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octobre 2008

30/10/2008

QOLの向上に資する所得水準の上昇と,単にプライドをくすぐるだけの所得水準の上昇

 その職業に就くために投下する時間,費用,努力に見合うだけの収入の増加分が見込めなければ,その職業に優秀な人材が集まらないというのはその通りです。例えば,現在の法テラスのスタッフ弁護士の処遇(資格取得後9年目(順調に資格を取ったとして34〜5歳)で手取り27万円)でも希望者が殺到するほどに新規法曹資格取得者の労働環境が悪化した場合には,他の職業に就けるだけの能力を持った人間はわざわざ法科大学院に進学して法曹を目指さなくなるでしょう。

 そういう次元の話で言えば,都立病院における医師の処遇は,医師という職業に就くまでに投下した時間,費用,努力に見合うだけの収入の増加分は,きちんと提供しているわけで,本来それが優秀な人材から回避される要素となるものではありません(都立病院の医師の平均収入が1200万円であるとすると,大卒・院卒男子の平均収入700万円との差額は500万円であり,医師の場合,通常の大卒労働者と異なり23歳〜25歳の間が無給であることを考慮しても,生涯収入格差はおおざっぱに計算して1億5000万円くらいは発生します。)注1

 しかし,そのような優遇された条件を提示しても都立病院の医師の定員が補充できないのは,「開業医」という不当に優遇された働き場所があるからです。「開業医」になれば平均で2700万円程度の収入を確保できるということが脳裏にあるからこそ,平均1200万円という都立病院の労働環境が劣悪に感じられるだけの話です。novtanさんは,

でも、医師は医療崩壊を食い止めるために個人としての権利をすべて捨て、医療に人生を捧げるべきだ、なんて考えるのであれば、そもそもすべての国民は国のために計画配置されるべきと主張されているのと変わりません。
仰っています。しかし,年平均1200万円という俸給が提供されているのに,「個人としての権利をすべて捨て」ているのと同然だみたいな言い方をされても,何か違う世界の話をされているような気がします(NOVTANさんは,麻生首相や鳩山総務大臣とは話の感覚が合うかもしれません。ただ,多くの国民にとって,1200万円というのはゼロにも等しい端金には映りません。)。

 さらにいうと,年収300万円から400万円に,年収400万円から500万円に上昇すると,生活レベルの向上を実感しますが,あるレベルまで行くと,所得の上昇は,生活レベルを向上させるものではなくなり,いわば記号論的な意味合いが強くなっていきます。都立病院の医師の平均年収を従来の1200万円程度から開業医並みの2700万円に上昇させるとなると,都立病院の医師の定員の総計は約850人とのことですから,130億円程度の公的資金が都立病院の医師の給与に使われることになりますが,それは,その支出に見合うだけの生活レベルの向上をもたらしません。特殊な例をのぞき,所詮は,都立病院の医師のプライドなり優越感なりを満たすという程度の効用しか生みません。しかし,この資金が,例えば,その過半数が年収300万円以下である介護福祉士に一人100万円ずつ配分されれば,約1万3000人の介護福祉士の生活レベルを向上させることができます。

 医療系ブロガー・コメンテーターとの対話を通じて確信したことは,結局のところ,「医療崩壊」の中核をなす「勤務医不足」の最大の原因は,開業医の所得水準が開業医に甘い保険点数の設定,ならびに,医師会のロビー活動により実現した医学部の定員削減にあるということです。我が国には,勤務医の所得水準を現状の開業医の所得水準よりも高く設定するほどの財政的な余力はないですし,そこまで引き上げられないのであれば,少しくらい勤務医の所得水準を引き上げたところで,「開業医に大きく水をあけられている」という記号論的な不満から「逃散」していく勤務医は後を絶たないのでしょう。そして,医師は医療ミスでいくら患者を死なせても構わないとする法制度を制定したところで,患者の生命の安全に配慮するための投資を不要とすることにより直接可処分所得が上昇するのは勤務医ではなく開業医ですから,むしろ,勤務医と開業医との間の所得格差を拡大させ,勤務医不足に拍車を掛けることになるのでしょう。

 なお,市場原理に委ねていたのでは,医師の地域的,診療科目的偏在が解消されないという場合,保険医の公務員化という手法をとることも可能なわけで(医療関連死で医師を刑事訴追しない例としてしばしば引き合いに出されるスウェーデンでは,医師の9割以上が公務員ですので,そのような立法例が非共産圏でないわけではありません),その上で転勤や配置転換を適宜命ずるということもできないわけではありません。

29/10/2008

自治体の財政と医療

 novtanさんは,

医師全体の処遇を上げろじゃなくて人増やせなんだけどなあ。利にさとい医師が開業医になるのが医療崩壊の原因だとしたら、勤務医の待遇(というのは収入だけじゃなくて労働の質ね)を上げれば改善に向かうだろうし、絶対数が足りなければ増やさなければならない。どちらにしても医療費を増やさないとどうしようもないわけですが。
仰っています。お金が無尽蔵にあるならば,そういうことも可能かもしれません。しかし,国もほとんどの自治体も,財政に余裕がありませんから,開業医の所得水準が大学・大学院卒男子の全年代平均給与の3倍以上ある状態を放置しつつ,勤務医の給与水準をそのレベルにまで引き上げることは,よくよくそれ以外の分野での公的支出を絞らなければ難しいし,それをやってしまうと税金の使い方として非常にバランスを欠くことになります。

 安い,安いと医師達からは馬鹿にされ,定員を全然満たせないでいる都立病院だって,2007年の段階で医師に平均1200万円程度の給与を支払っていたわけで,これだって,都庁職員の給与体系を考えたら,かなり突出して大金を支払っているわけでです。この給与水準で満足する医師が相当数いれば定員一杯まで都立病院の医師の数は増えるし,そうすれば中の医師の勤務シフトは大分楽になるわけでしょう。他方,都立病院の医師の給与水準を平均2800万円にしようと思ったら,都立病院の医師数約800人×1600万円=128億円かかるわけで,その分どこかで支出を減らさないといけないわけです(都立病院の医師の平均年収を2800万円に引き上げるために都税を増税しますなんて公約を掲げたら,さすがに議員も都知事も落選するのではないかという気がしますし。)。だからって,大阪府ではないのだから,私学助成金を廃止して,医師等の特権階級の子女以外は都立高校の入試に落ちたらあきらめて中卒で働け,生まれてくるところを間違えたのがいけないのだから自己責任だ,みたいな話はできないのです。

 そういう意味で言えば,東京都は,都立病院において医師を増やすためにやれることはやってきたと言いうるのであって,ただ,大半の医師にとっては,資格取得5年目(30歳くらい)で,全給与所得者の平均年収の2倍,全病院平均で全給与所得者の平均年収の3倍なんていう給与水準では,ばかばかしくてとてもではないがそんなところでは働けないとして拒絶されてしまっているからこそ,都立病院は医師の定員を充足することができず,残った医師が超過勤務を強いられることになるわけです。結局,都立病院に残った医師の労働時間が長くなった原因は,他の医師達の給与についての要求水準が高いことに帰着するのであって,それだけの高い要求水準が維持できるのは,医師会の政治力のおかげで,開業医の所得水準が尋常でなく高いからです。

 そうなってくると,病院の勤務医不足を解消するには,開業医の所得水準をまず常識的な範囲まで引き下げなければならないという結論に到達するわけです(実際,これによれば,米国のPrivate PracticeのFamily doctorの所得の中央値は12万5000ドル(約1200万円)なわけで,日本の開業医の所得水準は米国のそれと比べても相当高いのが現実です。

28/10/2008

勤務医の所得水準と勤務弁護士の所得水準

 町村先生のブログのコメント欄で,pedeさんというかたから,墨東病院の産婦人科医に関して,

仮にあなたのおっしゃる年収800万として、それは妥当な数字と思われますか?

との質問を受けました。

 墨東病院の産婦人科医の募集条件は医師免許取得5年目の場合で月額519,300円,役所なのでボーナスが年4.5ヶ月分付くので,概ね年850万円くらいになるわけで,お医者様の間では,これでは安すぎてスタッフが集まらないのは当然というお話になるのですが,法テラスのスタッフ弁護士だと,弁護士資格取得後9年目でも諸手当付いて税込み月額31万円程度なので,何という格差なのだろうと思ってしまいます。っていいますか,法テラスのスタッフ弁護士の給与水準が墨東病院の産婦人科医のそれと同程度にまで引き上げていただけるのであれば,希望者がわんさかと現れるのではないかという気がします(9年間で雇い止めという問題はあるにせよ,それくらいもらえるならば,放り出されるときに備えて貯蓄もできます。)。

 私も,1年目は年棒700万円から始まって,3年目くらいまで,金額にして800万円まではあげてもらいましたが,そこから先は個人事件で自分で稼げということで昇級がストップしましたので,医師免許取得5年目で年棒約850万円という数字が,有資格者の給与水準として,不当に安いとは思わないのです。

「俺たちを優遇する以外の改善は認めない」という人たち

 矢部善朗弁護士のブログのコメント欄で,相変わらず「?」な議論が続いています。

 あそこに常駐する医療系コメンテーターの方って,結局,医療従事者を優遇し,特権を付与する,患者側はどんな目にあってもそれを甘受するという方向のお話しか受け入れられないのですから,いささかでも前向きのお話をするのは無理だと思うのです。

 複数の救急患者受入病院内の複数の医師および病床の稼働状況を適時に集中管理するなんていうのは現代のIT技術から言えばさほど困難な課題ではありません。もちろん,腕の悪いSEに作らせると使い勝手の悪いものができる可能性はありますが,「誰が,どうやって,どの程度の情報を,どの段階で」入力するのかを工夫すればよい話です(Choirさんという方が,「1日2回更新なんてシステムではなくて」というエントリーのコメント欄に投稿された文章の中で,「業務系システムで飯食ってるSIerの端くれ」として,結局のところ、今なら何が出来るかという判断をシステムに入力できるのが医師自身しかおらず、その入力には時間がかかると。センターで活用できるだけの情報量となると、UIを洗練させたところで、10〜30分は堅いでしょう。と述べておられましたが,こういうSEにシステム開発を委託してはいけないのだなあと正直思いました。この方は,このシステムを円滑に運用するために,逐次的に追加入力していかなければならない情報としてどのようなものを想定したのかわかりませんけど,「複数の医師および病床の稼働状況を管理する」のに,「UIを洗練させたところで、10~30分は堅い」ほどの情報量が必要になるというのが私には想像しがたかったりします。もちろん,どのような情報が必要かは,救急患者の配送を手配する消防庁の職員やこれを受け入れる病院側から話を聞かないと定かなことはいえないとは思いますが,それにしても「UIを洗練させたところで、10~30分は堅い」ほどの情報量が必要となるということは考えがたいように思います。

「なぜそんなに払ってそんなに働いてもらわないといけなくなったか」と

 「十分にお金を出しているのに文句を言われる国民の不幸」について,zuさんから,「そもそも週70時間が非人間的だと思うけど。なぜそんなに払ってそんなに働いてもらわないといけなくなったかの考察が抜けてる。」とのブックマークコメントをいただきました。「なぜそんなに払ってそんなに働いてもらわないといけなくなったか」という点についていえば,複数の原因が考えられますが,結局のところ,多くの医師の方々の金銭欲が強すぎることに帰着します。

 単純に言えば,ある病院において,特定の診療科について,常勤医のための人件費として3000万円程度を確保した場合に,医師一人あたりが1000万円の年収で満足できれば3人の医師を雇えますし,1500万円以上ないと満足できないのであれば2人しか雇えません。この場合,仕事量が一定だとすると,2人しか医師を確保できなかった場合の医師一人あたりの労働時間は,3人しか医師を確保できなかった場合の医師一人あたりの労働時間の1.5倍ということになります。また,仮にベテランの医師を年収1500万円という厚遇を掲げて医師を確保したとしても,開業医になれば年収2500万円に楽々届くという制度の下では,一定の経験を積んだ勤務医は次々と病院勤務を辞めて開業していき,残された医師の勤務時間が増大することとなります。すなわち,日本医師会等のロビー活動の成果として開業医が優遇されすぎていること,残された医師のことに配慮せず,「開業医」というおいしいポジションに飛びつく医師が多いことが,残された勤務医の長時間労働を必要とする環境を醸成します。

 また,主たる勤務先はそんなに働いてくれとは言っていないが,主たる勤務先からの給与だけでは飽きたらず,アルバイトに精を出す医師が多いので,結果として,勤務医の平均総労働時間が上昇するということもいえます。

 日経メディカルオンラインによれば,主たる勤務先からの収入は,35歳以下の医師で約765万円,36歳以上の医師で約1379万円とのことです。これだけもらっていれば普通はそれなりに暮らしができるはずなのですが,35歳以下の医師の場合,年平均で268万円ほどアルバイト収入を得ています。それだけ働いていれば,長時間労働となってしまうこと宜なるかなという感じがします。

27/10/2008

iPhone用模範六法

 iPhone用アプリとしての模範六法平成20年度版がリリースされたようです。

 ただ,知財系のお仕事が多いと模範六法では全然足りないので,知的財産権法六法のiPhoneアプリ版を,どこでもよいですから,出して欲しいなあと思ったりはしました。

十分にお金を出しているのに文句を言われる国民の不幸

 novtan氏は,

結局のところ、医療制度を維持したいけれど金は出したくない、という無茶は通用しないんだけど、なんでそういう無茶をさも正義かのように言い張る人がいるかということだな。
なんてことを仰っているようです。少なくとも,我が国においては,医療制度を維持するために莫大なお金を投入している(医師一人あたりの医療費は先進国内でもトップクラス)ことなど無視されてしまっている感じがします。

 まあ,医療系ブロガー・コメンテーターの中には,あたかも日本では医師達に犠牲を強いることで医療制度が維持されているかのごとく喧伝する人たちがいますけど,日経メディカルオンラインによれば,勤務医の平均年収が約1410万円,中央値で1400万円である(主たる勤務先からの給料分だけでも平均で1198万円ある。)こと考えると,日本では医師達はかなり厚遇されているのであって,少なくとも収入面については犠牲を強いられているとは言い難いわけです(平均年収が約330万円で,その6割が年収300万円以下という介護福祉士ならば「自分たちに犠牲を強いることで介護制度が維持されている」と言っても違和感ないですが,被用者という身分ですら平均年収が1400万円もある医師において,そのようなことを言われても,なんだか浮世離れしているように感じられます。)。

 医師は長時間労働だから時給換算だとやすいのだというかもしれませんが,週70時間労働×52週で計算しても,時給は約3900円となるので,かなり高給の部類に入るといえます(週50時間労働×50週で年収400万円のサラリーマンの場合,時給換算で1600円ですから,その倍以上ということになります。)。

 病院における勤務医不足は,結局,医療予算全体が少なく,医師の労働環境が全体的に悪化しているからではなく,医師会の政治力により,開業医になれば,より短い労働時間で高収入が得られる可能性が高く,利にさとい医師達が次々と勤務医を辞めて開業してしまうことによるところが大きいわけですから,保険点数を上げるなどして医師全体の処遇をさらによくしてみたところで,勤務医不足は解消しないであろうことは見当がつくわけです。

 なお,上記エントリーで引用されている舛添大臣の計画配置論では、「税金で養成してるんだから言うことを聞け」と言いますが、医学部だけでなく法学部など、どこでも税金を使っています。「この職業に就け」というのは、職業選択や住居選択の自由を保障する憲法に違反しています。との発言についてですが,保険医について,地域および診療科目ごとに定員を設けるということであれば,職業選択や住居選択の自由を保障する憲法には違反しないように思います。

25/10/2008

法科大学院 多様な人材登用はうそか

 「法科大学院 多様な人材登用はうそか」という朝日新聞に掲載された投稿が,岡口判事や落合弁護士に取り上げられています。

 「法学部4年+既習者コース2年=6年」と「未習者コース3年」とでは,単純計算で法律学習期間に2倍の差があるのですから,両者に差をつけることなく,同じ問題を解かせ,同じ採点基準で採点し,特別な合格枠を用意しないのであれば,前者の合格率が後者の合格率よりも相当程度高くなるのは自然なことです。とはいえ,既に前期修習がない現行制度下において,他学部出身の未習者のみ特別枠を設けて低い習熟度段階で司法試験に合格させると,おそらく「実務修習→二回試験→実務」が悲惨なことになりそうですし,二回試験までは特別扱いをすることができるにせよ,「他学部出身の未習者コース出身者は,司法試験であるいは二回試験で特別扱いされて資格を取得していることもあり,使い勝手が悪い」との評判が実務法曹の間に広がると,勤務弁護士としてOJTを受ける機会が狭まることになります。それはそれで,却って「多様な人材登用」の実現を困難ならしめるのではないかという気がします。

 他学部卒の法科大学院生に一定の救済を与えるとすれば,法学,政治学系以外の学部の学士号をもっている場合には,法律選択科目の単位取得,および,法律選択科目の司法試験での選択を免除(学士号をもって一定の得点を加算)することとし,基本六法の習得により専念できる環境を作り出すくらいかなあと思わなくはありません。まあ,理系の方のなかには知的財産権法をやりたい人も少なからずおられるとは思いますが,基本六法で法律の解釈手法が身についていれば,弁護士になってから勉強しても知的財産権法の習得はさほど難しくありませんし(というか,私を含めて,知的財産権法でそれなりの実績を有している実務法曹のほとんどは,学生時代,大学で知的財産権法の授業をまともに受けていませんし。),基本六法,とりわけ民法の理解が十分でないと,準物権たる知的財産権法の理解もまた進みにくいのです。

 

 なお,「多様な人材の登用」という意味では,試験の結果しか問われない旧司法試験の方が,人材の多様性を確保できるのになあという思いは未だにあります。法科大学院制度では,法科大学院の入試担当者のお眼鏡にかなう人生を送ってこなかった人や,法科大学院に進学する経済的なゆとりのない人は,法科大学院に入学できず,法曹への道を閉ざされてしまう危険が十分にあるからです。実際,研修所のクラスメートなんかでも,「友達の友達」にではなく「友達」にテロリストがいるような人もいたりするわけですが,そういう人が正直に履歴書を書いて出願したら,書面審査ではねられてしまいそうですし。

24/10/2008

1日2回更新なんてシステムではなくて

 少なくとも救急患者を受け入れることを標榜している医療機関に関して,手術室等の空室状況や,そこに勤務する医師の稼働状況(当日の予定を含む。)を,リアルタイムに近い形で消防庁が把握できるようなシステムって,医師を2〜3人増やすのに必要だと医師側が主張している医療費の増額分で各都道府県ごとに作れるのではないか,という気がします。

 一部のネット医師は,何か患者に不幸なことが発生すると,そのことを奇貨として,医師たちを,いわば「貴族」として遇せよという主張に繋げがちなのですが,それ以前に,できることはたくさんありそうです。

23/10/2008

離婚紛争における男性側の権利の擁護

 この記事によると,米国では,父親の権利に焦点をあてた離婚専門の法律事務所が急成長をしているとのことです。

 確かに,日本でも,離婚紛争の夫側というと,離婚するかしないか,親権はどうするか,(親権が妻の側に帰属する場合に)どの程度の頻度でどのような形で子供と面会できることとするのか,という点を除くと,慰謝料,財産分与,養育費という形で財産を奪われていくことを如何に少なくするのかという「守り」に終始することが多く,離婚に伴い男性側が直面する困難に関してどうサポートしていくのかということについてのノウハウはあまり弁護士の間で共有されていないようには思いました。

22/10/2008

全国の国選弁護人≒お医者様約20人?

 「医療政策のマニフェスト原案を紹介―民主」という記事によると,民主党の足立信也参院議員(外科医)は,2015年までに総医療費を約6兆円増額して,医師を約1.8万人増加させるお積もりのようです。

 お医者様を一人増やすには,総医療費が3億円以上増加してもやむなしというお話のようですね。弁護士出身の議員も,「弁護士を一人増やすには,総司法予算を3000万円増加させよ」くらい言わないものですかね。平成19年度の法テラスの国選弁護人確保事業経費は,約62億円。全国の弁護士が頑張って国選弁護を引き受けても,お医者様20名分くらいの費用を支出してやれば十分ってことなのですね。

21/10/2008

報道機関に対する中立性

 橋下大阪府知事が,

「朝日はからかい半分で、事実誤認もあり今すぐ廃業すべきだ」と述べた。
とのことです。橋下知事が出演していたサンデージャポンがどのような番組だったかは忘れてあげることにしたとしても,民主主義社会において,公権力の担い手が,特定の報道機関について名指しでその廃業を求めるというのは,やってはいけないことです。民主主義国においては,公権力の担い手としてしかるべきポジションに就いている人物は,報道機関に対して中立的であることが求められるのです。

 そういう意味では,新聞協会は,左右のイデオロギー対立を忘れて,直ちに橋下知事のこの発言に抗議し,撤回させるべきです。仮に,ブッシュ大統領が,国軍をバックにして,民主党よりのNewYork Timesを名指ししてその廃業を求める演説を行ったとしたら,共和党支持のメディアを含めて猛抗議を行うと思います。その程度の団結力もないのであれば,新聞協会なんて意味ないではないかという気がします。

 なお「大阪では普通のことだ」と言われても,大阪府もまた,日本国憲法が適用される地域ですから,表現の自由や報道の自由は守らなければならないことに変わりはありません。

19/10/2008

被害の大きさを無視した議論は無意味

 次は,続・院長の独り言というブログの「医療『事故』と医療『過誤』」と題するエントリーを見てみましょう。

 このブログ主は,

この裁判が起きたことで医療界に激震が走った理由は、「治療に於いて医師の判断そのものに過失があるかどうかを問われた」からだと思う。
と述べているのですが,医師の判断そのものに誤りがあり,その判断の誤りに基づく治療行為が原因で患者が死亡した場合に,医師が業務上過失致死罪に問われ得るのは当然のことであって,そんなところで慌てふためかれても困ってしまいそうです。このブログ主は,例えば、虫垂炎で開腹手術をしたが、開腹しなくても抗生物質の投与で治ったかもしれないので判断ミスだ、と言われるのと同じようなものではないか。と仰っていますが,それは全然違う話です。生命に与える危険度を無視した議論というのは,いわば,ためにする議論にすぎないように思います。

 このブログ主は,

医師が選択した治療法が適しているのか否かが争点にされるようになると、日常診療に於いて正しいと思ってしたことでも、結果が悪ければ全て訴訟になり得ることを意味する。医師としての知識や経験、適性や技量などが裁判で論議されるようになると、必ず『萎縮医療』となり、医療の進歩は望めなくなる。
とも仰っているのですが,どの段階の「ミス」を問題視するのかと言うことと,各段階において医師の裁量の範囲をどこまで広く認めるのかと言うこととは別の次元の問題ですから,上記予測はかなり的を外しているといえます。なお,難易度の高い(患者の生命を却って損なう危険性の高い)治療行為に関しては,当該医師がその治療行為を実践することの当否を判断するに当たって,当該医師の知識や経験,適正や技量などが重要な考慮要素となることもまた自然な話です。

 また,このブログ主は,

この「事件」以降、産科を標榜する病院は減少の一途を辿ることになった。医師達が一生懸命治療をしても、結果が伴わなかったり、治療が困難な疾患で、予想されることとはいえ、死亡したり後遺症を残してしまうと犯罪者扱いされてしまうため、外科系の診療科や救急病院などの現場では、「触らぬ神に祟りなし」の傾向が優位を占め、難易度の高い医療は急激に敬遠されるようになったのである。
とも述べていますが,福島大野病院事件で執刀医が逮捕される前から産婦人科医は減少傾向にあったのであり,時間的な順序が合っていないように思います。さらにいうと,飯田英男先生の書籍を読む限り,産婦人科医は,民事訴訟を提起される数こそ多いものの,業務上過失致死傷罪の嫌疑で起訴されることは極めて稀(といいますか,業務上過失致死傷罪で起訴されているのは,むしろ難易度がさほど高くない医療現場の方が圧倒的に多い。)なのです。そういう意味では,仮に福島大野病院事件を契機に産婦人科をたたむ病院が現れたとして,一部の医師や,これに迎合する一部の法律家が,過度に医師の刑事訴訟リスクを煽ることの方が強い原因力を有しているのではないかという気がしてなりません。

 このブログ主は,

外来で点滴していて漏れてしまったら訴えるか?採血で失敗したら訴訟沙汰なのか?大事にならないなら穏便に済ますが、結果的に死亡すれば問題なのか?注射を失敗して出血するのも、手術中に大事な血管を千切ってしまうのも、元はと言えば同じようなミスなのだが、その影響は全く違う。
と述べていますが,同じ種類のミスであっても,結果として第三者に与える損害が軽微であれば宥恕されやすいのに対し,これが重篤であった場合には宥恕されにくくなるのは当然のことです。制限速度40キロの道路を60キロで走行したって,何事もなければ特に問題視されずに済むとしても,その結果,側面の歩道から飛び出してきた子供を避けられずに轢き殺してしまえば,そのスピード違反が問題視されます。ブレーキとアクセルを踏み間違えても,物損で済めばさほど問題視されませんが,その結果通行人を轢き殺してしまえばやはり業務上過失致死罪に問われる可能性が高まります。

いい加減,民事と刑事の区別くらいはつけてほしい。

 続・院長の独り言というブログの「医療『事故』と医療『過誤』」と題する一連のエントリーは,医療系ブロガーの典型的な誤りや身勝手さを示すものとして,注目に値します。

 まず,「」において,いきなり,福島大野病院事件の被害者の父親が一審判決後2人の孫のためにも娘の死を無駄にせず、二度と同じような事故が起きないようにして欲しいと述べたことに関して,

これは、我々医療サイドにとって、実は大変失礼な発言であった。
と述べています。その理由が,なんと,
事実誤認をしている素人も多いが、そもそもあれは「事故」でも「事件」でも無く、『癒着胎盤』という立派な「病気」だったのだ。
です。しかし,例えば,人の生命,身体,財産等の法益の全部又は一部を損なわしめる事実状態の変動を「事故」と定義すれば,福島大野病院事件において,帝王切開手術中に妊婦が失血死してしまったことを「事故」と表現することにはなんの問題もありません。むしろ,「癒着胎盤」という「病気」が直接の死因とはなっていない以上,そもそもあれは「事故」でも「事件」でも無く、『癒着胎盤』という立派な「病気」だったのだというのは,事実と乖離した表現といいうるでしょう。

 なお,このブログ主は,NHKをはじめとした論説委員遺族の思いを受け止めて、今回の事件を教訓に、安心して医療を受けられる態勢を整えていくことが何より必要なのだ と語ったのを遺族が可哀想だから厳罰を医師に下さねばならない、というようなスタンスと受け取って,悪意を感じ取ったのだそうです。しかし,普通に文章を解釈する限り,そのように受け取ることは国語的に無理があるといわざるを得ません。

 また,このブログ主は,

何でもかんでも、医師(病院)が失敗したら訴えるという風潮に歯止めを掛けないと、医療に携わる者達の健全な精神状態は絶対に保てない。
と述べていますが,少なくとも現在の日本では,何でもかんでも、医師(病院)が失敗したら訴えるという風潮はありません(そんな風潮が確立していたら,今程度の低廉な保険料で,医師賠償責任保険が維持できるわけないではないですか。)。

 また,このブログ主は,

医療裁判では、被告医師は相当な精神的ダメージと金銭的損害を受けるため、法的整備がされるまでの間、医師が無罪の場合、その賠償金は、きつい言い方だが、原告が支払ってしかるべきではないだろうか。
とも述べていますが,「無罪」判決が下されうるのは刑事裁判だけであって,刑事裁判においては「原告」は存在しません。被害者やその遺族は,そのミスで患者を死傷させた医師を起訴するか否かについて,何らの決定権限もありません。医師の側から司法に対して文句を言うなとはいいませんが,いい加減,民事と刑事との区別くらいはしていただいてもよいのではないかと思ったりします。

18/10/2008

青山のスーツ

 今日は,久しぶりに都心に出ていろいろとお買い物をしてきました。

 といっても,秋冬物のスーツを洋服の青山の御徒町店で買ったり(新橋にできたコナカのフラッグショップも見てきましたが,何となく購入意欲がかき立てられませんでした。),秋葉原のアウトレットショップで靴を買ったり,iPhone用の液晶保護シールを買ったりという,お仕事的に必要なものを購入しただけなのですが。

 最近は,コナカにせよ青山にせよ,相応の品質の商品も置いてあるので,高級ブランドスーツに身を包もうと思わなければそれで済んでしまうなあというのが正直な感想です。どちらの店舗も,2着ずつ買っておくと,2着目は1000円になりますし。

17/10/2008

Aux Îles Marquises

 部屋を整理していたら,今年パリに行ったときに入ったおいしいレストランの名刺が出てきたのでご紹介。

 14区にあるAux Îles Marquisesは,魚介類料理主体(牛肉のステーキもメニューにあったけど)のフランス料理店であり,服装などで気を遣わずに入れるのに,お味はとても素晴らしいお店でした。LA GAITE通りは,日本食レストランもやたらと多いのですが,サーモンとツナ主体のお寿司(+焼き鳥)をそれらのお店で食べるくらいであれば,Aux Îles Marquisesでパリらしい魚料理をお勧めします(ここのブイヤベースは,かなり全う度が高かったですし。)。

 値段も,典型的な日本人の食事量であれば,30ユーロ程度で満足できる量の料理を注文できる(もっとも私は下戸なので,ワイン代は換算してませんが)ので,コストパフォーマンスは,パリにしてはとてもよいように思います。

15/10/2008

非売品であるポスターの横流し品のネットオークションと贓物牙保罪

 落合先生は,「厚労省ポスター“横流し” オークション出品 職員の小遣い稼ぎ?」というエントリーで,

上記の記事にあるようなポスターの場合、管理不十分のまま、所有権の所在もよくわからないまま、人気があるポスターが続々と出品され、騒ぎが起きる、というパターンで、削除しようにも削除の理由が見当たらない、という場合が非常に多いのが実情です。

と述べておられます。

 ただ,元の所有者において管理不十分との事実があるにせよ,第三者への所有権移転が行われていない物品がインターネットオークションに掛けられている場合には,それが窃盗なのか,横領なのか,占有離脱物横領なのかはともかくとして,盗品その他財産権に対する罪に当たる行為によって領得された物の有償の処分の斡旋をしたとして贓物牙保罪(刑法256条2項)にあたる危険があるわけですから,元々の所有者であると主張する側から当該物品の処分状況等を聴取し,さらに,出品者から当該物品の入手状況等を聴取した上でないと,当該商品に関するインターネットオークションを継続するのは,ネットオークション業者としては危険ではないかという気がしてなりません。

14/10/2008

サービサーは,法務大臣の承認を受ければ,未払診療報酬の回収業務をなしうるのか?

 読売新聞の報道によれば,

 患者の治療費滞納が社会問題となる中、回収業務を民間委託する動きが、県内の公立病院で出始めている。横須賀市は先月、民間のノウハウを生かして徴収率の大幅アップを図ろうと、公立病院では初めて債権回収業者などに委託。県も今月中、厚木市は12月にも実施に移す。未収金は、赤字経営に悩む公立病院にとって頭の痛い問題で、追随する動きが広がりそうだ。

とのことです。

 ただ,弁護士以外の者が他人の債権の回収業務を業として引き受けることは原則として弁護士法違反となり,債権管理回収業に関する特別措置法等により特に認められた場合のみ例外的に弁護士法違反ではないということになりますが,上記サービスがその例外的な場合に当たるのか,疑問の余地がないではありません。

 債権管理回収業に関する特別措置法上,「債権管理回収業」とは「弁護士又は弁護士法人以外の者が委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業又は他人から譲り受けて訴訟、調停、和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業」(2条2項),この「特定債権」のなかに「医療機関の患者に対する報酬債権の未収金」は含まれていません。

 この記事でも取り上げられているニッテレ債権回収株式会社のウェブサイトを見ると,「サービサー法では金銭債権を特定金銭債権とそれ以外の正常債権に分け、前者は法務大臣の許可が、後者は別途承認がないと取り扱えないことを定めています。ニッサイケンはどちらも取り扱えるサービサーとして、各種金銭債権の管理・回収に関するご相談に応じています。」と記載されています。債権管理回収業に関する特別措置法第12条には,

第十二条  債権回収会社は、債権管理回収業及び次に掲げる業務以外の業務を営むことができない。ただし、当該債権回収会社が債権管理回収業を営む上において支障を生ずることがないと認められるものについて、法務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
一  特定金銭債権の管理又は回収を行う業務であって、債権管理回収業に該当しないもの
二  債権管理回収業又は前号の業務に付随する業務であって、政令で定めるもの

とありますので,ニッテレ債権回収株式会社としては,「当該債権回収会社が債権管理回収業を営む上において支障を生ずることがないと認められるもの」として法務大臣の承認を受けたから,弁護士法に対する例外として許されるのだ,といいたいのかもしれません。ただ,債権管理回収業に関する特別措置法第12条をそのように解するとなると,法務大臣は,個別の企業活動に承認を与えることにより,自由に弁護士法に対する例外を作り上げていくことが出来るということになり,同法の立法趣旨を大きく超えてしまいそうな気がします。それ以前に,同条は,本文において,債権回収会社が債権管理回収業及び一定の付随業務等以外の業務を営むことはできないという兼業禁止の原則を謳った上で,その例外として但書きの規定を置いているわけですから,この但書きに定められた法務大臣の承認により,債権回収会社による債権管理回収業及び一定の付随業務等以外の業務以外の業務が,兼業禁止の原則として可能となるにすぎず,それが弁護士法に抵触する場合にはなおもこれをなしえないと見るべきなのではないかという気がします注1(この但書きの規定が,弁護士法の例外を拡張する権限を法務大臣に与えるものだとしたら,そこで考慮されるべき要素は,「当該債権回収会社が債権管理回収業を営む上において支障を生ずることがないと認められる」か否かではないでしょうし。)。

 ニッテレ債権回収会社は,「サービサー法では金銭債権を特定金銭債権とそれ以外の正常債権に分け、前者は法務大臣の許可が、後者は別途承認がないと取り扱えないことを定めています。」としているのですが,債権管理回収業に関する特別措置法は「正常債権」という概念を有していませんし,同法第1条に規定された同法の目的はこの法律は、特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法 (昭和二十四年法律第二百五号)の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理及び回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適正な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする

とされていますから,「特定金銭債権ではない『正常債権』」について弁護士法の例外を特定の業者に認める権限を法務大臣に付与することまでこの法律がその対象としているとは考えにくいのです。

 もちろん,「法律事件」に関するものでなければ弁護士法違反に当たらないので法務大臣の承認でこれを行えるといえなくはないのですが,「債権の額について争いがあり債権者において取り立てが困難な状況にあったもの」のみならず「債権者において支払いを遅延し回収困難の状態にあったもの」等「債権が通常の状態ではその満足ができないもの」に関して「債権者から債権の取り立ての委任を受けて,その取り立てのため,請求,弁済の受領,債務の免除等の諸種の行為をすること」等は,弁護士以外の者が業として行うことを禁止されている「法律事務」にあたるとするのが判例(cf.最判昭和37年10月4日刑集16巻10号1418頁)ですので,もし,ニッテレ債権回収株式会社が診療報酬の未収金を回収業務の対象とすることについて法務大臣が承認を与えているのだとしたら,債権管理回収業に関する特別措置法をどのように解釈しているのか,聞いてみたいところです。

 

注1
黒川弘務=坂田吉郎「債権管理回収業に関する特別措置法(いわゆるサービサー法)の概要(3)」NBL 655号44頁は,債権回収会社が兼業できることとしてほしいと経済界が要請しているものとして,

 ①多重債務者の債務を一本化し,担保不動産の価値を上昇させ,あるいは,債権回収会社が証券化の対象とされた債権の管理・回収をいわゆるSPCから受託した場合におけるSPCの一時的な資金不足を補うため等の一時的な資金不足を補うため等の特定債権の回収に資する一定限度での貸金業務
② 証券化した債権の劣後部分を自ら取得するなどの投資行為
③ 債権の管理・回収に関するコンサルティング業務
④ 担保不動産等についての適正評価業務

を挙げています。このことからすると,特定金銭債権以外の債権回収というのは,立法時の議論としても,法務大臣の承認によりサービサーが行うことができるものとして想定されている業務ではないということができそうです。

11/10/2008

大阪のようになるとは?

 中山成彬・前国土交通相の発言の中でよくわからないものの一つに,

民主党が政権を取れば、日教組、自治労の支援を受けているので、日本が大阪府みたいになる
というものがあります。

 最近の大阪府知事について言えば,橋下知事の前の,太田房江知事は自民、民主、公明の相乗りであり,その前の横山ノックは政党に頼らない無党派,その前の中川和雄は社会・民社・社民連・進歩推薦、自・公支持,その前の岸昌は自・社・公・民・社民連推薦,という流れですので,1979年4月以降に生じたことに関して言えば,特に民主党(あるいはその大半が民主党に流れた旧社会党を含めてもよいですが)のみが大阪府政において主導権を握れていたわけではありませんので,「民主党が政権を取」った結果のものと捉えることは,不合理です。

 また,「大阪府みたいになる」とだけ言われても,それをネガティブに捉えるかポジティブに捉えるかは,その人の大阪府に対するイメージに大きく依存するので,大阪府にそれほどネガティブなイメージを持っていない人にとっては,「大阪府みたいになるって,そんなに問題なの?」ということにしかなりそうにありません。

 もちろん,中山・前大臣は,

中山氏は「大阪府は長年、職員組合と癒着関係にあり、職員の給料が高い。ヤミ手当や裏金もあり、財政破綻(はたん)にひんしている」と述べた
とされているので,職員の給料が高く,財政破綻に貧することの代表例として「大阪府」を持ち出しているとも考えられます。ただ,大阪府のラスパイレス指数は97であり,1959年の二見甚郷知事から2003年に引退した松形祐堯知事まで無所属(自民党推薦)の知事が続いた宮崎県のラスパイレス指数99.2より低かったりはします。まあ,確かに諸手当の支給額については大阪府は東京都に次いで2位なのですが,上位を見てみますと,1位:東京,2位:大阪,3位:神奈川,4位:愛知,5位:京都,6位:兵庫という並びですので,概ね大都市を抱えている自治体において諸手当が高いということは言えるものの,知事の支持母体による差異はないように思われます(なお,教育公務員に支給される諸手当に関して言うと,大阪府は4位に後退し,自民・公明が推薦する神田真秋知事が治める愛知県が2位に躍り出ます。)。

 ヤミ手当や裏金については,その性格上正確な統計データが出来ると言うことは期待できませんが,東国原知事の就任直後に裏金の件でいかなる事件が起こったのかはまだ記憶に新しいところです。

10/10/2008

で,あなたたちは?

 産経新聞によれば,「道徳教育を進める有識者の会」なるものが発足したのだそうです。

 なんでも,

誰の言葉からも日本人の心の荒廃への危惧(きぐ)がのぞく。コーディネーターの八木秀次・日本教育再生機構理事長は「日本人の劣化」と表現、「社会を建て直すには学校の道徳教育から始めるしかない」と締めくくった。
とのことなのですが,学校の道徳教育から初めて社会を立て直そうと思うと,その社会が建て直るまでには,そのような教育を受けた人々が社会の中心になるまでの数十年単位の期間が掛かってしまいます。そんなことよりまず,守られるべきと考える「徳目」を自ら実践し,順次自らに近い人から感化していく方が,まだ社会の立て直しを速く推し進めることができるのではないでしょうか。

 どうも我が国の保守系の方々を見ていると,「道徳」というのは自らが守るべき規律ではなく,他人,とりわけ自分よりも弱い立場にいる人々に押しつけたい規律を指すものと解されている節があるわけですが,「日本の伝統」といった場合にそれを江戸時代あたりまでさかのぼって考えるとすると,道徳的規律というのは,むしろ上の方の立場にいる人々ほど守らなければいけないものとされていたのではないかと思ったりなんかします。自らは守る気がない規律を自分より弱い立場のものに押しつけるようになったのは,「戦陣訓」あたりからなのでしょうか(私は,世界史選択だったので,詳細を存じ上げませんが。)。

 参列者の一人である服飾評論家の市田ひろみさんは,

今の子供ががまんできないのは親が教えないから。道徳は人に迷惑をかけない生き方のルール
と引き締めたとのことですが,同じく参列者である中山成彬・前国土交通相にまずその言葉は向けられるべきだったのではないかと思ったのは,決して私だけではないような気がします。

09/10/2008

あの奥島先生が高野連の会長に

 高野連の会長に奥島先生が就任されるというニュースを見て,「へえ」という気持ちになりました。

 奥島先生といえば,手形小切手法の最初に時間にいきなり「創造説なんか採っているのは日本で4人しかいない」といって権利外観説をとるように促していたのがとても印象的です。

 講義の冒頭の発言でのインパクトとしては,高野竹三郎先生の親族法の授業に勝るものはありません。大学1年生相手に,「結婚とは全て錯誤である。だから,人違い以外の錯誤無効は認められないのだ」と言ってのけたのですから(記憶で書いているので,言い回しは多少違っているかもしれません。)。

08/10/2008

ネットサービス企業の反社会性

 昨日のエントリーに対しては,的外れなはてなブックコメントがたくさんついたようです。

 適法性を厳格に審査することなく情報を発信するタイプのネット上のサービスにおいては,多くの場合,ある程度の割合で権利侵害情報を発信することになります。そして,発信する情報の量が増えれば,そのサービスから発信される権利侵害情報の量は増加していきます。

 適法性の事前審査を行わず,被害者等からの削除要請等を受けて削除を行うという方針をとった場合,想定される「被害者」の情報通信スキル等を考慮した上で,被害者等が削除要請をしやすい工夫をしたクレーム受付窓口が必要となります。個人のプライバシーや名誉権が侵害されることが想定されるのであれば,非公開型の通信手段によりクレームを受け付けることがまずは必須でしょうし,想定される「被害者」がITスキルの高い人に限定されない場合には,電子メールやフォームだけではなく,郵便やファックス等でクレームを受け付けることが必要です。また,被害者が安心して削除要請等を行うためには,クレームを受け付ける部署とその担当者に関する情報を明示することが必要です。

 そうではなく,適法性の事前審査を行わず,被害者等からの削除要請等を受けて削除を行うという方針をとりつつ,被害者等が削除要請等をしやすい工夫をしたクレーム受付窓口を設けていない企業(運営主体が法人でなくとも,企業ではあり得ます。)は,本来あるべき姿より大量に権利侵害情報を流通させようとしているといえるわけですから,反社会的であると表現することが出来ます。

 GMO Internet社のWhois Protect Serviceや他社の類似サービスを利用するなどしてドメイン保有者が誰であるのかすら隠している企業はもちろんのこと,内容証明郵便や特別送達すら受け取らない企業,特にネットスキルが高いわけでもない市民さえ被害者となりうるサービスを運用しておきながらメールやフォームでのクレーム受付しかせず,また,電話番号が表示されていても,そこにかけてもテープ録音された音声しか流れない企業等は,その意味で反社会的であるといえます。

 ネットサービスの中で自己の個人情報が流通している場合に,誤りの訂正を申し出たり,これを非公開とするように申し出たりする窓口の設置ならびに責任者の氏名・連絡先の表示をWeb2.0的企業にも義務づけ,これに反した企業には,行政指導を行いこれに従わなかった場合には(行政指導の受付窓口が明示されていない場合には行政指導を行わずにいきなり)刑事罰を科す等の措置が必要なのではないかと思うのです。

 その程度のことすら,受け入れられないのでしょうか。だとしたら,ネットの反社会性に多くを期待しすぎなのではないでしょうか。

07/10/2008

247MUSIC社と債権者取消権

 西村博之さんと247MUSIC社との事業譲渡契約に伴い西村さんが247MUSIC社に1000万1000円の落札価格通りの金員を支払った場合,2ちゃんねるでの名誉毀損行為に関する賠償金や発信者情報不開示による間接強制金等の債権を西村さんに対して有している債権者は,247MUSIC社に対し,上記1000万1000円について,債権者取消権を行使することができるでしょうか。

 ロースクールの学生さんとかが考えてみるには面白い問題かもしれません。

東弁はMacユーザーに厳しい

 東京弁護士会の会員用ウェブページにアップロードされている「法律相談センター弁護士報酬基準」って,中途半端(注1)なjavascriptが使われているので,Safariや(OSX版)FireFoxでアクセスしても,条文の見出ししか見れなくて,条文の内容は表示してもらえないのですね。

 そもそも,この種の条規集にjavascriptを使う理由がよく分からないのですが。

注1

OS依存,ブラウザ依存するjavascriptって,少なくとも閲覧予定者の使用OS,使用ブラウザを制限できない環境で用いられている限り,「中途半端」という評価になります。

矢部弁護士と阿比留記者の異同

 矢部善朗弁護士は,私のエントリーについて「印象操作」という言葉で「印象操作」的に対抗することしかできていないようなので,逆に敢えて印象的に語ってみるとするならば,矢部弁護士のブログのコメント欄と,産経新聞の阿比留記者のブログのコメント欄の雰囲気って結構似通っている気がします。

 自分たちだけが物事をよく理解しているのだというある意味選民的な意識とか,自分たちと意見が異なるコメンテーターが現れたときのあしらい方とか,実のところ諸外国はどうなっているのかを十分に調べないで日本の現状を特殊視してしまうところとか,云々。

 両者に大きな違いがあるとすれば,阿比留記者は,社会的には受け入れられにくい主張をする人の一員に自らを列することを回避していないのに対し,矢部弁護士は,「医療ミスをして患者を死なせても医師は不可罰とする」という社会的に受け入れられにくい主張をする人の一員に自らを列することを回避しているという点でしょうか。

反社会的であることが賞賛されてきたネット業界でストビュー界隈だけ反社会性が問題視される違和感

 藤代さんが,ストビュー問題に関して,「Googleという反社会的企業」というエントリーを公表しています。

 ただ,「2ちゃんねる」をはじめとする,法律を敢えて守らず,他人の人権を踏みにじっておきながらまともな被害者対策を講じない企業を賞賛してきたネット社会が,むすろ被害の度合いとしては従来型ほど深刻ではないストビューを契機に,Googleの反社会性を声高に叫ぶというのはいかがなものかなあという感じがします。

 ネット企業の中では,Googleはある意味電話応対するだけまだましな方で,電話番号の表示が一切ない企業や,電話を掛けてもテープの音声が流れるだけで一切被害者からのクレームを受ける気がない企業など,数多存在しています。そして,従前多くのネットユーザーは,ネット企業が被害者に対し誠実に対応しないことを,それ故にネット上での加害行為がより功を奏するようになっていることを,肯定的に捉えてきたわけです。むしろ,特定の個人なり団体なりを攻撃するコンテンツをGoogleが検索対象から外すことを「Google八分」として糾弾してきたわけです。

 私は,ネットが一部のマニアの世界のものではなく,広く国民が日常的に使うツールとなり,そこで行われる人権侵害の結果は深刻なものとなってしまっている実情に鑑みれば ,今やネット企業はまともな苦情受付窓口を設けるべきだし,個人情報保護法上の「個人情報データベース」の定義を立法的に拡張して,個人情報をも機械的に検索可能なデータベース(ウェブ用の検索エンジンを含む)を個人情報保護法による規制の対象とするべきだとは思います。が,ストリートビューのみ悪者視する昨今の風潮には強い違和感を感じます。

06/10/2008

Twitter

 ひょんなことでYahoo!のNさんから豚しゃぶの飲み会にご招待されて出席した際に,Twinkleを始めることになったついでなので,Twitterも始めてみることにしました。

 ただし,つぶやく頻度はそんなに高くないと思います。

02/10/2008

掲示板における名誉毀損発言とGoogleキャッシュ

 2ちゃんねる等の電子掲示板において,Aさんの名誉を毀損する発言「甲」が書き込まれたとします。この発言「甲」を含むウェブページ「乙」は,程なくして,Googleの検索ロボットに把握されて,検索用サーバに取り込まれます。そして,ご存じの通り,Googleの場合,取り込んだデータの一部のみを検索結果におけるスニペットとして表示するだけでなく,Googleキャッシュとして,ウェブページ「乙」の内容を組み入れたウェブページ「丙」を自社サイトにて公衆送信することとなります。なお,2ちゃんねる等の電子掲示板においてはしばしば,発言「甲」を含むウェブページを複数自動生成します(例えば,当該スレッドの全発言を表示したウェブページや,当該スレッドのうち1番発言から100番発言までを生成したウェブページ等)が,Googleは,これらを全て別のウェブページとして把握し,それぞれに対応するGoogleキャッシュページを生成します。

 Googleは,Aさんから発言「甲」の削除を求められた場合,どのように対処するべきでしょうか。

 まず,発言「甲」を含むスレッドページに対応するGoogleキャッシュページ全体を削除するべきでしょうか,または,Googleキャッシュページから発言「甲」の部分のみを削除して,残りは再びGoogleキャッシュページとしてアップし続けるべきでしょうか。

 また,特定のスレッドに関する特定のGoogleキャッシュページに発言「甲」が含まれることを知った場合には,当該スレッドについて発言「甲」を含む形で自動生成されたGoogleキャッシュページを漏れなく削除すべきでしょうか,それとも削除要請が具体的になされたそのGoogleキャッシュページのみを削除すれば足りるでしょうか。GoogleキャッシュについてはGoogle自身がプロバイダ責任制限法上の「発信者」であって同法3条1項の免責を受けることができず,ただ,被害者等からの申告により権利侵害情報がGoogleキャッシュページに組み入れられていることを具体的に知るまでは,膨大なデータの中から特定の権利侵害情報を探し出して削除する等して結果回避する可能性はなかったとして過失が否定されるに過ぎないのだとすると,2ちゃんねる等の電子掲示板における特定のスレッドにおいて特定の名誉毀損発言が投稿されていることを知った段階で,このスレッドに係るものとして自動生成された全てのウェブページに対応するGoogleキャッシュページを削除することは技術的に容易であるから,それを怠った場合には,過失責任が認められると解すべきでしょうか。

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