ドメイン名の競売
ドメイン名の強制執行問題についての議論が最近ネット上では盛んですが、大げさに考えられすぎのように見えます。
論点としては、
ドメイン登録者たる地位が「不動産、船舶、動産及び債権以外の財産権」(民事執行法167条1項)に該当するか
該当するとした場合に、
「権利の移転について登記等を要するもの」(同167条2項)に該当するか
該当する場合は裁判管轄が「その登記等の地」になります。
次に問題となるのが、
「第三債務者又はこれに準ずる者がないもの」(同167条3項)に該当するか
該当するとすれば差押えの効力は差押え命令がドメイン登録者に送達されたときに生じますし、そうでない場合、例えばレジストラが「第三債務者又はこれに準ずる者」にあたるとした場合には差押え命令がドメイン登録者とレジストラに送達されたときに差押えの効力が発生します。
で、差し押さえたドメイン登録者の地位を換価する方法ですが、不動産、船舶、動産及び債権以外の財産権に対する強制執行については、「特別の定めがあるもののほか、債権執行の例による」とされています(民事執行法167条1項)ので、債権執行の例を見てみますと、民事執行法161条に、
1 差し押さえられた債権が、条件付若しくは期限付であるとき、又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困離であるときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、その債権を執行裁判所が定めた価額で支払に代えて差押債権者に譲渡する命令(以下「譲渡命令」という。)、取立てに代えて、執行裁判所の定める方法によりその債権の売却を執行官に命ずる命令(以下「売却命令」という。)又は管理人を選任してその債権の管理を命ずる命令(以下「管理命令」という。)その他相当な方法による換価を命ずる命令を発することができる。
2 執行裁判所は、前項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。ただし、債務者が外国にあるとき、又はその住所が知れないときは、この限りでない。
という規定がありますので、売却命令を発するか、または、「その他相当な方法による換価」として競売を命ずるのではないかと思います。
で、換価が実現すると、換価の申立てを行った債権者のみならず、執行力のある債務名義の正本を有する債権者であれば原則誰でも売得代金から配当を受けることができます。で、なお余れば余った分が債務者に交付されます。
で、債務者が当該ドメイン名を使えなくなるのは、当該ドメイン名について登録者の地位が売却先または競落人に移転し、レジストラがその旨の登録を行ったときであって、当該ドメイン名について差押えを行ったときではありません。もっとも、ドメイン名を失ったことによって債務者または第三者が損害を被ったとしても、換価の申立人 は何らの法的責任も負いません。
強制執行の管轄が日本の裁判所にある場合、ドメイン登録者の地位が売却先または競落人に移転するだけのことですから、レジストラとしては、これに沿った登録事項の更新をすることを拒絶する理由はないでしょう。
強制執行の管轄が日本の裁判所にない場合は、管轄裁判所の所在する国や地域の執行法の定めによることになりますが、資本主義経済を基本とする社会において、新しい種類の財産に対する換価制度がないところはほぼないのではないかと思います。
なお、法律家系ブロガーの中で民事訴訟法系といえば、やはり町村先生と岡田先生が思い出されますので、この両先生の解説を待つのがよさそうです。
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Commentaires
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「英数字3字+.net」というドメイン名自体空きが少ないので、それなりに値が付くのではないでしょうか。日本の2ちゃんねらーのことをよく知らない欧米系の企業に売却したって言い訳ですし。
Rédigé par: 小倉秀夫 | 14/01/2007 09:27
しかし、ドメインなんて値段がつくものなんでしょうかね?競売の始値はどうやって設定するんでしょうか?法律的に決まってるんですか?
Rédigé par: トニオ(音羽理史) | 14/01/2007 03:24