Diggにおける反乱
Diggという英語圏ではユーザーの多いソーシャルニュースサイトにおける「反乱」が、英語圏では話題になっています。
HD-DVDのコピープロテクトを打ち破る暗号キーがDiggのユーザーにより投稿され、そのことについて削除せよとの警告状が来たためこれを削除したところ、一部のユーザーから運営サイドがDigg上で批判をされたり、上記暗号キーを執拗に投稿されるなどの強い反発を受けた。そうしているうちに、Diggの経営陣が、音を上げて、暗号キーを削除しないことにした。それが、おおざっぱなストーリーです。
Diggの創設者であるKevin Roseは、「(A)fter seeing hundreds of stories and reading thousands of comments, you've made it clear. You'd rather see Digg go down fighting than bow down to a bigger company. We hear you, and effective immediately we won't delete stories or comments containing the code and will deal with whatever the consequences might be.……If we lose, then what the hell, at least we died trying.(何百ものストーリーを見、何千ものコメントを読んだらわかったよ。君たちは、Diggがより大きな会社に頭を下げるのより、戦って敗れるのを見たいのだろう。そうするよ。速やかに、例のコードを含むストーリーやコメントを削除しないことにするし、その結果がどうなろうとも何とか対処してみるよ。俺たちが負けたら……少なくとも、挑戦して死ぬってことさ。)」と述べています。
このKevinの声明前に、Diggのスタッフである Jay Adelsonが述べるとおり、「Our goal is always to maintain a purely democratic system for the submission and sharing of information - and we want Digg to continue to be a great resource for finding the best content. However, in order for that to happen, we all need to work together to protect Digg from exposure to lawsuits that could very quickly shut us down.(我々のゴールはいつだって、意見を開陳し情報を共有するための純粋に民主的なシステムを維持することにあるし、俺たちは、Diggが最高のコンテンツを探し出すために偉大なリソースであり続けてほしいと願っているよ。でもさ、そうするためには、俺たちを忽ち閉鎖させかねない訴訟に晒されることからDiggを守るためにみんなで協力していくことが必要なんだ)」と述べていた(これは企業倫理としては当然の声明です。)のですが、荒れ狂うユーザーたちは聞く耳を持たなかったので、上記のようなことになってしまいました。
上記のKevinの声明に対しては、Michael S. Maloneから、「In other words, Digg was willing to block porn and hate sites, but was perfectly willing to violate trade secrets if its users said so.(言い換えれば、Diggはポルノやヘイトサイトをブロックしたが、ユーザーがそうせよと言えば、営業秘密を完璧に侵害することを厭わないということだ」との批判を受けています。
日本のネット事業者やそのシンパの方々は「法務担当者も顧問弁護士もいないから個々の投稿の適法・違法性の判断が自分たちにはできない(だから、違法な投稿の削除を拒んでもネット事業者は法的責任を負わされるべきではない)」という悠長なことをいっているわけですが、顧問弁護士抜きで事業を営むなんて考えられない米国文化で会社を興しているKevinはそんな悠長なことは考えていないでしょうし、おそらく顧問弁護士からは、暗号キーを削除しなければ、サービス自体の停止を命じられたり巨額の賠償命令が下される虞があることを聞かされたことでしょう。しかし、そういう違法行為(である可能性が高い行為)に荷担しなければ、それはそれでサービス事態が立ち行かなくなることをユーザーから突きつけられてしまう。本当に辛い決断だろうと思います。
では、そういう要求を突きつけているユーザーは、といえば、暗号キーを削除しないことでDiggが敗訴して立ち行かなくなっても、何の責任も負わないだろうし、あっけらかんとして類似のサービスを使うのだろうなと思ったりはします。結果に責任を持たず、サービスがなくなっても大して痛くも痒くもないからこそ、「暗号キーの公開」という「表現の自由」の本来的な価値からは遠い類の言論を守らせて、システム自体を存亡の危機に立たせることに何らの躊躇も覚えないのだろうなあと推測します。
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