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octobre 2007

31/10/2007

日本国憲法には「B規約プラス」はない。

 産経新聞の古森義久論説委員さんが、次のように述べています。

アメリカでも日本でも人権尊重が社会の前提ではありますが、この人権尊重の大原則が犯罪者の側にも適用され、被害者あるいはその家族の側の人権が軽視されがちとなります。加害者の人権が尊重されすぎるという傾向だといえましょうか。

 まあ、昔からありがちな言説ではありますが、正直もう、うんざりです。一体全体、現在被疑者・被告人に認められている諸権利のうち何を制限したら、被害者或いはその家族の人権はより全うされるというのですか。そもそも被疑者・被告人に保障されている人権というのがどのようなものか知った上で、被疑者・被告人にそのような人権が保障されているが故に被害者或いはその家族の人権が軽視されているというお話をされているのでしょうか。

 日本国憲法にて保障されている人権のうち、被疑者・被告人に特に関係のあるものは、以下のものでしょう。

第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。 

第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 たったこれだけです。どこをどう見たら、「加害者の人権が尊重されすぎる」という気持ちになれるのでしょう。しかも、これらの被疑者・被告人に保障された諸人権は、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」において、日本を含む加盟国が保障することを義務づけた諸人権の範囲を超えていません。古森論説委員は、ブログのプロフィール欄にて「国際的にみれば、中道、普通、穏健な産経新聞の報道姿勢に沿って」云々と述べていますが、少なくとも「自由、民主主義、基本的人権、法の支配」という普遍的価値を共有する国々では、被疑者・被告人に保障されることが当然と理解されているものばかりです。

 これらの被疑者・被告人に認められた諸人権のうちどれを制限したら、どのような因果の流れで、被害者又はその家族の人権がより全うされるというのか、古森論説委員にわかりやすく解説していただきたいものです。

29/10/2007

自分たちはテレビ局様で,下々の一般庶民から何か言われることには非常に不愉快なんです!

 また、橋下徹弁護士が変わったことをいっています。

皆さんがタクシーに乗って,運転手に不快な思いをさせられたらどうします?銀行の受付窓口で不快な思いをさせられたら?こりゃひでーなーという広告を見たら?食品を買って何か異物が入っていたら? まずは,そのタクシー会社や銀行,広告主,販売業者にクレームを入れるでしょ?
とのことですが、「食品を買って何か異物が入っていたら」クレームを入れるかもしれませんが、「タクシーに乗って,運転手に不快な思いをさせられ」ても、「銀行の受付窓口で不快な思いをさせられ」ても、「こりゃひでーなーという広告を見」ても、「そのタクシー会社や銀行,広告主」に私はいちいちクレームを入れたりはしません。

 まして、全くの第三者から、「あんな悪いやつを、きちんと目的地に運ぶなどけしからん」とタクシー会社にクレームをつけたり、「あんな悪いやつの預金の引き出しに応じるなどけしからん」と銀行にクレームをつけたりはしません。その種のクレームをつける人は、どこの業界でもおかしなクレーマー扱いするのであって、その種のクレームを「非常にありがたい宝なんだ」などと尊重する会社を見たことがありません。別に、タクシー会社も銀行も、自分たちのことをタクシー会社様、銀行様と思っているが故に、「下々の一般庶民から何か言われることには非常に不愉快」としてそれらのクレームを尊重しないわけではなく、自分たちの顧客に本来あるべきサービスを提供することに外部から文句をつける特殊な人々のお相手をしているほど暇ではないからです。

 ところで、情報バラエティ番組で不愉快な発言を繰り返す茶髪のお兄ちゃんについて、「あんなやつ二度と出演させるな」とクレームをつける窓口って、讀賣テレビにありましたっけ?弁護士会の懲戒手続きやそれ以上に、クレームを無視することなく、駄目なら駄目でちゃんとその理由まで示してくれるやつ!。それとも、テレビ局は、「自分たちはテレビ局様で,下々の一般庶民から何か言われることには非常に不愉快なんです」か?。

27/10/2007

讀賣テレビの放送基準

 讀賣テレビ放送は、独自の放送基準を定めています。

 その中に、

(8) 国の機関が審理している問題については慎重に取り扱い、係争中の問題はその審理を妨げないように注意する。
というものがあります。光市母子殺人事件の差戻審の弁護人の弁護活動を罵り、これらの弁護人について懲戒請求を行うように番組の中で呼びかけるというのは、讀賣テレビの上記放送基準からもまずいのではないかと思ってしまいます。讀賣テレビのお気に召さない弁護方針を採用した弁護人についての懲戒請求を番組の中で視聴者に呼びかけるというのは、審理の妨害以外の何者でもありません。

 また、

(2) 個人・団体の名誉を傷つけるような取り扱いはしない。
との基準もありますので、上記事件の弁護人が同事件を死刑廃止論のために利用しているかのごとき根拠に乏しい情報を流すというのは上記基準(2)にも反していそうです。

 

(84) 企画や演出、司会者の言動などで、出演者や視聴者に対し、礼を失したり、不快な感じを与えてはならない。
についていうと、第12章 視聴者の参加と懸賞・景品の取り扱いに置かれているから、ここにいう「出演者」とは視聴者参加番組における参加視聴者のことをいうのであって、情報バラエティ番組でのゲスト等を含まないという反論はあり得なくはないですが、しかし、文理解釈を重視した場合には、ここでの出演者を参加視聴者に限定する旨の規定はありませんから司会やレギュラーパネリストが寄ってたかって特定のゲストに怒号混じりで礼を失した詰問を繰り返すような番組構成は、上記基準(84)に反する可能性も十分にありそうです。

26/10/2007

粘着君の価値

 こちらのブログのコメント欄を承認制にしてから大分時が経ちますが、こちらへのアクセス数は減少するどころか、むしろ増加しているのですね。

 ということは、あの粘着君たちは、アクセス数を増加させる役にすら立っていなかったのかと思うと、あの人たちの社会的価値って一体……ということで本当にお気の毒に思ってしまいます。

25/10/2007

簡易却下制度を設けても橋下問題は解決しない

 弁護士会の懲戒手続の面倒くささの第1は、如何に的はずれな懲戒請求であっても、ちゃんと弁明をしなければいけないところです。下らないからといって放置すれば、弁明をしなかったこと自体が懲戒事由とされてしまいます。だからこそ、テレビ局の意に沿わない活動をしたからといって、テレビ局が特定の弁護士について懲戒請求を行うように煽動することに、ほとんどの弁護士が嫌悪感を示すのです。

 では、弁護士会が懲戒請求書を見て、対象弁護士に弁明を求めるまでもないと判断されるものについては弁明を求めずにこれを却下する、いわゆる却下手続を設けると、それで問題は解決するのでしょうか。対象弁護士は弁護士会が防波堤になってくれればそれで済むのですが、そのために弁護士会が負担を余儀なくされるコストは誰が負担するのかという問題が生じそうです。

 懲戒請求書と添付資料を読み、懲戒請求書に記載されている事実が仮に存在したとしても懲戒事由には明らかにあたらないか否かを判断し、却下理由書にその旨を記載するのにどの程度の時間がかかるのかは、想像で語るしかないのですが、普通の懲戒請求で数時間、テンプレートを利用した同種請求が大量に来た場合でも1〜2時間はかかるのではないかと思います(テンプレートが利用されているからといって、以前に来た請求と全く同じ内容であるとは限らないので、一応精読しなければいけません。)。

 すると、橋下弁護士が当初呼びかけていたとおりに、特定の弁護士会に1万通の懲戒請求が寄せられたとした場合、これを簡易却下するか否かを判断するのに1通2時間かけるとすると、この莫大な量の懲戒請求について簡易却下をするか否かを決定するだけで、全体で2万時間を必要とすることになります。これを、10名前後の綱紀委員で均等に分担するとして2000時間程度が必要となります。これは、日本の労働者の年間平均労働時間を上回ります。  さすがにこれだけの時間を無償で提供せよとは要求できないので、弁護士会としては綱紀委員に時間制報酬を支払うという形を取らざるを得ないでしょう。綱紀委員は、学生バイトにやってもらうというわけにもいきませんので、それなりにキャリアのある方にご担当して頂かざるを得ないとして、そうすると時間単価もそうお安くはなりません。1時間あたり3万円をお支払いするとすると、2万時間×3万円/時間=6億円ほど必要となります。

 これを、例えば広島弁護士会の会員333人に均等に負担して頂くとすると、約180万円ということになります。テレビ局が視聴率稼ぎのために、あるいはタレント弁護士が自分だけ「良い子」として振る舞うために視聴者を煽って大量に懲戒請求を申し立てさせる度ごとに、対象弁護士の所属する弁護士会の会員がこのような負担をしなければならないというのは、非常に不合理だと思います。

21/10/2007

「極めて不遜で横暴きわまりない」受付態度って具体的にどんなの?

 橋下弁護士は、

弁護士会の受け付け態度が極めて不遜で横暴極まりないとの一般市民からのクレームが,当事務所に多数寄せられた。 数百件ベースで。弁護士会に代わって,当事務所が謝罪した。
述べています

 どこの弁護士会の話をされているのか分からないのですが、受付態度が事務的だという批判はありうるにしても(もともと、顧客に媚を売ることを求められているところではありませんから)、「極めて不遜で横暴極まりない 」受付態度というのが正直想定できません。私が知っている限り、どの弁護士会も、電話を架けてきた人を、ドスをきかせた声で追い返すような人材を受付部門に抱える余裕はないはずなのですが(まさか、広島弁護士会に電話を架けたところ、普通に、広島弁で応対されたというオチではないでしょうね。)。

 しかも、弁護士会の受付態度が極めて不遜で横暴極まりないとして橋下弁護士の事務所にクレームを寄せる一般市民が数百件ベースで存在したという話は、にわかには信じがたいです。その種のクレームが橋下弁護士の事務所に電話でなされ橋下弁護士の事務所の事務員又は勤務弁護士が電話で謝罪を行ったのか、橋下弁護士のアドレスに電子メールでクレームが行われ、橋下弁護士が謝罪のメールを送ったのか分からないですが、一人や二人そのような人がいるというのはわからなくはないのですが、最近はそういう的外れなクレームをする人が数百件ベースで存在するようになったということでしょうか。世も末ですね。まさか、弁護士会を悪し様に罵りたいがための作り話をこの期に及んで行うほど馬鹿ではないと信じたいところです。

貴社の方から,取材目的を秘匿して, 弁護士会へ「ある弁護士に対して懲戒請求したいがどうすればいいか?」と問い合わせの電話をして頂きたい。 いかに弁護士会が一般市民を馬鹿にし,横暴極まりない態度をとっているかがよく分かる。
と橋下弁護士は述べていますが、大丈夫でしょうか。実際にそのような電話を新聞記者がしたところ普通の事務的な対応をされた暁には、「橋下弁護士というのは、「弁護士会の受け付け態度が極めて不遜で横暴極まりない」ということのクレームをわざわざ橋下弁護士の事務所に寄せるような人々のいうことを鵜呑みにして事実確認もせず、弁護士会の悪口を言うような人物である」との印象を抱いてしまうのではないかと危惧してしまいます。もちろん、その程度の人物であると認識されていれば、バラエティ系のお仕事は増える可能性があるので、タレントとしてはおいしいかもしれないのですが。

 まあ、弁護士会の名誉のためには、橋下弁護士に対して、「弁護士会の受付態度が極めて不遜で横暴極まりない 」と橋下弁護士の事務所にクレームをつけてきた人は具体的にどこの弁護士会の受付担当から、どのような対応をされたと言っていたのか、ちゃんと釈明してもらった方がよいのではないかと思います。本当に「極めて不遜で横暴極まりない 」受付態度がとられていたのであれば、その受付担当を再教育しないといけませんので、一般市民を大変重視されている橋下弁護士がご協力いただけない理由はないですよね。

18/10/2007

タレント弁護士にのみ許される新たな示談方法を模索してみる。

 情報バラエティ番組に出演している人気弁護士が、番組内で、「○○は、私の依頼者である△△に、1億円の示談金を支払うべきだと私は思うんですよ。みなさんもこれに賛同していただけるのでしたら、○○の代理人である●●弁護士に電話を掛けて△△に1億円払うように要求してもらいたいんです。1人が電話を掛けただけでは応じないかもしれないけれども、視聴者の皆様が何万、何十万という単位で要求してくれれば、これに応じざるを得ないと思うのですよ」という呼びかけを行い、果たしてその番組の視聴者のうち数百名が●●弁護士に「△△に1億円を支払うように○○を説得しろや」という内容の電話を架けてきたため、●●事務所の電話が他の用途に事実上使えないようになったという事例を想定しましょう。

 弁護士は、事務所の固定電話の番号を少なくとも日弁連のウェブサイトで公表していますから、「何人も」当該弁護士の事務所に電話を架けることができます。だからといって、このような呼びかけを行った弁護士も、これに応じて電話を架けて●●弁護士の業務に支障を生じさせた視聴者も、全く法的責任を負わないのでしょうか。あるいは、このような呼びかけに応じて、紛争の内容を自ら調べもしないで、テレビで報道されている内容を鵜呑みにして、「△△に1億円を支払うように○○を説得しろや」という内容の電話を架けてしまうような人間が他にどれほどいるのか知らなかった以上、電話を架けた人間は法的責任を負わないとすべきでしょうか。

公益通報と懲戒請求とBRC

 また、橋下徹弁護士が独自説を述べています

当事者が対立構造にある民事訴訟とは異なるので,懲戒請求書を請求対象弁護士に送付する必要はないし,送付しては絶対にならない。

とのことですが、弁護士会の懲戒手続きが当事者対立構造ではないということから、懲戒請求書を請求対象弁護士に送付する必要がないとの結論や、ましてや送付しては絶対にならないとの結論は導かれません。当事者対立構造でないとしても、懲戒請求書に記載された事実及び添付された資料を基に審理を進めた方が無駄が少ないし、綱紀委員会の人的、経済的資源を有効に使うことができるからです(茶髪の弁護士等に煽られた自称一般人がお気楽に懲戒請求を行うごとに、各単位会の綱紀委員会がゼロベースで事実関係を調査しなければならないとすると、綱紀関係にどれだけの資源を使わなければいけなくなるのか、そのために弁護士会費をどれだけ値上げしなければいけなくなるのか、全く頭が痛くなります。)。

また、

一般市民からの懲戒請求は,公益通報と同じで,請求者の秘密を絶対に守らなければならない。そうでなければ,弁護士の不祥事を告発する者などいなくなる。

とのことですが、公益通報者保護法自体は公益通報者の秘密を保護することを要求していません。国や地方公共団体が定める公益通報処理に関する要綱等においては、通報者の秘密を保護することを謳ったものが多いのは事実ですが、公益通報者保護法の中核は通報者に対する不利益な取り扱いの禁止です。

 また、「請求者の秘密を絶対に守らなければ弁護士の不祥事を告発するものなどいなくなる」との点も大いに疑問です。まず、弁護士に対する懲戒請求が通常行われる「裁判等の相手方等」または「依頼者等」に関して言えば、請求事実を見れば(あるいは綱紀委員から、どの点が問題とされているのを聞かされれば)概ね誰が懲戒請求人かの見当はつきます(といいますか、このような場合、懲戒請求人は自分が懲戒請求を行ったことを秘匿して欲しいと望まないのが通常です。)。

 他方、その弁護士と現実社会で特段の接点のない人についていえば、懲戒請求人が誰であるのかを対象弁護士が知ったところで、虚偽告訴罪の疑いで逆告訴するか、または損害賠償請求をするくらいしか反撃する手段はありません(調査不足のまま不当な懲戒請求を行った者に対して対象弁護士が損害賠償請求を起こすことは、最高裁も認めた正当な権利です。)。公益通報者保護制度が想定している内部告発等の場合は、通報される側が通報する側に対して事実上の不利益を課すことができる立場にいるからこそ、告発者の秘密を保護する必要が生ずるのですが、その弁護士と現実社会で特段の接点のない人による懲戒請求にはそのような懲戒請求者の秘密を保護する必要性がないということがいえます。

 まあ、いくら弁護士法に「何人も」と書いてあるからと言って、その弁護士のことについて特段の情報を持ち合わせてもいないのに、情報バラエティ番組の出演者から煽られたくらいで、ろくに事実関係の調査もせず、ネットに転がっているテンプレートに従って懲戒請求をしてくる人々なんて、何の役にも立たないのですから、請求者の秘密が守られないと、視聴者を懲戒請求に駆り立てることでテレビ局は個々の弁護士に圧力を加えることがしにくくなると言われても、それは悪いことではないように思えてしまいます。

 なお、BRC(放送と人権等権利に関する委員会」への申立てって、原則として、「放送により権利の侵害を受けた個人またはその直接の利害関係人」しかできないのですね。「団体からの申立てについても、団体の規模、組織、社会的性格等に鑑み、救済の必要性が高いと委員会が認めた時は、審理対象とすることがあります」とはされているから、たかじんさんの番組で何十万人もの視聴者が懲戒申立をするように視聴者を煽り、各単位会の綱紀委員会に多大なる労苦をおわせて圧力を掛け、本来懲戒事由のない特定の弁護士への懲戒処分をなさしめようとしたことに関し、弁護士会は申立を行いうるのかもしれませんが、私たち一般人が、そのような無責任な煽動を行った番組の打ち切り等を要求することはできないのですね。ってことは、情報バラエティ番組で自由な発言をしている橋下弁護士が晒されている「世間の風」ってどこから吹いてくるのですか?

16/10/2007

橋下説の信奉者ならば

 自分とは直接の関係がなく、従ってマスメディアやネットから仕入れた情報しか持ち合わせていない状態で、軽い気持ちで、他人を刑事告発したり、懲戒請求したりしても、自分は、被告発者ないし被請求者から反撃を受けない「リスクフリー」な状態に置かれてしかるべきだと考えている人々は、どういう人生経験を経た結果そういう境地に至ることができるのか興味があるところです。

 その種のお考えをお持ちの方々が、別の論点で、「権利には責任が伴う」云々としたり顔で述べていたら、ある種喜劇ですね。

 「刑事裁判は被害者のためにある」という橋下説の信奉者ならば、被害者である今枝弁護士らの感情を害さないように、虚偽告訴罪や業務妨害罪で実刑判決が下されても本望だとするのが、正しいあり方ですね。

13/10/2007

質問書に回答期限を付したら「偉そう」なんでしょうか?

 橋下徹弁護士は、今枝仁弁護士からの求釈明を懲戒請求者が無視して良い理由として、第1に、

懲戒請求者たる皆さんは,請求対象者たる今枝弁護士に対して,その質問等に応じる法的義務は一切ありません。
ということを掲げています

 しかし、それを言い出すと、弁護人には、被害者遺族にも「世間」にも、弁護方針を変更した理由等について説明する法的義務はないわけで、では、橋下弁護士の今までの主張はいったい何だったのだろうという気がします。

 なお、橋下弁護士は、

にもかかわらず,今枝弁護士が懲戒請求者たる皆さんに,2週間以内に釈明せよとは,どのような法的根拠に基づいているのか,全く理解不能ですし,このような偉そうな態度は許されるものではありません。
と述べておられるのですが、橋下弁護士は、弁護士としての業務の中でそのような書面を出さないのでしょうか。橋下弁護士は、「訴訟よりも示談交渉を重視して仕事を行っている」とのことなのですが、回答期限を設定することなく示談交渉されているとしたら、それはそれで凄いことだなあと思ったりします。

 それはともかく、橋下弁護士のアドバイスに従って今枝弁護士の「求釈明」を無視した懲戒請求人が、今枝弁護士から損害賠償請求訴訟を提起されたら、橋下弁護士はどう責任をとられるのでしょうか。弁護士なら、この書面が何を目的としているのか分かっているでしょうに。

自分が相手より「偉い」と思わなくても、質問はできるし、普通に行われている。

 第三者の行為により不利益を被っている「被害者」から相談を受けた場合、弁護士は、当該行為者側の事情次第によってはそれが不法行為ないし犯罪行為になる可能性があると思えば、内容証明郵便の通知書(表題については、担当弁護士によっていろいろなバリエーションがあります。)を送って当該行為者側の事情を問いただすこと、並びに、その行為により生じた不利益を解消するための措置を任意に講じない場合には法的手段を用いる可能性があることを告げることをしばしば行います。それは、当該被害者ないしその代理人が「偉い」という心情をもっているから行うのではありません。むしろ、むやみな争いを避け、紛争をなるべく早期に解決したいという心情に基づくことが多いです(そのような書面を送る段階で、当該行為者に対して法的措置を講ずることを既に決定しており、どのような措置を講ずるのかを決定する資料として、通知書を送ることもありますが。)。

 さらに一般論をいうならば、質問をする、あるいは迷惑な行為をやめるように要求する、という行為は、「自分が相手より偉い」と考えているからこそ行う行為ではありません。

 橋下徹弁護士は、今枝仁弁護士が懲戒請求者に「求釈明書」を送付したことをもって、彼の弁護士様は偉いんだ病は、不治の病のようです述べています。しかし、この「求釈明書」をどう読むと、今枝弁護士が「弁護士様は偉いんだ」と思っているということが読み取れるのか、私には理解できません(「テレビ番組に出演して自由に発言することが許されている俺様に楯を突こうとは、何様だ」という意味で、弁護士様は偉いんだ病という言葉を用いているのでしょうか? しかし、卑屈にならないということや圧力に屈しないということと、自分ないし自分の職業等の属性を「偉い」と思いこんでいるということとは同一ではないというのが、おそらく東京では常識です。)。

 また、橋下弁護士は、上記「求釈明書」を常識はずれの文書と表現していますが、懲戒請求を行うにあたってどのような調査活動を行ったかということが不法行為の成否を決める重要なファクターとなる最高裁判例がある以上、この種の内容の質問書を懲戒請求者に送付することのどこが「常識はずれ」なのか、私にはよく分かりません。「この文体を見れば、どれだけ常識はずれなのかは、世間にとって一目瞭然です」としているところからすると、「求釈明書」の記載内容ではなく「文体」が「常識はずれ」だとお考えなのかもしれませんが、ある程度公的な側面を意識した文書の文体なんてまあこんなものだと思います(少なくとも東京では、その種の文書に、罵倒語が満載の砕けた表現を使うとの常識はありません。)。

 橋下弁護士は、さらに、この文書は懲戒請求制度に対する重大な挑戦で、こんな弁護士の横暴を認めていては、一般市民からの懲戒請求を過度に委縮させ、弁護士の非違行為を止める手だてがなくなります。と述べております。しかし、情報バラエティ番組のコメンテーターの意に沿わない弁護活動を行う弁護士に対して、当該番組の中で大量に懲戒請求を行うことを呼びかけることによって、その弁護士の所属する単位弁護士会の綱紀委員会に過大な業務を強い、(法的には懲戒事由にあたらなくとも)懲戒処分とせざる状態に追い込むということが「懲戒請求制度に対する重大な挑戦」だというのならば分かるのですが、前記最高裁判例がある以上、懲戒事由の有無につき十分な調査活動を行わない一般市民からの懲戒請求というのは不法行為となる蓋然性が高いわけですから、そのような活動が自粛されるべきことは当然といえます。なお、十分な調査活動を行い得ない一般市民による懲戒請求が自粛されたとしても、一線で活躍されている論客からの最高の懲戒請求がなされればいいだけの話なので、弁護士の非違行為を止める手だて はなくならないのではないかと思います。

 また、橋下弁護士は、この今枝弁護士からの求釈明書に対する対応ですが、無視して下さいと仰っているようですが、無視した場合には、懲戒請求書に添付した資料以外には十分な調査・検討を行うことなく当該懲戒請求を行ったものとして取り扱われることとなります。それは、各懲戒請求との関係では、早期に懲戒事由なしと判断される蓋然性を高めますし、今枝弁護士からの損害賠償請求訴訟との関係では請求が認容される蓋然性を高めます(やるかどうか分かりませんが、無視をすると訴訟の対象とされる蓋然性は高まるでしょう。)。そういう意味では、「無視をする」のは、「求釈明」を受けた懲戒請求者にとっては、あまり得策ではないような気もします。


 なお、橋下弁護士は、この「求釈明書」について文書自体も「脅迫」にあたり得ます。と述べておられますが、この程度の書面が「脅迫」にあたり得ると認識されているとすると、橋下弁護士は、どのようにして訴訟外での示談交渉を行っているのでしょうか。

12/10/2007

BBCでの死刑論議

 実は、死刑制度に関する議論は、近時ヨーロッパでも盛り上がっています。というのも、ポーランド政府が、死刑制度の廃止をEUの共通政策とするなと言い出したからです。BBCの"HAVE YOUR SAY"のコーナーでも熱い議論が闘わされています(総じて、やしきたかじんさんの番組での議論よりはレベルが高そうです。)。

 その中で、南ウェールズのカーディフにお住まいのLeonard Dayさんのご意見は、死刑存置論者のレトリックを逆手にとっていて面白いです(原文は英語)。

死刑執行を予定されているのが貴方の母/父/兄弟/姉妹/息子/娘/妻/夫であり、しかも貴方は彼らが無罪であることを知っているがそのことを証明できないとしたら、貴方はどう感じるのでしょうか。そして、その死刑執行がなされた後に無罪の証拠を入手したとしたら何を思うでしょうか。

 冤罪の可能性を具体的に証明できれば、死刑どころか、そもそも無罪となるべきです。問題は、冤罪だと思っているが、その可能性を具体的に証明できるだけの証拠がない場合です。「冤罪の可能性がある場合に限り死刑を回避すれば問題がないはずだ」という死刑存置論者は、冤罪であることを知りつつ冤罪の可能性を証明できない場合注1についての苦悩についても考慮してみるとよいのではないかと思います。

注1 例えば、強盗殺人の罪に問われている自分の夫と犯行時刻とされている時間に自宅で二人でテレビを見て過ごしていたが、そのことを証明してくれる第三者が全くいない場合。

07/10/2007

『違法・有害情報と匿名性』 at 情報ネットワーク法学会 the 7th

 平成19年11月10日に新潟で開催される予定の情報ネットワーク法学会の第7回研究大会開催において、午後の部のパネルディスカッションにパネリストとして参加させていくことになりました。

 テーマは、『違法・有害情報と匿名性』で、私以外のパネリストは、

  • 池田 信夫(上武大学)
  • 石井 芳明(総務省)
  • 町村 泰貴(北海道大学)
  • 丸橋 透 (ニフティ)
  • 吉川 誠司(インターネット協会)
ということなので、ネットの匿名・実名問題にご関心がおありの方々は、是非とも新潟にお越し下さい。

06/10/2007

チキンか否かを試されているのは今枝弁護士ではない

 橋下徹弁護士が、今枝仁弁護士に対して、また新たな呼びかけを行っているようです。

 ただ、自称「普通の人」よりはリタラシーのある人々がこの呼びかけを読むと、橋下弁護士は、1対多(もちろん、橋下弁護士が「多」)という環境で、しかも、自分に都合の悪い部分は適宜カットできる環境でないと、今枝弁護士とまともに議論することもできないようだと受け取られかねません。とはいえ、このまま何もしなければ、橋下弁護士の味方をしてくれるのは、「世間」と自分を同一化させて上から目線で弁護士を非難する快感を覚えてしまった自称「普通の人」と、「世間」と自分を同一化させて上から目線で森羅万象を非難することにもはや疑問すら感じなくなったマスメディア関係者に限定されてしまいそうです。いやはや、困りましたね。

 学部こそ違えども大学の後輩にあたる橋下弁護士に助け船を出してあげるとするならば、次のような内容で再度番組出演をお願いしてみたらどうかということでしょうかというアイディアを送るくらいでしょうか。

  1.  討論に参加可能な出演者の数は同数とし、今枝弁護士側の人選は今枝弁護士に任せる。
  2.  発言時間は、橋下側が1に対し今枝側が2となるように配慮する。
  3.  守秘義務に反する虞があったり、訴訟戦略上その時点では明かすことができないものについては、今枝弁護士が返答を拒絶したとしても、それ以上追及しない。
  4.  司会は、橋下側、今枝側の双方が納得できる中立的な人を充てる。
  5.  討論の内容については、インターネット上で生中継するとともに、読売テレビでの放送日から1週間以内に未編集のものをインターネット上で公開する注1

 矢部先生や「すちゅわーです」さんとかが、今枝弁護士の周りを支えると面白いようにも思ったりします。

注1なお、この問題は東京の弁護士にとっても関心事なので、「讀賣テレビの放送対象地域外には同時再送信はしない」等という無粋なことはいわないでいただきたいです。

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