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15/03/2007

「歴史上の汚点」に対する政府の対応

 ヨーロッパでの日本ブームはまだまだ続いているようですけど、日本を好きになってくれる外国の方々って「歴史に何の汚点もない」からこそ日本が好きだというわけではなくて、「歴史に何らかの汚点があるか否かにかかわらず」日本を好きになってくれています。だから、60年以上前の日本において、軍隊が南京で大虐殺を行ったり、植民地ないし軍事制圧した地の女性を軍が慰安婦としていた等の過去の汚点を認めたところで、現在及び近未来の日本の国際的評価が下がるということはありません。

 他方、「歴史上の汚点」をなかったことにしよう、あるいは汚点ではなかったことにしようという動きに対する国際社会の評価というのは昨今非常に厳しいものがあります。トルコなんかもアルメニア人虐殺の問題ではかなり厳しい批判を浴びており、キプロス紛争と並んで、EUに加盟させないための口実に使われてしまいかねない状況です。特にそれが歴史学者による純粋に歴史学的な探求ではなく、右派による政治的な運動の一環としてなされている場合には国際社会は極めて冷ややかであり、かつその動きにその国の政府が関与ないし支援した場合にはその国の国際的な評価までもが低下していきます。

 安倍首相が従軍慰安婦問題でコメントしたことが国際問題化したのはまさにそういう問題だったということができます。安倍首相がなすべきことは、むしろ日本政府が保管し未だ公表していない資料を内外の歴史研究者に公開するとともに、米国政府が保管している資料の早期公開を働きかけることであって、「歴史上の汚点」をなかったことにしよう、あるいは汚点ではなかったことにしようという動きに積極的に与するものではないという姿勢でいるべきではないかと思います。

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Commentaires

業者が何を騙したんでしょうか? 軍は騙してでもつれて来いという指示をしていたのでしょうか? 借金のカタに娘を業者に売り渡した親がいるのなら、その親の責任は?
そして、今海外から責め立てられているのは prostitute なんでしょうか?

官憲が銃を突きつけて強制的に連れてきたか、軍から依頼を受けた業者が騙して連れてきた女性を元いた場所に責任をもって送り返すのではなくそのまま慰安婦として使用し続けたのかで、そんなに評価が変わってくるのかというと、かなり疑問です。

「うっかり手が触れただけ(広義)」のことを騒ぎたてられてどうしようもなくなり「故意に触れたと認めて深く謝罪すべき」(狭義)とアドバイスされても、私は受け入れません。
たとえ話をやめれば、prostitute か rape かという違いは、まったく“ささいな問題”ではありません。

 駐在員専用の売春宿の例に則していえば、「他社も、現地では駐在員専用の売春宿を業者に委託して運営させていたのであって、弊社を責めるのはおかしい」と新社長がいくら熱弁してみても、この件で会社に悪印象を持っている人の納得は得られないでしょうし、却って、この件にもかかわらず会社に好印象を持っている人たちの評判を却って落とすだけではないかという気がします。従軍慰安婦問題で、広義の強制はともかく、狭義の強制連行はなかったということを今更強調するのも、却ってやぶ蛇のように思います。評価する側が「広義の強制なら別に悪いことではない」と考えてくれるのなら話は変わってくる可能性がありますけど、その前提自体、現代社会においては望みが薄いです。しかも、大騒ぎをした結果、「狭義の強制を行ったとする信頼に足る証拠は見つからなかった」という程度の結論しか導き出せなかった場合には、第三者的な評価はかなり下がるリスクを負うことになります。

その推測がすべて正しいとして(広義)、「強制的な連行」が会社(政府)の指示だったのかどうか(狭義)が問題なのではないですか? 広義で謝罪したら、狭義の責任まで問われている状況だと認識していますが。
また、最後の部分については、(これは池田信夫氏のコメントの受け売りですが)他国でも同じことはあったそうなので、当時の道徳観を現在の道徳観で責めても仕方がないのでは?

 「駐在員が現地の盛り場にうろついては女スパイに捕まって企業秘密をべらべらしゃべってしまうことに業を煮やした会社が、専門の業者に依頼して、当該会社の駐在員専門の売春宿を運営してもらうことにした。売春婦の募集、選定等は当該業者に任せていたが、当該売春婦の売春宿への送迎等は会社所有の自動車等を用いていた。その後、会社が支店を引き揚げた後(その際に、駐在員らにとって不都合な事実を示す書類の多数が焼却されたことは一般に知られている。)、以前その売春宿で売春婦をしていた女性等から、『強制的に売春宿に連行された』との訴えがなされた。高まる批判を受けて、会社で調査委員会を作り、当該女性等からの聞き込み調査を行った結果、調査委員会の委員長は、不適切な募集活動等に会社の従業員等が関与したケースのある事実を認め、謝罪した。』という例を考えてみると、後になって『売春婦の不適切な募集に会社が組織として関与した物的な証拠はない」ことを認めさせることに大した意味があるようには思えないし、それをいくら強調しても、「売春婦の不適切な募集に会社が組織として関与していなかったことを明らかにする」ことはできないと思ったりします。
 私が相談を受けたら、「聞取り調査の一部や、端緒となった告発記事に矛盾を発見したくらいで、話を蒸し返すのは、得策ではない」と答えるような気がします。まして、「駐在員が現地で女性を買うことは一般に行われていたのであって、特に非難されるいわれはない」みたいな発言は反感を買うだけだからやめるようにと諭すように思います。

なるほど。痴漢冤罪の映画ができるわけです。
小倉さんをして、このような認識を持たれているというのが、この問題の深刻なところだという気がしま。
まず、今、証拠・証言と呼ばれているものは捏造か拡大解釈にすぎないというのが池田氏のブログ(およびコメント)の指摘です。もっとも、このことは池田氏のブログに限らず、以前から産経新聞あたりでも論理的に展開されています。そして、確たる証拠がないのに「あった」と糾弾されているのが現状です。「なかったことにしたい」とおっしゃるからには小倉さんは「あった」事実を確信されているのでしょうが、その根拠は何でしょうか。
誤解を恐れずにたとえてみましょう。ある会社の社員が強盗を働いたとします。会社の幹部は「わが社の社員が起こした不祥事についてお詫びします」と表明したら、この会社の元社員やら競合会社の社員やらが出てきて「社員に強盗を働かせるのはこの会社の体質だ」と“証言”してきました。扇動的なマスコミやら政治家までが登場して「会社の体質」を批判するありさまです。証言がでっち上げだとわかり、強盗体質だという証拠がないにもかかわらず、「お詫びしたのが確固たる証拠だ」「火のない所に煙は立たない」「隠している証拠を出せ」と手のつけられない状態になってしまいました。
この会社は「社員が強盗を働いたのは会社の体質の問題でした。今後はいたしません」というお詫びを出して、過去を清算すべきでしょうか。そうすることで会社の名誉は守られ、あらためて社会に受け入れられるでしょうか。
『それでもクニはやってない』という映画が必要でしょうか。

 別に池田さんのところのみを射程範囲にしているわけでもありません。
 ただ、池田さんにしても「証拠がない」とまでしかいえないようではインパクトはないです。歴史学の分野では、「証拠はない→なかったことが明らか」とはならないからです。特に、「証拠がないのもやむを得ない」という環境下で「証拠がない」ことはその事実がなかったことを全然推定してくれないのです。そういう意味では、敗戦前後に公文書等を焼却してしまったり、現在にいたるも歴史学者に対してすら全ての公文書等を公開しないということは、いわば裏目に出てしまっているということができます。
 さらにいえば、池田さんが従軍慰安婦問題についてのエントリーを立ち上げたときに集まってきた方々がイデオロギー的に振る舞えば振る舞うほど、客観的な検証がしたいのではなくて、イデオロギー的に否定して見せたいのだと見られるリスクを高めることになります。そういう意味では、彼らはまさに贔屓の引き倒しをしているように見えます。この種の検証をするためには、「なかったことにしたい」イデオロギーを如何に消し去るかというのが一つの勝負のポイントになります。

これはいかがなものかと。:-<
池田信夫blogのことを指しているのであれば、歴史上の汚点を「なかったことにする」のではなく「なかったことを明らかにする」活動です。

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