佐藤幸治理事長の強弁
佐藤幸治法科大学院協会理事長の「理事長を去るにあたって」という文章は、いろいろと失笑を買っています。
とりわけ駄目なのが、
政府はこの提言を「国家的戦略」と位置付けてその実現に懸命に取り組み、そして国会は濃密な審議を通じてほぼ全会一致で改革に必要な24件の法律を成立させた。ここに司法制度改革は国民的総意となった。
という部分です。憲法学者としての名声も吹き飛ぶようなひどさです。なにしろ、積極的に賛同しているのが国民のごく一部にすぎなくとも、それに積極的に反対している勢力とのロビー力に大きな差がある場合には、「ほぼ全会一致で」必要な法律が成立することになりますが、だからといって、それは国民的総意になるわけではありません。例えば、「ほぼ全会一致で」可決された2004年の著作権法改正で、民営の図書館が書籍の貸出を行うことは事実上禁止されたわけですが、「民間の図書館が書籍の貸出を行うことは許すまじ」ということが国民的総意となったわけではありません。
佐藤理事長は、この司法制度改革の成否は、制度の運用に直接携わる質量とも豊かな人材(法曹)の確保にかかっているといっても過言ではない。
と仰っています。そのこと自体は間違っていないのですが、そのための手段が倒錯しています。例えば、刑事弁護、とりわけ国選ないし被疑者公選弁護のために優秀な人材を必要とされているだけ確保しようと思ったら、これらを専門的に取り扱う弁護士がそれなりに豊かな暮らしができる程度に、国選等の報酬基準を引き上げることが不可欠です。司法改革につぎ込むことができる公的資金は有限である以上、法科大学院を助成するために公的資金をつぎ込むより、国選等の報酬に充てる資金を増額した方が、優秀な人材の確保によほど資するということがいえます。
また、佐藤理事長は、
将来の法曹の数を決めるのは、既存の法曹でも法科大学院関係者でもなく、司法制度を利用する国民である。日本の社会が、より多くの、より多様な、そしてより有能な法曹実務家を求めていると考える。
とも仰っていますが、日本の社会が、より多くの、より多様な、そしてより有能な法曹実務家を求めている
のであれば、既存の法律事務所としては、これに応えるために、より多くの新規法曹を雇用して業務の拡大を図るはずであり、従って、「新規法曹の就職難」という事態が生ずるはずがありません(むしろ、新規法曹の給与水準は上昇傾向となるはずです。)。しかし、実際にはそうではありません。司法制度を利用する国民は、そんなに多くの法曹など求めていないことははっきりしているのです。司法試験合格者の大幅増員を望む一部の国民の声はありますが、それは、弁護士が貧しくなり弁護士業務のみでは生活できなくなるという事態を望んでいるだけです。佐藤理事長は、一部国民のそのようなサディスティックな要求に応えることを法科大学院に付託された使命
とお考えなのでしょうか。
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» やっぱりローが3000人見直しの抵抗勢力 [ろーやーずくらぶ]
法科大学院協会が総会決議と佐藤幸治の同協会理事長退任あいさつにて、増員見直しの動きにつき「憂慮」いただいております。
まあ、相変わらず無意味な「司法改革の理念」とやらをふりかざし、法曹制度や、国民の利益よりも、「おらがローの利益」を守ろうとする実に...... [Lire la suite]
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