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23/06/2007

個別事件で死刑廃止論を訴えるのはリスクが大きすぎる

 「名前」欄に「異議あり」としか書き込めなかった気弱な方から、「懲戒申立てはリスクのある行為」というエントリーに対して、次のような質問をいただきました。

あなたに証明できますかね?弁護士軍団が、「死刑廃止論を裁判に持ち込んでない」とか「裁判を遅らせていない」って事をさ。100%証明できます??100%無理ですよねぇ。

 「100%証明」というのが何を示すのかわからないのですが、合理的に考えれば次のようなことが言えます。

 死刑廃止論をこの光市母子殺害事件に持ち込むのであれば、「死刑制度がある以上死刑を科すことを裁判所が回避できない」場合でなければなりません。なぜなら、法定刑に死刑が含まる罪を犯したと認定されなかった場合はもちろん、法定刑に死刑が含まれる罪を犯したと認定された場合であっても、被告人に汲むべき情状も多々あり死刑を科すのは必ずしも適切ではないということであれば、裁判所としては、死刑制度存続の是非にふれることなく、当該被告人につき死刑を科すことを回避すれば済む話だからです。

 従って、この事件を死刑廃止論に利用するのであれば、むしろ、強姦殺人および殺人がなされたことに間違いはなく、その情状にも汲むべき点は全くないことを強調しつつ、そのような被告人に対しても死刑を科すことは憲法違反であるという主張をしなければならないのです。従って、立証されれば法定刑に死刑が含まれる罪を犯したとは認定されなくなってしまう今回の弁護方針は、「死刑廃止論を裁判に持ち込む」という目的があったとすると、却って逆効果なのです。

 そして、今回の弁護団は、刑事弁護については、日本の弁護士の中でもトップクラスの人たちであって、上記のようなことが理解できないとは考えがたいです。従って、この弁護団は死刑廃止論を裁判に持ち込むために殺意を否認する主張を行っているのではない、ということがわかります。

 次に「裁判を遅らせていない」ということですが、差戻審では、いずれにせよ弁護人が一定の事実主張およびその立証を行うことが当然に予定されている(新たな事実主張ないしその立証が不要なのであれば、最高裁で破棄自判すればよいだけのことです。)ので、そこで「殺意」を否定する事実主張とその立証を行うことは「裁判を遅らせる」ことにはなりません。そして、高等裁判所は、弁護側からの事実取調べ請求は通常なかなか認めてくれませんから、「引き延ばし」目的で証拠の取調べを請求しても却下されてしまいます。したがって、「裁判を遅らせる」目的であれば、あの段階で殺意の否認に走るのが合理性を欠きます。

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