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22/06/2007

国民感情に反する弁護活動をするなというのであれば

 弁護人は、少なくとも被告人の精神疾患に由来する妄想を除いては、接見の際に被告人が述べた事実と異なる事実を法廷で主張すべきではありません(被告人が妄想にとらわれている場合、弁護人は被告人の精神鑑定を求め、刑事訴訟手続きの停止を求めるべきであって、漫然と訴訟手続きを進めさせてはいけません。)。訴訟戦略上恭順路線で行った方がよいと考えても、そのために被告人の事実に関する主張を押さえ込むためには、被告人を説得して同意を取り付けた上で行うべきであって、弁護人の勝手な判断で被告人の事実に関する主張を押さえ込んではいけません。弁護人は、被害者またはその遺族もしくは国民一般の感情を慮って、被告人の意向に反する弁護活動を行うことは許されていません。そして、それは、およそ西側先進国では共通のルールです。

 現行制度下での弁護人の職責を全うしている弁護士について、被害者またはその遺族もしくは国民一般の感情を害したからといって、懲戒が認められる可能性はないと思います。

 それが不満だというのであれば、むしろ、刑事訴訟法を改正して、「弁護人は、被害者またはその遺族もしくは国民一般の感情を害するおそれのある事実主張を行うときは、被害者またはその遺族、もしくは国民一般の感情を代表する者として政令で定めるものの事前の同意を得ることを要する」との条項を一つ設けるべきでしょう。そして、「政令で定めるもの」として、「テレビのワイドショーにおいて継続的にコメンテーターを務める者」を入れれば、ワイドショーで叩かれている被告人を弁護人が弁護することは許されなくなりますし、「インターネット上の電子掲示板およびウェブログのコメント欄で毎日平均10個以上のコメントを投稿している者」を入れれば2ちゃんねらーも納得の刑事訴訟制度ができあがります。

 もちろん、そのような制度を作り上げれば、日本は世界の笑いものだし、おそらく国連からは是正勧告がなされるだろうし、「日本と同じ価値観を有する」として価値観外交ができる相手国は中国や北朝鮮等に限定されていくのではないかと思いますが、それでも構わないという国民が大多数を占めるのであれば、憲法だって改正されてしまうので、詮方ないことです。

 実際にそのような法改正がなされるまでは時間がかかるでしょうから、光市母子殺害事件での弁護人の活動が許せないという方々は、平時の段階で、「私は、被疑者または被告人となった場合であっても、被害者またはその遺族もしくは国民一般の感情を害するおそれのある弁護活動を拒否します」という意思を表明したカードを作って携帯しておくといいのではないでしょうか。

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