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30/06/2008

ドイツは先進国に含まれるか。

 ヴォルフガング・アイゼンメンガー他「医療過誤──ドイツにおける医学的・法的側面に関する論評」判例タイムズ1267号55頁以下によれば,ドイツにおいても,医療過誤は刑事罰の対象となるそうです。

 しかも,ドイツ法においては,あらゆる医療行為は傷害罪の構成要件に該当するとされた上で,

  1. 当該治療が医学的に適応とされている。
  2. 患者からインフォームドコンセントを得ている
  3. 当該治療が医学的規則に従っている
  4. 当該医療行為が倫理規範及び規則に反していない

(以上,翻訳は黒木尚永=寺尾壽幸氏による)
の4要件を満たす場合に違法性が阻却されるとのことです。

 上記論文によれば,刑事訴訟になったのは170件であり,うち43件で判決が下されたが,そのほとんどは罰金刑であり,自由刑はわずかに3件であったとのことです。一部の医療系ブロガー等にとっては,ドイツは先進国ではないようです。

 なお,上記論文では,170,000件の医療過誤及び17,000件もの避けられた死亡が現実にあるという推計値から考えるのであれば,医療過誤による民事訴訟が約30,000件しかないというのは,比較的少ないとされています。医療過誤訴訟が年間1000件前後しかないわが国において民事訴訟を起こされるとやる気を失う,医療崩壊だ!などと宣っている一部の医療系ブロガー等には勤まりそうにない世界ですね(なお,ここによれば,ドイツの医師の平均就労時間は約55時間であり,一般の労働者の平均就労時間37.5時間の約1.5倍です。)。

【追記】

novtan1975さんから「ドイツで違法性が阻却されるとしている要件にあたるところが揺るがされている問題でしょ、日本のは。」とのはてなブックマークコメントを頂きましたが,そうではありません。医療系ブロガー・コメンテーターさんたちが主張されているのは,「医療ミスで医療従事者が刑事責任を問われるのは先進国では日本だけ」との標語のもとに,ドイツ法でも違法性が阻却され得ない医療ミスについてまで包括的に刑事免責すべきということであり,例えば,患者の取り違え等の場合でも刑事免責を主張されます。少し反論されると大野病院事件を引き合いに出すので誤魔化されやすい人は誤魔化されてしまうかもしれませんが(某自称レベルが高いブログのコメント欄でも,早速誤魔化しに入っているようです),個別の案件について不当な起訴がなされたことが問題だというのであれば,不当な起訴を受けた被告人と同じ職種の人全員に特定の犯罪類型についての刑事免責を与えよという議論にはならないはずです。,

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