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24/02/2007

実名って何かが嬉しくて使用するものではないのでは?

 「実名を名乗ることで何が嬉しいんだろう」という疑問を持つ方々がおられるようですが、私たちは普段から、何かが嬉しくて実名を名乗るというより、当たり前のこととして実名を名乗って生きているのではないかという気がします。私の認識では、弁護士や大学教員等のような特殊な職業の人のみが実名を名乗っているというより、ほとんどの職業の人や学生さんたちも実名を名乗って生きているようです。もちろん、原則源氏名を用いる職業もあるとは思いますが、その方が特殊だと認識しています。

 実名を名乗ることを「私的制裁や逆恨みによる逆犯罪などをどうやって抑止するかを考えないで自己責任以上のもの」といってしまうというのは、現実社会でどのように暮らしているのでしょうか。

 私たちは社会生活を営む上で実名や所属、住所等の個人情報を、様々なレベルの関係性を有する人々(ときには自分とは特段の関係を有しない人にも)に晒して生きています(大人の世界では、最初は「実名+所属」という形で個人を同定するための個人情報を示しつつ(ビジネスマンの名刺に記載されているのは大抵このパターンです。)、親しくなるに連れて住所等の情報をも示すというのが多いとは思いますが、特にフリーで活動されている方や学生等(一人暮らしの女子学生を含む。)の場合、最初から名刺に実名とともに自宅の住所まで刷り込んでいる例が少なくありません。といいますか、私も、司法修習生のときの名刺はそうでしたし、今でも消費者として個人を同定する必要がある場合には実名及び自宅住所を偽りなく登録します。また、最近区役所に行きました児童の習字(「電子投票」の4字が課題だったようです。)及び税に関する作文が張り出されていましたが、そこでは所属する学校名、学年と実名が堂々と掲載されており、作文に至っては、児童の顔写真まで掲載されていました。調べたわけではありませんが、学校で課題の習字を作成するときに「実名を書くと危ないですから登録済みの仮名を書いておきなさい」という指導がなされているという話は聞いたことがありませんので、おそらくあそこにでていたのはその児童の実名なのではないかと思います。)。このように、特に実名に関して言えば、かなり関係性の薄い人々、あるいは不特定の人に対してすら、特に偽らずに名乗るというのは、我が国では一般的です。大抵の場合、「私的制裁や逆恨みによる逆犯罪などをどうやって抑止するか」なんてことは考えられていませんが。

 企業にしても学校にしても、「銀行口座と同じくらいの精度で本人確認をして利用登録をするくらいの仕組みで十分である」から実名を名乗らなくとも仮名で済むようにせよ、会社や学校で実名を名乗らせるのは、「私的制裁や逆恨みによる逆犯罪などをどうやって抑止するかを考えないで自己責任以上のものを」従業員や生徒に「求めるのであれば、それは極端に言うと『(犯罪的行動をしてなくても)道端で襲われても自己責任、その覚悟が無い奴は一切会社や学校に来るな』と言っているのと大して変わりがない」と言われても、きっとどこまで真剣に相手にしていいものかとまどってしまうのではないでしょうか。

 あの人たちは、現実空間でも、「私的制裁や逆恨みによる逆犯罪など」を怖れて、実名とは異なる名称を名乗り、自分がどこの誰であるのかを第三者に知られないようにびくびくして生きているのでしょうか。私たち弁護士の場合、家族が逆恨みされて殺されるという事件が起こってから、一般向けにも配布する弁護士会名簿に原則自宅住所を載せることはなくなりましたが、希少姓の方を含めて、原則実名を名乗るという運用は変えていません。仕事の性質上「逆恨みによる犯罪」に遭う危険はそこそこ高いのですし、それを抑止する対策なんか講じようはないのですが、「『(犯罪的活動をしてなくても)道端で襲われても自己責任、その覚悟が無い奴は弁護士業務をするな』と言っているのと大して変わりがない」等と思い詰めている人はどうもいないようです。

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Commentaires

 ネットとリアルを混同しているというよりは、私は、ネットをリアルと切り離された空間だとは考えていないということだと思います。だから、ネットでも実名を名乗るというのは当然だと思っているのであって、特に何かが嬉しくないと、あるいは社会的強者でないと実名を名乗らない(名乗れない)というものではないと考えているということです。

 

 アーパネットの頃の利用者は、お互いに対して匿名ではいなかったのではないですか。当時をご存じの研究者の方からは、「昔は、パソコン通信は匿名のメディアであって、インターネットは実名のメディアだという説明をしていたのですが」という話をうかがったことがあるのですが。

ネットとリアルを意図的に混同された言動とは思いますが、一言言うと「ネット」の上で実名を名乗るというのは、リアル社会の例で言えば「街や道路を歩くときに氏名を背中に張って歩く」ということです。
名刺であれば、名前を教える人を自分で選べますが、ネット上では(公道でも同様ですが)情報を伝える対象者を自分で選べないわけです。(先生のおっしゃられる匿名の卑怯者にも教えないといけないわけだし)
子供たちの習字の例をあげられていましたが、彼ら、特に社会的弱者である人々に対して「氏名を背中に張って歩きなさい」とまではいえないと思いますが・・・

ま、ですから当たり前のようですがネット上では実名を名乗りたい人(おそらく、名乗るメリットがあるはず、社会的強者であるはず、名乗る意味がある存在であるはず)は名乗ってもいいだろーし、名乗りたくない人(おそらく、名乗るメリットがない人かもしれない、社会的弱者かもしれない、名乗る意味がないぐらいの存在かもしれない)は名乗らない、という現状でよろしいのではと?
(できれば言動の一貫性が保てるハンドルぐらいは使ってほしいかな?と。)

福田さんがどうお考えになっているのか知りたいところです。
(「福田さん」が実名なのか一ハンドルなのか、名乗るほど意味があるのかも含めて)

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