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20/06/2007

懲戒申立てはリスクのある行為

 刑法172条は次のように定めています。

人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。

 ここでいう「懲戒の処分」には弁護士会の懲戒処分も含まれていると一般に解されています。すなわち、弁護士会に虚偽の懲戒申立をした場合には、虚偽告訴等として、三月以上十年以下の懲役を科されうるということになります。

 産経新聞社のizaによれば、「山口県光市の母子殺害事件で殺人罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の弁護人に対する懲戒請求が、弁護人の所属する法律事務所や所属弁護士会にメールで多数送られていることが分か」ったとのことです。なんでも、「ネット上には、懲戒処分請求の理由として「弁護人らは意図的に裁判を遅らせている」「被害者感情に配慮すべきだ」「持論の死刑廃止論を特定の裁判に持ち込むべきではない」などと、弁護人らに批判的な書き込みが目立つ。」とのことですが、報じられているところから判断すると、上記事件の弁護人は「持論の死刑廃止論を特定の裁判に持ち込」んではいないようですし、「弁護人らは意図的に裁判を遅らせている」ことを示す証拠もなさそうです。ということは、これらの事由を根拠に懲戒申立てをすると、虚偽告訴等罪の客観的構成要件に該当することになりそうです。

 すると、あとは故意ありといえるかが問題となります。虚偽告訴等においては申告事実が虚偽であることにつき確定的故意があることを要するか、未必の故意でもよいのかについては、学説上は対立があります。但し、最判昭和28年1月23日刑集7巻1号23頁は未必の故意で足りるとしています。すると、申告事実が真実であるとの確信はないが「「死刑廃止運動を牽制(けんせい)する事実上の抑止効果になるのではないか」云々という理由で懲戒申立てを行うのは、結構危険です。

 まあ、虚偽告訴等罪で摘発されなかったとしても、

被告の本件懲戒請求は、理由のないものであることが明らかであり、しかも、被告の立場に立った通常人であれば、上記各主張が上記綱紀委員会等において採用され得ないものであることは容易に知り得たものということができ、それにもかかわらず、被告は、本件懲戒請求を行ったものであり、本件懲戒請求申立書の記載内容、表現等にも照らすと、本件懲戒請求は、弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くというベきであり、被告は、少なくとも過失による不法行為責任は免れないというべきである

として、懲戒申立人が100万円の支払いを命じられた裁判例(名古屋地判平成13年7月11日判タ1088号213頁)もあり、民事的なリスクがあることも否めません(こっちは、ご本人が懲戒可能性について主観的にどう思っていようと、「採用され得ないものであることは容易に知り得た」で責任が認められていることに注意して下さい。)。

 一般には、懲戒申立てが却下されても弁護士も面倒なので、刑事告訴や損害賠償請求訴訟の提起等はしないのですが、この件については、刑事弁護人の弁護活動に対する攻撃といった側面があるので、あえて司法的救済を求めてくるかも知れません。

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