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28/08/2008

民事訴訟提起率で起訴率を占うことの愚かしさ

 医事関係訴訟の新受件数(第1審)の平成11年〜16年の合計は,5316件です。そして,この間の医療過誤に関する起訴件数は20件(略式起訴を含めても,79件)です。したがって,民事訴訟を提起するほどに患者又はその遺族が医師の過失を疑っている事案数の0.38%しか正式起訴されておらず,略式起訴を含めても1.49%しか起訴されていないのが実情だということになります(実際には,略式起訴で済んだ場合は特にですが,医師が過失を認めた場合には任意に賠償金が支払われることも多々あると想定されますので,患者又はその遺族が医師の過失を疑っている事案数を分母とした起訴率は,これよりもさらに低下することになります。)。このように警察・検察の段階で何らかの基準で捜査の対象を強力に絞り込んでいる以上,各診療科目ごとの被起訴率が各科目ごとの民事訴訟被提起率と一定の相関関係を持っていると推定することはできません。

 法律実務家でもその程度のことを理解できない人がいるとは,結構ゆゆしき事態です。

 なお,小児科について言及したエントリーの直後にアップロードしたエントリーにおいて産婦人科について特に言及しなかっただけで「捏造もたいがいにしなさい」と文句をつけてくる一般とは言語感覚の異なる方もおられるようですので,産婦人科について言及しますと,産婦人科については周産期の死亡事故例だけで平成18年度で5100件もあるわけです。産婦人科に関する医療事故は,周産期前の死亡事故や医療行為に伴い新生児が重大な障害を負って生まれてきたなどいろいろあるわけです。これに対し,平成18年の産婦人科に関する民事既済件数が161件しかないというのが現状です。このうちの4割が周産期の死亡事故に関するものだとして,民事訴訟の提起に至るのは全体の1%強に過ぎません。平成18年の新生児出生数は約108万6000人です。そのうち訴訟を提起されるはわずか0.0015%です。日本の患者やその遺族はこれほどまでに医師の前に控えめな権利主張しかしておらず,産婦人科医についても低廉な医師賠責保険の保険料だけで済んでいます。

 なお,産婦人科医の,医師1000人あたりの既済件数16.8件という数字ですが,これがこのペースでずっと維持された場合に40年間のうちに1度以上の訴訟に巻き込まれる確率は約49%しかないということを示すものでもあります(1000人あたり2.2件の小児科医の場合,40年間のうちに1度以上の訴訟に巻き込まれる確率は約8%です。)。医療過誤訴訟における医師敗訴率を3割とすると,産婦人科医が40年間で1度以上敗訴する確率は約18%(小児科医の場合,約3%)に過ぎません。

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Notifié le le 28/08/2008 à 10:13 AM

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