国は「医師過剰論」をふりまき、医学部定数を減らしてきたのか
総合病院鹿児島生協病院の馬渡耕史院長の「日本の病院では医師数が絶対的に不足している」には、
現在は日本で一番医師が多い県でもOECD平均を下回っており、現在の日本の医師数をOECD平均並みとして換算すると12万人不足しています。との記載があります。これに類する発言は、ネット上でも散見されるようです。
その原因は国の医療費抑制策にあります。「医師が増えると医療費が増える」と宣伝し1983年以降「医師過剰論」をふりまき、医学部定数を減らしてきたのです。医療の専門分化と高齢者増加に対応するために医師養成を増やしてきた欧米諸国との差がいま現実のものになったのです。
しかし、これは前回のエントリーでも見てきたとおり、事実に反するように思います。
国会での、特に医師である国会議員による質問は、むしろ、病院の経営問題および医師の就職問題との関係で医師が過剰になることを心配し、政府に対して医学部の定員を増加させないこと(後には削減すること)を求めているわけです。医師でもある高木健太郎議員等は、昭和51年には診療所の収入がサラリーマンの収入の8倍あったのに、58年には6.5倍になってしまったということを問題視して、医科大学をつくり過ぎたんではないかという、そういう非難といいますかね、批評がある
だのこういうように医師過剰時代にこのままほうっておかれるのかどうか
だの言っているわけです。
他方、昭和56年の村山厚生大臣の今日の状況を考えてみますと、診療所の数あるいはお医者さんの数からいいまして、大体われわれは昭和六十年度に人口十万当たり百五十人くらいのお医者さんがどうか、そう言っていたのでございますが、すでにその線上よりもさらにお医者さんの数がふえているように思います。そういたしますと、大体ニーズは満たしているんではないであろうか。だから、理論的にはおっしゃる点がないとは言いませんけれども、現実的には、それだからといって医療費がそんなにふえるものではない、私は、私の勘でございますけれども、そう思っております。
という答弁から判断すると、むしろ厚生省は、「人口10万人辺り150人くらい配置されれば、概ね国民のニーズは満たされるのであり、それを超えて医師の数が増えてもニーズは増えないので、医療費はさして増えない」(増えないニーズを、増加する医師で取り合うことになるだけだ)という認識でいたのではないかと思うのです(それは、医学部の定員の削減を求める医師出身の国会議員も同じような認識ではなかったかと思います。)。
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