12/10/2017

零からの憲法草案(3)

 人権については、何回かに分けて考えていきましょう。

 日本国憲法において「国民の権利」として規定されているものの中には、主権者たる国民の一員としての権利と、人間であることにより当然に認められるべき権利とが混在しています。ゼロベースで憲法草案を起草するのであれば、国籍等によらずに全ての人が享有できる権利(基本的人権)と主権者たる国民の一員としての権利(国民の権利)とを分けて規定した方が良いように思います。

 そうすると、何を基本的人権とし、何を国民の権利とするのかの切り分けをする必要があります。人格権を基本的人権とするべきことはほぼ異論はないと思います。公務就任権については色々な考え方があるとは思いますが、公務員は全て主権者たる国民の委託を受けて国民のために権力を行使するに過ぎない存在だと考えれば、公務就任権を主権者たる国民の一員としての権利と位置づける必要はないと言えます。特定の公務を委託するのにもっとも有能な人材がたまたま日本国籍を有していない場合に、これを排除するのは合理的ではないと言えます。もっとも、外国で公務に従事している人が同時に日本で公務に従事するとなると利益相反となる危険がありますので、そのような方については例外的に公務に就任する資格がないことにするのが適切ではないかと思います。

第2編 基本的人権
(基本的人権の享有主体)
第13条 この編に定める権利(以下、「基本的人権」という。)は、国籍の有無にかかわらず、全ての人がこれを享有する。
(基本的人権の限界)
第14条 基本的人権は、この憲法に特に定めがある場合の他、他の人の基本的人権との調整のためやむを得ない場合に限り、一定の制約を受ける。
(個人としての尊重)
第15条 全ての人は、個人として尊重され、その人格を貶められない。
2 全ての自然人は、その自律的な判断に基づき、その幸福を追求する権利を有する。
3 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。また、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
(法の下の平等)
第16条 全ての人は、法の下に平等であって、人種、民族、信条、性別、性的指向、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。
(公務就任権)
第17条 全ての成人は、その能力に応じて公務員に就任し、または選挙により公務員に選任される資格を有する。ただし、外国(国際機関を含まない。)において公務に従事しまたは従事していた者についてはこの限りではない。

04/10/2017

零からの憲法草案(2)

 まずは、国民主権の原則と、主権者たる国民に関するルール、そして主権者たる国民の象徴に関するルールを第1編で規定してみることにしましょう。

 現行憲法の問題点の一つとして、主権者たる国民の範囲を、国会が法律によりコントロールできるということがあります。なので、国民たる資格(国籍)を当然に取得できる要件については、憲法で定めることとした方が良いでしょう。

 主権者たる国民の象徴として一定の儀式を担当する役職を、世襲によるものとするべきか、選挙で選ぶべきかについては、様々な議論があると思いますが、それって憲法で一義的に定める必要があるかと言えば疑問なので、デフォルトでは、昭和天皇の子孫が世襲できることとしつつ、その仕組みを国民投票で変えられるようにしてみました。なお、現行憲法の問題点の一つとして、皇位継承権者が全くいなくなったときにどうしようもなくなると言うことがありますので、その場合には、さっさと大統領を選んでしまえるようにしてみました。

 また、現行憲法では、天皇の国事行為は全て内閣の助言と承認に基づいて行うことになっているのですが、どうせ自由裁量の余地はないのですから、それぞれの機関ないしその長が指名なり指示をすればいいということにしました。

 なお、「国会の指名に基づいて、最高裁判所の裁判官及び最高裁判所の長たる裁判官を任命すること」としてあるのは、最高裁の裁判官については、国会承認人事にすべきではないかと考えているからです。

 また、天皇や皇族にも基本的人権があるという考えに立った場合、これを制約する根拠が憲法上に規定されている必要があります。移動の自由、職業選択の自由、営業の自由、政治活動の自由、政治的表現の自由は、象徴としての職務との関係では、制約をされざるを得ないかなと思いました。

第1編 主権
第1章 国民主権
(国民主権)
第1条 日本国の主権は、国民に帰属する。
(権力の信託)
第2条 主権者たる国民は、公共の福祉を増進させるために、この憲法に定める限度で、各国家機関に権力の行使を委託する。
2 主権者たる国民は、地域の自律的な発展を促すために、この憲法に定める限度において、各地方自治体に、当該地域における権力の行使を委託する。
第2章 国民
(国籍の取得)
第3条 出生時において父母の双方またはいずれか一方が日本国籍を有していた者は、当然に日本国籍を取得する。
2 出生時において父母の双方またはいずれか一方が適法な在留権限をもって日本国内に居住していた者は、その当時父母の双方が日本国籍を有していなかった場合であっても、当然に日本国籍を取得する。
3 出生後に生じた事由により日本国籍を取得するための要件は、法律で定める。
(国籍の喪失)
第4条 何人も、その自由意思に基づき、日本国籍を放棄することができる。
2 国民が国籍を放棄するための要件は、法律で定める。
3 何人も、その意思に反して、日本国籍を剥奪されない。ただし、日本国籍を有する者が、その自由意思に基づいて他国の国籍を取得した場合は、この限りではない。
(多重国籍)
第5条 日本国籍を有する者は、他国の国籍を併有することを理由として、法的に不利に取り扱われない。
(有権者団としての国民の権利)
第6条 満18歳以上の国民は、この憲法または法律にて定める選挙および国民投票において、等しく票を投ずる権利を有する。
第3章 主権者たる国民の象徴
(天皇)
第7条 天皇は、主権者たる国民の象徴として、国民のために、この憲法に定める限度において、儀礼的な行為を行う。
2 天皇の地位は、昭和天皇の子孫により世襲される。その継承順位は、法律で定める。
3 天皇は、その職務の一部を、天皇の地位の継承順位の定まっている者に分担させることができる。
(大統領)
第8条 天皇の地位を継承する者が存しなくなった場合または国民投票により天皇を主権者たる国民の象徴としない旨を決定した場合、選挙にて選ばれた大統領が、主権者たる国民の象徴として、国民のために、この憲法に定める限度において、儀礼的な行為を行う。
2 大統領の任期は、5年とする。
3 大統領を選ぶ選挙は、最高裁判所長官がこれを施行する。
(摂政等)
第9条 最高裁判所長官は、天皇がその職務を怠り、または職務を行えなくなったときは、職務を行える者の中で最も天皇の地位の継承順位の高いものを摂政に選任し、天皇の職務を代行させることができる。摂政がその職務を怠り、または職務を行えなくなったときも同様とする。
2 最高裁判所長官は、大統領がその職務を怠り、または職務を行えなくなったときは、大統領を解任し、新たな大統領を選ぶ選挙を行うことができる。この場合、新たな大統領が選任されるまでの間、大統領の職務は、最高裁判所長官が代行する。
(象徴の職務)
第10条 天皇ないし大統領が、主権者たる国民の象徴として行う職務は下記のとおりである。
一 国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命すること。
二 国会の指名に基づいて、最高裁判所の裁判官及び最高裁判所の長たる裁判官を任命すること。
三 衆参両院議長の指示に基づいて、法律及び条約を公布すること。
四 衆議院議長の指示に基づいて、衆議院を解散すること。
五 選挙を行う議院の議長の指示に基づいて、衆議院または参議院の議員の選挙の施行を公示すること。
六 内閣総理大臣の指示に基づいて、国務大臣を任免すること。
七 内閣総理大臣の指示に基づいて、政令を公布すること。
八 内閣総理大臣の指示に基づいて、法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
九 内閣総理大臣の指示に基づいて、批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
十 内閣総理大臣の指示に基づいて、外国の大使及び公使を接受すること。
十一 内閣総理大臣の指示に基づいて、儀式を行うこと。
(人権等の制限)
第11条 天皇または大統領は、内閣総理大臣の指定する居宅に居住し、宿泊を伴う移動をする場合内閣総理大臣の同意を得なければならない。
2 天皇および天皇であった者、天皇の地位の継承順位の定まっている者、大統領、大統領であった者ならびにそれらの者の配偶者は、その職務を行うのに必要な限度においてこの憲法に定められた諸権利を制約されるとともに、以下の権利を制約される。
一 この憲法に定める選挙および国民投票において投票する権利
二 他の公務員に就任する権利
三 政治的に中立的な学術的または公益的団体として法律に定めるものを除く団体の役員または構成員、従業員となる権利
四 その他政治的中立性を欠くものとして法律で定める行為をする権利
(天皇等の報酬)
第12条 天皇または大統領は、その就任期間中、法律で定める額の報酬を国庫から受ける権利を有する。
2 天皇または大統領であった者、ならびに天皇の地位の継承順位の定まっている者は、その地位に相応しい生活をするに十分な金銭給付として法律で定める額を国庫から受ける権利を有する。

(続く)

零からの憲法草案(1)

 現在の政治情勢を見るに、日本国憲法はもはや風前の灯火のようです。

 早かれ遅かれ、右派の側から、為政者目線での憲法改正案が提示され、発議に回されることでしょう。

 それに反対だけしていると守旧派だ何だと罵られるだけに終わることは目に見えています。失敗が目に見えていた平成の司法改革論議で、司法試験合格者の大幅増員論やロースクール構想に反対したときも同じように罵られましたから。

 なので、逆に、庶民目線での憲法案を一から作ってみることにしましょう。

 まずは、全体の構成から考えていきましょう。

 国家権力の正当化根拠をどこに置くのかということから、いろいろな見解がありうると思います。ここでは、「主権者たる国民が、その権利や利益を守るために、強制力を有する組織体としての国家との間で、憲法という名の社会契約を締結した」ことに国家権力の正当化根拠を置いてみることにしましょう。すると、まず、主権者が国民に帰属することの宣言ならびにここでいう「国民」の範囲に関する規定が冒頭に置かれるのが素直です。

 もっとも、主権者たる国民というのは、可視的な実体が存在しませんので、投票行動を通じて「主権者たる国民」の意思を擬似的に可視化する存在としての「有権者団」と、儀式を通じて「主権者たる国民」の意思を擬似的に可視化する存在としての「象徴」を置くことは合理的です。したがって、有権者団と象徴に関する規定を前の方に置くことは合理的と言えそうです。

 この次に人権に関する規定を置くか、統治機構に関する規定を置くかは、起草者の趣味の問題でしょう。国家に委ねる権力の内容及び範囲を「人権」という形で示すのだと考えれば、統治機構に関する規定の前に人権に関する規定を置くことも十分に合理的です。

 統治機構に関する規定の後には、地方自治に関する規定を置くのが素直かなという感じがします。地方自治に関する規定は統治機構に関する規定に含まれるのではないかという疑問もあるかも知れませんが、「自治」である以上、当該地方の運営に関して一定の決定権限を有する「住民」という概念を規定する必要があるので、統治機構の一翼ということでは収まりきれないと思います。

 最後に、改正に関する規定を置くことになります。

 安全保障に関する規定をどうするかという疑問があるかも知れませんが、専守防衛に徹する限り、「自国の主権の及ぶ範囲内で、自国の法令に従わない人または団体に対し、有形力を行使して、自国の法令に従わせる」と言うだけの話ですので、それはあくまで「行政」の一環ということが言え、統治機構に関する規定に織り込めば済むように思われます。

(続く)

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