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26/01/2007

起訴率の低さと無罪率の低さとの関係

  矢部先生

 検事は、事件の起訴不起訴を決める際の事実認定にあたって、全ての証拠の証明力を、有能な弁護士による批判にさらされた後の状況を想定した上で、それらの証拠を裁判官はどのような評価をするであとうか、という目で検討し、弁護士による批判に晒されたとしても裁判官が有罪とするに足る証拠があると判断したときにだけ起訴する、というのが原則です。
 つまり、裁判官の立場に立って事件を考えて、裁判官が間違いなく有罪にすると認められる事件だけ起訴しているということです。

と仰っています。しかし、「裁判官が間違いなく有罪にすると認められる」とは言えないとして起訴を断念する場合、嫌疑なし又は嫌疑不十分ということで不起訴とすることになっているのですが、統計上そのような理由で不起訴とする例はそれほど多くありません。不起訴とする理由の大半は、情状や起訴価値を加味しての「起訴猶予」です。例えば、罪名別検察庁終局処理人員をみると、平成14年度の不起訴件数のうち、起訴猶予が89万6759件であり、嫌疑なし及び嫌疑不十分を含む「その他」は5万0345件でしかありません。責任能力がない故の嫌疑なし又は嫌疑不十分が相当数あるものと思われる殺人罪等を除くと、起訴猶予以外の理由で不起訴としている割合の小ささに気がつくはずです。家裁送致などを外して考えると、嫌疑なし・嫌疑不十分等で不起訴となる割合は約2.6%にすぎません(殺人の場合嫌疑なし・嫌疑不十分等で不起訴となる割合は3割を超えますが、強盗だと12.5%、放火で24.7%です。)。

 この数字から何を読み取るのかということは、諸外国の不起訴率や無罪率がわからない(起訴便宜主義と対峙する起訴法定主義というのは、公訴に値する嫌疑がある場合には検察官は起訴をしなければならないとする考え方であって、捜査の結果嫌疑がないか又は不十分な場合にも起訴しなければならないとするものではありませんので、無罪率が高い諸外国でも、嫌疑不十分を理由とする不起訴というのは相当数あるのではないかと思います。ここを参照。)ので難しい面もありますが、ただ、起訴率の低さから「裁判官が間違いなく有罪にすると認められる事件だけ起訴している」ということを説明することには躊躇を感じます。

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Commentaires

事件事務規程72条2項20号によれば、
「起訴猶予 被疑事実が明白な場合において,被疑者の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないとき。」とあります。
http://www.moj.go.jp/KEIJI/keiji16.html

心神喪失の場合、不起訴裁定書には心神喪失と記入され、統計上は「その他」に区分されます。心神耗弱の場合犯罪として成立しておりそれ自体では不起訴とする事由にあたらないので、結果的に不起訴になったとすれば、情状等を斟酌した上での不起訴でしょうから、起訴猶予でもおかしくないですが。

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