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février 2008

28/02/2008

大手事務所の勤務弁護士であること

 tamago先生が,こちらのエントリーで,いわゆる「ブル弁」(その事務所のイソ弁も含む)の応対にやんわりと苦言を呈しています。

 私も,いわゆる大手事務所の,特に勤務弁護士さんのなかに,ある種のおごりを感ずることが増えてきたように思います。私だけの感覚かと思っていたら,先日エクスターンの学生を弁論準備手続きに立ち会わせたところ,「何なのですか,あの弁護士の態度は」といっていましたから,彼らが「やたら尊大」という認識は私個人のものだけではないようです(その後,その事務所は,解任されてしまいましたが。)。

27/02/2008

第2の72条問題

 弁護士と,弁護士による法律サービスを必要としている人との需給のミスマッチを解消するために何が有効なのかは,実ははっきりしています。弁護士に関する正確な情報をもった事業者がこの二者の間に入り,両者の間を取り持てばいいのです。

 しかし,現行法ではこのような事業を行うことはとても危険です。そこには第2の弁護士法第72条問題があるからです。

 弁護士法72条は,以下のような規定です。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 すなわち,弁護士又は弁護士法人でない者が,
 報酬を得る目的で,
 法律事務に関しての周旋を行うことを,
 業とすることは,
禁止されているのです。

 しかも,日本弁護士会連合会資料室編の「条解弁護士法(第4版)」だと,この「報酬を得る目的」の要件が非常に緩やかであって612頁によれば、「入会金、会費 と法律相談、弁護士(弁護士法人)紹介との間に対価的関係がある かを、運営形態等をもとにして判断しなければならないが、入会金、会費が法律相談等に対する直接的な対価関係に立たないとして も、間接的な対価関係(会費等を支払った者にのみ対して法律相談等を行うものであるから、そこには関連性がある)は認められる場合が多いであろうから、入会者勧誘や営業活動の一環とは認められ ない純粋のサービスといったものでない限り、『報酬を得る目的』 があるものと認定されるであろう」(612頁)とされており、日弁連の調査室 は「報酬を得る目的」を「営利目的」に近い概念として理解されて いるようにも見えます。もちろん,営利目的と料金等の徴収とを別個の要件とする(著38条)のに慣れている知財系の私は合点のいかない解釈ではあるのですが(この解釈だと,組合員サービスの一環として弁護士の紹介等を行っている各種組合(労働組合も含むがこれに限られない。)が軒並みアウトになります。),とりあえず,このようなサービスは有効だろうと思いつつ,なぜ現行法上許されるのか私には理解できなかったりします。

 不法な勢力が弁護士をコントロールして市民を食い物にすることを防止するという要請はいまだなくなっていないということであれば,サービサーの時にそうしたように,法律事務所を弁護士に周旋することを業とする会社は,弁護士を取締役に加えることを条件とする届出制にするなどの新規立法をすれば良いだけのことのようにも思いますし,サポートサービスとして「校友の弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士のご紹介」を行う「早稲田カード」すら違法となりかねないような緩やかな解釈を日弁連として行う必要もないのではないかという気がしてなりません。

理想論と現実論はかみ合わない

 たぶん,法曹人口問題については,現在のところ,実務法曹の一部のみが「現実」の話をしていて,「理想」を語っているそれ以外の人々と話がかみ合わない状態にあるというのが実情ではないかという気がします。

 FJneoさんは

ところで、この記事の面白さは、これらの調査を踏まえたその先の記述の鋭さにある。
「量と質のバランスは評価が難しい。弁護士にどの程度の、どんな質を求めるのかは明確でないし、時代によっても変化する。そうした議論を抜きにして、「増員=質低下」を弁護士側が強調するのであれば、説得力を欠くように思える。」

「就職難や生存競争の激化など、増員で割を食うことへの不満が弁護士側にあるようだが、不満だけで社会の共感を得るのは難しいかもしれない。」

日頃、日経の記事にいろいろとケチをつけている筆者であるが、上記二点の指摘に関していえば、ほぼ全面的に賛同せざるを得ないだろうと思っている。

前者に関して言えば、既存の先生方の中に、「試験の難しさ」や「知識の豊富さ」だけで「質」を図ろうとする傾向が強すぎるのではないか・・・?

と仰います。

 しかし,「質の面」についていえば,ここで指摘されているような状態に既にあります。また,既に学部生の法科大学院離れが進んでおり,「法曹」が,他に選択肢がある学生が目指すものではなくなって来つつあります。

 また,「就職難」についていえば,企業の方々に何を言われようと,既存の法曹の側には,毎年2000人以上もの新規法曹を勤務弁護士として雇い入れるゆとりはありません。したがって,司法試験合格者を何人にしようが,法律事務所でOJTを受けられる新人法曹の数は増えません。弁護士を使う方の側で,既存の事務所への就職活動に失敗した新規法曹に積極的に事件処理を委任しようと言うことにならない限り,結局,増えた分はそのまま1年目にして淘汰されることになります。

 今実務法曹が気に病んでいるのは,このことのもたらす悲劇をどうしようかという問題です。

26/02/2008

小野川梓さんはどこを見ているのか

 小野川梓という人が,「報道されない弁護士業界の地殻変動~小野川梓コラム(52)」というコラムを書いています。

 しかし,弁護士に批判的なコラムを書く方々というのは,どうしてこうも基本的な事実を調べずに思いこみでコラムを書けるのか不思議です。

もともとサラ金の多重債務を抱え債務の整理や自己破産の申請のために弁護士を必要とする人だけでも、100万人から200万人を数えるというのに、ほとんどの弁護士は割が悪い仕事だからと見向きもしなかった。

とのことですが,「過払い金バブル」以前から,弁護士会では会をあげて多重債務問題には取り組んできたし,クレサラ問題に特化した法律相談センターだって作ってきたわけで,特に法律扶助案件は(日本の場合法律扶助予算が諸外国とは際だって低いために)採算度外視を覚悟して取り組んできました。

 また,

企業が少ない地方での弁護士開業も敬遠され、裁判所の支部があるのに弁護士がいないか、1人しかいない「無弁地帯」「ゼロ・ワン地域」が一向に解消されず、過疎地の住民は法的支援から見放されてきた

ともありますが,弁護士会で「過疎地型公設事務所」を開設するなどの努力により「ゼロ・ワン地域」は大分解消されています。

 また,

市民の側にも、貸金の取り立てや借地借家をめぐるトラブルがあると、裁判は長期化するのが常だからと、解決のために弁護士よりも暴力団らを頼る傾向が否めなかった。

とのことですが,貸し金の取り立てに関していえば,「裁判が長期化する」という自体は滅多に生ずるものではなく,むしろ,「○○円を支払え」との判決が確定したときに債務者の財産を調査する法的な仕組みが不十分であるためにせっかく勝訴しても貸金を回収できない可能性が高いことこそが問題であって,これは弁護士の数とも弁護士報酬の高低とも全く関係のない問題です。借地借家についていえば,立ち退きを迫られた借地人・借家人のために弁護士が頑張りすぎたために,定期借地・定期借家等の制度が導入されてしまったくらいです。

 さらにいえば,

 しかし、最近は拝金主義の世相の影響か、法曹の理念よりも高収入を求める傾向が一段と強まった。司法試験の難関突破のため何年も受験勉強を続けたから、と浪人中の「得べかりし利益」を回収しようと金儲けに走る弁護士まで現れ出した。

とのことですが,具体的にどのような現象をさしてそのように仰っているのか見当がつきません。「大手渉外事務所に入って高い初任給を手にして」云々という話であれば,何年も受験勉強を続けていた人にはほぼ無縁な話ですし,「難関突破のため何年も受験勉強を続けた」弁護士の報酬相場が高くなったという話も聞いたことがありません。

 「司法の質」云々を問題とする以前に「ジャーナリストの質」を問題にした方が良さそうな気がします。

24/02/2008

法務省と文科省との利害の対立

 法曹人口問題についていえば,法務省と文科省とでは,実は利害が大きく対立しているのではないかと思います。鳩山法務大臣は,豪放磊落に見えて,法務官僚の意向を酌んでいるのではないかという気がしているのです。

 法務省が望んでいるのは何かといえば,国家Ⅰ種組ではなく,司法試験組が上位の役職に就くことが予定されている役所であるという独自の性質を有しているが故に,国家Ⅰ種組と対峙できる経歴の持主を検察官として採用したい,もっと有り体に言えば,東大又は京大の法学部出身で,できる限り若い人材を採用したいということがあるのだろうと思います。彼らはそのために,司法試験受験歴が3回以内の者について特別な合格枠を設ける「丙案」すら実行したくらいなのです。

 したがって,法務省としては,法曹養成制度に改革によって新規に法曹資格を取得することの魅力が,特に東大または京大の法学部の在学生にとって薄まっていくことはなるべく回避したいのだろうと予測することができます。そのような観点からすると,「司法修習生の求人倍率が約 0.3」とか「新人弁護士の初年度年収の平均が400万円程度」等となる事態は,最悪です。法科大学院がそのようなハイリスク・ローリターンな場になっていったときに,法務省が望むような人材は法科大学院に進学しなくなる可能性が高まるからです。

 これに対し,文科省としては,法科大学院にお金が落ちればいいわけですから,学部卒業時にそれなりの企業に就職をすることを果たせなかった人材が法科大学院に集まり,新規法曹資格者がそのような人材の吹きだまり状態になったって,彼らが法科大学院に授業料を支払ってくれる限り,別に構わないわけです。彼らを司法研修所に送り込んでしまえば,あとは弁護士会と裁判所と法務省の問題であって,新規法曹の能力不足は文科省の問題ではないからです。「法学新人類」系の研究者は「試験が容易になれば優秀な人材が集まる」云々というわけですが,試験が易しくなりその分期待される処遇が悪化すればむしろ優秀な人材はそこから遠ざかっていく,という方が私たちの経験則に合致しているわけです(嘘だと思う企業経営者は,難関大学から新人を採用せずに,Fランク大学から新人を採用してください。)。彼らだって,本気で「試験が容易になれば処遇が悪化しても優秀な人材が集まる」と思っていたわけではないと思うのです(実際,その後,合格者が3000人になれば学力が落ちるのは当然だ,と開き直ることになります。)が,大学関係者としては,彼らが輩出する「新規法曹の質」なんてそもそもどうでもよかったのです。

 まあ,「社会が考えているほど、日本の法律家の質が
高くないのが問題
」と指摘する大学教員もいるわけですけど,でも,日本法制史が専門で,紀要雑誌に掲載された論文が「『明治初期刑事法の基礎的研究』霞信彦」である浅古先生に言われてもなあという気がしないでもありません。「海外で法的トラブルが生じた場合、残念ながら対応できる
日本の法律家はあまり多くはない。」ったって,それはその法的トラブルにその法律が適用される国で資格を取っていない弁護士が対応できないのは当然だし,その法的トラブルを解決するのに用いられる言語を母語としない弁護士が一定のハンディを負うのもどうしようもないことです。そのことは「日本の法律家の質が高くない」ということの例にはなっていないし,法科大学院で「豊かな人間性と高度の専門的学識を備えた人材を、じっくり時間をかけて育成」してみたところで,どうしようもありません。

23/02/2008

破産管財人研修

 今日は,東京3会合同の破産管財人研修に行ってきました。

 年1回行われるこの研修を受けないと,東京では破産管財人に選任してもらえないのですが,これまでは研修があるときに限ってそこに他の用事が入っているといったことが重なっていたので,ずっと研修に出られなかったのです。

 ということで,これであとは東京地裁に登録しておけば,そのうち破産管財人にも就任することができるということになります。ただ,現在,私が編集代表となっている書籍の編集作業が大詰めを迎えているところなので,これが片が付いてからかなとは思っていますが。

22/02/2008

「捨て石」を生み出す現場の苦悩と御用学者の脳天気ぶり

 報道等によると、来年弁護士資格を新たに取得する人(新旧61期)についての有効求人率は、3割台に落ち込みそうなんだそうです。弁護士自体3万人前後しかおらず、このうち1万人弱は登録数年目で他人を雇うという立場にはないことを考えると、もともと新卒勤務弁護士なんてせいぜい1000人前後しか需要がなかったので、これは想定内であったということができます。

 現在の法曹養成制度にするにあたっては、反対派の心配をよそに、法科大学院で高度の教育を受けた人材はたとえ新司法試験に合格しなくとも引く手あまたであるとの需要予測を推進派は行っていたところ、実際には新司法試験に合格していても、産業界等からの需要は皆無に等しいのが実情ですから、大幅な需給ギャップが生じてしまうのは仕方がないことです。

 もちろん、過去の日弁連執行部の失態を押し隠すために、有効求人倍率を無理矢理押し上げようと思えばできなくはありません。最近雇用した勤務弁護士(50期台後半から60期にかけて)を雇い止めにした上で、61期を雇用するように、日弁連として会員に働きかけていくという方法が例えばあり得ます。61期も原則1年雇用で更新なしということにしてしまえば、数字の上では、新規法曹資格取得者の有効求人率は上昇します。

 しかしこれは、過去の執行部のメンツを守るということ以外には、余り意味がある話ではありません。それに、新人弁護士が事務所経営に貢献できる程度に使い物になるには概ね1年以上かかること、法科大学院制度と新司法試験ならびに短縮された司法修習制度のもとで新規法曹の「質」は新61期以降は大幅に低下すると見られていることを考えると、そのような要請に応えるメリットが法律事務所の側にありません。ここに記載されている「法学新人類」さんたちのご意見を読む限り、法曹人口の大幅増員を推進される方々は、「500 人の者が1,500 人、3,000 人となれば、質が落ちるに決まっている」けれども「質が悪いとわかっていれば別にいい」とのことなのですが、彼らを雇う側からすれば、「質が悪いとわかって」いながら、そこまでは質が悪くなっていない人々を解雇してまで、その「質が悪いと分かって」いる人々を雇うわけにもいきません。

 すると、当面61期、62期については、大量に失業者が生まれること、それ故、彼らに貸し付けた奨学金については大量の貸し倒れが生ずることは、回避できないし、これを回避するための無理はしない方が良いのではないかという気がします。その上で、「定型的な事件を安くやってもらいたい」というオリックスのような企業の要請をかなえるために、「もう質は落ちますということを世の中に宣言す」れば質を落としても構わないのか、また、専門職大学院で卒業生の過半数がその専門職に就くことができないという状況が望ましいことなのかということを、早期に再検討してみる必要があるように思います。

20/02/2008

フィルタリングの強制問題とノーチス・アンド・テイクダウン体制の終焉

 携帯電話のフィルタリング規制問題での真の論点は、コンテンツ作成者にインフラを提供している事業者はそのインフラを用いて提供されているコンテンツに対しどの程度の関与をすべきかということです。

 従前、インフラ事業者は、そのインフラを用いてなされるコンテンツへの監視を意図的に怠っていたわけです。もちろん、インフラ事業者が「常時監視義務」を負わせないようにプロバイダ責任制限法3条1項が制定されましたから、「怠っていた」という言い方は法的にはおかしいのかもしれませんが、他方で、多くのインフラ事業者が定める規約等に「違法情報」のみならず「有害情報」についても一方的にこれを削除できる旨の規定が盛り込まれていることについてこれを無効とする見解が一般的ではないように、インフラ事業者が適宜監視を行い、コンテンツ削除等の処理を行うことは許されていたわけです。

 しかし、インフラ事業者は、従前、「コスト」の問題を前面に出すことにより、適宜「監視」を行うことを拒んできたのが実情です。誹謗中傷に関しては、「被害者」から削除要求があったときに初めて削除するとすることで全く監視を行わないことに成功したわけです。さらには、「自分たちには適法性の判断ができない」として、削除要求すら拒むことすら行ってきたわけです。

 ところが、「出会い」系の書き込みの場合、「被害」というのは、少女たちが誘いに応じて売春を行ったり、強姦等にあったり、という類のものなので、被害者からの削除要求を待って削除するということでは遅いわけです。監視スタッフが充分にいないから俊敏に削除などできないというのであれば、子供たちをそんなところへアクセスさせることはできないということになってしまいます。昨今のフィルタリング強制問題というのは、インフラ事業者が、そのインフラを用いたコンテンツについての監視・管理を放棄したことから必然的に生じてきた問題なのです。

 それゆえ、DeNA等は監視スタッフを200人単位で用意し、しっかり監視をするからということで、自分のところはフィルタリングの対象から外すように主張しているわけですが、そうなると今度は、インフラ事業者が誹謗中傷発言についても監視スタッフにより瞬時にこれを削除させることが困難とは言えなくなってきます。それは、誹謗中傷しやすいインフラを整えることでアクセス数を増やし一儲けしようというインフラ業者の目論見から外れることになります。

18/02/2008

何と比較するのか。

 確かに、新聞各紙の社説を読む限り、法テラスのスタッフ弁護士の30歳〜34歳時の年収が同世代の大学・大学院卒の男子の平均年収(549万4100円:賃金センサス平成18年第1巻第1表による。以下同じ。)に遠く及ばないこと(同世代の高卒男子の平均年収442万9600円にも及びません。)や、同25歳〜29歳時の年収が同世代の大学・大学院卒の男子の平均年収(438万6400円)にも及ばないことは読み取れないかもしれません。その辺は、大手新聞社の論説委員は、だてにプロパガンダのプロではありません。

 米国でも、上の下ないし中の上くらいのロースクールで、公的部門に進んだ1年目の弁護士の年収は、メジアン値で5万ドルに到達します。

 また、日本の国選弁護報酬を実活動時間で割った時間単価は約4500円。これは、都市部に林立するクイックマッサージの時間単価よりさらに25%オフ。年間2000時間を国選弁護に充てても年間の売上げは900万円ということで、月間50万円ほど経費として使用してしまうと、残りは300万円ということで、この賃金体系で一生働き続けるというのはワーキングプアに他なりませんね。

 法テラスのスタッフ弁護士や国選専門弁護士の所得を、朝日新聞社の正社員のそれと比べるなんてとてもおこがましい話であって、新聞各社の論説委員様は、弁護士どもは産業計男女計の平均年収489万3200円よりも遥かに安い収入を甘受せよと仰っているわけです。

 わざわざ貧しくなるために、沢山の優秀な若者が、時間と金をかけて法科大学院に入学してくれるとよいですね。

Leopard

 昨日、仕事用のMacBookのOSをLeopardにバージョンアップしました。

 最近はすっかり、メーラーとしてMailを使うようになったので、Mailの使い勝手が向上しただけでも儲けものだと思っています。

「大人の自由時間」

 BS11で本日放送される「大人の自由時間」にゲストとして出演する予定です。

17/02/2008

朝日新聞社並みの処遇を用意すれば「法テラス」に人は集まるが、弁護士風情にそんな「並外れた高収入」は許せない?

 日本の新聞社というのは、なぜこうも市場原理というものが理解できていないのでしょう。

 朝日新聞は社説で、

 第一、弁護士過疎の問題は解消したのか。一つの裁判所が管轄する地域には、少なくとも2人の弁護士が必要だ。原告と被告、それぞれに弁護士が付かねばならないからだ。ところが、全国に203ある地裁支部の管轄地域で、弁護士が1人もいない地域が3カ所、1人しかいない地域が21カ所も残っている。

 全国各地で法律の相談に乗る日本司法支援センター(法テラス)が一昨年発足した。だが、必要とする弁護士300人に対し、集まったのは3分の1だ。

 来春には裁判員制度が始まる。集中審理のため、連日開廷となる。弁護士が足りなくなるのは目に見えている。

 さらに、起訴前の容疑者に国選弁護人をつける事件が来年から広がる。被害者の刑事裁判への参加が年内に始まり、法廷で付き添う弁護士も必要になる。

 弁護士をあまり増やすな、というのなら、こうした問題を解決してからにしてもらいたい。並はずれた高収入は望めなくとも、弁護士のやるべき仕事は全国津々浦々にたくさんあるのだ。

 これらはいずれも、総体としての弁護士の数が足りないから担い手が足りないのではありません。報酬等の条件が悪すぎるので、それに専従することができないのです。それらに専従すると、「並はずれた高収入」どころか、「健康で文化的な生活」すら危うくなります。

 私は、弁護士の大幅増員というのは、弁護士の世界に市場原理を持ち込むものだと理解していました。市場原理の下では、「需要」の程度というのは原則として「価格」に反映されると理解してきました。そして、「需要」側の提示する「価格」が、供給者側が選択可能な他のサービスを供給した場合に期待できる収入以上の収入を継続的に得る上で必要な「価格」を下回るとき、そのサービスがその需要者には提供されないというのが市場原理においては正しい姿だと理解してきました。そして、社会的・倫理的には供給されるべきサービス等が、この価格のギャップ故に供給されない場合には、公共部門が財政的な補助をするなどして価格ギャップを埋め合わせるのが、市場原理の反倫理性を修正する手段として通常採用されるものだと理解してきました。

 従って、例えば「国選弁護・被疑者公選、被害者公選等の「公的弁護活動」の担い手を確保する」という問題を解決する手段としては、「これらの活動の報酬水準を大幅に引き上げ、価格ギャップを解消する」のが、市場経済のもとでは正攻法といわざるを得ません。「法テラス」にしても、終身雇用制度で朝日新聞社の正社員並みの報酬を約束すれば、いくらでも人は集まります。といいますか、そのような「並外れた高収入」でなくとも、基本給が一般のサラリーマン並みであれば、残業・休日手当や解雇制限等を一般のサラリーマン並とし、一般のサラリーマンが負担しない費用(法科大学院・司法修習時代に借りることを余儀なくされた奨学金並びに弁護士会の会費等)を法テラスで負担するようにすれば人が集まることが期待できます。また、地元に弁護士が来て欲しいのに来てくれないという地域があるのであれば、地域でお金を出し合うことにより弁護士を誘致することだって可能です。そのために弁護士法第72条が邪魔であれば(自治体等が「顧問料」名下で定期的な金銭的補助を行う分には大丈夫だと思いますが)これを改正すれば足ります。

 さしもの朝日新聞とて、医療過疎問題を解消するためにはただただ医師資格を大量に付与すれば事足りるとはいわないし、新聞販売店を全国津々浦々に維持するためには新聞販売店契約の敷居を引き下げればよいという議論はしていないはずです。なぜ弁護士については、ただ資格者の数を増やせば、それで解決すると考えられるのか不思議でなりません。

15/02/2008

「都会で恵まれた生活」どころの話ではない。

 東京新聞の社説は、

 だが、二百余ある地裁・同支部のうち半分近くは管轄区域内に弁護士が多くても三人だ。被疑者弁護や恵まれない人たちを支援する「法テラス」も弁護士不足に悩んでいる。

 過剰論は、要するに都会で恵まれた生活ができる仕事が減った、ということではないだろうか。

とするし、他の新聞社の社説も「法テラス」のスタッフ弁護士が集まらないことを法曹人口の大幅増員をこのまま突き進む理由にしています。

 法テラスの労働条件を知った上でいっているのだとすれば、この人たちは若い世代に対する敵意に満ちあふれていると言わざるを得ません。だって、法テラスのスタッフ弁護士の初任給って、税込みで

23万8000円
なんです(一応、裁量で、初任給調整手当として8万0500円を加算されうることにはなっていますが、初任給調整手当を給与の一部として考えると、1号俸から6号俸まで、ほぼ昇級がありません。)。

 しかも、これは「22歳大卒」の初任給ではなく、「25歳以上、院卒」の給料であり、大学卒業後その職業に就くまでの間に、親御さん等からの財政支援がない限り、数百万円の借金を作ることを余儀なくされた人の給料なのです。さらにいえば、スタッフ弁護士は、短期雇用であることを義務づけられている上に、弁護士業界は勤務弁護士の中途採用市場が未発達ですから、数年後には独立しないといけないのです。独立するのは資金が必要ですが、それは法テラス在任中にある程度貯めておかなければなりません。

 つまり、研修所を卒業して「法テラス」のスタッフ弁護士になると、この月額23万8000円(運が良ければ、31万8500円)から、税金を支払い、奨学金を返済し、弁護士会費の一部を納入し(法テラスは、「会費のうち,理事長が別に定める額」しか支払ってくれません。)、独立に備えて貯金をした上で、生活しないといけないのです。

 生活レベルでいえば、その他法テラスのスタッフ弁護士は、残業手当も付きませんし、特にフリンジベネフィットもありませんから(社宅の借り上げくらいでしょうか)、大学を卒業してすぐに東京新聞に就職するのと比べて、生活費として使えるお金は半分くらいではないでしょうか(中日新聞社の大卒初任給は23万6000円であり、週40時間を超える労働に対しては残業手当が付きます。)。

 つまり、「法テラスに就職しない=都会で恵まれた生活をしたい」ではないのです。

安定した暮らしを保障して欲しければ

 実は東京新聞の論説委員が言いたかったのは、安定した暮らしを保障して欲しかったら、弁護士になって人権活動なんかしてないで、再販制度と真実性の抗弁によって手厚く守られた大手新聞社に就職すべきだって話しかもしれないですね。頼まれもしないのに人権活動なんかやる以上、生活がままならなくなって当然だということかもしれません。

14/02/2008

東京新聞の論説委員は、自らの号令によって、どれだけの数の弁護士が、人権活動のために人生を捧げると予想しているのでしょうか。

 先日の日弁連会長選挙の後の新聞各社の社説は、概ね弁護士には不評です。

 新聞各社の論説委員と現場の弁護士との見解の相違はどこから生じているのかということを考えたとき、「べき論」を語るだけで済ませられる立場にあるか否かという点が大きいのではないかという気がします。

 東京新聞の社説の

 「生存競争が激化し、人権擁護に目が届かなくなる」?こんな声も聞こえるが、余裕があるからするのでは人権活動と呼ぶには値しない。
との文章はその典型例です。確かに、弁護士が経済的ゆとりを失っても従前どおり採算を度外視して人権活動に従事すれば、法曹人口の大幅増員の弊害は一つなくなるとは言えるのでしょう。

 但し、日弁連の会長や東京新聞の論説委員がそのような号令をかけ続けたとして、生存競争が激化し生活にゆとりがなくなった弁護士がなおも従前どおり採算を度外視して人権活動に従事し続ける蓋然性というのはどれだけあるとお考えなのか、その根拠は何なのかということはわかりません。といいますか、そもそも蓋然性の高低など何も考えていないようにも見えます。実際に東京新聞論説委員のご高説にもかかわらず生活にゆとりを失った弁護士が採算のとれない人権活動から次々と撤退していったら、「増員反対派」の危惧が現実に顕在化してしまうのに、です。

 これに対し、「生存競争が激化し、人権擁護に目が届かなくなる」と危惧している「増員反対派」の弁護士は、自分もおそらくそうだという切迫感もあって、生活にゆとりを失ったら弁護士が採算のとれない人権活動から撤退する蓋然性は高いと見ているわけです。自分の生活を完全に犠牲にしてまで社会正義のために身を投ずる人の割合は非常に小さいという経験則が、恐らくはその蓋然性予測を支えているのでしょう。

 同じく東京新聞の

司法書士などの試験と同じく司法試験も法曹資格を得る試験にすぎず生活保障試験なぞではない。
というご高説も、「べき論」としては全くその通りでしょう。そうなのですが、現実問題として考えるとどうかという気がします。

 司法書士などの試験とは異なり、司法試験の受験資格を得るには、大学を卒業した後に2〜3年かけて法科大学院の卒業することが必要となります。さらに、弁護士として業務を行うには、その後司法試験を受けてこれに合格し、さらに1年司法修習を受け、2回試験に合格しなければなりません。それだけの時間とコストをかけて法曹資格を得たのに、実際に弁護士として生計を得ることができるのは新規資格取得者の半分であり、その半分についても所得水準が同世代の新聞社正社員の半分から3分の1程度ということになった場合に、どれだけの数の有能な若者が弁護士になろうとしてくれるものだろうかという疑問があったりはします(実際、私のゼミの学生を見ても、法科大学院に進学したいという学生は1年で激減しています。)。

12/02/2008

誹謗中傷か否かを判断する能力は民間企業にもある。

 前回のエントリーに対しては、「ネットでの誹謗中傷の成立要件というのは損賠案件のように一私企業が判断できるほど明確なものなのか。」(mintanさん)等のはてなブックマークコメントを頂きました。

 ただ、誹謗中傷というのはまさに損害賠償案件であって一私企業が判断できないということはありません。実際、例えば、三井住友海上火災保険株式会社の「GMO NETガード」という保険商品においては、「interQ OFFICE」と「BROAD SERVER」ご利用中のユーザーによる「第三者に対する名誉毀損またはプライバシーの侵害」により法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害(損害賠償金、争訴費用等)を填補することとされており、この場合、一私企業である保険会社は、それが違法な名誉毀損か否かを判断することになります(上限100万円の保険商品で全件訴訟対応なんてしていられるとも思えません。)。

 また、社内ネットワークに特定の従業員を攻撃する投稿がなされた場合、企業としては、「警察が介入するまでこれを放置する」という対応を取ることは許されていません。当該投稿を削除等することはもちろんですが、投稿者を突き止めてしかるべき処分を行い、そのような攻撃が繰り返されないようにする必要があります。「一私企業が、その発言が違法なセクシャルハラスメントにあたるかどうか判断することは適切ではないので、発言は削除せずに放置しておきましたし、被害者から要請されても発信者の氏名等は秘匿しておきました」なんて対応をしたら、その企業自体が不法行為責任を負います。

10/02/2008

「被害者」は警察が作るのではない。

 z0racさんがこんなことを述べています。

一般的に「被害者」という考え方はあるが、法的に考えると少々違った話になる。法の下で「被害者」を確定しうるのは裁判によってである。そして、民事訴訟に於いては「被害者」すら存在しない。存在するのは「当事者」のみなのだ。

故に、裁判所以外が「被害者」認定を行うことの問題が発生する。引用部分の「法益を侵害する」や「被害者」は法的判断を前提してしまっているが、その時点ではまだ「法益の侵害」も「被害者」も法的には認められておらず、法益を侵害されたと主張する「当事者」が開示請求を行うということなのだ。


 なるほど、私の考えを理解できないはずです。受け入れられないはずです。「加害者」の有罪が確定するまでは、「被害者」は存在しないから、一私企業の判断で書き込みを削除したり、発信者情報を開示したりしてはならないというご意見なのでしょうから。さらにいえば、刑事罰が法定されていないプライバシー権侵害に関して言えば、一切削除をすべきではないというご意見なのでしょう。

 現在の一般的な理解では、訴訟法的に確定するか否かにかかわらず、事実というのは客観的に存在しており、その事実を前提とする実体法上の権利義務の得喪変動は生じていると考えます。そして、第三者からその権利を侵害された者を「被害者」と名付けるのであれば(実際、そのような者を通常「被害者」と呼びますが。)、民事訴訟により不法行為に基づく損害賠償請求を認容した判決が確定する前から存在しますし、加害者を有罪とする判決が確定する前から存在します。

 また、z0racさんは次のようにも述べています。

一私企業が他人の利害に関する法的判断を行い得るのか、また行って良いものか?

 他人間の法律関係が自己と他人との間の法律関係に影響を与える場合、私人(私企業を含む。)といえども、他人に関する法的判断を、裁判所による判断を待つまでもなく、行わざるを得ません。例えば、損害保険会社は、賠償責任保険の被保険者が第三者に対して損害賠償義務を有しているか否かを判断して、有しているならば保険金を被保険者に支払わなければいけません。また、電車の中で乗客の1人が他の乗客に襲いかかっているのを発見した車掌は、それが急迫不正の侵害であるのかを判断した上で、その乗客を取り押さえる等の措置を講じて全然構わないのであって、むしろ積極的にそうすべきなのです。「警察の判断」があるまでは放置せよと言われても、それは明らかに不正義であると言えます。

09/02/2008

法科大学院入学者の進路と奨学金の貸倒率と階級的参入障壁

 司法試験の受験資格として法科大学院を卒業することを必須要件とするにあたって、「法科大学院の授業料等を親から支出してもらえなくとも、奨学金制度が充実しているから大丈夫だ」という話があったように記憶しています。

 しかし、法科大学院に入学した学生のうち、奨学金を返済しても生活が維持できるだけの収入を得られる地位に数年後に就ける人の割合が低くなると、奨学金の融資を行っている金融機関や公益法人は、貸倒れ率が上昇するわけですから、奨学金事業から撤退するか、または、貸出し利率を上昇させることが必要となっていきます。

 例えば、法科大学院の1学年の総定員を6000人とし、司法修習終了後奨学金を返済できる程度の手取り収入のある職に就ける人の数を2000人とすると、奨学金受給の有無と就職状況との間に相関関係がなかったとした場合に、奨学金の貸倒れ率は66%にのぼる危険があります。消費者金融における貸倒れ比率が、件数ベースで約10%であることを考えると、この貸倒れリスクを利息によって埋め合わせるとなると、闇金もびっくりな高利率にならざるを得ません。

 すると結局、「奨学金の融資を受けなければ法科大学院の授業料を支払うことができない」人々は、法科大学院を回避し、法曹界への参入を断念することになり、それは、才能はあるが家庭環境には恵まれていない人材を遠ざけることに繋がります。すなわち、法曹需要とはかけ離れた定員を抱えた法科大学院制度自体が、才能はあるが家庭環境には恵まれていない人材にとっては、最大の参入障壁となるのです。

 なお、「法科大学院への財政支援【平成18年度予算】」によれば、学生個人に対する奨学金の融資を除く法科大学院への財政支援の額は64億円強です。これは、年間の国選弁護報酬支払額約20億円の約3倍です。それだけの予算を費やして、無産階級出身者をフィルタリングする機能を働かせていることになります。

匿名コミュニティと実名コミュニティの「棲み分け」は可能か

 匿名で情報のやりとりをする匿名ネットコミュニティと、実名で情報のやりとりをする実名ネットコミュニティとで、「棲み分け」をすることは可能でしょうか。

 「棲み分け」というのが「お互いに言及したり干渉したりしない」ということを意味するのであれば、かなり難しいでしょう。実名ネットコミュニティは、匿名コミュニティからの攻撃等がなければ匿名ネットコミュニティの側を無視しても何らの支障も生じないのでしょうが、匿名ネットコミュニティの方はそうはいかないのではないかという気がしてなりません。もちろん、純粋に数学やプログラムを含む自然科学の分野では現実社会の特定の個人や企業等に言及しなくともある程度の会話はできるかもしれませんが、しかし、そのような話題だけで満足できる方々というのは層としてはそんなに厚くはないのではないかという気がします。かといって、匿名ネットコミュニティでは、自分の現実社会での活動に依拠した話題を振ることがはばかられます(そんなことをしたら、「実名晒し」に遭い、匿名ネットコミュニティから排斥されてしまいます。)、現実社会とリンクしない「ネタ」の披露と、そのコミュニティの運営やコミュニティ内の人間関係を巡る不毛なメタ議論くらいしかすることがなくなるような気がします。

 結局、現実社会での自分の活動を話題として誰もコミュニティ内に投入しなくなったときに、そのコミュニティ外の人物の現実社会での活動をコミュニティ内の話題として取り入れざるを得ないのだろうと思います。そういう意味では、「棲み分け」ではなく、「ネットでは、或いはブログコミュニティでは、完全に匿名性を維持すること」が義務づけられた場合には、ネットコミュニティないしブログコミュニティの外側にいる特定の個人や団体の現実社会での活動をそのコミュニティ内の話題として取り入れざるを得なくなるのであって、結局、「ターゲット」の供給源が変更になるだけで、誹謗中傷やデマや犯行予告等で満ちあふれるネット社会を改善することには繋がりそうにありません。

07/02/2008

「脅迫でも十分」問題である以上、これを抑止する対策を講ずるべきでは?

 beyondさんのエントリーに対するはてなブックマークコメントが面白いことになっています。

 「ネットで実名を表示したことを契機として、見ず知らずの人から突然襲撃されたみたいなことは未だ起こっていない」という私の発言に対する反論として、ご自身が

・連日、夜中の3時に「ぶっ殺してやる」と電話が掛かってきたり

・隣の民家に、私の在宅を問い合わせる電話が複数回掛かって来たり

・盗撮された顔写真をネットにアップ

されたり

という例を持ち出して反論されていたので、「このエントリーを読む限り、「襲撃」はされていないですね」とはてなブックマークコメントしたのですが、これに対して、soorceさんは実名でありさえすれば脅迫はOKなの?とのはてなブックマークコメントを付けております。しかし、「AはBをCだと言っているが、BはCではなくDである」という命題は「BはDだからOKである」ということを意味していません。そのようなことを言われてしまうと、どの犯罪類型にあたるかについて議論をする刑法各論等は成り立たなくなってしまいます。

 また、vanacoralさんは、脅迫だけでも十分ダメージ大きいだろとのはてなブックマークコメントを付けておられます。buyobuyoさんの脅迫でも十分だと思うがも同趣旨かと思います。なお、当のBeyondさんは相手は「匿名で」脅迫を行ってきています。脅迫電話のことを警察に相談したところ、「飛ばし携帯なので、誰か分からなかった」そうですと仰っています。だとすれば、「匿名の陰に隠れて他人を脅迫することができるシステム」の改善を探求していくのが筋だと思います。しかし、匿名性が保障されたネット環境では、ネットを利用した匿名での脅迫の被害者が泣き寝入りを強いられる、脅迫者を含む発信者の匿名性が保障された状態の固守を主張されているのはどこのどなたでしょうか。

 ネット上で実名さえ明らかにしなければ脅迫されることはない、ってことでしょうか。現実社会でアクティブに活動されていない方はいいですね。

06/02/2008

匿名規制と銃規制

 日本におけるネットの匿名規制についての議論は、米国における銃の所持規制についての議論と似ています。

 但し、後者においては、「銃を所持したい人は所持する、所持したくない人は所持しないということで良いではないか。銃所持者は今後も非所持者をがんがん撃ち殺すけど」とか、「銃の非所持者が銃所持者にがんがん撃ち殺されても、一種の「有名税」として甘受すべき」とか、「銃殺されるのは銃殺される側に問題があるのであって、芸能人の悪口を言ったり、政治の話をしたりしなければ、銃殺されないはずだ」とかといった議論はさすがにしない点は、前者と大きく違っています。

03/02/2008

少ないのは弁護士の数ではなく国選の報酬

 本日の朝日新聞の社説を書いた論説委員は、きっと頭が悪いのでしょう。

 富山の冤罪事件との関連で、この弁護士に限らず、容疑者が自白している事件では、手抜きが珍しくないのではないかとした上で、背景には、欧米に比べて極端に少ない弁護士の数がある。としています。さらに、最後のまとめとして、弁護士は容疑者や被告の権利を守るために最善の弁護に努める、と弁護士職務基本規定に定められている。それを実践できるだけの質量ともに十分な弁護士を早く備えなければならないとしています。

 しかし、現在の国選弁護の報酬基準に従うならば、街中のクイックマッサージ程度の時間単価(1時間6000円)で弁護士が働いたとしても、通常1回公判で終わるような自白事件のために費やせる時間は、接見している時間や記録を読み込む時間、書類を作成する時間、裁判所や拘置所への移動時間を含めても15時間くらいです。市民法律相談並みの時間単価で計算すると8時間程度、米国の平均的な弁護士のタイムチャージで計算すると3〜4時間程度です。朝日新聞の社説氏さんは、日本の弁護士の数が欧米並みになれば、街中のクイックマッサージよりも遥かに低い時間単価で優秀な弁護士が自白事件を丁寧に精査してくれるようになるとお考えのようですが、それは市場原理に反しています。

 また、否認事件ともなると、国選報酬は微増しますが、それ以上に作業時間が増大しますから、これを担当する弁護士は経済的に大変なことになります。こちらでは豊川幼児殺害事件で弁護人が費やした時間と費用についての記載がありますが、時間単価は500円を切っているとのことです。

 むしろ、自白事件等においてもどの程度の作業を行うことが望ましいのか目安のようなものを定めた上で、これを行うのに通常要する時間を概算し、これに弁護士が独立開業を維持する上で通常要する時間単価を掛け合わせたものを国選報酬とすることの方がよほど実効的です。要するに、ただ闇雲に弁護士の数を増やしてその中からホームレス覚悟で国選弁護のために人生を捧げてくれる弁護士が現れてくれるのを待つよりも、国選弁護専従でも十分事務所を維持し人並みの生活が維持できる程度に国選報酬を引き上げる方が、「質量ともに十分な刑事弁護人の確保」の役に立つということです。

外部の圧力に屈して直前に契約の一方的廃棄を主張してくるホテルではカンファレンスは開けない

 とりあえず、今後は、重要なカンファレンス等はプリンスホテルを会場にしてはならないということなのでしょう。カンファレンス会場としては、外部からの不法な圧力に対しては、警察と協力して巧みにこれを捌くのが腕の見せ所ですが、そういう手腕が無く、法外の圧力に屈する道を選んだのだから仕方がありません。

 右翼の街宣車が大規模な凱旋活動をかけてくるのは相手が「左翼」の場合には限られませんから(日本の近隣諸国の要人が来日されたときも結構凄いことになります。そういう方々のレセプションパーティーや講演等も、プリンスホテルを使ってはいけませんね。また、自民党本部もよく街宣活動のターゲットにされています。)、「左翼」の集まりではない集会でも、プリンスホテルは回避すべきなのでしょう。

 まあ、ネットでは、他人の子供を「『お国のため』と一声かければ、そこで思考停止状態となり、自分の生命・身体・財産等を捧げることを厭わない」愛国少年に育てることに懐疑的な団体についての憎悪心が先に立って、事の本質を見ようとしない人が少なくないようですが。

本局と外局の「インセンティブ」観

 「数を増やし競争を激化させれば、何事もうまくいく」というのは、一種の信仰でしかありません。特に、供給者として独立するまでに相当程度の修練を要するものについては、そのような修練を果たすのに要する時間及び費用に、そのような供給を行う地位に就いた場合に期待される処遇が見合うものでなければ、そのような修練を受けるインセンティブが生じないので、新規参入者の処遇に関する情報が潜在的新規参入者に広く知られた時点で、新規参入希望者が大幅に減少するか、または、それに新規参入しなかった場合に期待される処遇が相当低いためにそれでもその地位に就いた場合に期待される処遇が上記時間・費用に見合うことになる人々が集まることになりますから、結局のところ、「質の低下」だけがもたらされるということになる可能性があります。

 東京新聞の報道によれば、

司法試験に合格し、二〇〇八年中に弁護士登録を希望する司法修習生約二千二百人のうち、八百人ほどが弁護士事務所など就職先をみつけられない恐れがあることが、日本弁護士連合会(日弁連)の調査で分かった。司法制度改革による合格者急増が理由だが、三人に一人の就職難という数字は関係者に衝撃を与えそうだ。
とのことです。資格保有者を急激に増やしても、仕事が増えなければ、経営者は資格者の増加に合わせて雇用を増やすことはしないわけですから、こうなることは十分予想できていたわけです。新自由主義的モデルは、「新規法曹取得者は、価格競争を挑むことにより、従前の法曹から顧客をどんどん奪い取っていき、従前の法曹はこれに対抗するために、新規法曹取得者と絶え間ない価格競争を繰り広げていく」ということが前提となりますから、新規法曹取得者がいきなり開業して価格競争を挑むことで顧客を争奪していくことができないのであれば、採用予定数を大幅に上回る新規資格取得者を排出しても、それは無駄になります。

 単に「就職競争」に敗れた新規法曹取得者が路頭に迷うだけならばまだ良いのですが、「大学卒業後、数百万ないし千数百万円の費用と3〜4年の時間をかけても、就職率は7割程度であり、就職を果たしても年収3〜400万円程度しか期待できない」ということが知れ渡ったときに、従前の法曹の中心的供給源であった東大、早大、慶大、中大、京大、一橋大の法学部出身者あたりが参入しようという気になるのだろうかというとかなり疑問です。このあたりだと、ブランド力があるので、少々の不況でも、学部新卒ならば就職環境は頗るよいからです。

 何も、自分の死後70年間自分の偉業によりその子孫が働かずとも食えるようにならなければ仕事をするインセンティブが湧かないとまで言う気はないのですが、しかし、投下資本に見合った処遇が期待できないのであれば有能な人材がその職業を選択するインセンティブが生じないことは容易に想像がつきます。文部科学省は、本局と外局とで、どうしてこうもインセンティブに関する捉え方が極端なのだろうと疑問に思ったりします。

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