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27/07/2008

「善解」しない読み手に食ってかかる立法請願って?

 大屋先生のブログで私のことに言及していただいています。

 大屋先生は矢部先生について非専門家による意図と表現のギャップを解消する必要に、(文字通り)元検察官であるモトケンさんがかなり自覚的と仰っていますが、著作権法の改正等に関してはロビー活動までボランティアでやってしまっている私の目から見ると、特定の弁護士のブログでコメント欄を活用して医療過誤訴訟問題について延々と議論していながら、立法府に対する要求項目を、少なくとも法令の制定ないし運用の「プロ」から不用意に誤解されるおそれが小さい言い回しで練り上げることができていないということ自体が信じがたいです。私に見落としがあるのかもしれないのですが、「そういう表現だとこんな風に受け取られるから、こういう表現にした方がよいのではないですか」みたいな提案って、あのブログではあまり行われていないように思うし、実際、それで表現が修正されたということはないわけです。

 大屋先生からは雑多な人々の雑多な主張を洗練して「法的要求」にまとめる仕事の人が同じ態度でいいのかとか、一生懸命当事者の声を確認している最中に審判づらで出てこられると「帰れ」とか言いたくなるよねえと思わなくもない。と暗に批判されているわけですが(暗に、ではないかもしれませんが)、前段については、でも、それって、全国医師連盟の顧問弁護士のお仕事ではないの、とか、矢部先生やあのブログの常連である法律家達がやってあげればいいのでは?等々思わなくはないし、後段については、全国医師連盟なるものを作って国会議員を呼んでのシンポジウムは開くは、連盟としての公式サイトで意見表明するは、という段階でいまさら「一生懸命当事者の声を確認している最中」といわれてもなあという気がしてなりません。ほとんどの人は、シンポジウムで語られ、または公式サイトに記載されている要求事項を文字通りに受け取るのであって、外部ブログのコメント欄の数年分の過去ログを読み解いたりしてその真意を確認しないことはもちろん、全国医師連盟にメールを送るなどしてその真意をただすこともしないわけですから、この時点で会員内の雑多な主張を洗練して「法的要求」にまとめ終わっていないと、運動論としては厳しいように思われます。

 もっとも、刑事免責要求派の方々のその他の要求・提案事項を見る限りにおいては、その求める刑事免責の対象から「医療の不確実性」とは関係のない明らかなミスを除外することについてコンセンサスが得られているようには読み取ることができません。「医療ミスについて刑事罰を科すのは先進国では日本だけ」というプロパガンダや、関係者の法的責任を問わないことが前提とされている米国の航空機事故に関する事故調査委員会と同様の制度を医療事故についても導入すべきとの主張、厚労省が創設しようとしている医療事故調査委員会についてその調査結果が医師の責任追及に利用されることを理由とする反対論、医療行為の結果患者が死亡した場合寿命だと思えという暴論を含め、むしろ、彼らの多くは、その要求事項の文言通り、「医療の不確実性」とは関係のない明らかなミスにより患者を死亡させた場合を含めて、医療従事者を刑事免責せよと要求している可能性が高いのではないかと思います。そのような場合に、「君はこういう風にいっているけど、本当はこういうことが言いたいんだよね」といって「善解」の名の下に自分の価値判断を押しつけるというのは、再主尋問以外ではほめられた話ではないように思います。

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