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décembre 2006

29/12/2006

コメント欄もwikipediaも内部告発の場ではない

 BigBanさんの「朝日に報じられたオーマイニュース苦戦の深刻----問題はアクセス数激減だけではない」というエントリーにおけるコメントより、

これをセットでしかも「2ちゃんねらー」というレッテルをかぶせて一緒くたに論じ、それを繰り返すことによって、鳥越氏は、内部告発や危険水域から匿名で発言しようという人々たちを放り出す結果となっています。本来オーマイニュースは訴訟問題等が起きた場合のリスクを、最大50万円の限定ですが、発言者に帰属させました。最初から実名が推奨されることで封じられるオピニオンがありますが、言論機関の長であればその点も斟酌して発言するべきです。

 しかし、オーマイニュース日本版のオピニオン会員によるコメントには、内部告発や危険水域からの匿名での発言なんてものはなかったわけです。むしろ、匿名性の高いコメントを可能とすることによって、自分とは相容れない思想傾向の記事を掲載する市民記者に対して執拗にネガティブな言葉を投げつけることによってその種の市民記者がさらなる記事を投稿する意欲を奪おうという一種の言論封じのためにコメント欄が活用されたとすらいいうる(bigbanさんの言い回しを借用するならば「最初から匿名が許容されることによって封じられる記事がありますが、言論機関の長であるが故にその点を斟酌せざるを得なくなったということでしょう。)。さらにいえば、オピニオン会員は、少なくとも編集部との関係で「どこの誰であるのか」が明らかにされていなければ、コメントにより市民記者または第三者との間に訴訟問題が起きた場合のリスクを負わなくて済むわけです。

 さらにいえば、全てのCGMが内部告発や危険水域からの匿名での発言を行う場である必要はないわけです。オーマイニュース日本版のコメント欄(正確にいえば「この記事にひと言」欄)についていえば、市民記者による個別具体的な「記事」に対する「感想や意見交換、質問など」を行うための場であって、内部告発や危険水域からの匿名での発言を行う場として用意されているものではそもそもありません。市民記者に対する「感想や意見交換、質問など」を正常に行うにあたって匿名である必要はないし、むしろ、市民記者に対する「感想や意見交換、質問など」は理性を保った状態でなされた方が建設的で有益であるといえます。

 話は少し変わりますが、池田信夫さんが「2ちゃんねる化するウィキペディア」というエントリーを立ち上げています。考えてみれば、「wikipedia」もまた、内部告発や危険水域からの匿名での発言などというものを掲載する場ではありません。むしろ「『内部告発された事実』という編集者等が容易に検証することが不可能な記述をwikipediaに持ち込まれてもそれは困りものだとすらいえます。そういう意味では、wikipediaにおいて匿名性を維持する必要はないし、むしろ、匿名性が保たれた環境ではその党派性を剥き出しにする人が少なくない我が国においては、wikipediaにおいて匿名性を維持する限り、イデオロギー闘争の場として編集合戦が行われるという悲劇が発生する虞が高度にさえあります。

27/12/2006

日経新聞社の「弁護士」認定基準

 「弁護士が選ぶ弁護士ランキング」における調査対象が「大手法律事務所(外資系法律事務所を含む)のパートナーを中心とする弁護士」497人に限定されている件で、日経新聞社のウェブサイトの「お問い合わせコーナー」に下記のような質問を送ってみました。本文が250文字までとのことなので、文章は端折ってありますが。


 昨日の日本経済新聞朝刊において「弁護士が選ぶ弁護士ランキング」が公表されていました。「弁護士が選ぶ」との修辞を用いるのであれば、全弁護士を対象とするか又は一定人数を無作為に選んで調査票を送るのが常道ですが、「大手法律事務所(外資系法律事務所を含む)のパートナーを中心とする弁護士」497人にしか調査票を送っていないとのこと。それは、日経新聞社では、この497人以外は真の「弁護士」とは認めていないないからでしょうか。それとも、調査方法に着目しない読者の目を欺く積りだったからでしょうか。

26/12/2006

「弁護士が選ぶ」という看板には偽りがある

 今日の日経新聞朝刊に弁護士が選ぶ弁護士ランキングが掲載されています。

 でも、正直違和感があるランキングなのです。

 で、「調査の方法」をみると驚きです。

 調査の対象は「大手法律事務所(外資系法律事務所を含む)のパートナーを中心とする弁護士」497人(内、有効回答数197。調査方法は、「昨年実施した同アンケート調査の得票上位者などを参考にし、133人の候補者リストを作成」し(ただし、リスト掲載者以外への投票も有効)、3名まであげてもらうという方法を採用したとのことです。「弁護士からの回答では、3人とも同一事務所から選出することは避けてもらった」とのことですので、2人までは回答者の所属する事務所の弁護士に投票することは許されているようです。この方式だと、上位9位の中にランクインしているのが全て4大事務所所属の弁護士という結果はやる前から見当が付きそうな結果です。

 なんだ、一種の出来レースじゃん!

 そんなことがしたいのなら「大手法律事務所所属弁護士が選ぶ大手法律事務所所属弁護士ランキング」という題にすればいいのに。「弁護士が選ぶ」というと、「大手法律事務所所属弁護士」以外の弁護士を含む弁護士全体の意見を聞いた結果だと勘違いされかねないですから。

25/12/2006

「ロースクールで厳格な成績評価をしているのか疑問が生じるような答案がかなりあった」

 「新司法試験考査委員(民事系科目)に対するヒヤリング概要」がウェブ上で公開されています。その中でまず気になったのは、

ロースクールで厳格な成績評価をしているのか疑問が生じるような答案がかなりあった。200点満点で70点未満、100点満点で35点未満では絶対だめだろうと思われるが、そういう答案が25パーセント以上私の採点したところにはあった。旧試験と違って試しで受けてみるという人はいないはずなので、結果的に、ロースクールを修了しているのはむしろおかしいのではないかと思われる答案がたくさんあったということになる
との考査委員の発言です。

 法科大学院関係者に多い「法科大学院修了者の大部分が新司法試験に合格できるようにすべき」云々という議論は、法科大学院においてまっとうな単位認定がなされていることが前提となりますが、法学部における単位認定の甘さを考えると、そもそもそういうことは期待薄だったのであり、実際に第1期の既習者コースにおける修了率の高さを見るにつけて、「厳格な単位認定などなされていないのではいないか」ということを多くの人が疑っていたわけですが、上記考査委員の発言により「自信が確信に変わった」、ではなくて「不信が確定的になった」ということになろうかと思います。

 法科大学院の先生方も、「自分たちに2年ないし3年間授業料という形で多額の金品を『上納』してきた学生たちには何はともあれ法曹資格を授与すべきだ。後のことは野となれ山となれ」というのではなく、まずは、法曹養成制度改革の時に大見得を切ったとおりに、立派な法学教育を行い、「なるほど、法科大学院修了者であればほぼ全員に法曹資格を与えても問題がない」とうなるような教育実績をまず上げてほしいものです。

Google八分問題の前提に関する疑問

 紀藤先生のブログでも「Google八分」の話題が取り上げられています。

 しかし、私は、Googleが特定のウェブページに関する情報を検索データベースから削除しなければならない場合があることは理解する注1一方、特定のウェブページの管理者が、Googleに対して、当該ウェブページに関する情報をその検索データベースに登録することや、一旦登録した情報を爾後削除しないことを求める法的権利を有するとの考え方は、必ずしも理解できないでいます。

 Googleは所詮は民間事業者なので、特定のウェブページへの不特定人のアクセスを向上させ或いは維持を図る義務を負わないのが原則です(当該ウェブページの管理者との間に特別な合意が結ばれている等の特段の事情がある場合は除きます。)。Beyondさんは、Googleに登録され続けることを「表現の自由」の問題と位置づけられているようですが、1民間事業者であるGoogleがbeyondさんの「表現の自由」を、自社のサーバを使用して保障してあげなければならない法的な根拠がよくわからないのです。「現実的にはGoogleがいかに広く活用されている」としても、それでもGoogleを国等と同視することはできないように思うのです。

 そうだとすると、民間事業者たるGoogleには、どのウェブページをそのウェブ検索データベースに登録しておくかについて、その営業方針等にあわせて自由に決定する権限があり、その基準について外部に説明する義務を負わないということになりそうです。船橋市図書館事件だって、あれは舞台が公立図書館だったから不法行為が成立したのであって、民間の図書館であれば、「恣意的」に蔵書を廃棄したからといってその著者からとやかく言われる筋合いはないように思うのです。

 そういう意味では、Google八分を問題視する方々は、特定の私人の表現の流布に協力すべき義務をGoogleに負わせるべき法的義務の根拠付けに成功していないように思うのです。

注1 当該ウェブページが違法情報を流出させ続けている場合に、当該ウェブページの管理者を突き止めてこの者に対して強制的に当該ウェブページを削除させまたはデータを修正させるまでの間、当該ウェブページを閲覧する者の数を抑制し、被害を最小限度にとどめることが求められますが、そのためには、主要な検索エンジンから当該ウェブページが検出されないようにすることが有益だからです。

23/12/2006

PERSON OF THE YEAR in 2006

 今年のTime誌の「PERSON OF THE YEAR」特集は面白いです。日本で出回っている「Web2.0」ものよりも、「Web2.0」を生き生きと表現しているように思います。といいますか、日本の「Web2.0」ものの書籍等は、「Web2.0」を支えるサービスを提供する企業に焦点を当てすぎていて、「Web2.0」を支えるクリエイティブな個々人を単なる「背景」に押しとどめてしまっているように私には感じられます。このTime誌的な見方でいうならば、日本の「Web2.0」を象徴するのは、はてなやmixiではなく、梅田望夫さんやはあちゅうさんだということになりそうな気がします。

 それと、Time誌が取り上げた「Web2.0」的な人の活動の舞台が、主として、YouTubeとMySpaceだってあたりも面白いです。ここでのYouTubeは、商用コンテンツを無断で転載する場ではなく、自作のコンテンツを能動的に公開する場として取り上げられています(個々人が自分が作成した動画をネットで流通させるということは、日本MMOがファイルローグでもっとも実現したがっていたことであって、それが米国でこのような形で実現され、賞賛されるのを見るのはちょっと複雑な気もしますが……。)。

22/12/2006

wikiality

 今週の「Time」には、Buzzword 2006が掲載されています。

 その中の1つとして選ばれていたのが、「wikiality」という言葉です。

 これは、「Wikipedia+reality」の造語で、「事実というよりはむしろコンセンサスに基づく真実」という意味なんだそうです。

 自称「ソースを重視している」派のソースというのも、特定の人や党派に対してネガティブな感情を有している感情共同体の間のコンセンサスに基づく「真実」にすぎない例が散見されるみたいです。

19/12/2006

Winnyの件でITmediaに登場

Winny事件地裁判決についての解説記事を、ITMediaに掲載して頂きました。

興味がおありの方はお目通し頂ければ幸いです。

八代先生と郭隗

 毎日新聞によれば、

 経済財政諮問会議の民間メンバーの八代尚宏・国際基督教大教授は18日、内閣府の労働市場改革などに関するシンポジウムで、正社員と非正規社員の格差是正のため正社員の待遇を非正規社員の水準に合わせる方向での検討も必要との認識を示した
とのことです。

 まずは、国際基督教大学において、専任講師以上の教員の待遇を非常勤講師の水準に合わせてみるとよいのではないでしょうか。

18/12/2006

悩まないで相談してね

オリコンvs烏賀陽さんの件について、

(2)この5000万円という金額は、応訴するために弁護士を雇うだけでも着手金が219万円かかるというおそるべき額です(そんな貯金あるわけないですがな=笑)。
とのことですが、今時この案件で着手金を200万円以上も請求する弁護士はそうそういないように思います。

 弁護士会の報酬規定に効力があった時代ですら、名誉毀損訴訟で訴額どおりに着手金の算定をする弁護士は少なかったし(名誉毀損訴訟の場合の請求額というのは、原告=被害者の思いが込められているので、予想される慰謝料相場よりは高目に設定されがちです。)、まして今は弁護士会の報酬規定は廃止されています。それに、最近は、訴訟事件でも、タイムチャージで動く弁護士も増えています。

 「弁護士報酬が払えそうにないから弁護士に相談しない」などと考えず、被告になってしまったら、まずは弁護士に相談するのが吉といえます。

総括

 左翼嫌いっぽいコメンテーターさんたちが、他者に自己批判を求める旧来的な左翼的メンタリティーは継承しているというのは、滑稽です。まあ「ネット右翼」自体、理想を見失ったまま、手法といいますか行動原理だけは左翼勢力の醜悪な部分を継承している感があるので、不思議な話ではないのですが。

 「ネット右翼」に限らず、右派勢力全体についていえることかもしれませんが。

大人でも考えは変遷する

 Winny事件の地裁判決についての原稿を纏めるにあたって、Winny事件について自分がこれまでブログ等で発言してきたことを見直してみたのですが、それなりに変遷しているものですね。まあ、その時々のポジションの中ではベストの発言をしてきたとの自信はあるのですが、情勢や情勢に対する認識は日々変化しますし、私自身のポジションも日々変化するので、同じ問題に関する考え方が時間の経過に伴って変化するのはやむを得ないことだと思っていますし、そのことは恥じることでも誰かに謝罪すべきことでもないと考えていたりします。

 学生のときは、改訂版を出すたび毎にいくつもの論点について改説を行う学者さんのことを多少揶揄的に見ていたところもないわけではないのですが、自分が様々な論点についての見解を公表する立場になってみると、自分が過去に何を語っていたのかに囚われず、その時々でベストと考える見解を掲げる方が後ろめたさを感じずに済むものだなあという気持ちになっています。

 そして、過去の発言との整合性を各部分を指摘して得意げになっている人々を見ていると、何だか可哀想になってきます。無意味な努力に有限の時間を割いて頂き、ご苦労様と。

16/12/2006

教育基本法改正

 一昨日、ある知的財産権絡みの勉強会に出席するために事務所から特許庁方面にタクシーで向かったところ、議員会館の周辺にたくさんの人が集まって抗議活動を行っているのが見えました。結論から言うと、彼らは、教育基本法改正についての強行採決に抗議する人々だったわけです。

 もっとも、野党の側も大した議論をしていなかったというのも事実であり、単に時間切れを目指すための質問しかしていなければ強行採決をされてもそれほど強く非難もできなくなってしまうわけで、教育基本法の改正にとっても反対だった人たちは、野党の議員さんたちに、「こういう質問をして下さい」という入れ知恵をもう少ししてあげた方が良かったのではないかと思ったりしました。議員会館の前でシュプレヒコールをあげて抗議の意思を表明することの効果を全く認めないわけではないのですが(他の民主主義国でもこの種の「市民の意思表明」というのはある種基本パターンですし)、しかし、我が国の場合、議員さんの調査・質問能力がおしなべて低いという特徴がある(スタッフが少ないと言うこともあるし、「組織の論理」で候補者に選ばれた方が少なくないということもあるのですが。)ので、そのあたりを補完してあげた方がただシュプレヒコールをあげるよりはまだ有効かなと言う気がします。)。

 実際、教育基本法改正案は、法案起草能力に問題があることが「ローマの休日」事件などで露呈してしまった文科省管轄なので、法案自体に関して問いただしておくべきことはたくさんあったと思うのです。

 例えば、焦点となっていたいわゆる「愛国心条項」

伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと
についてですが、「伝統と文化を尊重する」とはどういうことか、そこでいう「伝統」とは何を指すのか、「我が国と郷土を愛する」とはどういう精神状態のことをいうのか、我が国と郷土を愛する「態度」とはどのような態度のことをいうのかということをもう少し詰めておく必要がありました。これらについて、あとは「文科省の役人が自由に解釈してよろしい」みたいなことになると、とんでもない解釈をしかねないからです(例えば、「著作者の死後50年が経過しても他人の著作物を著作権者に無断で利用するのは止めよう」みたいな。)。

 そもそも戦後60年の間に社会構造・経済構造が大きく変革していった日本において、「戦後民主主義によって押さえつけられてきた『伝統』を回復しよう」なんてことをいってみたところで、だいたい迷惑な話にしかならないわけです(まあ、憲法改正はまだなので、戦後民主主義に反する「伝統」(ex.性別を重視した社会経済的分業体制等)を復活させることは当面公教育の場では許されないのですが。)。そういうことを言い出す方々が回復させようと思っている「伝統」って、大抵の場合、担い手の経済合理性に反するわけですし。例えば、「団地、マンションであっても床の間を用意せよ」なんていわれたって、「床の間」を用意するとその分生活用のスペースが減少してしまうわけで、そもそもがさほど広くない集合住宅の場合は、そのことによる生活の利便性に対する悪影響の度合いが大きかったりするわけです。それに、「伝統」って、地域差や階層差が大きいので、公教育で一律に押し付けるとなると、「ある地域におけるある種の階層のもとでの伝統」を、それ以外の地域の、あるいは、それ以外の階層のもつ「伝統」を押しつぶすことにもなりかねないわけで、その辺の調整をどう付けるつもりなのか全然わからないです。

13/12/2006

教育再生 有識者からの提言

 「教育再生 有識者からの提言」というサイトがあるのですが、右の方の方々の「教育提言」って、どうしてここまで「親のニーズ」を無視したり客観的なデータを無視したりしてしまうのか、不思議です。

 私は未だ、自分の子供に愛国心が足りないことを嘆いている親を見たことがありません。また、私は、少年事件は修習生のときに見ただけですが、非行に走る子供は、そうでない子供よりも、歴史の教科書に書いてあることや歴史教育の時間で先生(特に日教組系の先生)が教えたことを素直に受け止めた傾向が高いという議論も見たことがないのです。

 こういう「提言」をいくら突きつけられても、現場の方々は苦笑するより他ないんだろうなあと 同情してしまいます。

募金の条件

 ところで、募金を集める人や、その募金を受け取る人が、その前に個人資産をまずすべて吐きだすなどというのは、実際問題として、一般化しているのでしょうか。

 日本テレビ系列は毎年24時間テレビで視聴者等からの募金を集めていますが、もちろん、日本テレビ系列の各テレビ局も、24時間テレビに出演する芸能人等も、「視聴者等から募金を集める前に、その資産を全て吐き出す」なんてことはしていません。それどころか、24時間テレビ放送中のCMのCM料は各テレビ局の収入となりますし(各テレビ局はこれを福祉目的に寄付したりはしません。)、出演者もちゃんとギャラは受け取ります(ほとんどの出演者は出演料を福祉目的に寄付したりはしません。)。

 では、日本テレビ系列が集めたお金(正確にいうとそのお金で購入したリフト付きバス等)を受け取る側はどうなのかというと、「これを受け取る前に全資産を吐き出」したというわけでもないのでしょう。日テレサイドは、

審査の際の重要なポイントは、必要性の高い事、より緊急性がある事、車両の維持管理が可能な事、運用体制が明確な事、健全財務内容でありかつ、自主購入が困難である事、などです。
とは言っていますが、「敷地建物をまず売却すればその売却代金の中からリフト付きバス等を購入できる」場合には「自主購入が困難である」とはいえないという運用はしていないように思います。

 すると、「募金を集める前に先ず自宅を売るべき」という匿名さんたちの倫理規範というのはどこから生まれてきたのでしょうか。

12/12/2006

1文の長さ

 国分俊宏「キソウヲキソウ (7)」ふらんす2006年10月号58頁は、Marie NDiayeの「Comédie classique」という小説を紹介しています。

 この小説は、一人の男が、朝目覚めてからその日の夜、宝くじが当たったことと、恋人が他の男と消えたことを知るまでの1日を、男の1人称の語りで描いた100頁程度の作品です。この作品の特徴は、なんといっても、最初から最後までを1つの文で書かれていることです(この小説を解説する国分先生のコラム自体、雑誌の見開き2頁を敢えて1文でひとつながりに書かれているのですが。)。

 最近は、「1文を短く!」ということを金科玉条のように押し付けてくる向きもありますが、接続詞や接続助詞を駆使して1文を長くするというのも、特に趣味嗜好が尊重される領域では十分に容認されるべきでしょう。

 なお、私が刑事弁護をやっていたころは起訴状の公訴事実は意地でも一文でひとつながりに書くことになっていたのですが、裁判員制度が始まる頃にはこういう伝統もなくなっていくのでしょうか。

11/12/2006

しゃべり場

 一昨日は、加野瀬さん主催の「しゃべり場」に遊びに行きました。この種のイベントは、後で結果報告を読むより、実際に参加してしまう方が面白いので。

 実際に取り上げられた話題の中で、私と加野瀬さんとの間に一番温度差があったのは、音羽さんの評価かもしれません。

 私から見ると、学部の2回生であれだけの文章が書ければ十分及第点をあげられると思いますし、彼はたまに暴走する点が問題視されがちですが、彼の正義感というのは一般社会においてはそんなに不快に思われる類のものではない注1ので、加野瀬さんが心配されるほどには、彼の現在のネットでの活動は、彼の将来を暗くするものではないように思ったりしています。もちろん、彼が今後市議会議員にでも立候補しようとかそういう話であれば足を引っ張ることになるかもしれませんが。

 人に見られるという緊張感があると化粧がうまくなるというのと同様に、人に見られるという緊張感があると文章もうまくなるということが一般的にはいえるわけで、進路をいよいよ決めなければならない2年後までの間に、オーマイニュースの市民記者を続けることによって彼がどう成長していくのか、むしろ私は興味があったりします。

 

注1
 これに対し、「死ぬ死ぬ詐欺」とかいってさくらちゃんの両親やその支持者を執拗に攻撃する類の「正義感」というのは、一般社会において不快に思われる類のものだと思います。

10/12/2006

2ちゃんねるの管理

 大石英司さんが、次のような発言をしています。

 昨日の番組で前半に扱われていた問題というのは、突き詰めると2ちゃんねる問題に過ぎないわけですね。これはひろゆきがその気になって金を出せばいくらでも管理は効く。管理できっこないなんてのは、あれは嘘です。金使いたくないから、管理出来ないことにしているだけのこと。6年間地方自治板にいて感じたことは、削除人がちょっとでもやる気を示せば、アラシや誹謗中傷は、格段に減るんです。所が削除人の姿が見えないとなった途端に、アラシが増える。
 2ちゃんねる自体は、きちんと管理されれば今の勢いを失うことなく維持できるんですよ。所がひろゆきにその勇気も無いし、金出すつもりも無い。挙げ句に2ちゃんねるの勢い自体がブログやSNSに押されているから、今の勢いを維持する唯一のブログやSNSへの対抗策、解として「無法地帯」である状態をキープするということしかひろゆきの頭にないわけです。

 この「ひろゆきがその気になって金を出せばいくらでも管理は効く」という意見には、結構賛成です。

 では、具体的にどのようにすればよいでしょうか。

  1.  まず、各板毎に管理責任者を決め、全てのレスを、投稿されてから1日以内にチェックできるように定期巡回を行う。そこで、特定の人物の侮辱するレスを見つけたらこれを削除する。特定の人物の社会的評価を低下させるような事実を摘示するレスを発見したら、当該レスの投稿者が投稿時に入力したメールアドレスに宛てて、真実性の抗弁を基礎づける資料の提出を求める。宛先不明でエラーメッセージが返ってきたら、そのレスは即時に削除する。照会メールが無事届いていた場合には、真実性の抗弁を基礎づける資料の提出がない限り、7日後にそのレスを削除する。ただし、削除すべき緊急性が高い場合には、直ちに一旦非開示とする。
  2.  特定の人物を侮辱したり名誉毀損したりするレスが短期間に一定数以上投稿されているスレッドについては、スレッド自体を削除したり、レスの新規投稿を停止したりする。特定の人物について複数のスレッドで侮辱・名誉毀損的レスが一定数以上投稿されるような事態に発展した場合、当該人物に関するスレッド自体を削除し、新たなスレッドの立ち上げを一定時間停止する。
  3.  24時間対応の真っ当なクレーム受付窓口を用意する。クレームを受けたら、1日以内に対処する。
  4.  被害者からの発信者情報開示請求を受けた場合は、そのレスが外形的に侮辱・名誉毀損にあたる場合には、当該レスの投稿者が投稿時に入力したメールアドレスに宛てて意見照会を行う。意見照会メール発信後1週間以内に真実性の抗弁を基礎づける資料の提出がなかった場合、そのレス投稿者のIPアドレスを開示請求者に開示する。
  5.  特定のレスが特定の人物の侮辱ないし誹謗中傷にあたるか否かの判断が管理責任者レベルではつきかねる場合には、弁護士に照会する。

 この程度の措置でも、2ちゃんねるでの「祭り」と呼ばれる集中的な誹謗中傷はかなりの程度回避できるように思います。そして、そのことは、誹謗中傷とはほぼ無縁の板でまったりとした議論を楽しんでいる多くの2ちゃんねる愛好家にとっても、2ちゃんねるを愛好しているということ自体が白い目で見られることが少なくなるという意味で、好ましいことなのではないかと思われます。

コメント欄のモデレート機能とプロパゲーティビリティ

 オーマイニュースのコメント欄問題や、松永さんの「みんなのニュース」案だのをみていると、スラッシュドット的なモデレート機能に対する期待がそこにはあるようです。松永さんは、「低レベルなコメントと良質なコメントを分離することができます。それは、ユーザーによるコメントの質の向上にもつなげていくことができます。」とまで言っています。

 しかし、モデレート機能によって「低レベルなコメントと良質なコメントを分離する」というのは、おかしな人が単独で特定の記事等にイチャモンをつけている場合にはうまくいく可能性があるのですが、特定の記事ないし人を貶めてやれということがある程度組織的に行われるときは、基本的に無力です。何人かで特定の記事等に対するネガティブコメントを付けた後で、その他の共同謀議者たちがそのネガティブコメントを「とても参考になった」と評価してあげれば済むからです。さらにいえば、コメントスクラムに対して異を唱えるコメントに対しては、共同謀議者たちで一致団結して「参考にならなかった」との評価を加えることにより、「低レベルなコメント」としてこれを分離することが可能となってしまいます。スラッシュドットはギークな話題が多いのであのシステムでも何とか持っていますが、もう少しイデオロギッシュな話題が多い分野だと、コメント欄のプロパガンダかが加速していくことになりかねません。

08/12/2006

YouTubeとJASRACと共通IDと

 YouTubeに関して、こんな報道がなされています。

 また、暫定的な対策として、(1)投稿時に表示される著作権に関する注意書きの日本語化、(2)動画をアップロードするユーザーの住所、氏名の登録、(3)著作権侵害映像を過去にアップロードしたことがあるユーザーのアカウント削除——などといった具体策を採るよう要請している。

 しかし、ファイルローグの検索用中央サーバ管理業者の代理人だった私からすると、(1)や(3)では足りない、(2)についても戸籍上の氏名と住民票上の住所を登録させるのでなければ意味がないといっていたではないか!といいたくもなります(JASRACと日本レコード協会以外は「俺たちには関係がない」というかもしれませんが。)。

 (2)の方法により違法な投稿を押さえたいのであれば、日本の23団体の側でID認証システムを用意するから、日本からアクセスしてきた投稿者については、日本の23団体の側で認証したIDを使用してくれと要求するしかないようにも思えます。23団体の中にはなぜかヤフーもいるようなので、その気になればできなくはないように思えます。少なくとも、YouTube側に、登録ユーザーの氏名・住所の真正を確認させるよりは、日本側で確認しておいてあげる方がよほど現実的です。

07/12/2006

ネット上での私的制裁

 現実社会においてどこの誰であるのかが知られている人物の特定の言動についてこれを問題視し、ネットの内外で当該人物に対して私的制裁(リンチともいう。)を加えている方々は、その言動が果たして制裁を加えるに値するものなのか否か、そして加えようとしている制裁が当該言動との関係で均衡がとれているものなのか否かということについて、どの程度慎重に判断しているのでしょうか。そして、その判断が誤っていたことがわかった場合に、一体どのような責任をとるつもりがあるのでしょうか。

 もちろん、それ以前に、彼らはなぜ自分たちが当該人物に対して私的制裁を加えても構わない存在であると思えるのかという疑問はあるわけですが、この点に関しては、匿名の陰に隠れることによって、匿名の陰に隠れられない現実社会の人間より上位の存在だと勝手に思いこんでいるからなのでしょうね。

嫌がらせがなくなったら寂しいという方々との妥協点

 世の中には、色々な考えの人がいるものです。

 私は、たとえネット上であれ、陰湿な嫌がらせというのはない方が良いと思うのですが、逆に、そういうものがなくなってしまったらつまらないという方々もおられるようです。

 そういう方々との妥協点としては、「ネット上から陰湿な嫌がらせがなくなってしまったらつまらない」という方々には、是非とも「嫌がらせOK」という意思表示をネット上でして頂くのが良いのではないかと思うのです。そういう意思表示をした方々に対する嫌がらせについては、法執行機関は何ら関与せずに放置しておく、その代わりそういう意思表示をしていない方々に対する嫌がらせについては、法執行機関はがんがん匿名性を暴いて法的制裁を加えていく(ISP等も可能な限り協力する)と。

 おそらく、ネット上での陰湿な嫌がらせを温存しておきたい方々は、当然、自分が陰湿な嫌がらせを受ける側に回ることもウェルカムなのでしょうし、他方、ネット上での陰湿な嫌がらせというのはない方が良いという方々は自分も陰湿な嫌がらせは受けたくないということなのでしょうから、陰湿な嫌がらせがなくなっては面白くないという方々こそ、陰湿な嫌がらせを受けるターゲットとして名乗り出るのが、合理的というべきでしょう。日常生活の中でたまったストレスを、ネット上での陰湿な嫌がらせ行為によって発散したいという方々にとっても、「嫌がらせOK」マークを表示しているブログのコメント欄に粘着して、あることないことひどいことを投げつける分には、更なる安全性が確保されるわけですから、まさに願ったりかなったりというべきでしょう。

「世界」1月号に佐々木さんとともに登場

 ココログの長期メンテナンス作業が漸く終了し、やっとエントリーを立ち上げられるようになりました。

 さて、おなじみの佐々木俊尚さんとの対談が、岩波書店の「世界」の2007年1月号に掲載されました(正式な発売日は明日だと思いますが、一部の書店には既に出回っているようです。)。

 私と佐々木さんの対談ですので、テーマについてはおよその見当が付くのではないかと思いますが、それなりに面白いできになったのではないかと思いますので、お目通し頂ければ幸いです。

05/12/2006

ネット上の誹謗中傷といじめの関係

 ネット上の誹謗中傷を学校での「いじめ」と比較して論ずることに不快感を示す人が少なからずいるようです。しかし、特定の他人を不快にさせることによって快楽を得るという点で共通していますし、学校での「いじめ」の手段としてネット上での誹謗中傷が行われるという事態も既に起こっており、米国では「cyberbully」として社会問題化しているわけですから、ネット上の誹謗中傷を学校での「いじめ」と比較して論ずることには何の問題もないということが言えるでしょう。

 もちろん、「特定の他人を不快にさせることによって快楽を得る」という行為は、他にも様々なバリエーションがありますが、通常は「被害者が我慢すればいい」「被害者がスルー力を身に付ければ済むことだ」「加害者側のプライバシー権の方が重要だ」みたいな話は、まともな人間は恥ずかしくてできない状況にあります。例えば、「痴漢に関しては、被害者が我慢すればいい」とか「セクハラは、被害者がスルー力を身に付ければ済むことだ」なんてことは、よくよくな人以外は口に出さないことでしょう。加害者に対して「痴漢は犯罪ですとか「セクハラは違法です」といってみてもそれだけでは事態が改善されないのでしょうけど、だからといって、被害者に対して「君たち被害者がスルーすればいいのだよ」といってみても始まらないのであって、電車内の痴漢について言え、それが横行していることを知ったら鉄道会社は刑事を張り込ませて痴漢を取り押さえるなり女性専用車両を用意するなりして痴漢の発生をできるだけ少なくするべきだし、セクハラに関しても、企業内でセクハラが行われているという訴えを受けたら早速調査委員会を作って事実関係を調査し、セクハラを行っている従業員に対してはしかるべき懲戒処分等を行うべきなのでしょう。

 ブログ事業者もISPも某匿名掲示板の管理者も、ネット上で誹謗中傷が横行していることは既に十分に知っているはずです。もはや「被害者がスルー」してくれることに期待するのではなく、しかるべき対策を講ずる時期に来ています。誹謗中傷者や誹謗中傷発言の愛好家たちのもたらす膨大なアクセス数に目がくらんでネット事業者が誹謗中傷対策を敢えて行わないということは許されないと考えるべきでしょう。

04/12/2006

悪を容認すれば個人とすれば楽になるかもしれないけど

 ネット上に満ちあふれる「悪意」に荷担してあげれば、あるいはそこまで行かなくとも目をつぶってあげれば、ネット上で「悪意」を包み隠さず露わにしている人達からは、尊敬される、あるいはそこまで行かなくとも敵視されずに済むのかもしれません。

 ただ、彼らからの尊敬を集めることというのは大した意味もないことだし、敵視されると粘着されて鬱陶しいことは鬱陶しいけれども、粘着君を意図的に放置している現在のネット社会において凛として生きていく上では事実上避けられないことと諦めざるを得ません。

 でも、そのことと、ネット上の誹謗中傷の被害者に「スルー力」を求めることとは異なるのです。被害者に「スルー力」を求めることでことたれりとしてしまうと、ネットを、「悪意の表明の場」以外に活用されるような環境整備を行うようにISP等に要求していく力が薄れてしまいます。

 学校現場において、いじめっ子に「いじめはいけないことだ」といくら語りかけても意味がないとしても、「いじめられっ子は『スルー力』を身につけるべきだ」で終わらせてしまえば、学校等に対して、いじめ対策を要求しにくくなるのと同じようなものです。

誠実なブロガー

 一般に、一つの話題について、コメンテーターからの質問や批判にいくつくらい答えたら、一応「誠実なブロガー」とされるのでしょうか。

 ブログ主やブログ主が属する集団やブログ主が有している党派性に対する憎しみに凝り固まっているコメンテーターが納得することというのは、彼らに屈服してみせる(例えば、亀田選手の試合に感動することは全然悪いことではないのに、謝ってしまうとか。)以外の方法では、通常はなかなかあり得ないので、自分の党派性をブログ主に押し付けたがるコメンテータさんについては、どうしたって、どこかの段階で見捨てざるを得ないのですが(多くのブロガーには、生活も仕事もあるし、ネットが唯一の娯楽でもないので、一部のコメンテーターさんほどにはネットに時間を割くことができないですし。)。

03/12/2006

Anonymity Providerの法的責任(予稿)

本日、情報ネットワーク法学会にて、「Anonymity Providerの法的責任」について発表しました。下記はその予稿です。


第1 はじめに

  1.  インターネットを利用した違法行為(犯罪行為や不法行為)は後を絶たない。
    誰もが、誰の事前審査を受けることなく瞬時に情報を特定又は不特定の者に伝達することができるというインターネットの特性は、特定の情報を流布することによってなされる違法行為にはまさに打って付けである。
     さらに、インターネットに関しては、情報発信者の匿名性を高めるサービスが数多く提供されており、これが違法行為を行うことへの心理的な障壁を著しく低下させ、悪辣ではない市民を違法行為へと誘っている。
     また、情報発信者の匿名性が高まると、当該発信情報の送信防止措置を早期に講ずるなどして違法な情報流通による被害の最小化を被害者が図ることも困難となる。
  2.  情報発信者の匿名性はインターネットの本質ではないので、情報発信者の匿名性を高めるサービス(Anonymity Provide Service;以下「APS」という。)の提供者(Anonymity Provider;以下「AP」という。)は、その提供するサービスが違法行為のために濫用されている場合には、そのAPSの提供を中止しまたは制限することが可能である。
  3.  ただし、匿名の陰に隠れて法的又は倫理的な規範から逸脱する行為を行えるということを重視するネット利用者は少なくはなく、事業者にとっては、そのような利用者に利用されることによって集客に役立てたいとの誘惑は強い。そのため、その提供するAPSが違法行為等に活用されていることを知っていても、APが、任意にそのAPSが悪用されるのを回避することや、あるいはそのAPSの悪用が回避できないのであれば当面そのAPSの提供を中止することはほとんどなく、具体的にそのAPSを悪用している利用者に対しサービスの提供を中止することすらなかなか行おうとしない。
  4.  そこで、匿名の陰に隠れた違法行為が行われている場合に、当該違法行為者に対してそのAPSを提供しているAPに対して当該違法行為についての民事上又は刑事的な責任を問い得ないか否かを検討することとする。

第2 Anonymity Provide Serviceの概要

  1.  インターネットでは、ネット上の紛争は、ICANN等の機関がいわば統治機関として主体的に解決するのではなく、当事者間で自主的にまたは現実社会の紛争処理機関(ex.裁判所等)を利用して解決することが予定されている(なお、パソコン通信に関してであるが、「誹謗中傷等の問題発言は、標的とされた者から当該発言をした者に対する民事上の不法行為責任の追及又は刑事責任の追及により、本来解決されるべきものである」としたものとして、東京高判平成13年9月5日判時1786号80頁。)。
    もちろん、当事者の一方が他方に対して「匿名」であり続ける場合(とりわけ、義務者と目される側が権利者と目される側との関係で匿名であり続ける場合)、「匿名」の当事者は真摯な態度で紛争の解決にあたらないおそれが高くなるし、(当事者間の自主的な協議により解決が付かなかった場合に)裁判制度を利用して紛争の解決を図ることも困難となる。
     そこで、インターネットにおいては、およそ下記のようなシステムが採用されている。
     まず、特定の者(ドメイン登録者)がドメイン名管理組織(レジストラ)からグローバルIPアドレス及びドメイン名の割り当てを受ける。ドメイン登録者は、割り当てを受けたIPアドレスを契約者に一時的に割り当てたり、割り当てを受けたドメイン名を使用したメールアドレスを契約者に割り当てたり、サブドメイン等を割り当てたりする。レジストラは、whoisデータベースを通じて、ドメイン登録者の名前および住所等の情報を公開する。
     このことを前提に、我が国でも、違法な情報発信に用いられたIPアドレス又はメールアドレスやサブドメイン(に用いられているドメイン名)を管理しているドメイン登録者をwhoisデータベースにより調査し、当該ドメイン登録者に対して、特定の日時に特定のIPアドレスの割り当てを受けていた者または特定のメールアドレスやサブドメイン名の割り当てを受けていた者の氏名・住所等を照会するという運用がなされてきた1
  2.  このようなドメイン登録者を介して違法情報発信者の氏名・住所等の情報を調査するという手法が有効であるためには、以下の条件が満たされることが求められる。
    1. 違法情報発信者が使用したIPアドレス・メールアドレス等を被害者または捜査機関等が容易に知ることができること。
    2. 違法情報発信者が使用したIPアドレス・ドメイン名の管理者の氏名・住所・連絡方法等を被害者または捜査機関等が容易に知ることができること。
    3. 違法情報発信者が使用したIPアドレス・ドメイン名の管理者が、どこの誰に(いつ)どのIPアドレスまたはメールアドレスを割り当てていたのかを一定期間把握していること。
  3.  逆にいうと、これらの条件のいずれかを満たさないこととすれば、違法情報発信者の匿名性は飛躍的に高まることとなる。
     例えば、匿名プロクシサーバを不特定人相手に提供したり、匿名プロクシサーバを介したコメントの投稿を許容したり、インターネット接続したパソコンの使用を身元確認することなく不特定人に認めたり、電子掲示板の管理人がIPアドレスの開示請求に応じなかったりした場合には、ⅰの条件はみたされない。また、ドメイン名登録代行者がドメイン登録者の氏名・連絡先等を正確にwhoisデータベースに登録しなければiiの条件が満たされない。また、アクセスプロバイダがアクセスログを記録せずまたは短期間のうちに消去してしまう場合には、iiiの条件が満たされない。
  4.  上記iないしiiiの条件の全部または一部が満たされない状態を作出することによって違法情報発信者の匿名性を高めたAPは、利用者の違法行為による法的責任を負うことになるのかが、今回の研究のテーマである。今回は、時間の関係で、APが利用者による不法行為について共同不法行為責任(幇助責任)を負うか否かに絞って論ずることとする。

第3 Anonymity Providerと利用者による違法行為の幇助

  1.  民法第719条第2項は、「行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する」と規定する。ここでいう「幇助」とは、「不法行為の補助的行為をなすこと」と定義され(「注釈民法(19)」327頁(徳本鎮執筆担当))、凶器の供与等の他、見張り行為等もこれにあたると解されている(徳本・前掲327頁)。違法行為ないしその行為者の発覚を困難とする行為が幇助に当たると認められた裁判例としては、預金口座売買の仲介行為が当該預金口座を用いた詐欺的不法行為の幇助にあたるとした例(神戸地洲本支判平16年4月20日判時1867号106頁)がある他、刑法上の幇助に関して、オービスによる撮影を困難にするナンバープレートを販売する行為が道路交通法違反(制限速度違反)の幇助に当たると認められた例(大阪地判平成12年6月30日判タ1098号228頁)がある。また、プリペイド携帯について、その高度の匿名性から「振り込め詐欺」等の違法行為にしばしば悪用されたため、国会においてもその廃止論が強く主張された(結局、本人確認を厳格に行うことにより匿名性を排除することを義務づける法律(携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律)を平成17年に制定する代わりにプリペイド携帯を存続させることで解決した。)。
  2.  インターネットを利用して公然と行われる不法行為(とりわけ、名誉毀損や侮辱、送信可能化権侵害等の、やむにやまれぬ動機などはないもの)についていえば、発信者の匿名性が高度に保護されており、法的な責任を実際に負わされるリスクが著しく低下されているからこそ、安易にこれを行ってしまうという側面がある。したがって、APSを提供することが、利用者による名誉毀損等の不法行為を心因的に幇助していることは否定できない。
    共同不法行為(幇助)者として損害賠償請求を負うには、故意または過失のあることが必要である。ただし、特定の利用者がAPSを利用することについての故意までは必要ではない(前記洲本支部判決参照)。そのAPSが、その性質上、具体的かつ現実的な蓋然性をもって特定の類型の違法な権利侵害行為を心因的に幇助するものであり、APがそのことを予想しつつ当該APSを提供していた場合には、高度の結果回避義務が課されることになる(東京高判平成17年3月31日[ファイルローグ事件]参照)。なぜならば、
    1.  当該APSの提供により、具体的かつ現実的な蓋然性をもって特定の類型の違法な権利侵害行為を行う意思が強化される蓋然性が高いこと、
    2.  APがAPSの提供を漫然と継続している限り匿名性が保障されていることで安易かつ無責任となった利用者による権利情報流通の危険を低下させる実効的な手段はないこと、
    3.  APSを利用した誹謗中傷等により生ずべき被害法益は名誉権や名誉感情等の人格権であり極めて重大なものであること、
    4.  発信者のプライバシー権ないし自己情報コントロール権は被害者の裁判を受ける権利を実質的に保障する限度において制限することを法が予定していること(プロバイダ責任制限法第4条第1項)、
    等を考えると、その提供するAPSが具体的かつ現実的な蓋然性をもって特定の類型の違法な権利侵害行為を幇助することを予想していた場合には、そのAPSを利用した権利侵害行為を防止する措置を講ずる条理上の義務をAPが負うということができよう(条理上の義務に関しては、最判平成13年3月2日民集55巻2号185頁、前掲東京高判平成13年9月5日、東京地判平成14年6月26日判時1810号78頁、東京地判平成15年6月25日判時1869号46頁参照。また、結果回避義務の存否を判断する諸要素については、森島昭夫「不法行為法講義」196〜205頁)、幾代通「不法行為」33頁〜43頁参照)。

第4 幇助者としての共同不法行為責任を負うAnonymity Providerの類型

  1.  APSには、開示関係役務提供者としての自らの義務を果たさない(ex. 電子掲示板管理者が投稿者のIPアドレスの開示をことさらに拒絶する等)あるいは果たすための情報収集管理行為を怠る(ex. 電子掲示板管理者がアクセスログの保存を行わない等)という類型と、被害者が発信者を追跡するための情報をことさら隠蔽しまたは変造する(ex.匿名プロクシサービスを提供する、ドメイン登録代行業者が真の登録者の氏名・住所とは異なる氏名・住所をwhoisデータベースに登録する等)という類型とがあり得る。
  2.  各開示関係役務提供者がどこまでの情報を収集・管理すべきかという点は、その時々において、どこまでの情報を提供すれば被害者が加害者を特定することを妨げないかという観点から判断すべきである(ex.海外の匿名プロクシ経由の違法なコメント投稿等が蔓延した場合は、氏名・住所を確認した上で発行したIDを入力しなければコメントを投稿できないようなシステムにしたり、海外の匿名プロクシ経由のコメント投稿をブロックしたりする等の措置を講ずるべきであって、当該違法コメントにかかるIPアドレスとして匿名プロクシのIPアドレスを漫然と通知するにとどめた場合は必要な情報収集管理行為を怠ったものとすべきであろう。)。
  3.  特定電気通信役務提供者がその利用者に対してAPSを提供した場合(ex.アクセスログをことさら保存しない、発信者情報開示請求を受けても合理的理由なしに開示を拒む等。)、APとしての幇助責任を負うのかについては、プロバイダ責任制限法第3条1項との関係で問題となり得る。
    同項の文理からは、当該役務提供者は、当該特定電気通信による情報の流通自体を具体的に知らない場合には、当該情報の流通によって生じた損害については、責任の発生根拠にかかわらず、賠償責任を免ぜられるかのようにも見える。しかし、同条項の立法趣旨は、「自ら提供する特定電気通信による他人の権利を侵害する情報の送信を防止するための措置を講じなかったことに関し、特定電気通信役務提供者に作為義務が生ずるかどうかが明確でない中で、当該情報の流通により権利を侵害されたとする者との関係での損害賠償責任(不作為責任)が生じない場合を可能な範囲内で明確にする」ことにある(総務省電気通信利用環境整備室等「プロバイダ責任制限法  逐条解説とガイドライン  」26頁)。このような立法趣旨からすれば、同項によって免責されるのは特定電気通信役務の提供に必然的に伴う物理的な違法行為への関与についての幇助者としての責任に限られるのであって、APSを提供することにより第三者の権利を侵害するような違法な特定電気通信を発信しようという意思を強化させるような管理・運営をしている特定電気通信役務提供者の、心因的な幇助を行ったということについての共同不法行為(幇助)責任については、同項の適用対象外であるといえよう(解釈論としては、同項において「権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって」とあるところから、同項の適用対象は、「送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能であったのにそのような措置を講じなかった」(が故に、権利侵害情報が不特定人に送信されてしまった)ことについての損害賠償責任に限定されるとするもの等が考えられる。)。

注1
例えば、「JPNICのIPアドレス割り当て管理業務における情報の取り扱い等に関する規則」第7条第1項第2号は、登録情報の公開目的の一つとして、「ネットワークの運用、特にインターネット上での自律的なトラブル解決のために、当該ネットワークに関する連絡先を知るため」を掲げている。また、日本のプロバイダ制限責任法自体、紛争の当事者間での解決を図るために発信者を特定するための手がかりとしてwhoisデータを活用することを当然の前提としている。

01/12/2006

30年ローンの3年目

 さくらちゃん問題でそのご両親を非難する方々にはこの種の認識を有している人が多いようです。

3年前の購入と考えると、地価が大きく下げていた時期なので、現時点で含み損をかぶっているとは考えられない。つまり、家を売ればかなりの部分、何とかなるかもしれないけど、売るわけにはいかないということか。

 しかし、普通、住宅ローンには金利がかかるのです。例えば、30年ローンの最初の3年目くらいだと、大して元金は減りません。頭金プラスアルファ程度です(例えば、1億円のローンに対し、金利年3.7%の固定で、月々46万円の元利均等弁済だと、36ヶ月目の残元金は約9423万円。新築→中古という値下がり要因を考慮に入れず同額の1億円で売れると仮定しても、手元には600万円弱しか残りません。したがって、「家を売ればかなりの部分、何とかなるかもしれない」ということはまあないだろう(「米国での心臓移植」に必要な資金需要を考えると)と、普通は推測してしまうわけです。

【追記】

20年ローンではないかとのご指摘を受けました。
固定金利3.7%、月々59万円の元利均等弁済で20年ローンを組んだ場合、3年目ではまだ8900万円強の残債務が残る計算になります。したがって、「家を売ればかなりの部分、何とかなるかもしれない」ということはまあないだろうということにはあまり影響はないようです。

Expedia日本語版

 旅行情報サイトとして定評のある「Expedia.com」の日本語サービスが、「Expedia.co.jp」として始まりました。

 「Expedia.com」は以前より利用させて頂いていたので、少し期待して「Expedia.co.jp」を覗いてみたのですが、一つがっかりすることを発見しました。本家の「Expedia.com」の場合、室内に高速インターネット接続できる設備があるホテルだけを検出する機能がある(「Hotel amenities:Narrow your search」との表示のうちの「Narrow your search」の部分をクリックすると、ホテルが提供する設備・サービスで絞り込みを行うことができるのですが、その絞込項目の一つとして、「High-speed Internet access」が用意されています。)ので、例えば、「Parisのホテルで、高速インターネット接続ができるホテルを、安い順にあたっていく」ということが簡単にできます(夏の旅行なら、さらに「エアコンがついている」という条件を付加しますけど。)。

 「Expedia.co.jp」でも、「ご希望のサービス・アメニティを完備するホテルを表示する サービス・アメニティ一覧を表示する」との表示のうちの「サービス・アメニティ一覧を表示する」との部分をクリックすると、ホテルが提供する設備・サービスで絞り込みを行うことができるのですが、その絞込項目に「室内に高速インターネット回線」等がありません。ホテルの室内でインターネットが使えるかどうかということは「会議室(少人数)」とか「敷地内にスパサービス」とかよりは日本人旅行者にとって重要度が高いと思うのですが、なぜ日本語にローカライズするときにそういう便利な機能を落としてしまうのか理解に苦しむところです。インターネット接続環境に関するデータを持っていないというのならばまだわからなくはないのですが、「Expedia.co.jp」でも個々のホテルに関する情報を見ると、「 インターネットアクセス(ハイスピード)」、「インターネットアクセス(ワイアレス)」、「インターネットアクセス(追加料金) 」などの情報を表示できているのですから、不思議です。

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