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14/04/2007

「研究者には引用されない本だ」

 池田信夫さんは、「冷戦的ステレオタイプ」というエントリーにおいて、

もうひとつの根拠である"Japan's Comfort Women"も、田中利幸という共産党系の研究者が支援団体の証言集を英訳した2次資料で、研究者には引用されない本だ。
と仰っています。

 「共産党系の研究者」によるものであることを強調してその資料価値を貶めるのは、右派勢力には受けがいいかもしれませんが、およそ研究者が採るべき態度だとも思われません。慰安婦にされた方々が、どのようにしてそういう状況に至ったのかについては、慰安婦の方々の聴取り調査の結果こそが第一級の資料なのであって、それを英訳したものが(日本語が堪能ではないであろう米国議会付きの調査員にとって)第一級の資料の1つであることは疑うべくもありません。

 それに、Amazon.comのを見る限りにおいては、むしろ評判がよい書籍のようです。池田さんは何を根拠に「研究者には引用されない本だ」と仰られているのかわからないのですが(もう購入されて読まれたのでしょうか?)、Google Scholarで調べてみると、研究者に引用されていないわけではないようです。

 池田さんに

さらに悪いことに日本にも、この田中利幸氏のように、欧米のステレオタイプに迎合して英文で「業績」を出す人々がいる
とまでいわれてしまっている田中さんの本ですが、
This is not just about 'Japan'; it is about Japan and the US and Australia and Italy and the systematic sexual ravaging that is part of how states conduct war.
–Mary Katzenstein, Professor of Government, Cornell University
と評されているところを見ると、そんな安直な本でもなさそうな気がします。

 都合の悪いことが書かれている文献の資料価値をこのような稀薄な根拠で貶めてみても、国内で管を巻く役にしか立たないように思えてなりません。

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Commentaires

> 「共産党系」云々という非本質的な理由で資料価値を否定してしまう論法

もちろん、私は、この姿勢も支持していません。
慰安婦問題については、論点は "by government" であるかどうかと考えています。

 自分に都合の悪い資料は「共産党系」云々という非本質的な理由で資料価値を否定してしまう論法というのは、「事実」の有無を判断する姿勢ではないように思いますね。

 「強制」があったことを裏付ける資料は「ステレオタイプに迎合するもの」であって資料価値がないことにしてしまえば、そりゃ、「裏付ける資料はない」ことに主観的にはなります。ただ、そんな議論をいくら英訳しても、およそ斟酌されないと思いますけど。

※本文中、「Editorial Review」前に「>(半角)」が抜けています。

「結論ありき」で都合のよい材料をもちあげ、都合の悪い材料を見下すというのは、裁判でも同じでしょう。判断すべき対象は“事実”であり、社会的評価を気にして変えるものではないというのが私見です。

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Voici les sites qui parlent de: 「研究者には引用されない本だ」:

» [戦争犯罪][文献紹介]「米軍はなぜ「慰安婦」を無視したのか」 [Apes! Not Monkeys! はてな別館]
何度か吉田裕からの孫引きというかたちで言及した田中利幸の「米軍はなぜ「慰安婦」を無視したのか [上][下]」(『世界』、1996年10月号、11月号)。著者は『知られざる戦争犯罪 日本軍はオーストラリア人に何をしたか』を書いた現代日本政治史家。 この論文は1)第二... [Lire la suite]

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