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08/10/2006

市場経済においては「社会のために身をささげようという」人材はいないものと思え

 市場経済のもとでは、それ相応の処遇をしなければ優秀な人材は確保できません。もちろん、「それ相応の処遇」の中には、短期的な収入を高くする(飛び抜けて高くなる現実的な可能性を付与することを含む。)とか、緩やかな収入の上昇を含む安定雇用を保障するとか、次の高収入に繋がる経験を付与する等が含まれます。

 

 「100年に1度の大改革」と専ら関係者によって評されることがある昨今の司法改革においては、弁護士によるリーガルサービスの配分方法として、競争を制限し供給者に超過利潤を与える一方採算を度外視したサービスの提供を供給者に求める「プロフェッションモデル」を止め、市場経済モデルを導入することとなりました。その結果、過当競争による脱落者を作ることを目的として、現在人数の1割程度を増員する法曹養成制度を導入しました。もちろん、自分たちと同程度の所得水準を維持する職業集団が存在することを基本的に許さない大手新聞社等は、過当競争による脱落者を作ることを専ら目的とするこの大幅増員論に賛同しました。

 

 で、10月8日付の讀賣新聞の社説は、次のような嘆きから始まります。

社会のために身をささげようという弁護士は、そうそう多くないということか。

 この社説を書いた人たちは、市場経済というものをおそらく理解していないのでしょう。市場経済においては、供給者が「社会のために身をささげよう」として採算を度外視したサービスを継続的に供給するということは基本的に期待するべきではないのであって、「社会のために身をささげよう」いう人材がたくさんになければ成り立たないシステムというのは維持できないのですから、「社会のために身をささげようという弁護士は、そうそう多くないということか」と嘆いてみせるのは単なる偽善であって、むしろ優秀な人材を確保できるだけの処遇を付与しなかったシステムの側を批判するのが筋であるといえます。

 法テラスのスタッフ弁護士は、任期は3〜5年で最長でも9年で雇い止めされる短期雇用であり、かつそこでの経験は次の高収入には繋がりません(法テラスのスタッフ弁護士の職務を考えると、いわゆる「街弁」系との親和性はそこそこありますが、残念ながら「街弁」市場においては、「他の事務所等で豊富な経験を積んだ人材を好待遇で迎え入れる」という慣行がありません。)。しかも、その間の所得水準は低い(「同期の裁判官・検察官と同等の給与が支給されることが想定されます。」と説明されていますが、「裁判官・検察官」等は長期安定雇用を前提とした年功序列型賃金であり、かつ官舎その他のフリンジベネフィットが前提となっています。)ときているわけです。有り体に言えば、法テラスのスタッフ弁護士になどなると、任期終了後のお先が真っ暗なわけです。

 そういう実情を無視して、「センターの事業には年間約200億円の国費が投じられる。法曹界の責任において、必要な人材を確保し、十分なサービスの実現を図らなければならない。」といわれても、「じゃあ、任期終了後のスタッフ弁護士を司法担当記者としてちゃんと読売新聞社と日本テレビで本社社員として正規雇用してよ」というくらいしかありません。

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