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26/08/2006

日本版オーマイニュース

 日本版オーマイニュースの正式開店を間近に控え、佐々木さん藤代さんなどの名だたる論客がそれぞれの「日本版オーマイニュース論」を発表しています。しかし、私には、それらの評論は肝心なところで的を射ていないように思いました。

 日本版オーマイニュースが目指しているのは、おそらく、日本のインターネット文化に広まってしまった「2ちゃんねる」的なものの対極なのでしょう。日本版オーマイニュースでは、「プロ記者」はもちろん「市民記者」までもが実名報道を義務づけられることにより一つ一つの記事について責任を持つことを求められ、さらに、編集者の目を通して単なる誹謗中傷や根拠の乏しいデマ情報の類が排除されていくことが予定されています。つまり、そこでは、「記者」の裾野を広げるということ以外は、既存のマスメディアと同程度の情報フィルタリングは果たしていこうということが志向されています。

 そしてそれは、全ての情報をフラットに取り込んでその真偽のほどを確認するだけの余裕がなく、かつ、嘘を嘘と見抜けなくともどうでもよいとまでは開き直れない多くの受け手にとっては、あってしかるべき選択肢だったのだろうと思います。全ての情報がフラットに表示される環境下では、しばしばネガティブな情念に基づく非インフォマティブな情報やある種の政治的・宗教的立場から流されるデマ情報が場を支配してしまいがちですが、そういうものに貴重な時間を取られたくない人や、他人のネガティブな情念など見たくないという人々もまた少なからずいると予想されるからです。

 オーマイニュースの市民記者になるための敷居は高くなく思想的に「左」の人々のみを市民記者として認めるという運用を予測しにくいこと(そもそも「右」「左」で割り切れる話題を扱いたい人ばかりではないようですし。)、また編集の段階で「ボツ」にしたところで別の場所でそのボツ原稿がアップロードされる可能性がある以上思想的に偏った編集作業はしにくいことを考えると、鳥越編集長がオーマイニュースの思想的な立ち位置を決められるということを前提とする批判はあたっていないように思います。もちろん、オーマイニュースでは実名報道が義務づけられる結果、匿名でなければ意見表明をできない人々はそこから排除されることとなるわけで、その結果、匿名でなければ意見表明をできない人々に支えられている色彩の強い極右ないし右派的な表現は、既存の匿名メディアよりは割合的に減少することが予想され、結果的に既存の匿名メディアよりは全体的に左寄りになることはあるのかもしれないですが、それは右派側の矜恃ないし意気地の問題であって、編集側の責任ではないのでしょう。

 もちろん、鳥越編集長は、ショービニズムを排除する意思を表明しているし、そのことをもって中立的でないと批判している人もおられます。しかし、多様な意見を採り上げることとあらゆる言論から中立であることは異なるし、オーマイニュースはあらゆる言論から中立であることは表明していないので、そこはそんなに批判すべきポイントかなあという疑問があります。ショービニズム的な表現って、特にそれが特定の国や人種や民族に対する侮辱的、差別的ないし攻撃的な表現を含むときには、先進国でも刑罰法規をもって禁止される例が少なくない(というか、人種差別撤廃条約を留保なしで批准した国はそのような国内法を作らないといけない)わけでそのような表現を含めた中立性を保つというのはそもそも無理がある話だし、ショービニズム的な表現を放置しておくとその言論環境の品位が落ちていってしまい、ショービニストと能動的アンチ・ショービニスト以外の人々が離れていってしまう危険があるのだから当然ではないかなあという気がします。

 また、オーマイニュースでは記事に対するコメントも市民記者か準市民記者(氏名やメールアドレスを登録した者)に限定していますが、この点も批判されているようです。佐々木さんは「すばらしい言論も平凡な意見も、あるいは妄想系のヨタ話もすべてがひっくるめてブロゴスフィアであり、フラット化というのはそれらをすべて引き受けなければならないということなのだ。」と仰るし、ニヤリさんは「ブロゴスフィアはたとえ玉石混交であろうとも様々な意見が混ざり合って、極めて自由かつ公平*1な議論が行えることが最大のメリットであり利点だった」と仰るのですが、そもそも現在のブロゴスフィアに問題点があると思っているからこそ新たなサービスを開始するわけだから、それはあたっていないように思います。実際、現在のブログシステムの欠点の一つは、記事投稿者とその読者とのコメント欄を通じてのコミュニティがわずか数人の「悪意のある人々」によって壊されるのを回避する手段がない点および自分の言説に一切の責任を負えない人々のプロパガンダの場に活用されることを回避する手段がない点にある点にあり、「仮面を被ることによって羞恥心をかなぐり捨てた暇人」に物量的に制圧されることを回避するためには、コメント投稿者にも一種の個別ID登録を義務づけるのは一つのあり得る解決策だと思います。

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