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15/06/2008

医療事故の実態を知りたければまず俺たちを免責せよという要求について

 全国医師連盟の意見表明は、その公式サイトにおいて、「iken1.html」から「iken6.html」まで6本、公表されています。同連盟の正式な発足はつい最近のことなので、各意見書の名義は、「全国医師連盟 設立準備委員会 執行部」というような形になっていますが(「執行部」名義ではなく、単に「会員の声」となっているものもある)、iken1.htmlではわざわざ「*これは設立準備委員会のものですが、現在でも通用します。」と注意書きが記載されていますし、「全国医師連盟」のロゴとともに「ikenX.html」(Xには数字が入る)というファイル名の元に同連盟の公式ウェブサイトに掲載されているのですから、今月になって正式に発足した「全国医師連盟」の意見を基本的に反映していると見てよいのでしょう。これらのウェブページからメニュー部分に表示されている「解説・オピニオン」という文字列をクリックしても、それ以外の解説・オピニオンというのは今日現在表示されませんし。

 全国医師連盟の公式サイトに掲載されているご意見のうち、半分(1,3,6)が「医療安全調査委員会」の新設に反対するものです。具体的にいうと、調査の結果、民事または刑事上の責任が医師にあることが判明した場合に法に則った責任を医師がおわされるような調査が行われることには反対だということです。

 民事にせよ刑事にせよ、医師に対して「結果責任」を負わせる法体系とはなっていないので、医療関連死に対して正しい事実認定がなされ、現在の医療水準に則った注意義務の設定がなされれば、現在の医療水準に則って医療活動を行っている医師が法的責任を負わされることはありません。もちろん、判断者が人間である以上間違えることもあるでしょうが、「医療安全調査委員会」の新設というのは、できるだけ間違った判断がなされないような工夫の一環であるというべきでしょう。

 しかし、これに反対する全国医師連盟の主張を敷衍すると、医師として期待される注意義務を満たしていなかったこと、言い換えれば、刑事法から見れば犯罪行為が行われていたこと、民事法から見れば不法行為または債務不履行が行われていたことが調査により明らかになった場合に、実体法的に発生している法的責任を医師に対し問わないことが保証されない限り、「医療安全調査委員会」において、医療関連死に対して正しい事実認定がなされ、現在の医療水準に則って注意義務の具体的内容が設定されることには受け入れがたいということになるのではないかと思います。医師の方々は、医師の責任が問われるべきでないとする例として、(医師の事実認識を前提とすると)過失がなかったと考えられる例を持ち出して医師に法的責任を問うことを問題視するのですが、実際には、患者の取り違えや点滴の作り置きのように、「医療の不確実性」云々の問題ではないミスで患者が死に至る場合もあるわけです。しかし、これを見る限り、全国医師連盟としては、そのような例だということが調査により明らかになった場合であっても、事故の再発防止に役立てばそれで患者側は満足すべきであって、医師が「医師免許の停止や剥奪などの行政処分というペナルティや罰金刑や禁固刑といった刑罰」を課されることはもちろん、「患者さんやそのご家族が医師を訴えて損害賠償金を払わせるということ」も断念せよということを要求しているように読めます。


 閑話休題。全国医師連盟では、「国際的に評価の高い日本の医療は、先進国最低の医療費に よって賄われている」としています。これは、ネット上でも医師とおぼしき人々からしばしば語られることですが、本当でしょうか。

 世界保健機構の公式ページにアクセスすると、NHA Ratios and Per capita levels というデータを、Excel形式またはpdf形式でダウンロードすることができます。そのデータには、国ごとの「Total expenditure on health as % of Gross domestic product」も掲載されています。これによれば、日本の健康関連総支出はGDP比で8.2%(2005年)です。では、これは先進国の中で最低なのかというと、何をもって「先進国」というかによるということになりそうです。というのも、このGDP比が日本よりも小さい国として、ロシア、フィンランド、ルクセンブルグ、メキシコ等があり、またほぼスペイン、英国、アイルランドとほぼ同レベルだからです(以上の国々は、ロシアをのぞき、OECD加盟国です。)。むしろ、米国(マーシャル諸島についで世界2位)が特殊としかいいようがありません。このように、実際のデータを見ると、日本の医療は、先進国最低の医療費に よって賄われている」とは言い難いように思えてきます。

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