人間は,過酸化水素水とは違う。
楠さんから,次のようなトラックバックをいただきました。
僕は渋谷の隣の駅にある私立男子中高に通ってたから、中1の頃から毎日のように渋谷を出歩いていたし、けれども土曜にセンター街のラーメン屋で昼飯を食べたり、大盛堂書店で本を漁ったりはしてたけど、麻薬とかドラッグとか買わなかったよ。チーマーとかもいたけど、あまり関わらなかったし。中3の初デートも渋谷だったけど、普通に外食したり、代々木公園まで歩いたりで、もちろんホテルとかにはいかなかったし。
技術系の人々が考えるほど人間って単純で均一な存在ではないというだけの話です。過酸化水素水に二酸化マンガンを入れれば酸素が発生するというほどの確実さで,ある情報を与えれば人間は必ずこう活動するというのでなければ,因果関係は認められないということになりますと,従前因果関係があるとして処理されていたことの多くは因果関係が否定されることになります。振り込め詐欺だって,実際にお金を振り込ませることに成功しているのはごく一部であって,電話を受けた人の大部分は最初から又は途中でおかしいことに気がついて振り込みを行いません。では,振り込め詐欺なんて妄想の世界の産物であって,そんなことが行われているかのごとく主張する法律家どもは現実離れしているといって良いのでしょうか。あるいは,街を歩いていたからといって必ず麻薬・覚醒剤の売人から声をかけられるわけではないし,声をかけられたから良いって必ずこれに応じて麻薬・覚醒剤を購入するというわけではありませんが,だからといって,麻薬・覚醒剤の国内への流入を水際で食い止めないと国内で麻薬・覚醒剤中毒が広がる危険があると危惧することは妄想でしょうか。国内にどんなに麻薬・覚醒剤が持ち込まれようとも,普通の人は売人から声をかけられてこれを購入することはないから,国民等のプライバシー権を侵害してまで,税関で麻薬等に検査をすることは許されないということにすべきでしょうか。
楠さんは渋谷に行っても麻薬やドラッグを買わなかったとは思いますが,他方で,渋谷に行って怪しげな売人に誘われるがままに麻薬やドラッグを買ってしまう人々は,現実に相当数います。世の中の子供たちが皆楠さんほど賢くて,悪の誘惑に負けない強い精神の持ち主ばかりであれば良かったのでしょうが,実際にはそうではありません。
もちろん,麻薬等の売人から声をかけられても常にきっぱり断れる人,ネット上で売春の勧誘をされても常にきっぱり断れる人等の悪の誘惑に負けない強い精神の持ち主だけしか「人間」と認識しないで生きていくことも,そういう人たちしか自分の周りにいなければ,可能なんだとは思います。覚せい剤取締法違反として平成18年度に検察庁に新規受理された人間,または同年にインターネットを利用した児童買春・児童ポルノ禁止法違反として検挙された714件の被害者と加害者たちなんて,自分たちと同じ「人間」ではないと位置づけれしまえば,麻薬・覚醒剤の水際規制も,有害情報のネット流通規制も,「妄想に基づいて自分たちの自由を侵害しようとする許されない行為だ」といい切ってしまうことに何の痛痒も感じずに済むのでしょう。
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» 壊れものとして自由な人間 [雑種路線でいこう]
いや彼らも僕らと同じ人間だろうけれども、彼らの為に世の中を不自由にしたって無意味だよね、ということですよ。援助交際が問題だから子どもの渋谷駅下車を規制しようとか、麻薬やドラッグの売人がたむろするから渋谷センター街を封鎖しようなんて話は誰もしないでしょう。... [Lire la suite]
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