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22/02/2008

「捨て石」を生み出す現場の苦悩と御用学者の脳天気ぶり

 報道等によると、来年弁護士資格を新たに取得する人(新旧61期)についての有効求人率は、3割台に落ち込みそうなんだそうです。弁護士自体3万人前後しかおらず、このうち1万人弱は登録数年目で他人を雇うという立場にはないことを考えると、もともと新卒勤務弁護士なんてせいぜい1000人前後しか需要がなかったので、これは想定内であったということができます。

 現在の法曹養成制度にするにあたっては、反対派の心配をよそに、法科大学院で高度の教育を受けた人材はたとえ新司法試験に合格しなくとも引く手あまたであるとの需要予測を推進派は行っていたところ、実際には新司法試験に合格していても、産業界等からの需要は皆無に等しいのが実情ですから、大幅な需給ギャップが生じてしまうのは仕方がないことです。

 もちろん、過去の日弁連執行部の失態を押し隠すために、有効求人倍率を無理矢理押し上げようと思えばできなくはありません。最近雇用した勤務弁護士(50期台後半から60期にかけて)を雇い止めにした上で、61期を雇用するように、日弁連として会員に働きかけていくという方法が例えばあり得ます。61期も原則1年雇用で更新なしということにしてしまえば、数字の上では、新規法曹資格取得者の有効求人率は上昇します。

 しかしこれは、過去の執行部のメンツを守るということ以外には、余り意味がある話ではありません。それに、新人弁護士が事務所経営に貢献できる程度に使い物になるには概ね1年以上かかること、法科大学院制度と新司法試験ならびに短縮された司法修習制度のもとで新規法曹の「質」は新61期以降は大幅に低下すると見られていることを考えると、そのような要請に応えるメリットが法律事務所の側にありません。ここに記載されている「法学新人類」さんたちのご意見を読む限り、法曹人口の大幅増員を推進される方々は、「500 人の者が1,500 人、3,000 人となれば、質が落ちるに決まっている」けれども「質が悪いとわかっていれば別にいい」とのことなのですが、彼らを雇う側からすれば、「質が悪いとわかって」いながら、そこまでは質が悪くなっていない人々を解雇してまで、その「質が悪いと分かって」いる人々を雇うわけにもいきません。

 すると、当面61期、62期については、大量に失業者が生まれること、それ故、彼らに貸し付けた奨学金については大量の貸し倒れが生ずることは、回避できないし、これを回避するための無理はしない方が良いのではないかという気がします。その上で、「定型的な事件を安くやってもらいたい」というオリックスのような企業の要請をかなえるために、「もう質は落ちますということを世の中に宣言す」れば質を落としても構わないのか、また、専門職大学院で卒業生の過半数がその専門職に就くことができないという状況が望ましいことなのかということを、早期に再検討してみる必要があるように思います。

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