かれる」ということをずいぶん問題視されているわけですが「co.jpドメインは先に取られていたから」でも「.jpドメインの方が汎用的ですから」でも道都でも説明できると思うのです。「なぜ,.liドメインなのか」(そもそも.liドメインはどこのドメインなのか)聞かれる弁護士だっているくらいなので,大したことはないと思うのですが。

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04/09/2008

入手経路不明な他人のID・パスワードの新たな活用方法

 A社がBというドメイン名を管理するためにCというドメイン代行取得業者から付与されたID及びパスワードを,厦門にあるD社から購入する──これ自体NASDAQ上場企業が行うべきこととは思えません(しかも,その入手経路についてD社は回答を拒んだというのであればなおさらです。)が,入手した他人のID及びパスワードの活用方法としてE社が選択した方法は斬新です。

 E社は,このIDとパスワードを用いて,Bというドメイン名についての登録情報のうち,「経理担当者」についてのみこっそり改変しておき,A社が保有しているFというドメイン名についてのドメイン紛争において,A社とE社の代表者尋問を行う直前に,Bというドメイン名を用いたウェブページにアクセスしようとするとF社のウェブサイトにジャンプするように設定を書き換えました。その上で,「A社は,Fというドメイン名をこのように譲渡していることからも分かるとおり,他人に転売する目的でドメイン名を取得する事業者である。従って,Bというドメイン名についてもA社は不正な利益を得る目的でこれを取得したことは明らかである」と主張してきたわけです。すなわち,E社は,厦門の事業者から入手した,Bというドメイン名を管理するためのID及びパスワードを,A社が転売目的でFというドメイン名を取得したと裁判所に印象づけるために(というか,そのためだけに)活用したということになります。

 私は,厦門の事業者から入手経路が不明な他人のID及びパスワードを購入するというだけで,とても怪しいと感じてしまうのですが,この感覚を裁判所に理解していただけるのかがわかりにくいところです。

 なお,A社がBというドメイン名を取得した2日後に,E社はD社との間でBというドメイン名を取得する契約を締結し,D社はその半月後に,Bというドメイン名を管理するためのID・パスワードをE社に納入しています。

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04/04/2008

知的財産権研究会100回記念シンポジウム

 5月31日に東京国際フォーラムで開かれるシンポジウムに、パネルディスカッションに、パネリストとして出演する予定です。

 私以外のパネリストは、

  1. ご存じ、中山信弘先生
  2. 最近はワイドショーでもおなじみの相澤英孝先生
  3. TMI法律事務所の石原修先生
ということで、とても豪華な顔ぶれなので、時間と興味がおありの方々は是非ともご参加下さい。

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04/01/2008

「知的財産推進計画2007」の見直しにあたり盛り込むべき政策事項

「「知的財産推進計画2007」の見直しにあたり盛り込むべき政策事項」についてのパブリックコメントを下記のとおり提出しました。


1.映画の著作物の送信可能化とともに実演または音の送信可能化を行う場合には実演家またはレコード製作者の著作隣接権が及ばないようにする(報酬請求権化する。)。

 現行法では、ネット事業者が独自番組を製作して配信する場合には、放送事業者が独自番組を製作して放送する場合と異なり、既存のCD等に収録されている楽曲をBGMとして利用する場合には、レコード製作者の許諾を得ることが必要であり、実際には非現実的な利用料を請求され、その利用を断念せざるを得ないのが現実である。しかし、これでは、ネット事業者は、レコード製作者の許諾を事前に得ずにBGMをふんだんに使用できる放送事業者との競争で不利な立場に置かれることになり、結局、効果的にBGMが用いられた質の高いコンテンツの製作は、事実上、放送免許を握った一部の事業者のみが行えることとなってしまう。

 このような閉塞的な状況を打破し、映像番組の製作者の裾野を広げるためには、ネット事業者が独自番組を製作して配信する際にも、放送事業者が番組を放送する場合と同様に、著作隣接権が制限されるように放送度を整備することが求められる。

2.著作権等管理事業法23条第2項に基づき指定著作権等管理事業者に協議を求めることができる「利用者代表」について、特に、多数の個人による非営利または零細な利用が行われている利用区分においては、利用者が支払った使用料の総額に占めるその直接又は間接の構成員が支払った使用料の額の割合等をもとに「利用者代表」を決めるのではなく、当該利用区分にかかる利用者による投票等を通じて「利用者代表」を選任する手続きを新たに設ける。

 現在の著作権等管理事業法の規定では、「一億総クリエイター」といっても、その大多数を占めるアマチュアクリエイターの実情を、著作権等管理事業者の使用料規程に反映させることができず、その結果、多くのアマチュアクリエイターは、きちんと権利処理をした上で既存のコンテンツを利用して新たなコンテンツを作成することを諦めざるを得ないところに追い込まれてしまう。

 このような状況を打破するためには、アマチュアクリエイターの代表が、著作権等管理事業者に対して、その実情に合致した使用料規程を採用するように協議を申し入れる機会を設けるようにすべきである。

3.特に、相続(遺留分減殺を含む。)によって共有著作物となった場合には、過半数の共有持分権を持つ共有者の合意により当該著作物の利用(第三者への利用許諾を含む。)を行い得ることとする。

 現行著作権法では、共有著作物については、共有者全員の合意がなければこれを利用することができないため、特に相続により著作権が複数人の共有となった場合には、相続人間の感情的なしこりなどから、一部の共有者が当該著作物の利用を頑として拒む場合が少なからずあり、それは、優れたコンテンツの死蔵に繋がっていく。

 従って、少なくとも、相続等によって共有著作物となった場合については、「共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。」とする著作権法65条2項の規定は改められるべきである。

4 レコードに収録された実演の特定の利用をその実演にかかる実演家の要求にもかかわらずレコード製作者が拒んだ場合には、当該実演家と当該レコード製作者との約定の如何に関わらず、実演家は、何時にても、当該実演と同一の楽曲に関する実演を新たにレコードに収録してこれを利用することができることとする。

 実演家とレコード製作者との間に専属実演家契約が締結されている場合には、その契約中に収録された実演にかかる楽曲については、当該契約期間中はもちろん、契約期間終了後も数年間は、当該楽曲を別途レコード等に収録して利用することを禁止する約定が付されているのが通常である。このため、実演家がある楽曲にかかる実演を例えば音楽配信したくとも、当該実演にかかるレコードのレコード製作者がこれを拒んだときは、当該レコードに収録された実演を音楽配信できないことはもちろん、当該楽曲を新たに実演してこれを収録したものを音楽配信する等も禁止されてしまっている。

 これでは、レコード製作者が当該実演についての音楽配信等を拒んでいる間は、実演家が、自らの実演を広く世界に配信し、その知名度等を高めてそのライブ収入等を増大させる機会が奪われてしまうのであり、知財立国の名が廃るというものである。従って、レコードに収録された実演の特定の利用をその実演にかかる実演家の要求にもかかわらずレコード製作者が拒んだ場合には、実演家には、これに代替する行為を行う権限が法的に認められるべきである。

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03/27/2008

購買力の旺盛な層を無視したビジネス

 mohnoさんが、「コンテンツの使用許諾を取るには」というエントリーの中で、

きちんとリターンを見せることができれば、けっこういろいろなコンテンツが出てくるんじゃないかと思う(何しろコンテンツホルダーは、みな、金の亡者なんだから:-))。

と述べています。しかし、公平に利用許諾を行い、これにより正当な報酬を受けることにより得る利益よりも、偏頗に利用許諾を行いこれにより生じた独占的利益の上前をはねる方が、自分たちにはお似合いだ、とコンテンツホルダーが考えたときには、そのようにはなりません。

 mohnoさんは、

たとえば、小倉弁護士が iTunes の品ぞろえが悪くて「日本の有料音楽配信が栄えない」なんて嘆いているけれど、実はジャニーズ以外はすべて「着うたフル」にそろっていたらしい(はてブより)。最近、RIAA のデジタル音楽配信市場の数字をみて驚いたのだが(まだ2006年の数字しか出ていないが)、米国の市場規模は8.78億ドル。対する日本は(2006年で)535億円。人口比/GDP比(約2.5倍)を考えると、ものすごいドル箱(いや円箱)に成長している。だから、こぞってみんなが携帯向けに楽曲を配信したがるのだろう。

と仰っています。が、本来、着うた配信に許諾を与えることと、iTunes等のパソコン向け音楽配信に許諾を与えることとは矛盾しないはずです。といいますか、「配信業者に配信の許諾を与えてこれに対して正当な許諾料の支払いを受ける」というビジネスモデルにおいては、許諾先の配信事業者を絞る理由はあまりありません。しかし、現実にはそうなっていないわけで、それは、レコード会社と、特定の配信業者の資本関係に注目した方が合理的な説明ができるのではないかと思います。

 その結果どういうことが起こっているかというと、携帯のみユーザーよりは平均的な可処分所得の高いパソコンユーザーを、潜在的な顧客から排除することになっているわけです。ミドルクラス以上の、購買力の旺盛な層に届く商品展開をしないでおきながら、「コンテンツをネットに流しても儲からない」みたいな言い方をされても、「なんだかな」としか言いようがないわけです。もちろん、携帯ユーザーは数が多いので「広く浅く」ビジネスだけでよいのであればそれでもよいのでしょうが、そうであるならば、レコード会社として敢えて潜在的顧客としては見限ったパソコンユーザーが非正規市場から音楽データを調達することに目くじらを立てることもないように思うのです。

Posted by H_Ogura at 10:36 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

堀社長の憂鬱

 ホリプロの堀義貴社長のシンポジウム「動画共有サイトに代表される新たな流通と著作権」での一連の発言は、ネットで笑いものにされているようです。

 IT革命の特徴は、潜在的な顧客層の地域的な拡大と、中間業者の排除によるコストの削減ですから、コンテンツ産業がIT革命の利点を活かさないのであれば、これによる収益の増大に繋がらないのは当然のことです。

 例えば、番組制作会社が制作したコンテンツを広告付きのメディアとして広く流通させるには、現時点において、どのような技術を用いるのがベストなのかということを考え、実践してみる。そんな当たり前のことをしてこなかったのが、これまでの日本のコンテンツ産業です。その結果、無駄なお金が地方テレビ局の経営者や従業員の給料へと消えていきます。それは、効率的なコンテンツ流通が行われていれば、クリエイティブ部門に本来回るべきお金だったのにです。

 在京キー局には、地方の系列局を中抜きするチャンスが何度もあったはずです。全国のケーブルテレビ局から在京キー局の放送の同時再送信の許諾の申請があったとき、BSデジタル放送について在京キー局の子会社に放送免許が与えられたとき、そしてブロードバンド回線が普及しIPTVが現実味を帯びてきたときです。しかし、在京キー局は、系列のローカル局に依然として「我が世の春」を味わせるために、これらのチャンスをずっと見送り続けてきました。それどころか、インターネットを利用した番組の配信が著作権法により阻害されないように著作権等を制限する規定を設けようという声が高まったときに、キー局のロビイストたちは、その放送対象地域を越える範囲への自動公衆送信については著作権等の制限を受けることを自ら拒否して見せたわけです。

 その結果、どうなったのかといえば、実際に番組を製作するキー局に集まる広告費が中途半端にしか集まらず、それ故中途半端なレベルのテレビ番組しか制作できなくなりました。では、地方テレビ局に広告費が落ちている結果地方では地域色豊かなコンテンツが制作されているのかというと、関西地区を除けば、悲惨なものです。在京キー局の同時再送信担当者としてはローカル局の数はしばしば不足していますが、その地域に関するコンテンツを競って制作する事業者としては多くの地域で明らかに多すぎます。

 堀社長には、一流のビジネスマンとして、現在のコンテンツビジネスにおいて、どこに無駄があるのかを再検討した上で、なおもテレビ局、とりわけ系列ローカル局とネット事業者をどう取り扱っていくのかを再考していただきたいものです。

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03/26/2008

WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説

 ハンガリー著作権評議会会長であり、前WIPO事務局長であるミハイル・フィチョール博士による「WIPOが管理する著作権及び隣接権諸条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説」の日本語版が社団法人著作権情報センターで昨年3月から無償配布されていることを知ったので、早速一部をいただきました。

 フィチョール博士も謝辞で述べるとおり、必ずしもWIPOの立場を反映していない博士自身の見解が追加されているとはいえ、ベルヌ条約やローマ条約、レコード条約、WIPO著作権条約、WIPO隣接権条約の逐条解説については類書がありませんから、貴重な一冊であることは間違いありません。

 また、「著作権及び隣接権用語解説」の部分についても、

「公衆」は、家族の通常の集まり及びその最も親密な知人たち以外の相当多数の人々から成る集団である
という、日本の多数説である「特別な人的結合関係がなければ1人でも公衆」という見解とは真っ向から対立するあたりが面白かったりします。

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03/23/2008

Culture Firstのウェブが公開

 Culture Firstのホームページが立ち上がったようです。そこでは、

私たちは、流通の拡大ばかりが優先され、作品やコンテンツなどの創作物を単なる「もの」としか見ないわが国の昨今の風潮を改めるべく、文化の担い手として社会に喜びと潤いをもたらす役割を果たしていくことをあらためて表明するとともに、次の3つの行動理念を掲げ、最先端の知財立国として、世界に冠たる「文化=Culture」が重要視される社会の実現を求めます。

との意見表明がなされています。「文化の担い手」が起草しまたは承認したものとは思えない、空虚で上滑りした文章です。

 しかも、そのための具体的な行動方針として、私的録音録画補償金制度の拡充を求めることしかしていないというあたりが何ともいえません。私的録音録画って、作品やコンテンツの「流通」自体を拡充するものではなく(例えば、私が、購入したCDを、CDコンポに挿入して聴くのではなく、iPodにリッピングして聴くことにしたとして、そのことにより「流通」は拡大していません。)、むしろ、作品等の享受形態を拡充するものです。より正確に言えば、私的録音録画は、作品等を、いつでも、どこでも享受できるという言語著作物については写本の時代から実現できていたことを、音や影像でも実現する手段としてなされているにすぎず、作品等の享受形態の拡充というより、回復といった方がよいかもしれません。

 その上で言えば、経済の発展や情報社会の拡大を目的としたどんな提案や計画も、文化の担い手を犠牲にし進められることのないよう、関係者並びに政府の理解を求めますとのことですが、私が、購入したCDから音楽をリッピングしてiPodで聴くことにより、「文化の担い手」がいかなる意味で犠牲になるというのでしょうか。理解を求めるというのであれば、その前にきちんと説明すべきです。

 また、文化の振興こそが、真の知財立国の実現につながることについて、国民の理解を求めるとともに、その役割を担っていくことを表明しますとのことですが、ハードウェアメーカーの利益の上前をはねなければ振興されない事業なんてものは、「立国」の役には立ちません。知財立国を実現する、すなわち、知的財産によって国家の存立・繁栄を図るというのであれば、私的録音録画補償金などに頼らず、海外に進出して、世界中からお金を集めるくらいのことが必要です。補償金に頼り、補償金の拡充の陳情に明け暮れる事業者の団体がどのくちで「立国」などといえるのか、大いに疑問です。

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03/20/2008

「ネット法」に関して質問してみました。

「ネット法」について,提唱者の真意をあれこれ詮索しても始まらないので,電子メールで質問してみることにしました。どのような回答がなされるのか楽しみです。

 デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム 御中

 私は,弁護士業を営むとともに,大学で著作権法を教えるものです。貴フォーラムが提言された「ネット法」構想に大変興味を抱きましたが,何点か分からない点がありましたので,ご質問させていただきたいと考え,電子メールを差し上げる次第です。

  1. 貴フォーラムにおいては,「ネット法」において,著作権等管理事業法第3章,とりわけ第16条のような規定を置くことを想定されているのでしょうか。
  2. そのような規定を置くことを想定されていない場合,「ネット権者」が,自己と一定の資本関係にある事業者に対してのみ許諾を行うことにより当該事業者の収益が増大した結果直接的または間接的に得た利益もまた,権利者に対する分配の対象となるのでしょうか。
    (例えば,レコード製作者Aが,自己がネット権を有する楽曲甲を,AとBが半額ずつ出資して設立した配信会社Cにのみネット配信を許諾した場合,楽曲甲にかかる作詞家,作曲家,実演家等が分配を受ける「収益」とは,CからAに支払われる許諾料のみが対象となるのでしょうか,楽曲甲を配信することによりCが受ける収益の全額または半額も「収益」に含まれるのでしょうか。)。

 ご多忙のこととは存じますが,以上の点につきましてご回答いただければ幸いです。また,「ネット法」構想につきましては同様の疑問をお持ちの方も多いと思いますので,貴フォーラムのご回答を,私のブログ

http://benli.cocolog-nifty.com/
にて公開させていただければ幸いです。
以上

Posted by H_Ogura at 11:03 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/18/2008

ネット法?

「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」は17日,

インターネットでの流通に関する権利をネット権者に集中する。原権利者らは、インターネット上の流通については原則として権利行使できなくなるが、代わりにネット権者に対して報酬請求権を持つことになる

としつつ,

ネット権の対象となるコンテンツは当初、インターネット上での流通の要請が大きい映画、放送、音楽の3分野とし、それぞれ映画製作会社、放送事業者、レコード製作者がネット権者となる

とする政策提言をまとめたのだそうです。しかし,従前ネットでのコンテンツ流通を阻んできた事業者に許諾権を与えても,コンテンツのインターネット上での流通は盛んにはならないだろうと思ったりします。例えば,東京キー局で製作され放送されたテレビ番組のインターネット上での流通に関する許諾権をテレビ局に集中させた場合に,徳島県在住者が視聴できるような形で流通させることを許諾してくれるのだろうかというととても疑問だったりします。また,音楽のインターネット上での流通に関する許諾権をレコード製作者に一本化させた場合に,メジャーレコード会社が共同出資して設立した音楽配信会社のライバル会社に許諾してくれるのだろうかというととても疑問だったりします。

 日本におけるデジタルコンテンツの流通を促進するのが狙いなのであれば,単に許諾権を特定の事業者に一本化するだけでは足りず,許諾権を一本化された事業者が,どのネット事業者に対しても,同じ条件で許諾を行うという体制を組む必要があります。といいますか,この提言では,デジタルコンテンツの流通を促進するために,特定のコンテンツに関して他社が有する許諾権を強制的にとりあげてしまおうという話なのですから,映画製作会社、放送事業者、レコード製作者は,本来,自社の競争制限的利益を追及するためにこの許諾権を差別的に行使することは,一種の権利の濫用であって,許されるべきではないはずです。

 「有識者」が集まっていながら,そのことに触れられていないのが残念です。

Posted by H_Ogura at 01:51 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/05/2008

mixi内の投稿と公表権

 mixi騒動に関して気になったことの一つに、「公表権」についての一般の誤解というのがあります。

 公表権とは、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利をいいます(著作権法第18条第1項)。つまり、著作者の同意を得て公表された著作物については、著作者は公表権を行使することはできません。

 従って、mixi内に投稿したコンテンツについて投稿者が公表権を行使しうるかは、この投稿行為が著作権法上の「公表」にあたるのかが問題となります。では、著作権法上の「公表」に関する規定を見てみましょう。

 著作権法第4条第2項は、

 著作物は、第二十三条第一項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者によつて送信可能化された場合には、公表されたものとみなす。
と定めています。そして、「送信可能化」については、著作権法第2条第1項第9号の5で
送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。
と定義され、ここでいう「自動公衆送信」は、同法第2条第1項第9号の4で
自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
と定義され、さらにここでいう「公衆送信」は、
公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
と定義されています。さらに、ここでいう「公衆」は、同法第2条第3項により、特定かつ多数の者を含むものとするとされています。特定かつ多数の者を含むものとした結果著作権法上の「公衆」とは何を意味することになったのかについては、アプリオリな「公衆」とはなんぞやということとの関係で、「不特定人または多数人」とする見解と、「多数人」とする見解とに分かれます(前者の方が多数説です。)。

 従って、mixiが「閉じた空間」であろうとも、そのコンテンツにアクセスしうる人が「多数人」といえる程のものであった場合には、mixiへの投稿により送信可能化がなされ、著作権法上の「公表」がなされたということになります。なお、何人以上から「多数人」といいうるかは難しい問題ですが、選撮見録事件高裁判決では「24戸」からサーバにアクセスしうる場合にこれを「送信可能化」を認めています。

 では、マイミクが少ない人は大丈夫かというと、そこがまた難しい話です。すなわち、不特定人については少数(極端な場合1人)であっても「公衆」にあたるという見解が広く支持されており、そのような見解を支持する人々の多くは、何をもって「特定」人とするかについて家族に準ずるほどの高度の個人的結合関係を必要とするという見解である場合が少なくありません(私はそういう考え方には反対なのですが。)。このような見解に立った場合、そのコンテンツにアクセスできる人の数が少ないとしても、コンテンツ投稿者と、これにアクセスすることができる人との間に、家族に準ずるほどの個人的結合関係がない限り、投稿=送信可能化=公表ということになり、その時点で公表権を喪失するということになります。

 従って、mixi内の投稿について必ずしも著作者が公表権を行使しうるとはそもそも言えないということになります。

 その後の商売のことを考えると、その投稿者に連絡がつく限りにおいて、投稿者の許諾を改めて得ることなく、その投稿を書籍化するようなことはしないとは思いますが、法的にいうと上記のようなことになろうというお話です。

Posted by H_Ogura at 07:19 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

02/25/2008

まねきTV本案訴訟が一段落

 まねきTV事件の本案訴訟の第一審の審理が一段落となり,判決ないし中間判決(損害論の審理は後回しにして,侵害論の審理しかしていないため)の言渡期日が平成20年6月20日と指定されました。

 さて,どうなることやら。

Posted by H_Ogura at 04:34 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

02/20/2008

エルマークについて

 日本レコード協会が、「レコード会社との契約によって配信されているレコード(CD)音源や音楽ビデオなどに表示されるマーク」として「エルマーク」なるものを始めたのだそうです。

 とりあえず、発行先一覧のPDFを見てもApple社のiTunes Storeが入っていない時点でいかがなものかという気がします(まさか、あそこは違法サイトではないですよね。)。

 それと、(違法にアップロードされた音楽ファイルを私的使用目的でダウンロードする行為が違法化された暁には)ネット上にアップロードされているファイルをダウンロードするかどうかを考える際には、当該音楽ファイルにかかる楽曲について、誰が著作権を有し、誰が著作隣接権を有しているのか、そして、それら全ての権利者から許諾を得てアップロードされているのか否かを責任を持って表示してくれないと困るのであって、「このサイトにアップロードされているものについては、レコード協会傘下のレコード会社から許諾を得ているはずです」ということを表示してもらってもさほど意味はありません。せいぜい、日本のヒットチャートを賑わせているような国内メジャーレーベルの作品については、エルマークが付いていないサイトからのダウンロードは危ないかもしれないというくらいの話です(しかし、iTunes Storeを取り込めていない時点で、それすら怪しいですが。)。

 さらに日本レコード協会に注文を付けるとすれば、日本レコード協会傘下のレコード会社が日本国内における著作隣接権を有しているレコードについて、誰から許諾を得れば良いのか、許諾の条件はいかなるものかといった情報を提供するデータベースを作って欲しいです。そうすれば、「違法」なアップロードも若干減るのではないか、少なくとも、「禁止的でない条件で利用許諾をする」という運用がほぼ網羅的になされるのであれば、違法アップローダーに対する社会の風当たりはもう少し強くなるのではないかという気がします。

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02/12/2008

進化するコンテンツビジネスモデルとその収益性・合法性

 3月17日に、虎ノ門パストラル新館で行われる

DCAJコンテンツ知的財産権セミナー
進化するコンテンツビジネスモデルとその収益性・合法性
── VOCALOID2、初音ミク、ユーザ、UGMサイト、著作権者 ──
に、パネリストとして出席することになりました。

 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の伊藤博之社長や、ヤマハ株式会社内で「VOCALOID2」の開発にあたってきた剣持秀紀さんも参加されるので、興味がおありの方は是非ともご参加下さい。

(日本自転車振興会補助事業なので、セミナーについては参加費無料です。)

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02/05/2008

NHKとB-CASと放送法9条9項

 B-CASを正しく装着しないとNHKの地上波デジタル放送を視聴することができないのだとすると、放送法第9条第9項

協会は、放送受信用機器若しくはその真空管又は部品を認定し、放送受信用機器の修理業者を指定し、その他いかなる名目であつても、無線用機器の製造業者、販売業者及び修理業者の行う業務を規律し、又はこれに干渉するような行為をしてはならない。

とどのように整合するのでしょう。さすがに事務所にも放送法の注釈書は置いていないので、機会を見つけて弁護士会の図書館に調べに行かないと分りません(調べに行っても分からないかもしれませんが。)。

 B-CASカードを正しく装着しなければNHKの放送番組を視聴すること自体ができないということになると、暗号の復号という作業を行うB-CASカードは、放送受信用機器の「部品」という位置づけになるようにも思えてきます。

 法務的にいうと、NHK等が共同出資して設立した(株)B-CASが製造・貸与するカードしか市場に流通させないという時点で、NHKは付け入る隙を与えているなあという気がしてなりません。NHK等の目的からすれば、規格だけをB-CASで定めて、あとはオープンな環境で家電メーカーにカードを作らせれば良いだけなのですから。

【追記】でも、自由にカードを作らせたら、コピー制御に反応しないカードを作るところが出てくるし、コピー制御に反応することを復号方式使用の条件にしたらそれはそれで「干渉」したといわれかねないという気もしてきました。

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02/02/2008

「版面権」の例に倣う

 著作権審議会(現文化審議会)において最終報告書に本小委員会の結論として、……を著作権法上認めて保護することが必要であるとの意見が大勢を占めた。との記載が盛り込まれたのに報告書に沿った立法がなされなかったことが、過去に存在します。平成2年6月付の「第8小委員会(出版社の保護関係)報告書」で本小委員会の結論として、出版者に固有の権利を著作権法上認めて保護することが必要であるとの意見が大勢を占めた。と報告された「版面権」がそうです。

 これについては、「経団連が反対した」すなわち「いろいろな企業とか、あるいは研究所などでもってこういう自然科学系の雑誌などを大量にコピーして使って」おり、「したがって、そういったところが多額の経費負担をしなければならないということで抵抗」したために立法化が果たせなかったとされています。なお、その際には、「その版面権を主張されると、ある会社が、どの雑誌のどの部分をどのくらいコピーしているかということを調査されることによって、その会社あるいは研究所が何を今現在開発しようとしているのかということがバレてしまう。これは企業秘密なのにバレてしまう」ので困るとして反対がなされたそうです(以上、半田正夫「著作隣接権とは」83頁(第二東京弁護士会知的財産権法研究会編『エンターテインメントと法律』(商事法務・2005)所収))。

 企業機密と個人のプライバシーと比べたときに、後者は前者より劣ってなどいません。特に、どのような作品を入手し、視聴しているのかということを探知することは、思想・良心の自由とも緊張関係が生じます。だとすれば、「企業秘密の保護」が「版面権」を創設させない理由として有効だった以上は、個人のプライバシーないし思想・良心の自由もまた、私的ダウンロード行為禁止権を創設させない理由として有効に働くはずです。版面権のときは経団連の主張を容れずに版面権の創設に反対した人が、市民の主張を容れずに私的ダウンロード行為禁止権の創設に邁進したとすれば、その人の価値観は、「経団連>著作権関連団体>一般市民」というものであろうと理解することができます(そういう議員さんは、次回の選挙で落としましょう。)。

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01/23/2008

中山先生の最終講義

 今日は、中山信弘先生の東大での最終講義を聴講してきました。

 私の「ボス弁」であった故伊東正勝弁護士が中山先生と高校・大学の同級生だった縁で、私の事務所が主催する知的財産権研究会に中山先生が中心メンバーとして参加してくださったこともあって、中山先生には、弁護士に成り立ての頃からいろいろとお世話になっておりました。ですから、中山先生の最終講義は何が何でも聴講しなければと思い、「日弁連コンピュータ委員会シンポジウム2008」よりもこちらを選びました。

 教室には、知的財産権法を得意とする研究者や実務家が大挙して入室しており、改めて中山先生の偉大さを思い知った次第です。中山先生の研究の歴史から知的財産権法学の未来に向けてのメッセージを含む集大成的な講義の中で、商業用レコードの還流防止措置の創設についての反対運動の盛り上がりを、知的財産権、とりわけ著作権について「権利を強化すればよい」という従前の流れとは異なる流れを象徴するものとして取り上げてくださったことには、この運動のために相当の時間と労力を費やし、相当の潜在的顧客を捨て去った者としては、光栄の限りといえそうです。

Posted by H_Ogura at 01:20 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

01/20/2008

「Culture First」を実現するために(1)

 「Culture First」を実現するための方策を、私たちで考えて提案していくことも必要ではないかと思います。とかく消費者は、「『何でも反対』で対案がない」と批判されがちです。


 例えば、レコード会社とアーティストとの間の専属実演家契約において、公衆送信に用いるために新たに実演を行い媒体に収録させることをレコード会社の許可なく行う条項を盛り込むことを禁止してみてはいかがでしょうか。もともと、レコードに収録されていない実演の流通をコントロールすること自体はレコード製作者の著作隣接権の範囲外であって、それを「契約」で無理矢理コントロールしているに過ぎないのです。そして、この条項のお陰で、各アーティストがウェブ上で自由にプロモーションを行うことができないのですから。


 「Culture First」を呼びかけた著作権関係87団体の皆様、是非とも、レコード会社に対して、その経済至上主義を改めて、「Culture」の発展を阻害する条項を廃棄するように迫っていただければ幸いです。

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日米の権利者団体の活動方向、あるいは志の違い

 「創造のサイクル」を守るために、創作者の収入を増やすためにはどうしたらよいでしょうか。


 米国の脚本家組合は、テレビ局に対し分け前を増やせと要求することにより、創作者の利益を増やすことを目指しました。このために彼らは、ストも辞さない覚悟を決めました(といいますか、実際ストライキ継続中です。)。これに対し、日本の著作権関係団体は、テレビ局に対し分け前を増やせと要求するのではなく、一般市民に対し、私的録音録画補償金という名の上納金をもっとよこせと要求してきました。彼らは、テレビ局とは闘わず、役人を味方につけて、一般消費者と機器メーカーを攻撃することにしました。テレビ局様には強くもの申せない分の鬱憤を、一般消費者と機器メーカー にぶつけているような気がして、その志の低さに感心することしきりです。


 著作権等の権利者団体がまずなすべきことは、テレビ局等と対峙して、標準的な契約条件等を自分たちに有利になるように改善していくことであり、そのためには、その権利者団体の構成員の中でも今なお市場において訴求力のある「超一流」の者たちが率先して闘うことが必要となります(ストライキをにらんだ交渉なんて、超売れっ子たちがこぞって参加しないのであれば、意味をなしませんから。)。例えば、

歌舞伎役者の市川團十郎さんは「改めて、知的財産を財産として、『おたから』と感じなくてはいけない」と話した。
とのことですが、この言葉は、タイムシフトやスペースシフトの範囲内でテレビ番組を録画しているに過ぎない「消費者」に向けて更なる上納金を支払えというために発するのではなく、これを安く買いたたいて巨万の富を楽して築いているテレビ局にこそ向けるべきなのです。

Posted by H_Ogura at 10:55 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/19/2008

新しい「Culture」を作るのは、「挑戦者の皆さん」と、テレビ等の前の「あなたたち」です。

 「Culture First」キャンペーンに関する一連の記事を読み、一つ気になったことがあります。それは、「コンテンツ」を創作することで「Culture」は完成し、大衆はそれを消費するに過ぎないとの誤解をお持ちの方が少なからずいるのではないかということです。

 いうまでもなく、新たに発見されまたは生み出された、「コンテンツ」とも呼ばれる一連の情報群は、行動様式としてあるいは鑑賞の対象としてその社会の構成員に受け入れられることにより、その社会の「Culture」に組み込まれます。すなわち、一連の情報群を「Culture」たらしめているのは、その情報群の発信者ではなく、それらを「Culture」として受け止める、「消費者」とも呼ばれる、社会の構成員たちです。その意味で、NHKの爆笑オンエアバトルで司会が〆に新しい笑いを作るのは挑戦者の皆さんと客席の皆さん、そしてテレビの前のあなたたちです。と宣言するのはかなり良いセンスをしています。そうです。新しい「Culture」を作るのは、「挑戦者の皆さん」と、テレビの前の、スクリーンの前の、モニターの前の、スピーカーの前の、あるいはiPod片手にヘッドフォンをした「あなたたち」なのです。

 従って、「Culture First」との標語を、「Culture」の担い手の一端である「発信者」が「Culture」の担い手の一端である「消費者」から更なる財貨の移転を求めるために用いれば、「消費者」の反発を買うのは当然です。何たって、「Culture」を築きあげてきた手柄を「発信者」側で独り占めしようというのですから。

Posted by H_Ogura at 12:17 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/16/2008

Culture First

 ある情報が「文化」の一端を担うためには、その情報が広く大衆に共有されることが必要となります。狭い領域に囲い込まれた情報は、その社会を構成する人々の共通認識や共通の行動様式に組み込まれないが故に、「文化」の一端を担うことができません。したがって、情報の自由な流通を阻害するものは、その情報が私たちの精神世界を豊かにしてくれる度合いないし蓋然性が高いものであればあるほど、「文化」にとって「敵」であるということができます。

 ITmediaによれば、日本音楽著作権協会(JASRAC)や実演家著作隣接権センター(CPRA)など著作権者側の87団体は1月15日、「文化」の重要性を訴え、「Culture First」の理念とロゴを発表したとのことです。その上で、「文化が経済至上主義の犠牲になっている」とし、経済性にとらわれない文化の重要性をアピールしたとのことです。

 私も、私たちの精神世界を豊かにしてくれる情報が広く大衆に共有されることを阻害する、禁止権中心の著作権制度には問題があると常々思っていたので、「Culture First」という理念には賛同したいと思います。「知財戦略」という考え方自体、我が国の国際競争力を高めるとか、個々の企業の収益を増大させる目的のために、我々の社会が生み出した知的所産を利用しようというものであり、いわば「文化」を「経済至上主義の犠牲」にする政策ということができます。このような近視眼的な考え方が00年代も終盤にさしかかったこの時期に終焉を迎えるのであれば、それは素晴らしいことだと思います。

Posted by H_Ogura at 02:39 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/14/2008

<海賊版>の思想

 最近話題の山田奨治「<海賊版>の思想」を読むと、「著作権」という法技術自体が、そのそもそもの発端において、流通業者のギルド的利益の保護と、流通業者を通しての情報統制を目的として生み出されたものなのだなあということを改めて思い起こします。このころから、現実には著者の利益など二の次とされていたというあたり、現代の著作権法にも通ずるところがあって面白いです。

 著作権法は、著作権者による恣意的な運用に対抗する手段を組み込み、その手段を実際に発動させていかなければ、却って情報の流通を阻害し、文化の発展を阻害するシステムになってしまいます。18世紀のイギリスで既に知られていたこのような著作権法の宿痾を21世紀の日本で未だに克服できていないというのは、現代の法律家として、忸怩たる思いです。

Posted by H_Ogura at 12:58 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

01/06/2008

they don't own this government, we do

オバマ氏の1月3日の演説より。

you have done what the cynics said we couldn't do.
You said the time has come to tell the lobbyists who think their money and their influence speak louder than our voices that they don't own this government, we do; and we are here to take it back.

 これらの言葉を、今この時期だからこそ、la_caussetteではなく、こちらに転載しようと思いました。

Posted by H_Ogura at 02:27 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

01/05/2008

「創造のサイクル」を維持するためにテレビ局にできること

広告料収入ベースのストリーム配信の場合、JASRACに支払うべき著作権料は、広告料収入の2.5%が基本です(音楽コンテンツ主体の場合3.5%、スポーツ・ニュース主体の場合1.0%という例外はあるにせよ。)。

 これに対し、地上波テレビ局がJASRACに支払うべき著作権料は、年間包括契約を結んだ場合には、放送事業収入の1.5%です(衛星放送も基本的に一緒。ただし。音楽コンテンツ主体の場合2.25%、スポーツ・ニュース主体の場合0.75%という例外があります。)。

 テレビ局が支払うべき著作権料収入を現状の1.5%から広告料収入ベースのストリーム配信と同じ2.5%に引き上げるとどうなるでしょうか。

 平成18年度の「放送」からのJASRACの著作権収入が17,010,444(千円)であり、1.5%→2.5%だと66.6...%増ということになりますから、単純計算で、17,010,444(千円)の収入増が見込まれるということになります。

 これだけで、平成12年から平成18年にかけてのレコード・CDからの著作権収入減少分13,497,673(千円)を軽く取り戻してしまいます。したがって、「創造のサイクル」を維持するために著作権者の収入を確保という目的のためには、JASRACは、一般市民に対し闇雲に訴訟を提起して違法サイトから音楽ファイル等をダウンロードしていたことを発見したらその分の著作権使用料相当金の賠償を求めるという非効率的なことをするより、テレビ局等から徴収する著作権料の料率をストリーミング配信と同レベルにする方がよいのではないかと思ったりします。

 例えば、フジテレビ単体の平成18年4月1日〜平成19年3月31日の広告料収入は2916億円であり、JASRACに支払う著作権料を1.5%から2.5%に引き上げても約29億円の負担増となるに過ぎません。同期間のフジテレビの純利益は、約239億円ですから、問題なく負担できる金額です。フジテレビの従業員数は、平成19年3月31日現在で1423名ですから、この負担増分を従業員の給与を引き下げることにより賄ったとしても1人あたりの負担は約200万円。フジテレビ社員の平均年収は1572万円ですから、約200万円ほど引き下げたところで、まだまだ平均月収100万円以上を維持できているわけです。

 テレビ局の皆様であれば、「創造のサイクル」を維持するために一定の負担増を覚悟することに賛同してくださるのではないかと思いますので、一般市民に負担増を求めるより政治的にも楽なのではないかとも思いますし。

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01/04/2008

正規レコード・CDの代替商品は何だったのか

 平成12年と平成18年のJASRACの収入を比較してみて、レコードやCDの売上減少分のうち適法な代替サービスに向かったと思われるものがどの程度あるのかを予想してみることにしました。


 平成12年のオーディオディスクからのJASRAC収入が37,749,723(千円)なのに対し、平成18年のそれは 24,252,050(千円)ですから、この間の減収分は、13,497,673(千円)ということになります。ここから、ビデオグラム増加分4,780,484(千円)、着うた分2,189,716(千円)、その他音楽配信分2,167,863(千円)を差し引く(さすがに、「着メロ」は音楽CD等の代替とはならないでしょうから計算に含めていません。)と、残りは4,359,610(千円)となります。これは、オーディオディスクからの著作権料の減収分の約32.30%に過ぎません。


 では、この残りの約32.30%は、違法ダウンロードにより生じたものなのでしょうか。ここで考えなければいけないのは、着うたにせよ、その他音楽配信にせよ、通常1曲単位で購入することが可能だという点です。レコードにせよ、音楽CDにせよ、特定のヒット曲のみを購入したと思っても、1個のパッケージに収録されている楽曲(シングルCDですら、カップリング用の楽曲に加えて、カラオケバージョンやリミックスバージョン等が含まれているのが通常です。)全てを購入しなければならなかったわけで、それら「特に欲しかったわけではない」楽曲についての著作権料も消費者は間接的に負担してきたわけです。それが、着うたにせよ、iTunesのようなその他音楽配信にせよ、欲しい楽曲のみを購入できるわけです。したがって、1曲あたりの著作権料が変わらないとした場合、消費者が楽曲データを購入する手段を音楽CDから音楽配信に代替させた場合、抱き合わせ分を買わなくともよくなった分だけ、JASRACに間接的に支払うべき著作権料が減少することになります。


 仮に、このように抱き合わせ分を購入しなくとも済むようになったことにより購入する楽曲数がマキシシングル(5曲)から1曲に減少したと仮定した場合、着うた及びその他音楽配信による著作権収入分を5倍したうえで、オーディオディスクからのJASRAC収入の減少分からビデオグラムからの著作権収入の増加分を差し引いた金額からさらにこれを差し引いた数字が、「レコード・音楽CDから他の正規商品への代替」以外の要因によりオーディオディスクからのJASRAC収入が減少した分ということになります。


 ただ、困ったことに、

13,497,673-4,780,484-2,189,716×5-2,167,863×5=-13,070,706(千円)

ということで、むしろ、正規に楽曲を購入する手段がレコード・音楽CDからビデオグラム・着うた・音楽配信へと移行するに伴って、却って消費者はまじめにお金を払うようになっているという結論すら導き出されかねない状況です(といいますか、貸しレコードからの著作権収入の減少分10,724,434(千円)を補ってなお余りがあります。


 このように考えてみると、著作権管理団体が「違法アップロード」により収入が減少したと考えている分の多くは、実は、抱き合わせ販売ができなくなったことによる収入減少に過ぎないのではないかという気がしてなりません。そして、それは、コンテンツビジネスにおいて、むしろ正常な姿に近づいているといってもよいのではないかとも思えたりしてきます。

Posted by H_Ogura at 07:58 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (3)

12/31/2007

知財分野では、訴え提起前の証拠保全は結構活用されている

 私的使用目的のダウンロード行為の違法化を推進したい人たちは、匿名での印象操作に忙しいようです。

 例えば、

しかし,そもそも,証拠保全の危険は,現在においても,現行著作権法に違反していると疑われる場合に存するのであり,他方,現在,各家庭でPC端末の中身を確認する証拠保全が行われたという例は,あまり聞かない。

 法律論として,問題のファイルが当該PC上に存するという疎明が必要であるという問題もあるし,実際上,裁判所の運用の問題も関係しよう。

との指摘があります。

 現在,各家庭でPC端末の中身を確認する証拠保全が行われたという例は,あまり聞かないのは当然です。現行法では、各家庭でのPC端末へのコンテンツのダウンロードは原則適法だからです。文化庁の狙いはこれを違法化することにありますから、これが実現した暁には、各家庭でPC端末の中身を確認する証拠保全が行われない理由はありません。

 現在、PC端末の中身を確認する証拠保全は、企業内でのライセンス本数超インストールの疑いを持たれたときにBSAの加盟企業の申立てによりなされる例が頻発しています。その際に「問題のファイルが当該PC上に存する」ということについて確度の高い疎明を要求しているのかといえば、そうでもありません。また、「プライバシーや企業秘密が侵される」などの理由で証拠保全を拒絶できているかといえば、そういうことでもありません。

 企業内でのソフトウェアのインストールの場合、どのソフトが計何本インストールされているかが分かれば、あとは企業側に正規のライセンス本数を主張・立証させることで、超過インストール本数を算定することができますから、操作ログまで取得する必要はありません。しかし、個人のPC内のmp3ファイルについていえば、違法サイトからのダウンロード以外に、正規に購入したCDからリッピングしたものや、レンタルショップや友人から借りてきたCDからリッピングしてきたもの等があり得るのであり、正規にライセンスを受けたことを複製物の保有者が主張・立証できなければそれは違法サイトからダウンロードしてきたものである蓋然性が高いとは言えそうにありません。とすれば、操作ログの取得等まで裁判所が認める可能性がないとは言い切れません。

Posted by H_Ogura at 02:07 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/29/2007

権利者は「アナウンス効果」では満足しそうにない

 「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見募集の結果について」を見る限り、文化庁は、私のパブリックコメントをまとめの中に反映させるおつもりはないように思われます。

 それはともかく、このまとめを見ると、権利者団体の本音が分かります。

 例えば、日本俳優連合会は、既に違法行為助長に対する抑止力として、早急に罰則規定を法定すべきであると要請しています(同様に、罰則の適用を除外することには反対するものとして、日本国際映画著作権協会。)。

 罰則までは望まないにしても、当該利用行為が著作権法第30条の適用外となった後における違法複製を把握するための方法や、その撲滅・防止の具体的な方法については、今後の議論において十分な配慮を願う(日本音楽著作権協会)や違法な録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を30条から除外し、権利者が権利を主張できるよう法律上の措置を講ずるべき(日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会)としており、権利者たちは、「アナウンス効果」で満足するつもりはないようです。

 ところで、 当該利用行為が著作権法第30条の適用外となった後における違法複製を把握するための方法として、どのように「配慮」をして欲しいと日本音楽著作権協会は願っているのでしょうか。

Posted by H_Ogura at 04:47 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

12/25/2007

私的ダウンロード違法化の問題点

 私的ダウンロード違法化の問題点という資料を作成してみました(作成自体はkeynoteを用いましたが、どうせMac Userにしか通用しないので、pdf化したものをアップロードしてあります。)。

Posted by H_Ogura at 07:49 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (8) | TrackBack (3)

12/23/2007

より簡便で他害的でない方法を利用しない理由は?

 違法サイトからのダウンロード行為の違法化というのは、違法サイトの開設者への権利行使が功を奏しないという事実が大前提であり、ダウンローダーへの権利行使は功を奏するはずだという合理的予測が小前提となるはずです。

 しかしながら、著作権管理団体が違法サイトの開設者に対する権利行使をどの程度試みたのかというと、私が知る範囲内ではお寒い限りだということができます。WinMXユーザーについての発信者情報開示請求訴訟をレコード会社が提起したという報道はないわけではありませんが、この記事によれば、この記事が作成された2006年05月16日の時点で15人分しか発信者情報開示請求を受けていないわけであって、RIAAと比べて桁が2つから3つくらい違うといった感じです。

 Winnyについても、開発者についての刑事事件の地裁判決の事実認定が正しいならば調査機関の直近の転送者がアップローダーである蓋然性は非常に高いわけですし、仮に問題のファイル自体は知らないうちに「キャッシュ」されたものであったとしてもWinnyを使っている時点で過失があるわけですから、直近の転送者を相手に損害賠償請求でもかけられるはずなのに、Winnyのエンドユーザーについてレコード会社等が発信者情報開示請求を行ったというニュースに接した記憶がありません。

 アップローダーに対する権利行使は、アップローダーが不特定人に公開している情報を元に行使することが可能(ファイル共有ソフトの利用者は、匿名プロクシーを使用していないことが経験上多いので、名誉毀損系よりは発信者を簡便に突き止められる蓋然性は高いです。)ですが、ダウンローダーに対する権利行使は被疑ダウンローダーのパソコンを証拠保全等により「丸裸」にしなければ困難です。それなのに、著作権関連諸団体は、比較的簡単で、かつ、相手のプライバシーを侵害する度合いの低い前者をまともに行使してすらいないのに、比較的困難で、かつ、相手のプライバシーを完全に蹂躙する後者の権利行使をさせろと声高に主張するのはなぜなのでしょうか。

Posted by H_Ogura at 03:15 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/22/2007

カナダからの知らせ

 Etan Vlessing氏のCanada delays copyright amendmentという記事によれば、カナダ政府は、2007年12月11日、消費者側の草の根反対運動に答えて、予定されていた著作権法改正案の議会への提出を延期する旨表明したそうです。

 その前の週に、何千もの手紙や電話で、全員の必要を満たすような、そして、教育や、消費者の権利、プライバシーや表現の自由を不当に害さないようなバランスのとれた著作権政策を採用するように迫ったということで、これが功を奏したということのようです。

 オタワ大学でインターネット及び電子商取引法を担当するMichael Geist教授のCopyright Delay Demonstrates the Power of Facebookによると、消費者たちがそのような反対運動を実践するにあたってはFacebookが活用されたとのことで、SNSがまさにSocialな力を持つ、2000年代型の消費者運動の幕開けを感じさせます。

 で、カナダでできたことが日本でできない道理はありませんね。

Posted by H_Ogura at 06:05 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/21/2007

2割 対 10割

 今週のオリコンシングルBest10のうち、iTunes Store for Japanでダウンロードできるのは何曲あるでしょうか。

 正解は2曲(BoAの LOSE YOUR MIND feat.Yutaka Furukawa from DOPING PANDA(6位)と、 清木場俊介のSAKURA(9位))です。

 これに対し、今週のBillboardのSingle Top10のうち、iTunes Store for USAでダウンロードできるのは何曲あるでしょうか。

 正解は10曲です。

 日本の有料音楽配信が栄えない原因は、まずここにあります。

Posted by H_Ogura at 02:08 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

12/20/2007

ロビーの準備への協力のお願い

 著作権法第30条改正問題について今後与野党に働きかけるにあたっては事前の準備が必要ですが、それを私1人でやるのは荷が重すぎます。つきましては、有志の皆様にも、いろいろと手伝っていただきたいことがあります。

  •  この改正案の問題点を視覚的に理解できるようなプレゼン資料を作成してくださる方がおられると嬉しいです。私は、言葉の世界で生きてきたこともあって、これを視覚化するという作業がとても苦手です。A4で3枚程度にコンパクトに収まるような資料をどなたか作成していただけないでしょうか。
  •  現在の日本の有料音楽配信がこのレベルに止まっている理由が「違法サイトからのダウンロード」以外にあることを示す資料の収集に協力してくださる方がおられると嬉しいです。米国のiTunes Storeと日本のiTunes Storeとのカタログの違いの解析、米国の iTunes Storeで配信されているコンテンツが日本のiTunes Storeで配信されることを拒んでいるのは誰なのかを探る関係者インタビュー、私たち消費者がコンテンツのために支払ったお金は誰がどれだけ収受することになるのかを関係者のインタビューを踏まえて利用態様(パッケージ購入、レンタル、PC配信、形態配信等)ごとに図示等々です。消費者を悪者にする分には権利者団体は纏まることができるので、どうしてもいろいろな権利者団体が集まって方向を決める文化審議会では消費者悪玉論に基づく法改正が提案されがちですが、権利者団体にとって不都合な事実を含めて現状をまず認識しなければ、「創作のサイクル」を維持・発展させていくことなど期待できません。

Posted by H_Ogura at 11:12 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (3)

12/19/2007

はじめの一歩

 私が個人的に面識のある民主党の川内博史議員と公明党の山口那津男議員に、それぞれの党の知財政策担当者とユーザー代表との意見交換の場を設けていただけないか要請する電子メールを出してみました。

 もしOKの返事が出ましたら、ご協力の程お願いいたします。

Posted by H_Ogura at 01:33 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

川瀬室長はオープンすぎます

 ITMediaの記事によれば、文化庁の川瀬室長はこのようなことをいっているのだそうです。

また法執行の面でも、ユーザーの一方的な不利益にはなりにくいと説く。「仮に、権利者が違法サイトからダウンロードしたユーザーに対して民事訴訟をするとしても、立証責任は権利者側にある。権利者は実務上、利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ることになる。ユーザーが著しく不安定な立場に置かれる、ということはない」などとする。

 これは不思議な発言です。特定の利用者が違法サイトから音楽ファイルをダウンロードしているかどうかを知る術は著作権者側にはないはずです。これはダウンローダーの氏名・住所が分からないというレベルではなく、ダウンローダーのIPアドレス等すら分からないわけで、「権利者がまず利用者に警告する」ということ自体が不可能です。

 他方、確かに著作権侵害に基づく損害賠償請求訴訟において侵害行為を行ったか否かについての立証責任は権利者側にあるわけですが、では、利用者側は白を切り通せば賠償義務を負わされないから著しく不安定な立場に置かれることはないということを規制立法を作る側が言ってしまうのはいかがなものかと思うし、実際そんな簡単な話なのかというとそうではありません。我が国の民事訴訟法は、訴訟提起前に証拠保全手続きを行うことを認めており(実際、医療過誤訴訟等において広く活用されています。)、著作権者側から「あいつは違法ダウンロードをしているに違いがない」と目をつけられたが最後、著作権者の訴訟代理人と裁判所の職員が自宅にわっと尋ねてきて、私たちの使用しているパソコンのハードディスクに記録されているデータ(パソコンの操作ログを含む)の全てを複写していく可能性だって十分あります(それ以外に、違法ダウンロードをしたということを立証する手段はないのですから、裁判所がその種の証拠保全を認める可能性はなくはないです。。)。

 訴訟前の証拠保全として認められなかったとしても、著作権者から あいつは違法ダウンロードをしているに違いがない」と目をつけられた、とりあえず訴訟を提起された上で、著作権法114条の3第4項により準用される同第1項により、私たちが使用しているパソコンを検証物として提出するように命じられるかもしれません。

 結局のところ、JASRAC等の著作権者等に、自分のパソコンのハードディスクにどのようなデータが保存されており、また、自分がどのサイトにアクセスしているのかということをまるまる知られることになってしまいます。それでも「ユーザーが著しく不安定な立場に置かれる、ということはない」といわれてしまうと、川瀬室長はどれだけ普段オープンに生きておられるのか知りたくなってしまいます。

Posted by H_Ogura at 12:26 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (6) | TrackBack (1)

12/18/2007

「テレビ局のコンテンツのネット流通が増えないのは、実演家(著作隣接権者)の許諾を得られないから」なんて主張してる?

 エイベックス取締役の岸博幸さんは次のようなことを仰っています。

 例えば、「テレビ局のコンテンツのネット流通が増えないのは、実演家(著作隣接権者)の許諾を得られないから」といった主張がある。

 しかし、私は寡聞にしてそのような主張のあることを知りません。少なくとも局制作のテレビについていえば、番組を制作する段階で、制作した番組をネット流通させることを前提とした出演契約を結べば済むだけのことだからです。現在、アニメやドラマやお笑い系のバラエティなどに関して、番組を制作する段階で、制作した番組をDVD化して販売することを前提とした契約を結んでいるわけですから、別にできないわけではありません。

 むしろ、ネット流通に関してしばしば聞くのは、「商業音楽コンテンツのネット流通が増えないのは、レコード製作者(著作隣接権者)の許諾を得られないから」という主張です。少なくとも商業的な有料音楽配信サービスの大部分は「違法コピーが防止される一方で露出と収入を増大させられる」ものであるにもかかわらず、未だ有料音楽配信サービスを拒否するレコード製作者が少なくないというのが現実です。

 また、

日本ではネット上に流通させても、コンテンツを作る側が受け取る報酬は米国と比較して少ないと聞いている
とのことですが、本当でしょうか。iTunes Storeについていえば、米国の主流は1曲99セント。で、レコード会社の取り分は70セントだといわれています。これに対し、クリエイターへの「思いやり」が強制されている日本では1曲150円〜200円。70〜120円のお金はどこに消えているのでしょうか

Posted by H_Ogura at 08:14 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

嗤っている暇などない

 ITmediaの「ダウンロード違法化」不可避にという記事についてのはてなブックマークコメントを見て思うのは、みなさん、結構諦めが早いなあということです。

 「著作権法は、文化庁で作っているのではない。国会で作っているのだ!」という原則論に立ち戻れば、まだまだ諦めたり嗤って自分を慰めるには早すぎることは明らかです。何たって、この間の衆議院議員選挙のお陰で、自民党か民主党のどちらか一方を味方につけることができれば、悪法の通過を阻止できるのです。

 そして、国会議員の著作権法についての意識が低かったレコード輸入権創設時と異なり、著作権関連団体の顔色ばかりを伺った法改正を推進することは多くの有権者を敵に回すことに繋がりかねないとの意識は、与野党の議員やそのスタッフの記憶にまだ残っているはずです。

 著作権関連団体と文化庁と政治家の関係を嗤うのは闘えるだけ闘って万策尽きてからでも間に合います。一有権者として政治家に要求し、団結してまた政治家に要求する。──これは、民主主義社会において自分たちの利益を法なり政策なり予算なりに反映させるための基本的作業であり、全く恥ずべき事ではありません。選挙による洗礼を受けない官僚が天下り先を用意できる著作権関連団体の顔色ばかりを伺うのであれば、私たちは、選挙による洗礼を受ける国会議員に、「こっちを向く」ように働きかけていくことが肝要です。

Posted by H_Ogura at 07:12 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (4)

12/16/2007

ライブの復権とネットとレコード会社

 池田信夫先生のblogの「ネットはクリエイターの敵か」というエントリーのコメント欄では、レコーディングにかけるコストについての議論が行われていました。

 もちろん、技術の進展により機材等の価格が劇的に低下したとはいえ、一定以上の水準の機材を備えているスタジオを借りてレコーディングを行うには、ある程度のスタジオ使用料は支払わなければいけないわけで、そういう意味では、それなりのレコーディングコストは現在でも不可避だということはいいうるでしょう。ただし、そのようなレコーディングスタジオを借りる日数は、想定される売上げに合わせて、増減させることができます。The BeatlesのPlease Please Meがそうであったように、数時間のレコーディングで1枚のアルバムを作り上げることは可能です。

 確かに、それは今の日本では多分に非現実的です。というのも、The Beatlesの場合は、メジャーデビュー前に膨大な数のライブをこなしており、スタジオ入りしてから念入りに練習する必要もありませんでしたし、1曲演奏するのに何テークも費やす必要もありませんでしたし、パートごとに別収録する必要もありませんでした。今の日本のアーティストでそんなことができるのはごく一握りです。しかし、長時間のレコーディングと機械的な修正・編集によりレコード会社が作り上げた音源については、様々な流通経路(正規CDの新品販売だけでなく、CDレンタルや中古売買、合法・非合法の音楽配信等)が既にあり、正規CDの価格について独占的に価格を引き上げられる環境ではなくなってしまっています。また、CDの次世代を担うパッケージメディアであるDVDでは、前述のレコード会社が作り上げた音源よりは、特定のライブ会場においてアーティストが一瞬のうちに作り上げた音源が好まれます。また、アーティスト側も、レコード会社による搾取の大きいパッケージより、レコード会社の搾取の及ばないライブを収益の柱としていこうという意志が垣間見られるようになっています(Princeの1件は、その嚆矢といえましょう。)。すると、いずれにせよ長時間スタジオを借りなければレコーディングもままならないようなアーティストはいずれ淘汰されるようになるのではないかという気がします。

 そうなると、レコード会社はどのような役割を担うようになるのでしょうか。私は、特段レコード会社不要論に立つものではありませんが、とはいえ、アーティストの発掘、育成、プロモーションについでの主導権が、レコード会社からプロダクションに移行していく可能性は十分にあるとは思います。収益の核がパッケージからライブに移行すると、ライブでの収益の分配に預かることのできないレコード会社は投資のインセンティブを失っていくからです。もちろん、レコード会社が自社又は子会社を音楽出版社としてそのアーティストが実演する楽曲の著作権を管理することによりライブでの収益の分配に預かることも不可能ではないでしょうが、自作自演系のアーティストについていえば、自社系列の音楽出版社に著作権を管理させろと要求するレコード会社は回避しようということになっていくのではないかとも思います。

 あとは、メジャーレーベルが持つラベリング機能が、Web2.0時代にどの程度生き残るのかというところです。ただ、欧米の例を見ると、「目利き」的な機能こそ、ネットがレコード会社を凌駕してしまう部分なのです(Kaminiなど典型ですが。)。

Posted by H_Ogura at 07:35 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

12/06/2007

流通であることと不要であることは結びつかない

「レコード会社が流通でしかない」とか言う話って、鏡に映った自分の顔もよく見えないぐらいぼんやりした二日酔い頭で書いたのか、レコード会社不要論のために単純化したおもしろ話か、どちらかだとしか思えない。
なんて言い方をされてしまっているようです。

 著作隣接権保護の根拠に関する一連の議論を前提知識として知っていれば「レコード会社が『流通』でしかない」という話は理解しやすいと思うのですが、なかなか難しいことでしょうか。準創作的な要素のある実演家は別として、それ以外の隣接権者については著作物を含む情報の伝達行為を、一定の独占権及び報酬請求権を付与することにより投下資本回収の機会を付与することで、奨励することにあります(実演家以外の隣接権者の行為についても準創作的な要素のあることを隣接権保護の根拠とする見解もありますが、中山信弘「著作権法」422頁が述べるとおり、「レコード製作者や放送事業者に創作的要素が皆無であるとはいえないが、この程度の創作的要素であればほとんどの企業に見られることであり、これだけでは保護の理由としては不十分」だと思います。)。そういう意味で、レコード製作者は、著作物等の情報を広く公衆に伝達する「流通」業者であって、ネット企業との間に本質的な差異はないのです。

 それにしても「レコード会社が流通でしかない」とか言う話 を「レコード会社不要論のために単純化したおもしろ話 」と思ってしまうのは、流通を低き見過ぎなのではないかという気がします。私はなにしろ、中古品を含むゲームソフト販売店の訴訟代理人をやっていましたから、流通業者の話を生で聞く機会が結構あるわけですが、流通ってプロの仕事ですよ。自分たちをクリエイティブの側に位置づけている企業の方々って、流通業者をフリーライダーだと本気で勘違いしていて、準備書面等で流通業者に対する差別心を露骨に文章化されることがままあるのですが(まあ、厳密に言えば、実際に文章化しているのは、その種の企業についた弁護士ですけど)、あれっていかがものかと思っています。

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11/30/2007

まさに桁が違う

 2007年10月16日から11月15日まで行われた「文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理」に関する意見募集の結果、

パブリックコメントの総数は約7500。このうちの8割が「著作権法30条の適用範囲の見直し」に関連した意見で、違法サイトやファイル交換ソフトからのダウンロードを私的複製の範囲からは除外し、違法とするとした中間整理の意見(いわゆる「ダウンロード違法化」)に反対する内容だった。ただし、ダウンロード違法化に関連した全体の8割の意見のうち、約7割が「インターネット上のテンプレートを利用したコピー」(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室長の川瀬真氏)だった
そうです。

 ということは、ダウンロード違法化に反対する内容のコメントのうち、インターネット上のテンプレートを利用したコピーでないものが、

約7500×0.8×(1−約0.7)=約1800通

も寄せられたということで、それは結構凄いことなのではないかという気がします。

 だって、今年の初めの「情報通信審議会第 3 次中間答申 パブリックコメント」ですら、パブリックコメントの提出件数は81件です。「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(骨子案)」についての意見に至っては1件です。まさに桁違いです。

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11/28/2007

「思いやり」より「思い入れ」

 岸博幸エイベックス取締役は、前々回も取り上げた「著作権法改正巡る2つの対立・「思いやり」欠如が招く相互不信」という文章の中で、

もちろん、クリエーターを甘やかせと言う気はない。クリエーターの側も、環境変化に対応した新たなビジネスモデルを追求すべきである。ただ、その実現には時間がかかるのだから、それまでの間は、関係者もプロのクリエーターに思いやりを持って接するべきではないか。プロのクリエーターも賛同できる新しいアプローチを提案するなど、色々なやり方があるはずである。
とも仰っています。

 ただ、直近の話をするのであれば、プロのクリエーターに思いやりを持って接せよと関係者に要求する人よりは、プロのクリエーターに思い入れを持って「これを買って聴いてみろ」と辺り構わず勧めて回る人の方が、よほどプロのクリエーターの役に立っているのではないかと思います。私たち消費者は、抽象的な「コンテンツ」にお金を支払うのではなく、個別具体的なアーティストの、あるいは、個別具体的な作品にお金を支払うのですから。そして、不思議なことに、著作権者ないし隣接権者の権利範囲の拡大乃至その実効性の向上を声高に叫んでいる官僚や実務家、研究者からは、往々にしてプロのクリエーターに対するそのような思い入れを感ずることができないのです。

 ということで、Kwalの"Exilé "(→ Kwal - L? o? j'habite - Exilé )は、コーラスとラップの調和がゾクゾクするくらい凄いので、是非とも聴いてみてください。

Posted by H_Ogura at 02:31 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/27/2007

2つのザナドゥ

 来月分のゲームラボでの連載コラムに、「メジャーアーティストと声質等が似ているさほど売れていない歌手にそのアーティストの持ち歌を歌唱させ、これを録音して使うという手法」が実演家ないしレコード製作者の著作隣接権としての複製権(録音・録画権)を侵害するか否かという問題を取り上げることにしました。

 この問題は、あまり明示的には論じられていませんが、著作権と著作隣接権との違いを際だたせるものですから、もう少し注目されても良いのではないかと思っています。

Posted by H_Ogura at 09:50 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

浪費癖のある女王を何とかしなければ革命の発生を抑えることは難しい

 岸博幸エイベックス取締役の「著作権法改正巡る2つの対立・「思いやり」欠如が招く相互不信」という文章が話題を集めています。

 岸さんは、

 JEITAもMIAUも、個々の論点に関する主張には理解できる部分もあるが、全体として、制度変更に対する批判ばかりで、その前提としてクリエーターに対する思いやりが足りないのではないだろうか。今回文化庁が提示した制度改正が最善の策とは思わない。しかし、現行著作権法の抜本改正がすぐにはできないなか、深刻化した違法コピーとダウンロードへの対応として、権利保護の強化は止むを得ない面を持つのではないだろうか。
とまで仰っています。その点、私はこれまでもクリエーターに対する思いやりに基づく制度変更を提案してきました。そうです。クリエーターのメディアからの保護を手厚くするというものです。

 私的録音録画補償金制度を拡充することによるクリエーターへの分配金の増加予想額や、私的録音録画を禁止することによる正規CD等の売上増大によるクリエータの印税・歌唱印税の増加予想額なんて、印税率・歌唱印税率を1%引き上げることによる印税・歌唱印税の増加予想額と比べたら微々たるものです。また、レコードに収録した楽曲と同じ楽曲を実演家が実演してネットで配信することをレコード会社が契約等で禁止することを禁止してしまえば、音楽配信に消極的なレコード会社と専属実演家契約を結んだアーティストでも、ネットを利用して収入の増大を図ることができます。

 岸さんは図らずも、

かつてハリウッドの高名な人が「コンテンツが王様で、流通は女王である」という名言を吐いたが、デジタル時代は「プロのコンテンツが王様」なのである。その王様を突き上げていれば改革が成就するなどと考えるべきではない。
と仰っています。そうです。レコード会社も放送事業者も、「流通」でしかないのです。王様を虐げて王様から富を搾り取り続けている「悪女」的な女王を改心させあるいは王家から排除していくことは、王制を前提とした改革としては基本的なものの一つです。そのような女王を改心させることも排除することもできず、恣に女王が浪費する分を大衆からさらに搾り取ることで調達しようとするならば、「改革」では収まらず、「革命」にまで至ってしまうことは歴史が示すとおりです。

Posted by H_Ogura at 02:19 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

11/14/2007

私的録音録画小委員会中間整理に関する意見 in 2007

「私的録音録画小委員会中間整理に関する意見」についてのパブリックコメントも、先ほど文化庁に送信しました。


5 100頁以下、「第7章第2節 著作権法第30条の適用範囲の見直しについて」

6 まず、正規商品の流通前に音楽や映画が配信され複製される例が紹介されるなど、正規商品等の流通や適法ネット配信等を阻害している実態が報告されたとあります(101頁)。

 しかし、正規商品の流通前に音楽や映画が配信される例は大きく二つにわけて考えるべきです。

 一つは、当面正規商品が流通する見込みのない場合です。例えば、事実上CD等が廃盤になってしまった音楽や、日本でデビューする予定のない海外アーティストの作品等がこれにあたります。この場合、「海賊版」がなかったとしても、権利者は正規商品等の流通によって利益を得る可能性がなかったわけで、権利者は「海賊版」の流通により何ら経済的利益を失っていないというべきです。

 もう一つは、正規商品の流通前に、正規商品のサンプル等を有する関係者が、これを配信してしまう場合です。これは主に、レコード会社等における内部統制の問題です。

 次に、レンタル事業者が権利者に支払う貸与使用料に私的録音の対価が含まれているかという点(102頁)についてですが、

  1.  貸与を受けたレコードを用いて消費者が私的録音を行うという実態があったからこそレコードの貸与を著作権法にて禁止する立法がなされたこと、
  2.  工業製品を貸与した場合に、当該工業製品に化体されている知的財産権の権利者にライセンス料を支払わなければならないとの観念は我が国には存在していないこと、
  3.  条約上も、著作物等について権利者に貸与権を付与するのは、貸与を受けた側において容易に正規商品と同様の複製物を作成しうる物に限定されており、著作権法により制限を受ける貸与はあくまで、複製行為の準備行為としての位置づけがなされていること
等を考慮すると、レンタル事業者が権利者に支払う貸与使用料には、レンタルされたレコード等を用いて私的複製物が作成されることによる経済的損失の補塡分が含まれていると考えるのが素直です(現時点でも、エンドユーザーは著作権者等の許諾なくして私的録音をなし得るので、エンドユーザーが私的録音をすることの対価を(レンタル事業者が代わりに)支払うというのは筋が違うので、その意味においては「レンタル事業者が権利者に支払う貸与使用料に私的録音の対価が含まれている」とはいえませんが、そのことと上記点とは別問題です。)。

 次に、違法録音録画物等からの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外するとの点(104頁以下)についてですが、私はこれに反対します。理由は下記のとおりです。

  1.  著作権者等の許諾なくして自動公衆送信(送信可能化を含む。)されている著作物等には、正規商品が流通しておらず、適法ネット配信の対象となっていないものが多く含まれています。このようなものをダウンロードして私的に複製したとしても、当該著作物等の通常の流通を妨げることはありません(そもそも「通常の流通」自体がないのです。)。他方、このようなものについてのダウンロードまで禁止した場合には、日本国民は、当該著作物等の内容を知り、これを享受することにより幸福を追求する機会を奪われることになります。
  2.  ダウンロード行為を規制するためには、商業用レコードのレコード製作者又は商業用レコードに複製されている音楽著作物の著作権者若しくはそれらの著作権等を集中的に管理する団体に、証拠保全等の形で、国民が使用しているコンピュータ等を差し押さえて、同コンピュータに接続しているハードディスク等の中身及び同コンピュータの操作ログ等を精査する権限を与えることが必要となります。しかし、それは、国民のプライバシー権ないし思想・良心の自由を大いに侵害することとなります。
  3.  「中間整理」104頁では、「個々の利用者に対する権利行使は困難な場合が多いが、録音録画を違法とすることにより、違法サイトの利用が抑制されるなど、違法サイト等の対策により効果があると思われる」としていますが、その論拠は薄弱です。そのような薄弱な論拠をもとに国民の基本的人権を制約する立法を行うことが、我が国の憲法の下で許されるのか大いに疑問です。
  4.  ファイル共有ソフトを使用した違法複製物の送受信に関して言えば、プロバイダ責任制限法第4条第1項の発信者情報開示請求権を行使することによって氏名・住所等を探知することが可能な「送信者」を規制する方が圧倒的に楽です。なお、ファイル共有ソフトを通常の設定で使用する場合には、ダウンロードされた電子ファイルは「共有フォルダ」に蔵置されるので、受信者は即発信者となりますので、発信者としての側面を捉えて、損害賠償請求等を行えば済みます。

 また、違法録音録画物等からの私的録音録画を第30条の適用範囲から除外した場合に、違法録音録画物等から私的録音録画を行った者が支払うべき賠償金額は如何にして算定するのか、私的録音録画をした者が負うべき賠償義務と送信者が負うべき賠償義務との関係はどうなるのか(不真正連帯債務だとした場合に、送信者が行った弁済の効果は個々の私的録音録画者にどのように帰属するか)など不明な点が多すぎるように思います。

 最後に、第30条の適用から除外する場合の条件(105頁)についてですが、正規商品が流通しておらず、適法ネット配信の対象となっていないものについては、その私的録音録画を放置しても、著作権者等の経済的な利益を害するおそれが乏しい反面、これを私的録音録画することが違法とされると、当該情報を適法に入手する方法がなくなってしまい、知る権利等の国民の基本的人権が大いに制約されることとなってしまいます。従って、当該録音録画物に関して、正規商品が適切な対価を支払うことにより容易に入手可能な状態におかれていることを「第30条の適用から除外する場合の条件」に加えるべきだと思います。

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法制問題小委員会中間まとめに関する意見 in 2007

 「法制問題小委員会中間まとめに関する意見」を下記のように作成し、文化庁にメールで送信しました。


5−1 3頁以下 第1節「『デジタルコンテンツ流通促進法』について」

6−1 著作権や著作隣接権等の経済的な権益は、国民の「知る権利」を実質的に保障するためには、一定の制約を受けることはやむを得ません。例えば、その地域を放送対象地域とする民間テレビ放送局が1つしかない徳島県や佐賀県の住民にも、東京都在住者と同様の情報をテレビ番組を介して知る権利があり、これが著作物等に関する公衆送信権(送信可能化権を含む。)と衝突するのであれば、公衆送信権等は一定の制約を受けるべきです。

 このような観点からは、放送若しくは放送される著作物又は実演については、当該放送(当該放送の放送事業者から委託を受けてなされる再放送を含む。)を受信できない地域に所在する者に直接受信させる目的で、著作権者ないし隣接権者の許諾なくしてこれを同時再送信することができるように、権利制限規定を新設すべきであると考えます。

5−2 11頁以下 第2節「海賊版の拡大防止のための措置について」

6−2 親告罪の範囲の見直しについては反対です。

 著作権等を行使しうる範囲を広く解釈することこそが先端的な著作権法の解釈であると研究者等に意識されていた時代が長かったせいもあり、一般の国民が特に罪の意識なく行っている行為が専門家の中では著作権等の侵害と理解されていることがしばしばあります(一例をあげれば、企業や政党の職員が、虚偽内容の報道がなされていないか等をチェックするために、自社ないし自党について取り上げられている報道番組等を録画することは、「私的使用目的」の範囲外として、放送事業者の著作隣接権としての複製権を侵害するとするのが多数説です。)。

 このように、著作権侵害罪というのは、一般の国民が知らず知らずのうちに日常的に犯している可能性が高く、他方、著作権者等としても、そのような日常的な行為に伴うものに関して言えば、通常は処罰を特には望まないものです。このようなものを非親告罪化した場合に想定されるのは、著作権侵害罪が、著作権者の意向を無視する形で、別件逮捕のネタに使われることです。

5−3 45頁以下 第4節「検索エンジンの法制上の課題について」

6−3 新規立法による権利制限の範囲を、自動収集型の検索エンジンに限るのではなく、情報検索型データベース一般に拡張して頂きたいです。そして、著作権者等の保護は、出力結果として、正規商品の代替物となりうるほどの情報を出力しないこと(例えば、画像データであればサムネイル画像しか表示しない、音声データであれば30秒未満しかストリーミング再生しない等)により行うべきだと思います。

 著作物等の利用を促進し、これにより著作物等の享受を介した文化の発展を我が国として目指すためには、わずかな手がかりから、消費者が自分が欲しいと思っている著作物等を特定し、その入手方法を知ることができるデータベースが提供されていることが望ましいからです。また、自己の著作物等がそのようなデータベースに組み込まれることは著作権者等の利益を通常害しない一方、データベースの提供者が各著作物等に係る著作権者等全てから利用許諾を受けることは事務コストが膨大になってしまうからです。

5−4 71頁以下 第6節「いわゆる『間接侵害』に係る課題等について」

6−4 いわゆる「カラオケ法理」は、JASRACや地上波テレビ局等の経済的強者から訴訟等でなされた請求等を認容するために、裁判所が、アドホック的に、要件ないし判断基準を決定しているというのが実情です。また、いわゆる「カラオケ法理」は、米国法の代位責任や寄与侵害責任とは異なり、直接的な利用者の行為が適法なものであっても、これに寄与する行為を違法とするという特徴があります。さらに、「カラオケ法理」によって著作権侵害とされる行為を犯した者は、著作権侵害罪の正犯として刑事処罰をも受けるとする裁判例もあります。

 このため、既存の著作物等のプライベート・ユースに役立つ商品やサービスを提供しようという事業者にとって、「カラオケ法理」の存在が、新規商品・サービスの提供を開始する上での大きな妨げになっています。

 従って、著作物等の直接的な利用者の行為が違法である場合に、専らそのような違法行為にのみ使用される商品又はサービスを提供する行為に限り、これを著作権等の侵害行為とみなす新規立法を行うということに反対はしませんが、その場合には、そのような新規立法の対象外となる行為について著作権法の規律の観点からこれを直接侵害行為と同視することを禁止する旨の規定を同時に新規立法して頂きたいです。

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11/03/2007

Mary J. Blige 「Just Fine」

 Mary J. Bligeの「Just Fine」が、もう、iTunes Store for Japanでダウンロードできます(→ Mary J. Blige - Just Fine - Single - Just Fine )。シングルの発売日が9月30日で11月初頭には既にダウンロード可というのは素晴らしいです。このスピードでオンライン配信を行っていけば、レンタルCD等目の敵にする必要はないように思ったりします。

まあ、Mary J. Bligeの場合、現在、Carole King及びFergieと日本国内ツアーを控えているのでそのプロモーションという側面もあるのでしょうが(といいますか、この組み合わせで、コンサート1週間前になって、まだSold Outになっていないというのが信じがたいですが、洋楽サイドがレンタルCDいじめをして却って若い世代を洋楽に近づけなかったツケが来ているということなのでしょうね。)、それにしても、米国のアーティストに関していえば、一部のレーベルを除き、iTSJにアップロードされる時期が早くなっているような感じがします(Colbie Caillatの「Bubbly」もダウンロードできますし(→ Colbie Caillat - Coco - Bubbly 。)。

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11/02/2007

YouTubeとJASRACとの契約

 日本音楽著作権協会(JASRAC)は10月30日、ニワンゴが運営する「ニコニコ動画」と、米Google傘下の「YouTube」上で使用されているJASRAC管理楽曲の利用料を、それぞれの運営企業から支払ってもらう契約締結に向けて協議に入ったことを明らかにした。年内にも暫定的な契約を結ぶ予定だ。
というニュースが話題になっています。

 ただ、これは、YouTube等にアップロードされる動画の中にJASRACの管理著作物が含まれていたとしても、JASRACは削除要求をしないという程度の話であって、プロモーションビデオについてはレコード会社がレコード製作者としての著作隣接権ないし映画製作者としての著作権に基づいて、テレビ番組についてはテレビ局が放送事業者としての著作隣接権ないし映画製作者としての著作権に基づいて、削除要求をなし得る以上、第三者の作品を勝手に転載するタイプの利用が自由になし得るようになるわけではありません。

 とはいえ、これにより、レコード会社がプロモーション活動の一環として自社のアーティストのプロモーションビデオをYouTubeにアップロードしたり、又は、(自社で積極的にアップロードするには至らなくとも)一部のファンがアップロードしたものを黙認するということはできるようになるので、全く無意味というわけでもありません。また、欧米人がYouTubeを使ってよくやっているような、既存の楽曲を勝手にカバーしてアップロードすることも、自由にできるようになります(いや、本当にこの種の動画が結構アップロードされているのです。)。

 まあ、JASRACの場合、音楽CDが売れたところでそんなにたくさんのマージンが入ってくるわけではない(オーディオ録音だと、JASRACの手元に残る手数料は6%)ので、サイト収入の2%も入ってくる(インタラクティブ配信だと手数料として15%が残る。)ので、悪い話ではないのでしょう。

Posted by H_Ogura at 06:29 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

10/30/2007

「初音ミク」と著作権法

 ゲームラボでの連載原稿用に、第三者が著作権を有する「歌詞」を入力して「初音ミク」に「歌わせ」た場合、「歌詞」についての歌唱権侵害となるのか、又、このようにして合成した「初音ミク」の「歌声」は著作隣接権による保護の客体としての「実演」にあたるのかについてのエッセー(1500字前後と言うことなので、「論文」といいうるようなものは作れません。そもそも既存の文献を引用して批判するみたいなことも、媒体の特性上しにくいですし。)を作成し、編集部に送っておきました。

 「第三者が著作権を有する歌をドラえもんが歌った場合著作権法上どうなるのか」という話は学部のゼミで取り上げたことはあるのですが、こんなに早く現実の問題となるとは想像していませんでした。

Posted by H_Ogura at 09:46 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (2)

10/23/2007

YouTubeとニコニコ動画と受忍限度

 自分が出演したテレビ番組(って数回しか出ていませんが。)をYouTubeにアップロードされるのと、ニコニコ動画にアップロードされるのとでは、全然等価ではないように思います。

 前者の場合、その映像なり情報なりをできるだけ多くの人に知ってもらおうというある種の善意を感じますが、後者の場合、その映像なり情報なりをネタにして遊んでやろうというある種の悪意を感じるからです。著作権だ、著作隣接権だという財産権以前の問題として、自分をネタにして公然と玩ばれない権利というのが、人格権ないし幸福追求権の一内容としてあって、ニコニコ動画の場合、この種の権利を侵害しているのではないかという気がするのです。

 侵害されるのが著作権や著作隣接権なりの財産権のみであれば、プロモーション効果等を重要視して許諾システムにより事実上、または報酬請求権化により立法上、動画共有サイトを合法化していくというのはありだと思うのですが、人格権侵害が伴う場合には、プロモーション効果等を強調して受忍限度を高くすることが適切なのかという疑問が生じたりはします。

Posted by H_Ogura at 01:42 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (5) | TrackBack (5)

10/16/2007

ゼミ選抜レポートの課題 in 2007

 今年も、来年度のゼミ生を選抜しなければならない季節になりました。

 ゼミ選抜用のレポートの提出期限は昨日(10月15日)でした。今年は、何人くらい希望者がいるのか楽しみです。ただ、去年よりは書きにくい課題なので、その辺がどう響いたかが問題です。なお、今年の課題は下記のとおりです。

 商業音楽の公衆への伝達手段としては、レコード・CD等のパッケージの販売又はレンタル、生演奏、放送、音楽配信等いろいろなパターンがあります。これらの伝達手段は、他の伝達手段の宣伝広告になるというプラスの面がある反面、他の伝達手段の代替手段として消費されてしまうというマイナスの面も有しています。

 音楽産業が発展するには消費者が商業音楽を享受するために支出する金員の総額を増加させることが必要となりますが、そのためには今後、上記伝達手段のうちのどれ(複数可)に力を入れるべきでしょうか。また、そのためには、国又は音楽産業はどのような施策を講ずるべきでしょうか。

Posted by H_Ogura at 12:57 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/15/2007

中山信弘「著作権法」

 今日は、午前中にお仕事の用事で東京地裁に行ってきたついでに、弁護士会の地下1階の本屋さんに立ち寄って、中山信弘教授の「著作権法」(有斐閣)を購入してきました。
 これから、おいおい電車の中で読み込んでいこうと思います。

Posted by H_Ogura at 01:54 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

10/04/2007

J-Popのアジアでの落ち込み

 せっかくレコード輸入権を作ったのにJ-Popがアジア圏で売れていないことが話題となっています。

 しかし、ソニー・ミュージックエンタテインメントの田中章国際グループインターナショナル・マーケティング部長の、

日本の音楽コンテンツがアジアで普及するためには、「映画、テレビ、アニメと連携して展開する」「その国にはない幅広い音楽を提供する」「ライブでアーティストのパワーを直接見せる」といった方法が必要
との発言を見れば、J-Popがアジアでも売れなくなっている理由が分かります。

 そうです。ここには「インターネット」という言葉が一つも出てこないのです。

 私が洋楽ファンだから言うのですが、自国のメディアで普通に流れている楽曲以外の楽曲に出会うのはどういう機会でかといえば、圧倒的に「インターネットを介して」です。「ライブでアーティストのパワーを直接見せる」たって、何を歌うのか分からないアーティストのライブにいきなり大枚はたいていこうという人はなかなかいませんし、そもそも、日本でそれなりに売れているアーティストが、現地での人気を獲得するまで、アジアの物価水準でどっしりとツアーを重ねるというのは、あまり合理的ではありません。

 また、音源を購入する側の立場からいえば、何らかの切っ掛けで聴いた楽曲を気に入ったと思うから買ってみようというのであって、それがどこの国の楽曲かというのはそれほど重要ではありません。「自国にあるようなタイプの音楽なら自国のアーティストのものを買う」と決めている音楽ファンというのは、統計を取ったわけではありませんが、あまり多くはなさそうです。したがって、「その国にはない幅広い音楽を提供する」というのも解決策にはならなさそうです。

 結局のところ、アジアでも豊かになってきた地域では、豊かになった人々又はなりつつある人々の間では急速にインターネットが普及しており、すると、未知の音楽に出会う場としてのインターネットの役割が大きくなってきているわけで、そうなってくると、世界に先駆けて送信可能化権を創設し、しかも同時再送信型のストリーミング配信をも「放送・有線放送」ではなく「自動公衆送信」にあたるという解釈を文化庁が未だに維持している状況の中で、J-Popを含む番組をインターネット上で配信することのハードルが著しく高くなってしまっていることが、レコード会社にとって、却って徒(あだ)になっているのではないかという気がします。

 日本のレコード会社が本気でJ-Popをアジアで売りたいと思っているのであれば、一般のアジアの人々がアクセス可能な場所及びビットレートでプロモーションビデオをストリーミング配信するとともに、一般のアジアの人々に人気のあるインターネットラジオに向けて、インターネットラジオで放送可能な音源を提供するくらいのことは考えるべきではないでしょうか。さらにいえば、日本国内の音楽ファンが、非常に低廉なライセンス料で、J-Popをインターネットラジオ放送や、自作アニメのBGMとしてストリーミング配信してよいということにすれば、テレビ局等とのタイアップのために使う莫大な費用をいささか節約しつつ、音楽ファンの視点に立ったプロモーション活動をそれこそ勝手にやってくれるのではないかと思ったりします(ストリーミングに対するライセンス料をけちって、パッケージ販売やダウンロード販売の機会を減少させていくというのはあまり利口そうな話ではありません。)。

Posted by H_Ogura at 02:00 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

10/01/2007

違法複製物のダウンロードを規制する法律案の効果

 現行の著作権法第30条第1項は、私的使用目的の複製であるにもかかわらず複製権侵害が成立する場合として、

  1. 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合
  2. 技術的保護手段の回避により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
の2つの場合を列挙しています。

 では、私的使用目的で「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製 」したとして損害賠償請求をされた事例があるか、あるいは、「技術的保護手段の回避により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行 」ったとして損害賠償請求をされた事例があるかというと、そのような話は未だ聞いたことがありません。「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」を拡大解釈してオンラインストレージサーバまで含めてしまうならばともかく、当初予定されていたような貸しレコード屋等に設置された高速ダビング機のようなものに関していえば、そのような機器を用いて私的使用目的の複製を行ったものを探し出して訴訟を提起することは手間と費用がかかり、予想される賠償額との関係で割に合わないからです。技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行ったものを探し出して損害賠償請求を行う場合も同様です。

 では、これらの行為を違法な複製行為としたのはなぜかというと、前者についていえば、むしろ自動複製機器を設置して利用者に私的複製物の作成を許している業者を取り締まりたかったからであり、後者についていえば、技術的保護手段回避専用装置の譲渡等を行う業者を取り締まりたかったからです。とはいえ、適法行為の幇助行為を違法行為と規定するのは法技術的には好ましくないので、これらの機器・装置を利用した私的使用目的の複製を違法とした上で、これらの機器・装置の提供者を警察権力を用いて取り締まれるように刑事罰を用意したのです。そういう意味では、これらの機器・装置を利用して私的使用目的の複製を行う個人を積極的に取り締まる意図は最初からなかったということができます。

 違法にアップロードされた著作物のダウンロードを違法化しようという文化庁の狙いがこれらとは全く異なることは明らかです。そのような法改正をしなくとも著作物の無許諾アップロードはそもそも違法なものとして規定されていますし、違法にアップロードされた著作物の ダウンロードに専ら用いられる装置・プログラムなんて取り締まろうにもそもそもそんなものは殆どありません。したがって、今回文化庁が狙っている改正についていえば、そのような私的使用目的を行っている個人をやり玉に挙げて取り締まるのでなければ、改正する意味がないということになります。そういう意味では、従前の例外規定とは異なり、「違法にアップロードされた著作物のダウンロード については、私的使用目的でなされたものであっても、刑事罰の対象とせよ」ということに遠からずなっていくのだと思います。


Posted by H_Ogura at 12:45 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

09/27/2007

文科省とダウンロード規制と思想統制

 INTERNET Watchの記事によれば、

 なお、YouTubeなどの動画共有サイトを視聴する際には、動画ファイルのキャッシュがPC内のHDDに一時的に保存される。この点についてIT・ジャーナリストの津田大介氏は、「違法ダウンロードが法制化された場合は、キャッシュとして保存することも複製と見なされ、違法行為になってしまうのか」と疑問を示した。
 この質問に対して川瀬氏は、「それが複製にあたるかどうかの知識はない」と前置きした上で、2006年1月に提出された文化審議会著作権分科会報告書の内容を紹介。それによれば、文化審議会著作権分科会に設けられた「法制小委員会」において、仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではないとする見解が示され、法改正事項として挙げられていると答えた。
とのことです。

 現在著作権法の専門家の中で、ハードディスクへのキャッシュを、「一時的蓄積」に過ぎず著作権法上の「複製」にはあたらないとするものは決して多くはなく、むしろ、世渡りのうまい人たちはRAMへの一時的記憶すら著作権法上の「複製」に含めるべきであるとの強く主張しています。従って、違法にアップロードされた著作物を受信して複製する行為について著作権法30条1項から除外した場合には、YouTubeの画像を視聴したに過ぎない人々も、ハードディスクにキャッシュを保存したことにより、あるいは、RAMにデータを一時的に記憶させたことにより、複製権侵害に当たるとされる虞が十分にあります。

 文化庁の川瀬氏は「それが複製にあたるかどうかの知識はない」としていますが、文化庁の著作権課の官僚さんが一時的蓄積に関する学説の状況を知らないとはにわかに信じがたいです。その上で、「仮に現行の著作権法でキャッシュが「複製」と解釈されても、権利制限を加えるべきではない」としているのは、裁判所が少なくともディスク上へのキャッシュについては裁判所がこれを著作権法上の「複製」とする可能性がそれなりに高く、その場合にはYouTubeでの動画視聴が違法とされることになることを十分に知りつつも、その場合には、これを適法なものとするような法改正は行わず、日本ではYouTubeの視聴自体をずっと違法なものということにしておきますよという趣旨ではないかと思います。

 YouTubeの視聴自体を違法なものとしておくことに成功すれば、JARSAC等の著作権管理団体に権利行使をさせることにより、日本在住者をかなりの程度「情報鎖国」状態に置くことができます。ベルリンの壁が壊れるにあたっては、西ヨーロッパのテレビ局やラジオ局等が放送する内容を東ヨーロッパの人たちが受信し、西ヨーロッパの真の姿を知ることができたことが大きかったわけですが、今後の日本は、西側諸国のメディアで報道された内容を、YouTube等を介して知ることが許されなくなることでしょう。

 また、JARSAC等に権利行使をさせれば、普通の家庭の普通のコンピュータについて訴訟前の証拠保全を掛けて、そのハードディスクの中身を調べることも可能となるかもしれません(といいますか、それができないとすると、どうやって違法受信者を摘発するのでしょうか。)。文科省の外局である文化庁が所管する社団法人であるJASRACが、一般市民の思想調査を行うことができることになります(なお、証拠保全で入手した情報については、特段の秘密保持義務を負いませんので、JASRACが行った証拠保全の結果、日本国政府に都合の悪い海外メディアの情報を視聴していた個人の情報をJASRACが文科省に報告することはとりあえず可能です。)。文科省は、日の丸君が代問題でも知られているとおり、思想調査・思想統制が好きな官庁ですので、そういう官庁に思想調査の道具を与えても大丈夫なのかいなという危惧がないわけでもありません。

 杞憂なら良いのですが、ダウンロード者規制なんていう経済的に割の合わないものを、なぜそこまでして推進するのかということを、疑って係る必要はあるのではないかという気もしたりします。

Posted by H_Ogura at 02:03 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (6) | TrackBack (2)

09/22/2007

著作権政策形成過程の分析

阪大法学 57(2) [2007.7.31発行]の

著作権政策形成過程の分析(一)
—利益団体,審議会,官庁の行動による法改正メカニズムの説明—・・・・・京 俊介
はなんとなく面白うそうです。未入手ですが。

Posted by H_Ogura at 11:31 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

09/12/2007

流しっぱなしのテレビを検証できた時代は短くて

 ジャーナリストの江川紹子さんが、「刑事弁護を考える〜光市母子殺害事件をめぐって」というエントリーで、次のように述べています。

 ……という報道を見て、インターネットで探したら、問題の番組を見ることができた。
 不二家を巡る「朝ズバ」でのみのもんたが話題になって時も、ネットでオンエアビデオを確認したが、こういう場合は画質はどうでもいいから、発言者の表情や声のトーン、スタジオの雰囲気が確認できるのは本当にありがたい。
 図書館に行けばいくらでも過去の記事を見ることができる新聞と違って、テレビは流しっぱなしで検証できない(させない)という難点があったが、インターネットのお陰で、ほんの一部は検証が可能になった。非常にいいことだと思う。

 しかし、そんな時代はもうすぐ終わるかもしれません。違法にアップロードされた著作物等をダウンロードする行為は、私的使用目的であっても、違法としようという著作権法の改正案が可決・成立すると、「ネットでオンエアビデオを確認」する行為自体が違法となるからです。この法改正がなされると、テレビ局としては、著作権法を笠に着て、流しっぱなしで検証させないことが可能となるおそれがあります。とりわけ、当該テレビ番組の放送対象地域外の者が当該テレビ番組の内容を批判的に評価した場合には、どのようにして当該テレビ番組の番組内容を知ったかを問いただした上で、仮に違法にアップロードされたものをダウンロードして視聴したことを批判者が認めた場合にはこの者を刑事告訴し、内容を又聞きしただけだとのことでしたら、又聞きのみで内容を批判する不誠実さをあげつらえばよいということになります。

 もちろん、レコード輸入権の時とは異なり、今は参議院は野党が過半数を占めているので、違法にアップロードされた著作物等をダウンロードする行為を違法化する著作権法案は与党政治家や政府等に対する批判の公開を封じるために活用され得る恐ろしい法案であることを、野党各党に示して理解を促すことが、そのような法案の可決成立を阻止する機能を有する可能性が大きくなってきています。文化審議会での議論の流れを見ただけで悲観し絶望してしまうのは、諦めが早すぎとも言えそうです。

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09/10/2007

ゼミ合宿 in 2007

 9月8日から10日まで、札幌までゼミ合宿に行ってきました。

 学部のゼミの合宿ですから、レクリエーションの方が多いのですが、メインの行事としては、一定の立法提言について、肯定派と否定派に分かれて、競技ディベートを行ってもらいました。

 その際のテーマは、下記のとおりです。

テーマ1

映画の著作物に関する著作権を除く著作権の保護期間は、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。)五十年を経過をし、かつ、その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)を経過するまで、とする法改正を行うべきである。

テーマ2

「商業用レコードが最初に販売された日から六月を経過した場合において、第九十一条第一項に規定する権利を有する者の許諾を得て当該商業用レコードに録音されている実演を録音してこれを送信可能化しようとする者は、当該実演につき第九十二条第一項に規定する権利を有する者又は第九十六条の二に規定する権利を有する者に対し送信可能化(送信可能化の手段として行う公衆送信用記録媒体への録音を含む。以下同じ。)の許諾につき協議を求めたがその協議が成立せず、又はその協議をすることができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を裁定の対象である権利を有する者に支払つて、当該送信可能化をすることができる。」とする法改正を行うべきである。

テーマ3

 「著作権者による著作物の利用の許諾が公正証書その他の文書により行われたときは、著作権者の許諾に係る著作物を利用する権利は、当該許諾の後に著作権の譲渡を受けた者に対しても対抗することができる」とする法改正を行うべきである。

Posted by H_Ogura at 09:54 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

08/25/2007

ケーブルテレビへの再許諾

 「soulwarden 」さんのところで私のエントリーについて言及していただいているようです。

しかしこのおっさん、おふくろさんの時もそうだったけど、基本的な事実を確認せずに書く癖あるよな。
とのことです。私は、選撮見録事件やらまねきTV事件やらでテレビ局側と裁判所で相まみえることが少なくありません。その際、やはりテレビ局側は、国際的なコンテンツホルダーとの関係を金科玉条のように掲げてきます。しかし、では契約書上どうなっているのか確かなことを知りたいので契約書を証拠として提出するように求めても、出てきた試しがありません。

 ブログでの議論ならば、そんなもののために大切な契約書を公開するわけに行かないというのはわかるので、「soulwarden」さんにはそこまで求めませんが、裁判の場で、しかも、裁判を自分たちに有利にするために自分たちの側で持ち出した主張を裏付けるために、契約書を書証として提出できない理由というのはよくわかりません。

 で、裁判の際に求釈明を行っても出てこない資料を確認してからでないとテレビ局に不利なエントリーは書くなって話でしたっけ。

 それはともかく、私の住んでいる葛飾区では、ついこの間まで第三セクターの「葛飾ケーブルネットワーク」がケーブルテレビを提供していたのですが(最近コアラテレビと合併して「株式会社JCNコアラ葛飾」となる)、そこでは東京キー局の番組の同時再送信を行ってきたわけです(合併後もやっていますが。)。

ダウト。
東京キー局は、CATVの権利処理を行っていない。

 とのことですけど、本当にCATVによる同時再送信についての再許諾権までとっていないのだとしたら、東京キー局の法務部門ってセンスがないですね。いえ、CATVの助けを借りずして放送対象地域住民にあまねくその放送を視聴できるようにできる自信がおありならよいのですが。

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08/22/2007

東京キー局を同時再放送することを主たる機能とするローカル局などそもそも不要では?

 翻って考えてみると、東京キー局が放送している番組を同時再放送するテレビ放送会社って、同一地域に1つあれば事足りると言えそうです。強いて言えば、放送法を改正して、東京キー局の放送を各地域に同時再放送する義務を日本放送協会に負わせてしまえば、東京キー局の放送を同時再放送する機関としてのローカルテレビ局は不要ということができます。

 各県域ごとに、各東京キー局に対応したローカルテレビ局を置くというのは、考えてみれば、非常に効率の悪いシステムです。むしろ、衛星放送のように、東京キー局からの委託を一括して受けて放送電波の送信を行う「受託放送事業者」が各地にあれば済む話ですし、その方が、人件費や設備コストを含めても安上がりなのではないかという気がします。地域住民だって、東京キー局の放送全てを、東京の住民と同時に視聴することができるわけで、その方が望ましそうな気がします。

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08/21/2007

大分の放送局の経営を守るために大分の住民が視聴可能な番組数を制限するのは、悪しき「規制」ではないのか

 大分県内のCATV4社が民放4社の地上デジタル放送番組を流すことに同意するよう福岡県の民放テレビ局4社に対し求める裁定を総務省が行った件は、新聞等にも取り上げられています。

 大分県の場合、地上波テレビ局は、NHKの他は、JNN系列の大分放送と、NNN・FNN系列のテレビ大分、ANN系列の大分朝日放送の3局があるに過ぎませんので、他地域の放送を同時再送信して欲しいという要請は大きかったのではないかと思います。

 毎日新聞の記事によれば、この件について、

民放側は、(1)県単位を基本に放送免許を与える地域免許制度が形骸(けいがい)化する(2)大分県の放送局の視聴率が下がり、経営への影響が大きい(3)著作権処理が不十分−−などとして反発していた
とのことですが、「県単位を基本に放送免許を与える地域免許制度」を守ることにより、却って日本全国津々浦々の住民が多様な放送番組を視聴する機会が奪われるのであれば、それは本末転倒といわざるを得ません。むしろ、地域免許制度の制度趣旨と放送技術の発展並びに地域住民のニーズを考えた場合、東京キー局の放送の同時再送信は地域のケーブルTVや衛星放送に任せた上で、地域のテレビ局は独自番組の放送を中心とする方向に構造改革をする時期に来ているように思います(どうせ、地上デジタルに切り替えるコストの負担を視聴者に強いるのですから、その費用をケーブルTVや衛星放送に切り替えるのに用いた方が、特に地域の地上波テレビ局が5局揃っていない地域では、建設的です。)。

 著作権処理に関しては、東京キー局は、地方局やケーブルテレビ局に番組を同時再送信することまでの権利処理は行っているはずですから、東京キー局の放送を直接同時再送信するようにすれば解決すると思います。

 「大分県の放送局の視聴率が下がり、経営への影響が大きい」との点ですが、東京キー局の放送を再放送することにしか価値がない放送局ならば、より利便性の高いサービスを提供する企業との競争に敗れて市場から去っていくのは仕方がないのではないでしょうか。むしろ、「ケーブルテレビ局が東京キー局の放送を同時再送信しても、大分独自のコンテンツで視聴者を引きつけてみせる」くらいの気概が欲しいものです。

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08/12/2007

偉い人も、J-POPを先ず聴こう

 文化庁やJASRAC等のそこそこの地位の方と研究会等の後の懇親会等でお話しする機会が会った際には、「普段どういう音楽をお聴きになるのですか?」という質問をさせていただくことがありますが、クラッシック音楽と答える方の割合が世の中の標準より遙かに高いような気がします。

 個人の趣味の問題ですからもちろん文句をつけるべきものではないのでしょうが、音楽産業の発展を目指して様々な施策を練らなければいけない人たちが、音楽産業の収益の中心であるロック・ポップス系をきちんと押さえていないとすると、それはゆゆしき問題かなあという気がします。

 特に、J-POPの世界進出みたいなことまで考えるべきポジションの方には、「もちろん、チタン合金ズ(→ チタン合金ズ - ガッツ★アイドル - チタン合金ズの巻 )さ」とか「Shanadoo(→ Shanadoo - My Samurai - EP - My Samurai )、いいよね」みたいなことを言ってもらえると良いかなと思ったりします。

Posted by H_Ogura at 03:08 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

08/09/2007

2つの「公衆」

 インターネット放送は著作権法上「有線放送」にあたるのか「自動公衆送信」にあたるのかという論点に関し、文化庁は、一貫して「自動公衆送信」にあたるとしています。

 例えば、平成18年3月30日付の「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」では、

有線電気通信設備を用いた送信が著作権法上の有線放送と解されるには、公衆送信の概念を整理した平成9年の著作権法改正時の立法趣旨や著作権法上の「有線放送」(第2条第1項第9号の2)、「自動公衆送信」(同条同項第9号の4)及び「送信可能化」(同条同項第9号の5)の条文の内容から、

  1. 有線電気通信設備により受信者に対し一斉に送信が行われること、
  2. 送信された番組を受信者が実際に視聴しているかどうかにかかわらず、受信者の受信装置まで常時、当該番組が届いていること

が必要であると考えられる。
とした上で、
電気通信役務放送利用放送事業者が行ういわゆるIPマルチキャスト放送については、その実態として、利用者の求めに応じて初めて当該利用者に送信されることから、当時の立法趣旨等に照らし、有線放送とは考えられず、いわゆる入力型の自動公衆送信と考えられる。
と結論づけています。

 ただ、有線放送に関する第2条第1項第9号の2を普通に読むと、なぜ2.の要件が出てくるのか理解ができません。「公衆=不特定人又は多数人」というドグマに従う限り、当該番組を視聴したいとして送信要求をした「不特定人又は多数人」が同一の内容を同時に受信するように情報を送信する限りにおいては、有線放送の定義に合致するはずです(「公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。」という自動公衆送信の定義(2条1項9号の4)からすると、「公衆からの求めに応じ自動的に行う有線放送」というものを著作権法は予定しており、かつ、それを自動公衆送信ではなく、有線放送にカテゴライズする旨が明確に示されています。)。

 ひょっとしたら、文化庁は、「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう」という場合の「公衆」のみ「不特定人又は多数人」というドグマを離れて「あまねく人々」という意味に解しているのかもしれません。そうだとすれば、(当該内容の視聴を希望していない人々を含めた)すべての人々にあまねく同じ電気信号を送信するもののみが「有線放送」と言いうるのであって、その内容を視聴したい人々に対してのみ同一内容の電気信号を送信するに過ぎない場合は、「公衆=あまねく人々」が同一の内容を同時に受信する ことにはならないから、「有線放送」とは評価できないということになりそうです。

 もっとも、この考え方にたった場合、何故に、公衆送信の定義における「公衆」を「不特定人又は多数人」と解しておきながら、「公衆送信」を分類するメルクマールとしての「公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信される」目的における「公衆」のみを「あまねく人々」の意味に解することができるのか、説得的な理由付けが必要かと思います。

Posted by H_Ogura at 10:50 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

08/08/2007

入れ墨と著作権

 タイ警察が規律違反の警察官に「ハローキティ」のワッペンをつけたピンクの腕章を着用させた件が話題となりました。その応用問題として、ある種の団体が規律違反をした構成員に「ハローキティ」の入れ墨を(サンリオに無断で)彫った場合に、複製権ないし翻案権侵害となるのかどうか、仮になるとした場合に、サンリオは、著作権法112条2項により当該入れ墨の消去を請求できるのかというと、結構難しい問題です。

 というのも、入れ墨は人体をいわばキャンパスとして絵画等を描く芸術としての側面があるのですが、だからといって、著作権法との関係に限定されるとはいえ、人体を「物」として扱ってよいのかという問題があるからです(「複製」とは(著作物等を)有的に再製することをいいますし、112条2項による侵害防止措置の対象は「侵害の行為により作成された」等とされています。)。

 なお、人体をもって「複製物」と見てよいかという論点は、「コスプレと著作権」との関係でも問題となってきます(例えば、やたらスタイルがよくて八重歯が特徴的な女性が虎柄のビキニを着て髪型を金髪のツインテールにした場合に、高橋留美子は何か文句を言えるのだろうか等)。

Posted by H_Ogura at 02:45 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/06/2007

Never EverがITSJに!

 All Saintsについては、当初は、クリスタルガイザーのCMで流されている"Rock Steady"(→ All Saints - Rock Steady - Single - Rock Steady )を含む復帰アルバム"Studio 1"のみがiTunes Store for Japanでダウンロード可能だったのですが、知らないうちに、"Never Ever"(→ All Saints - All Saints - Never Ever )等の最盛期の楽曲もITSJでダウンロードできるようになっていたのですね。

 大学の教員とかをやっていて若い世代と交流していると、いにしえの名曲にもっと触れて欲しいと思う反面、そのためにあまりお金がかかるようだと大方の学生にはきついだろうなと思ったりしますので、こういう形で曲単位で過去の名曲に今の若い世代が触れる機会を持つというのはとても重要なことだと思います。

 まあ、ゼミで扱う楽曲については、むしろYouTube等を使って聴いて予習してくるのだとは思いますが(Sean Kingstoneとか、そもそもiTunes Stote for Japanではダウンロードできませんし。)。

Posted by H_Ogura at 06:48 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

08/04/2007

著作権等管理事業者は内規を押しつけることが許されるのか。

 著作権等管理事業法第13条は1項で「著作権等管理事業者は、次に掲げる事項を記載した使用料規程を定め、あらかじめ、文化庁長官に届け出なければならない。」と規定した上で、同4項で「著作権等管理事業者は、第一項の規定による届出をした使用料規程に定める額を超える額を、取り扱っている著作物等の使用料として請求してはならない。」と規定し、さらに第16条で「著作権等管理事業者は、正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない。」と規定しています。

 このような法の規定ぶりからすると、著作権等管理事業者は、使用料規程に規定されている使用料の算定方法のうちどれを選択して使用料を算定するのかについての内規を、著作物等の使用者に押しつけてはいけないということになるはずです。

 今日、某著名著作権等管理事業者の某支部の窓口にお電話したら、その辺のところがわかっておらず、使用料が不当に高くなるコースを押しつけようとしてくるので、非常に不快になりました。

 本部もその方針を貫こうということなら、

第二十条 文化庁長官は、著作権等管理事業者の事業の運営に関し、委託者又は利用者の利益を害する事実があると認めるときは、委託者又は利用者の保護のため必要な限度において、当該著作権等管理事業者に対し、管理委託契約約款又は使用料規程の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
という規程がありますので、この命令の発動を促さなければいけないかもと思ってしまった今日この頃です。

Posted by H_Ogura at 02:13 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (6) | TrackBack (0)

07/26/2007

論理や実利ではなく感情ないし羨望の問題

 昨日のICPFセミナーに参加させていただきました。

 池田先生は三田さんの発言にずいぶんご立腹のようです。しかし、私が三田さんの講演内容やその後の質疑応答をお聞きして感じたのは、三田さんが著作権の保護期間の延長を実現しようとしているのは、まさに「欧米の作家たちが死後70年間著作権を保護されるのに、日本の作家たちは死後50年しか著作権を保護されない」ということが気に入らないのであって、三田さん自身、「欧米の作家たちが死後70年間著作権を保護されるのに、日本の作家たちは死後50年しか著作権を保護されない」と何が問題なのかということを必死に模索している最中なのではないかということでした。

 そういう意味では、この問題は三田さんにとっては「感情」の問題なので、これに対して、「著作権の保護期間を延長すべき理由」の変遷を追及して論理矛盾だといってみても、三田さんにとっては有効な反論になっていないとも言えそうです。

 そういう風に考えると、三田さんを説得するために最も有効なのは、その著作物の保護期間が切れた作家について、「青空文庫」という形でただ「ただで読める」場所を作るだけではなく、現代の知性及び感性を結集して最高の注釈及び解説を、出版社の軛から離れた形で実現し、「著作物が著作権から解放されると、こんなに幸せな取り扱いを受けるのだ」ということを見せつけてやることなのではないかと思ったりしました。

 そこまでして三田さんを納得させる必要があるのかという問題はありますが、そういう注釈や解説は読んでみたい気もします。

Posted by H_Ogura at 01:58 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

07/20/2007

私的に録画してもらった方がテレビ局には安上がり

 江口靖二さんが次のように述べています。

 コピーが1回でも10回でも、関係者全員が納得できる公式を経済性も踏まえたうえで導き出すのはきわめて困難だ。それよりも「なぜ録画をしようとするのか」という点にもっと着目するべきだろう。

 それは「不安だから」である。何となく手に入らなくなりそうな気がするからである。だとすれば再放送、多チャンネル、VODなどで視聴機会を最大化して、録画という行為の意味をなくしていくことが権利者、放送局、メーカー、視聴者全員のメリットになるはずだ。

 規制緩和をすべき軸は接触機会の最大化に向けられるべきだ。ネットワーク上のどこかに番組が正規の手続きによって置かれていて、権利者との合意に基づいて公開非公開が決められればよいのだ。そうなれば究極の姿は「コピーネバー」、録画はできなくてもよくなるはずである。

 しかし、「採算」を考えると非現実的です。テレビ番組のタイムシフト視聴及び近時のスペースシフト視聴は、視聴者の側が自ら必要な機器を購入する等して自己負担でやってきたことです。これを放送局が全部自己負担で行おうとすると、かなりの費用負担がかかります。視聴者は、自分が見たい番組だけを録画すればいいし、見終わったらデータを消去すれば済みますが、テレビ局がこれを行うとなれば原則全部の番組を相当長期間にわたって視聴できるようにしておく必要があります。「放送終了後1週間でデータを消去する」なんてことにしたら、大変なことになりそうです。「1週間の海外旅行中に国内で放送されていた連続ドラマ」を見る機会を失ってしまいますから。また、タイムシフト視聴のために従前各家庭のビデオデッキに向かっていたアクセスが、一斉に、テレビ局の提供するVODサーバに向かうわけですから、当該サーバ及びサーバ周りの回線は、同時に数百万、数千万単位のアクセスに対応できるようにする必要があります。

 では、視聴料を別途徴収してシステムの維持費を賄うという選択ができるのかというと、一定期間内に視聴者が支払う再生視聴料が、そのような視聴をするために必要な録画機器等の購入費用を上回るようであれば、視聴者の怒りを買うだけの話です。したがって、2万円足らずでそれなりのビデオデッキが購入できる現状では、家庭内録画を禁止する代わりに提供される有償VODで許される年間視聴料はせいぜい数千円だと思います。それで上記システムにかかる費用を賄い切れるとも思いません。

 しかも、その場合、ビデオ機器メーカーからの広告料収入が途絶えるわけですし。

 したがって、テレビ局内部において経済的合理性を重んずる風潮が仮に強いのだとすれば、タイムシフト視聴については、利用者側で勝手にやってくれる現状をそのままにしておくことになろうかと思います。

Posted by H_Ogura at 07:15 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (5) | TrackBack (0)

07/19/2007

「私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」ではない

 「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」が「コピーワンスの回数制限緩和には私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」との声明を発表したとのニュースが報じられています。

 しかし、ここで問題となっているのは、録画したデータの家庭内における転送回数をどうするのかという問題であって、それが1回から10回になったからといって、テレビ局のスポンサー収入を減少させる機能を有していませんので、「コピーワンスの回数制限緩和には私的録音録画補償金制度の維持が不可欠」との点は経済的観点からはミスリーディングではないかと思われます。

 純粋に経済的なことを考えるならば、機器メーカー及び消費者の協力を得て、テレビ番組の録画再生視聴率の正確な把握を行うこととし、再生視聴されることがスポンサー料に反映するような仕組み作りをする方が有益なのではないかと思います。また、録画した番組データがネットにアップロードされる問題については、受信された情報がどの機械を経由したのかがデジタルデータに埋め込まれるようにする方式をとるべきなのではないかと思います。その方が手段としてより制限的でないからです。

 もっとも、

緩和の前提に「コンテンツへの尊敬」と「対価の還元」(椎名氏)を挙げており
という記載を見る限り、権利者団体の方々は、コンテンツがユーザーに享受されることをコンテンツに対する侮辱と考えている節があるので、この問題は多分に感情的な問題なのだろうと思います。もちろん、視聴者の側からするとこれは大変な誤解であって、リアルタイムで漫然と視聴するのに比べて当該コンテンツに対する尊敬の念があるからこそ、わざわざ再生視聴をするわけです。そういう意味では、権利者の方々には、「家庭内での複製が行われるということは、それだけ自分の作品が尊敬されている証である」と胸を張っていただきたいと思うのです。

cf.
 man vs himself "The Levy" man vs himself - man Vs Himself - The Levy

Posted by H_Ogura at 08:23 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/17/2007

iTunes Storeのアフィリエイトに参加

 iTunes Storeのアフィリエイトに参加することにしました。

 まあ、気に入った楽曲のiTunes Store Japan登録率はそんなに高くないのですが。

Posted by H_Ogura at 05:31 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

07/14/2007

ギルドと政府がいかに癒着しようともギルド特権は自然権とはなり得ない

 すでに述べたとおり、著作権法は、著作物の流通過程に一定の競争制限を加えて超過利潤を取得する機会を著作者等に与えることにより、多くの新しい著作物が創作され人々に享受されることによる文化の発展を図ろうとした、一種のギルド保護法制です。

 公的利益を実現するにあたって、公的部門が直接費用分担をするのではなく、民間部門が公的利益の実現を果たすことを期待して、一定の競争制限を行うことによって一定の民間部門に超過利潤を取得する機会を与えるという手法自体は珍しくはないし、それは一概に否定すべきものでもありません。ただし、ギルドが大きくなり、政治部門との関係が密接になると、ギルドを保護することが自己目的化し、過剰な競争制限が法制化されたり、ギルドに徴税権等の利権がもたらされたりすることになります。

 日本映像ソフト協会の酒井さんから、

 そして、平成4年にはタイムシフトやプレースシフトを含む私的録音録画について、立法府は補償金制度導入を必要と判断しています。

 わが国の立法府は、先生のご見解とは異なる立場で著作権法を作ってきているのではないでしょうか。

とのコメントを頂きました。

 これに対しては、平成4年改正については、著作権ギルドが大きくなりまた政治部門との関係が密接になったことによって一種の徴税権を著作権ギルドに付与したものということができます。そして、政治部門が著作権ギルドに付与した特権がそのギルド保護法制の究極目的からは合理的に説明できないものであった場合に、では、著作権ギルドに付与された一連の特権が「自然権」に転化するかと言えば当然そういうことはなく、単に不適切であり、かつ違憲の疑いがある立法がなされたに過ぎないということになります。

 なお、ジェイムズ1世による専業権付与の濫発に業を煮やした英国議会が国王による専業権の付与を禁止するとともに例外的に新発明について最大14年の専業権の付与を認めた1623年の専売法(Statute of Monopolies)において、「国内においても商品の価格を引き上げたり、取引を妨げたり、あるいはその他いかなる不都合を生ぜしめるなどして、法に反したり、国家に害を与えることがあってはならない。」(翻訳は、石岡克俊先生のものを使用)とされていたのは実に示唆的です。競争制限法としての知的財産権法を、価格の不当な釣り上げや流通の妨害等の、社会に不都合を生ぜしめる方法で活用してはならないということは、英国ではすでに1623年には共通理解が得られていたということができます。2007年の日本ではいかがなものでしょうか。

PS  Les Fatals Picards の"Bernard Lavilliers"はPVを含めてお勧めです。といいますか、この曲のさびの部分は結構耳に残ります。
 また、同じくLes Fatals Picards の"L'amour à la française"は、英仏混合の歌詞ですが、やはり聴いていて面白い曲です(こちらは公式サイトからPVがストリーミング配信を受けることができます。)

Posted by H_Ogura at 07:38 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (7) | TrackBack (0)

07/12/2007

私的使用目的の複製が自由に行える理由

 日本映像ソフト協会の酒井さんから、「そもそもどうして他人の著作物を自由に複製できるのか、の説明をお願いできないでしょうか。」とのご質問を頂きました。

 まず確認しておかなければならないのは、我が国は自由を原則とする国だということです。 ですから、他人の著作物を複製することがこれによって実現される個人の幸福追求権に優越する利益・価値を不当に損なうおそれがある場合に、そのような事態を回避するのに必要やむを得ない範囲内でのみ、他人の著作物を複製することを法令で禁止できるということがむしろ言えます。

 で、他人の著作物をその創作者の許諾なくして複製することを禁止する理由としては、これを自由にさせておくと、複製物の市場価格は、複製物自体の製作・流通コストぎりぎりのところで均衡してしまい、著作物自体の創作コストを複製物の価格に上乗せして投下資本の回収を行うことができなくなってしまい、結果、コストをかけて著作物を創作することができなくなってしまうが、それでは新たな著作物が創作され人々がこれを享受することによりもたらされるはずの文化の発展が阻害されてしまうので、著作物自体の創作コストを回収するためにこれを複製物の価格に上乗せできるようにするために、その複製物を製造・販売についての参入規制を行うこととしたのだというのが一般にあげられます。

 このような伝統的な「インセンティブ論」を前提とするときは、著作権法に基づく競争制限期間は一般に創作コストの回収に必要な期間で足りるといえますし、創作コストを回収するために行われる正規商品の流通を不当に阻害しない行為についてはこれを著作権法で規制することは正当化され得ないということになります(例えば、試作段階の複製・翻案は、明文の規定はありませんが、完成品を流通させる際には必要な権利処理を行うことを予定している場合には、おそらく著作権侵害とはしないのではないかと思います。)。もちろん、司法権が比較的強い米国においては、正規商品の流通を不当に阻害するか否かという判断を司法府が個別の事案に即して行う割合が高く(cf.フェアユース)、他方、立法府が比較的強う日本においては、どのような行為類型について正規商品の流通を不当に阻害するといえるのかを立法府が判断して著作権法の条文に明記する傾向が高いということができます。その一例としていえば、我が国の司法府は、複製物を正規商品の競合商品として市場に流通させることを予定しない複製(私的使用目的の複製)について、複製権の対象から明文で除外しています(30条1項)。

 従って、当初の酒井さんの質問に立ち返ると、他人の著作物を私的使用目的の複製を自由に行うことが許されるのは、それが私的領域にとどまり市場に供出されない場合には、複製物の市場価格を複製物の製作・流通コストぎりぎりまで押し下げる機能を有しないため、複製物の製作・流通コストに著作物自体の創作コストを上乗せした価格を設定することを妨げないから、そのような複製を禁止すべき理由がないからであるということになります。

 例えば、iTunes Storeでダウンロードした楽曲データをiPodに同期させる行為は、音楽CDの市場価格や音楽配信サービスの市場価格をその複製物自体の製作・流通コストぎりぎりまで押し下げる機能を有していないため、むしろ、これを法律で禁止する理由はないし、そのような同期が行われうるからといってiPodを製造・販売するApple社がJASRACやレコード会社に補償金を支払う合理的な理由はないということができます。また、タイムシフト視聴目的でテレビ番組を録画する行為もまた、当該番組に関する広告料を限界利益まで引き下げるものではありませんので、これを規制する合理的な理由はないということになります。

Posted by H_Ogura at 02:05 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

07/10/2007

Preamble

 米国合衆国憲法の前文って「School House Rock」という番組の中で歌われた「Preamble」という歌の歌詞になっているのですね。

 YouTube等で検索をすると、アニメーションつきで映像を見ることができます。実は米国のiTunes Storeでは1.99米ドルを支払うことによりこの映像を購入することができるのですが、iTunes Store Japanでは購入できません。

 今は違法にアップロードされた映像データをダウンロードして個人的に視聴することは合法だから、YouTube等のおかげでこの映像を視聴することができるのですが、将来的には、「この歌を知っている人は違法にアップロードされた映像データをダウンロードしたとしか考えられない」として投獄される日が来るのかもしれません。

 そうなれば、著作権等管理団体としては、著作権や著作隣接権を通じて、日本在住者が聴いて良い音楽と聞いてはいけない音楽とをコントロールすることができるわけで、経済的な利益云々以前に、とても権力欲が満たされることでしょう。

Posted by H_Ogura at 02:16 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (10) | TrackBack (0)

07/09/2007

私的使用目的の複製によりいかなる経済的不利益が生ずるのかの説明がそもそもないのです。

 IT企業法務研究所の 国時大和さんが、次のようなことを述べています。

 その評価に当たっては、これを肯定又は否定する双方の意見が見られるが、上述の点を踏まえて考えて見れば、次のような見解には納得し得るものがある。

 「三つの調査(総理府調査、三団体及び工業会調査)によれば、録音機器の保有率は、最低66%以上となっており、録音機器は、本来音楽の著作物等を録音・再生するためのも機器であるということを考えあわせると、この事実だけからでも著作権者等の利益が侵害されているものと判断してよいのではないか。」

また、経済的不利益の立証の問題についても、いくつかの考え方が示されているが、次の見解が妥当するように思われる。

 「まず、録音・録画機器の普及により社会全体として大量の著作物や実演等が利用され、権利者がこれによって経済的に不利益を被るであろう可能性ないし蓋然性があれば十分であること、すなわち、経済的不利益をもたらす可能性のある機器が家庭内に普及している事実、例えば、全世帯における機器の普及率が 50%以上になっている程度の立証で十分であり、この状況により権利者の利益が不当に侵害されているものと判断して差し支えない。」

 このように、30条制定当時は民生用の録音機器の普及の程度は低く、現実的に私的使用のための録音の例はそれ程多くはなかったが、その後、録音録画機器の開発が進み、小型化、低廉化した複製機器が家庭内に入り込むことによって、30条に示された要件の適用には捉われずに、「例外的」に定められている自由利用の範囲が肥大化し、その結果、著作権法の目的でもある権利者の報酬を保証するための機能が果たせなくなってきていると判断できるのである。

 しかし、この議論は、録音・録画機器の普及により家庭内での私的録音録画が行われ、それらが累積することにより社会全体として大量の著作物や実演等が複製されることによって、権利者がいかなる経済的な不利益を被る蓋然性があるのかということを、説得的に示していません。そこの説明を抜きにして、「全世帯における機器の普及率が 50%以上になっている程度の立証」をしたところで、「権利者の利益が不当に侵害されているものと判断」されたり、「著作権法の目的でもある権利者の報酬を保証するための機能が果たせなくなってきていると判断」されたりしても、消費者の納得が得られないと言うべきでしょう。

 例えば、家庭用録画機器でのテレビ番組録画の主たる目的は、家庭内でのタイムシフト視聴です。では、仕事が忙しくて月曜日の午後9時までに帰宅することができないOLが月9をビデオに撮って、深夜0時過ぎに帰宅した後にこれを視聴することにより、権利者はいかなる経済的不利益を被るのでしょうか。深夜0時過ぎにしか帰宅できないOLは、家庭用録画機器がなければ、そもそも月9を見るという選択はできなかったのであり、そうなれば、F4層に向けたCMを流すために高い広告費を支払った広告主は却ってそのメインターゲットの一部にCMを見てもらう機会を失っていたはずです。その一方で、家庭用録画機器による録画がなくなることで、その番組を視聴する人がより増えることになる理由というのはどうもなさそうです。もちろん、テレビ番組に関する著作権者にとって「番組を視聴されること=経済的な不利益」ということであれば話は変わってきますが、そうであるならば、少なくともテレビ局が著作権者でもある番組については、番組宣伝をすることをまず控えるべきでしょう。

 あるいは、国時さんがiPodの例を出しているので言及すると、iTunes StoreからPCにダウンロードした音楽データを自分の手持ちのiPodに同期させることにより、権利者はいかなる経済的不利益を新たに被るのでしょうか。経済実態としては、一人の消費者が特定の楽曲を反復して視聴するために対価を支払ってApple社を介して音楽データを入手し、これを用いて当該楽曲を反復して視聴するというだけのことであり、入手した音楽データをiPodに同期するということは、その音楽データを再生するにあたってPCのみならずiPodも使用できるようになったということを意味するに過ぎないのであって、「特定の楽曲を反復して視聴するために対価を支払った人がその楽曲を反復して再生し視聴できる」という以上のことは何も生じさせていません。「iTunes StoreからPCにダウンロードした音楽データを自分の手持ちのiPodに同期させることが禁止されていれば、その消費者は当該楽曲が収録されている音楽CDを正規に購入していたであろう」とはもちろん言えないし、普通に考えれば、「iTunes StoreからPCにダウンロードした音楽データを自分の手持ちのiPodに同期させることが禁止されていれば、多くの消費者はそもそも当該音楽データを対価を支払ってまで「iTunes StoreからPCにダウンロードしよう」とすら思わなかった蓋然性の方が高そうです。

Posted by H_Ogura at 02:26 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (23) | TrackBack (2)

三田さんの要求を満たす著作権法の改正案を考えてみた。

 著作権の保護期間を延長すべきという方の延長すべきとする理由のうち、「欧米に従え」という部分を除くと、著作権法51条2項を次のように改正すれば足りるのではないかという気がします。

2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。本項及び次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。但し、著作権が、著作者(第十五条の規定により著作者とされた法人等を除く。)の遺族(死亡した著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。)のみに引き続き帰属する限りにおいて、著作者の死後七十年を経過するまでの間、存続する。

 これなら、三田さんが時々取り上げる「著作者の死後50年以上生存する遺族」を悲しませる心配はありません。

 もちろん、著作権法53条は据え置きでも、「著作者の死後50年以上生存する遺族」との関係では何の問題もありませんので、構わないはずですね。

Posted by H_Ogura at 01:14 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

07/03/2007

BSAによる「違法コピー率」の算定方法

 今年報告された「第4回 BSA&IDC 世界ソフトウェア 違法コピー調査」では、「違法コピー率」の算出方法について、従前の報告書よりは詳細な記述がなされています。

 これによれば、

  1. 当該年度中に使用が開始されたパッケージソフトウェア数を算出
  2. 当該年度中に販売された、ないし合法的に取得されたパッケージソフトウェア数を算出
  3. 1の数字から2の数字を引いて、違法コピーソフトウェア数を算出

 違法コピーソフトウェア数が明らかになれば、インストールされている違法コピーソフトウェアの全体に占める割合である違法コピー率を算定することができます。

とされています(同報告書12頁)。

 すなわち、BSAが考える「違法コピー」には、現在多くのパッケージソフトにおいてメーカー自身も認めている「同時に稼働させない限度での複数台コンピュータへのインストール」はもちろん、「パソコンの買い換え等における旧パソコンで使用していたソフトウェアの新パソコンへのインストール」も含まれることになります。つまり、BSAとしては、「パソコンを買ったら、使用するソフトウェアは全て新規に買い直せ。さもなくばそれは違法コピーだ」と考えていることになります。

 もっとも、ある年にある国にあるパソコンに合計何本のソフトウェアがインストールされたのかについて正確な統計を取るためには、パソコンにソフトウェアをインストールするたびにその情報がどこかの集計センター等に送信される仕組みが必要ですが、そのような仕組みを私たちパソコンユーザーに無断で埋め込むことは西側先進国では概ね許されていません。従って、「該年度中に使用が開始されたパッケージソフトウェア数」については、その数字の根拠が問われます。

 この点について今回の報告書は、

「ハードウェア台数」×「ソフトウェアロード数」=「インストールされたソフトウェア総数」
という算定方法を明示する(13頁)とともに、「ソフトウェアロード数」は、
実態調査、アナリスト予測、在庫調査、その他現地調査の結果を使用するモデルから算出されました
と記載されています。もっとも、現地調査は、全ての国について毎年行われているわけではなく、2006年については21ヶ国で行われたに過ぎないようです。しかも、これらの現地調査の結果をそのままで「ソフトウェアロード数」としているのではなく、現地調査の結果は、「人口統計、コンピュータの高度化、同等国との比較など当該国の多様な統計に基づいて対象国のソフトウェアロード数を算出する際に使用され」谷過ぎないようです(16頁)。

 「現地調査」自体が、「アナリスト予測」のような不確かなもの、「在庫調査」のような「インストールされたソフトウェア総数」との関連が薄そうなものを元に行われている上に、「コンピュータの高度化、同等国との比較」などのような「インストールされたソフトウェア総数」との関連性がよく分からないファクターでその調査結果をさらに修正してしまうのですから、素人目に見ても正確な数字が出そうにないし、この程度の正確さの統計で、違法コピー率が増えたの減ったのといってみてもほとんど意味がないように思えてなりません。

PS.

 こういうジメジメした日は、Amadou & Mariam の Amadou & Mariam - Dimanche ? Bamako - S?n?gal fast food "Senegal Fast Food"なんかがお勧めです。

Posted by H_Ogura at 09:21 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (1)

07/01/2007

iTSJにJames Blunt登場

 気がついたら、James Bluntの"You're beautiful"がiTunes Store for Japanでもダウンロード可能となっていました。この曲は、日本版のCDが発売される前に目をつけていたのですが、iTunes Store for Japanでのみダウンロードできないという状況が続いていたので、意地でもCDなんか買ってやるものかということで買わずにいたので、ああ待っていて良かったなあと思った次第です。この間、「ビューティフル・ソングス~ココロ デ キク ウタ~」なんていう抱き合わせ販売が成功したので、単品販売が中心のiTunes Store for Japanには来ないのではないかとも心配はしたのですが。なお、James Bluntについていえば、"No Bravery"も良い曲だと思いましたが。

 考えてみれば、このあたりに日本の音楽産業が今ひとつ波に乗れない原因があるのかなあという気がします。このコンピレーションアルバムはなんといっても上記"You're beautiful"とDaniel Powterの"Bad Day"の2曲が売りであって、あとは、「何でこの曲を、いまころ?」という曲を数埋めたという感じの構成です(悪い曲ではないんですが、現時点で顧客訴求力は高くないでしょう。)。 つまり、買う側の感覚としては、"You're beautiful"と"Bad Day"にそれぞれ1000円ずつ出しているような感覚になります(「ビューティフル・ソングス~ココロ デ キク ウタ~」の定価は2630円)。これだと、私の感覚でも「不当に高い」という感じがします。James BluntとDaniel Powterのアルバムを買うよりは安いこともあってそこそこヒットはしましたけど、特にほしくもない歌にお金を払わされれば、妥当な対価を支払ってもほしいと思った他の歌が変えなくなるのが世の習いなので、こういう「抱き合わせ販売強制」型ビジネスモデルというのは、長い目で見れば、消費者の音楽離れを促進させることになるように思います(コンピレーションアルバム自体が悪いといっているのではありません。単体での販売も行った上で、割安なセット販売をするのであれば、それは正当な商行為です。)。

 考えてみれば、商業用レコードに関して私的使用目的の複製はどのような目的で行われるのかというと、第1にメディアシフト目的であり、第2に連続して聴きたい楽曲を集約する目的です。だから、正規商品たる音楽CDを購入した利用者だって、その音楽CDを私的使用目的で複製します。これは、SonyがWalkmanを出荷して以来、「移動時間に音楽を聴く」というライフスタイルが定着したのだから仕方がないことです。

 レコード業界の戦略ミスは、このようなライフスタイルが提案されたときに、これにマッチした商品ないしサービスを提供しなかったことです。そこでは、可搬性の低い媒体を所有することのメリットが低下する一方、どの楽曲とどの楽曲をどの順番で可搬性の高いメディアに集約するのかということにつきイニシアティブを握りたいとの消費者の欲求が高まったのです。しかし、レコード会社は、ユーザーがお金を支払ってでも聴きたい曲とそうでない楽曲を1枚の媒体に収録して楽曲を抱き合わせ販売するという旧来型のビジネスモデルにこだわりすぎました。そのため、CDレンタルや音楽配信(合法、非合法とを問わない)が栄え、楽曲のMD販売等は(可搬性には優れていたのに)あまり普及しませんでした。楽曲のMD販売を行うときに、何をどの順番で収録するのかを(少なくとも特定のレーベルが原盤権を持っている楽曲の中から)顧客が自由に選べる方式が採用されていたら、状況はかなり違っていたかなと思います(同じことをするのに、CDレンタルを活用するより、安上がりとなりますから。)。

Posted by H_Ogura at 12:39 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

ASP型着うたデータ変換サービスと著作権法

 前回のゼミの課題の一部です。「MYUTA」をもう少しASP的にしてみると著作権法上どうなるのかということで、興味のある方は考えてみてください。

 A社は、ユーザーが手持ちのmp3ファイルを着うたとして自分の携帯電話で使用できるようにするために、次のようなサービスを開始した。  

ユーザーがその使用するパソコンに蔵置されたmp3ファイルをインターネット経由でA社のサーバBに送信すると、A社のサーバBは、当該mp3ファイルをRAMに一時的に蓄積した状態で、A社が開発しサーバBにインストールされたコンピュータソフトウェアCの機能により、当該mp3ファイルを3G2形式に変換し、さらに、着うたとして使用できるようにヘッダ情報を2バイトほど書き換えた上で、当該データをインターネット経由で元のパソコンに宛てて送信する。

 A社の上記サービスは、著作権法上問題があるか。

Posted by H_Ogura at 01:06 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/26/2007

企業が商品を売り惜しみすれば、闇市が栄える。

 私は、「ネット上に不正にアップロードされたコンテンツをダウンロードすることを違法とする(著作権法上の私的複製の範囲を見直す)」ことには反対です。でも、エイベックスの取締役になった岸博幸さんが仰るような「そんなことをしたら、インターネットユーザーが萎縮してしまう。ネット上は極力自由にすべきであり、余計な法改正はすべきでない」という理由からではありません。

 一つは、創作者が投下資本を回収するために通常行う営利活動と競合する行為を制限するという著作権の本質とは相容れないからです。

 一つは、違法コンテンツのダウンロードを違法とする場合には、権利者が権利行使を行うためには、特定の誰かがどのようなコンテンツを入手したかを調査することが必要となりますが、それは、憲法が保障する思想・良心の自由と大きく衝突することになるからです。アップロード者を規制する場合、その者がどのような作品を保有しているのかは、少なくともアップロードされた者に関していえば、本人が自主的に公開したのですから、著作権者ないし警察がこれを探知することがアップロード者の思想・良心の自由を侵害する程度は低いですが、ダウンロード者は、自分がどのような作品を入手しているのかを自主的に公開する意図がないのが通常ですから、思想・良心の自由を侵害する程度が高いのです。

 もう一つは、海外の情報を海外で(不正に)アップロードしたもののダウンロードが禁止されることにより、情報鎖国が実現してしまうからです。つまり、国内での正規商品の流通を禁止してしまえば、その作品に含まれるメッセージを日本国内の在住者が知る機会は著しく奪われることになるからです。

 岸さんは、「音楽を巡るいまの状況は、モノの世界で例えれば「企業が商品を作って店先に並べてもどんどん盗まれて闇市で格安で売られてしまうため、売り上げが伸びない」ということと同じである。」と仰るのですが、そうではありません。「企業が商品を店先に並べてくれないから、本来は正規商品を買いたい消費者も、闇市で探さなければいけない」というのが音楽を巡る今の状況です。この場合、企業がちゃんと商品を店先に並べることを優先的に推し進めることなく、闇市で商品を購入することを先に規制すると、結局消費者が飢えて死んでしまうだけのことです。

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06/24/2007

平成18年改正についての岸博幸さん危惧

 さらに、岸博幸さんネタを。

 岸さんは、著作権法の平成18年改正に関して、次のように述べています。

 第1は、IPマルチキャスト放送を行う事業者のみならず、個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す者も、地域を限定すればこの特権の対象となり得る、ということだ。

 これは、著作隣接権を有する実演家にとっては大問題である。技術に詳しい人ならばストリーミング配信を行うことは簡単なので、極端に言えば、無数の人が実演家の許諾なしに映像コンテンツを流せるようになる。実演家は、それらをいちいち突き止めて報酬を請求しないといけなくなるが、そのようなことは事実上不可能だ。

 第2は、IPマルチキャスト放送に与えられる権利処理の特権の対象が、地上デジタル放送に限定されていない、ということだ。その結果、例えばCS放送の音楽チャンネルやラジオ放送などもIPマルチキャスト放送で再送信できるようになるので、特に音楽の実演家の立場からは、自分が演奏した曲が許諾なしで無制限に流され、そのたびに報酬を請求しないといけなくなる。

 この2点はいずれも著作権法改正法案の第102条3項にからむもので、法案の文言を素直に読めばそう解釈できてしまう。

 改正著作権法102条3項で実演家の隣接権が制限されるのは、「著作隣接権の目的となっている実演であって放送されるもの」ですから、岸さんが仰るように「個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す者も、地域を限定すればこの特権の対象となり得る」とするためには、「個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す」行為が著作権法上の「放送」であることが必要です(普通に読めば、「有線放送」ではだめです。)。しかし、著作権法上の「放送」は、「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信」をいう(2条1項8号)ですから、「個々のユーザーの要求に応じて配信するストリーミングで映像コンテンツを流す」行為が著作権法上の「放送」となる可能性はないように思います。著作権法は経産省の所管ではないとはいえ、こんなところで条文の読み方を間違えていて大丈夫でしょうか?

 後段についていえば、次のようなことが言えます。

 IPマルチキャスト放送を行うためには、放送事業者の著作隣接権としての送信可能化権を侵害することができないので(改正102条3項但書)、IPマルチキャスト放送の主体は放送事業者かまたは放送事業者から委託を受けた者に限られます。だから、適法なIPマルチキャスト放送の主体を見つけ出すのは、少なくとも芸団協等の実演家団体に所属しているアーティストにとっては容易なことです。  そして、放送事業者は、実演家の許諾を得てCD等に収録した実演については、実演家の事前の許諾なくして放送することができる(92条2項)わけですが、その場合には、芸団協等の実演家団体を通じて二次使用料を支払わなければなりません。ですから、その放送をIPマルチキャスト放送する放送局に対しては、2次使用料を支払うための利用実績データに基づいて、IPマルチキャスト放送にかかる補償金を支払うように要求すれば済む話です(放送番組を制作する側からいえば、放送前に事前にすべての実演家から許諾を受けよといわれるとうんざりしますが、すでに放送した番組についてどの楽曲を使用したか報告せよといわれる分にはそれほどの手間ではありません。)。もちろん、立法技術としては、IPマルチキャスト放送の対価を「2次使用料」ではなく「補償金」扱いにしたのは稚拙だとは思いますが(「2次使用料」ならば、個々の実演家からの委任等がなくとも、芸団協等の実演家団体が一括して請求し、これを個々の実演家に分配することができたのに対し、「補償金」だと建前上は各実演家が権利行使をする必要があります。)、実演家団体として放送事業者側と上記のような交渉をすることにより、権利行使費用はさほどかけないことが可能です。

Posted by H_Ogura at 04:26 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

06/23/2007

10年の懲役を持っている犯罪で親告罪というのは

 Copy & Copyright Diaryより。

久保田裕委員の5番目の発言より。
その中で、期間の延長の問題もあるのですが、著作権の刑罰も5年の懲役から10年に上がりました。10年の懲役を持っている犯罪で親告罪というのはありません。
これは結構重大な発言だと思います。私は法律の専門家でないので、「10年の懲役を持っている犯罪で親告罪というのはありません」という久保田委員の発言が本当かどうか分かりませんが、もしそうであるなら、昨年の著作権法改正における罰則の強化はすべきでは無かったのではないのでしょうか。

 まあ、久保田さんは法律の専門家ではありませんから。

 例えば、

(強制わいせつ)
第百七十六条  十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。  

(強姦)
第百七十七条  暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。  

(準強制わいせつ及び準強姦)
第百七十八条  人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2  女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。  

(親告罪)
第百八十条  第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2  前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。

(営利目的等略取及び誘拐)
第二百二十五条    営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

(親告罪)
二百二十九条    第二百二十四条の罪、第二百二十五条の罪及びこれらの罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びに同条第三項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、営利又は生命若しくは身体に対する加害の目的による場合を除き、告訴がなければ公訴を提起することができない。ただし、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときは、婚姻の無効又は取消しの裁判が確定した後でなければ、告訴の効力がない。

Posted by H_Ogura at 10:45 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (0)

日本の裁判所だったら

 前回のゼミの課題の一部です。興味のある方は考えてみてはいかがでしょうか。


問1
 「Come Together」がChuck Berryの「You Can't Catch Me」に関する著作権を侵害するとしてJohn Lennonが訴えられたことは有名ですが、日本の著作権法に基づいて日本の裁判所が判断していたらどうなっていたでしょうか。

問2
 「My Sweet Lord」がChiffonsの「He's So Fine」に関する著作権を侵害するとしてGeorge Harrisonが訴えられたことは有名ですが、日本の著作権法に基づいて日本の裁判所が判断していたらどうなっていたでしょうか。

問3
 KICK THE CAN CREWが「クリスマス・イブRap」を制作するにあたって山下達郎の許諾を得ていたことは有名ですが、仮に、山下達郎に無断で「クリスマス・イブ・ラップ」を制作して発表した場合、著作権法上問題があるでしょうか。

問4
 Sean Kingstonの「Beautiful Girls」が仮にBen E. Kingから訴えられたとして、日本の著作権法に基づいて日本の裁判所が判断したらどうなるでしょうか。

Posted by H_Ogura at 09:42 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

エイベックスの特別顧問は、違法配信のネタもとがレンタルだと問題視?

 岸博幸さんって、現在エイベックス・グループ・ホールディングスの特別顧問で、6月24日の定時総会で同社の非常勤取締役に就任予定の方だったのですね。それなら、少なくともエイベックスの特別顧問に就任していることくらいは略歴欄に書いておけばいいのに(特にこの話題だったら)とは思いました。ポジションによって党派性が生ずるのは仕方がないですが、それはそれで明示した方が、読者には親切です。

 それはともかく、問題の本質が「デジタルコピーして、ネット上で違法配信するのが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」ということならば、「様々な個別論のなかでは、例えば私的録音録画補償金制度よりもレンタル市場の存続の可否という問題の方がよほど重要である」という認識は改めた方がいいのではないかと思うのです。デジタルコピーの大元が「レンタル店から安価で借りて」きたCD等か、CDショップで高価で購入してきたCD等か、業界関係者に無料で配布されたCD等かなんて、「最初の1枚に関しての収益の差」(定価3000円のCDアルバムだと、実演家で30円〜100円程度の差)でしかないのですから(よもや、「高額の代金を支払って購入したCD等からリッピングしたデジタルデータを無料でP2Pネットワークに放出するお人好しなどいるわけない」と思っていないでしょうね。P2Pネットワークでの音楽データの共有の本場アメリカ合衆国において、CDレンタル業者がほぼ存在しない事実を思い起こすべきでしょう。)。

 「デジタルコピーして、ネット上で違法配信するのが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」という問題設定に対して、「CDレンタル事業を押しつぶすべき」という回答を出してくるシンクタンクなり特別顧問なりがいたら、私ならそういう人たちとは上手に縁を切るように会社にお勧めしますけど、レコード会社の上層部の人には、「CDレンタルがなくなれば、今までCDレンタルを利用してきた若者が、どこからかお金を調達してきて、その分新品CDを購入してくれるようになる」というストーリーの受けが良さそうだから、CDレンタル事業を悪者とする回答を提出した方が、出世の階段を上りやすいのだろうなということは思ったりします(そんなお金、どこから調達できるの?ってことを考えれば、非現実的な話でしかないことはすぐにわかるのですが。)。

 私ならば、「iPod等の大容量携帯型音楽再生機で音楽を楽しむことが日常茶飯事になった今、いかにアーティストが収入を確保して創作意欲を保ち続けられるようにするか」という問題設定をした上で、むしろ、流通部門の中間マージンが大きく、また返品リスクの高い新品CD販売部門の縮小と、音楽配信およびレンタル部門のてこ入れを図りますが、そういうことをいっていると受けが悪いようです。消費者が音楽データを入手するのに費やす金額が一定であれば、その金額の範囲内で消費者が入手する音楽データの数が相当程度増加したって、音楽産業は全体的には損をしない(ただ、特定の作品への収益の集中が分散される)のですけれども。

Posted by H_Ogura at 09:36 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

06/21/2007

新TLDを登場させる意味

 大野元久さんは、「ちょうど「もう .com ドメインでは、まともなものが取得できない」ために多くの新 TLD(.info、.biz、.name など)を登場させることにしたのに、いまだに .com ばかりが注目を集めているという状況に似たものを感じます。」と仰っています

 ただ、「×××.com」で成功した企業が現れると、「×××.co.jp」等のドメイン名を登録することがサイバースクワッティング扱いされる現状では、新TLDを登場させる意味はあまりなさそうです。

 「普通名詞+.com」と「普通名詞+co.jp」は、類似していないということにしないと、ドメイン名の枯渇の方が早そうです。後発企業がみな、無意味で覚えにくいドメイン名で我慢してくれれば、話は変わるのでしょうが。

PS.

AHORAの「 Les mains sales」、音的には格好いいですね。

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06/14/2007

選撮見録事件高裁判決

 今日は、大阪高裁で、選撮見録事件の判決言渡しがありました。

 結論からいうと、販売差止めの対象となる物件の範囲は大幅に狭まりましたが(例えば、「全局予約モード」機能がないものは差止めの対象外)、各利用者を複製等の主体とした上で、機械の販売者であるクロムサイズも規範的に利用主体と認められるとするもので、理論的にはまあ酷いものです。幇助者について112条1項を類推適用した原審の評判が非常に悪かったので、無理をしてクロムサイズを複製等の主体としたというところでしょう。

Posted by H_Ogura at 04:44 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

06/06/2007

著作権意識が強いからこその貸しレコード業

 mohnoさんは、そのブログの中

日本にしかないレンタルレコード(CD)は、著作権意識が弱いからこそ認められたようなものではないのだろうか。
とおっしゃっています。しかし、それは違います。

 レコードレンタル業が開始された当時は、正規に生産された商業用レコード等を業として貸与することは日本法では禁止されていませんでしたし、これを禁止することを義務づける国際条約はなく、これを法的に禁止している国も殆どありませんでした。実際、知的財産権の正規の実施品の業としての貸与を禁止する権限を知的財産権者に付与する例は、特許等の他の知的財産権にもありませんので、これが普通の姿であるといえます。

 その後著作権関連団体のロビー活動が功を奏し一旦は貸しレコード業を抑制する方向に向かいかけましたが、貸しレコード業者が消費者を巻き込む形でロビー活動を行った結果、商業用レコードを業として貸与する権限を著作権者や著作隣接権者に一定の限度で認めつつ、著作権者は利用料の支払いを条件として原則業としての貸与を許諾するということで落ち着きました。その結果──貸しレコード業者の営業努力もあって──貸しレコードもまた商業用レコードの利用実態として無視し得ない実態を確保していきました。

 この実態こそが、その後の国際条約が商業用レコードの業としての貸与を禁止する権利をレコード製作者等に認める方向に動いたのに、日本政府は、当該条項に留保宣言をつける等として、貸しレコード業を保護しなければならなかったのであって、決して著作権意識が弱いからではありません。

 では、なぜ貸しレコード業が日本でまず普及したのかといえば、一つは、ウォークマンの普及により、移動中に音楽を聴くというライフスタイルが早期に確立したということがあるでしょう。いずれにせよ、ビニールレコードやCDからメディアシフトさせるのであれば、ビニールレコードやCDを購入して保管しておくことは無駄でしかないのです。

 また、日本国民は比較的遵法精神が高く、海賊版の流通が少ないということも、貸しレコード業が日本で普及した理由の一つでしょう。よく考えれば分かることですが、「著作権意識が弱」く、国民の多くが海賊版の売買を躊躇しない国や社会では、貸しレコード業は成り立ちません。

 さらにいえば、旧郵政省の放送事業者保護政策との関係でミニFM等の数が少なかったことから、多様な楽曲を無料又は安価で聴取する他の方法が乏しかったということも、貸しレコード業を普及させた要因の一つであるといえるでしょう。

 日本以外の諸外国では新たな音楽を聴きたかったら皆何とかお金を工面して新品のCDを購入しているかというとそういうことでもなく、多くの人々は、新品CDを購入するよりも安価な手段を用いて、多様な音楽を聴く機会を確保しています。それらの手段の中では、貸しレコード業というのは、著作権者や著作隣接権者にお金を流している部類にはいるように思います。

Posted by H_Ogura at 02:33 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (11) | TrackBack (0)

06/05/2007

館内での撮影に関する欧米基準

 自民党の議員立法である「映画の盗撮の防止に関する法律案」が可決成立したようですね。

 これ自体は、アメリカの映画産業のヒステリーに付き合う人達がこんなにいたのだと感心する程度です。

 ただ、どうせ欧米の基準に合わせるのであれば、美術館等での私的使用目的の写真撮影を、少なくとも国公立の美術館等については、作品の保護の観点からどうしても問題がある場合を除き認めるようにしてほしいものです。欧米の美術館では、原則写真撮影は自由であり、世界中の人々がそこに行った記念にとばしばし写真を撮っているのです(所詮アマチュアの撮る写真ですから、写真を撮って後で何度も鑑賞するという目的にはあまり使えません。)。しかも、モネやルノアール等の著作権切れの作品のみならず、ピカソなどのように著作権がまだ切れていない画家の作品についても、来場者による写真撮影は原則禁止されてないというのが欧米基準です。

 それに引き替え、日本の場合、殆どの美術館は、著作権の保護期間を経過したか否か等とは関係なしに、一律写真撮影を禁止しています。映画の撮影について市民に一定の譲歩を強いたのですから、市民の側に欧米基準の自由を与える程度のバーターをしても罰は当たらないように思うのですが、上記議員立法を推進された議員の方々には、市民の自由に配慮するという考えはあまりなかったのかも知れません。

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06/04/2007

Winny事件についての北岡弁護士の解説

 昔一緒に大阪FLMASKリンク事件の弁護人を務めた北岡弘章弁護士が、Winny幇助事件についての解説を書いておられます。

 Winny著作権法違反幇助事件の判決(1) ソフトウエアの開発自体は罪に問われていない

 Winny著作権法違反幇助事件の判決(2) 裁判所が認定している客観的事実

 Winny著作権法違反幇助事件の判決(3)著作権法違反幇助と技術的検証は両立すると判断

 Winny著作権法違反幇助事件判決(4) あいまいさ許容せざるを得ない幇助犯の成立条件

Posted by H_Ogura at 03:04 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

著作権法30条1項の廃止論者はまず実証実験を!

 実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏は、私的録音録画小委員会」の2007年第4回会合において、

権利者や消費者、メーカーの利害が調整されない場合には、私的複製を認める著作権法30条1項の廃止を求めるとした。
語ったとのことです。

 実演家著作隣接権センターは、国民全体に私的使用目的の著作物等の複製を行うことを要求する前に、その会員たちがまず私的使用目的の著作物等の複製を行わない生活を送ってみるとよいのではないかと思います。その結果、従前他の用途に支出してきたお金を節約してでも著作物等の利用に対する対価をより一層支払うようになるだけで済むのか実証実験をしていただけるとよいように思うのです。

 もちろん、その場合、実演家著作隣接権センターの会員は、テレビ番組を家庭用ビデオデッキで録画をするべきではないし、市販CDをパソコンにリッピングしてiPodと同期させるなどということはすべきではありません。また、ブラウザを用いてウェブにアクセスするときは、一切ディスク上にキャッシュを残さない設定にしていただきましょう(ネット上には著作者の意思に関わりなくアップロードされてしまっているコンテンツが少なからずありますから、黙示の複製許諾だけではディスクキャッシュを正当化しきれない可能性があります。)。

 また、原稿を書くにあたって資料をコピーして紙ファイルに一纏めにするなど言語道断です。参考文献はすべて丸一冊購入していただき、必要に総じてそれらすべてを持ち運んでいただくことにしましょう。あ、もちろん、1冊の本のうち必要な部分のみを切り裂いて紙ファイルに綴じる分には私的使用目的の複製をしたことにはなりませんから、許容範囲内です。

 実演家著作隣接権センターの会員の皆様が「私的使用目的の複製」を行わない生活を3年くらいして、その結果、著作物等の利用に対する対価の支払いがどの程度増えたのか、その間健康的で文化的な生活を送ることに支障が生じたか否かを報告していただければ、私的複製を認める著作権法30条1項の廃止の是非を具体的に論ずることができるようになるかと思います。

P.S. Mademoiselle Kの「Ca Me Vexe」、格好いいですね。

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06/02/2007

著作権侵害罪の非親告罪化

 著作権侵害罪の非親告罪化を推進する方々は、何を期待しているのでしょうか。

 著作権等を侵害する者に刑事的制裁を加えたいのであれば、著作権者等が刑事告訴をすればよいだけの話です。まあ、あえて、非親告罪化によって運用が変わるとすれば、次の2点くらいかなという気がします

 一つは、著作権者等自体は権利保全にさほど執着していないが、当該著作物等の活用による経済的利益の重要な一部を押さえている第三者が権利保全に執着している場合に、当該第三者が刑事告発することで侵害者の処罰につなげることができるようになるということです。もちろん、独占的利用許諾を受けていれば刑事告訴をなし得るのですが(最判平成7年4月4日刑集49巻4号563頁)、しかし、非独占的利用許諾契約を受けたに過ぎない者が刑訴法230条の「犯罪により害を被った者」といえるかは難しいところです。

 もちろん、著作権者が許諾をしてしまえばそもそも犯罪とはならないのですから、実際には、著作権者が積極的にそのような利用を許諾するつもりもないけれども、かといって積極的に取り締まる気もないという場合に、その著作物により経済的利益を受けている第三者が刑事告発をすることにより侵害者の処罰が可能となるということなんだろうと思います。

 もう一つは、著作権者等自身が刑事告訴をしてファン等を敵に回すことを恐れている場合に、これを避けつつ侵害者を処罰することができるようになるということです。

 もちろん、著作権者等からの許諾を得ていないことは検察側が立証責任を負いますし、被告人の自白のみで有罪に導くことはできませんので、非親告罪化しようとも、黙示的にも明示的にも当該著作物について当該被告人または公衆に対して利用許諾を行っていない旨の調書を警察または検察が取っておく必要がありますから、著作権者等は「当該被告人が処罰されることにつき自分は何にも関与していない」とは言い難いのですが、とはいえ作家自らファンを告訴したというのと、警察の捜査に受動的に協力したというのとでは、ファン等からの評判も変わってくるだろうということなのでしょう。

Posted by H_Ogura at 01:12 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (1) | TrackBack (1)

格安CDとDVD

前回のゼミの課題の一部です。

興味がおありの方は考えてみてください。


問1 駅の広場等において、時折、洋楽CDが格安価格で販売されていることがあります。これが著作権法上適法となるための条件は何でしょう。

問2 大型書店等において、映画のDVDが格安価格で販売されていることがあります。これが著作権法上適法となるための条件は何でしょう。

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05/31/2007

イメージシティ事件について(続)

 イメージシティ事件の解説は、一般向けのものはゲームラボに、玄人向けのものはLexisNexis判例速報に、それぞれ掲載しようと思います(連載誌を大切にしなければ……。)。

 それはともかく、そもそも携帯電話を使わない私としては「ユーザが個人レベルで本件サービスと同様にCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することを試みる場合、(中略)本件ユーザソフトを用いなくても、フリーソフト等を使って3G2ファイル化することは可能であるが、これを再生可能な形で携帯電話に取り込むことに関しては、技術的に相当程度困難である」という点が少々解せません(Googleでちょっと検索しただけでも、パソコンから携帯電話へ音楽データ等を転送することを可能とする商品はたくさん検出されるのですが。)。

 それはともかく、「ユーザーのパソコンの記憶装置に蔵置された3G2ファイル化をインターネット経由で携帯電話に取り込むことを可能とする」だけであれば、サーバに楽曲データを保存しない方式でもよかったのではないかという気がします。登録されたパソコンと携帯電話が共にインターネットを通じてサーバコンピュータと接続しているときに初めて、パソコン側に蔵置された3G2ファイルをサーバに向けて送信し、これをサーバ側でハードディスク等に蔵置することなく、そのまま携帯電話側に転送するシステムでも足りたのではないかという気がするのです(RAMを大きめにとれば可能でしょう?)。というのも、選撮見録事件大阪地裁判決がある(「1人でも公衆」はカラオケボックスに関するビッグエコー事件地裁判決が援用される危険が高いわけですし。)以上、音楽ファイルを実際に使用する者以外が所有又は管理するサーバに音楽ファイルを蔵置した場合は、サーバの所有者が複製及び自動公衆送信(送信可能化)の主体とされる危険性があることは明らかだったからです。

 サーバ側で一切「複製」を行わない場合、争点は、データを中継するだけのサーバが「公衆用自動複製機器」に該当するのか否かということと、ユーザーが自分のパソコンから自分の携帯電話へデータを転送するための中継を行うことが自動公衆送信に該当するのか否かということが争点となるとは思いますが、これらを肯定することのハードルというのはより高かったのではないかという気がします。

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05/30/2007

テレビ局と上映権侵害

 カラオケ法理を緩やかに適用していった場合、各家庭におけるテレビモニター上でのテレビ放送にかかる著作物の上映はテレビ局の管理のもとで行われ、かつテレビ局各社は有料又は営利目的でそれを行っているのであるから、著作権法の規律の観点からは、各テレビ局は各家庭のテレビモニター上での著作物の上映の主体と同視できるのであり、しかも各家庭のモニターで上映された著作物を視聴するものはテレビ局との関係では不特定人であるというべきであるから、テレビ局が放送及び複製、頒布等につき著作権者の許諾を得ただけで上映について許諾を得ていなかった場合には、上映権侵害になるのではないかという気がしてならないのですが、いかがなものでしょうか。

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05/28/2007

イメージシティ事件

イメージシティ事件地裁判決の判決文がこちらにアップロードされています。

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05/27/2007

江差追分事件の射程範囲

 昨日は学部のゼミコンパ、今日は著作権法学会ということで、大忙しの週末でした。

 「翻案」って著作権絡みの予防法務ではカラオケ法理と並ぶ難所の一つだと私は常々思っています。私自身は、翻案というのは翻訳または編曲と並列され、かつ、変形、脚色、映画化を具体例として規定されている(27条)ものであるからして、同種の存在形式間では「翻案」というのは成立しない(翻案は翻訳等と並んで先行著作物とは必然的に異なる「表現」を具体的に用いることになるが先行著作物の著作権者に専有権を与えた方がよい、との考えが広く支持を集めたから特にそのように法定されたのであって、後行作品において先行著作物と異なる表現を用いることが必然ではない同種存在形式間では、「著作権法はアイディアを保護しない」というテーゼを貫いて、先行著作物の創作性のある部分と実質的同一性を有する表現が後行作品に存在しない場合に先行著作物の著作権者に後行作品の利用を禁止する権限を付与する意味を見いだせていません)ように思うのです。

 そういう意味で、江差追分事件最高裁判決の射程範囲についてはお聞きしたかったところです。

 それはともかく、Tokio Hotelの「Ubers Ende Der Welt」は結構格好いい仕上がりになっています。Tokio Hotelはドイツのバンドですが、フランスシングルチャートで初登場6位です。

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05/23/2007

高度の匿名性を謳った情報発信ツールを公衆に提供した者の幇助責任

 ジュリストの2007年6月1日号に、「連載・知的財産法の新潮流<IT法(3)>」として、「高度の匿名性を謳った情報発信ツールを公衆に提供した者の幇助責任」という文章を掲載して頂きました。

 ま、東大のコンピュータ法研究会でWinny幇助事件について発表したものを論文形式に取り纏めたものですが。

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今年の著作権法学会

 今週の土曜日に開かれる予定の著作権法学会のテーマは「翻案」なのですね。

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JASRACから請求が来たら

 今日は、葛飾弁護士倶楽部の研修会で、「JASRACから請求が来たら」という題で、比較的実務的な話をしてきました。

 私自身は、たとえばカラオケ等に関する使用料相当金の請求事件についても、被告としてもう少しできることがあると常々思っていたので、そういう話をちらほらとしてきました(対象はみな弁護士なので、「皆までも言わなくとも」といった感じです。)。

 従前、JASRAC案件等で、被告側代理人としてはどうすべきかという議論があまりなされてこなかったし、もちろん、被告側としてのマニュアルなりガイドラインなりというものはなかったわけですので、そういう議論というのを一度してみるというのもよいのではないかと思った次第です(請求棄却判決を狙うのだけが被告側代理人のお仕事ではなく、JASRACが訴訟外で提示する和解案よりも認容額を減額していくというのも立派なお仕事だったりしますし。)。

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05/18/2007

レコード製作者の著作隣接権の保護期間の延長問題

 Internet Watchの「著作権保護期間延長への反対意見が多く挙がる、文化審議会小委」という記事によれば、5月16日に行われた文化審議会著作権分科会において、

日本レコード協会の生野秀年氏は、楽曲の著作権保護期間は著作者の死後50年となっているのに対し、レコードの著作権保護期間は発行後50年となっており、レコードの保護期間の延長が必要だと考えると主張。世界では21カ国が50年を超える保護期間を採用しており、日本もレコード売上第2位の国として、第1位の米国(発行後95年)や映画著作物の保護期間(公表後70年)などを参考にしながら、レコードの保護期間に関する国際的潮流を主導すべき立場にあるとした。
とのことです。

 ただ、レコード製作者って現実にはほとんど法人その他の団体なんですよね(少なくとも隣接権を保護する必要があるほどの商業性のあるものについていえば)。すると、団体名義のものって、楽曲の著作権だって公表後50年しか保護されないわけだから、レコード製作者としての著作隣接権の保護期間が50年というのは、楽曲の著作権の保護期間との関係ではバランスを失してはいないといわざるを得ません。

 また、保護期間が50年の現状でも日本はレコード売上げが世界第2位なのであれば、これ以上レコード製作者の地位を保障して上げなくとも良いではないかと考えるのが普通なのではないかという気もします。著作隣接権って「正規品」を購入させる一つの有力な手段ではあるのですが、絶対的な手段ではないし(原盤を握っているレコード製作者の方が音質面では有利だし、「海賊版」業者よりも一般にブランド力はあるわけですし)、(公表後50年後も商業的価値があるレコードについていえば)公表後50年も経てば初期投資分は回収できているので、サードパーティと対等に競争させても(初期投資分を価格に反映させなければいけない分)正規品製造者が競争上不当に不利な立場に立たされるということは通常考えがたいのです。

 そう考えると、レコード製作者の著作隣接権の保護期間を延長する理由って輪をかけて乏しいような気がします。

 なお、「ORIGINAL CONFIDENCE」2007年5月21日号63頁でIFPIのジョン・ケネディ氏は「実際に今、日本より保護期間の長い国はたくさんあります」 とおっしゃっていたのですが、上記生野さんの発言によると、21カ国しかそういう国はないようですので、50年よりもレコードの保護期間を長くするというのは国際的潮流でも何でもないですね。

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05/08/2007

何が著作物か──2007

 何が著作物かというのは実に難しい問題ではありますが、そこがわからないと著作権法の議論は先に進まないので、著作権法のゼミでは最初に取り扱わなければなりません。

 以下に示すのは、今年のゼミで出した課題の一部です。興味がおありの方は考えてみては如何でしょうか?

次に掲げるものは著作物ですか?著作物でないとしたら、著作物性のどの要件を欠きますか。

  1. 尾崎放哉の「せきをしてもひとり」という句
  2. 「(⌒▽⌒)ノ_彡☆」という顔文字
  3. 日本プロ野球育成選手統一契約書
  4. Google Map
  5. Bratisla Boysの「Stach stach」の歌詞
  6. ル・コルビジェの「サヴォア邸」
  7. 「シントミゴルフ」の音ロゴ

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05/02/2007

アソシエイト弁護士による蔵書の持ち帰りと貸与権侵害

 「「Theo(テオ)」のグランドオープン」というエントリーに対し、「大手法律事務所でも、図書室の本は誰でも(共有者であるパートナーはともかく、単なるアソシエイトでも)借りることができますが、そっちの貸与権との関係はどうなっているんでしょうか。」という質問が寄せられました。

 図書室の書籍を事務所外に持ち出すことができるシステムの場合、パートナー弁護士らで構成する共有者団ないし弁護士法人がアソシエイトに対して書籍を貸与したということになるのでしょう。これが「貸与権侵害」となるかは、このことにより著作物をその複製物の貸与により公衆に提供したといえるかにまず係ってきます(著作権法26条の3)。

 パートナー弁護士らないし弁護士法人にとってアソシエイト弁護士は「特定の者」にあたると言って差し支えないでしょう。ただし、著作権法上の「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれます(2条5項)。ここで問題が起こります。もちろん、「何人から『多数の者』にあたるのか」ということも問題です。それ以上に問題なのは、「多数の者」といえるだけの人数のアソシエイト弁護士が特定の書籍を借り受けられるようになっていたが、実際にその書籍を借りてそこに収録されている著作物を知覚した場合に、その著作物は公衆(≒「多数の者」)に提供されたといえるのか、ということです。というのも、著作権法はもともと、映画の著作物以外の著作物について、複製物の貸与を禁止することを予定としていなかったため、「貸与」が絡むと条文がどうしても整合性を失う傾向があるからです(何しろ、原作品又は少部数の複製物を公衆に貸与することで著作物を流布する場合は、貸与の誘因の過程で展示する等の特段の事情がない限り、4条を文理解釈すると、著作物は「公表」の要件を満たさないわけですから。)。

 仮に、「多数の者」といえるだけの人数のアソシエイト弁護士が特定の書籍を借り受けられるようになっていたときには「著作物をその複製物の貸与により公衆に提供した」といえるとした場合、弁護士法人等は、その貸与を営利目的で行ったといえるのかが問題となります(38条4項)。プロボノではない弁護士業務をアソシエイトに手伝わせる過程で必要な文献を読了させるために特定の書籍をアソシエイト弁護士に貸与する場合、弁護士法人等の側に営利目的がないということは厳しいのではないかという気がします。

 私のところのように、弁護士9名(うち2人は法科大学院の教授と助教授で、教育活動にほぼ専念)、司法書士1名、弁理士1名の事務所では、「公衆」要件を明らかに満たさないのでよいのですが、100人を超えるような大規模事務所では、アソシエイトに蔵書を貸し出しすることも法的なリスクを伴うことになるので、大変ですね。

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04/28/2007

時事の事件と歌詞の引用

 先日、北海道新聞の記者さんから、この記事の件で、電話でインタビューを受けました。正確に伝わったかわからないので、法的な面についてメモランダム的に書いてみることにします。

 まず、「歌詞」だからといって「引用」の対象にならないわけではありません。著作権法第32条の規定は、適法な引用の客体から「歌詞」を除外していないからです。加戸守行「著作権法逐条講義(三訂新版)」234頁には「報道の材料として著作物を引っ張ってくる場合」を、その引用が「公正な慣行に合致する場合」の例として掲げていますから、「報道の材料として」歌詞の一部を引用することはおそらく適法なのでしょう(たとえば、松本零士対槇原槇原敬之との間での「盗作騒動」の関係で報道各社は槇原さんの作詞した歌詞を普通に引用していたことは、記憶に新しいかと思います。)。

 また、著作権法41条は、

写真、映画、放送その他の方法によって時事の事件を報道する場合は、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴って利用することができる。

と定めています。加戸・前掲267頁は、「その他の方法には、新聞・雑誌における文章記事報道や有線放送におけるニュース報道などがございましょう」とありますから、大元の北海道新聞の記事報道がこれに当たることは明らかですが、そのウェブ版についても 、「有線放送におけるニュース報道」と似たようなものですから、「その他の方法」に含まれるというべきでしょう。

 この記事では、報道された「時事の事件」というのは幌南小学校の(最後の)入学式であって、「Tomorrow(トゥモロー)」という曲が歌われたということもこの「事件」を構成しているということができるように思います(北海道新聞の記者さんのお話を窺っている限りにおいては、その場面でそのような歌詞を含む曲が歌われたということ自体が、記事で伝えようとしていることとの関係で重要な意味を持つとのことでしたし。)。

 まあ、JASRACがそういう理論構成を認めないのはその職責上仕方がないとして(41条にあたるかどうかは異論のあり得る話ですし。)、JASRACと法廷闘争をしてでも戦わず、あっさり歌詞の引用部分をウェブ版では削除してしまった北海道新聞は情けないなあとは思ったりします。JASRAC との法廷闘争すら尻込みをする人たちが権力と戦う云々と大きなことを言ってみてもなあとの思いは拭い去れないのです。

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04/26/2007

新たなディープリンク違法論

 外国法共同事業ジョーンズ・デイ法律事務所編「Q&AでスッキリわかるIT社会の法律相談」(清文社・2007)148頁以下で、相変わらずのフレームリンク違法論が繰り広げられています。

 浅野絵里弁護士は同書の中で、

 フレームリンクにより、フレーム内に表示された他社ホームページの文書や画像については、リンク先のURLが表示されないことになり、リンク元である自社ホームページの文書であるという誤解を生じる可能性があります。画面上、リンク先の著作権表示がなされず、リンク元のURLや著作者のみが表示される場合には、氏名表示権(著19)を侵害するものと考えられます。

と述べておられるのですが、私が知る限り、URLがコンテンツの著作者の変名として一般に認識されているということはありません。従って、フレームリンクによりリンク先のURLを表示しないこととしたからといって氏名表示権侵害になるということは到底考えられないと言うべきでしょう。

 また、浅野弁護士は、

 画面上、自社ホームページ内部に他社ホームページがその一部であるかのように表示される形態となることは、他社ホームページの内容に変更、切除その他の改変を行ったものとして、同一性保持権(著20)を侵害することになると考えられます。
とも述べていますが、「他社ホームページ」の周辺に自社ホームページのフレームが表示されるにすぎないのに、 「他社ホームページの内容に変更、切除その他の改変を行った」ことになるという結論を説明抜きで押し切ってしまうのは凄いと言わざるを得ません。

 なお、浅野弁護士の凄さは、

 営業主体の誤認に関しては、たとえば他人のホームページのトップページではなく、そのホームページ内にある次の階層にある他ページ内の文書や画像に直接リンクをはる(いわゆるディープリンク)ことにより、そのページがリンク元の自社ホームページと営業主体の誤認混同を生じさせる場合、不正競争行為として問題が生ずることになります。
といっているところにも現れています。

 2007年に発行された書籍で「ディープリンク違法論」にお目にかかれるとは思っても見ませんでしたが、それ以上に、他社のコンテンツについて自社のものであるとの誤認を生じさせることを不正競争行為に含める見解があるというのも新鮮です。通常、不正競争行為としての誤認混同行為は、自社の商品又は営業を、他社の周知商標を用いて、当該他者の商品又は営業と誤認混同させることを指すのですが、浅野弁護士は逆のベクトルの誤認混同行為も不正競争行為に取り込むようです。いったい何号の不正競争行為なのでしょう。

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04/21/2007

カラオケ業者の不当利得?

 JASRACがカラオケスナック等に使用料相当金を突然がさっと請求した事案について裁判所の判決を見ると、ふと奇妙なことに気がつきます。不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求が一部時効消滅により却下されているのに、使用料相当金を不当利得としてそのJASRACへの返還をカラオケスナック等に命じている例が散見されるのです。

 不法行為に基づく損害賠償請求権は、加害者及び損害を知ったときから3年で時効消滅します。従って、JASRACの調査員がその店にカラオケ設備が備えられておりかつこれが客の用に供されていることを把握してから3年間が経過した後は、訴え提起の日から3年以上前の分については原則として時効消滅しているということになります(但し、時効期間経過前に裁判外で催告をしていた場合は、催告の日から6ヶ月以内に訴訟を提起した場合に限り、時効消滅を免れます。逆にいえば、訴えの提起の日から半年以内に内容証明郵便等で使用料相当金の支払いを催告していた場合には、その催告日の3年前以降の分については時効消滅していないということになります。)。

 これに対し、不当利得返還請求権は、債務者に不当利得が生じたときから10年で時効消滅します。だから、いくつかの下級審裁判例がそうしているように、これらカラオケスナック等(Y)がJASRAC(X)に無断でカラオケ業を営んだ場合にYに使用料相当の不当利得が発生しているとするならば、訴え提起の日から10年前以降の分についてなおも請求できるということになります。しかし、よく考えてみると、これはおかしな話です。

 XのYに対する不当利得返還請求権の要件事実は、

  1. Yに利得が発生したこと
  2. Xに損失が生じたこと
  3. 1.と2.との間に因果関係があること
  4. 1.〜3.につき法律上の原因がないこと
の4点です。

 では、YがXの許諾を得ることなしにカラオケスナックを営みその管理の下で客にXの管理著作物を歌唱させたことにより、XはXの定める著作物使用料相当の損失を被ったのでしょうか。

 まず、著作権法114条3項は「著作権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し、その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。」と規定しており、ここでいう「損害」は「賠償」の対象としての「損害」をいうことは明らかです。従って、不当利得返還請求(703条等)の対象となる「損失」の額について同項を適用して「みなし」を行うことはできません(704条後段の「損害」は「賠償」の対象ですから、これを賠償する義務の本質は不法行為であり、3年で時効消滅します。)。

 従って、XがYに対し不当利得の返還請求を行うためには、Yが営利目的でその管理の下で客に管理著作物を歌唱させたことによりXに実際に生じた「損失」の価額を具体的に主張立証しなければなりません。従来の下級審裁判例は、使用料(それも包括的利用許諾契約が締結された場合の月額使用料率!)相当の損失がXに生じたと漫然と認定してきたわけですが、上記Yの行為によりXの売上げ等は減少しませんし、XはYに対して使用料相当損害金を請求しうるわけですから、使用料相当の損失がXに生じたと見るのはおかしいのではないかと思います(損害賠償義務を不法行為者が任意に履行してこないことをもって「損失」と解して不当利得返還請求権を認めてしまうと、不法行為について短期消滅時効を特別に定めた趣旨が蔑ろになってしまいます。)。

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04/12/2007

コミックレンタルについてのインタビュー

 フジテレビ系のスーパーニュースから、コミックレンタルについての取材を受けました(利益相反で問題にならないように、永野商店の了解済みです。森進一問題の時は私は部外者だったので取材はお断りしましたが、コミックレンタルについては、私自身が、貸与権の書籍・雑誌への拡張を強く反対していたものですから、無碍に断りづらかったので、こちらの取材はお受けしました)。

 使ったとしても20秒程度だといわれていますし、実際に使われるかどうかはわかりませんが(スーパーニュースが放送される時間にテレビを見ることができる環境におかれることはないので)、まあ、長野翼アナから直接インタビューを受けたし(注1)、良いことにしておきましょう。

注1 女子アナについては、大学時代のサークルの後輩である下平さやかさん(私が5年生の時の1年生なので、彼女が1年生の時から直接知っているのです。)を陰ながら応援するに留めているのですが。

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「Theo(テオ)」のグランドオープン

 「 弁護士専用貸しオフィス「Theo(テオ)」をグランドオープン」とのことです。

 

「Theo(テオ)」は、2007年10月の、法科大学院を卒業し司法修習を終了した弁護士が大量に新規参入する時代を見据えて開始するサービスです。
とのことなのですが、家賃を払えるのでしょうか。司法修習を終了したばかりの弁護士って、中坊公平・元弁護士のように親御さんから優良な顧問先を回してもらえる等のごく恵まれた方を除くと、国選弁護とか当番弁護とかの報酬プラスα程度しか個人事件収入がないものなのですが。かといって、コクヨもトールも弁護士ではないので、事件斡旋をすると、弁護士法に違反してしまいますし。

 それはともかく、

会議室や法律書を集めた図書スペースを備えている他、来客者への対応や電話取次ぎ、ホームページ作成や事務補助など各種サービスも提供し、弁護士業務を強力にサポートします。
との点ですが、著作権侵害にあたるのではないかと人ごとながら心配してしまいます。

 図書スペースの蔵書を各弁護士の専用スペースへ一時的に持ち込むことを認めると、書籍の「貸与」とされる危険があります。この場合、「Theo」は図書スペースがあることを売りにして賃借人を集めていますので、この書籍の貸与は営利目的とされる可能性大です。

 かといって、図書スペースにコピー機を設置して入居弁護士にセルフサービスで必要部分をコピーさせるとなると、いわゆるカラオケ法理によって、コピー機の設置者であるコクヨが複製の主体とされる危険があります。この場合、複製の主体と複製物の使用の主体が異なるとして、私的使用目的の抗弁(著作権法30条1項)が成り立たない可能性があります。かといって、「Theo」は図書スペースが著作権法31条1項にいう「図書館その他の施設で政令で定めるもの」にあたらないことは明らかです。

 すると、許されていることは、この「図書スペース」内での書籍の閲覧のみを可能とすること及び入居弁護士が独自に複製機器(デジカメやハンディスキャナ等)を図書スペースに持ち込んで文献の必要部分をコピーすることくらいということになります。それはそれで結構不便そうです。

 漫画業界の主観的利益に配慮して書籍・雑誌をも貸与権の対象としてしまった著作権法の改正の弊害が、こんなところにも現れているといえそうです。

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04/11/2007

著作権法上の「複製」の要素としての「再製」

 昨日、東京弁護士会の東弁知的財産権法部会において、

「著作権法上の『複製』について
──夢は時間を……──
という題で講演をしてきました。せっかくなので、そのときのレジュメの一部をウェブ用にアレンジしたものをアップロードします。
  1. 「再製」とは、既存の表現等に依拠しつつ、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを作成することをいう(最判昭53.9.7民集32巻6号1145頁[ワン・レイニー・デイ・イン・トーキョー事件])。「複製」と「翻案」が峻別された現行法の下で、後段はしばしば、当該既存表現等と実質的同一性のあるものを作成することと言い換えられる。
  2. 「依拠」とは、表現等を作成するにあたって既存の表現等を利用する意思をいう。既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないとされる(前記・ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件最高裁判決)。
    •  「既存の著作物等の表現内容を認識していたこと」は「依拠」の要素に含まれるか(cf.東京高判平8.4.16判時1571号98頁〔悪妻物語事件〕)。
    •  先行作品の著作物性の有無、保護期間の経過の有無、著作権者等が誰であるのか等の認識や、後行作品の独自性の認識等(東京高判平14.9.6判タ1110号211頁〔記念樹事件〕)は、依拠性の有無には関係がない。
    •  既存の表現等の翻案物に基づいて新規の表現等を作成した場合に原作品に依拠したといえるかは問題
    •  依拠ありとするためには、意識的に既存の表現等を利用する意思があることを要するか、過去に知覚した表現等を無意識のうちに利用してしまった場合でもよいのか(cf.「My SWeet Lord」訴訟における「潜在意識の内における盗用」論)。
    •  作品を作成した後にこれと実質的に同一な表現を含む先行作品を知った場合に、さらに当該新作品を増製することは、先行作品中の表現に依拠したものといえるか。
  3.  依拠の存在は、複製権侵害の存在を主張する側に主張・立証責任があるが、直接これを立証することが困難な場合が少なくない。その場合、依拠の存在を推認させる間接事実を積み重ねることによって、依拠性の存在を立証する。
    •  既存表現等と新表現等とが偶然の一致とは思えないほどに酷似しているとの事実は、依拠の存在を推認させる間接事実となる(東京地判平4.11.25判タ832号199頁〔土産物用暖簾事件〕、東京地判平6.4.25判タ873号254頁[城と城下町事件]、東京地判平7.5.31判タ883号254頁[ぐうたら健康法事件]、前記記念樹事件高裁判決)。
    •  既存表現等にあった誤記・誤植(敢えて「罠」として埋め込まれたものを含む。)と同一の誤記・誤植が新表現等にも複数見られるという事実(東京地判平4.10.30判時1460号132号〔観光タクシータリフ事件〕、名古屋地判昭62.3,18判時1258号90頁〔用字苑事件〕)
    •  また、権利者の作品が公表された後程なくして類似した内容の作品が被疑侵害者により公表されたという例が繰り返されたという事実(東京地判平17.5.17〔通勤大学事件〕)。
    •  被疑侵害作品の作成に携わった者が既存作品に実際に触れ、または、触れる機会があったとの事実(但し、実際に触れたであろう蓋然性の肯定は、依拠を推定される力の大小に影響)。なお、「権利侵害者が『アクセス可能性の存在』を立証した場合には、被疑侵害者側が「アクセスしなかったこと」を主張立証する責任を負う」との見解は、「ウェブ上にアップロードされている全ての表現について、インターネット端末を操作しうる全ての人にアクセス可能性はあるが、ウェブ上にアップロードされている各表現について、インターネット端末を操作しうる特定の人がこれにアクセスした可能性は決して高くない」現実に適合していないのではないか。
    •  既存表現等の創作者等の署名・落款印と類似する署名・落款印が新たな表現等に用いられているという事実(大阪高判平9.5.28知裁集29巻4号481頁[エルミア・ド・ホーリィ贋作事件])。
    •  侵害被疑者が新表現等を独自に作成できるだけの能力を有していなかったとの事実。
  4. 「再製」といえるためには、既存の表現等と実質的同一性のあるものを作成すれば足り、多少の修正、増減、変更がなされてもよい(東京地判平15.2.26判タ1140号259頁[池田大作肖像ビラ事件]、大阪地判平8.1.31判タ911号207頁[エルミア・ド・ホーリィ贋作事件])。
    •  著作物については、既存の著作物に創作的要素が加えられた場合には、著作物としての実質的同一性を失うとされることが多い(橋本英史「著作物の複製と翻案について」379頁)。実演やレコードのように「翻案権」が法定されていないものについても同様に考えるべきか。
    •  プログラムの著作物の場合は、既存のプログラムの変数名だけを変更した場合のように、実質的同一性の範囲を狭く解すべきとする見解もある(藤原宏高=平出晋一「プログラマのための最新著作権法入門」109頁)。また、翻訳文については、原文に忠実な原翻訳文と、読みやすさを優先させた翻訳文との間には実質的同一性はない(東京高判平4.9.24判時1452号113頁[サンジェルマン殺人狂騒曲事件])。
    •  先行作品の一部分を複製した場合に当該作品全体について複製権侵害が成立するとするのか、当該部分の複製が行われたと解するか(二重起訴禁止の原則や既判力の範囲との関係で差異が生じうる。)。
    •  他方、既存の著作物の全体を新たな表現等の中に利用した場合であっても、一般人が通常の注意力を持って新表現等を見た場合に、既存著作物の本質的な特徴(例えば、「書」であれば、文字及び書体の選択、文字の形、太細、方向、大きさ、全体の配置と構成、墨の濃淡と潤渇(にじみ、かすれを含む。)などの表現形式を通じて、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢い等)を直接感得することが困難である場合には、新表現等において既存著作物は再製されたとはいえない(東京高判平14.2.18判時1786号136頁[照明器具用宣伝カタログ事件])。

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04/04/2007

焼きおにぎり茶漬けの製法

 某所から請け負った原稿の関係で、料理のレシピの特許法による保護の可能性を考えているのですが、料理については、意外なほど特許申請が多くなされているのですね。

 例えば、「焼きおにぎり茶漬けの製法」と題する特開2001−352922は、

白胡麻を磨り潰し、これに白味噌を混ぜ合わせて団子状とし、炊飯の中に前記白味噌の団子状のものを1個入れて丸いおにぎりを作り、このおにぎりの周囲をこんがり焼いて焼きおにぎりとする。別に、昆布と鰹だし、醤油、みりん及び/又は酒、食塩をまぜた汁を用意し、通常のお吸い物程度の味付けとし、前記焼きおにぎりを器に入れて、これに、汁を適量かけ、その後焼きおにぎりにみじんぎりにしたみつ葉と、しその葉とを載せ、焼きおにぎりの白味噌がとけるまで攪拌することを特徴とする焼きおにぎり茶漬けの製法
ということを請求項としています。

 この特許発明については、特許公開まではなされましたが、そこから先には進んでいないようなので、我々は当面居酒屋で焼きおにぎり茶漬けを食べることができそうです。しかし、いざ審査請求がされた場合を考えると、「2001年の段階でおにぎり茶漬けって既にお店に出ていたかなあ」とかちょっと迷ってしまいます。

 それはともかく、この種の特許発明については、特許公開まで行き着いているものは膨大にあるのですが、特許登録に至っているものがなかなか見あたらないので、どの程度のものであれば進歩性が認められるのかと言うことが今ひとつわからないのです。

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03/30/2007

槙原さん対松本さん

 ゲームラボでの連載記事では、槙原さん対松本さんの裁判をテーマに取り上げてみることにしました。

 ある意味、同一ジャンル&類似表現型の著作権侵害訴訟において検討すべき要素がここに詰まっていると思ったからです。

 まだ初稿段階ですが、近々ご覧いただけるようになるかと思いますので、興味がおありの方は、多少周りの目が気になるかも知れませんが、ゲームラボをお手にお取り頂けると幸いです。

Posted by H_Ogura at 06:52 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/29/2007

JPRSはなぜ自社の処理方針を明らかにできないのか。

 日本知的財産権仲裁センターに「ドメイン名の登録を移転せよ」との裁定を下された方から依頼を受けて、ドメイン訴訟を提起することになりました。

 「mp3.co.jp」のときの経験を生かして、請求の趣旨は、「不正競争防止法3条1項に基づくドメイン名の差止請求権がないことの確認」で行こうと思ったのですが、登録の抹消を命ずる裁定と移転を命ずる裁定とで、これを覆すために必要な主文が異なると困るので、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)に電話をして、確認をとろうとしました。

 しかし、JPRSの担当者は、答えられないの一点張りです。私としても、「ドメイン訴訟で勝訴したのに、主文がJPRSのお眼鏡にかなわなかったために、ドメイン名の登録が移転させられてしまった」ということになると弁護過誤ともなりかねないので、「○○」という主文で判決が確定したらJPRSはドメイン名の登録移転を行わないこととしてくれるのですか?と確認しているのですが、「裁判所の判決が確定したらそれを見て判断する」の一点張りです。

 「mp3.co.jp」のときは前例がなかったから多少のことには目をつぶったのですが、現段階で、「どのような訴訟物の、あるいはどのような主文の判決が登録者側勝訴で確定したら、ドメイン登録の抹消または移転を命ずる仲裁センターの裁定を取り消すのか」についてJPRS内で基準作りをしていないとしたら、職務怠慢と言うより外にありません。裁定後のドメイン訴訟は、認容されたもの、されなかったもの含めて、何件も既に提起されているのですから、それらの訴訟物及び請求の趣旨のパターンを抽出して、それぞれについて、(登録者が勝訴したときに)仲裁センターの裁定を覆す効果をJPRSとして認めるかどうかを事前に明らかにしておけばよいだけの話です。それがJPRSにできない理由はないし、逆に、それはJPRSにしかできません。

Posted by H_Ogura at 01:41 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

03/27/2007

合併と著作者人格権

 先日出席した某研究会での議論によれば、企業合併にあたって、合併前に成立した法人著作物(吸収合併の場合、消滅会社の法人著作物)について、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」(著作権法60条)の差止めを求める権利を、合併後の会社は有しないということになるらしいです(同116条の反対解釈)。確かに、現行著作権法の解釈としては、それが一番素直です。

 もちろん、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」を犯した場合の刑事罰(同120条)は親告罪ではない(同123条1項参照)ので、そのような行為を行っているものについて合併後の会社が刑事告発をして処罰してもらうことはできるわけですが、民事的に何とかしようということはできないということです。

 パラメータデータの改変ツール等を著作者人格権(同一性保持権)で押さえつけてきたゲーム会社にとって、企業合併というのは痛し痒しなのだなあと思った次第です。

Posted by H_Ogura at 07:10 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

03/24/2007

「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集

「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集に対して、下記のような意見を投稿してみました。


第4章 コンテンツをいかした文化創造国家づくり

I.世界トップクラスのコンテンツ大国を実現する

1.ユーザー大国を実現する

a. インターネット放送や衛星放送等の新技術を活用することで、日本中のどこにいても日本中のどこかで放送されているテレビを視聴できるようにする。

 現在の日本では、ローカルテレビ局のほとんどは、申し訳程度にしか独自番組を製作・放送しておらず、その放送するテレビ番組の大半は、東京キー局が製作したテレビ番組の再送信または再放送である。これは、テレビ局、とりわけローカルテレビ局が総務省による規制により守られているからである。しかし、この保護政策によって、国民は次のような損失を被っている。

 1つは、東京キー局が製作した特定のテレビ番組を視聴したくとも、地元のローカルテレビ局がこれを再送信してくれなければ、これを視聴することができないということである。特に、地元ローカルテレビ局が5局に満たない地域では、必然的に東京キー局が製作した特定のテレビ番組を視聴できないこととなり、東京圏の住民との間にいわゆる情報格差ないし文化格差を生ずることになる。

 2つは、ローカルテレビ局は、東京キー局が製作したテレビ番組を再送信するだけで莫大な広告収入が得られ従業員は楽して高給を得ることができること、並びに、東京キー局及び関西ローカル局以外は放送域内の人口が極めて少なく、ローカルテレビ局が独自に番組を製作して放送をしても、さほどの視聴者数を見込むことができず、それゆえ広告収入もさして期待できないことなどから、優れた独自番組を製作していこうというインセンティブが萎えているということである。

b.商業用レコードの音楽配信について強制許諾制度を設ける。

 特定の地域に住んでいて特定の端末を利用しているユーザーに向けて既に音楽配信されている楽曲は、どこに住んでいてどんな端末を利用しているユーザーもこれをダウンロードし再生して視聴できるようにすることが望ましい。そのための手段として、欧州では、iTunes Storeで配信された楽曲をiPod以外の端末でも再生できるようにするようにApple社に義務づけようとする動きがある。しかし、この政策を日本に取り入れても、効果は薄い。なぜなら、レコード会社が出資している一部の音楽配信業者に対しては配信が許可されているがiTunes Storeには配信が許可されていない楽曲が少なくないこと、iTune Storeにしても日本国内在住者に対する配信は許諾されていない楽曲が少なくないなどの事情があるからである。

 したがって、上記政策を実現するためには、特定の地域(日本国外を含む。)に住んでいて特定の端末を利用しているユーザーに向けて既に音楽配信されている楽曲については、一定のプロモーション期間(数ヶ月程度)については猶予を認めるとしても、一定のDRMを使用している配信業者からの申立てにより、既存の配信許諾契約と同様の対価での許諾を強制する制度を設けるべきである。

2.クリエーター大国を実現する

(1)クリエーターが適正なリターンを得られるようにする

①契約慣行の改善や透明化に向けた取組を奨励・支援する

a.テレビ局又はその関連会社である音楽出版社がタイアップ楽曲の音楽著作権を所有ないし共有することを、優越的な地位の濫用として禁止する。

 ドラマ等のタイアップ楽曲は相応のヒットが見込めるため、テレビ局は、タイアップ楽曲を定めるに際して、その楽曲の音楽著作権を自社の関連会社である音楽出版社に所有ないし共有させることを求めることが少なくない(これによりタイアップ楽曲がヒットした場合には、その収益の一部をテレビ局のグループ会社に帰属させるのである。)。しかし、テレビ局が有する「タイアップによる楽曲の売り上げ増大機能」は、テレビ局が免許制の下で厳しい競争を免れていることに大きく負っているのであるから、それを本業以外の収入の増大に活用することは、免許制のおかげでテレビ局が取得した優越的な地位の濫用と言うべきである。

(4)利用とのバランスに留意しつつ適正な保護を行う

①国内制度を整備する

a.パロディとしての使用等、諸外国で認められている権利制限規定を日本の著作権法にも積極的に導入する。

b.商業用レコードに収録された音楽著作物の実演の複製ないし自動公衆送信のように、複数の権利者の許諾を得ることが義務づけられている場合に、当該利用を許諾を行うことについて他の権利者から同意を求められたときには、正当な理由がない限り、これを拒むことができない旨の規定を創設する。

c.他人による著作権侵害に関与した者が民事上又は刑事上の責任を負う場合及び負わない場合を明確化する。

 Winny事件でその開発者が著作権侵害の幇助犯として有罪判決を受けたことで、ソフトウェア開発者の間には不安の声が渦巻いている。また、いわゆる「カラオケ法理」の止まることを知らない拡大解釈が裁判所により行われることにより、知的財産権に関して専門的な知識を有する弁護士もまた、IT事業者からの相談に対して、どうすれば著作権侵害を行ったとして事業の中断を迫られ又は莫大な賠償金の支払いを余儀なくされることなく新規事業を立ち上げることができるのか、確実なアドバイスをできない状況下にある。著作権法が新規ビジネスを不当に萎縮させないようにするためには、他人による著作権侵害に関与した者が民事上又は刑事上の責任を負う場合及び負わない場合を立法により明確化することが必要である。

d.一部の権利者が正当な理由なく利用許諾を拒むばかりにコンテンツの再利用が阻まれるというのは文化の発展という著作権法の究極目的に反する。従って、許諾権を有する権利者が複数いる場合に、著作権が複数人に共有されている場合に関する著作権法65条3項と同様の規定を設けるべきである。

②国際的な著作権制度の調和を推進する

a.著作権の保護期間が長すぎることにより著作物の再利用が困難となっている現状に鑑み、著作権の保護期間の最低限を短縮するように、ベルヌ条約加盟国に働きかける。

3.ビジネス大国を実現する

(2)コンテンツを輸出する

③コンテンツ関係情報提供のためのポータルサイトを創設する。

a.国内アーティストに関する商業用レコードについて作成されたプロモーションビデオを網羅的にストリーミング配信するサイトを創設する。

 プロモーションビデオというのはその楽曲のCD等の売り上げを増大させるために製作され、公開されるものである。従って、日本国外に音楽コンテンツを輸出するに際しては、日本国外の音楽ファンに、日本のアーティストの楽曲に係るプロモーションビデオを視聴させることが有益である。なお、プロモーションビデオのネット配信については、JASRAC等の音楽著作権管理団体等がこれに対してもライセンス料の徴収を行うため日本国内ではあまり普及していないが、プロモーションビデオが公開されることで音楽CD等の売り上げが増加すれば音楽著作権収入の増加を見込めるのであるから、JASRAC等は、レコード製作者から許諾を受けたプロモーションビデオのストリーミング配信に関してはライセンス料の徴収を控えるべきである。

b.日本のポピュラーミュージックを専門的に流すインターネットラジオ放送局を創設する。

 海外の音楽ファンに日本の音楽コンテンツを購入してもらうためには、プッシュ型のメディアでも日本の音楽コンテンツを流すことが有益である。インターネットラジオであれば、流している楽曲の曲名とアーティスト名が端末ソフト上に表示することが可能であるから、未知の楽曲をインターネットラジオで聞いて気に入ったら、楽曲名とアーティスト名を頼りに、インターネット通販でCDを取り寄せたり、音楽配信サービスで楽曲を購入したりすることが可能である。

Posted by H_Ogura at 07:44 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (2) | TrackBack (0)

03/16/2007

著作権の保護期間延長問題は人格権とは関係ない

 著作権の保護期間の延長問題で、しばしば誤解されている点が1つあります。著作権の保護期間が経過すると著作者人格権まで消滅すると思われている節がどうもあります。

 例えば、ITmediaに掲載されていた三田さんの発言ですが、

 著作者の意志を尊重し、著作物の同一性を守るために延長が必要という意見もある。「孫子のために財産を残したい、という訳ではない。これは著作物の人格権を守るための議論だ。例えば谷崎潤一郎の保護期間がもうすぐ切れる。切れてしまえば、谷崎の作品を書き換えてネットで発表するようなファンが出てくるだろう。もっとエロくしようとか、もっと暴力的にしようとか。文学はWikipediaではない。書き換えられては困る」(三田さん)
法律的にいえば、著作物の同一性を守るためということであれば、著作権の保護期間の延長というのは全くの意味がありません。

 まず、著作者人格権は、他の人格権と同様に、一身専属権なので、相続の対象となりません。著作者の死亡と同時に消滅します。では、著作者が死亡した後であればその著作物に対して何をしても良いのかというとそうではなく、著作権法60条は、

著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。
と定め、「その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合」でない限り、「もっとエロくしようとか、もっと暴力的にしようとか。」ということは、著作権の保護期間とは無関係に禁止されます(もっとも、「もっとエロくすることが谷崎の「意を害する」(「意に反する」ではありません。)といえるのかは難しいところですが。)。

 実際、著作権法116条1項は、

著作者又は実演家の死後においては、その遺族(死亡した著作者又は実演家の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者又は実演家について第60条又は第101条の3の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第百十二条の請求を、故意又は過失により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為又は第六十条若しくは第百一条の三の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。
と定めており、著作権の保護期間が経過したか否かにかかわらず、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」を差し止める権限を、その著作者の遺族(但し、孫まで)に与えています。

 また、著作権法120条は、

第60条又は第101条の3の規定に違反した者は、500万円以下の罰金に処する。
としており、著作者人格権侵害の場合の法定刑(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科)よりは軽いものの、著作権の保護期間が経過したか否かにかかわらず、「著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為」はいつまでも刑罰の対象となり続けるのです(しかも、この場合は、親告罪ではないので、遺族等の告訴は不要です。)。

 立法提言を行うにあたっては、現行法の正しい知識が必要かと思います。

Posted by H_Ogura at 01:23 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (3) | TrackBack (0)

03/12/2007

Winny事件の判決文

 Winny事件の判決文が、判例タイムズの2007年3月15日号に掲載されています。

Posted by H_Ogura at 02:09 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (0) | TrackBack (0)

03/11/2007

著作権法の問題でないとするとなおさら問題だ

 wikipediaの記載を前提に話を進める(だって、「演歌」って私が好んで聴くジャンルではありませんから)と、「おふくろさん」がリリースされたのは1971年とのことですから、森進一さんが「30年以上前から」例の「語り」を付けて唄っていたのだとすると、「おふくろさん」のリリースから程なくして「語り」が付けられていたということになります。で、森進一さんのナベプロからの独立が1979年ということですから、この「語り」はおそらくナベプロ在籍時代に作られたのではないかと考えられます。「1973年、最愛の母親が50代を目前にして自殺」とのことですから、事務所がその辺を配慮して「森進一の『おふくろさん』」にしてあげたのかも知れません。

 それはともかくとして、この騒動は著作権法の問題ではないのだとする方々がおられるようです。だとすると、むしろ由々しき事態です。日本は未だに、「大御所」が「あいつには俺の歌は歌わせない」と公言すると、法的な根拠もないのに、そのとおりになってしまう後進的な社会だということになってしまうからです。法的には森進一が「おふくろさん」を唄うことを禁止する権限がないのに「あいつには唄わせるな」とJASRAC等に要求するなどというのは、「一本筋の通った」方のやることではありません(これに対するJASRACの対応も筋が通っていませんが。)。テレビ局の法務スタッフの方々は、まねきTVのような現代型サービスを潰すことにエネルギーを費やすより、芸能界のこの種の前近代的風習を潰すことにエネルギーを費やす方が、その本来の任務なのではないかという気がしてなりません。。

Posted by H_Ogura at 07:48 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (5) | TrackBack (1)

03/09/2007

「語り」を加えることは悪なのか

 「おふくろさん」騒動ではどうも森進一さんが悪者にされているようですが、語りの部分は、保富庚午さんが作詞をし、「おふくろさん」の作曲者である猪俣公章さん自身が作曲しているのだから、普通に考えれば、「おふくろさん」の前に「語り」をいれるというのは事務所の意向だったのだろうなと思います。だから、森進一としては、当然法的な問題はないと思っていたのだと思います。といいますか、猪俣さんがご存命のころには、川内さんも何の抗議もしていなかったわけですから、森進一さんが「何を今更」と考えたとしても不思議はありません。

 実際、「語り」の部分を加えるなんて普通に行われている話なので、芸能マスコミのインタビューに応じて「語りを加えるのはいけないこと」である前提で語っている歌手の方々とかは自分で自分の首を絞めているのではないかという気がしてなりません。John Lennonは「Rock 'n' Roll」を収録するにあたって「Just Because」の前後に「語り」を加えたわけですが、だからといって、Lloyd Priceは「Rock 'n' Roll」の発行等の差止めなんか要求しないわけですし。といいますか、実演家って、作詞家・作曲家が作った音楽著作物を何の解釈もせず楽譜通りに唄う存在ではないわけですから、ある程度のアレンジはそもそも許されるのだと解するしかないのではないかと思ったりはします。作詞家・作曲家が楽譜を印刷して発行しただけでは大して売れそうにない大衆歌謡では、実演家の裁量の幅は相当に大きいのだといわざるを得ないのではないかと思うのです。

 「汝、現場で歌詞やメロディをアレンジしたことのない者のみが石を投げよ」といわれて石を投げられる非シンガーソングライター系歌手がどれほどいることやら。

Posted by H_Ogura at 09:15 AM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (6) | TrackBack (1)

03/05/2007

「森進一にだけ唄わせるな」というのは無理

 歌手、森進一(59)が代表作「おふくろさん」のイントロ前に無断でせりふを足していた問題で、作詞家の川内康範氏(87)が4日までに、楽曲の著作権を管理するJASRAC(日本音楽著作権協会)に、森が川内氏の作品を歌唱できなくするよう訴えていたことが分かった。
とのニュースが報じられています。

 しかし、今日JASRACは、演奏権に関していえば、奏者との間で個別の演奏ごとに許諾契約を締結するという方式ではなく、放送局や会場経営者との間で包括的利用許諾契約を締結するという方式を多用している以上、既に包括的利用許諾を締結済みのコンサートホール等に対して「森進一に『おふくろさん』を歌唱させるな」という要求は法的にはできそうにありません。

 今後のことにしても、JASRACが「場」に対する「包括的利用許諾」という枠組みを放棄しない限り、「森進一」という個人に限定して「おふくろさん」という特定の管理著作物の歌唱を許諾しないということはできそうにないのですが、如何に川内康範先生が大御所とはいえ、川内康範先生のために、JASRACが長年苦労して築きあげてきた収入安定化のための手法を放棄するとは考えにくいところです(「要求をのまなければ自分の作品を全部引き揚げるぞ」と要求されても、JASRACとしては飲めない相談ではないかという気がします。)。

 川内康範先生がどうしても「おふくろさん」を森進一に唄わせたくないのであれば、「おふくろさん」をJASRACの管理著作物から外してもらうか、川内先生自身が著作者として、「心の卑しい森進一が『おふくろさん』を唄うことは、『おふくろさん』の作詞家である自分の名誉または声望を害する方法での利用にあたる」として差止請求を起こすしかないのではないかと思うのですが、ではそうすることで川内先生の要求が法的に認められる可能性がどの程度あるのかといえば、あまり無いかなあとは思います。

Posted by H_Ogura at 07:48 PM dans sur la propriètè intellectualle | | Commentaires (3) | TrackBack (2)

優先すべき統一性

 ネット上ではJASRACを「悪の魔王」かのごとくネガティブに評価する見解が一定の支持を集めているようですが、おそらくそれは的を射ていないのでしょう。管理著作物を無料で利用している人や企業を見つけてはそれらの者から使用料ないし賠償金を徴収するのは彼らの本来的業務の一つだし、そこではでくるだけ広範囲にできるだけ高額の使用料等を徴収することが求められているからです。また、既存のコンテンツをネットで利用する際にむしろ障壁となるのは、JASRACではなく、レコード会社やテレビ局などの隣接権者であるというのがネットビジネスを弁護士としてサポートしてきた私の正直な感想です。

 また、裁判に関していえば、音楽著作物の利用に間接的に関与するに過ぎない者に対して訴訟や仮処分を申し立てるJASRACが悪いというよりは、そのような訴訟等が提起された場合に、既存の法理論や裁判例を乗り越えてこれを認容してしまう裁判所に問題があるというべきでしょう。

 例えば、大阪地判平成6年4月12日判タ879号279頁は、

弁護人は、カラオケの伴奏部分は適法とされているにもかかわらず、客等の歌唱の部分のみを取り上げて演奏権を侵害するというのは、犯罪構成要件明確性の原則、類推解釈禁止の原則を唱った罪刑法定主義に違反する旨主張するが、カラオケ伴奏自体はやはり歌唱に対して付随的役割を有するにすぎないとみざるを得ず、カラオケ店における客によるカラオケを伴奏とする歌唱が、店の経営者による演奏権の侵害になるという結論自体は前記の判例等から確定的であるといってよい。然るに、民事上は演奏権の侵害とされるのは仕方がないとしても、刑事上は罪刑法定主義の観点から演奏権の侵害にはならないかの如き解釈は、演奏権の概念を徒らに混乱させるものであって、到底採り得ない。演奏権の概念自体は民事上、刑事上を問わず一義的に明確であるべきものであり、また同一内容のものとしてとらえるべきものと解する。
と判示しています。しかし、最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁[クラブキャッツアイ事件]は、
けだし、客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法二二条参照)は明らかであり、客のみが歌唱する場合でも、客は、上告人らと無関係に歌唱しているわけではなく、上告人らの従業員による歌唱の勧誘、上告人らの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、上告人らの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、上告人らの管理のもとに歌唱しているものと解され、他方、上告人らは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図つて営業上の利益を増大させることを意図したというべきであつて、前記のような客による歌唱も、著作権法上の規律の観点からは上告人らによる歌唱と同視しうるものであるからである。
と判示しているのであり、この「同視しうる」から演奏権侵害の主体とみなしてかまわないのだという民事的な論理を刑事法にそのままスライドさせて「同視しうるから著作権侵害罪の正犯とみなし