« Anonymity Providerとしての民間私書箱サービス | Accueil | 甘えているのはどっち »

12/09/2006

各種の仕事に要求される知識や技術を身につけることの困難性の軽視

 介護事業等へのボランティアの義務化とか徴農とかということをかなり右よりの人が言い出す背景には、肉体労働こそが人間の精神を健全化させるというある種の神話がそこにあるのだろうということは予想するに難くありません。さらに、その種の言説の背景を指摘するとすれば、各種の仕事に要求される知識や技術を身につけることの困難性の軽視というのがそこにあるのではないかと思います。介護事業にせよ、農業にせよ、適性のない者が強制されてどうこうなるものでもないし、適性のある者にしても数ヶ月程度では必要な知識や技術が身に付くものではありません。人間は、偉い人が命ずればどんな仕事でもてきぱきこなせるようになるほど器用な存在ではないのです。そのことが、何でも義務化することが好きな人達にはわからないようです。

 そして、各種の仕事に要求される知識や技術を身につけることの困難性の軽視という現象は、昨今の司法改革、とりわけ法曹養成制度改革にも影響を及ぼしています。

 司法試験合格者を500人にするか1000人にするのかというのは弁護士によるリーガルサービスの配分にどこまで市場原理を持ち込むかという話だったのですが、3000人にするとか9000人にするとかという議論は、弁護士業務を行うのに要求される知識や技術を身につけることは誰にでも簡単にできることなのかどうかという次元の話となっています。一応、法科大学院3年&司法修習1年を経ることが当面は求められるので「簡単に」というのは言い過ぎかもしれませんが、従来の法学部4年(+α)&司法修習2年&勤務弁護士としてのOJT数年という標準パターンと比べると、弁護士として独り立ちするまでに要求される修行期間が圧倒的に短いということができます(新制度の下でも司法修習後勤務弁護士としてOJTを受けることができるではないかとの疑問もあり得るところですが、現在弁護士全体で3万弱しかいませんし、まだ弁護士登録して数年という弁護士はOJT教育を施す主体とは通常なり得ないので、毎年3000人もの新規登録弁護士にあまねくOJT教育を施す余裕などないのです。私は、いくら新司法試験合格者を増やそうとも、年間1000ないし1500人を超える部分については、弁護士としてのOJT教育を施されないまま、弁護士として独り立ちするか弁護士にならないことを選択するかを迫られることになると予想しています。)。現場サイドでは、そんなに一気に増やされたって対応できないということはさんざん言っているのですが、偉い人達は、弁護士業務なんて誰でも簡単にできるのに、弁護士どもが既得権を守るために抵抗しているにすぎないと決めてかかっているので、そんな現場の声なんて無視されているのが実情です。

« Anonymity Providerとしての民間私書箱サービス | Accueil | 甘えているのはどっち »

Commentaires

>インターネット上では匿名の陰に隠れて他人を誹謗中傷して楽しむことが実際問題として許されるべきであるということに異を唱える人がIT関係法の専門家として存在することを受け入れられない方々には申し訳ないのですが

 誰もそんなことは一言も言ってないから先生の被害妄想と存じます。
 このブログの常連さんは、(誤読の王様たちを除き)プライバシーよりも匿名言論の弾圧を優先したり、自分に批判的な故をもって相手を卑怯者!臆病者!愚か者と粘着して罵倒したりしません。その意味で意見の相違や反対説の存在には至極当然ながら寛容で、先生の誤解や明白な間違いやロジックミスを端的に指摘批判しているだけです。むしろ先生の方が先生と異なる見解や先生への批判を受け入れらないので、感情的に反発して卑怯者!臆病者!愚か者と粘着罵倒していたり、嫌味皮肉当て擦り極論で感覚的に反発記載をしていらっしゃるだけで他意はないものと善意に解釈しています。誰しも感情に目がくらむと冷静な行動がとれないのも世の常ですから。

>○○に関する法律の専門家というのは必ずしも○○の現在の主たるあり方をそのまま肯定する人を意味してもいないので、ご苦労様としか言いようがありません。

 恐縮ですが意味不明です。その結論に至った経緯理由のご説明をお願いします。
 ○○の専門家を名乗るなら、○○の専門家らしい識見を身に付ける必要があるというのならそうでしょう。

 インターネット上では匿名の陰に隠れて他人を誹謗中傷して楽しむことが実際問題として許されるべきであるということに異を唱える人がIT関係法の専門家として存在することを受け入れられない方々には申し訳ないのですが、○○に関する法律の専門家というのは必ずしも○○の現在の主たるあり方をそのまま肯定する人を意味してもいないので、ご苦労様としか言いようがありません。

 

>介護事業にせよ、農業にせよ、適性のない者が強制されてどうこうなるものでもないし、適性のある者にしても数ヶ月程度では必要な知識や技術が身に付くものではありません。

 これ読んでふと気付きました。

 IT弁護士にせよ、サイバー弁護士にせよ、適性のない者が自称してもどうこうなるものではないし、適性がある者にしてもわずか数年程度マックを使った程度では必要な知識や技術が身に付くものではありません。
 ネットでもハイテク系で活躍してる法律家は、大学院でコンピュータ工学を学んでいたり、既に小学生のころからマイコンで遊んで30年近くコンピュータやネットを個人的に研究をしたり、専任講師(兼任にあらず)時代から20年前後もサイバー法を「できるところからコツコツと」研究していたりと、それぞれ血のにじむ努力を長年してきた人ばかりです。
 ポッと出はお呼びでない世界がIT技術の世界でしょう。

>人間は、偉い人が命ずればどんな仕事でもてきぱきこなせるようになるほど器用な存在ではないのです。そのことが、何でも義務化することが好きな人達にはわからないようです。

 法律で共通IDを義務化すればいいと、偉いIT弁護士先生がブログで命令口調で言われても、反対者を誹謗中傷罵倒しても、極論で常時反論しても、誰も相手にしない理由が分かりましたか?
 町村先生だけじゃなく、岡村先生や堀部先生等のサイバー弁護士兼研究者だけではなく、著名ネット企業の法務部長や著名技術者なども、小倉先生のパブコメに無反応でしたね。

 バーチャルオレオレ主義の人達は、ブログの論客なんて、IT弁護士業務なんて、「俺なら」簡単にできるのに、技術屋や粘着どもが既得権を守るために抵抗しているにすぎないと決めてかかっているので、そんな現場の声なんて無視されているのが実情です。

L'utilisation des commentaires est désactivée pour cette note.

« Anonymity Providerとしての民間私書箱サービス | Accueil | 甘えているのはどっち »

octobre 2017
dim. lun. mar. mer. jeu. ven. sam.
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31