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25/01/2008

匿名至上主義者には、実効的かつ受け入れ可能な対案がなく、かつ、妥協の余地がない。

 匿名表現の自由を維持したいのであれば、匿名表現の自由を維持しつつ、匿名の濫用を防ぐ実効的な他の手段を提案すべきなのではないかと思うのですが、ネットの匿名性に執着する方々からそのような提案を聞くことはまずありません。結局のところ、「被害者」に全部負担を押しつけることしか考えていないわけです。匿名派の側に現実社会と妥協する意思がないのですから、現実社会は匿名の暴力の前に屈服するか、匿名の暴力を国家権力により押さえつけるしかなくなるわけです。

 もちろん、「匿名」という理性が半ば麻痺した状態(麻痺の程度には個人差があり、また現実社会の個人が特定されない強度によっても差が出てくるとは思いますが。)で言論活動を行うことは、飲酒により判断力が低下した状態で自動車を運転することに似ていて、「飲酒運転を許容しつつ交通事故を減少させる」方法を考えるのが実際には困難であるのと同様に、匿名表現の自由を許容しつつ誹謗中傷やデマの流布等を減少させることは困難だと言うことかもしれません。ただ飲酒運転の場合と違いのは、「飲酒運転による交通事故についてはスルーが原則」とか「被害者たちは、酒でも飲まなければ自動車を運転できない人に配慮して、温かい目で見守って欲しい」みたいな話は公然と語られることはないし、まして飲酒運転により交通事故を引き起こした人を公然と賞賛する人や一緒になって同じ被害者に自動車をぶつけに行く人はいないのですが、匿名表現による誹謗中傷の場合は、それに相当するような行為がしばしば行われるのであり、匿名表現による誹謗中傷やデマの流布によって被害者が苦しむという状態をむしろ楽しんでいる人が少なくないというのは注目されてしかるべきです。それが典型的に現れたのは人権擁護法案についての反対運動であって、あれの根幹は、「現実社会での自分が差別主義者という目で見られることなく、ネット上で、匿名を用いて、マイノリティであることをあげつらって他人に不快感を与える権利を認めよ」という要求でしかなかった(だからこそ、一般には「懲役」や「罰金」よりも遥かに軽微な制裁である「氏名等の公表」がものすごい制裁手段であるかのように喧伝された)わけです。そりゃ、マイノリティに対し差別的表現を執拗にぶつけると言うことは、一般的には「匿名でなければできない」発言であって、家庭環境によっては、そのような発言を繰り返してきたと現実社会で知られた場合には家庭崩壊を招く危険があるかもしれませんが、それは自業自得というものであって、誹謗中傷の被害者を泣き寝入りさせてまで、「社会的信用を失うことなく、マイノリティに対する差別的言辞を執拗にぶつける」権利を認めてあげる必要があるようには思えません。

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