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14/02/2008

東京新聞の論説委員は、自らの号令によって、どれだけの数の弁護士が、人権活動のために人生を捧げると予想しているのでしょうか。

 先日の日弁連会長選挙の後の新聞各社の社説は、概ね弁護士には不評です。

 新聞各社の論説委員と現場の弁護士との見解の相違はどこから生じているのかということを考えたとき、「べき論」を語るだけで済ませられる立場にあるか否かという点が大きいのではないかという気がします。

 東京新聞の社説の

 「生存競争が激化し、人権擁護に目が届かなくなる」?こんな声も聞こえるが、余裕があるからするのでは人権活動と呼ぶには値しない。
との文章はその典型例です。確かに、弁護士が経済的ゆとりを失っても従前どおり採算を度外視して人権活動に従事すれば、法曹人口の大幅増員の弊害は一つなくなるとは言えるのでしょう。

 但し、日弁連の会長や東京新聞の論説委員がそのような号令をかけ続けたとして、生存競争が激化し生活にゆとりがなくなった弁護士がなおも従前どおり採算を度外視して人権活動に従事し続ける蓋然性というのはどれだけあるとお考えなのか、その根拠は何なのかということはわかりません。といいますか、そもそも蓋然性の高低など何も考えていないようにも見えます。実際に東京新聞論説委員のご高説にもかかわらず生活にゆとりを失った弁護士が採算のとれない人権活動から次々と撤退していったら、「増員反対派」の危惧が現実に顕在化してしまうのに、です。

 これに対し、「生存競争が激化し、人権擁護に目が届かなくなる」と危惧している「増員反対派」の弁護士は、自分もおそらくそうだという切迫感もあって、生活にゆとりを失ったら弁護士が採算のとれない人権活動から撤退する蓋然性は高いと見ているわけです。自分の生活を完全に犠牲にしてまで社会正義のために身を投ずる人の割合は非常に小さいという経験則が、恐らくはその蓋然性予測を支えているのでしょう。

 同じく東京新聞の

司法書士などの試験と同じく司法試験も法曹資格を得る試験にすぎず生活保障試験なぞではない。
というご高説も、「べき論」としては全くその通りでしょう。そうなのですが、現実問題として考えるとどうかという気がします。

 司法書士などの試験とは異なり、司法試験の受験資格を得るには、大学を卒業した後に2〜3年かけて法科大学院の卒業することが必要となります。さらに、弁護士として業務を行うには、その後司法試験を受けてこれに合格し、さらに1年司法修習を受け、2回試験に合格しなければなりません。それだけの時間とコストをかけて法曹資格を得たのに、実際に弁護士として生計を得ることができるのは新規資格取得者の半分であり、その半分についても所得水準が同世代の新聞社正社員の半分から3分の1程度ということになった場合に、どれだけの数の有能な若者が弁護士になろうとしてくれるものだろうかという疑問があったりはします(実際、私のゼミの学生を見ても、法科大学院に進学したいという学生は1年で激減しています。)。

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