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13/10/2006

記憶の作業を深めること

 「外国の立法」229号92頁以下の高山直也「フランスの植民地支配を肯定する法律とその第4条第2項の廃止について」という論文は、「フランス人引揚者に対する国民の感情及び国民の負担に関する2005年2月23日の法律第2005-158号」(以下、「2005年引揚者法」といいます。)という法律が制定され、そしてその第4条第2項が廃止されるに至る経緯を説明した論文です。

 引揚者法第4条は、次のような条文です(高山氏の訳による)

第4条1 大学の研究科目は、海外、特に北アフリカにおけるフランスの存在の歴史に対し、それにふさわしい位置づけを与える。
2 学校の教科は、海外、特に北アフリカにおけるフランスの存在の肯定的役割を特に認め、これらの領土出身のフランス軍兵士の歴史及び犠牲に対し、当然与えられるべき際だった位置づけを与える。
3 フランス及び外国で利用できる文字及び音声資料のネットワーク化を可能とする相互協力を推進する。

 この法律自体は、アルジェリア独立戦争の際に、現地でフランス軍に雇われたムスリムの補充兵(アルキ)及びその子孫の待遇改善を図ることが主たる目的だったのですが、「海外、特に北アフリカにおけるフランスの存在の肯定的役割を特に認め」というあたりがフランスの過去の植民地政策全般を肯定するものと誤解されてサルコジ内相は西インド諸島のアンティル諸島を訪問する予定だったのにアンティル諸島側から受け入れを拒否されたり、アルジェリアからは友好条約の締結を拒否されるは大変な目にあったわけです。まあ、国内的にも(ってアンティル諸島は国内ですが)、「学校教育の中立性と思想の自由に反して、公定の歴史を押し付けることになる」(高山・前掲)等の批判を浴びてこの法律(特に第4条)の廃止を求める署名活動が起こされてしまったりなんかしたわけです。とはいえ、この法案を廃止しようとすると、UMPやUDF等の右派政党の反対にあって否決されてしまうというまさに手詰まり状態に陥ってしまったわけで、結局、憲法評議会に付託して「学校の教科内容は本率で定める分野には属さない」との判断をもらった上でシラク大統領の命令で第4条第2項についてやっとの事で廃止するに至ったのです。

 この「2005年引揚者法」問題は、日本における敗戦直前の歴史問題との関連でも極めて示唆的です。もちろん、ジダンが何と戦ってきたのかを理解する上でも、フランスとアルジェリアの関係を理解することは有益であり、そのためには「2005年引揚者法」を巡る一連の論争を押さえておくことは望ましいことだといえそうです。

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