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20/07/2007

「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 中間取りまとめ」に対する意見・提出バージョン

 結局、このような内容で提出しました。現在の系列システムの下で集中排除原則ということを言ってみても空しいだけだなあ(空しいだけならいいけど、徳島(特に山間部)のようにすぽっと抜け落ちるところに対する手当が、まねきTVのようなサービスの補助なしにはなかなかなしがたいというのもいかがなものかなあと思うものですから、ちょっと書き加えてみました。


8頁以下「メディアコンテンツ規律の再構成」に関して、

 公衆に対して「同じ情報を同時に受信させる」ことを目的とするか否かということで「放送」と「公然性のある通信」とを法的に峻別することに合理的な理由はないと常々考えておりましたので、今回の中間とりまとめの方向には基本的に賛成です。

 但し、規制のメルクマールとしては、
  1) 公然性の有無ないし程度
  2) インフラの希少性
の2つを軸にすべきではないかと思います。公衆への情報伝達能力が大きく、かつ、「電波の希少性」により新規参入者を極めて制限しなければならない地上波テレビ放送については、政治的な中立性を求める必要性は今後もあるでしょう。しかし、多チャンネル型衛星放送やケーブルテレビ、ミニFM等は「電波の希少性」はそれほど気にしなくとも良いので、「政治的な中立性」をそれほど要求する必要はないように思います。

9頁 「特別メディアサービス」について

 地上波テレビ放送の免許を受けた民間企業は、地上波テレビ放送の高い情報伝達能力故に、他の情報インフラよりも様々な点で競争上優位に立っており質の高いコンテンツを制作しやすい環境にあるのだから、その放送するコンテンツについては、あまねく国民にこれを伝達する義務を負うべきです。したがって、物理的にあまねく国民にそのコンテンツを伝達できない場合には、インターネット等を用いたコンテンツの転送を認めるべきです。もちろん、「契約による権利処理」でこれが実現すれば問題はないのですが、それが実現しそうにない場合は、著作権・著作隣接権の例外規定を新設してテレビ放送コンテンツのネットを利用しての転送をインターネット事業者等が行えるようにすべきだと思います。
 「放送の多元性・多様性・地域性の確保」を目的とするのであれば、むしろ東京キー局の放送番組の転送はインターネットや衛星放送、ケーブルテレビ等に任せた上で、各地の地上テレビ放送局は原則独自番組を制作し、放送するようにするべきではないかと思います。現在の系列放送局システムでは、東京キー局が制作する相対的に質の高い番組を日本国中の人が視聴できるようにするという点も、各ローカル放送局が制作する多様かつ地域性に富む番組を地域の住民が視聴できるようにするという点も中途半端になっています。

9頁以下 「一般メディアサービス」について

 放送・公然性のある通信で商業用レコードが公衆送信されることの商業用レコードの売上げに与えるプラスまたはマイナスの影響に関しては、公衆に対して「同じ情報を同時に受信させる」か否かではなく、公衆が特定の楽曲を任意のときに視聴できるか否かによって大きく違ってきます(特定の楽曲を任意のときに聴けるというわけではない場合、特定の楽曲を任意のときに聴きたいというユーザーはその楽曲の複製物を別途入手することが必要となるのであって、商業用レコードの売り上げを不当に阻害することにはなりません。)。したがって、公然性のある通信であっても、特定の楽曲を任意のときに聴けるという状態を作出しないもの(ストリーミング型のインターネットラジオなど)については、事後的に2次的使用料を支払えば、実演家やレコード製作者の事前の許諾がなくとも、商業用レコードに収録された楽曲を公衆送信(送信可能化及びその過程での一時的複製を含む)を行えるようにすべきです。

10頁 「公然通信」について

 誹謗中傷情報やデマ情報を公衆に流布させることにより被害者に甚大な損害を与えうることは、当該情報が公衆に向けて同時に発せられるか、求めに応じて時間差で発せられるかによって変わるものではありません。従って、公然性のある通信についても、放送と同様に、法的な責任主体の氏名・住所等の登録・届出等が求められるのではないかと思います。つまり、地上波テレビ放送を除く放送及び公然性のある通信については、事前抑制を行わず、中立的ではないコンテンツを流布させる自由を認める代わりに、司法手続き等による事後的な規制に完全に服するようにすることが求められると言うことです。もちろん、末端利用者のプライバシー保護を行うことによる利用者の増大を図る事業者(匿名電子掲示板の管理人や匿名での登録をも可とするブログ事業者等)もあり得るとは思いますが、この場合は、利用者が負う法的責任を実際に当該事業者が担保することを条件に、末端利用者の氏名・住所等の登録・届出等を免除するという救済策はあり得るとは思います(事業者が一旦被害者に対して賠償金を支払った上で、末端利用者に求償すればよいのですから。)。ただし、このように末端利用者の責任を事業者が肩代わりをする場合には、確定判決に基づく賠償金の支払義務の履行を事業者が怠った場合には総務省が当該事業者に対し事業の停止を命じることができるようにした方がよいと思います。特に自然人がこれらの事業主体となっている場合には、「賠償金を支払わなくとも刑事的制裁を受けずに済むのであれば、賠償金を支払わない」と開き直ることも可能だからです。
 放送や公然性のある通信の内容によるトラブルに関しては、これを安価かつ迅速に解決する裁判外紛争処理手続きを用意することが望ましいように思います。というのも、私の弁護士としての実務経験から言うと、特定人の社会的評価を低下させかねない情報を流布させるにあたって殆ど裏付け調査を行っていない例が少なくなく、それ以前に、その者についての社会的評価を低下させかねないその事実摘示が公共の利害に関するものではなく、かつ専ら公益目的でなされたとは言い難い例が多いため、情報の発信者側に、当該摘示事実の公共性、当該事実摘示にあたっての目的並びに裏付け調査の内容及び結果を事情聴取し、明らかに真実性の抗弁が成立しそうにないものについては、裁判所の審理を待つまでもなく、放送または公然性のある通信の主体に対し、しかるべき責任を負わせるのが適切だからです(放送または公然性のある通信による特定人に対する権利侵害行為は継続的・反復的になされることが多く、裁判外紛争処理手続きによる迅速な解決は、さらなる権利侵害行為を未然に防ぐという意味では重要です。)。

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